───マッスルボディと鋼の肉体と紳士的に絞まったケツに驚きっぱなしの黒───
【ケース13:弦月彰利(再)/再来ッッ!!ヤツの名はオリバッッ!!】 メゴシャアアアアアアアーーーーーーーーーンッ!!!!! 兵士1「ギェボラベッチョォオオーーーーーウ!!!!」 ドゴシャッ───ゴシャッ───ドゴッ!ゴシャッ! バキベキゴロゴロズシャーーーアーーーーッ!! ……道を阻んだ兵士がゴミクズと化して転がった。 弾丸のように飛んでいき、長い長い通路を跳ね、転がり、滑ってゆく様は人間業じゃない。 兵士2「し、侵入者だぁああーーーーっ!!!     し、白のシャツとバトルパンツ一丁の侵入者が───は、はああ!!」 ドゴシャ!!ゴシュウンッ───ドバァンッ!! 兵士2「ゲハァッ!!」 ……兵士2、殴り飛ばされて遠くの壁に激突して気絶。 だがそれを合図にしたかのように、奥の通路から次々と兵士が駆けてくる。 その手には───槍や剣。 兵士3「止まれェィ!!蛮族どもめ!この城になんの用だ!!」 彰利 「オウサマに会いたいの。通して?」 兵士3「却下だ!早々に立ち去れ!さもなくば───取り押さえて死刑に処するぞ!」 彰利 「死刑?ほほっ、死刑だとよ」 中井出「馬鹿め……こちらには人類最強の絶対的肉体王者が居るんだぞ。     法の外に存在する地上最自由の存在ッ……!     そいつを味方にした今、退く気は無い……いや、無いどころか皆無だッッ!!     王に伝えろ、さっさと謁見の準備でもしてろとなッッ!!」 兵士3「ぬっ───王に対する無礼な口の聞き方……!許せんッ!!」 ヒュオッ───ベキャア!! 兵士3「……へ?なぁっ!!?」 兵士3が奔らせた槍の一撃が……あっけなく折れた。 その先に立つのは当然─── オリバ「無理ダ……オマエサンガコノ槍術ヲ身ニ付ケルタメ     ドレホド腕ヲ鍛エ込ンダノカ知ランガ───     俺ガ本気(リアル)
で腹筋ヲ固メタトキニハアキラメタ方ガイイ……」 腹筋で、矛先にある刃ごと槍をへし折ったオリバが居た。 オリバ「オマエサンガ強クナルタメニ想像ヲ絶スルトレーニングヲシタヨウニ───     俺ハ俺デ色々ヤッテイルノサ……幾度モ、幾度モ、幾度モ……」 薬飲んだだけだけどね。 いや、正確には飲まされた、の間違いだけど。 ともかくすげぇですオリバ。 まさか腹筋で槍を破壊するとは思わなかった。 しかも硬い鎧に身を纏ってるアーマーナイトでさえ、拳一発で気絶モンです。 ハンパじゃねぇ……こいつハンパじゃねぇよ……。 兵士3「くっ……!怯むな!総員突撃ィイイイーーーーーッ!!!!」 兵士 『オアアアーーーーーーッ!!!!』 兵士どもが一斉にかかってくる。 だがオリバは薄っすらと目を開くような『まったりフェイス』で『ン〜〜』と言うと オリバ「キミはつまらん」 ボリュッ!!───と音が鳴るほどの速度で拳を振るい、 先頭の兵士の鎧を殴りつけて吹き飛ばした。 当然後ろに居た兵士は飛んできた兵士に巻き込まれ、転倒および雪崩式に吹き飛んだ。 ……やっぱすげぇ……。 彰利 「強ぇえ……強ぇえぜマッスルボディ2ダッシュプラス……」 中井出「王国の兵士が手も足も出ないとは……」 彰利 「って、ちょっと待った!今度は魔導術師が来たぞ!?     さすがにマズイんじゃ───っておわぁあああーーーーーっ!!!!」 問答無用でした。 ダババババと駆けてきた魔導術師は式を編んだり魔導術を行使して攻撃を放って来た! しかもそれが全てオリバに当たり……!! オリバ「銃が小さすぎるぜ……なぁジェフ」 ……オリバがとことんまでにバケモンだってことを再認識させられてしまったのだった。 魔導術や式の乱射を受けてなお、両腕を盾にしたからって無傷ってのは……正直どうかと。 無傷っつーても『目立つ傷が無い』って程度で、腕にはきちんと傷がある。 が─── 中井出「み、見ろ!もう皮膚に薄い膜が現れて出血を止めている……!!」 彰利 「早すぎだろ!!10秒も経ってねぇぞ!?」 中井出「……人間じゃないッッ……!!」 あとはもうボコボコ。 見てて可哀想になるくらいの攻撃の果てに、 レファルド皇国が誇る盛栄たちは滅んだのだった……。 ……といっても、まだ将軍だのアルテミュラー元帥だのは残ってるけど。 オリバ 「ン〜〜〜」 兵士35「ヒ、ヒイ!!バケモノだーーーーっ!!!」 ズパラタタタタタ……兵士35、逃走。 つーかなんでファンタジーの兵士どもって、 強い相手が現れると『バケモノだ』って言って逃げるんでしょうね。 彰利 「……行こうか」 悠介 「……そうだな」 中井出「ほんとそう……」 そして僕たちは屍たちが眠る通路をゆっくりと歩くのでした。 先頭にはもちろんオリバ。 全身くまなくマッスルなパーフェクトオリバが、 我ここにありと肩をいからせるように歩いている。 彰利 「怪力無双ッ……これほどのものかッ……!!」 中井出「つーかさ、晦。お前今回のオリバ薬になにかイメージ混ぜなかったか?」 悠介 「魔術や式や魔法に対する防御力を上げるイメージ付きだ。     物理防御の方は……まあオリバだとしか言い様がない」 中井出「素で槍折るだけの腹筋なのかよ!!」 彰利 「すげぇ……さすがビスケット=オリバだ……」 などと話しているうちに、正門から真っ直ぐ歩いた先にある謁見の間へ続く扉へ辿り着く。 彰利 「いよいよだな……」 中井出「だな。まずは紳士的にノックをしよう」 コンコン…… オリバ「カムイン」 悠介 「カムインもなにも、お前ここに居るだろうが」 中井出「いや、オリバとしては満点だろ?やっぱノックした後にはカムインだよ」 彰利 「ノックされる度に言ってりゃ面倒なことこの上ないね」 悠介 「まったくだ。……来るぞ。中井出、下がってろ」 中井出「へ?」 バガァンッ!!───悠介が中井出を庇うように前に出た途端、目の前の扉が吹き飛んだ。 際に生じた煙を裂いて現れたのは───将軍どもだ。 将軍1「愚かなっ───!あれだけ騒げば強襲など予測出来る!!」 一瞬の隙をついた一撃が振るわれる───!! ダメだ、いくらオリバになったからって、藍田はただの地界人だ! あんな攻撃避けなれない! 彰利 「藍田ぁっ!!」  ───ザシュウンッ!! ……そうして。 切れ味が良さそうに鈍く輝く剣の一閃が、藍田の体を切り裂いた───かに思えたが。 将軍1「切れ……ない!?」 オリバ「肌に粗塩を擦り込んである。     古のベアナックルボクサーたちはそうやって切れにくい肌を完成させたものさ」 総員 『何者だよお前!!』 滅茶苦茶でした。 将軍に切られたかに見えた腹部はその実、まるで切れていなかった。 そればかりか状況の説明をするだけの余裕さえ見せ付ける始末……。 ……俺、かなりオリバの実力甘くみてたかも……。 アルテミュラー元帥「怯むなっ!進めェーーーッ!!!」 将軍達&魔導術師達『オォオオオーーーーーーッ!!!!』 将軍たちがオリバ目掛けて駆けて来る……。 なんだかもう心配するだけ無駄だと感じた俺達は、向き合ってから溜め息を吐いた。 そして……炸裂音と悲鳴が数分だけ聞こえ、 その数分が過ぎてみれば……そこにあるものは静寂以外のなにものでもなかった。 彰利 「……ビスケット=オリバってさ、筋肉だけで世界征服できるんじゃねぇの……?」 中井出「俺も今そう思ってたところだよ……」 悠介 「少なくとも、空界の王国なら潰せるだろうな」 彰利 「少なくともどころじゃねぇよそれ」 でも間違い無くツブせそうだった。 実際、こうしてレファルドをツブしてみせたしね。 悠介 「で───オウサマ?」 国王 「ひっ!?な、なんだ……!?貴様ら何が狙いでこんなことをっ……!!」 悠介 「世界における種族の領域ってのを決めに来た。俺は竜族代表だ」 彰利 「そしてこいつがマッスル代表だ」 オリバ「ようこそ───オリバだ」 中井出「ようこそなのは俺達じゃないのか?」 国王 「なにっ……!?竜族だと!?貴様人の身でありながら───!!」 ……オリバはナチュラルに無視されました。 悠介 「俺はドラゴンマスターとしてここに居る。人の身だろうとなんだろうと関係ない。     ……癪だけど、皇竜王レヴァルグリードとして言わせてもらう。     人と亜人と竜族。それらを領域で分けるものとする」 国王 「領域だと……?どういうことだ!」 悠介 「そのまんまだ。竜族には竜族の人には人の、亜人には亜人の領域を作る。     和解出来ない限りは領域への侵入は認めない。     特に───人間相手には厳しく行かせてもらう」 国王 「なっ……何故だ!何故同じ人間である貴様がそんなことを!」 悠介 「人間の中には密猟者が居る。     一度甘い汁を吸ったヤツに立ち直りを求めるのは愚考だろ?     だったら元より近寄らせなけりゃいい。近づけば危険に襲われるだけだ」 国王 「っ……な、何故竜族のためにそこまで……!?」 悠介 「さっきも言ったけど俺は竜族代表でここに来た。     なんの冗談か知らないが、     俺はいつの間にか竜族の間で『皇竜王』にされたらしいからな」 彰利 「ちなみに彼は強引にオリバにされました」 オリバ「ようこそ───オリバだ」 中井出「それはさっきも聞いた。つーかどうせ無視されるぞ?」 国王 「皇竜王……?さっきからなんのこと───い、いや待て、聞いたことがある……」 マジで無視されました。 国王 「確か……伝説上に存在する、空界に住まう全ての竜族の親にして絶対の王……!     そ、その名が確か───」 悠介 「皇竜王レヴァルグリード。……俺はその二代目だそうだ。     なんなら竜化してみせようか?間違い無く城は崩壊するだろうけど」 国王 「竜化───!?き、貴様!伝説に聞く竜人か!?」 悠介 「……埒が明かないな。あのな、さっさと答えろ。     領域の提案に対して賛成するのか否か。否っていうなら実力行使に出るだけだが、     オリバひとりにここまでボロボロな皇国に勝てる見込みがあるか?」 国王 「うぐっ……!」 ……なんつーか悠介、言葉にトゲがあるな。 珍しいこともあるもんだ。 なんか不機嫌みたいだし……どぎゃんしたんだろね? 悠介 「……ところで話は変わるが。     俺が大事に育てていたウォルトデニスを犬のエサにしてくれたそうじゃないか」 国王 「ひっ!?な、なぁあ……ま、ままままさか!?     そんなっ……あの魚は貴様───いえ、貴方様の……!?」 あ……なるほど、そりゃ機嫌悪くもなるか……って、俺教えた覚えないんだけど? ノーちゃんかね。……ノーちゃんだろうねぇ。 悠介 「食用にだけはすることは無いって誓ってたやつらだったんだけどな。     ……お前さ、王様だからってなんでもやっていいって勘違いしちゃいないか?」 国王 「な、なにを言っている……!     威厳を見せるには豪気な部分を見せるのが普通だろう!     我が儘を貫き通すこともまた、王の威厳というものだ!!」 悠介 「……そっか。じゃあいい、お前みたいなヤツが王じゃあ、この国の未来が心配だ。     キッパリ言ってやる。お前は王の器じゃない」 国王 「〜〜〜っ……ぶ、無礼者が!!私は父から王位を受け取った、列記とした王だぞ!     器ならば十分と事足りているだろう!!何が足りないという!」 彰利 「……ここだろ?」 トントンと頭をつついて示してやる。 すると真っ赤になって怒り狂う王様……軽いオモチャみたいで面白かった。 彰利 「戦いってのはなにも力だけじゃないんだぜ?ここさ!ここを使わねば!」 調子に乗ってキン肉マンスーパーフェニックスの真似をしてみると、 素直にまた怒ってくれました。 どうやら頭が悪いと思われるのをかなり嫌っているらしい。 悠介 「ちなみにお前、国民のことをどう思ってる?」 国王 「国民!?そんなもの駒に決まっているだろう!     私のために働き、私のために作物や金を献上するのだ!     これが駒でなくてなんだ!?」 悠介 「お前と同じ人間だ。それ以上でもそれ以下でもない。     それが解ってないから器じゃないって言ったんだ」 国王 「はっ───う、ぐ……!!」 悠介 「決定だな、お前みたいなのがこの先国王やってても、貧民街が広がるだけだ。     お前もう国王やめろ」 総員 『な、なんですってぇええええーーーーーーっ!!?』 大驚愕!まさかあの悠介の口からこげな言葉が出るとは!! あまりの言葉に国王までもがMMRをやらかした! 国王 「き、ききき貴様!なんの権利があってそんなことを!!私は王!王だぞ!!     私の方こそ貴様に命ずる!とっととこの国から出ていけぇっ!!」 悠介 「へえ。交渉は決裂ってことでいいのか?なんなら全面戦争してもいいんだが」 国王 「ぐっ……ひ、卑怯だぞ貴様っ!!竜族を率いて我が国を滅ぼす気か!?」 悠介 「俺の我が儘で竜族を率いるなんてことするか、ばか。相手は俺だけだ」 国王 「……な、なに?貴様……だけ?」 悠介 「そうだ。約束してもいい」 国王 「はっ……は、ははははは!!馬鹿か貴様は!     たったひとりでレファルドの盛栄に勝つつもりか!?」 彰利 「あ、国王〜。言い忘れてたけど、竜化した彼、ミルハザードより強いから。     正面からやりあって、ミルハザードが手も足も出んかったくらいだし。     ホレ、これ証拠の映像」 モシャァンと映像を出現させ、国王サマに見せ付けた。 国王 「ひっ───!?」 すると情けない声で息を呑む王様。 ……まあ、そらそうだよね。あのミルハザードがボッコボコですから。 国王 「わ、わわわ解り、ましたぁっ!!王位でもなんでも差し上げますからっ……!!     どどどうぞ命ばかりはぁっ……!!」 悠介 「…………あのなぁノート?これでホントに良かったのか?」 声  『この者が国の王に相応しいか否かを問いたのは汝だろう。     結果が故に私は助言をし、追い立てる言葉を選んで話してもらったんだが?』 悠介 「………」 あー……やっぱ悠介自身の言葉じゃなかったか。 なんかヘンだって思ったんだよね、口調がいかにも偉そうな人って感じだったし。 ようするにノーちゃんの目から見てこの男は王には向いていないということで、 悠介と相談ののちに追放ってカタチになったってことだろう。 彰利 「そらいいけど……後釜はどうするん?」 声  『心配は要らない、うってつけのヤツが居る』 中井出「なんだなんだ?俺も混ぜろ」 国王がカタカタ震える中、 オリバがその目の前でこれ見よがしの逆三角形ボディでポージングを取る。 そんな景色を横目に中井出が話に混ざってきて、 俺達の会話は何気ない育みをみせていった。 彰利 「うってつけの後釜って?」 声  『元来、といっていいかは微妙だがな。     ランクプレートを持ったブレイバーが高い地位にまで上り詰めた場合、     そのプレートを練成、渡した存在もそれなりの地位が約束されている。     事実、この国の初代国王でさえ、その実績の末に王となったのだ』 彰利 「へぇ……じゃあ初代ってブレイバーだったんだ」 声  『世に唱える【英雄】という存在だ。     三種の宝器と呼ばれていた武具を手に戦った者達のことだがな。     それがかつて、三国の初代国王だった』 中井出「……それってつまり、晦にプレートを渡した……なんつったっけ?」 彰利 「ロムスカ」 中井出「あ、そうそう。ロムスカ=パロ=ウルラピュタだ───って違うだろ!!     マリグナントバリエーションだろうが!!」 悠介 「ミルグナント=ロハイムだ」 彰利 「っ……!!」 中井出「っ……!!」 俺と中井出は揃って『カアア……!』と顔を赤くしたんだと思います。 思いっきり素で間違ってました……ごめんよロハイムさん。 中井出「と、とにかく!そいつを王にするってことか!?」 彰利 「いっそのこと悠介がなっちまえば?」 悠介 「俺はやめとくよ。それこそ器じゃないって前に言っただろ?」 彰利 「ぬう……ダイ・ジンさんも喜ぶと思うんだけどなぁ」 中井出「お───そういやあの人、何処でなにしてるんだろな」 彰利 「さあね。実家で第二の青春送ってんじゃない?」 考えても解らんことってのは大体他人事だよね。 まあ解らんから次の考えを出して検討しませう。 中井出「あ、悠介がダメなら悠黄奈さんに皇女になってもらうとか」 彰利 「馬鹿野郎!!悠黄奈さんは最強のメイドさんにするって決めてあるんだよ!!」 中井出「そりゃお前が勝手にだろうが……。本人の意見を聞いてみるのもいいと思うけど。     さっき話してた時、人間に失望したって言ってたんだけどな?     俺の話聞いてたら     『人というのは悪い人ばかりじゃないんですね』って笑ってくれたし。     それならほれ、悠黄奈さんが人を導くって意味なら変えていけるんじゃないか?」 彰利 「あ〜ぁダメダメ!悠黄奈さんはメイドさんにするのです!     メイドさんが王だなんて冗談じゃありませんよ!     そんなジョブにトキメくヤツも居るだろうけど、     メイドさんはメイドさんだからこそ輝くのだ!!」 中井出「誰もお前の嗜好の話なんぞしとらんわ!     悠黄奈さんの意見を聞こうって言ってるだろが!」 彰利 「愛!LOVE!トラブル!」 中井出「やかましい!!」 悠介 「……ノート、こう言ってるけど?」 声  『悠黄奈を皇女にするのは構わんが、それはまだ実行するわけにはいかない』 彰利 「むっ!?なんでさ!!」 中井出と熱き論争を繰り広げようとした矢先、ノーちゃんの言葉でハッと正気に戻った。 ちなみにこの際の『なんでさ』は、 『皇女にするのは構わん』という言葉へ向けたものである。 声  『様々な枷が外れたマスターだがな。     外れていない……というのは少し言い方が違うが、     ともかくマスターを女にした目的の一部がまだ達成されていない。     それが終われば力を行使し、悠黄奈をひとりの人間として創造してもいい』 彰利 「……目的の一部?なにそれ」 悠介 「まだ遣り残したことなんてあるのか?」 声  『マスター、汝は知らなくていいことだ。いずれ私と弦月彰利とでどうにかしよう』 悠介 「む……。まあいいか、ノートのことは信頼してるし。     お前が『知らなくていい』って言うことは、俺が知る必要が無いってことだろ?」 声  『その通りだ。理解が早くて助かるぞ、マスター』 悠介 「………」 けどその顔は、やっぱり『でも知りたいと思うのは事実だ』って顔だった。 そりゃね、謎が謎のままなのは痒いってもんだ。 声  『すぐに知る必要は無いだけのことだ。時が来れば教えよう』 悠介 「……ああ。のんびり待ってるよ」 オリバ「とんだ誤解だ」 悠介 「へ?」 オリバ「20余年前に樽に詰めたワイン───     まるで今から栓を抜いてグラスに注ぐような……。嬉しいやら楽しいやら……」 中井出「ワインは関係ないけど言いたいことは解るぞオリバ。     ようするにのんびり待つだけじゃ物足りないっつーんだろ?」 彰利 「うむ解った。解ったからサブリガ姿でそこらへん歩かないでくれ」 中井出「そこんところはお前が晦に頼んで創造させたんだから文句言うなよ。     あの晦がサブリガ創造してくれただけでも奇跡ってもんだぞ?」 彰利 「だってオリバっつったらパンツだろ。     こう……なぁ?ケツがキュッと絞まった感じの」 身振り手振りで説明するが、かなり嫌な顔をされたのち─── 中井出「具体的な表現までするなよ……」 呆れられたような溜め息交じりの声で言われてしまった。 ……確かに、オリバのケツを思いながら身振り手振りで説明するのって物凄く虚しい。 経験者は語ります。語るんです。語りますとも。物凄く虚しかったです。 彰利 「ま、まあ今のことは忘れるとして。     悠黄奈さんをひとりの人として具現することなんぞ出来るん?」 声  『うん?……ふふっ、とりあえずで言うならば、世界を融合するよりは容易いな』 彰利 「あ……あー……」 愚問だった。 ノーちゃんてば規格外の精霊だからね……。 中井出「あれ?でもちょっといいか?     悠黄奈さんを具現化するのに文句があるわけじゃないけどよ。     それって晦の中から『人の魂』が無くなるってことだろ?」 彰利 「むっ……そりゃ確かに。そこんところはどうすんのノーちゃん」 声  『ふむ……再びホムンクルスでも飲んでみるか?』 彰利 「勘弁してください」 もう馬糞の霊薬なんて飲みたくないです……。 人をやめた俺だけど、人じゃなくてもそりゃ嫌だ。 声  『言ってしまえば悠黄奈の魂の安定は、マスターの魂との一体化を意味する。     そして───今となっては魂の融合率は100%。     無理に切り離そうとすれば、     今度はホムンクルスを飲んだところで再構築は難しいだろう』 彰利 「そこんところは創造でパパ〜っと」 悠介 「たわけ、簡単に言うな。魂ってのは複雑なんだよ。そう上手くいくか」 中井出「だってほら、分析して複製すりゃいいんじゃないのか?」 悠介 「あのなぁ……分析して複製した時点でそれは悠黄奈だろ。     で、俺の中に居る元の悠黄奈はどうなる」 中井出「あ、あー……そこまで考えてなかったな……」 彰利 「カラの魂作るってのは出来ないん?」 声  『それはやめておいた方がいい。     カラの魂を普通の魂にくっつける行為は確実に体に異常をきたす』 中井出「何故ゆえにぃ〜〜〜……?」 声  『マスターに足りないものはなんだ?人の魂だろう。     ……今現在人の魂である悠黄奈を切り離し、     代用としてカラの魂をくっつけるとしよう。そうするとどうなるか。     簡単だ、空虚であるカラの魂に、今現在存在する竜の魂が流れ込む。     すると、ひとつの魂として確立していた魂が薄く伸ばされるように広がる。     つまり大きくはなるが、存在が薄くなるんだ』 ……ガルピスの原液を水で薄めるようなもんかね? 濃いものが薄くなる……それが魂だと、どうなるんかね。 やっぱ体がダルくなったり、本調子が出なくなったりするんかな。 声  『……間違ってはいないぞ弦月彰利。     だが、これは病気がどうとかという問題じゃない。     なにせ、カラの魂が一体化すれば切り離せなくなるんだからな』 彰利 「へ?……って……あ」 声  『理解出来たか?』 彰利 「一応……。そうだよな、     既に人の魂として確立してる悠黄奈さんの魂を切り離すのとはワケが違う。     カラの魂をくっつけた場合、     その部分にはすぐに元からあった魂が薄く流れちまうんだよな。     それを切り離したら魂が消滅しちまうわ……」 声  『そういうことだ。今回のホムンクルスの魂は確かにカラだったが、     それは私が手を加えたためにひとつの魂として確立したに過ぎない。     そして、何度も何度も魂に干渉すればマスター自身の魂が耐え切れなくなる』 中井出「……死ぬ、ってことか?」 声  『そういうことだ』 彰利 「………」 ゾクっとした。 ただ何気なく話していたことの先にそんな結果があるなんて、と。 中井出「で、でもよ───ぐあ」 彰利 「……中井出?」 中井出「あ、いや……彰利、悪いこと言わねぇ、魂の分離だけは考え直した方がいい」 彰利 「……?」 なにを言っとるんだこの小童は……。 彰利 「あ〜〜〜ん?なにトチ狂ったこと言ってんだ?」 中井出「無理なんだよ……。晦はもう、自分の魂を創造でくっつけちまってる。     ほら、映像で見てないか?俺達の時代の晦が未来の晦と融合する前だ。     シェイドって死神と、魂結糸の解除をするためにいろいろやったことあったろ?」 彰利 「……ぐあ」 そういややってた。 自分の魂を創造して、自分の魂とくっつけて─── あの頃の悠介の創造が完璧だとは思えない。 つーことは、少なからず魂は薄れちまってるのでは……? 声  『いいや、薄れてはいない。     知ってると思うが、【創造】は【創造】じゃなければならない。     死神王がマスターに見せたイメージは確かにマスターの魂のイメージそのものだ。     だがそれは【同じ魂】を創造してくっつけたことと同じだ。     かつて絶望の淵に弱った魂に魂結糸を繋げることで生きながらえたマスター───     その魂は、ルナからの力の汲々無しには満足に動けない体だった。     そんな魂を創造し、合わせた。     なるほど、たしかに活動するには申し分は無くなったな。     が、解るな?それは【同一の魂】を創造……いや、複製したにすぎない。     そんなもの同士をくっつけたところで、過去に削れた魂は蘇らない』 彰利 「うあ……」 ズバーと喋るノーちゃんを前に戸惑う。 事実としては、言葉は耳に届いているが……不安ばかりが掻き立てられて、 悠介がどうなるのかとか考えていると予測さえも出来なくて頭が痛んだ。 彰利 「……あれ?んじゃあ俺の魂はどうなん?     俺の魂自体、悠介に構築されたものだと思ったけど」 声  『汝の魂自体はレオ=フォルセティーの魂を元に象られたものだ。     それを何度も繰り返した先に発生した力が“ブラックオーダー”だ』 彰利 「………」 ……つまり、俺ってば誰よりも死神の血が濃いってことですか? 魂レベルから死神ってことですか? 俺的にはただ、ブラックオーダーってのは 自分を黒にして他を白にしようって思ったための名前だったんだけど。 ……ちゃんときっかけってのはあったのね。 歴史を繰り返しまくったとはいえ、大半の月操力を自分ひとりでマスターできたのは…… 案外死神としての濃さにあったのかもしれない。 その分、人から離れた存在だったって理由も───それならなんとなく頷けた。 レオが最初っから随分強かった理由が解った気がするわい。 声  『汝は他の誰よりも死神としての色が濃い。     そして───死神の象徴とは【死、闇、黒、影】。     その中でも汝は黒であることを望んだ。その結果が今の汝だ』 彰利 「ほへ〜……」 人生ってまだまだ何が起こるか解らんね。 千年生きた程度じゃ足りなすぎるよ。 まぁでも、人としての感情の欠落条件には十分すぎる理由だった。 ようするに人よりも死神に近すぎたんだ。 さらに言えば……魂がレオに近しすぎたため、感情さえレオに奪われたってこと。 『レオは元々感情を持っていた』。 その言葉の意味するところは、そこにあるんだと思う。 ……な〜んてことを思っていた時。 ドパタタタタ……!!! 兵士36「国王!無事ですか!!」 ……邪魔者がわっさりと現れた。 当然視線は国王の前で筋肉をみせびらかしているオリバへ。 兵士37「貴様ぁあああ……!!国王から離れろ無礼者め!!」 オリバ 「ん〜〜〜〜……」 ……もう無視していいと思う。 俺達のことなんぞ無視して駆け出す兵士たちは、まっすぐにオリバ狙ってるみたいだし。 彰利 「……話、戻そっか」 悠介 「そうだな」 中井出「ほんとそう」 コホリと咳払いをして、俺達は再び話を始めました。 彰利    「つまるところ───悠黄奈さんの分離は出来るの?出来ないの?」 声     『最初に言っただろう、目的さえ果たせば具現してもいいと』 彰利    「でもそれだと悠介の人間の部分が無くなるってこったよね?」 声     『ああ。そして干渉しすぎれば魂が弱まるのも事実だ』 中井出   「じゃあどうするんだ?」 声     『……いっそ人間を捨てるか、マスター』 悠介    「ん……べつに構わないけど」 彰利&中井出『なっ……なんだってーーーーーーーっ!!!!』 大驚愕!なに考えてんのこの人!! 彰利 「な、なんば言いはらすばいこんげら!!     あんた自分がなん言いよっつか解っとーと!?かんなじばーーい!!」 中井出「いや、なに言ってんのか解らん」 悠介 「守りたいものを守るためなら人じゃなくてもいいって思ったのは事実だぞ?     だからべつにいいかって思ったわけだし」 彰利 「なんと!だったらおめぇ……あれだ!産まれてくる子は竜人か!?」 声  『いいや、竜の力は遺伝しないだろう。     代わりに死神の血を濃く受け継いだ子が産まれるのみだ』 彰利 「なんで!?だって竜でしょ!?遺伝しないの!?」 悠介 「……中井出、説明たのむ」 彰利 「なんと!?おのれ提督!この俺を差し置いて理解できたというのか!?」 中井出「だって軽く考えてみれば簡単だろ?     お前さ、死神と竜の間に子供が生まれると思うのか?」 彰利 「あ」 ……うわぁ、すげぇ単純。 そうだよなぁ、産まれるわけねぇや。 中井出「つまり、悠黄奈さんを切り離した時点で、     晦は竜か死神か神のうちのどれかの状態で行動することになるってことだよな?」 悠介 「まあ……そうだろうな。     でも神の状態だとルナがやかましいだろうから死神になると思う」 中井出「ラブラブですな」 悠介 「やかましい」 彰利 「……FUUUUM」 ……なんでしょうかね、どこかピンとくるものがありました。 フフフ、ノーちゃんの目的が見えてきた。 ようするに…… 声  『……そういうことだ。いずれ近いうちに手伝ってもらうことになるが、いいな?』 彰利 「オーケ。そういうことなら喜んで手伝わせてもらうわ。     で、質問なんだけど。悠黄奈さんを切り離したとして、     悠介の体ってやっぱ人の姿にはなれなくなるの?」 声  『それはない、魂と肉体は別だ。     そもそもマスターの肉体自体がマスターが創造したものだ。     人の魂が離れたところでどうということはない』 彰利 「じゃあ今まで通り竜人状態は可能と?」 声  『当たり前だ』 ……それもそうでした。 人としての魂が無いからって人の姿が出来ないなんて決まりは無いし。 彰利 「なんだ、じゃあアレ実行すりゃああとは特に問題ないわけね?」 声  『そうなるな。……説明することはそれだけだ、あとは上手くやれ』 彰利 「ラジャッス。んじゃあ次行こか?丁度オリバもコトが終わったようだし」 中井出「いや……マジで強ぇえわ」 ふと見てみれば、山のように積み重なった兵士たちの前で これみよがしの逆三角形の肉体美を見せ付けているオリバが。 30人くらい居たんだが……大して役に立たなかったらしい。 さらに気づけば悠介が国王の前に立ち、ワールドマップを見せて何かを言っていた。 と……物凄い勢いでコクコクと頷く王様。 どうやら交渉は成立したらしい。 悠介 「終わった。次行くか」 中井出「新しいオウサマはどうするんだ?     即興のオウサマなんぞに付いて行く民が居るとは思えないが」 悠介 「そうか?少なくとも傍若無人な王よりはやさしい王を選ぶと思うが」 彰利 「まーね、ムスカくんはなんだかんだでやさしい雰囲気あったし」 悠介 「ムスカじゃなくてロハイムだっての……どうやったら間違えられるんだよ」 彰利 「不思議だね」 悠介 「……はぁ」 溜め息吐かれてしまった……でも苦笑気味だからいいか。 オーライオーライね。 彰利 「よしゃ、次何処行く?」 中井出「オーエン行ってみないか?たしか城が黒竜王にブッ潰されたんだったよな?」 彰利 「あー、そうだったそうだった。確かに気になるね。悠介もそこでいいかね?」 悠介 「ああ。オリバ〜、行くぞ〜」 オリバ「 大問題 (シリアスプロブレム)だぜ」 悠介 「なんだそりゃ……」 ともあれずっしゃずっしゃと歩いてきたオリバとともに、転移を実行しました。 オーエンならばVSモンスター軍団の時に守った場所だ、転移ならお手のものです。 ───……。 ……。 ビジュンッ……!! 彰利 「愛……」 ジョジョの奇妙な冒険ヨロシク、 俺と中井出とオリバは奇妙なポーズのままオーエンの城の前に降り立った。 悠介 「じゃ、行くか」 彰利 「オウヨ」 中井出「うむ」 オリバ「ソノダよ───協力しよう。     残る2名───彼等に───わたし以上の自由は許さない!!!」 彰利 「自分勝手だねキミ」 中井出「だがその意気や良し!!行こうぜオリバ!!」 ……そして僕らは思うのだ。 オリバさえいれば、構える必要などないだろう、と─── ───……。 ……。 ドゴォンッ!!バゴメギョドゴォオオオオオンッ!!!! 兵士ども『ギョェエエエエエエーーーーーーーーッ!!!!』 ドゴロシャバキベキメキャキャ…… 吹き飛んだ兵士どもの先の扉が、音を立てて崩れ落ちる。 オリバ「こんばんは(グドゥ・イブニン)、Mr.ドイル」 国王 「な、ななななんだ貴様は……!!」 その先の謁見の間には動揺する国王サマが。 そりゃそうだ、扉が破壊されたと思ったら、 次の瞬間にはそこからマッスルボディが出てくるなんて状況、誰だって動揺する。 とまあそんなオウサマの動揺を余所にオリバは歩き───やがて。 ギュッ……ミキ……! 国王 「痛ッ……!!」 オリバ「遠路はるばるようこそ訪ねてくださった……園田警視正。オリバだ」 オリバのデカい手が、カタカタ震えていたオウサマの手を握った。 つーかミシ……とか鳴った気がしましたが? オリバ「明日でもよかったんだがわたしはせっかちでね」 国王 「な、なんのことだ!私は貴様のような者など知らん!!     そもそも訪ねてきたのは貴様だろう!!」 オリバ「ン〜〜〜……」 ミシシッ……!! 国王 「はぎゃああ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!お、おのれっ!!」 手を強く握られたことで逆上したのか、 オウサマは懐から短剣を取り出すと、オリバの心臓目掛けてそれを振るったッ───!!  ───ゴシャァンッ!! 国王 「は、ああ……!?」 が、短剣は心臓に達することもなく無残に砕けた。 オリバ「心臓をプレートでカバーしてあるのさ」 総員 『ウソつけ!!今絶対皮膚の時点で砕けてただろ!!』 人間じゃねぇにも程があるぞオリバのヤツ!! 皮膚で短剣砕きやがった!! 彰利 「ゆ、悠介!悠介!!     あのままじゃオウサマ、『キミはつまらん』って言われて殺されるぞ!     今のうちにさっさと話つけるべきだ!」 悠介 「わ、解ってる」 状況に呆れていた悠介を促して、早速交渉に移りました。 したっけね、あっさりOKが出たとですよ。 さすがオリバパワー…… 悠介 「オーエンの城が現代をベースにされててよかったな。     ……なぁんて、思う暇もなかったな」 彰利 「そうね」 中井出「ほんとそう」 なにせあまりの恐怖にオウサマが漏らしてしまったほどだし……。 これじゃあ彼、もうオウサマやってられないっしょ。 場内の出来事って噂として漏れやすいらしいし。 悠介 「……次、行くか……」 彰利 「そうね……」 中井出「ほんとそう……」 どこか気の毒な雰囲気を残したまま、我らはオーエンの城をあとにするのでした……。 ───……。 ……。 えー、はい。 レファルドとオーエンは知ってるけど、ファウエルは知らない弦月彰利です。 ということで現在はディル殿に乗って移動中。 ディル殿の話ではそう遠くないそうなので、まあすぐ着くでしょう。 だってディル殿だし。 中井出「速ェエエエエーーーーーーーーーーッ!!!!!」 さてそんな中、飛竜に乗るのは初めてな中井出の顔が、 風に煽られるようにバルバルと歪んでいた。 あ、いや……煽られるどころじゃないねこれ。 思いっきり歪みまくってるし。 どうやら目も開けていられない状況らしい。 中井出「イヤァアアアーーーーー止めてぇえええーーーーーーっ!!!!     怖い速い怖い速い速い怖いぃいいいいーーーーーーッ!!!!」 彰利 「情けないぞ提督!見よ!     オリバなぞ堂々と風を浴びながらも目を開けているぞ!」 中井出「超規格外生命体なんだから当たり前だろうが!!     傷ついても10秒以内に治るって何者だよ!!」 オリバです、としか言い様がないんだが。 しかもオリジナルオリバより回復力が凄まじい。 ディル『着いたぞ、王よ』 悠介 「ん───サンキュ、助かった」 ディル『気にするな。またいつでも呼び出せ』 悠介 「ああ。───っと、そうだ。ノート」 ノート『解っている』 と───辿り着いた途端、悠介がノーちゃんを指輪から召喚して何かを促した。 出てきたノーちゃんは目的のみを実行するかのように腕を振る。 と、それだけで目の前のディル殿と悠介が持っていた皇竜珠が五つに分かれた。 ……ってそうか。悠介があんな状態だったから、 今までずっと融合したままだったんだよね。 などと忘れていたことを思い出していると悠介はバハムートを召喚し、 それもノーちゃんに分離させてもらっていた。 さらには全ての指輪から全ての精霊を召喚し、 そうして自分の中に存在する全ての意思を目の前にするに至り…… 悠介は一度頭を下げたあと、笑って言った。 悠介 「悪い。それと……サンキュ。迷惑かけたし、助かった」 言いたかったのはそういうことなんだろう。 迷惑かけっぱなしで黙ってるような悠介じゃない。 じゃけんど……ええ笑顔をしましたね。 親友の俺でも滅多に見ることのなかった笑顔でした。 ホレ、中井出なんぞ、思いっきり驚いた顔してるし。 中井出「……な、なんつーか……晦ってあんな顔できたんだな……」 彰利 「まあね。俺も数える程度しか見たことないけど嫌いではないよ?」 オリバ「愛だ……」 中井出「藍田?自分の名前なんか呟いてどうしたんだ?」 彰利 「オウ?おお、そういや藍田と愛だってそのまんまだね。さすがオリバだ」 オリバ「黙れッッ!!」 ……怒られてしまった。 まあそれはそれとして、 召喚獣や精霊たちに囲まれてわやわやともみくちゃにされてる皇竜王を見るに…… 親友のオイラはちと複雑な心境で苦笑を漏らしました。 ただ……悠介も変わったな、と。 今まで『友達はひとりでいい』って言ってたあいつが、 今では俺以外の前であの笑顔を見せている。 そんな事実に、ちょっとばかり寂しさを覚えた。 ……ダメだねぇ俺って。 彰利 「……パパッと行こうかぁ。     空界でのやることが終われば、次は地界で花見じゃけぇ」 中井出「お、そういや映像でそんなこと言ってたよな。いいねぇ、俺も混ぜろ」 彰利 「当たり前じゃあ。大勢で楽しんだ方が面白いだろうし」 ノート『花見か。桜によく似た木でいいなら、     ハローナル渓谷とロックスフォールの滝を挟んだところにいい場所があるが』 彰利 「なに!?マジかてめぇ!!」 ノート『ウソをついてどうする。汝と一緒にするな』 中井出「……言われてんなぁお前」 彰利 「ほ、ほっといてくれたまえ!」 ───とまあそんなこんなで。 この後、このままの勢いでファウエルまでもがオリバの手で滅ぶこととなる。 たったひとりのマッスルボディに負けたとあって、 三国の王城に住まう者どもの信用はガタ落ち。 結局のところ俺達が何を言うまでもなく 王に不満を持っていた民たちがクーデターを起こし─── のちに三国それぞれの王に新たに就いた者達は、 民のために身を費やし、たくさんの民に見守られながら息を引き取ることとなる。 そんな王たちを就かせるきっかけとなったマッスルボディ、 ビスケット=オリバは空界における時の人と称され─── いつしか空界では知らない者は居ないとされ、本にまでされるほどの人物となる。  ───これぞ。  のちに語られる『ビスケット=オリバ伝記』である─── ……いや、デマですよ? 今の時点じゃどうなるか解らんけど。 Next Menu back