───この世の果てで恋は唄わないが世界の中心で我是誰(フーアムアイ)を謳う黒───
【ケース04:弦月彰利(極再)/空と大地と空気と建物と森とべつに呪われてない姫君】 ゴォオオオオ…… 彰利 「フ〜〜〜ア〜〜〜ムア〜〜〜〜〜イ!!!」 みさお「遊んでないで作業手伝ってください!」 彰利 「グ、グウムッ……」 マユリ様事件から一時間後。 それぞれ気に入った建物の中に住むことを決めた僕等だったが、 掃除が面倒になった僕は雄大なる景色に向けてフーアムアイを叫んでおりました。 したっけな?みさおさんがいちゃもんつけてくるでよぅ……。 困ったもんだがや。 彰利 「そうは言うがネ……私は特にすることなどないのだヨ。     元々ホームレスには慣れていたものでネ、     寝泊り出来るならべつに模様替えなど必要無いのだヨ」 みさお「マユリ様の真似はもうやめてください!身がもちませんよアレ!!」 彰利 「なにぃ、マユリ様を馬鹿にするなよ?マユリさまはなぁ」 みさお「熱弁しようとするのもやめてください!」 彰利 「グ、グウムッ……」 とまあ、このように……困ったことにどういうわけか『マユリ様禁止令』が出ました。 どうしてだろうね?でもちゃんと『マユリ様』と言ったのは100点満点だみさおよ。 彰利 「んで、悠黄奈さんの方はどうかね?」 ここらでは姿が見えない悠黄奈さんを探してみる───も、やっぱり見つからない。 みさお「悠黄奈さんなら水中都市の魚人さんたちに挨拶しに行きましたけど」 彰利 「なんと!ヌンサとかタンノくん居るかな!」 みさお「あれは……魚人って言えるんでしょうかね」 彰利 「じゃあマンボウモドキさん」 みさお「同じです!」 彰利 「ウヌウ……」 魚に手足がついてるってだけでは魚人にはなれないというのか……? じゃあ逆の発想でいってみよう。 彰利 「じゃあこういうのはどうだろう。     体は人で手足が魚……ブエッ!ダメだ!強烈すぎる!気持ち悪い!!」 みさお「なぁ〜にやってるんですか……」 いやぁ……ハイ、マジで困ったものですね。 まあいいや……まだ見ぬ魚人はまた今度見るとして。 彰利 「オーケーだ娘よ。んじゃあまずは自然を削らん程度の掃除から始めようか」 みさお「まずはもなにも……わたしは掃除終わらせちゃいましたよ?」 彰利 「なんと!?ではオイラも。月然力・風で埃を飛ばし、     月然力・水でこびりついた汚れを浮き上がらせ、洗浄するッ……!!」 というわけで終了。 掃除っていっても特にすることもなかったなぁ……。 ちなみに水自体操っているので何処かが濡れっぱなし、なんてことはありません。 月然力とか言っても、もうどれここれも黒に染まってますからね。 操ることなどお茶の子さいさいさね。 彰利 「さて……あとはどうしましょうかね」 みさお「……こんな一瞬で掃除されると、一生懸命やったこっちの立場が……」 彰利 「立場なんて気にするもんじゃないでござるよ薫殿。     立場などの概念から外れたものこそ真のフリーマン……。     大体、今さら立場なんぞ気にしてても特にも損にもなりゃしない」 みさお「まあ……そうですけどね」 彰利 「つーわけでだ。今から地界に行って中井出達に報告でもしようかネ」 みさお「報告?……あー、確かに報告しておかないと、     わたしたち死んだことにされる可能性高いですしね」 彰利 「そゆこと。一応悠黄奈さんにはあの建物と工房を繋げてもらってあるから、     すぐにでも地界にはいけるわけだしのぅ」 みさお「そうですね、それじゃあ」 ガチャア…… 中井出「くぁあ〜〜〜ぁあ……ふぁひゅひゅ……出すモン出すぞ俺はぁあ………………     オォオオオオオーーーーーーーッ!!!?」 ……───中井出が現れた。 中井出「ど、何処だここは!異次元空間!?ペガサスファンタジー!?     はたまた俺はまだ夢の中なのか!?     馬鹿な……俺はただ便所を求めて彷徨い歩いていただけだというのにっ……!!」 ……なんつーかさすがだ中井出。 まさか教えてもいないのに屋根裏部屋のドアを開けるとは……。 中井出「んあ……ありゃ?おー、彰利じゃねぇか〜!俺の夢にようこそ!」 みさお「……原中の人ってどうしてあそこまで暢気なんですかね……」 彰利 「ほっとけ……これが原中魂だ」 楽しめる状況ではたとえ夢の中でも楽しむのが原中魂。 これが現実で、中井出が寝惚けてるだけだとしてもその魂は揺るがない。 中井出「夢……夢か……なんというトキメキドリーム……。     この広い空……広い海……この空が俺を呼んでいる」 彰利 「海は無いけどなー」 中井出「いンや〜、お前に映像を見せてもらったその次の夢がこれだなんてサワヤカだぁ。     これって空界の景色だよな?えーっと……確か空中庭園だったよな?」 彰利 「………」 寝惚けてるっつーか……こう、夢と現実の境に居るヤツってどうにも対処しづらいよね。 中井出「フッ……あの彰利がこんなに静かだとはな……やはり夢!これは夢か!     夢ならなんでも許される!というわけで───俺は!俺は空を飛ぶぜ!!」 彰利 「なに!?そんなこと神が許さんぞ!!」 中井出「ならば神とも戦うまで!」 彰利 「引けぬか!」 中井出「引けぬ!」 ダタッ───中井出が駆け出した! 向かう先は……雄大なる空界の景色!! 彰利 「ぬおっ!?って待て!飛ぶってどう───」 中井出「とぅおおおうりゃああーーーーーーーーーっ!!!!」 ズバーーン!!───って飛びやがったぁあああーーーーっ!!!! みさお「ひやぁあああああああああーーーーーーーーっ!!!!?」 彰利 「馬鹿ァアアアアーーーーーーッ!!!!     飛べるわけないだろうがぁあああーーーーーっ!!!!」 中井出「馬鹿野郎!これは夢!夢だ!夢なら俺も飛べギャアアアーーーー───…………」 ……落ちてった。 みさお「どどどどうするんですかあれ!」 彰利 「南無阿弥陀仏?」 みさお「いきなり諦めちゃだめですよ!!」 彰利 「まったくもう……ディナータイムだ!アモルファス!!」  ───……ドゴォオオンッ!!! 声  「ほぎゃあああああーーーーーーーーっ!!!!」 遠くで中井出の絶叫が聞こえた。 と───次には空へと飛んでゆく中井出の姿が。 それを黒で包み込むと、我が影から引きずり出した。 中井出「グビグビ……」 で……出してみれば黒まみれでピクピクと痙攣している中井出が生まれ出た。 どうやらアモルファスの頭突きが相当効いたらしい。 というのも、落下してる相手を見もしないで受け止めるのなんて無理っぽいから、 アモルファスに向かわせたわけでござんすが。 ラピュウタの岩壁からアモルファスを飛び出させ、頭突きをさせたわけですよ。 したっけ……こげなことになってしまったがよ……。 みさお「で……この人どうしましょうか」 彰利 「どうって……まずは額に肉だろ」 キュポンとマジックのキャップを外した。 そう、やはり目の前で苦しみもがく原中生が居るのなら悪戯をするのが原中生。 決して情けはかけません。 かけるとしても悪戯してからです。 彰利 「肉を描いたらカイゼルヒゲ……次にサンジ眉毛、と。     あとはアゴケツは当然として、青筋とパンダ目……うむ!!」 みさお「うぶっ!?」 完……成……! 美しい……美しすぎるぜ。 そう……この美しさを歌に例えるならば─── 彰利    「知らなーいーヤツには見せてやるー♪」 みさお   「赤!」 彰利    「青!」 みさお   「黄!」 ウィル   『美しい……』 彰利&みさお『オワッ!?』 精霊    『どっキレ〜イだ〜♪』 悠黄奈   「ニュウ♪」 ……えーと……。 彰利 「……いつ戻ってきたん?」 悠黄奈「今ですよ。ところで……この人は?」 悠黄奈さんがぐったりと倒れて動かない我等が原中の中井出を指差して言う。 この人は?と聞かれてもなぁ……。 彰利 「まぁよいデショ。彼こそが栄えある我らが原中の司令塔にして最強の遊び人、     中井出博光その人である」 悠黄奈「中井出……さん?」 悠黄奈さんが、ステキなフェイスアートを施された中井出を見下ろすが─── 悠黄奈「……凄まじい方なのですね」 彰利 「解るかネ」 みさお「解りたくもないですけどね、凄まじいのは確かですし」 中井出「ラブラブですな」 彰利 「解るかね」 みさお「訳わかりませんよ」 彰利 「まったくだ───つーか大丈夫か中井出。一応加減はされてると思うが」 中井出「フフフ……正直やせ我慢してるぞ……。い、今にも吐きそうだぁ……」 彰利 「ちなみにここで吐くと悠黄奈さんにブッコロがされるぞ」 中井出「悠黄奈?って……たしか晦の───オワッ!?」 中井出の視線が悠黄奈さんに注がれる。 そして─── 中井出「が、がが……が……」 上半身を起き上がらせた状態の彰利が顎をカタカタと動かし驚愕。 ……中井出ヨ。人を指差すのは紳士としてどうかと思うがネ。 中井出「なっ、かっ……おっ……!!おががごご……!!」 彰利 「中尾?誰だよそれ」 中井出「違う!こ、このおなごは誰だ!?     悠黄奈って……えぇっ!?なんか雰囲気違うだろ!」 彰利 (あ、ちなみに……身も心もおなごになってるので、     彼女は既に悠介ではなく悠黄奈さんだ。     そこんところは悠黄奈さんは気づいてないから内密に) 中井出(───その話乗った。内密ごとは大好きだ) 彰利 (ちなみに記憶喪失ってことになってる。そちらもよろしゅう) 中井出(からかい甲斐がありそうだな) 彰利 (さすがだ中井出、腐ってるな) 中井出(任せたまえ) 青い顔のままに親指をビッと立てて見せる中井出……さすがだ。 中井出「そーかそーか……貴様が昏黄悠黄奈か……。なかなかのべっぴんさんだ」 悠黄奈「え?あの……」 中井出「おっと、相手の名を知っているのに名乗らんのは紳士的ではないね。     わぁ〜れこそ原中の心臓、中井出博光なり!!よろしく美しいお嬢さん」 彰利 「キザな言葉似合わね〜」 中井出「やかましいぞ彰利一等兵!!私語は慎め!」 彰利 「Sir(サー)YesSir(イェッサー)!!」 悠黄奈「………」 礼の如く敬礼する俺と、それをさせた中井出を見てきょとんとする悠黄奈さん。 やがて─── 悠黄奈「……すごい……。     わたしの言うことなんて全然聞いてくれなかった彰利さんが……」 ……なにやら妙なところで感心しているようだった。 俺はその視線が中井出に注がれているうちに闇を纏い、ニヤリと剥き歯で笑った。 悠黄奈「あ、あのっ!どうすればそんな風に言い聞かせることが出来るのですかっ!?     彰利さん、全然人の言うことを聞き入れてくれないんです!」 マユリ「何故私がキミのような小娘の言うことを聞き入れなければならないんだネ?     私は護廷十三隊十二番隊隊長及び技術開発局二代目局ちょ」 みさお「彰衛門さん!?マユリ様の真似はやめてくださいとあれほど───!」 マユリ「うるさいネム!またバラバラにされたいか!!」 ネム 「うう……」 文句を完全に言い終える前にマユリ様的に喝を入れた。 すると黙るネム……最強だネ。 中井出「体に闇を纏ってマユリ様アーマーを象らせたのか……見事だマユリ様」 マユリ「褒め言葉は必要ないヨ。だが様をつけたのは二重丸だヨ斑目クン」 中井出「誰がハゲ死神だ」 マユリ「まあそんなわけだヨ。     丁度キミに全てを終えたことを伝えようと地界に向かおうとしていたところだ、     丁度良かったと言えば丁度良かったヨ」 中井出「あ……そういや……。ってもう終わったのか!?こ、黒竜王は!?」 マユリ「ヤレヤレせっかちだネ……。     それをこれから映像で見せようと思っていたところだヨ。     他の奴らはまだ母屋に居るのかネ?」 中井出「まだ、っつったってなぁ……地界じゃまだ昼にもなってないぞ?」 マユリ「なんだって?それは本当かネ」 中井出「ホントもなにも、ホレ」 中井出が腕時計を見せる。 マユリ「おや……顔に似合わずファンシーな腕時計だネ」 中井出「やかましいほっとけ!!……って……お?」 マユリ「ン?なんだネ?」 中井出「いや……ほらマユリ様。よく見てみろよ。     秒針の動き……随分ゆっくりじゃないか?」 マユリ「おや、本当だネ……。まあ解りきったことではあったがネ」 中井出「解りきった、って……何か知ってるのか?」 マユリ「知ってなきゃこんなこと言うわけがないだろう。ではまず地界に行こうかネ?     それともここに他の連中を呼んで上映するかネ?」 中井出「断然ここだろ。なるほど、空気が違う。     お前らがこの世界を好むのも解る気がするわ」 マユリ「そうだろうヨ、この世界は澄んでいるからネ。特にこの空中大庭園は別格だヨ。     ここの空気は他の何処より……イヤ、     神々の泉とサンザーントレント以外の場所よりは澄んでいるヨ」 ネム 「サンザーンじゃなくてサウザーンですけどね」 中井出「へぇ……で、お前らここに住んでるのか?」 マユリ「これから住むんだヨ。今現在は掃除などをしていたんだがネ、     その途中でキミがここに現れたんだヨ」 中井出「なるほど、グッドタイミングで出現したわけだな。     掃除なんて後回しにして映像見せろ」 マユリ「……誰に向かって命令してるんだネ?     私は護廷十三隊十二番隊隊長及び技術開発局」 中井出「あー!わーった!わーったからさっさとお願いしますよマユリ様!」 マユリ「……まァ解れば良いんだがネ。それじゃあ早速他の連中を呼びに行くヨネム。     モタモタするな、薄鈍」 中井出「……随分なりきってるんだな」 ネム 「わたしなんて何処かへ行こうとする度に     ウスノロとかノロマとか言われるんですよ……?」 中井出「マユリ様だなぁ……流石に気の毒だ」 小さな小言を無視してゆっくりと歩きだす。 と─── 悠黄奈「地界、ですか。私が住んでいた世界なんですよね?     わたしもご一緒してもよろしいですか?」 マユリ「ダメだネ。キミは地界には連れて行けられないネ。     キミはここで待っているんだヨ」 悠黄奈「えっ……どうしてですか?」 マユリ「地界の空気はキミには合わないんだヨ。だから連れて行くわけにはいかないネ」 悠黄奈「そんな……でもわたしは地界で生まれたんですよね?でしたら───」 マユリ「ダメなものはダメなんだヨ。     悪いがネ、こればっかりは聞き入れるわけにはいかないヨ。     キミはネ、確かに記憶喪失でもあるが、同時に療養中でもあるんだヨ。     ここで無理をすればキミは動けなくなる可能性だってあるヨ」 悠黄奈「え……?わたしが……療養……?」 マユリ「その通りだヨ。キミが記憶喪失になり、     こうして空界に居るのも全ては綺麗な空気の中で療養するためなのだヨ」 悠黄奈「わたし……病気なのですか?」 マユリ「そうだヨ。その名も超絶激怒モミアゲ症候群だヨ」 中井出「ふばぁはっ!?」 ネム 「ぶふしゅっ!?」 マユリ「そこ!何を笑っているんだネ!?」 中井出「す、すまんマユリ様……で、でもなぁ……ぶくっ!!」 ネム 「モミアゲ症候群って……うくくくくっ……!!」 マユリ「ちなみにこの病気にかかっているとだネ、     モミアゲの事柄に触れられると激怒してしまうのだヨ」 悠黄奈「うぐっ……!!」 私の発言にドキリと肩を跳ねあげる女。 クク、どうやら心当たりがあるようだヨ。 そりゃあネ、心当たりがあるだろうから言ったんだがネ。 マユリ「心当たりがあるようだネ?だったら大人しく待っているんだヨ」 悠黄奈「で、ですけど!」 マユリ「聞き分けの無い娘だネ!!あまりしつこいと実験体にするヨ!?     ドロドロになるまで調べつくされたいのかネ!?」 悠黄奈「う……行くことさえ許されないのですか……?」 マユリ「体が回復するまでの辛抱だヨ。それが終わればいくらでも行けばいいサ」 中井出「なに、そんなに悪いのか?」 マユリ「困ったことに魂のレベルで異常が起きているのでネ。     そういう癒しようのない部分ではネ、やはり空気から選んだほうがいいのだヨ」 中井出「ああ、そりゃ解る。なるほどなぁ」 中井出が私を見てクスクスと笑う。 まったく……何を考えているのか知らないが良い気はしないネ。 ───……。 ……。 マユリ「オマエら!いつまで寝てるんだネ!?」 総員 『エ───うわぁあああああっ!!!?ななななんでマユリ様がぁっ!!?』 母屋の居間で寝てたりボ〜ッとしていたりした猛者どもに喝を放った。 狼狽える者たちの表情はいつ見てもいいものだネ。 マユリ「今すぐ起きるんだヨ!!起きなければドロドロになるまで実験するヨ!!」 藍田 「い、いきなり現れてなに言ってんだよマユリ様!なにする気だ!?」 マユリ「……意見して良しと───言ったかネ?」 藍田 「……許可が必要だなんて聞いてないが」 マユリ「まったくだネ。まあいいサ、付いてくるんだよオマエラ。モタモタするな、薄鈍」 藍田 「う、うすのろって……って、     マユリ様の格好はしてるけど全身黒ってことは弦月だろ?」 マユリ「弦月?違うネ。私は護廷十三隊十二番隊隊長及び技術開発局二代目局長涅マユリ。     そんな弦月彰利だなんて名前ではないヨ」 藍田 「弦月のフルネームを言った覚えはないが……じゃあなんで知ってるんだ?」 マユリ「………」 藍田 「………」 マユリ「図に乗るなヨ小僧!!!!」 藍田 「うおっ!?」 田辺 「マユリ様が逆ギレしやがった!!」 マユリ「いいから黙って付いてくるんだヨ!!殺されたいのかネ!!」 中村 「いやいや落ち着けよマユリ様。付いて行ってなにがあるんだよ」 マユリ「オマエ達に黒竜王との戦いを見せてやろうと思ってネ。     実はネ、もう戦いは終わったんだヨ。だから、と言っているんだヨ」 総員 『な、なんだってぇええーーーーーーーっ!!!?』 居間に絶叫が響き渡る。 まったく騒がしい限りだネ……少し静かにしてもらいたいんだがネ。 マユリ「それで?付いてくるのかネ、来ないのかネ」 総員 『行く!!』 マユリ「そうかネ。じゃあ付いてくるんだ。モタモタするな、薄鈍ども」 総員 『誰が薄鈍だマユリ様!!』 マユリ「な、なんだネ!?いきなり怒鳴るなんてみっともないとは思わんのかネ!!」 中村 「あんたにだけは言われたくない」 マユリ「うるさいヨ!いいから付いてくるんだ!」 田辺 「なんだとこのフリーザさま!!」 マユリ「フリーザさまって言うんじゃないヨ!!     私は護廷十三隊十二番隊隊長及び技術開発局二代目局長涅マユリ!!     声優が同じでもフリーザさまじゃないんだヨ!!」 藍田 「やかましいフリーザさま!」 中村 「フリーザさま!」 田辺 「フリーザ!フリーザ!!!」 総員 『フリーザ!フリーザ!フリーザァアーーーーーッ!!!』 マユリ「や、やめろぉおおおーーーーーーーっ!!!!」 ───……。 ……。 藍田 「というわけで、マユリ様がイジケちまった」 中井出「………」 みさお「あのマユリ様がここまで落ち込むなんて……なにやったんですか……」 彰利 「もういいよ……フリーザさまって言われた程度で心を乱すボクごときが、     マユリ様になろうだなんて所詮無理な話だったんだ……」 中井出「おお、元に戻ってる」 みさお「戻ってきてもまた     マユリ様だったらどうしようかって悩んでたんですけど、助かりました」 総員 『ハッハッハ、礼には及ばんよ少女よ』 みさお「……全員が全員、同じことを考えてるのって凄いですよね」 中井出「原中生だからな」 ……俺もいい加減気を取り直しましょう。 こったらことでは原中の猛者どもに遊ばれまくる。 彰利 「ンマー、では上映会を開始する。場所は……この外で構わんかね?」 中井出「構わんぞ彰利一等兵。盛大に上映したまえ」 彰利 「YesSir(イェッサァッ)!!」 ともあれ、期待されて悪い気はせんよね? ではまいりましょう!! 彰利 「かいぐりかいぐり……メークミラクル───!!     イッツ!ワァンダフォオオオオオーーーーーーッ!!!」 俺はさっそく構え、ステキな魔法の呪文とともに映像幕を出現させたッッ……!! みさお「どういう呪文ですか!」 彰利 「なにぃ!?この呪文の素晴らしさが解らんヤツなど人間じゃねぇ!」 みさお「人間やめてる彰衛門さんに言われたくありませんよ!!」 彰利 「うわヒッデェ!!この娘ヒッデェ!!親に向かってなんてことを!!     パパりんはキミをそげな娘に育てた覚えはハナから無ェぞ!?」 みさお「育てられてませ───ハナから!?」 中井出「はい、みさおちゃんの負け。今の言葉は反論した時点で負ける仕組みだ。     言葉じゃまだまだ彰利には勝てやしないから落ち込むな」 みさお「うぐぐぐぐぐ……!!」 彰利 「ほぉっほっほっほっほ!!馬鹿め!馬鹿め!!」 みさお「ここぞとばかりに罵らないでくださいっ!!」 中井出「お前さぁ、やっぱ篠瀬さんの記憶消さないでおいた方が良かったんじゃないか?」 彰利 「むっ!?い、いきなり何を言うのかね!!」 藍田 「だって罵り方が思いっきり篠瀬さんへの言い方じゃねぇの。     しかも言いながら構えてるし。     それって刀攻撃を出来るだけ逸らすための構えだろ?」 彰利 「構え?……ウゴッ!?」 ハタとして見てみれば、確かに妙な構えを取っている我が体……どうしたことだネ!! な、なんだネこれは……!なんだネこのポーズは……! 知らんヨこんなもの……!知らんヨ……!! 中村 「おぉっと弦月選手!どうやら無意識だった模様です!」 麻衣香「さぁこの状況をどう切り抜けるのでしょうか!?     原中生が見守る中、ついにその行動が明かされます!!」 彰利 「映像始めるよ?」 総員 『そう来やがったか……』 彰利 「ちなみにしつこく食い下がってきた者には     即刻地界への強制退去が待っているので静粛よりなお静々粛々に」 総員 『御意に』 悠黄奈「……あの。こういう時は『サーイェッサー』とは言わないのですか?」 中井出「原中大原則ひとぉーーーつ!!」 藍田 「原中生たる者、その場その場での司令塔をサーとして認めなければならないっ!」 中井出「ようするにマユリ様でもない彰利を司令塔と思う者は居ないというわけだ。     はっはっはっはっは」 彰利 「?、ィヤッハッハッハ」 みさお「司令塔には向かなすぎるって言われて笑わないでくださいよ……」 まあいいじゃないですか、実際その通りだと思うし。 原中生はやっぱり中井出が指揮した方がオモロイわい。 彰利 「つーわけで上映すっぞー。刮目せんみよー」 総員 『オォオオオオオスッッ!!!!』 号令とともに何故か神心会の挨拶のようなものをする原中の猛者ども。 ……さすがだ、その時その時を自由に生きすぎてる。 ともあれオイラは出現させた黒の幕に月視力フルパワーを送り込み、 映像を展開したのでした。 あ、もちろん『悠介の視点』は悠黄奈さんに影を繋げ、 ノーちゃんの協力の下に悠介の記憶からきちんと引き出しました。 悠介の意識自体が魂レベルで引っ込んでしまっているので、 ノーちゃんに協力してもらわんと干渉出来ないんですよ。 というわけで───始まり始まりぃい〜〜ン。 ───……。 ……。 えー、最初はまず地界の平凡なワンシーンから始まりました。 というのも、中井出たちがカフェオレだの ダッチコーヒーだのを夢の中で注文している場面である。 中井出「……ちなみにこの時の俺の夢、     某ゲームのダンディなマスターが注文取りに来る夢だった」 藍田 「俺はダッチワイフがコーヒーを入れてくれる、     なんていうふざけた喫茶店に無理矢理連行されて、     無理矢理注文させられる夢だった」 島田 「ちなみに俺は普通の喫茶店」 灯村 「俺はナナメな世界で愛を語る夢だったけど」 藍田 「俺は中学の時に一列に並ばされて説教させられてる夢だな」 中村 「俺はデビルメンの夢だった」 彰利 「……なるほど」 なんだか少々納得いった。 同じ夢みてたわけじゃなかったのか。 それでも会話が成立してるところが原中っつーかなんつーか。 ともかく場面は俺と悠介のフーアムアイに至り、どんどんと過ぎてゆく。 やがて俺達が空界に降り立つと、皆様の興奮も高まってきた。 中井出「なんつーかこの骨も懐かしいなぁ……よく覚えてたな彰利」 彰利 「まあ一応自分の魂の一端だからねぇ。     今はもう魂まで黒に染まってるからカバーなんていくらでも出来るんだけど」 藍田 「人間やめてるなぁ」 と、藍田が言ったところで場面は悠介の視点へ。 早速黒竜王と遭遇し、再会を喜び合う───のも束の間、 問答無用で攻撃を繰り出された極光を弾き、 さらに尾撃に弾かれた悠介は雄大なる空界の大地へと落下していった。 総員 『おわぁああーーーーーーっ!!いきなりやられたぁあーーーーっ!!』 彰利 「あ〜あじゃーじょーぶじゃーじょーぶ。     今の悠介ならこれくらいで死にゃあせんて」 中井出「……それもそれで人間やめてるな」 みさお「竜人ですから」 ほんとね。 と、ここで再び視点変更。 オイラとみさおさんがモンスターどもと戦う場面が俺の視点で始まった。 中井出「おっ……また彰利視点か。誰の視点かってすぐ解らないのは辛いかな」 彰利 「ふむ……では画面右上にその視点の人物名でも出しておきましょう」 言葉とともに意識を集中させると、画面右上に『彰利』という文字が現れた。 藍田 「お……こりゃ解りやすいな」 中村 「つーかいきなりアモルファスか」 田辺 「しかもみさおちゃん、モンスター操ってるし。     いいなぁ、こういうのってドラクエ5からの憧れだったんだよな」 丘野 「……つーか弦月の相手が不憫でならん。弦月の前に辿り着く前に食われてる」 麻衣香「黒って凄いのね……」 中井出「おお!モンスターが『ウゴバシャドアシャア』って言ってるぞ!」 灯村 「……漢・魂(メンソウル)?」 島田 「いや、違うだろ……」 中井出「いやしかし、やっぱバトルっていいなぁ……」 藍田 「ああ、なんつーかこう、視点がそのままってのがいい。ドキドキするね」 中村 「白兵戦はもっと燃えるよな、間近すぎるし」 中井出「あ、そうそう!     敵が近いから、敵の攻撃に合わせてこっちの体まで動いちまうのな!」 丘野 「いいよな〜こういう───ブフゥッ!!?」 夏子 「あ、ああああ……!!」 総員 『“黒縄天譴明王”(こくじょうてんげんみょうおう)だぁあーーーっ!!!』 画面の中、モキモキと巨大化する俺を見た皆様が口を揃えて言った。 中井出「しかも卍解って……!!     よくやった弦月一等兵。貴様は今、パクリの境地へ至った……」 彰利 「提督殿……」 藍田 「お……おぉおお!!強ぇえぞ!!モンスターどもがビンタで一撃だ!     狛村さんっつーよりは『山のフドウ』だ!!」 丘野 「フ!ド!ウッ!!フ!ド!ウッ!!」 総員 『フ!ド!ウッ!!フ!ド!ウッ!!』 彰利 「イヤァアアアアッ!!フドウ言わないでぇええーーーっ!!!」 などと嫌がるのも束の間。 画面が切り替わり、画面右上に『悠介』と出ると、途端に皆様が静まった。 もちろん俺もです。 中井出「や〜……なんつーか晦の場合、相手が相手だから余計に緊張するな……」 丘野 「そりゃそうだ……前は一撃でやられた相手だぞ?」 島田 「あ、けど今回はその一撃にも耐えたわけだよな。     やっぱ修行の虫だよな、修行が生かされてるっていいことだ」 声を熱くして語る猛者ども。 そんな彼らを余所に悠介はセットを唱え、ヴィジャヤを振りかざして大地に突き立てた。  ───ドォッガァアアアアアンッ!!!! 総員 『おわぁああああああっ!!!!』 映像を見ているこちらにまで振動が伝わるかと思うほどの衝撃。 それを目と体で感じた猛者どもは一気に黙りこくってしまった。 総員 『……ゴ、ゴクッ!!』 あとはもう見守るだけだ。 悠介の視覚が反映されているからこそ目で捉えていられるそれは、 その実悠介の視覚以外ではまるっきり捉えることなど不可能だろう。 その場にバハムートが召喚され、悠介がエクスカリバーを放ち、魔法を行使し─── 次の瞬間に放たれたバハムートの極光を前に、 とうとう猛者どもは悲鳴にも近い歓声を放った。 が─── 中井出「ういっ!?あ、あれを(かわ)すかよ!!」 バハムートの一撃はミルハザードが人になることで躱され、景色の果てへと消えていった。 藍田 「〜〜〜っ……!!」 それぞれが緊張した面持ちで、拳を握り締めながら画面を見守る。 悠介は屠竜剣とヴィジャヤを融合させて前を見て、ゼットはそれを睨み返し─── やがて衝突が始まった。  ───それは、例えるならば映画やゲームなどである現実には有り得ない程の動き。 刹那ともとれる時の中で優に12以上を叩き込み、だがその全てを弾いてゆく。 そんな刹那を続けてなお息を切らすこともなく連撃を続け、 火花が霧のように景色を包んでなお止まらない。 そんな中───なにかの確信とともに振り切った悠介の剣がゼットの剣を弾き上げた。 中井出「───!!」 総員 『っ……いけぇっ!!やっちまぇえっ!!』 恥もなにも要らない。 ここに至るまで、悠介がどれだけ修行をしたかを知っている俺達だからこそ、 そう叫んでいた。  ───ガギャシャァアアンッ!!!! 中井出「オッ───オォオオオオオッ!!!!」 藍田 「よっしゃぁあああああっ!!」 そして、その一撃は徹った。 ゼットの身を裂き、血を舞い上がらせた。 だが───やはりその程度ではゼットは止まらなかった。 仕返しとばかりに悠介の身を斬り裂くと、 その勢いを止める間も惜しむように連続して切りかかってくる───!! 島田 「───!うわっ!」 灯村 「あ、うあっ……!!」 画面は悠介の視点だ。 形相とともに切りかかってくるゼットを前に、沢山のやつらが恐怖の声をあげた。 それでも───悠介は恐怖の声など全然吐かない。 それが、画面を見ている俺達の勇気にもなった。 恐怖を声にしてしまったやつらは互いの顔を見合わせて頷き合うと、 目を逸らすことなく画面を見る。 ───だがそんな時だ。 悠介の腕が、宙を舞ったのは。 中井出「うあ───!」 藍田 「っ……!!」 さすがの中井出も藍田も息を呑んだ。 もちろん俺もだ。 ゼット相手に片腕で戦えるわけがない……そう思ったからだ。 だがその場はゼットの余裕のお陰で切り抜けられ、再び交戦が始まった。 だが……悠介の疲労は一目で解るほどの浮き上がっていた。 中井出「な、なんだよ……賢者の石の使用ってのはそんなに疲れるものなのか……?」 彰利 「悠介のこの疲れ様が答えだろ……。     強くなるってことは、それだけ消費する力も増えてくるってことだろ……」 不安が駆け巡る。 確かに悠介が勝ったという事実は存在する。 だけどその過程がこんなに危険だったことを俺は知らない。 だからこそ、何度も唾を飲み込むほどに緊張した。 剣のリミットを超越し、連撃を繰り出してゼットを追い込む悠介を見ても、 どういうわけか安心には至らなかった。 神魔竜人化をし、深手を負わせてなおその不安は消えない。  そして───その不安は現実のものとなる。 ゼットが疲れ果てた悠介の腹に腕を突き刺し、貫通させたのだ。 中井出「───!!」 藍田 「っ……!はっ……」 総員 『……!!』 彰利 「…………───!」 その場に居た全員に緊張が駆け抜ける。 いや、緊張なんてものじゃない……これは絶望だ。 だが───それでも悠介は起き上がった。 どういう原理か知らないが腹の穴を即座に回復させ、 おかえしとばかりにゼットの腹を貫き─── 悠介 『“極光暴壊烈破”(カリバーン・エクスプロージョン)!!!』 その言とともに右腕に極光を溜め、暴発させたのだ。 さすがのゼットも内側からのダメージには抗えず、 腹部を大きく消失させながら吹き飛んだ。 彰利 「………」 一進一退どころじゃない。 一進も一退もない、滅茶苦茶な戦いだ。 悠介が俺を戦わせたくない理由がよく解った…… こんなの、他の誰が居ても邪魔になるだけだ。 中井出「……どう思う?」 藍田 「どうっつったって……」 中井出と藍田が、悠介とゼットが話を始めた合間に話し始めた。 だがそれは纏まりきっていない話をぶつけ合うようなカタチであり、 そこに答えなど生まれなかった。 ……やがて画面が俺の視点へ移ると、皆様そろって安堵の溜め息。 中井出「ぶはぁああ〜〜……あぁ……緊張した……」 藍田 「合間合間で弦月の視点に戻ってくれると緊張ほぐれるよなぁ……」 彰利 「どういう意味かねそりゃあ!!」 中村 「いやいや気にするな弦月。     貴様の場面は多少の緊張はあるが、晦ほどじゃないってことだ」 彰利 「……そりゃ、認めますけどね」 悠介の映像は見ていて毒に近い。 冗談抜きで死と隣り合わせの戦いであり、自分の戦いが物凄く楽に見えてしまうほどだ。 ……画面では俺がビッグバンかめはめ波を撃っており、 皆様がそれを見てやんややんやと笑う。 ……ほんと、えらい違いだ。 ───で、画面に召喚獣が出てくると『ざわ……』とどよめき、 そいつの攻撃に合わせて唐沢さん的超腹筋を見せ、腹を貫かれた俺を見るに─── 総員 『馬鹿かてめぇ!!』 熱烈に罵倒を飛ばしてきやがった。 彰利 「ば、馬鹿とはなんだコノヤロウ!!     唐沢さんの腹筋の強さは全世界共通だって知らしめたかったんだよ!」 中井出「アホォッ!!一歩くんの拳に勝てなかった腹筋が召喚獣に勝てるかぁっ!!」 彰利 「ゲ、ゲェエエエーーーーーッ!!言われてみれば!!」 中井出「馬鹿め!」 藍田 「馬鹿め!馬鹿め!!」 彰利 「う、うっさいわい!1」 などというふざけあいもやっぱり束の間でした。 悠介の視点に戻った途端に猛者どもは静まり返り、息を呑んだ。 総員 『……ゴクッ!!』 何故息の呑みかたが漂流教室風だったのかは……やはり原中だからとしか。 ───……。 ……。 ……ややあって、みさおが食われたところで休憩開始。 彰利 「ここらは俺と悠介との会話じゃけぇ……少し心を落ち着かせましょう」 みさお「……いやなところに段落つけやがりますね……」 食われた本人としては不服らしい───そりゃそうだ。 それでも皆様、すでに画面の悠介と俺の話を聞きながら息を整えてたりします。 ……そりゃね、他のバトルに比べてゼットとの戦いって緊張しっぱなしだったし。 俺も少し休もう……能力展開しっぱなしと緊張の連続で正直疲れてます。 ───……。 ……。 さて……場面は既に、VS超黒竜王セカンド2ダッシュ・デュアルレベル∞。 あの時俺が思ったように、タイマン張って勝てるような相手じゃないことは─── まあ、この場に居る誰もが理解できたことでした。 現に月操力を行使して黒竜の姿のままで滅茶苦茶な攻撃をしてくる黒竜王は、 やはり喩えにもあげたように滅茶苦茶だ。 理性を失っているのに、本能でさまざまな力を織り交ぜた攻撃をしてきている。 その迫力、その咆哮、その威圧感に押され、気絶する者多発。 しかし皆様それぞれの後頭部には黒が配置されており、 気絶だの睡眠だのを取った場合は刺激が走り、意識が覚醒する仕組みです。 中井出「……!」 藍田 「っ……!」 今のところ気絶してないのは中井出と藍田のみ。 体を震わせながらも画面を見続け、既に無言ならがも悠介を応援していた。 悠介の凄まじい攻撃の果てに黒竜王が本能からゼットに戻った瞬間でも、 そのゼットが竜人状態となり悠介を殺した瞬間でもだ。 だが─── ギシャァアアアアアォオオオオオンッ!!!!! 中井出「うぎゃあああああああああーーーーーーーーっ!!!!!」 藍田 「ひぎゃあああああああああーーーーーーーーっ!!!!!」 さすがに悠介が皇竜になった時には気絶した。 ……そりゃそうだ。 つーか他の皆様も全員気絶しました。 気絶してないのは……俺とみさおさんと……悠黄奈さんだけだ。 なにやら頬を染めながら画面に見入っている。 ……平和やね。 ───……。 ……。 中井出「うぐっ……ひっく……うえぇえ……」 藍田 「おぉおおおおお…………」 やがて……上映終了。 皆様は緊張と興奮と恐怖と間近にあった死への体感のためか泣き出してしまった。 俺も……まあ、体が緊張しすぎてガクガクではありますが。 中井出「すげぇよ晦……あんた勇者だよ……漢だよ……」 藍田 「おぉおおおお俺には無理だぁ……あげなヤツを前にして戦えっこねぇ……」 彰利 「や……ありゃ普通誰だってそうデショ」 中村 「け、けどさ。最後……ほんのちょっとだけ画面に出てたけど、     黒竜王って火山に落ちてったんだよな?詳しく言やぁマグマか」 彰利 「そうみたいね。俺も悠介も見たことない映像だったけど」 ノーちゃんのものかね。 まあべつに誰のでもいいんじゃけど。 中村 「やっぱ死んだんかね」 彰利 「あの傷でマグマだしね……これで生きてたらバケモンですよ?」 中井出「もしもの話、生きてたらどうする?」 彰利 「ぼくらには大賢者アルマデルキング様が居るから大丈夫さ!!」 中井出「大賢者?って……ああ、晦か」 藍田 「あ……そういや晦は何処行ったんだ?やっぱ傷だらけで休養中か?」 彰利 「ンマー、そげなとこ」 藍田 「ところでさぁ……やっぱこれ、ダビングできない?」 彰利 「こちとら機械で再生してるわけじゃあねぇんだぜ!?出来るわけねぇでゲショ!」 殊戸瀬「フッ……甘いねキミタチ」 彰利 「ハッ……!?お、お前は!!」 総員 『普段は目立たないが用意周到の殊戸瀬睦月(こととせむつき)!!』 殊戸瀬「はーいはいはい、目立たないは余計よ。で、これなーんだ?」 彰利 「なにって……ビデオゲェエエエエーーーーーーーッ!!!!」 な、なんてことだ!そうか!その手があった!! 中井出「そ、そうか……!     ダビングは出来ないが、ビデオカメラで映すことは可能ッッ……!!     これは盲点だ……!!つーわけで彰利!全ての映像最初から全部映せ!     この中井出カメラに全てを映す!!」 彰利 「…………結構時間かかるよ?ええのん?」 総員 『私は一向に構わんッッ!!』 彰利 「………」 律儀にビデオカメラを構えた皆様が絶叫しました……。 しっかりと代えのバッテリーとテープも常備してあるらしい……。 ……仕方ない、やったりますか……。 ───……。 ……。 彰利 「……終〜〜了〜〜……」 総員 『だはぁ……』 ややあって、題して『僕と僕らの成長記録』は録画を終えた。 流石に空界での出来事を最初から最後まで上映することになるとは思わんかったが、 映してる最中は誰ひとり喋らず、黙々と映像のみを映してるんだから凄まじい。 彰利 「つーかさ、よくそれだけバッテリーだのテープだのあったよね」 中井出「フハハハハ!!我等原中生、いつでも相手の弱みを掴むために     カセットテープやカメラを常備することは何気なく忘れん!     見よ!我が中井出リュックの中身を!     この中井出ハンディーカム用のバッテリーからテープまで、     腐るほど詰め込んであるわ!!」 彰利 「捨てちまえそんなもん」 ブンッ!シュゴォオオオオオオーーーーー──────……………… 中井出「オォオオオオオオオオーーーーーーーーッ!!!?」 中井出リュックは星となり、空界の雄大な大地へと舞い降りていった。 中井出「ななななにすんだぁあーーーーーっ!!!     今撮り終わったカメラも全部詰めてたんだぞーーーっ!!?」 彰利 「かぁるいジョーク♪」 中井出「重すぎるわ弦月一等兵!!こ、この痛み!アンナの痛み!」 彰利 「小判で二枚」 中井出「よし許す」 現金なヤツだった。 まあ思い出を売るわけじゃないし、二枚くらい大丈夫ってことで。 中井出「つーか大丈夫かね。あれってやっぱり環境破壊になったりするんじゃないか?」 彰利 「カメラの不法投棄か……確かにいかんね、空界を汚すのは俺も賛成出来んし」 そう思った俺は崖っぷちまで駆け寄り─── 彰利 「ピエロEYE(アイ)ーーーーーン!!!」 久しぶりの眼球伸ばしを行使し、大いなる空界の大地を眺めた。 黒の力の影響もあり、死神としての視力も伸びた俺にしてみれば─── 悠介のイーグルアイほどではないが、なんとか大地の詳細くらいは見えたりします。 彰利 「………」 というか……うむ。 どうやら下界の木の枝に手提げ部分が上手い具合に引っかかり、 内部には大した衝撃も無く地面に落ちた模様。 彰利 「グムムーーーッ!!長くはやってられーーーん!!」 いきなり目が乾いてきました。 効果は高いけど長続きしないようで……やっぱり世の中上手くいきません。 中井出「どうだった?」 彰利 「下界の大地に静かに舞い降りた模様。あの程度ならば中身の安全は確実だ」 中井出「そか。じゃあ取りに行ってくれ」 彰利 「その場合、小判は渡さんぞ?」 中井出「無視しようか」 やっぱり現金なヤツだった。 まあいよいデショ、きっとあのリュックは大地の肥やしとなりましゃう。 ここは生暖かい目で見送ろう。 ドラゴンボールの神様が下界を見守るが如く。 彰利 「まあそげなわけなんで、     俺とみさおさんと悠黄奈さん、今日からここで暮らすことになったから。     用事が出来た時は遠慮なくあそこの扉から来訪しておくれ?」 中井出「てんでどういうわけなんだか解らんが……フフフ、解ったと言っておこう」 彰利 「さすがだぜ中井出……伊達にエロビを愛しちゃいねぇ……」 中井出「ここでエロビ話は全然関係ねぇが任せろ」 僕と中井出クンは熱い男の握手をしました。 それからはもう宴会気分です。 僕と僕らはハシャギ回り、ともに空界について語り合ったのです。 その時の僕らは輝いていました。 特に僕の顔が。 藍田 「ところで提督、なんだって顔に物凄いアートを?」 中井出「アート?」 彰利 「知らない方が幸せなことってあるよな」 総員 『まったくだ』 中井出「……?」 ああ、僕らは今楽しんでます。 幸せってこげな些細なものから広がるんだと確信しました。 この喜びを親友と分かち合えなかったのは残念でしたが、 悠黄奈さんは楽しくやっていたのでそれもいいかなと思いました。 もうひとりの親友が目覚めるのはいつになるのでしょう……。 それだけが、ただ気がかりでした。 Next Menu back