───竜の誕生と親友の復活と領域設定と悪夢再来の予感にトキメく黒───
【ケース11:弦月彰利/サムゲッペタン(セカンドイグニッション)】 ドッギャァアアアアーーーーン!!!! 彰利 「でっけぇええええーーーーーーーっ!!!!!」 第一印象はそれです。 転移した先には赤竜の卵があったんだけどね?それがもうでけぇのなんのって……。 しかもパキペキと孵化しようとしてるでよ……。 彰利 「早ッ!どうなってんのこれ!つーかなんで今まで孵化しなかったん!?」 声  「それなら簡単。わたしが孵化しないように調整して、研究続けてたから」 彰利 「むっ───誰だ!?」 ベリー「わたしー!わたしわたしわたしー!」 彰利 「……毎度毎度悲しくありません?     せっかく振ったんだからもっと別のリアクションをさ……」 ベリー「うっさいツンツン頭」 とかなんとかやってるうちにメキベキと卵から這い出る赤竜さん。 と───その時、オイラはふと思い立ったことを訊いてみた。 彰利 「そういや……ドラゴンにもスリコミ……っつーのかな。     ホレ、初めて目ェ開けた時に相手を親と思うアレ、あるんかな」 赤竜王『鳥などのモンスターは解らんが、竜族に限ってはそんなことは有り得ない。     誇り高き竜族だ、目の前に居たからといって、なんでも親だと思うことなど無い』 む……そらそうだ。 だとしたらもう、モンスターなんぞを親だと思ったりして大変だろうし。 赤竜 『ク……クァアゥウ……』 彰利 「お、おお……なんとも美しき光景よ……。     こげに小さな竜があそこまででっけぇドラゴンになるっつーのか……」 一体孵化したらあとは早かった。 それを皮切りにしたかのようにパキパキと孵化してゆく卵の衆は爽快っつーかキモイ。 まるでピッコロさんが口から吐いた卵の孵化を見ているようだ……。 赤竜王『……これで安心だ、赤竜族は潰えない。……人間よ、誓ってやろう。     他の者がこの領域を侵さぬかぎり、我等赤竜族は攻撃を加えぬと』 彰利 「む、サンクス。近いうちに悠介……あ、皇竜王っつった方が解りやすいかね?     ともかくそやつも完全に復活するからさ。     その時になったら人間の王様どもにも言い聞かせとくよ」 赤竜王『ああ、頼む』 クッと笑んだ雰囲気を見せると、ドラちゃんは飛翼をはためかせた。 その風が、赤竜の子供に纏わりついている粘膜を吹き飛ばす。 するとどうでしょう、いままでまごまごしていた赤竜の子供…… 雛っつーかパピィっぽい竜がキュイキュイ鳴きながら飛び始めるではないか。 すげぇ……産まれたと思ったらいきなり飛行かよ……。 彰利 「一体貰っていい?」 赤竜王『やめておけ。竜族は生まれた時から誇りを持っている。     どんな理由があるにせよ、竜族は竜族以外には従わない。     ……相手があの皇竜王ならば別だろうがな』 彰利 「あー……」 そうね……。 悠介ってば存在自体で竜族全てを震え上がらせるだけの実力は持ってるでしょう。 なんかもうバケモンだとかの領域さえ超えちまってるよ俺の親友……。 彰利 「あれ?じゃあ飛竜たちはどうなるん?     あやつらは悠介が竜人になる前に従ってたけど」 赤竜王『竜の珠を持っていたんだろう?つまり竜王を倒してみせたということだ。     例外を認めるとするならばそれだけで十分だろう。     もっとも、一対一で竜王に勝てぬ相手に従う馬鹿者など居ないだろうがな』 彰利 「先生、竜王相手にひとりで向かう方が馬鹿者だと思います」 赤竜王『誰が先生だ』 でも……そっか。 まがりなりにも悠介ってばシュバルドラインに勝ったわけだし……だからか、 ディル殿が悠介を王として迎えたのは。 ディル殿も嬉しいだろうねぇ、信じた相手が皇竜王になっちまったんだから。 彰利 「んじゃ、俺はもう戻るよ。     暇になったら庭園に遊びにおいでドラちゃん。元気でな〜」 赤竜王『貴様一度死んでみるか……!?ドラちゃんと呼ぶな……!!』 彰利 「ソ、ソーリー」 こりゃすげぇ殺気だ……オラの数倍はありそうだ。 つーかドラちゃんマジで凄い。 召喚獣なんぞ相手にならんほどの実力持ってるよコレ……。 彰利 「………」 じゃあ、それをナックル一発で屈服させた親友って…… 彰利 「……は、はは……考えるのやめとこ……」 これからは慎重にからかわねば……。 下手なことしたら頭蓋破壊も夢じゃねぇ……。 ───……。 ……。 ───ビジュンッ!! 彰利 「愛……」 美しいポーズを取りつつ、空中大庭園へと戻ってきました。 ヒーホー、相変わらず見晴らしいいですグッドです。 さてそれはそれとして─── 彰利 「ノーちゃーん!居るー!?」 なにもない虚空へ声を投げてみた。 すると目の前にシュパァンと現れる……無の精霊、スピリットオブノート。 ノート『……なにか用か、と訊くべきか?』 彰利 「解ってんなら話は早いけど。間に合いませんでしたじゃ話にならんから、     今のうちに空界の王様どもに釘を刺しておきたい」 ノート『解っている。マスターを呼び起こし、     空界の王どもに人間、亜人、竜族の領土を教え込みに行くんだな?』 彰利 「さっすがノーちゃん、解っとるのーぅ」 そう。これからの目的を軽く考えてみたんだが、やっぱこれしかない。 各王国に向かって、王様ひとりひとりに領域っつーもんを叩き込む。 護れなけりゃあ竜族に襲われて死ぬだけだ、その時は平気で見捨てる。 まあハッキリ言えば……密猟者は絶対死ぬ、っつーことで。 でもそういうことをキッチリと解らせるには、やっぱり悠黄奈さんよりは悠介の方がいい。 本調子じゃないかもしれんが、これも試練と受け取ってくれ親友。 彰利 「魂の安定率って“%”で表すとどのくらいなん?」 ノート『そうだな、96%といったところだ』 彰利 「早ッ!!」 ノート『無の諸力も魔力もそろそろ完全に回復する。……正直予想外の速さだ。     どうやら天地空間の回路が生み続けている反発反動力が、     上手い具合に体に馴染んでいっているらしい』 彰利 「へ?それって……」 ノート『ああ。修行の虫であるマスターに比べれば、女のマスターは受け止め方が柔軟だ。     複雑な反動力を自然の状態で受け入れ、力にしていっている。     ……恐らく、男のマスターの方は反発反動力を受け取って、     強くなってしまう自分を許せなかったんだろう』 彰利 「つまり?その気持ちが自然と『反動力を受け取ること』を拒否してたから、     今まで力に変換されなかった……ってこと?     拒否しなけりゃいつでも力に変換されてたってこと?」 ノート『そういうことだ。マスターの雑念の無い修行好きには困らされる』 彰利 「………」 そか……悠黄奈さん、その調子でどんどん力に変換しちまってください。 彰利 「む───ちょっと待った。えっとさぁ……それって悠黄奈さんが悠介に戻れば、     やっぱり力が逸れていったりするん?」 ノート『否だ。一度力として魂が受け取ったらな、それはもう自然に流れてゆく。     マスターが嫌がったところであとの祭りだ』 彰利 「なるほど、そりゃ面白そうだ」 ノート『まったくだ』 ふとした瞬間、俺とノーちゃんは笑い合った。 ……あー、なんかすっげぇ落ち着く。 楽しいのと平和なのとが混ざってるっつーのか、物凄く居心地がいい空気がここにある。 いろいろあったけど……この空界って世界自体には感謝の言葉は腐るほどある。 彰利 「で、で、やっぱ好きな時に変身出来る能力はつけるっしょ?     ヤムヤムみたいにまだるっこしいの抜きにしてさ、猫になるくらい簡単に」 ノート『もちろんだ。男になりたい時は───どんなものがいい?』 彰利 「ケータイとかいうものの『5』を三回押した後に『変身!』って言う。     するとケータイとかいうものが『スタンドバ〜イ』と言葉を返───」 ノート『却下だ』 彰利 「ゲッ……」 いきなり却下だった……。 つーかスタンドバ〜イって言ったあとに変身って言うんだっけ? 覚えてないや。 彰利 「んじゃあこれで決定ナリ!まず魂ってことで心臓を連想しましょう。     つーことで、心臓の上……まあ胸だね、     そこに手ェ当ててドラゴンインストールと唱えればアラ不思議、     悠黄奈さんが悠介に。逆はネクロインストールと唱えればOKということで」 ノート『却下だ』 彰利 「あら?」 おかしい……なにがいけなかったんだろう……。 ノート『もういい、私が決めよう。胸に手を当てて【“魂源反転(オルタネイト)
”】だ』 彰利 「オルタネイト?」 ノート『【交代】という意味を込めている。それを実行すればすぐに男女交代が可能だ』 彰利 「なるほど、んじゃあさっそくその能力を埋め込みに」 ノート『既にやってある』 彰利 「早ッ!!名前俺に訊く意味無ぇじゃん!!」 ノート『いいや、言に迷っていたのは真実だ。     今はその鍵である言を埋め込んだところだ。これでようやく終了する。     汝に訊く意味はあったんだ、それで十分だろう』 彰利 「………」 そりゃそうなんだろうけど、なんか釈然としねぇっす……。 ノート『では行こうか。     いい加減、マスターにも戦いが終わったことを教えてやらなければな』 彰利 「へ?まだ終わったってこと知らんの?だってドラちゃん殴ってたし……」 ノート『目を覚ました途端に怒りで周りが見えなくなったんだ、どうしようもない』 彰利 「………」 ほんにね、モミアゲって言葉にここまで反応するのって悠介だけだよ絶対。 ───……。 ……。 んで、魂を悠介に傾け、事情を話してから数分。 悠介 「……そっか。ゼットは……」 ノート『ああ。力が枯渇していた故にどの世界かは断定できなかったが、     火山の火口へと落下していった。     あれだけ傷ついていては、あのマグマには耐えられないだろう』 悠介 「………」 全てを知った悠介は、何処か悲しそうな顔をした。 けどそれも少しの間だけ。 俯かせていた顔をすぐに持ち上げると、小さく苦笑して『解った』と言った。 中井出(しかしアレだな、目の前でべっぴんさんが男に変わるとショックなもんだな) 彰利 (気持ちは解らんでもない) 実際、いきなり悠介へと変貌した悠黄奈さんを目の前にして、中井出は叫んだし。 悠介 「それで───これからどうするって?」 彰利 「ウムス、それはこの弦月彰利が語ろう。     えっとね、この世界の種族ごとに領土を決めたらどうだ〜ってことで、     空界の王様どもに領域説明して回るの」 悠介 「本気か?というか、そもそも王は居るのか?」 彰利 「……っと、そか。まずはそっから説明せんといかんね」 悠介 「?」 クエスチョンマークを浮かべるかのように疑問的フェイスをする悠介を真っ直ぐに見て、 オイラは悠介が気絶してから今までのことを説明することにした。 ……まあその、一応 悠黄奈さんのことも。 黙ってた方が面白いかとも思ったけど、 これはどっちかっていうと周りの反応を楽しんだ方がいいと判断しました。 ───……。 悠介 「…………」 で、話終わってみれば頭を抱えて落ち込む悠介。 そのサマはまるで、状況の理解に苦しむクロマティ高校の前田くんのようだった。 彰利 「不服かね」 悠介 「不服───いや……産まれた魂に罪は無いが……」 罪は無いだけに、文句も言えないようです。 ああ、だから頭抱えて落ち込んでるのか。 彰利 「よっ!苦労人!」 悠介 「やかましい!!」 彰利 「グ、グウムッ……」 怒られてしまった……。 いやー、機嫌悪……いわけでもなさそうだね。 ただ状況に困ってるっつーか、悲しんでるだけみたい。 そらそうか、男として生きてきたのに、 ある日突然完全なるおなごに変貌したとくれば……ねぇ? でもその時の記憶が無いだけマシってもんでしょう。 あ、いや……でもやっぱ機嫌悪いのか?どっちだ? 彰利 「悠介、正直に答えなさい。キミ、機嫌悪い?」 悠介 「……半々だ」 半々だそうです先生!───よし、誰だ先生って! 彰利 「えーと?つまり───」 中井出「修行で鍛えられずに力が上がったことに対する不満が怒りで、     産まれた魂が女だったってことに対してはべつに怒りはないと?」 彰利 「ありゃ?そうなん?」 悠介 「……言っただろ、産まれてくる魂に罪は無いって。     悩んでたのは力のことばっかりだ」 彰利 「……修行の虫」 悠介 「やかぁしい」 いやぁ……やかぁしいって言われたって、ここまで修行を愛する人も珍しいと思うよ? そらね、今までの悠介の性格上、 自分で強くならなきゃ意味が無いって思ってるのは確かだろうけど。 彰利 「反発反動力って魂の安定に特化しただけじゃ済まなかったん?」 ノート『魂が強化されている。さらに言えば力が次々と供給される故に、     自分で強くなったという実感が沸かないのは確かだろう。     だが限界値は己が鍛え上げた部分までだ。それは変わらない。     それ以上の力は自然に他の力の支えとして流れるだろう』 彰利 「あー……それってつまり、     諸力を使えば消費を補うために反発反動力が諸力に変換されるってこと?」 ノート『そういうことだ』 彰利 「……なして?」 ノート『少しは考えてから訊け。     ……マスターの反発反動力自体が、全世界の回路から発生するものだからだ。     精霊を従わせ、魔力や千年の寿命を得た今では、     空界側の回路は相当に体の中に張り巡らされている筈だ。     その中には当然、諸力からなる反動力も存在する』 彰利 「………」 中井出「……先生、ここに大賢者さまが居ます」 悠介 「大賢者言うな……」 彰利 「しゃあけど、良かったやないけ。それって『強くなった』ってわけやないんやろ?     ただ使用した力がすぐに供給され───あれ?ちょほいと待てよ……?」 ……改めて考えてみたらそれって…… 中井出   「何も言うな……解る」 彰利    「……だよね」 彰利&中井出『ここに無限能力超人の誕生を宣言する……』 そらね、俺の黒も無限に近いといえば近いけどさ。 流石に無限供給ってわけじゃないよ……。 悠介 「……今度、無限供給を阻止する魔導具でも作るか……」 彰利 「なんで!?もったいねぇ!」 悠介 「たわけ、力の減らない状況で修行したって、修行してるって気がしないだろうが。     俺はきちんと俺として修行したいんだよ」 彰利 「……守りたいものを守るために?つーかさ、今のキミに勝てる人、居るの?     これでまた修行する意味がよく解らんのですがね」 悠介 「またゼットみたいなヤツが何かの拍子に狭界から出てきたらどうする」 彰利 「うあ……そら勝てるかどうか解らんわ……」 ナルホロナルホロ……そこまで考えておったか……。 俺的にはもうミルハザードさえ倒せばオッケンかなって思ってたんだけど。 彰利 「って、それじゃあやっぱり修行続けていくん?」 悠介 「?当然だろ?」 彰利 「………」 中井出「………」 神様どうしよう、ここに修行超人が居る……。 ああいや……修行超人だったのは前からだけどさ。 彰利 「いっか、話もそこそこにしませう。     早速回りましょうぜ?まず何処の国行く?」 中井出「切り替え早いな」 彰利 「悩んでたってしょうがなかろうもん。つーわけでさっさと行こう」 悠介 「だな。中井出、お前はどうする?」 中井出「もちろん付いていくぞ。ついでにさっき寝惚けつつ     お花畑に倒れたまま動かなくなった藍田も連れて行こう」 中井出がクイッと視線を促すと、確かにお花畑で眠りこけてる藍田が居た。 ……なにやっとんのかねこいつは。 彰利 「んじゃあ転移すっぞー。あ、ノーちゃんはどうする?」 ノート『マスターの中で成り行きを見守ろう。     解らないことに衝突したらいつでも声をかけるといい』 彰利 「ほいりょーかい。んでは───しゅっぱ〜つ」 すぐ近くにある転移装置へ出発した……。 そして到着。 短い旅だった。 ───……。 ……。 彰利 「さて……下界に下りてきたけどさ。まずどの王国から行く?」 悠介 「レファルドでいいんじゃないか?他の国のことなんてイマイチ解らないし」 彰利 「勝手知ったるなんたらか。んじゃあ行きますか」 悠介 「そうだな」 下界から降りてきて少々、我等はあたりをキョロキョロと見渡して───頷いた。 世界が融合しても、庭園から転移して降りてくる場所は棒人間の集落ってわけですな。 出払ってるみたいで誰もおらんけど。 彰利 「見つかる前に行きますか」 悠介 「だな。出来ればあいつらには会いたくない」 中井出「嫌われてたしな」 悠介 「まったくだ」 彰利 「んじゃあレファルドね。パパレポパパレポドミミンパ〜♪」 マキィンッ!! ───……。 ……。 民衆 『ざわっ……!!』 転移した途端にざわめかれました。 その視線は……悠介へ。 彰利 「つーかここ……貧民街?」 中井出「だな。映像で見た通りの場所だ」 ぐるりと見渡す限り、そこは俺と悠介とで整えたまんまのカタチで残っていた。 現代がベースになる人間のカタチと違い、 町の構造などはノーちゃんが思うさまに融合させたみたいだ。 子供1「王さま……?おお……王様が帰ってこられたぞーーーっ!!」 子供2「ほ、本当だ……!あのモミアゲ、間違いない!!」 子供3「王様ーーッ!!」 子供 『ワァーーーーッ!!!』 と、突然何を思ったのか子供たちがバンザイしながら騒ぎだした。 騒ぐといっても、バンザイが示す通りに喜びの意味を込めたもの。 だが─── 悠介 「今モミアゲで判断したヤツ誰だァアーーーーッ!!!」 子供 『キャーーーーッ!!?』 やっぱ悠介相手にモミアゲはまずかった。 ハタから見れば子供達とじゃれ合うオウサマだが、相手は元・高齢者だ。 しかし子供のすばしっこさ侮れず。 ズバー!と散っていった子供達を前に、 悠介は『だはぁ』と溜め息を吐いて俺に向き直った。 悠介 「なぁ……俺ってモミアゲしか取柄が無いのか……?」 それは……なんとも重苦しい質問だったという……。 ───……。 彰利 「ほがががががが……」 さて、貧民街の子供達に迎えられてからしばらく。 俺は痛む顎をさすりながら黒い血をぬぐっておりました。 殴られた拍子に肩に抱えてた藍田を落としてしまったが、 まあ目覚めスッキリのようなので結果オーライ。 中井出「しかしなぁ、まさかあそこで『もちろんさ』と言ってみせるとは思わなかったぞ」 彰利 「代償がナックルじゃあ割に合いませんがね……」 悠介 「やかましい」 そう、俺は悠介の質問に真っ向から立ち向かったのです。 つまり、『悠介の取柄はモミアゲのみである』という質問にイエスと答えた。 豪華商品としてナックルプレゼントされたけどね。 子供1「や、よく来てくれました。いろいろと訊きたいことがありまして」 悠介 「訊きたいこと?」 通されたのは我らが作った公園。 相変わらず純水ピュアウォーターの出るそこは、子供たちの溜まり場だった。 ……といっても、未来における老人たちだった者の集会場と化しているようだが。 子供1「この姿です。私たちが子供になってしまった原因を……     何か知っていたら教えてほしいのですが……」 悠介 「そか。巻き込まれたのは事実なんだ、容赦無く言うけど───それでいいか?」 子供1「はい。子供に戻ったからといって不都合があるわけではございません。     ただ原因を知りたいだけなのです」 悠介 「……ん、解った。実はな───」 ───……。 ……。 子供1「……なるほど、精霊スピリットオブノートの力で……。     ありがとうございました、スピリットオブノートならばそれくらい可能でしょう。     なによりも納得できる答えでした」 彰利 「……やっぱ、ノーちゃんって有名なんだね」 藍田 「そらそうだろ、知らないものはないってくらいの存在感があるんだ、     他の誰が知っててもおかしくないだろ」 悠介 「勝手に子供にしちまったんだけど……許してくれるか?」 子供1「なにをおっしゃる。私としてももう一度両親の元気な姿が見れて嬉しい限りです。     情けないことに、親不孝な子供だったもので。     失ってから気づくものとはやはりあるもので、私も例外ではありませんでした」 中井出「………」 子供の話を聞いた中井出が、何か思うところがあるような表情で俯いた。 けどすぐに顔を持ち上げると、溜め息を吐いてからニパッと笑った。 なにをやりたいのかは知らんが、意識は大丈夫か中井出よ。 子供2「こちらもいろいろと大変でしたよ。気づけば自分は子供で、     死んだ筈の父や母、果てはじいさんやばあさんまでもが居るじゃないですか」 子供3「親であり祖父にもなった我らです。     今なら誰よりも親孝行出来る自信がありますぞい」 悠介 「とりあえずそう思うなら、まず老人語を直そうな」 まったくの意見だった。 子供4「いや、まいったものです。じゃじゃ馬だった私たちが、     突然打って変わったように大人しくなるもんですから     親達も何事かと驚いているところですよ」 中井出「はは、そりゃそうだろうな」 藍田 「……つーかさ、今さらだけどなんで俺連れてこられたんだ?」 中井出「知らん」 藍田 「まあいいけどさ。面白そうだし」 子供5「ところで王様……王様は何故こちらへ?民達に謀反されたと聞きましたが……」 悠介 「ちょっとな、今のレファルドの王様に用があって来た」 子供6「ほほお……もしや再び王になってくださると?」 悠介 「それはもう有り得ないな。俺は俺で、王って仕事よりもやりたいことがある。     それにこの国にはもう王が居るだろ?俺がしゃしゃり出る幕じゃない」 子供5「……しかしですな。現国王が立派になられるのは今よりもっと先。     彼がもっと歳をとってからの話ですじゃ。     ワシの記憶が確かであれば、この頃の国王はワガママし放題の……そう、     オウファとあまり変わらない無いものねだりの王じゃったよ」 藍田 「……子供が素で老人語使ってるのって貴重だな」 彰利 「そうね」 中井出「ほんとそう」 見下ろす子供(心は老人)は、ほっほっほと笑っている。 もっと子供らしい笑みをしてください……って人のこと言えないね俺も。 子供ン頃は老人のような言葉でキリュっちをからかったこともあるわけだし。 お返しとばかりに散々ボコられたけど。 子供1「国王、今は何処で暮らしておられるんですか?」 悠介 「ん……空中庭園。伝説のラピュウタだ」 子供1「あ、あのような場所に……!?」 子供5「さすがは国王じゃあ……!」 藍田 「……王がラピュウタに住むと流石なのか?」 中井出「この際細かいツッコミは無しだろ」 彰利 「悠介〜、そろそろ行こうぜ〜。挨拶はまた今度でもいいだろ〜」 悠介 「……そうだな。じゃあ、また会うことがあったら」 子供1「はい。お元気で、国王」 わさわさと子供たちが手を振る。 中にはぴょんぴょこ飛び跳ねる子供も居る……腰痛が無いってステキですね。 藍田 「子供に戻った老人達が思うことって、やっぱ腰痛消滅への喜びかね」 彰利 「あ、やっぱそう思った?」 中井出「そりゃもう」 ともあれぼくらはレファルド皇国王城へと足を運ぶのでした。 実際に歩くファンタジー世界にドキドキマイハートな中井出と藍田を引き連れて。 あちらこちらを見てキャイキャイ騒ぐ中井出たちは、 まるで初めて外国観光に行った日本人のようだった。 似たようなもんなんだろうけど、 ファンタジー世界と外国は天秤にはなりゃしないと思った。 兵士 「ぬ───貴様何者だ!」 中井出「我こそは原沢南中学最高司令官にして提督!中井出博光である!!」 彰利 「我こそは原沢南中学参謀長官にして一等兵!弦月彰利である!!!」 悠介 「我こそは原沢南中学安定長官にして一等兵!晦悠介である!!!!」 藍田 「我こそは───」 総員 『オリバだ』 藍田 「即答で誤解招くこと言うなよ!!」 兵士 「……?よく解らんが失せろっ!国王は今機嫌が悪い!なにをされるか解らんぞ!」 彰利 「私は一向に構わんッッ!!」 兵士 「なに……?───はっ!き、貴様!私を吹き飛ばした───!!」 彰利 「チョップ!!」 デゴシッ!! 兵士 「ウゴッ!?」 ドシャア……兵士、気絶。 危なかった……もう少し当身をやるのが遅かったら全てが知られてしまうところだった。 ……や、別に知られたらどうなるってことでもないんだけどね? ───マテ、じゃあなんで当身なんてやったんだ俺ャア。 彰利 「……………………よし、道は開けた。行きましょう」 藍田 「……だな。───おお!勤務時間中に寝るとは何事か!     これでは誰でも通れてしまうなぁ!」 中井出「まったくだなぁ!というわけで行こう」 悠介 「そうだな」 こうしてぼくらは何事もなかったかのように城へと入っていったのでした。 彰利 「つーか……どうしよっか。     このまま先に進むとさ、兵士たちが大勢で我らを攻撃しますよ?」 藍田 「?なんでさ」 彰利 「そりゃおめぇ、アレだ。     俺がこの前、ここに不法侵入してオウサマに無礼働いたから」 藍田 「へえ、お前会ってたんだ」 彰利 「一応ね。んで、どうする?」 中井出「どうするもなにも……兵士薙ぎ倒していこうものなら、     国王だって話も聞いてくれなくなるんじゃないか?」 彰利 「いいや、薙ぎ倒していったほうがパンチが効いて、     言うこと聞きやすくなるんでないかい?」 悠介 「暴力的なのはどうかな……あんまり賛成出来ない」 彰利 「そか……じゃあ例えば、ただ暴力振るうんじゃなくて、こう……」 中井出「なんつーの?労わりだとかを織り交ぜて殴るとか?」 彰利 「労わりか……なんつーかもう一声欲しい感じがするな。ほら、愛とか」 中井出「お……そっか、愛情込めて殴ればそれは暴力じゃないな」 彰利 「そうそう、だから……愛?」 中井出「ん?あ、愛?あ、愛だろ?あ───」 悠介 「………」 藍田 「……?あ、あれ?な、なんでみんなして俺を見るかなぁ……?」 居た……愛の最高実力者。 愛以上に人を強くするものなどあるまいよと豪語してみせた存在が。 中井出「……愛の使者よ。貴様に命ずる……。     この国を、貴様の愛で救ってやってくれ……」 藍田 「わ、わけ解らんぞそれっ!!やめろ近寄るな!!人を!人を呼びますよ!?」 彰利 「呼んだ?」 藍田 「てめぇは既に人じゃなくて黒だろうが!」 彰利 「いやんバレた♪というわけで貴様の愛でこの国を救ってやってくれ……」 藍田 「ばっ!近寄るな!!お前ら絶対ろくでもねぇこと考えてるだろ!!     お、おい晦!お前からも何か言ってや───って!!     なに黙々と薬創造してやがりますかてめぇえええーーーーーーっ!!!!」 悠介 「大丈夫だ、今回は合図が送られるまでずっとオリバだ。     しかも全身だぞ、向かうところ敵無しだ」 藍田 「嬉しくねぇ!!ってこら!何掴んでんだ!離せ!!     な、なにをする!離せ!ええいっ……離さんかっ……!!」 ゴヂィッ!! 中井出「ぐっはぁっ!!」 彰利 「ああっ!提督があたかも     リヴァース元帥にやられた兵士のような声をあげて怯んだ!」 中井出「ナ、ナイス頭突きだ藍田二等兵……───だが!!」 藍田 「なにっ!?……は、はぁぁああ!!や、やめろ晦!それは人としての禁忌に触れて     いる!!そりゃ俺だって筋肉好きだしマッスルボディに憧れていろいろやってるけ     どだからこそそれだけはやっちゃいけないわけだろ!?なぁ!!お前なら解ってく     れるだろ晦!修行好きで修行馬鹿なお前なら!……へ?遠慮する必要が無くなった     な?や!待て!なんでさっきより極上の笑みで俺を見つめる!?惚れるぞコラ!!     あ!ウソ!やめて!それ以上はダメだって!や、やめヴァアアーーーーッ!!!」 ───その日。 あの悪夢が蘇ろうとしていた……。 Next Menu back