───思い出を思う友と精霊復活祭りと卵のことで七転八倒な黒───
【ケース05:弦月彰利(ファンシー再)/ノートさんの考え】 ゴォオオオオ…… 彰利 「フ〜〜〜ア〜〜〜ムア〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜イ!!!」 さあ朝が訪れました。 今日も元気だ空気が美味い。 朝のフーアムアイも済んだことだし、これからどうしよっかね。 1:寝ているキリュっちに夜這いならぬ朝這いをかける 2:寝ている悠黄奈さんに夜這いならぬ朝這いをかける 3:寝ている中井出提督にさらなるアートを描く 結論:……3!! つーか1と2は有り得ませんので。 いくら男に成り下がった俺とはいえ、そこまで落ちぶれてはオルランドゥ(おりません)
。 というわけで、俺は静かにキュポンとマジックのキャップを外すのであったッッ……!! 声  『弦月彰利』 彰利 「ギャア!?だ、だだだ誰!?どなた!?」 ノート『……私だが』 彰利 「……あらノーちゃん。どしたの、こんな朝っぱらから」 ノート『少々汝に話があってな。いいか』 彰利 「ウス、構わんでござるよ」 ノート『そうか。ではまず───これからの行動についてを言おう』 これからの?なんすかそりゃあ。 黒竜王も倒して、これからぼくらの幸せロードが始まるのではないのかネ? ノート『汝が考えていることは解る。     だが、それをするためにもこれからの行動が必要になる。     それを言う、と言っているんだ』 彰利 「むう……御意。……して?行動とは?」 俺は誰にも聞こえないようにゴクリと喉を鳴らした。 緊張が確かに俺の中にある。 だって相手はあのノートだ、どんなことを言うかなんて想像もつかない。 ノート『……これから、【スピリットオブノート】に会いに行くぞ』 彰利 「……へ?」 スピ……って、なんすかそりゃあ! 彰利 「ちょっとお待ち!スピリットオブノートって……キミがここに───はうあ!?」 ノート『そう、私は今でこそスピリットオブノートだが、     空界の融合が確立する前はソードでありルドラだった。     さらに言えば融合した後もしばらくは神であり死神であった。     つまり───この世界の融合とともに、     現代の時間軸に存在したスピリットオブノートと融合することなど有り得ない』 彰利 「ぬおお……そういや次元因果率と融合因果律のこと忘れてた……。     たとえ他の精霊とか竜族とか人間とかが融合されてたとしても、     それは『同じ人物』だったからだ……。     ノーちゃんにしてみればその時は……」 ノート『そう、存在がソードとルドラとして確立されていた。     故に【精霊】と融合するわけがなく、私は私として、     スピリットオブノートはスピリットオブノートとして存在している。     元より───融合を果たしているのなら、     わざわざマスターから力を奪う必要などなかった』 む……そりゃそうだ。 ちっと考えれば解りそうなものだったのに。 ノート『そこでだ。これからエルフの森の奥地にある私の自然聖堂へ行き、私に会おう。     当然今の私は力が衰えている上に神と死神の力を持った状態だ。     純粋なる精霊体である【私】とは上手く混ざらないだろう』 彰利 「む……じゃあどうするのかね?」 ノート『私の力を忘れたか?     回復までに長い時間を要するが、不可能を可能にする力を行使出来る。     私は智英の人間化などに行使してしまったが、【私】はまだ行使していない』 彰利 「あ……なるほど。それで……って、どげなお願いごとにするん?」 ノート『どうせ力を同じくらいまでに下げなければいけないんだ、多少無茶をしてもらう。     まず私の中にある神と死神の力の全てをマスターに植えつけてもらう。そして』 彰利 「そして?」 ノート『……ふむ。あとはあちらでやってもらおう』 彰利 「あちら?───っておわぁあああああっ!!!!」 ノーちゃんが視線を逸らした先───そこに、 しっかりと神父服を着た神々しいまでのスピリットオブノートが浮いておりました……!! ノート『こちらから向かおうとしたんだがな、     考えてみれば【私】に解らないことなど無かった』 『今の私は力が衰えているからな』と続けるノーちゃんだったが、どこか面白そうだった。 虚空に浮いてる方のノーちゃんもやることは解っていると言うかのように杖を振るい、 例の如く『刮目せよ』と唱え、何も無い虚空へと杖を振り下ろした。 すると───なにもない虚空にまるで杖が突きたてられたかのように、大気が振動した。 彰利 「キャア!?な、なに!?なにごと!?」 ノート『心配するな、やることが厄介な故の大気の呼応だ。     大量のマナを消費するため、大きすぎる分を大気から吸い取っているんだ』 彰利 「す、吸い取るって……!吸い取っただけでこの振動かよ!!」 正直大気とともに地面も揺れて立ってらんねぇっすよ!? あ、あらためて……この世界の精霊さんの凄さに口があんぐりですよ……!! などと思ってた時でした。 振動が治まった───かと思うと、 虚空に浮いたノーちゃんの隣にバカデカい赤竜が出現し、 これまたバカデカい咆哮を放ちました───ってちょっと待て!!あれってば───!! ノート『赤竜王ドラグネイル。     寿命で死んだ赤竜王だが、蘇らせて寿命を延ばすことくらい可能だ。     せっかくこの世界に癒しが戻っているんだ、     東西南北の竜王の一端を欠けさせておくのは勿体無い』 ……も、勿体無いって……それだけでそこまでしますか? ノート『……無事、死神と神の力の移動も終わった。     これでソードとルドラという存在は消えた。後に残るのは───』  ピシャアッ───!! 彰利 「むわっ!?」 突如、語っていたノーちゃんの体が光に包まれた。 たまらずに目を閉じ、次に目を開けた時には─── ノート『精霊、スピリットオブノートという存在のみだ』 既に融合が済んだのか、以前のように力強い気配を発するノーちゃんが居るのみだった。 あ、つーても離れた虚空にはきちんと赤竜王さんがおります。 けど自分の存在の復活が信じられないようです。 ノート『……これでいい。マスターから諸力と魔力を頂戴してはいたが、     神と死神の力がマナの吸収を阻んでいたんだ。     だがその心配ももう無くなった。体が活力に溢れている』 彰利 「そ、そっすか。そりゃあよかっ───オワッ!?」 安堵するのも束の間、離れた虚空から赤竜王さんが飛翔してきました。 その顔に怒りはないが…… やっぱり竜王クラスの竜族ともなると、存在だけで大迫力……!! 彰利 「は、はああ……!!」 赤竜王『精霊か……貴様が我を蘇らせたのか……』 ノート『ウソを言う意味もないな。その通りだ。さらに言えば寿命も延ばしておいた』 赤竜王『何故だ。生には固執するが、それは種族の繁栄を思えばだ。     癒しの潰えたこの世界で、これ以上我が赤竜族になにを望む』 ノート『癒しならば蘇った。現皇竜王がそれを為してみせた』 赤竜王『なに───!?皇竜王だと……!?     馬鹿な!レヴァルグリードは遥か太古に滅んだ筈だ───!!』 ノート『だから【現皇竜王】と言った。     そいつはな、汝ら竜王が束になってかかっても勝てなかった黒竜王を、     たったひとりで滅ぼしてみせた存在だ』 赤竜王『な……に……!?あのミルハザードをか……!!』 ドラちゃん驚愕。 でもしょうがない……あればっかりはマジで驚くなってのが無理だ。 普通で竜王クラスのヤツらが束になっても勝てん相手なのに、 パワー二倍になった状態の彼をひとりでやっつけちまうんだもの……。 さすがのノーちゃんも驚きだ。 赤竜王『馬鹿な……真実だとしても、それは偶然が重なっただけのこと』 ノート『ほう。汝は黒竜王二体と戦って、偶然で勝てると。そう言うのか?』 赤竜王『二体……?どういうことだ』 ノート『そいつが勝ってみせた黒竜王はな、次元移動をして過去の自分と融合した。     力は二倍になり、さらに厄介な能力を得た状態。     言わせてもらえば存在するだけで【勝てるわけがない】と     確信させるほどの存在感をそいつは持っていた』 赤竜王『………』 ドラちゃんが訝しげにノーちゃんを睨む。 それを見たノーちゃんが俺に合図する……なるほど。 俺は頷いて、その場面を映像として映し出して見せた。 赤竜王『───!!……、……!!!』 ドラちゃん、やっぱり驚愕。 そらそうだ……見ているだけでも融合したミルハザードの威圧感はハンパじゃない。 それを悠介の視点で見てるんだ……恐怖しないわけがない。 赤竜王『馬、鹿な……!このような存在に戦いを挑むなど、正気では───』 ノート『ああ。だが【勝った】。それがどういった意味だか解るな?』 赤竜王『……っ……!!皇竜王……!』 ノート『その通りだ。認めるわけにはいかない、ではない。     皆その事実を知った時点で認めたのだ。     そして今、汝もその事実を認めた。     ……それを理解させた上で訊くが、反論はあるか?』 赤竜王『……いいや、一切無い。認めよう……その者がどんな存在であれ……     あのような存在に勝つのであればそれは皇竜王以外に有り得ん』 ……なにやらあの黒竜王に勝った、という時点で─── ドラちゃんの中で悠介がかなり大きな存在になったらしい。 赤竜王『それで、急だが……目通りしたい。皇竜王は何処に居る』 ノート『………』 彰利 「………」 瞳を交わすボクとノーちゃん。 頭に過ぎったのは多分、『どうしよう……』の文字。 けどノーちゃんはすぐに誰かさんの成長を望むような目つきをして、頷いた。 そして手を翻すと───一瞬で、その場に……悠黄奈さんではなく悠介が転移された。 彰利 「……あれぇっ!?」 思わずキリュっち風の驚きが口から漏れた。 何故……!?何故人間の姿の悠介が……!? ……って、もしかしてリハビリみたいなもん? それとも悠黄奈さんサイドにばっかり魂傾けてると、悠介の方の魂が危ないとか? 赤竜王『───!?なに……!?人間、だというのか!?』 ノート『そう、生粋の地界人だ。だが黒竜王に勝った事実は曲がらない』 赤竜王『馬鹿な……!数ある世界の中で最も脆弱と言われる地界人風情が……!     あのミルハザードを打倒してみせたというのか……!?』 ノート『認めるんだ、事実だ。汝がどれほど足掻こうが勝てる相手でもない』 赤竜王『ふざけるな!どのような存在でもと確かに言った!     だがそれは範疇を空界にのみと断じてのものだ!     そんなモミアゲが長いだけの地界人ごときに───!!』 彰利 「あ」 ノート『あ……』 赤竜王『……?なんだ!なにを哀れみの目を向け───』 ゴォッ───!! 赤竜王『はっ───!?』 ……合掌。 既に目覚め、ノーちゃんの腕の先から消えていた誰かさんの行動を思うと、 ドラちゃんが不憫でならなかった。 エイメン。  ドゴォッッパァアアアアアアンッ!!! 赤竜王『ルグゥォオオオオオオオオッ!!!?』 ───……。 ……。 赤竜王『す、すまん……認めよう……。貴様の強さは本物だ……』 神魔竜人ナックル一発で下界の大地に沈んだドラちゃんが、ようやっと戻ってきました。 どうやら相当効いた模様です……。 そらね、傷ついた部分とはいえミルハザードの腹を貫通するほどの威力だし。 ノート『いや、言い忘れた私も悪かった。     マスターは生粋の地界人だが、特殊な環境で育った異端的存在だ。     創造者であり、死神であり神であり竜人であり竜王でもある。     全ての世界の回路を持っていて、全ての回路の組み合わせも克服している。     ようするに……この世界で言う大賢者の域を軽く越している超越者だ』 赤竜王『竜人……竜王……なるほど。ただの地界人ではないわけか……。     竜王、と言ったが……竜化が出来るということか?』 ノート『その通りだ。     その状態になった彼を、竜族の皆がレヴァルグリードと呼ぶことを認めた。     ……汝はどうだ?今だ文句はあるか?』 赤竜王『いいや、ここまで力の差を見せ付けられれば十分だ。     これでも竜王中最強と呼ばれた我が一撃だ、認めないわけにはいかない。     だが勘違いするな、嫌々と認めているわけではない。     その地界人……いや、王は、殴った瞬間に我に癒しを流した。     さらには落下する我を風で受け止め、速度を殺して大地へと落とした。     よくは解らんがな、あれだけの威力の攻撃だったというのに殺気を感じなかった。     おかしなものだ……手加減されたことなど初めてだというのに、     まるで嫌な気分がしない。それどころか……』 ドラちゃんが、倒れている悠介を見て小さく笑んだ───気がした。 赤竜王『……いや、多くは語るまい。     それより精霊よ、種族を繁栄させるにしても我のみでは繁栄出来ぬぞ。     それはどうする気だ』 ノート『心配する必要はない。ヤムベリング=ホトマシーという魔術師が居るんだが、     そいつが研究用に保存している卵がいくつか存在する。     それを孵化させれば問題は無いだろう』 彰利 「あ、あの魔女さんたらそげなことやってたんかい……!!」 ノート『そう言うな。密漁が頻繁に行われていた時、密猟者から横取りしたものだ。     馬鹿な貴族たちの食事になるよりはずっとマシだろう』 彰利 「そらそうだけど……大丈夫なん?タマゴの管理とか」 ノート『まがりなりにも研究者だ、生命を死に至らしめることはしないだろう。     それが実験用ならばなおさらだな。……まあもちろん、     己の子孫を実験用に使われた存在がどう思うかは私の知るところではないが』 彰利 「お、俺も知〜らないっとぉ」 赤竜王『おのれ人間風情がぁっ!我が眷属を辱めた罪、万死にっ!』 ノート『先に言っておくが、新たな皇竜王の意思では食事以外の殺しはご法度だ。     人は殺すべからず。だが、領域を侵した相手には遠慮するな、とのことだ』 赤竜王『くっ……!この怒りに耐えろというのか!これは竜族に対する人間の侮辱だぞ!』 ノート『なんだったらもう一度マスターを起こしてみるか』 赤竜王『解った、それはやめろ』 即答でした。 赤竜王『まあいい、よくよくと考えてみれば今は眷属たちが存在することを喜ぶべきだ。     だが───グルグリーズの方はどうなのだ?     あやつも種族の滅亡が近かった筈だ』 ノート『ヤムベリングの研究地下室にあるのはなにも汝の種族の卵のみではない』 彰利 「あー……」 その一言でなんだか全てが解決しちまいそうだった。 強襲……ヤムベリング城。そのオペレーションが今開始しようとしていた。 彰利 「つーか悠介どうする?     ドラちゃん殴った途端に人に戻って動かなくなっちゃったんだけど」 赤竜王『誰がドラちゃんか!!……だが確かに不安ではある。     王として認めたが、王がここまで耐久力が無くてどうする。     やはり地界人にレヴァルグリードの名は重すぎ───』 彰利 「ちなみに竜化すると、     さっきキミを殴った神魔竜人状態の10〜20倍の力を発揮しますよ?     融合したミルハザードでさえ、     手も足も出ずに道端の蟻よりも無抵抗なままにボッコボコでしたから。     なんならぁ〜〜……ちょっくらタイマンで試してみます?キミ」 赤竜王『じゅっ……十から二十倍……!?あ、ぐぐ……!!     ……赤竜王の名を担って早幾千年……。     武力で脅迫まがいのことをされたのは初めてだぞ……』 そらそうでしょうね。 でも現実なんですドラちゃん。 ノート『マスターは軽いリハビリも兼ねて起こしたんだが……まだ少々早いらしい。     今暫くは悠黄奈の状態でいいだろう』 彰利 「そか。んで……いつごろ完全な悠介になりそうかね?」 ノート『この調子ならばそう遠くない、安心しろ』 彰利 「おお……御意に」 それならばその間にたっぷりメイドさんのお仕事を叩き込むとしませう。 どうせいつでもスイッチ切り替えるように 男になったり女になったり出来るようになるんだから。 彰利 「よっしゃ、んじゃあヤムヤムの工房……ウェルドゥーン山に向かいますか」 赤竜王『なに……?そいつは我の根城に寄生しているのか』 彰利 「寄生って……まあ合ってるっちゃあ合ってるけど」 赤竜王『そうか……ククク……!どうしてくれようかそのヤムベリングとやら……!』 彰利 「あ、緑のおっちゃんも連れてく?自分の眷属くらい自分で迎えたいだろうし」 ノート『……それを言ったら全ての竜王を呼ぶことになるが?』 彰利 「面白そうだ、是非やろう」 ノート『……まあ、いいが』 原中魂発動。 面白いことはやはり全力でやらなくては。 ───ということで。 竜王のみなさまを連れて、僕はウェルドゥーン山へ行くことになったのです。 ───……。 ……。 さて───そんなこんなでウェルドゥーン山。 四竜王『ギシャアァアアオォオオンッ!!!!』 ベリー「キャーーーーーッ!!!?」 当然絶叫されました。 そらそうだ。 ベリー「ちょちょちょっとツンツン頭ぁっ!!これどうなってるの!?ねぇ!!」 彰利 「聞こえません聞こえません聞こえません!!     あーーー聞こえません聞こえません聞こえません!!」 ベリー「聞けぇええーーーーーっ!!!!」 赤竜王『我が眷属らを返してもらおうか……』 緑竜王『潰えるのみかと諦めた我が種族が持ち直せるのだ……』 蒼竜王『我らは栄えてはいるが、だからといって研究される眷族を見過ごせぬわ……!』 黄竜王『早くしろ小娘……!消されたいか……!』 ベリー「え?えぇ……?ちょ、ちょっとツンツン頭!こいつらなんて言ってんの!?」 彰利 「それぐらい解りなさい!……えーとですね、タマゴ返せだって」 ベリー「うぐっ……な、なんのこと?タマゴなんてわたし知らな───」 ズシシシシシシシィイイイインッ!!!! ベリー「うわきゃあぁああああっ!!?     な、なになに地震っ!?ここらへんで地震なんて今まで一度も───」 彰利 「ちなみにこの工房、現存する竜族全てに包囲されてるからね?     滅多なこと言って激怒させない方がええよ」 ベリー「あわ、あわわわわ……!!」 無駄に広い工房に四体の竜王……転移して無理矢理入ったわけだが、 突如現れて突如咆哮くらわされれば誰だって叫びますよね。 彰利 「ちなみにこんな風に思うのは三度目です。俺、夢でこのシーン見たよ」 デジャヴュっていうんスかね? なにはともあれヤムヤムがこうやって叫ぶ景色を夢で見たのです。 ……俺の夢って案外ドス黒い? まあ黒だからいいけど。 ベリー「わ、わかった、解ったわよぅ……えーと……工房の外に出せばいい?」 彰利 「空中に出して割ったら殺されるよ?」 ベリー「そんな恐ろしいことしないわよ!!エクスカリバー一発じゃ死なない相手に     わたしが挑んだって勝てるわけないでしょ!?」 彰利 「解ってるなら結構!んじゃあどうぞ」 ベリー「うう……研究中だったのに……」 泣きそうな顔で渋々と式を繰るヤムヤム……さすがに不憫な感じもしたが、 こればっかりはもうさすがにどうしようもないっつーかね……世界平和のため? これで返さないとか言ったら、全面戦争とか始まりそうだし。 もちろんヤムヤムVS全竜族───……相手にならんなこりゃ。 ベリー「……はい、これで全部よ。     黄竜族が四、蒼竜族が三、緑竜族が五つ、赤竜族が……二十三」 彰利 「……赤竜族滅茶苦茶多くない?」 ベリー「だって赤竜族の住処がここ、ウェルドゥーン山なんだもの、当然じゃない」 彰利 「あ……そういや」 それもそうだ、ここに沢山のタマゴが落ちてて、 しかも密猟者が取りに来るってんなら……捕らえるのは案外他より簡単か。 と納得したところで、翼のはばたく音が聞こえ、それが遠ざかってゆく。 どうやらそれぞれの竜たちがタマゴを持って帰っていったようだ。 彰利 「さて……あとは竜王サマたちだけど」 赤竜王『ふむ……どう出たものか』 彰利 「オイラの転移でなんとかしましょ。来た時と一緒一緒」 赤竜王『ところで貴様は何者なんだ?見たところ、普通の人間ではないようだ』 彰利 「悠介……ああえっと、キミたちが皇竜王って呼んでる男の親友だ。     職業は死神兼アンリミテッドブラックオーダー。黒のことなら俺にお任せ。     つーわけで自己紹介も済んだし、ほい転移」 もはや慣れ親しんだ月空力を発動させ、工房の外へと竜王の皆様を転移させた。 あ、もちろん転移した先にタマゴがあった〜、なんてヘマはしませんのでご安心をば。 【ケース06:昏黄悠黄奈/愛……やっぱ忘れてますよね?】 ふと気づくと、わたしは花々の咲き乱れる草原で眠っていた。 悠黄奈「あれ……?」 辺りを見渡してみる───けど、そこは自分で決めた家の中ではなく、やっぱり草原。 いや、草原というよりは自然に出来た花壇のような場所。 見える景色は空中大庭園のまま……だけど、いつの間に……? 悠黄奈「……?夢遊病、というものでしょうか」 よく解らない。 でも……うん、お花の精霊に導かれたとでも思っておこう。 悠黄奈「ニンフさん、お願いします」 わたしの体を受け止めていたために折れてしまった草花。 そこから体をどかし、ニンフさんに直してもらった。 折れていた草花はピンと空に向かって立ち、吹く風にそよがれた。 それを見るとなんだか酷く安心した……うん、いい気持ちだ。 悠黄奈「初めての朝ですけど……朝ってなんだかいいものですね。     新鮮な空気、広い空と綺麗な景色を見ているとなんだか……」 …………。 悠黄奈「な、なんだか……」 ……心の中で、景色がゆっくりと回った。 イメージは岩の上に立って手を広げる自分。 そんな自分を中心に、景色がゆっくりと、ゴォオオオ……と音を立てて回転するような…… 悠黄奈「フ〜〜〜ア〜〜〜ムア〜〜〜〜〜〜〜イ!!!!」 ……気づけば叫んでいました。 悠黄奈「はっ!?わ、わたしは何を……!!」 いくら彰利さんに教わったこととはいえ、あまり良い行動とは思えなかったのに……! 中井出「はっはっは、面白いお嬢さんだ。何をもなにも、フーアムアイだろ」 悠黄奈「うあっ!!な、なななな中井出さん!?見ていたんですか!?」 中井出「見てたっつーか……撮ってた。はっはっは、予備など持ってて当然」 スチャリとビデオカメラを持ち上げる中井出さん。 ……どうしてだろう、疲れとともに『流石だ』の一言が頭に浮かんだ。 中井出「まあそれはそれとして。なんだっての、こんな朝早くに」 中井出さんが腕時計を見て言う。 どうやら起きたばかりのようで、喋り方が少しだけ重く感じられた。 悠黄奈「いえあの……自分の部屋で眠っていた筈だったんですけどね、     気づきましたらこのお花畑で眠りこけていました」 中井出「夢遊病か……やるね」 悠黄奈「そこで尊敬を込めた感心の眼差しで見られると複雑すぎるんですけど……」 中井出「いや、恥じることはない。     けど『病』ってついてるだけあって、どこか悪い証拠らしいから気をつけて」 悠黄奈「そ、そうなんですか……ありがとうございます。気をつけてみますね」 中井出「うむ」 なんだ、少し苦手意識が先入観としてあったけど、やさしい人みたいだ。 悠黄奈「……中井出さんてやさしい方なんですね」 中井出「………」 悠黄奈「……?あの、中井出さん?」 中井出「………………ぐー」 悠黄奈「え───わっ!た、立って目を開けたまま寝てる!     ……えぇっ!?今までの全部寝言だったんですか!?」 中井出「は、はっはっは……よせよダニエル……!お、俺にそんな趣味は……!     や、やめろって……!いくら男しか居ない訓練場だからっておま───     いや!ほんと間に合ってますから!……人を!人を呼びますよ!?     イ、イヤァアアアーーーーーーーーッ!!!!……ハッ!?」 突然、がくんと首を揺らして目をパチクリする中井出さん。 どうやら起きたみたいですけど……すぐに辺りを見渡すと、長い長い溜め息を吐いた。 中井出「はぁ……やべぇなぁ……。まさか今回は俺ンところに来るとは……」 悠黄奈「……はい?今回、とは?」 中井出「へ?あ、ああ……悠黄奈ちゃん居たんだ。     あー……えっとね、今回、ってのは……夢だよ、原中に寄生してる夢」 悠黄奈「……?あの、言っている意味がよく───」 中井出「原中生男子にはね、     『ダニエル』っていう外国人男性(モーホー)の夢が寄生してんの。     中学ン時にやった『超絶ミラクルダンディ・コックリーニョさん』の呪いでね」 悠黄奈「コ……?」 超絶ミラクルダンディ・コックリーニョさん……なんでしょうかそれは。 中井出「……こっくりさんのダンディ版。ちなみに彰利も襲われたみたいだぞ。     以前見せてもらった映像の中に過去の物語があったんだけどさ、     その中でちゃんと寝言でダニエルって言ってたから間違いない」 悠黄奈「は、はあ……」 中井出「ちなみに何故呪われたかというとだな……当時の俺達は無茶しててさ。     馬鹿なことやり続けて、ついに激怒した担任教師に居残り命じられたわけ。     でもまあ……その当時の原中メンバーは俺と彰利で保ってたようなもんでさ。     まあそりゃそうだろうな、     元々こんな風になったのは彰利との出会いがきっかけだったんだし」 悠黄奈「きっかけ……ですか」 中井出「お?興味ある?」 悠黄奈「はい、人並みには」 中井出「人並みね……ま、いいや。んじゃあちょっと話してやりますか。     これはな、俺と彰利が中学の入学式をサボった先で     出会ったことから始まったことだ」 ───……。 【ケース07:中井出博光/少年の日の思い】 ───当時、まあ小学の自分から一年成長しただけっていう、まだまだ悪餓鬼の自分だ。 当時はやりたいことなんて決まってなくて、 きっと自分は周囲に流されるままに生きていくんだと思ってた。 まあそこんところは今もあまり変わってない。 校長 『で、あるからして。今日から中学生になるキミたちは───』 ───当時の自分は……まあやっぱり糞餓鬼だった。 大人になったからなんだ、ってのが口癖みたいなもので、 よく学年があがるごとに言われる、 『大人になったんだから』って言葉が嫌いだったのを今でも覚えてる。 ……もちろん、言ってくれる人が仕事づくめだったからこその反発だ。 今思えば情けないったらありゃしない。 けど、そう言うからには当時は情けないだなんて思ってはいなかったわけで。 小学の頃からこういう時には顔も見せなかった親に恥をかかせてやろうと、 わざと堂々と校長の話の途中に体育館を出て行ってみせた。 もちろん後で散々言われたが、 親連中はそれが俺の強がりだって知ってたから怒ることはせず、 ただごめんなさいと謝った。 後になってそれがどれだけ馬鹿なことだったのかって解ったけど、 そんなものは後の祭りだ。 両親はとっくに他界しちまって、俺は今、じいさんと二人暮しをしている。 その人が自分の祖父だって気づいた時から、好きでも嫌いでもなかったじーさん。 けど、今は自分よりも好きだ。 俺の唯一の肉親であり、支えてやりたい人だから。 あまり喋らない方だけど、一度───たくさん話してくれたことがあった。 どんな時かって?……俺とじいさんがふたりっきりになっちまった時さ。 笑った顔も怒った顔も見たことがなかったじいさんが、 俺の頭を抱きしめながら泣いたんだぜ? こんな老人じゃあ博光になにもしてやれないが、死ぬまでは一緒に居てやるって言って。 俺は、その時のじいさんのやさしさ以上のやさしさを知らない。 だからこそ好きになった。 支えてやろうって思った。 正直……晦や弦月に親近感を覚えるのは、身近に死があるからかもしれない。 じいさんは結構年いってるから。 そのじいさんが居なくなっちまえば俺は支えるべき恩人を失って、孤独になる。 まだ世界の泳ぎ方も理解してない糞餓鬼が、いきなり海へ放り出されるんだ。 溺れれば死ぬだけ。 それでも今まではじいさんが居たから乗り越えられてきた。 支えてたんじゃない、支えられてたんだって気づいたのは……情けないことに最近だ。 え?お袋と親父の死因?……こういう時ってのは事故ってのが相場なんだろうな。 そうだ、って言ったら安心するか?……残念、死因は殺人だよ。 強盗だったんだとさ。 しかも、近所のオヤジさん。 何度か遊んでもらったことがあるくらいに仲良しだった。 いや……仲良しだと思ってた。 ある日さ、まあ…… そのオヤジさんは俺の両親が働きづめで金溜めてること知ってるからさ。 だから金が欲しくてある日それを決行した。 けどさ、いざ家に侵入してみると───両親たちは家ン中で寝てたんだよ。 急に入った休みだったんだろうな、オヤジさんもかなり驚いただろうよ。 でも……本当に驚いたのは俺の両親の方だ。 目を開けてみれば、念のためと持ってきていた包丁を持った近所のオヤジ。 邪魔されないようにって締め切ってた鍵は破壊され、 近所のオヤジだけが中に入ってるって知れば……いくら親しかったとはいえ、 結論はそこに行き着くしかない。 俺の両親は警察に通報しようとした。 けどそれがマズかった。 興奮と驚愕、緊張と焦りに包まれたオヤジは───焦ったあまりに包丁で親父を刺した。 血が飛び散って、当時俺がよく遊んでたカードゲームを染めた。 なんで知ってるか?そのオヤジが警察に証言したし、 実際カードは血で固まって一枚一枚きることも出来なかったから。 まあひとり殺しちまえばってやつだったんだろうな。 興奮したオヤジは、泣き叫んだお袋まで殺した。 そこでようやく冷静になって、けど自首することもなく逃走。 まあ血まみれの包丁を持ちながら走ってりゃ捕まるもんだけど、あっけないものだった。 あっけないものだったけど───そのオヤジが盗もうとした金額は、 親父やお袋の命に見合うだけの価値があったのかといえば……そんなことはなかった。 あるわけがない。 結局俺が中学から帰ってきた時、全ての景色は血で彩られていた。 俺は叫ぶこともしないで、ただその景色を目に焼き付けて…… あいつと出会ったことで楽しくなる筈だった中学という生活を、 絶望という場所から歩き始めた。 ───……。 けど……立ち直りってのは案外早いものだった。 なにがきっかけだって言われれば……正直よく解ってない。 気づいたらじいさんの家で住むことになり、俺は肩身の狭い思いをしながら生活を続けた。 なんで肩身が狭いのかって?……ああ、それがさ、情けないことなんだけど…………その。 じいさんはさ、ひとりっきりだったんだ。 え?ばあさんは居なかったのかって? 言ったろ、ひとりっきりだって。 ばあさんはもう他界していて、俺はあまり喋らないじいさんと暮らすことになったんだ。 それがさ、片身が狭い理由だよ。 なんで、って……ここまで言えば解るだろ?  ……ばあさんはさ、俺をかばった所為で死んだんだよ。 いつだったっけな───そう、確か小学ン頃の夏休みだ。 両親と住んでいる場所よりは相当原中に近いじいさんの家。 そこに両親と一緒に遊びにいったんだよ。 その頃からじいさんは……うん、人と話すのが苦手みたいにしててさ。 俺が近づいても表情ひとつ変えずにひとりで将棋してるわけよ。 こう……パチン、パチン、ってさ。 ばあさん……そんなじいさん見ていっつも笑ってた。 その日はさ、家族でじいさん家に泊まっていこうってことになってさ。 けどそれは結局何日も泊まっていこうってことになったんだ。 なんでって……まあ、親の仕事上ってやつ。 そんで俺は勝手もなにも知らないじいさん家で数日過ごすことになって…… うん、ばあさんの笑顔にようやく慣れてきて、 俺も笑顔を向けるようになった頃だったかな。 その場所では珍しいくらいの地震があったんだ。 ドカンッ!てくらいのさ。 俺びっくりして尻餅ついちまってさ。 ……今思えば、どうしてその時頑張って立ってられなかったんだって思うよ。 まずさ、ゴト、って音がした。 なんだ、って思って見た時にはそれが最後。 元々ボロい作りの家だったし、街に建ってるにはあまりに不恰好で古臭い家だったから。 そこの天井がさ、崩れたんだわ。 ……ん?ああ、いやいや。メキメキなんて漫画みたいな音、鳴る暇もなかったよ。 本当に一気だったんだ。 俺はその時、自分が死ぬんだなんて全然思わなかった。 だってそうだろ?怖いものなんて知らずに生きてきたんだ。 寂しさを紛らわすためにいろいろやってきたけど、 俺が教師や近所の人に怒られても両親は『一緒に居てやれなくてごめん』って言うだけだ。 だからこそじいさんとばあさんに俺を預けて仕事に行ったんだろう。 結局、その夏休みは不器用な父と母からの不器用なりのプレゼントだったんだと今は思う。 ……それは純粋に楽しい日々だった。 じいさんはともかく、ばあさんは笑顔がよく似合う人だったから。 笑った瞬間に出来るシワが好きで、よくいじくっていた。 けど───どうしてだったのかな。 迫ってくる天井を見てさ、 俺……さっさと逃げればよかったのに、体を動かさずに呆然とそれ見てたんだわ。 天井の次に見たそれをさ、ずっと。 ……なんだと思う?  ……ばあさんだよ。 腰が痛いとか言ってたのにさ、必死な顔で……泣きそうってくらいの顔で走ってきたんだ。 なんでそんなに必死なのかなって俺思った。 どうしてそんなに急いでるの?って訊きそうになったくらいだ。 はは、ばかだろ? でもさ、その時の俺は……ほんとにそんなこと思ってた。 だってさ、自分が死ぬだなんてこれっぽっちも思ってなかったんだ。 死ぬ、なんてことの意味だって知らなかったんだ、当然だよな。 でもさ、それでもばあさんは走った。 俺もやっぱりなんで?って訊きそうになった。 でも体は動かないからさ、それに習うように口も動かなかった。 けど頭だけはずっと懸命に走ってくるばあさんの姿を記憶してたよ。 だって……ばあさんはもう泣いてたから。 なにが悲しくて、なにに必死になって……何をしたくて走ったのか。 そんなことも解らなかった俺だったけど───ようやく解ったんだ。 ばあさんがなんのために走ってたのかって。  ───ばあさんはさ、俺を護りたかったんだ。  誰でもない、ようやく自分に笑顔を向け始めてくれた、ハナタレ小僧をさ。 それが解った時、ぐしゃって音がした。 その音がどうしてか悲しくてさ。 視界の先の事実を確認する前に……俺、泣いてた。 涙がさ、止まらなかったんだ。 どうして、なんて言葉はもう出なかった。 ただごめんなさいって泣いて謝ってた。 熱い血液を流しながら、それでも俺を包むように抱きしめてくれていたばあさんに。 もう動かない、笑ってくれないばあさんにしがみつきながら。 ……それからのじいさんは、なんだか魂抜けたみたいにボーっとしてた。 だから俺はばあさんが死んだあの日からずっと、じいさんの家に通うようにしてた。 じいさんは俺を見てもなにも言わなかったし、恨み言を言うこともなかった。 ただ俺の頭を撫でて、また何も無い虚空を見てボーッとするだけだった。 ……そんなじいさんを見るのが、たまらなく悲しかった。 うん、特別仲が良かったわけじゃない。 言った通り、ばあさんにでさえようやく懐き始めてた俺だったんだ。 話したこともないじいさんに懐くわけがない。 それでも悲しかったから、俺は何度も何度もじいさんの家へ通った。 電車賃だって馬鹿にならないのに、親は黙って俺のやることを応援してくれた。 そして……ある日。 確か俺が小学五年になったあたりだ。 ようやくじいさんは俺の顔を見て、初めての笑みを俺にくれて……そして。 初めて俺の目を見ながら頭を撫でてくれて……  『お前の所為じゃないよ、博光……』 そう言って、やっぱり初めての涙を流して……泣いた。 ……その言葉の意味、解るのに結構時間かかってさ。 その時一緒に泣いてやれなかったんだけど、解った時……クラスメイトの前で泣いてたよ。 じいさんはさ、ああやって俺がじいさんのところに通ってるのは、 ばあさんのことへの俺の罪滅ぼしだって思ったんだと思う。 でも……泣いちまったってことはさ、 心では思ってなかったとしても内側では少なからず思ってたんだと思う。 それを理解してからかな、じいさんの家に行くのが少し悲しくなっちまってさ。 気づいたら……もう行かなくなってた。 だから正直、両親が死んだ時にじいさんの家に貰われた時はどうしようかって思ったよ。 それでも……うん、一緒に居てくれるってじいさんの言葉はやっぱりやさしかったからさ。 けどまあ俺を護るためにばあさんが死んだことは事実なんだ。 だから肩身が狭い思いを───って……あ、悪い。話逸れたな。 えーと……悪い、入学式の話からかなり脱線したな。 ……え?俺っていうヤツのことが少し解ったからいい? ───ああ、ま、いっか。 じゃあ話すぞ?─── Next Menu back