───呪いから解放される竜と哀れな人達と改造される人と傍観して楽しむ黒───
【ケース19:晦悠介/テスカポリトカに愛の手を】 ドドンッ!!───ババッ……バラバラ…… アルテミュラー『それではこれより魔闘大会剣術の部、予選を開始する!!』 翌朝。 空に飛ばされた花火が炸裂し終わる時を合図にしたかのように、アルテミュラーが叫ぶ。 まだ眠いヤツも居るんじゃないかと心配もしたが、そこのところはアレだ。 体調を本調子にする通り道というものを創造し、 そこを通って闘技場に入ってもらうようにしてある。 彰利 「しかしさ、なにも通り道を鳥居にすることなかったんでないかい?」 悠介 「気にするな。創造しやすかったんだ」 彰利 「………」 中井出「まあ……そうだろうな。     あ───ところでさ、みさおちゃん最近見ないけどなにやってるんだ?」 彰利 「ありゃ?前に言わなかったっけ。ヤムヤムのところで前世の意識調査されとるよ。     ちぃと時間かかるからって言っとったし、     悠黄奈さんに付き添いに行ってもらったからなんとかならぁよ」 中井出「そか。終わったら地界に帰るんかね」 悠介 「どうだろうな。前は随分と一緒に居ようとしてたけど、     あれだけ怖い目に合うとどうなるかなんて解らないからな」 彰利 「だぁねぇ。ヤツもまさか、かつての幼馴染に喰われるとは思わなかったっしょ。     案外、今じゃアカデミーの手伝いとかしてんじゃないのかい?」 思い思いのことを言いながら、コトの進みを見送る。 最初は城の訓練場でやる筈だったソレは、 ノヴァルシオのコロシアムを模した創造闘技場ですることになった。 俺と彰利と中井出は既に、その客席……というか観覧席に座っていたりする。 悠介 「そういえば……こうして誰かの戦いを見守るのって初めてな気がするな」 彰利 「キミ、戦ってばっかだったからね。俺はそうでもないよ」 中井出「俺は見守るっていうか映像で見ただけだからなぁ」 などと言っていた時、対象に向かい合った通路からひとりずつ剣士が現れた。 一般兵『緑竜の方角ッッ!!ガスタング=ラガンダート!!』 ガスタ「オォオーーーーッ!!!!」 一般兵『黄竜の方角ッッ!!モラン=ホシモス』 モラン「かかってこいぃっ!!」 ……マテ。 なにやら今、グラップラー刃牙の闘技場みたいな出場文句が聞こえたような…… 悠介 「……お前か」 彰利 「え?何が?」 中井出「あの入場文句のことだろ。バキっぽさを演出させたのか?」 彰利 「なんか面白そうだったし。気合入れて叫んだほうが観客も盛り上がるっしょ?」 中井出「そりゃそうかもしれんが。     知ってる俺達にしてみれば力が抜けてくような掛け声だな。     どうしてもガイアの極上スマイルを思い出すぞ」 彰利 「ええやん、べつにオイラたち戦わんし」 悠介 「そうだな、のんびり見守ろう。たまにはこういうのもアリだろ」 中井出「まーね。ファンタジーっていったらなんだかんだで闘技場とかだし」 ドワッシャァアアーーーーーン!!!! 一般兵『開始(はじ)
めぇいッッ!!』 空気さえ振動するくらいのドラの音とともに、開始の合図が下される。 それとほぼ同時に両者は駆け出し、模擬刀で互いを攻撃しだした。 彰利 「よく出来てるよなー、アレ」 中井出「あぁ、あの武器だろ?確か公平を規すための皇国指定の武具を、     全部殺傷能力の無い武具として創造したんだっけ」 悠介 「ロングソードの模擬だから消費は低かったよ。     体術関連の武具も同じ材質のものだ。ただし、絶対に折れも曲がりもしない」 さらに言えば人を貫いたりは出来ないように出来ている。 ゆえにこの大会で死者は有り得ない。 原則として、寸止め以外の頭部への攻撃は禁じられているからだ。 一般兵『勝負ありッッ!!勝者、ガスタング=ラガンダート』 ガスタ「うぅうーーっしゃぁああーーーーーっ!!!」 闘技場の中心では、モランが剣を弾き飛ばされ、頭部への寸止めで勝負を決されていた。 寸止め以外の頭部への攻撃は禁じられているが、寸止めをされた時点で勝負は決まる。 当然だ、頭部を破壊されれば戦えるわけがないのだから、 頭部への寸止めをされれば勝負ありと断ずるのが当たり前。 一般兵『第二試合ッ!!赤竜の方角ッッ!!オボベバーニョ=ムジョルニア!!』 オボベ「ウオーーーッ!!」 一般兵『蒼竜の方角ッッ!!キャプテン=T=トーマス』 キャプ「T!」 一般兵『開始めッッ!!』 ……そんなこんなで闘いはどんどんと進んでいった。 案外傍観しているというのはハラハラするもので、 この感覚はK-1を見ている気分に似ていると中井出が言った。 彰利に言わせれば、逃げ回るヤツが居ないだけこっちの方が遥かにマシだそうだが。 ───……。 ……。 一般兵『第五十二試合ッッ!!緑竜の方角ッ!!テオ=アグドゥガー!!』 テオ 「………」 一般兵『黄竜の方角ッッ!!リアナ=マグベストル!!』 リアナ「お願いします」 一般兵『開始めッッ!!』 ……?あの女─── 彰利 「おろ?あのおなごって門番に捕まっとったヤツじゃないかね?」 悠介 「ああ。あの女剣士だ」 中井出「そうなのか?俺じゃあ判断できないな……あの時、遠くて見えなかったし。     でも……へー、リアナっていうのか。結構カワイイじゃん」 彰利 「フフフ、そちも男よのぅ……判断基準が『カワイイ』かどうかなど」 中井出「へ?あ、いや、べつにそういうつもりで言ったわけじゃなくてだな……」 彰利 「でも相手が悪そうだわいな。相手さん、テオ=マクドールみたいなヤツじゃん。     名前もテオで同じ名前だし」 悠介 「……いや」 彰利 「へ?」  フオッ───ギィンッ!!! テオ 「───……!!」 リアナ「………」 一般兵『……え?あ、しょ、勝負ありッッ!!』 一瞬だった。 女と油断して、面白半分に大振りになった一撃を弾いての寸止め。 テオは目の前で止められた剣の切っ先に動けなくなって、あっさりと勝負はついた。 彰利 「ホッホ〜、やりおるのぅ」 中井出「え〜、今のはどう見ますか、解説の藤原海苔香(ふじわらノリか)さん」 彰利 「とりあえず格闘技の解説者の中に現れるのはやめてください。     男の解説者もわざわざ藤原さんに話を求めないでください。鬱陶しいです。     マキシマの言う通りですね、意見を求めるヤツっていつだって鬱陶しいです。     特に感動際限VTRを見せたあと、『どうでした?』とか訊くヤツは邪魔だ。     だから『ほん怖』で吾郎さんがそれをやった時はオイオイと思ったものです」 中井出「ハイ、厳しい意見をありがとうございました。そして俺も同意見です」 悠介 「………」 とりあえず彰利と中井出の話を聞き流しながら、通路へ戻ってゆく女剣士を見送った。 ……頑張ってもらいたいもんだ。 騎士っていうのは男ばっかりだし、女騎士が居てもいいと思う。 実力を一番に考えるなら、それもアリな筈だ。 彰利 「ほっ?なにあのおなごをジッと見たりしてんだ〜い?」 中井出「さてはオマエ……感情を取り戻した途端にホレたか?」 悠介 「惚れるかたわけ」 彰利 「……ふむ。キミの心配ってやっぱそこなん?」 悠介 「心配?」 彰利の突然の質問に、意図が解らずに訊き返した。 すると彰利は小さく頬を掻きながら返す。 彰利 「や、感情取り戻した時、なんだか微妙な顔しとったから。     なまじっか感情手に入れちまったもんだから、     それでルナっちを好きじゃなけりゃあ     結婚がどうとかって複雑だ〜とか考えてんじゃねぇのかね?」 悠介 「………」 彰利 「あら図星?」 困ったことにその通りだ。 以前の俺は恋愛感情も無いままにルナと結婚した。 好き好んで俺なんかに付きまとう相手なんてあいつくらいだったし、 実際恋愛感情が無かった俺は、他に好きなヤツも居なかった。 悠介 「まあ……な。そりゃ考えもするさ。好きって感情は確かに手に入れた。     けど、だからってルナが好きなのかって言われれば違う気がする」 中井出「へ?じゃあなに、オマエって好きでもないのに結婚して子供まで儲けたのか?」 悠介 「……正直に言えばそうだな。     『一緒に居て当然』みたいになってたから結婚した。それは事実だ」 中井出「うおう……」 中井出が微妙な顔をした。 が、彰利はそうでもなく、むしろ不敵な笑みを浮かべて俺を見ていた。 彰利 「まあ、いいんでないのかい?今ではこうして感情も手に入れたんだし、     誰かを好きになったらルナっちに遠慮なぞせずに付き合ってみるのも。     たとえば〜〜〜……さっきの剣士のおなごとか」 悠介 「そういう邪推はやめろ、たわけ」 彰利 「そうね」 中井出「ほんとそう」 彰利 「でもな、親友。     本当に誰かを好きになったら、ルナっちに遠慮することなんてないぞ?     しょうがねぇじゃん、好きになっちまったらさ。     結婚したのは未来のオマエであって、現代のオマエには関係無いだろ?」 悠介 「そりゃあな。でも考えてもみてくれ。俺とルナの間には『深冬』が産まれた。     俺は親らしいことなんて少しもしてやれなかったけど、     あいつは確かに『俺の娘』なんだ。     そいつが生まれてくる可能性は俺とルナが連れ添った時のみだろ?     ……普通ならあいつが生まれる筈だった、とか思うとやりきれなくてな……」 中井出「……なんかオマエ、すげぇよ」 彰利 「そうだな……普通そこまで考えられねぇわ。でもそれ間違ってるぞ。     恋愛は自由さね。そりゃね、悠介の場合は     ルナっちにも未来から来てもらって融合してもらってるけどさ。     それでも夫婦ってことになってるんかな。     考えてもみろ……あそこは現代であって未来じゃないだろ?     それじゃあ悠介とルナっちが結婚したことを認める要素は何処にも無い。     だったらホレ、きさんが誰とどう恋愛しようと無関係じゃん」 悠介 「……お前に恋愛ごとをご教授される日がくるとは思わなかった……」 彰利 「茶化すなって。俺、真面目に言ってんだぞ?     そりゃあルナっちにしてみれば浮気されたようなもんかもしれない。     でも融合したって意味も含めれば、そんなモンは半々なんだよ。     未来の悠介と現代の悠介が融合したってんなら、責任も半分だし自由性も半分。     悠介にゃあちゃんと半分の自由要素があるんだよ」 中井出「だな。べつにいいじゃんよ。     俺達はなにもルナさんを嫌えって言ってるんじゃない。     これって逆に言えばチャンスだろ?     お前がルナさんのことを好きでもないのに結婚したってことを     少なからず後悔してるんだったら、今度は好きになって結婚したらいい。     でも───たとえルナさんを好きになれずに     他の人を好きになっちまったって、ルナさん以外誰もお前を責めないよ」 ……まあ、ルナは確実に怒るだろうな。 あいつはそういうヤツだ。 悠介 「………」 一般兵『勝負ありッッ!!勝者、アハームドゥ=ジ=ハットゥァー!!』 アハー「グッジョブ!!」 彰利と中井出が心配の言葉をかける中、 俺はただ静かに、流れるように進む武術大会を眺めていた。 解ってはいるけど、実際に未来がどうなるかなんて誰にも解らない。 感情は手に入れたけど、だからってもう誰かのことを好きなわけじゃない。 悠介 「……好き、ね……」 まったく困った感情だった。 まあ、のんびり考えていこう。 時間はまだまだたっぷりあるんだから。 そう───言ってしまえば一万年近くも。 けどルナがそれだけ生きれるかは解らない。 せめてあいつが生きていられるうちに、答えを出してやらないと……。 ……情けないな、本当に……。 ───……。 ……。 一般兵『以上で予選を終了します!!     勝ち残った者たちは宿に戻り、翌日に備えてお休みください!!     本選は翌日の早朝からです!遅れぬように勤めてください!』 ワァッ、と闘技場が沸いた。 俺達はそんな景色を眺めながら、小さく苦笑し合った。 彰利 「結局、あんま試合見なかったねぇ」 中井出「まあまあ、本選のほうがいい勝負見れるって。だったらそれを待とうじゃないか」 彰利 「だぁね。悠介も、あまり悩まんほうがええよ」 悠介 「お前が言うか、それを……」 中井出「確かに……」 彰利 「むっ!?あ、いやだってさ、しゃあないじゃん。気になってたんだもん。     そりゃあ闘い見ながら言うことじゃなかったかもしれんけどさ」 悠介 「……なぁ彰利」 彰利 「む?なんぞね?」 悠介 「……感情って面倒くさいな」 彰利 「………」 ポカン、という擬音が合う顔がそこにあった。 けどすぐに破顔すると、彰利は『そうだな』って笑った。 彰利 「さてと。明日になるまで暇になったわけだが───そこゆく暗い悠介くん。     そろそろアレ、行かない?」 悠介 「アレ?……ああ、アレか」 中井出「アレ?なんだそりゃ」 彰利 「まぁよ、まぁああああよ。来てみりゃ解るって」 悠介 「座標はレブロスト山でいいな?」 彰利 「オウヨ。ついでに復興都市ユウスケにも寄っていくべや」 悠介 「そうだな……いい加減ツブしておく必要があるよな……」 彰利 「ア……シマッタ」 中井出「アホ……思い出させてどうすんだよ……。     このまま残しておこうって作戦が台無しじゃねぇか……」 彰利 「し、失礼しましたサー!!」 中井出「ええい許さん!!貴様なんぞキャベツの刑だ!!」 彰利 「ヒ、ヒイ!!それだけは勘弁ギャアアアーーーーッ!!!!」 中井出が取り出した常備用一口キャベツ(腐らない仕様の創造物)が、 大口を開けて遠慮した彰利の口に放り投げられた。 ……当然、彰利気絶。 こんな当然はおかしなものだが、 実際キャベツを口に含んだだけで気絶する者が居るから不思議だ。 悠介 「じゃ、いくか」 中井出「おう」 男らしく前に倒れた彰利を、中井出が足を引っ張ることで引きずる。 闘技場独特の石で出来た足場が容赦なくゾリゾリと彰利の顔を削ってゆくが、 面白いから無視して進むことにした。 ───……。 ……。 ビジィッ……ヴンッ……!! 悠介 「……よし、到着」 中井出「……へぇ、ここがレヴロスト山か」 悠介 「鉱山らしいんだけどな、この山の頂上にシュバルドラインの住処があるらしい。     俺も歴史書を見ただけだから断言は出来ないけど、     レブロウドに居た時にこっち側からシュバルドラインが飛んできたのは確かだ」 中井出「あ、そういやあっちにユウスケが」 悠介 「レ・ブ・ロ・ウ・ド・だ……!!」 中井出「あ、いやはははは……御意」 まったく……なんだってあんな名前になっちまってるんだ……? それもこれも、絶対にあのジジイの仕業だぞ……!! 今度という今度はとっ捕まえて修正させてやる……! 悠介 「クォックォックォッ……!!」 中井出「……晦〜、彰利に取り付かれてるぞ〜」 悠介 「───ハッ!?」 あ、危ねぇ!!今なに口走ってた俺!! 彰利 「ほっほっほ……ダーリンも俺のほうに傾いてきたってことじゃね……?」 中井出「そうかそうか……この際貴様がいつから起きていたかは無視しよう。     そしてようこそ、『こちら側の世界』へ!!」 悠介 「ま、待て!今のは───……お?」 彰利 「ア」 ふと見た地面。 そこに立っている俺の足と、彰利の足を……謎の黒い物体が繋いでいた。 彰利 「イヤイヤ違ウヨ?オイラベツニ黒ヲ通シテキミの行動ナンテ操ッテネィェ〜」 マゴシャアアーーーーーーンッ!!! 彰利 「へぶしーーーーーーっ!!!!!」 ドギュラララララララララゴシャメシャゴシャアアアアアーーーアーーーーーッ!!!! シルフを纏わせた拳を進呈してやると、彰利が高速横回転しながらしばらく宙を舞い、 やがて大地に倒れると物凄い速さで転がっていった。 悠介 「……いきなり呼んで悪い、シルフ」 シルフ『気にするなマスター。いつでも呼べばいい』 そうして、シルフが指輪に戻ったことを確認してから歩きだした。 悠介 「よし、行くか」 中井出「うわメッチャいい顔ッ!!」 彰利 「ほがががががが……ま、待ってぇえええ〜〜〜〜……」 中井出「うわ……お前顔面神経痛みたいな顔になってるぞ……?」 彰利 「いや……冗談抜きで顔面が空飛ぶかと思った……」 中井出「世に言う“自業自得”ってヤツか」 彰利 「ちょ、ちょっとしたオチャメだったのに……」 中井出「自分の意思とは別のことを強制されりゃあ誰だって怒るわ」 彰利 「うう、ちくしょう……」 中井出「ぬう、覇気が足りんぞ覇気が。     仕方ない、ここで貴様に元気になる処方箋を授けよう」 彰利 「お、押忍……お願いします提督」 中井出「『ワムウ!!』」 ビッシィンッ!!───……元気になった。 彰利 「おお……どうしたことか。体から力が沸きあがるようだ……!」 中井出「うむ、見事に引き締まったケツだ。     これでワムウやエシディシやカーズに恥ずかしくない紳士になれたぞ」 彰利 「いや、紳士関係ないし」 中井出「まったくだ───って!おーい晦ぃいーーーっ!!置いてくなーーっ!!     お前に置いていかれたら竜族が怖いだろうがぁーーーーーーっ!!!!!」 彰利 「キャーーーッ!?そげなこと言ってる間に黄竜が次々とぉーーーーっ!!!     よ、よし中井出!やぁっておしまい!!」 中井出「無茶言うなぁああーーーーっ!!!!」 ───……。 ……。 ……そうして、やがて頂上へと辿り着いた。 黄竜王『……王か。何の用だ』 目の前にはシュバルドライン。 かつて、全力を出し合って殺し合いをした相手だ。 悠介 「ん、呪いを解きに来た」 黄竜王『なに───?そ、それは本当か、王!!』 悠介 「一応本気だけど……やらないほうがいいか?」 黄竜王『いいや、やってくれ。     我が身にある呪いが無くなるのなら、それほど喜ばしいことは無い』 悠介 「そっか。じゃあ、始めるぞ」 シュバルドラインの巨体を見上げ、意識を集中させる。 行使するのは『分析』。 シュバルドラインの中に存在する呪いの構造を見極め、それを切り離す。 悠介 「───……ン!見つけた!!」 ここ最近は分析修行ばかりしていたから、多少の無茶は可能になった。 竜王を分析するなんて、以前の俺だったら血でも噴き出して倒れていたことだろう。 事実、竜族の分析だけで倒れたくらいだ。 悠介 「イメージ、超越にて開放!“乖離剣(エア)”!!」 賢者の石の力で浮き上がらせた『構造の羅列』にエアを徹す。 すると───鋭い音とともに、シュバルドラインの体から構造の羅列の一部が乖離される。 俺はさらに切り離した一部に意識を繋げ、解放を促した。 “人”ひとりの在り方を元に戻すことなんて、竜一体を戻すより簡単だ───!! 悠介 「“再生せよ汝(クリエイション)───”!!」  キィイ───ツパァンッ!!! 空中で構造変換したこともあり、 切り離したことで宙に舞っていた『呪い』が人の姿へと変わる。 と─── 女性 「え───たわぁっ!?」 ドゴシャッ! 悠介 「あ」 黄竜王『………』 ……顔面から地面に落ちた。 えーと…… 女性 「あ、いたたた……はっ!?」 顔の痛みをこらえていた女性だったが、すぐさまに起き上がると戦闘体勢を整えた。 女性 「覚悟しなさいシュバルドライン!わたしは───」 悠介 「チョップ」 デゴシッ!! 女性 「はきゅうっ!?」 戦う気満々の女性にチョップを進呈。 と、女性は涙目になりながら俺を睨んできた。 女性  「うぐっ……なにっ!!」 悠介  「落ち着けの一言を送らせてくれ。それと───あんた、イセリアだろ?」 女性  「……え?なんでわたしの名前───」 黄竜王 『退け、魔術師よ。もはや貴様と戦う理由が存在しない』 イセリア「え?え……?」 困惑するイセリア。 俺はそんな彼女に、一から説明してやることにした。 ───……。 ……。 イセリア「…………ホント?」 悠介  「本当だ。もう人間と竜族と亜人が戦う理由が無い。      だからあんたがシュバルドラインに呪いをかけてる必要性も無い。      良かったな、自分自身を呪いの楔にしてなかったら再生できなかった」 イセリア「呪いっていう固体概念の無いものから人を再生するなんて……あなた何者?」 悠介  「それを説明すると長いが」 イセリア「構わない。わたしも研究者の端くれだからね、謎が謎のままなのは痒いの」 悠介  「そっか。じゃあ───」 こうして俺は、俺がどういった経緯でどういう道を歩んだのかを説明するのことになった。 ───……。 ……。 イセリア「うう……本当に長かった……」 悠介  「言っておいただろ?長いって。      というわけで、人の魂は無いが人の体は持ってる───      竜人で竜で死神で神で猫で召喚師で精霊召喚師で創造者で魔導術師で魔術師で、      賢者で五体の飛竜とともにあるドラゴンマスターであり、      竜族の王である皇竜王レヴァルグリードの二代目の地界人、晦悠介だ」 イセリア「………」 微妙な顔をされた。 そりゃそうだ……言った自分が一番自分の存在が信じられない。 イセリア「苦労してきたのね……」 悠介  「解るか……」 イセリア「解るよ……わたしも母に散々実験体にされてきたし、産まれた場所も散々……」 悠介  「あ……酒瓶の中で産まれた、って……」 イセリア「知ってたんだ……」 悠介  「まあ……」 なんとも微妙な空気がそこに展開された。 “苦労人仲間”なんて泣けてくるが、 実際に仲間意識が浮かんでしまうものは仕方ないだろ……? イセリア「……うん!飲もう!!こんな時は飲むに限るね!!」 悠介  「マテ、俺は一応まだ未成年なんだが」 イセリア「時間止めてても経験した年月は変わらないでしょ!      それに空界じゃあ15歳からお酒飲んでいいの!」 悠介  「なっ……ま、マテ!そんなの初耳だぞ!?      法律書にだって二十歳からだって───」 イセリア「……チッ、騙されなかったね……」 悠介  「オイ」 イセリア「あっはははははは、ま、まあいいじゃん、楽しくいこー!」 悠介  「……お前の性格ってさ、ベリーと桐生センセを足したような感じだよな」 イセリア「───待って。今、誰って言った?」 悠介  「……?ベリーときりゅ───」 イセリア「ベリーって……やっぱりヤムベリング=ホトマシー?」 悠介  「あ、ああ……そうだけど」 イセリア「うあっ……ま、まだ存在してるのあのババア!!」 悠介  「ババアって……」 イセリア「いやいやいや!!言いたいことは解るよ悠ちゃん!!でもね!?      ヤツに散々振り回されたわたしとしては      これくらいの言葉の暴力は全て正当化されなきゃ割に合わないの!!解る!?」 悠介  「そりゃ解るが」 これでも周りには苦労人と言われてる俺だ、イセリアの気持ちは解る。 なんだか理不尽だが、解っちまうのはどうしようもない。 というか(いう)ちゃんって誰だ。 イセリア「はぁあ……せめてこの百年で滅んでてくれたらって心の中で思ってたのに……。      で……今もまだマッドなサイエンティストやってるの……?」 悠介  「いや。今じゃ落ち着いたもんだ。真面目にクグリューゲルスの院長やってるぞ」 イセリア「うそぉっ!!?」 彼女は大層驚いたそうな……。 イセリア「え……でも、じゃあ……わたしもう、実験体にされなくて済むってこと……?」 悠介  「そうだな。まあ懲りずにそういうことするようだったらこっちでなんとかする。      生きてるホウキを渡す交換条件として、それは約束させたから」 イセリア「人を実験体にはしないこと、って?」 悠介  「そういうこと。さて……これからお前はどうする?      って、年長者に『お前』って言うのは失礼だな。なんて呼べばいい?」 イセリア「イセリアでいいよ。      長生きはしてるけど、子供っぽさが抜けてないのは確かだし。      それを否定する気はないから、子供らしく呼び捨て。ね?」 悠介  「了解。じゃあ俺のことも悠介でいい」 イセリア「悠ちゃんがいい」 悠介  「全力で却下したいんだが」 イセリア「ダメ、決定」 悠介  「………」 アア……また自分勝手なヤツが増えた……。 少し眩暈を感じる中、俺はレファルドに戻ろうとブラックホールを創造した。 が─── イセリア「あ、ちょっと待った悠ちゃん」 悠介  「………」 ……力が抜けた。 ダメだ……悠ちゃんはダメだ……本気で力が抜ける。 しかしそんな俺を気にすることも無く、イセリアは俺の目を真っ直ぐに見上げて言った。 イセリア「えと、竜になってみて?」 悠介  「へ?」 ……リュウニ、ナッテミテ? 悠介  「ここで昇竜拳とかやったら怒るか?」 イセリア「?なにそれ」 悠介  「いや……なんでもない」 竜って、竜だよな……。 まあいいか、確かにもっと竜化には慣れておいたほうがいいだろう。 悠介  「解った。少し離れててくれ。      あとこれを耳につけてくれ。竜の言葉が解る補聴器だ」 イセリア「う、うん」 てととと……とイセリアが離れるのを確認してから、自分の中の竜を解放した。 悠介  「ぐっ……づ、───ガァアアアアッ……!!」 イセリア「わ、……わっ、わっ、わぁっ」 イセリアが上げる興奮を混ぜたような喜びの声を耳にしながら、やがて─── 皇竜  『ギシャァアアォオオオオオンッッ!!!!』 イセリア「ひきゃぁあああああああっ!!?」 息を大きく吸い、咆哮として吐き出した。 不思議なもので、竜化するとまずこうしたくなる。 イセリア「うぅう……耳イタ……」 皇竜  『大丈夫か?』 イセリア「わ……」 イセリアが黒紫色の竜───つまり俺を見上げてホゥ……と溜め息を吐く。 そして続けざまに言うように『竜に心配されるのってヘンな気分だね』と笑った。 ……ほっとけ。 イセリア「えっと、背中に乗って大丈夫かな」 皇竜  『俺はレファルドに帰るだけだけど───イセリア、お前はそれでいいのか?』 イセリア「ん、いいよ。どうせ工房も廃棄されちゃってるだろうし、帰る場所無いからね。      知ってる?工房ってね、50年以上放置してると消されちゃうんだよ?」 皇竜  『一応知ってる。……乗ったか?』 イセリア「乗った乗った。GO!悠ちゃん!」 皇竜  『はぁ……楽しそうでいいな、お前……。      っと、そんなわけだから───じゃあな、シュバルドライン。      暇見つけたらまた寄らせてもらうよ』 黄竜王 『気にするな、王。本来の力で闘いたいとは思ったが、我が力では既に届かん。      次はべつの事柄で勝負を挑ませてもらう』 皇竜  『……塵になった時の記憶も残ってるのか?』 黄竜王 『塵になっても記憶は塵に残る。      王はそれを辿り、青竜を再生させたと聞いたが?』 皇竜  『───ああ、なるほど』 確かにそうなると道理が存在する。 ノートは本当にとんでもない。 塵とまで融合させちまうなんて、俺じゃあきっと出来なかった。 皇竜 『じゃ、また』 黄竜王『また会おう、王よ』 背中にイセリアの存在を確かめてから、飛翼をはためかせて空へ飛翔した。 風を斬り、太陽の無い青い空へと飛び立つと、穏やかな風が体を撫でていった。 イセリア「ふわ〜〜〜、気持ちいいね〜〜〜」 イセリアは『初めて竜に乗った』という事実にご満悦のようだ。 俺の場合、初めて乗ったのがディルゼイルだったために、 『風が気持ちいい』だなんて感覚は味わえなかった。 ディルゼイルの場合、遠慮無しに高速で飛び回るからな…… 気持ちいいなんてことは絶対無い。 皇竜  『………』 イセリア「?どうしたの?」 きょとん、という擬音が似合ってそうな疑問の声が聞こえた。 さて……この時俺はどんなことを思ったのか。 1:ディルゼイルよろしく、超高速限界突破速度開始 2:超絶悶絶錐揉み大旋風(高速横回転) 3:この空の果てを目指してみる(宇宙があるか否か) 結論:…………1 ───バサァッ!! イセリア「え?」 バサッ───ヴァサァッ!!ゴゥンッ───ゴゥウンッ!! イセリア「あ、あれ?ちょっと……なんでそんなに翼を強くはためか───」 ヴオッ───!! イセリア「うぶっ!?」 まるで壁に衝突したような風圧が体に圧し掛かる。 だが生憎と圧力には慣れている。 そう判断した俺はさらに飛翼をはためかせ、限界速度に挑んだのだった。 イセリア「キャアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!」 この際、背中から聞こえていた絶叫は終始無視する方向で。 ───……。 ……。 イセリア「きゅう……」 皇竜  『………』 空界を五周ほどしたら気絶してしまった。 風圧に耐え切れなくなったイセリアが空に投げ出された時はヒヤっとしたが、 すぐに服を啄ばむことでなんとか助かった。 皇竜 『でもな……これってハタから見れば、人を食おうとしてる竜だよな……』 それは困る。 困るので、首を背に向けて、背中にイセリアを寝かせた。 それから軽い雷撃を流すと、イセリアが『きゃぴぃっ!?』という声を出して起きた。 イセリア「なっ……なな、なに?なになに……?」 皇竜  『起きたか?レファルドに着いたから降りるぞ』 イセリア「え?え?……あれ?なんだかこの景色、五回くらい見た気が……」 皇竜  『気の所為だ』 イセリア「……?そうなのかな」 ともあれレファルド皇国の真上に来ると、 俺は人の姿へと戻って落下するイセリアを抱きとめた。 イセリア「戻る時は簡単に戻れるんだ」 悠介  「竜化に慣れてないだけだからな。人に戻るのは慣れたもんだ」 イセリア「そっか」 そうしてレファルド王城のテラスに降り立つと、その場に居た彰利と中井出に少々驚いた。 悠介 「戻ってたのか?」 彰利 「皇竜が飛んでくの見えたからね、転移でシュパンと。     でもね───ブシュッ!!ぶっ……!!くくっ……!!」 中井出「あ、彰利っ……笑ったら失礼───ブシュッ!!ぶくく……!!」 悠介 「……?どうしたんだよ」 彰利 「い、いや……たださ、悠介ってばレブロウドのこと忘れてたんだなぁって」 悠介 「ん───そういえば忘れてたな。今から行くか───」 中井出「いやいやいや、一応注意はしといたから気にすんなって。     それより───そっちのおなごさんは誰だ?」 悠介 「ああ、こいつは───」 彰利 (ナイスフォロー、提督) 中井出(や……さすが今回ばっかりはレブロウドが滅亡するかもしれないしな……) 彰利 (竜どもから逃げた先のレブロウドに悠介の銅像があったのは驚いたけど、     何故かモミアゲが強調されてて腰辺りまで伸びてたって知っちゃあなあ……。     腹抱えて笑ったけど、流石に崩壊するのはシャレにならん……) 悠介 「彰利?」 彰利 「なんでもないですハイ」 悠介 「……?」 よく解らん。 でも一応、まずはイセリアの紹介をすることにした。 レブロウドのことはまた今度でいいだろうし。 【ケース20:弦月彰利/中井出改造計画】 彰利  「へえ……この人がリヴァっちのお袋さんの……」 中井出 「そんでもってゼロ=クロフィックスのお袋さんの……」 悠介  「イセリア=ゼロ=フォルフィックスだ」 イセリア「その青春の全てをババアの惚れ薬の所為で散らしたイセリアです……」 いきなりイタイ話だった。 中井出   「へ?じゃあ恋愛結婚一切無し?」 イセリア  「無い……みんな肉体関係で終わった……」 彰利&中井出『アイッタァアアーーーーーーーーッ!!!!』 さらにイタすぎる話だった……。 彰利  「なんつーかもう……良かったって言っていいのかどうなのか……。      ともあれ良かったね悠介……仲間が居たじゃないか……」 悠介  「シャレになってないから黙れ……」 中井出 「そういや……晦も恋愛結婚してないし、      同意も無しに襲われて子供作ったんだっけ……」 イセリア「え……悠ちゃんも……?こんな……こんな近くに仲間が居たなんてーーっ!!」 悠介  「青い鳥はいつだって一番身近に居るものさイセリアーーーーーッ!!!!」 泣きながらガバシーーーッ!!と抱き合う悲しみの苦労人が居た……。 なんつーかもう哀れすぎて涙が止まらねぇ……。 中井出「晦も感情手に入ってからハジケるようになったよな……」 彰利 「ヤケクソ入ってるだけじゃないかね……つーか中井出、凄い涙」 中井出「フフフ、お手前こそ……」 彰利 「いや……なんかもう哀れすぎて哀れすぎて……」 中井出「あいつらさ、案外気が合ったりするんじゃないか……?     そィで見事恋愛結婚に……」 彰利 「なんか俺……ふたりが哀れすぎて、ルナっちに悪いとか思うより先に     それでいいってあっさり思えちまったよ……」 中井出「俺も……フフ、俺もだよ彰利……」 悲しみが止まらないという状況は、きっとこげな時のことを言うのだと思いました。 などと思ってた時─── 悠介  「よっしゃあ彰利!中井出!今日は飲むぞ!!」 イセリア「飲まないとやってられないよ!」 彰利  「なんと!?ま、待て僕のキミたち!!僕らはまだ19歳だぞ!?未成年だ!!」 悠介  「やかましいサウザンド死神!!千年生きてりゃ十分だろうが!!」 彰利  「なにをぅ!?そっちだって融合したってことは      50年以上生きてることになるじゃねぇの!!」 悠介  「問題ないな、よし飲もう」 彰利  「そうね」 悠介  「ああ。あとは中井出だが……」 彰利  「………」 イセリア「………」 悠介  「………」 中井出 「……な、なにかその目は!エモノを定める目で俺を見るな!」 彰利  「よしこうしよう。中井出に千年の寿命を加工したものを埋め込みつつ、      それを肴にしながら酒を飲む」 悠介  「乗った!!」 中井出 「乗るなぁあああーーーーーーーっ!!!!」 彰利  「オォ?なんじゃぁこらぁ!!      おんしゃあファンタジーに住むならそれくらい当然じゃろう!」 中井出 「い、いきなり言われたって心の準備ってものがだな……!!」 彰利  (落ち着け提督……千年の寿命を手に入れれば魔導と式が使える……。      そして式を練習すれば、映像を出現させる式も習得できるんだぞ……) 中井出 (だ、だからなんだよ……) 彰利  (……空界では不可能だと思われていたエロビが見れるかもしれん) 中井出 「俺っ……頑張るよ!!」 ……素直な男だった。 彰利 「じゃあ決まりさね!!サウザーントレントで千年の寿命の原液を取って、     悠介の工房で加工してから中井出に埋め込みましょう!!     悠介、式と魔導の基礎力学って学んでたっけ?」 悠介 「大丈夫だ、加工の仕方もちゃんと学んだ」 中井出「オッケン!!じゃあ行くか!」 総員 『ハワァアーーーーーーッ!!!』 こうして。 僕らの中井出改造計画は開始されたのでした。 ───……。 ……。 ガコォン……! 悠介 「よし、じゃあ開始しよう」 ややあって寿命の原液を干渉払いで手に入れて、 さらに加工したソレを工房内で眺めるに……───眩しいね。 なんだかベジータがくらった元気玉を見ているようじゃわい。 中井出 「今さらだけど……大丈夫かな」 イセリア「大丈夫、痛くない痛くない」 中井出 「あ、あの……俺、いつ『痛いかどうか』なんて訊きました……?」 イセリア「………」 中井出 「ちょっ───なんでそこで視線逸らすんスカ!?」 バチン、バチンバチンバチンッ…… 中井出  「っておい弦月一等兵!?なんで人の体を拘束する!!       待て!!い、痛いのか!?やっぱ痛いのか!?」 彰利   「知らん!!だが安心しろ、きちんと酒は持ってきてある」 中井出  「安心する要素が見つからねぇよ!!」 悠介   「じゃ、開始する。中井出、痛かったら痛いって言うんだぞ」 中井出  「つ、晦一等兵っ……!!」 悠介   「しっかり無視してやるから」 彰利   「もちろんだ!」 中井出  「け、けけけけけ結局マジで酒の肴にしたいだけかぁっ!!」 彰利&悠介『最初に言っただろう!見縊るな!!』 中井出  「てめぇらぁあああああーーーーーーーーーっ!!!!!」 叫ぶ中井出を寝台に寝かせ、俺と悠介とイセリアさんで囲むように見下ろす。 クォックォックォッ……ええのう……なんかこれええのう……。 中井出「やめろぉおおおおジョッカァアーーーッ!!ぶっとばすぞぉおおおーーーっ!!」 彰利 「ン?ぶっとばす?ほっほ、そのザマでかね?やってみれ?え?やってみれ?」 中井出「ギ、ギィイイイイイーーーーーーーーッ!!!!!」 彰利 「ほぉっほっほっほ!!ほれほれどうしたのかね!?え?えぇえーーーーっ!!?     ぶっとばしてみぃ!ホレ!!ホレホレェエーーーーッ!!!」 悠介 「よし、今から彰利のことはジョッカーと呼ぼう」 中井出「賛成」 彰利 「なんで!?」 悠介 「ジョッカーって呼ばれて反応したし否定しなかったろ」 彰利 「ゲッ……!!い、いや!今のはだねっ……!!」 悠介 「ど、どうしたジョッカー!!」 彰利 「早速呼ぶでない!!」 中井出「どうしたジョッカー!なにかあったのかジョッカー!!」 彰利 「やめれ!!ジョッカー言うな!!」 中井出「じゃあ藤巻」 彰利 「提督……俺が間違ってました……」 中井出「解ってくれたか弦月一等兵……!!」 悠介 「友情だ……」 勘弁してください……こんな友情イヤですマジで……。 イセリア「でも……悠ちゃんの工房って物凄く高価なものばっかり揃ってるんだね。      これ、全部自分で練成したの?」 悠介  「ああ。もし自分の工房を再建するのに必要なものとかあったら、      持っていってもいいぞ」 イセリア「ん、いいよ。その代わりさ、ここに出入りしてもいいかな」 悠介  「基本的に出入りは禁止してないからな。好きにしていいぞ。      ただし、そこのレバーは7cmのままで開けること」 イセリア「……そういえばこれ、なんなの?」 イセリアさんが扉の近くのレバーをついついと突つく。 悠介  「外と中の時間を乖離するレバーだ。      レベルは1から9まであるけど、7が一番安定する」 イセリア「へえ……もし1にしたらどうなるの?」 悠介  「外と同じくらいの速度で時間が経過する。      それから9に向かうにつれて時間が経ちにくくなる。ただ───」 イセリア「ただ?……あ、まさか……7以上にすると時間が戻る、とか……」 悠介  「……多分。試したことはないけど───7で時間が止まるならきっとそうなる」 イセリア「へええ……でも、うん。すごいすごい。      工房としてはこれほど凄い場所は無いと思う。      ───って、あれ?じゃあこっちのレバーは?」 悠介  「上に上げてからドアを開けると未来の地界に繋がる。      真ん中で空界。下に下げると現代の空界に繋がる。      リヴァイアがレファルドの王になってからは、      ゲートの管理も頼まれちまったんだ。だからここに現代と未来へのゲートが」 イセリア「……え?ちょ、待って?リヴァイアがレファルドの王って……え?」 彰利  「……ウィ?話してなかったっけ」 悠介  「その話はまた今度な。まずは中井出に千年の寿命を埋め込もう。      ……中井出、最後に確認するけど。俺達と空界で生きる覚悟が本当にあるか?」 中井出 「当然。地界にゃもう俺の居場所なんて無いしな。頼む」 悠介  「……よし、じゃあ始めるぞ。      オプションとしていろいろ付けられるけど……どうする?」 中井出 「マテ。俺は人造人間にでもされるのか?」 悠介  「じゃなくて。引き伸ばしたい能力があるかどうか、だ。      一応いろいろなマテリアがあるから、それから属性引っ張ることも出来るぞ」 彰利  「ただし、その場合は対象属性は受け入れられなくなるがネ。俺みたいに」 中井出 「そっか。じゃあまず、やっぱ人外の身体能力は欲しいな。      実はさ、ずっとお前らの身体能力が羨ましかったんだよな」 悠介  「いや、それは無理だ。身体能力自体を伸ばすことは出来ない」 中井出 「ありゃ?そうなのか?だったら……」 彰利  「あ、口から爆裂魔光砲を撃てるように改造しよう」 イセリア「爆……?」 悠介  「そんなの出来るわけないだろうが……」 彰利  「じゃあ……トマトをマグマに変える力とか」 悠介  「迷惑にしかならんからやめとけ」 彰利  「じゃあこれだ。妄想をエロビデオに変える力」 中井出 「是非頼む!!」 悠介  「………」 イセリア「………」 皆様が中井出をかわいそうなものを見る目で見つめました。 そりゃそうです、欲望丸出しです、遠慮も無さすぎです。 悠介  「そんな能力が欲しいんだったら賢者の石でも作れ……」 中井出 「おおぅ……俺の夢は錬金の果てにあると?」 悠介  「嫌な喩えを出すなよ……。      俺はべつにエロビデオのために賢者の石作ったわけじゃないぞ……?」 イセリア「え───、……っ!?」 ババッ! 悠介 「っと……イセリア?」 イセリアさん、なにを思ったのか悠介が首に下げている石に掴みかかった。 イセリア「……け、賢者の……石?それもこんなにカタチがハッキリしてる……!?」 悠介  「……?お前も持ってるんだろ?」 イセリア「え───な、なんで知ってるの!?」 彰利  「えぇっ!?持っとるの!?」 なんてことでしょう!私は大変驚きました!! つーかなんで解ったの!? 悠介  「考えたことはなかったか?      “どうして創造者になるヤツは魔導術師だけなのか”って。      答えは簡単だ。賢者の石を練成できるのは魔導術師のみだからだ。      そして、純度が低かろうが賢者の石を練成できた魔導術師が、      構造変換でモノを出現させるのが“創造”に見えた故に、創造者と呼んだんだ」 彰利  「なんとまあ……!で、でも待ちんさい?ヤムヤムが言ってたじゃん、      イセリアはんは『物質を作り変える力』なんて持ってなかったって」 悠介  「だから。ベリーにはそれが物質変換だって解らなかったんだよ。      ベリーは賢者の石の練成なんてしようとも思わなかったし、持ったこともない。      『構造の羅列』は賢者の石の所有者にしか見えないものだし、      考えてみれば……ベリー嫌いのイセリアが、      ベリーに賢者の石のことを話すわけがない」 あ……そういやそうだ。 ヤムヤムってそこまで賢者の石に関心が無かった。 むしろ精霊石のほうに夢中だったっけ。 ……妙なところでアホだったのね、ヤムヤムって。 彰利 「ナルホロね。では理解に至ったところで中井出改造計画を続行しますか」 悠介 「そうだな。人々の迷惑にならない程度の能力を付加して……」 中井出「なんつーかさ、かつてのクラスメイツに改造されるのって物凄ェ複雑だぞ」 彰利 「そらそうだわなぁ」 悠介 「まあそう構えるなって。空界に馴染めるくらいにはしてやれると思う」 彰利 「ファンタジーに生きるなら、最低限それっぽい能力は必要だしね。     つーかさ、悠介?なにがどういう効力あるか解らんのだけど」 悠介 「だったらあまりそこらへんのものいじくるなよ?爆発でも起きたら大変だ」 彰利 「グムム〜〜〜」 ともあれ……加工された千年の寿命が今、中井出の中に入っていきました……!! すると中井出の体がパパァアアと光り……!! 中井出「な……なんだこれは……!!か、かつてない力が俺の中に溢れてくる……!!」 彰利 「気の所為デショ」 中井出「水差すなよいきなり!!」 ……怒られてしまった。 悠介 「これから今埋め込んだ千年の寿命が馴染めば馴染むほど、     魔力とかが発生してくるようになるから。それまではあまり無茶をしないこと」 中井出「お、おう。ところで……完全に馴染むのはどれくらい先になるんだ?」 悠介 「ン───一週間くらいじゃないか?     地界人に千年の寿命を埋め込んだケースって実はあまり無いんだ」 中井出「うえっ!?ふ、副作用とか無いか!?つーか最初に言えよそういうこと!」 彰利 「知ったらイヤがるじゃん?」 中井出「てめぇえええ……!!!」 悠介 「まあそんなわけで。     しばらくしたら体が熱くなってくるけど、命に関わることはない。と思う」 中井出「マテ!!今小声で大変失礼なこと言わなかったか!?なぁ!!ちょっと!?     お、おいコラ!!酒瓶用意しながら談笑すんなよ!マ、マジか!?     マジで俺を肴にして酒飲むのか!?ちょっとそりゃないんじゃないか!?     おぉい!!おいってばよぉっ!!な、泣くぞちくしょ───熱ッ!!?     熱───熱い!なんだこりゃ!熱すぎるぞオイ!!いや聞けよ!!     ンマーーイじゃねぇって彰利!!……え?そんなにウマイの?     お、俺にもくれ!な!?あ、じゃ、じゃあ残しといてくれ!!     え?未成年者が何を言う?てめぇらだって同い年だろうが!!     んあ!?なに!?歴史が違うんだよ!?ちょっとマテコラ!!待───熱ぃ!!     いやマジで熱いって!熱ッ!!なにこれなにこれアレレーーーッ!!?     ウハハハハハじゃねぇって!!早速酔っ払ってんじゃねぇよ!!熱いんだって!!     なぁ!せめて拘束具だけでも取ってくれよ!!     動けないと余計にストレス溜まってギャアアアアアアアアア!!!!     なんか頭がメキメキって……痛ッ!!熱ッ!!ギャアアアアアアアア!!!!     な、なに!?『回路が出来ていってる証拠』!?     だからどうしたぁ!痛いことには変わりねぇわぁっ!!     痛───い、イギャアアアアアアアアアアーーーーーーーッ!!!!!」 ……その後。 彼は襲い掛かる激痛と激しいバトルをし───一分後、K.Oされて気絶。 中井出VS激痛……今回の勝負は3分1Rで激痛の勝利でした。 え?あぁハイ、酒は大変美味しかったです。 この雄山を唸らせるとは、中々のお手前……お見事。 Next Menu back