───原中の原中による原中のための過去とどこまでも馬鹿な黒───
【ケース08:中井出博光(再)/迎春。我らホビーズ・ファミコンゼミナール】 ───あー……どこまで話したっけか。 まあ適当でいいな。 体育館から出た俺はさ、 多分しめしめって顔で渡り廊下を抜けて校舎に向かったんだと思う。 けどその先には先客が居た。 誰って……そりゃもちろん、こんなことを堂々とやるのはあいつしかいない。  ───弦月彰利。 俺の中学初めての友達にして、のちの弦月一等兵である。 であるのだが───そいつは、 やはり当時の俺からしてみれば異質な雰囲気を醸し出していた。 感じるもの───まあ第一印象ってやつだけど、それは様々だ。 中にはもちろん親近感みたいなものもあったけど、それの意味を知るのは大分先だ。 なにやらモシャモシャと食してるそいつを俺は何気なく見て、 目が合った途端にしまったと思った。 だってそいつの目はなんだか普通じゃなかったから。 この世全ての不幸を背負ってますって大げさなことでさえ、 それが現実だって理解させるくらいの説得力を持ってるような、そんな目をしていた。 さすがにシャレにならないだろ?だって中学一年だぞ? とまあそんなハナだったわけだが、そいつは食っている物体を俺に渡してきた。 それは───弁当だった。 何故弁当?そう思ったが……まあ朝抜きだった自分としてありがたいものだったわけで。 で、それを食してしまったわけだ。 ようするに半々。英語で言うとフィフティフィフティ……ってちょっと違うか。 半分にするなら別に100を対象にしなくていいわけだし。 え?ああ、また話逸れてたな。 まぁでも、それが始まり。 俺と彰利はこれがきっかけで……まあ、知り合ったわけだ。 俺が晦を苗字で呼んで、彰利を名前で呼ぶのはそんなところからだ。 で───早速起きた問題がコレ。その名も『第一印象はインパクト』事件。 彰利の弁当(と、俺は思っていたもの)を食し終えた俺と彰利は、 ポムポムと腹を叩いて歩きだした。 どうもこうもない、メシ喰ってる最中に話してみたら、なかなか面白いやつだったのだ。 うん?ああいや、べつにそれがインパクトってわけじゃない。 問題はこっからだ。 彰利 「フフフ……中井出よ。体育館で挨拶をしていた教育実習の男は見たか?」 中井出「いきなり中井出って呼び捨て風かよ……堂々としてるんだか馴れ馴れしいんだか」 彰利 「なんだとキサマ、中井出くんって呼ぶぞ」 中井出「……すまん悪かった、お前にそう呼ばれるのって気色悪いわ」 彰利 「会って10分も経たずに悟られてんなぁ俺……。     まぁいい、その教育実習生だがな───」 中井出「ん……確か劉堂達樹、とかいったよな。そいつが?」 彰利 「実はヅラだ」 中井出「なにっ!?マ、マジか!?」 彰利 「大マジだ。そこで、ここで俺と貴様がどっちが先か、     長年の因縁にケリをつけようと思う」 中井出「……会って10分も経ってないって言ったの誰だよ」 彰利 「因縁に時間なんて関係ねぇ!」 中井出「お前が長年って言い出したんだろが!」 彰利 「というわけでヅラを暴こう。ジャンケンだ」 中井出「……お前って人の話聞かない上にすげぇこと平気で言うのな」 滅茶苦茶な行動をするヤツは思考も滅茶苦茶なわけだ。 もちろんそれは、同じく入学式をサボった俺にも言えることで。 それでもまあ……気が合うか合わないかで言われりゃ合う方だった。 俺自身、声を高らかにしたのなんてどれくらいぶりかって思うほどだ。 ……ばあさんが死んでから数年。 暗い気持ちは何処かへ置いてきたつもりでも、 俺を助けようと懸命に走ってくるばあさんの姿は焼きついたまま剥がれない。 そんな俺だから、何処かで周りに遠慮してる感はあった筈なのに─── 中井出「………」 不思議だなって思ったのはその頃。 結局、こいつの苦労の前では 俺の苦労なんて小さなものだったんだって気づくのももっともっと先のこと。 それでもそんな、苦労感が俺の苦労を一緒に濁してくれてるのかもしれなかった。 だからこそ……彰利と一緒に居るときの俺は、酷く楽だったのを覚えてる。 彰利 「ホレ、ジャ〜ンケ〜ンホイっとゲェエエーーーッ!!!!」 でさ、いきなりの掛け声に慌ててグーを出したんだ。 対して彰利は……チョキ。 この時の彰利の『ゲェエエエーーーーーッ!!!』って声は今でも覚えてる。 俺が聞いた、彰利初の『ゲェエーーーーーッ!!!』だったわけだから。 ───……。 さて……そっからがこの話、第一印象はインパクトの真相だ。 ほら、彰利って妙なところで諦め悪いだろ? けどそれってゲームとか遊び気分のものだと余計になんだよ。 ムキになるっつーのかねぇ。 だからこそ───まああんなことになったんだと思う。 とまあここからはちょっと彰利の記憶も混ぜていこう。 あいつはあいつでいろいろあったみたいだし、 俺もあいつの記憶の中の映像見て初めて知ったこともあったわけだし。 【ケース09:弦月彰利(記憶)/愛の泉の溢るる壷】 どがしゃああーーーーんっ!! 彰利 「とんずらぁあーーーーっ!!!!!」 教師 「なにっ!?こ、こらぁああああああっ!!!!!」 中学一年の初期……入学式。 アタイは退屈に我慢出来ずに逃走を実行!! 悠介とアイコンタクトした上で、教師を撒いて体育館を抜け出した。 彰利 「む!」 ???「んあ?」 が……体育館のドアを抜け出した先には、既にひとりの男が走っていた。 なんと……俺より先に逃げ出していた武士が居ようとは……。 ???「ん……ま、いいや。おいお前、ちっと付き合え」 彰利 「あ〜〜〜ん?」 男は馴れ馴れしく声を掛けてきた。 俺はどう対処したもんかと思ったが…… 抜け出したはいいが、暇ということには変わり無い。 彰利 「なんぞね!くだらんことだったらただでは済まんぞ!」 ???「えっらそうなヤツだなぁ。いいから来いって。お前もサボリだろ?」 彰利 「いかにも!!」 ???「いや……マジで偉そうだなお前……まあいいや、俺は中井出博光。お前は」 彰利 「我輩、弦月彰利なり。苦しゅうないぞ」 中井出「……初対面のヤツにここまで偉そうにされたの初めてだぞ俺……」 ……それが。 のちに中学時代の究極のクラスメイトになる中井出博光との出会いだった。 ───……。 ───……原沢南中学・校舎裏。 何度目かになる中井出との初対面。 未来を開くことになるその時間軸にて、 俺は中井出とともに何度目かの自分の入学式をサボっていた。 つーかメシに誘い、メシで釣り、やがて友の第一歩を進んでいたのだ。 彰利 「これ、中井出よ」 中井出「なんだよ……つーかさ、お前ってなんで奉行語ばっかなんだ?」 彰利 「そりゃ俺が偉ェからよ」 中井出「偉いんじゃなくて『偉そう』なだけだろが」 彰利 「いや、照れるな……」 中井出「褒めてねぇって……で?なんだよ」 中井出が疲れたような視線を贈りながら先を促す。 アタイはムフウと息をついてから中井出に語りかけた。 彰利 「あのさぁ、貴様とこうしてバックレるのも何度目になるのか知らんが……。     いい加減、いい暇潰しくらい考えてほしいんだが?」 中井出「何度目になるか、って……初対面だが」 彰利 「お前の顔も見飽きたよ……」 中井出「……あのさ、なんで俺、初対面のお前にそこまで言われにゃならんの?」 彰利 「そりゃお前……なんでだ?」 中井出「俺が訊いてるんだが」 むう、おかしい。 こんな筈では……というか、アタイとしてはかなり疲れてるんだが。 何度目だっけ?歴史繰り返すの。 いい加減、ゼノに勝ってのんびりしたいんですがねぇ……。 彰利 「これ!中井出よ!」 中井出「だから、なんだよ……」 彰利 「余は退屈だぞ!裸踊りをせい!」 中井出「するかぁっ!!どこまで偉そうなんだてめぇ!!」 彰利 「地の果てまでも」 中井出「うああ……ヘンなヤツと遭遇しちまったよぉ……大後悔だ……」 彰利 「キミさ、普通本人の前でそういうこと言いますかね……」 中井出「言ってやらねぇと気が済まねぇよ……」 彰利 「そうかえ?まあいいコテ、貴様にひとつ提案があるんだが」 中井出「提案?なんだよ」 彰利 「それはだな……」 ───……。 ───……でんでげでんでげでんでげでんでげでんでげでんでげデゲデデデ〜ン♪ でんでげでんでげでんでげでんでげでんでげでんでげデゲデデ〜ン♪ 頭の中でファイヤーエムブレムのバトルソングが鳴る。意味は無い。 俺と中井出は入学式に燃ゆる体育館へと戻り、その中の景色を眺めた。 確か一緒だった筈だ。 そう……劉堂達樹氏がこのガッコに教育実習の研修生として訪れる日は。 見れば、今まさに研修生紹介をやっている。 狙いは……彼奴のヅラ!! 中井出「お、おい弦月……なにする気なんだよ……」 彰利 「シャラップ!中井出よ、俺のことは彰利と呼べ!     貴様に弦月なんぞと呼ばれるのはくすぐったいわ!!」 中井出「なんで命令されてんだ俺……」 彰利 「それよりもじゃい。いいか中井出よ。     俺の情報網からすると、今自己紹介した劉堂という研修生……ありゃヅラだぜ」 中井出「そ、そうなのか!?」 彰利 「ああ、間違い無い。というわけで暇潰しだ。ヤツのヅラを外す!!」 中井出「ま、マジかてめぇ!!ンなことしたら無事じゃすまねぇぞ!?」 彰利 「キミ、馬鹿かね?リスクに怯えてちゃ自由は得られねぇんだぜ?」 中井出「…………俺、初めてモノホンの馬鹿に出会ったのかも……」 彰利 「馬鹿とはなんだコノヤロウ!!」 中井出「馬鹿にしてるんじゃなくてホメてるんだよ。     そこまで言い切れるヤツが居るなんて初めて知った。世界って広いなぁ」 彰利 「フッ……俺ゃあこれでも小学の頃、『教師からかい男』と名高い男だったのだ」 中井出「小学の頃から禄な性格じゃなかったわけな……」 言われてますねぇ俺……。 彰利 「というわけで……ジャンケンだ!」 中井出「ほ、本気でやるのか!?やめたほうがいいって……!!」 彰利 「なにをいまさらたわけたことを……。ここまで来てやめるヤツは半端モンだぜ?」 中井出「う……」 彰利 「ホレ、ジャ〜ンケ〜ンホイっとゲェエエーーーッ!!!!」 中井出……グー アタイ……チョキ 中井出「…………お前の漢、見せてもらうぜ」 彰利 「グ、グムゥウウーーーッ!!!!」 ちょいとばかしシャレにならん状況の中、アタイは叫ぶことしか出来なかった。 つーか毎度毎度の歴史で俺が負けてる……なんとかなりません? ───……。 やがて入学式が終わり、新入生が教室に案内される頃。 ───ダタタタタッ……ザシャア!! 劉堂 「うん?」 彰利 「っ……!!」 アタイは職員室に向かっていた劉堂教諭に追いつき、その歩を滑りながら止めた。 そしてまず一礼。 彰利 「押忍!!胸ェ貸していただきます!!」 劉堂 「え……」 彰利 「覚悟ォオオオオオオオッ!!!!!!」 アタイは全神経を集中させ、ただ一点のみを目指して地を蹴った!! 走れ……走れ走れ走れ!!速く!!なによりも速く!! 劉堂 「───!!」 アタイの気迫に劉堂教諭がその目的に感づいたらしい。 アタイの緊張と気迫のみだった筈のこの場に、新たな緊張と気迫が溢れた。 劉堂 「思い上がるな(わっぱ)
ァアアアアアア!!!」 彰利 「いざぁああああああっ!!!!!」 馬ァ鹿めぇ!! 家系の身体能力に敵うわけがねぇだろうが!! 今すぐその輝きで、この薄暗い廊下を照らしてくれるわぁっ!! ドパァンッ!!! 彰利 「はぶぅっ!!?」 ───景色が暗転。 劉堂教諭は俺が伸ばした手に合わせるように掌を伸ばし、顔面に掌底をくれやがったのだ! 懸命に手を伸ばした俺だったが……ぬう!リーチの差が出おったわ! だが───まさか……そんな馬鹿な!! 負ける……!?この俺が!? ───あっちゃならねぇそんなこと!!! …………ダンッ! 劉堂 「っ!?」 彰利 「ぐ……くくかかか……!!」 フラつく足を床に押し付け、なんとか持ち堪える。 彰利 「ぐっ……ま、まだだ……!!!まだ終わりじゃないぞ……!!」 劉堂 「ば、馬鹿な……なにが貴様をそうまで……」 彰利 「へへっ……お、俺にも解らねぇ……。     だ、だがよ……俺の心が言ってるんだ……。     こんなところで負けちまったら……本当の戦いでも負けちまうってな……!」 劉堂 「いや、それ以前に何故俺を狙う」 彰利 「面白そうだから!!他意は無い!!」 劉堂 「………」 その後、俺は研修生の劉堂の『輝きを守る漢の力』に圧倒され、ボコボコにされた。 【ケース10:中井出博光/馬鹿者どもが夢のあと】 彰利 「グビグビ……」 中井出「いや……マジですげぇよお前。教師を目の前にしても向かっていけるなんて」 彰利 「フッ……俺はやるとキメたらやる男だ」 中井出「だろうな……実際目の前で見せられちゃ信じないわけにはいかねぇよ……」 彰利 「フフフ……」 中井出「これで、廊下に立たされてなけりゃあ素直にワクワクできたんだけどなぁ……」 彰利 「わざわざ巻き添えくってくれるなんて、キミってば友達甲斐があるねぇ」 中井出「やかましい」 実に虚しいことだが、俺も共犯として立たされることになった。 入学初日に立たされるなんてカッコつかないが───なんか、な。 こいつの近くに居るとカッコがどうとかが馬鹿らしくなったんだ。 なんつーかな、自分らしく振る舞わなけりゃ損するっていうのか。 ともかく俺は、彰利が水入りバケツを持ちながらケタケタ笑うのを横目に静かに笑ってた。 自然な笑みってのは……うん、随分久しぶりだったよ。 ……とまあ、そんな入学初日の事件からして周りにヘンな目で見られるのは当然のことで。 俺と彰利はそんな頃から異質な存在として学校側とクラスメイツたちに異形視されていた。 そんなある日、彰利のヤツが言ったんだ。 彰利 「中井出よ。部……いや、同好会を設立せんか?」 今思っても、それはあの頃の思考のままっつーのか……とにかく滅茶苦茶な提案だった。 けど感心したのも確かだ。 こいつが学校行事に目を向けるなんて、後にも先にもこれだけだったろうから。 ……ああ、もちろん喧噪祭は度外するけど。 でまあ、俺もノリ半分で頷いちまったわけだ。 どうせガッコ終わって家に帰ってもつまんねーしさ。 それがコトの発端。 当時中学だった俺が、いつの間にか司令塔になった青春の日々の、それが第二章だ。 彰利 「今は同好会に甘んじているが、部員を集めて『部』として確立させる!     その名も!!原沢南中学・迷惑部!!」 ……ああ、もちろん初めての感心はボロボロに崩れたぞ? ───……。 とまあ半ば強制的に……といっても、 さっきも言ったとおり俺もノリ半分で部員になったわけだ。 部長はどうしてか俺。 彰利が勧誘……というか力ずくで勧誘してきた晦も合わせ、部員はたったの三名。 原中では原則として部活には絶対に入らなきゃいけないって校風があったわけだ。 だからまあ、晦も何処かの適当な部に入るよりは彰利と一緒の方が良かったんだろうな。 ちょっと疲れた顔をしてたけど、苦笑をみせると彰利とこれからのことを話してた。 まあ不思議なもんで…… 晦からも彰利と会った時に感じた親近感じみたものを感じたわけだ。 だから思った。 ぶっきらぼうだけど、悪いヤツじゃないって。 中井出「で……迷惑部って具体的に何すりゃいいんだ?」 彰利 「この学校を乗っ取るのだ」 悠介 「アホゥ……」 彰利 「あ、いや……即答でアホゥって……」 勢いで設立したのかと思いきや、この迷惑部は他の歴史でも設立されたものらしかった。 まあそれ知るのもまだ先のことだったんだけどさ。 彰利 「校長やセンセどもに悟られん程度の迷惑をこの原中にもたらし、     いろいろな行事の実権を我等のものに!     あ、ほら、このガッコって中学のくせに喧噪祭という名の文化祭があるじゃん?」 中井出「へえ、そんなんあるのか」 彰利 「アイドゥ。んでまあ、     その喧噪祭にて好き勝手やるために教師の弱みを握っておくのよ……!」 中井出「腐ってんなぁ……」 彰利 「任せろ」 ……最初に言っておくけど、 当時の迷惑部の実力者というか引っ張り役は確実に彰利だったぞ? 今の状況は、部員が増えていくとともに俺も流れに乗っていったってだけにすぎないし。 ───……。 ドゴシャァアアアアアーーーーーンッ!!! 彰利 「とんずらぁあああーーーーーーっ!!!」 中井出「だわぁああああーーーーーーっ!!!!」 悠介 「アホゥッ!!このアホゥッ!!」 彰利 「なにぃ!?アホと言ったヤツがアホだ!!」 で、部……というより同好会設立から何日目だったっけかな。 早速活動を開始した俺達は、まずは劉堂教諭(見習い)に目をつけた。 ああ、いろいろやったぞ? ヅラとったりカンチョーしたりと。 けどいろいろなことやっても、 どうしてか逃げ出す時は俺の姿を隠しながら逃げる彰利と晦。 なんなんかなって思ったけど、それにはちゃんと意味があった。 彰利 「えー、今さらだがこの中井出博光を我がクラスの委員長とするっ!!」 ざわ……! ようは俺を委員長にしたてあげて、 クラスを内側から侵食していこうってハラだったわけだ。 麻衣香「ちょっと弦月くん?     いきなり何を言い出すのよ。委員長は夏子に決定した筈でしょ?」 まあ当然いきなりの申し出には不満は飛ぶものである。 だが男子一同は面白いものを見る目で俺と彰利と晦を見ていた。 彰利 「黙れ!これは俺の勇者としての決定だ!誰にも文句は言わせん!     つーかさ、木村さん?せっかくの青春をイインチョッフで終わらせていいの?     もっと青春したくない?」 夏子 「えっと……それは……」 藍田 「お、おいおいなんだよ、青春がどうのなんて個人の勝手だろ?」 彰利 「解ってませんねランファさん……」 藍田 「だ、誰がランファさんだ!」 彰利 「ふむ、よいか藍田よ。考えてもみなさい。     ここで木村二等兵が委員長の座から没落すれば、自由な時間が増えるんだぞ?」 藍田 「……?何言いたいんだよ」 彰利 「まあよ、まあああよ、まずは考えてみんせぇ。     みんな部活とかに精出したいっしょ?     そのためにも、その場を簡潔に占める存在が必要なのだ。     で、この中井出が司令塔になります。そのためにも委員長の座は貰い受ける」 中村 「無茶苦茶言ってんなよ、     それより時間潰すなよな?なんなんだよせっかくの休み時間を」 彰利 「ガッコを楽しくするための第一歩だぁーーーっ!!黙らんかぁあーーーっ!!」 真穂 「あの……弦月くん。もうちょっと要領ってもの考えようよ」 彰利 「ややっ!?真穂さんでねが!もう真穂さんからも言ってやってぇよ。     あ、つーか真穂さん部活入った?     まだなら我らが原中迷惑部に入らん?まだ同好会扱いだけど」 真穂 「あ、ごめん。わたし演劇部に入ったから……」 彰利 「兼用でも構いません!つーかぶっちゃけ幽霊部員でいいから入ってください!     ね!?お願い真穂さん!小学校からの付き合いじゃないですか!!」 真穂 「うぐ……」 その時の桐生の顔ったらなかったな。 本当に困った顔してるんだ、こう……なんつーのかな。 ああいいや、話してる時に喩えをあげようとするのって鬱陶しいもんな。 そんなのやるくらいなら話進めろ、ってな。 真穂 「……本当に幽霊でいいの?」 彰利 「ウムス!あ、でも一緒に居ればキリュっちに逐一報告できるけど」 真穂 「毎日しつこいからね……魅力的な提案だと思うけど。     ん、解った。幽霊でいいなら」 彰利 「おっしゃようこそ!原中迷惑部へ!さ、部長!挨拶を!」 中井出「へっ?あ、ああ……えっと」 彰利 「ひかえおろーーう!!     こちらこそはエロビデオマニア、中井出博光さまだーーっ!!」 中井出「っていきなりなんつー紹介してんだぁあっ!!」 ……ちなみに教室ン中は爆笑の渦。 笑いものにされたのは正直相当悔しかったが、まあ…… 中村 「おっし、なんか面白そうだし俺も入るわ。正直なに部に入ろうか迷ってたし」 丘野 「あ、俺も。藍田、お前は?」 藍田 「え?お、俺は……」 この時さ、何決めかねてるのかって思ったらさ、 藍田のヤツ、チラチラと木村夏子を見てたのな。 ようするにこの頃から藍田のオリバへの道は始まってたってことだ。 夏子 「迷惑部って……具体的にはどんな部活なの?」 彰利 「ガッコの行事の実権を握ること。及び、傍若無人な振る舞いが有名です」 悠介 「設立から一週間も経たずに有名になるかたわけ……」 彰利 「少なくとも劉堂教諭には有名だけど」 悠介 「……そりゃなぁ」 夏子 「やめてよ。他の部の迷惑になるでしょ?」 彰利 「だったらストッパーっつーか歯止め役として入部せんかい?」 夏子 「えっ……だ、だって」 彰利 「では訊くが木村夏子よ!汝は今、何部に所属している!!」 夏子 「……バ、バレー……」 彰利 「に、入ろうと思ってる、の間違いじゃないかね?」 夏子 「う、うるさいなぁっ!いいじゃない!」 彰利 「いンやよくない!     部に入ってもいないのに真剣にやろうとする武士たちを馬鹿にせんでもらいたい!     俺達ゃ真剣だ!真剣にこのガッコを乗っ取ろうとしてるんだ!」 中井出「熱弁すんなよそんなこと!!」 殊戸瀬「……面白いね、わたしも参加するわ」 彰利 「なっ……お、お前は!!」 総員 『普段は目立たないが用意周到だと噂の殊戸瀬睦月!!』 殊戸瀬「はーいはいはい……     出会ってあまり日もないのに普段がどうとか言われたくないわよ……。     で、いいの?悪いの?」 彰利 「もちろん歓迎だ。我が部はどのような輩だろうと歓迎する!」 殊戸瀬「そ。じゃあ」 ……ん。殊戸瀬が仲間に加わったんだ。 普段あんまり目立たないけど、そういう場面だと目立つやつでな。 女子がふたり入ったことで他のやつらの緊張も解け始めたのか、 いろいろ質問してきたわけ。 ……まあいつの間にか委員長にされていたときは本気でたまげたけど。 ───……。 彰利 「ヌッフゥ〜〜〜ン……こりゃ困った、部員の集まりがよろしくない。     やはり他のクラスからも引き抜くべきか?……こゆ───日余とか」 中井出「どうして限定してるのかは知らんが……仲良いのか?」 彰利 「微妙」 それから数日、部員も集まったことで迷惑部(仮名:雑用部)は確立した。 さすがにセンセどもに『迷惑部』って名前で届出だすわけにはいかないからさ。 とまあ……そんなある日。 中村 「結局この部ってなにするんだ?一応空き教室貰えたのはラッキーだったけどさ」 彰利 「うむす。まずは打ち解けることから始めよう。     そのためにもノリで生きること。よいですか?     一応部長は中井出なんで、中井出は提督とします」 丘野 「ふむふむ」 彰利 「で、我等が二等兵から。     功績を挙げればランクが上がるシステム……というのはどうか」 丘野 「なるほど……ゲーム形式で考えるのか。確かにそりゃあかったるくなくていいな」 彰利 「でがしょ?」 中村 「ところでさ、お前毎度毎度何食ってんの?毎日弁当食ってるよな。     給食時になると居なくなるし」 彰利 「フッ……実はな、俺は給食費未払い男なのだ」 丘野 「んあ?なにそれ、貧乏なのか?」 彰利 「俺、居候だからね。贅沢言ってられんのよ。     毎度給食費は渡されるんだけどね、こっそり財布ン中に返してる」 丘野 「……俺ならかっぱらうな、それ」 中村 「俺も。つーか弦月なら真っ先にやりそうなのにな」 彰利 「随分お世話になった人だからさ、さすがにそれは出来ねぇのよ」 彰利には、麻野雪子さんっていう姉的であり母的な存在が居た。 バイトしながらの一人暮らしに彰利を引き取って、懸命に生きるスーパーマン。 当時の彰利はそんなこと言ってたっけ。 中村 「……待てよ?じゃあその弁当ってなんなんだ?家で作ってもらってるとか?」 彰利 「んにゃ、これは真穂さんの弁当。     料理の腕上げたいから〜って、実験体にされてんの」 丘野 「真穂、って……桐生真穂だよな?かわいいよな、あいつ」 中村 「弦月、どんな関係なんだ?」 彰利 「小学の頃からの……まあ、友でござるよ。     友となったきっかけは、真穂さんの母上であらせられる     桐生仁美教諭の弁当をかっぱらったことから始まりました」 丘野 「……すげぇなお前」 中村 「小学で既に教師の弁当かっぱらいって……」 中井出「……こいつな、入学式の時も劉堂教諭の弁当かっぱらって食ってたんだぞ」 中村 「うおっ!?容赦ねぇなぁ……」 中井出「ちなみに俺も食わされて共犯にされた……」 中村 「うお……災難だったなぁ……」 彰利 「まあそげな感じでさ、なるたけ楽しい学校生活送ろうや。     つまらんよかマシでしょ?刺激もあって」 丘野 「悪ガキになれってことか?」 彰利 「ノンノン、そげなことではございません。     つまりさ、なんでも面倒だ〜とか言うよりも、     みんなでやって盛り上げていこうってこと。そういう部活なのよ、これは」 丘野 「あ……なるほど。そりゃ確かにいいな」 中村 「ところでそっちの……なんつったっけ?」 彰利 「悠介。晦悠介」 中村 「そか。晦ってあんまり喋らない方なのか?」 彰利 「シャイなのよ」 中村 「シャイなのか」 悠介 「勝手に人の人物特性を捏造するな……」 中井出「でも普段は目立たないけど用意周到と噂の殊戸瀬と話が弾むなんて相当だろ」 悠介 「べつに目立つ必要なんて無いからな」 そりゃそうだ、って思った。 小学の自分は目だったモン勝ちってヤツラが多かったもんだ。 けど、それがたった一年繰り上がっただけで別世界に見えた。 ……小学と中学の境目ってどんなモンなんかな、って真剣に考えた時もあったよ。 結局、答えなんて出せなかったわけだけどさ。 ───……。 真穂 「弦月くーん、居るー?」 ある日の放課後、幽霊部員だった桐生が初めて顔を出した。 その手には……よく解らん包み。 彰利 「なんだい僕の真穂。遠慮せずにいつものようにアキちゃんと呼んでおくれよ」 真穂 「……ほんとに呼ぶよ?お母さんにも報告するし」 彰利 「……キリュっちにボコボコにされそうなんでやめてください」 当時の彰利と桐生は、なんだか不思議な感じだった。 恋人ってわけでもなかったのに、どうしてかそんな雰囲気を感じさせる。 幼馴染っつーか、腹を割った理解者っつーか。 その理由が、彰利の能力だったわけだけどさ。 正直桐生だけが知ってたなんてずりぃなって思ったこともあった。 最近のことだけどさ。 真穂 「あ、そうそう。これ調理実習で作ったクッキー。     他にあげる人も居ないし、食べてよアキちゃん」 彰利 「こっ……!これ真穂さんっ……!     そげなことキリュっちに聞かれでもしたらっ……!」 真穂 「あはは、相変わらずお母さんのこととなると体が固まっちゃうんだね」 彰利 「しょうがなかろうもん……キリュっちってば平気で殴ってくるし。     しっかしまぁ……男子どもが工作をやってる間、こげなもん作っとったんか」 真穂 「うん。失敗してる部分もあるから、無理に食べなくてもいいけど……」 彰利 「なにをおっしゃる。漢、弦月彰利。     女性が自分のために作ってくれた物を無碍にすることは有り得ませんよ」 真穂 「……誤解が無いように言っておくけど、作ったのは調理実習だからであって。     べつに弦月くんに食べさせたくて作ってきたわけじゃないよ?」 彰利 「恥ずかしがるなよ真穂……お前の愛情、しっかり受け止めるから」 なんて言って、桐生を抱きしめたのがその日。 てっきりビンタの一発でも飛ぶかと思いきや、桐生はされるままにクスクスと笑っていた。 その時だったな、『こいつらどういう小学時代を歩んできたんだ』って思ったのは。 丘野 「なに、桐生って弦月のこと好きなの」 真穂 「うん、嫌いじゃないよ。だって友達だもん」 彰利 「俺は恋人でもいいんだけど」 丘野 「本気の目でこう言ってるけど?」 真穂 「弦月くん、本気でウソつくから」 丘野 「なるほど、弦月のことよく知ってるな」 彰利 「いや……照れるって、そんなこと言われたら」 総員 『褒めてないって』 彰利 「けどまぁ、もう長い付き合いだよな?」 抱きしめていた桐生を離し、 まるで新婚さんがそうするかのようにグイと肩を抱き寄せる彰利。 桐生も抵抗せずに笑ってるもんだから、 その頃の俺達は口ではこうは言ってるが付き合ってるものとばかり思ってた。 中学一年なのにマセてたもんだ。 けど、これって結局彰利の作戦だったわけだ。 今にして言えば、桐生はのちの原中のアイドル。 こうして先に先入観を持たせておけば、 桐生に悪い虫がつかないだろうって踏んでのことだったわけだ。 ……まあそれを抜きにしても、彰利は桐生とベタベタくっついていたわけだが。 桐生も桐生で傍に居ると安心するし楽しいとかで、よく一緒に居たっけ。 演劇部じゃなくて実際に迷惑部に入ってればよかったって言わせたほどだし。 ───……。 そうして、地道に教師どもの弱みを握りつつ部を尊属させて数ヶ月。 学期ごとに所属部を変えられる校風に乗っ取り、 二学期には桐生が迷惑部に降臨したりした。 当時既に可愛いだの気が利くだの噂された桐生が入った部だ、 いろいろな部に所属していた男子が色目を使うかのように迷惑部への入部を希望した。 が、彰利はそれら全てを断った。 ……そりゃそうだ、迷惑部という名前ではあるが、こっちは真剣に取り組んでる。 女目当てで入ってくるような馬鹿野郎には用は無い。 真穂 「よかったの?せっかくの部員候補」 彰利 「よいのですよ。おなご目当てじゃあ先が知れてる」 真穂 「それ、幽霊部員でもいいって言ってた人のセリフかな」 彰利 「?こうして入部してくれたじゃん。真穂さんならそうしてくれるって信じてたし」 真穂 「え?……や、やだ弦月くん……なに言って……」 彰利 「なにせ、キリュっちの娘だからね。とーぜんとーぜん」 真穂 「───」 どぐしっ!! 彰利 「いたやぁああーーーーーーっ!!!!な、ななななにすんの真穂さん!」 真穂 「知らないっ!弦月くんのばか!」 彰利 「足踏んだだけじゃ飽き足らず馬鹿とは!……で、なに怒ってんの?」 真穂 「怒ってない!」 彰利 「……?よぅ解らんが機嫌直しておくれ?撫でちゃるけん」 真穂 「いいよっ!弦月くんはお母さんと遊んでればいいでしょ!?」 彰利 「…………?」 ……とまあ、聞いて解るように、当時の桐生は間違い無く自分の母親に嫉妬していた。 彰利が好きだった、とかじゃあもちろんない。 ただ純粋に、傍に居て安心出来る人を母親に取られるみたいで嫌だったんだろうな。 まあ当の本人たちはジャレてるつもりだったんだろうが、 周りからしてみればちょっとした恋人の喧嘩だ。 その時の俺達だって、微笑ましいものを見る目で生暖かく見守ってたもんだし。 どうやって宥めるのかな、とかそんなことをトトカルチョしたもんだ。 ……もちろん誰も当てることは出来なかったわけだが。 彰利 「奥義!お姫様抱っこ!!」 真穂 「えっ!?あわぁっ!?」 ……一撃必殺だった。 お姫様抱っこをされた桐生はあっという間に機嫌が直り、 楽しそうに彰利の首に腕を回してお姫さま気分を満喫していた。 ある意味さ、あれで恋人じゃないなんて言う方が間違いだと思う。 ───……。 彰利 「つーわけで人も増えてきたし、提督に一発号令をかけてもらいたいと思う」 真穂 「号令?」 彰利 「そ。我らが原中迷惑部の挨拶は軍人風が鉄則でござる。よいですかな?」 丘野 「いつでも来いだ」 彰利 「うし。では提督よ」 中井出「うむ。───総員ッ!!     今学期もよくぞ浮気なぞせずにこの迷惑部に残ってくれたッッ!!     この調子でこれからもジワジワと規模を広めていき、     いずれはこの学校を乗っ取るものとする!いいかヒヨッ子ども!!」 ババッ!! 総員 『Sir(サー)YesSir(イェッサー)!!』 真穂 「うわ……」 彰利 「とまあ、男女問わずに返事はサーイェッサーなので」 真穂 「なんで?」 彰利 「いつか解る時がくるから、その時教えます。     というわけで、劉堂教諭も居なくなった今……これからのことを考える必要アリ」 中井出「長かったよな〜、劉堂教諭」 丘野 「研修生っつったら普通、一週間程度じゃなかったっけ?」 中村 「一学期丸々だったからな……頭も丸々だし」 彰利 「彼には懲りずにここに来訪してもらいたいものじゃな」 悠介 「いや……来ないだろ、あそこまでからかわれれば」 彰利 「惜しいハゲを亡くした……」 真穂 「死んでない死んでない」 彰利 「おっと、んじゃあこれ、忘れないうちに渡しときますわ」 真穂 「あ、お弁当箱?……で、どうだったかな」 彰利 「卵にはもうちょいダシ利かせた方がいいね。     それからきんぴらだけどこれは───」 それからしばらく、彰利の料理に対する拘りを語られたのを覚えてる。 桐生はそうして彰利に弁当を作ってやっては、感想と欠点を聞いて高みへと上ってった。 俺もクラスメイツも絶対にこいつらはカップルになるんだろうなぁとか思ってたもんだ。 ……結果的には全然違ったわけだけど。 丘野 「なんにせよ、この部の居心地にも慣れたわ」 中村 「だな。他のヤツらも入ればいいのに。もったいねぇ」 彰利 「ままま、気長にやりましょうや。狙いは喧噪祭だ、ハデにいこう」 中井出「だな」 その時は暢気に返事したもんだよなぁ。 晦のヤツはどんなことになるか、予想出来てたみたいだけど。 ───……。 で……やがて喧噪祭が訪れた。 中井出 「いいかヒヨッ子ども!この際売り上げがどうとかは二の次だ!      祭りとは楽しむもの!祭りとは遊びはしゃぐもの!      参加するには脅かす役にも楽しむ権利がある!」 迷惑部員『サー・イェッサー!!』 中井出 「楽しめ!とにかく楽しめ!普段は委員長として小言を言うこの中井出だが、      こういう行事に口出しはせん!言うとすればひとつ!総員、死ぬ気で楽しめ!」 迷惑部員『サー・イェッサー!!』 中井出 「うむ!では各自解散!持ち場について訪れる者を心ゆくまで脅かせ!      それが我らおばけ屋敷担当の心意気である!!」 迷惑部員『Sir(サー)YesSir(イェッサー)!!』 ここらになる頃にはもう俺も結構度胸がついてた。 クラスメイツたちの謎めいた視線など軽く無視して、 迷惑部に号令をかけるように叫んでた。 もちろん返事を返してくれたのは迷惑部員のみだったけど─── おかしなもんでさ、やりとげたって気分になった。 やり遂げるのはそれからなのにな。ほんとヘンな気分だったよ。 ……え?喧噪祭は上手くいったのかって? ああいや、彰利の馬鹿が闇に紛れて女性客に痴漢しやがって、あっさりと没落したんだ。 しかもその全てを教師の所為にした挙句、握っていた弱みでお咎め無し状態へ以降。 以来、担任は俺達に口出しをしなくなったのは……隠れた実話である。 そんなこんなでそれでも平和に活動を続けてきた迷惑部。 言ってみれば俺たちの思い出の頃だな。 号令の勢いが気に入ったとかで入ってきた島田や灯村に、 たまには意外性もいいかなって理由で入ってきた木村夏子と綾瀬麻衣香。 さらに木村夏子を追うように入ってきたのが藍田亮。 女目当てだが、こいつは本気だってのは知ってたから誰も文句は言わなかった。 そんなこんなで訪れた三学期には、今のメンバーの大半が集っていた。 ───……。 ……。 とまあそんなわけで、一年や二年はいろいろあったけど楽しかったってことで。 二年の時なんかメンバーの中から桐生が一時期抜けて、演劇部に戻っちまってさ。 それでもまあいろいろやって、三学期になる頃にはまた全員揃ってた。 で、三年になった俺達はいろいろな事柄で楽しんでいた。 最終的には教師どもを脅して、迷惑部部員でクラスを集ったようなものなんだが。 まあ中学最後の年だ、それもいいだろうって思ったからこそだ。 中学三年の頃には既に『原中の猛者』と呼ばれるメンバー全てがそのクラスに集い、 俺達はある意味で学校の伝説と化していた。 で───中学卒業間近だったかな。 馬鹿なことをやり続けた俺達は、ついに激怒した教師に居残りを命じられた。 それで教室に残ってたんだけど、暇になったからってついにあれを始めた。 そう……その名も『超絶ミラクルダンディ・コックリーニョさん』。 コックリーニョとは名ばかりのダニエルというホモを召喚し、 解らんことを教えてもらうというゲームだった。 眉唾ものだと馬鹿にしていたが、まあその、なんだ。 その場には月の家系の人物が三人も居たわけだ。 当然、彰利と晦と日余。 なまじっか『見える人』が集まったもんだから、その場には見事にダニエルが召喚された。 っと、その頃の晦はまだ自分の力についてよく知らなかったんだっけ。 霊力ゼロっていうのかな、霊とかが見えなかったんだっけか? まあいいや、話を戻そう。 聞いた話による鉄則は、 『超絶ミラクルダンディ・コックリーニョさん』中は極力騒がないこと。 だが、この日の我等は本当に暇だったのだ。 ついつい犯してしまった禁忌…… マサクゥルドナルドでのテイクアウトを罰ゲームで実行してしまったからもう大変。 我等のクラスに降臨したマサルドを見た原中の猛者どもは絶叫し、 ダニエルの怒りに触れてしまったのだ。 で……結果がダニエルの悪夢。 不定期な周期でひとりずつ、夢の中に現れては襲い掛かってくる。 最初はフレンドリーなんだがいきなり目覚めたかのように襲い掛かってきて……なぁ? そこで絶対に目が覚めるわけだ。 今のところ、掘られたヤツは誰ひとりとして居ないらしい。 夢とはいえ命懸けだ。 ───……。 中井出「まあそんなわけで、     『超絶ミラクルダンディ・コックリーニョさん』は危険なんだ」 悠黄奈「…………なんだかものすごく変な話でしたね……」 中井出「まったくだ。まあ実際親父やお袋やばあさんが死んだのも事実だし、     だからこそ堂々と親父の秘蔵のお宝を入手出来たわけだが……     さすがに電源入れるとウネウネ動くアレを発見した時は気が遠くなった」 悠黄奈「……?なんですかそれ」 中井出「知らない方がいいことって……あるよな」 悠黄奈「中井出さんの顔のようにですか?」 中井出「……そゆこと」 油性だから落ちねぇんだよこれ……。 中井出「まあいいや、彰利戻るまで時間かかりそうだし、     もうちょい話相手になってくれ」 悠黄奈「はい、それは構いませんよ」 にっこりと笑う悠黄奈ちゃんを余所に、小さく溜め息をついた。 これがあの晦ね……いやぁ、人って変わるもんだなぁ……。 Next Menu back