───ロビンは関係無いがとりあえずビーンダイナスティから追い出される黒───
【ケース21:簾翁みさお/ウガレビサレツゾラベルジホバ2】 ベリー「……ん、ハイ終了。どう?気分悪かったりする?」 みさお「いえ。べつにこれといった後遺症みたいなものは無いみたいです」 ベリー「そ。じゃあ意識調査はこれまで。もう帰って大丈夫よ」 みさお「はい」 やっと終わった意識調査にため息をひとつ。 そうして思うことはひとつ。 最近辺りを騒がしていた大会っていうのはもう終わってしまったんだろうか。 なんでも悠介さんと彰衛門さんと中井出さんが空界中に報せて回った催し物らしいけど、 あれだけ騒がしかった外はもう静かなものだった。 ……やっぱりもう終わってしまったんだろうか。 みさお「……ちょっと残念です」 ベリー「なにが?……あ、もしかしてもっと調査されたい?     わはー、だったらそうと言ってくれればよかったのにー」 みさお「それは絶対ありません」 ベリー「あ、そう」 モシャアと溜め息を吐くと、ベリーさんは院長室の椅子にギシリと腰をかけた。 ……こんな、院長室で人の意識調査を始めてしまう人が院長で本当にいいんだろうか。 でも変わりましたよね、この人も。 最初は本当に魔女って感じだったのに───と、そんなことを思っていた時。 悠黄奈「あの、ヤムベリングさん。     わたしもその、意識調査というものをして欲しいんですけど」 今朝、付き添いとしてここに来てくれた悠黄奈さんが、 ベリーさんに向けてとんでもないことを言い出した。 ベリー「え?なんでまた。わたしに調査してくれって頼んでくるなんて、     普通の人ならしないわよ?」 みさお「そうですよ!今ならまだ間に合います!命が惜しかったらやめてください!」 ベリー「……前々から言おうと思ってたんだけど。     いい度胸してるわよね、みさおちゃんって……」 みさお「伊達に長い時を彰衛門さんと一緒に過ごしてません」 ベリー「ツンツン頭かぁ。あのコの頭の中、どうかしちゃってるくらいおかしいからね」 ……言われてますよ、彰衛門さん。 でも反論しないのはひとえに、正論だと確信するからです。 こんなわたしを許してください。 ベリー「で、話戻すけど……なんで悠黄奈ちゃんたらわたしに意識調査してほしいの?」 悠黄奈「それは……───わたしの、消えた過去について知りたいからです」 ベリー「え?あー……そっか、そういえばそういう設定だったっけ」 悠黄奈「え?」 ベリー「ううん?なんでもないなんでもない」 この二週間あまり、ベリーさん(こう呼べと言われた)の工房とアカデミーを 行ったり来たりさせられながら悟りましたけど、この人案外忘れやすい。 ベリー「えっとね、そのことなら考えても無駄よ。     実はね、悠黄奈ちゃんは自分で記憶を捨てちゃったの。     だからもう取り返しがつかないし、以前の記憶を思い出したいっていうのも無駄」 悠黄奈「え───そんな……本当なのですか?」 ベリー「ん、ホント。でも一応意識調査してみよっか。     ……えーと、ホントに悠介はレファルドに居たのね?」 悠黄奈「あ、はい。映像以外で見るのは初めてでしたけど、やっぱり凛々しい方でした」 ベリー(んー……そっかそっか……。スピリットオブノートの仕業、かな?     まあいいや。ホントに分離したっていうなら、     むしろ意識調査はこっちのほうがヨロシクしたいくらいだったし) 悠黄奈「……?あの?」 ベリー「なーんでーもなーい♪ささ、始めよ始めよ〜。わはー♪」 みさお「捕まっちゃいましたね……。せめて早目に解放されるように祈っています……」 悠黄奈「え……?えぇ……?あ、あのっ!い、痛く……しませんよね?」 ベリー「………」 悠黄奈「あのっ!?どどどうしてそこで目を逸らすんでしょうかっ!?」 ベリー「わはー、細かいことは気にしない気にしな〜い♪」 ……そうして。 悠黄奈さんはベリーさんが無断で作った 院長室の中に作られたドア(工房へのどこでもドア)に引きずりこまれていきました。 院長なんだから『無断』もなにもないと思うけど、 邪魔って発言が許されるのなら間違いなく邪魔だと思う。 ───……。 ……。 ……することもなく、帰ろうとしたけれど─── 悠黄奈さんがヒドイ目に合っているとなると夢見が悪いので、その場に残って早数十分。 工房へと続くドアがゴチャリと開けられ、そこからべつに疲れた様子のない悠黄奈さんと、 ブツブツと難しそうに何かを言っているベリーさんが現れた。 みさお「平気でした?」 悠黄奈「はい……なんとか」 なんとか、って……危なかったってことですか……。 お疲れさまです。 ベリー「……驚いたなぁ。まさか……ねぇ。うーーん……」 それで……こちらは何を悩んでるんでしょうね。 ベリー「あ、みさおちんちょっといい?」 みさお「みさおちん言わないでください」 それでも手招きされては行かないわけにはいかない。 というより、拒絶する理由が特に浮かばなかった。 みさお(どうかしたんですか?) 雰囲気を察して、小声で話し掛ける。 すると少し満足気に頷いて、話を開始するベリーさん。 ベリー(ちょっっっっと……困った、というか驚いたことがあってね?     あまり悠黄奈ちゃんには聞かれたくないかなーってさ) みさお(はあ、それを察しなきゃ小声で話し掛けたりしませんよ。     どうぞ、これで一応驚きには抗体が出来てますから。話してください) ベリー(……何気に苦労してるんだねぇ) みさお(それ、意識調査の時に聞き飽きましたよ) ベリー(ん、わたしも正直言い飽きてた) 野郎……。 ベリー(で、話だけど。えっとね、驚いたことに……     悠黄奈ちゃんの中に、ちっこいけど天地空間の回路があるの) みさお(え?それって……) ベリー(そ。人間でしかないんだけど、回路はしっかりと揃ってるの。     それと……人間の反応しかしないから、     角も飾りだろうな〜って突ついてみたんだけどね───) みさお(うあ……まさか……) ベリー(そのまさか。しっかりとホンモノなのよ。     なんの冗談か、人間なのに竜人状態なのね) みさお(……あの。核心突いちゃっていいですか?     ホントに、『人』の反応だけなんですか?) ベリー(ん、い〜い質問です♪さて……質問に問題で返すのはどうかと思うけど問題です。     人は人であるが故に人の反応を出します。     さて、この場合悠黄奈ちゃんは竜人であり、人と竜が混ざったものです。     でも基本反応は人間のものだけ。だが果たして、     魂は人間でも体に竜が混ざってる場合───     魂に一切影響が無いなんて言えるでしょうか〜) みさお(……どう考えても否ですね) ベリー(正解〜♪いい子いい子〜♪) みさお(………) 楽しそうでいいですね、この人……。 でも……そうなると、 悠黄奈さんは何かのきっかけで悠介さんみたいに竜になるかもしれないってことですか? それに回路が全部揃ってるとしたら、反発反動力は…… ベリー(わはー、多分今わたし、みさおちんと同じこと考えてるよ。     反発反動力のことでしょ?) みさお(……アイドゥ) ベリー(安心していいわよ、今物凄い勢いで『竜』の部分が吸収していってるから) みさお(むはっ!?は、話が違うじゃないですか!!     人の反応しかしないとか言いながら!     そこまで解ってるなら最初に教えてくださいよ!!) ベリー(……みさおちん?楽しめる時に楽しんでおかなきゃ損よ?) みさお(………) ああ、そっか……今までの人はこういう時にこそあの言葉を贈りたいと思うんだろう。 ワタシイマトテモアナタヲコロシタイネ−。 ベリー(抑えておきたいなら悠介に頼んで、精霊を何体か移しておきなさいな。     そうすれば精霊のほうが反動力を自分の諸力や魔力に受け流してくれるから。     まあそれやっちゃったら間違い無く、     悠黄奈ちゃんの中に諸力と魔力が根付いちゃうけどね、わはーははははははー) ……神様……わたし、彰衛門さん以外に殴ってやりたい人と初めて出会った気分です。 悠黄奈「……あの。先ほどからいったい何をお話に……?」 ベリー「ん?んー、んふふふふぅ〜、なんでもないなんでもない。     さぁさふたりとも、もう帰ったら?     わたしはこれからアカデミーで授業やってあげなきゃいけないから」 みさお「今日そんな予定無かったでしょう……」 ベリー「今入ったの。というわけで、バイバイ♪」 ベリーさんが指をパチンと鳴らす。 と───景色が歪み、ベリーさんの姿が遠ざかってゆく。 みさお「あ───ちょっと!まだ訊きたいことが───!!」 声  『必要になったらまた来なさいな〜。いつでも暇してるから〜。     でも今日はここまでってことで───バ〜イセンキュウ!!』 みさお「ああもぅ!誰も彼もどうしてこう勝手なんですかぁあああああっ!!!!」 放った叫びは虚しく歪みへと消えていった。 ……大人なんて勝手な輩ばっかですちくしょう……。 ───……。 ……。 みさお「…………うあ」 悠黄奈「わ……」 やがて開けた場所は、なんていうか───そう、お酒臭かった。 彰利     「そーかそーか……そら辛かったな……飲め!な!?」 黒モンスター達『ホゥルルル……』 影      『ああそうさカタパルトさ……』 闇      『わ、わぁーれは……しこたま戦慄……』 悠介     「飲め、な、飲めイセリア……。今日は飲み明かそうじゃないか……。         そしてお前は生まれ変わるんだ……。忘れろなんて言わないから、な?         起きたことは拭い去ることは出来ないけど、癒せる傷だけは癒したから」 彰利     「そうらぁ〜〜その通りらぁ〜〜っ!!         黒を吸収して強力になったオイラのデスティニーブレイカーがあれば、         純潔を元通りにすることなんざ楽勝らぜ〜〜〜っ!!!」 イセリア   「ありがと……ありがね……っ!!ねぇ……わたしやり直せるかな……。         今度こそ、身も心も託したくなるような人に会えるかな……」 中井出    「なれるっ!なれるともぉ〜〜っ!!だからこの拘束解いてくれ〜〜っ!!         つーか彰利ぃ〜〜っ?動けないのをいいことに酒飲ませまくんなよぉ〜」 彰利     「ウヒャヒャウヒャヒャヒャウヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!」 みさお    「……………」 なんていうか、いろんな意味で出来上がってるようでした。 ひとり知らない女の人が混ざってる───って、さっきイセリアって呼んでましたよね。 ……イセリアって、あのイセリアさんですか? ゼロさんの母親っていう、あの……。 彰利 「あー……一番!弦月彰利!!鎌を三段階に解放します!!」 悠介 「おー!やったれー!」 中井出「いいぞー!やったれー!」 みさお「い、いきなり何を言い出してるんですか!!     そんなの、“世界”の補助も無しにやったら大変なことに───」 彰利 「まず始解!ハデスディザスターの昇華、“冥魂誘う災いの鎌鍵(デッドブレイカー)
”!!」 コォ───パキィンッ!! 彰利 「説明しよう!このデッドブレイカーは     冥府に堕ちた魂ならどんなものでも一時的に呼び出すことができるのだ!!」 腐竜 『オァアアアアオォオオオオオン!!!!』 中井出「おおっ……竜だ〜……竜の魂が出てきたぞ〜……」 悠介 「お……知ってるぞこいつ……。     確か……えーと……歴史書に書いてあった腐竜(ふりゅう)だ……。     アンデッド系の竜族だけど、多分聖なる力かなにかで消されたんだろうな……」 彰利 「卍・解───」 ギジリ───ゾフィィンッ!!! 腐竜 『アァアギィイイイアアアアアッ!!!!』 みさお「ひえっ……!?」 突然でした。 突然空間が裂けて、広い工房の中が死の気配に満たされたと思ったら─── 裂けた空間から巨大な何かが現れて、腐竜さんを巨大な剣で刺し殺した……。 彰利 「これぞ───黒縄天譴明王!!     ブラックオーダーのほうの黒縄天譴明王は返上じゃよ〜!!     ……さらに説明しよう!     この黒縄天譴明王……真名は“万象滅する煉獄の閻王(ロードオブハーディス)”といい、     鎌を冥界の扉を開ける鍵に変え、そこから閻魔大王を召喚する卍解!!     ……当然“黒”として召喚するからには、     殺した相手は黒に変換され、俺に吸収される」 彰衛門さんはアルコールの所為で真っ赤な顔のままにニヤリと笑って、 新たな鎌を取り出した。 彰利 「この、日本で知られるほうの竜型……蛇に似た姿の竜を糧とし、     さらなる卍解をお見せしましょう……卍・解───」 みさお「……!?」 訳が解らなかった。 鎌を第三段階まで引き上げるだけで狂うくらいに苦しんでいた彰衛門さんが、 今は平然と三段階を発現させてみせている。 ……この二週間、いったいどんなことをしていたんだろう。 彰利 「黒、闇、影の力にて全ての『熱』を凍らせる空間をここに。     さらに吸収した腐竜の力で解き放つ───“大紅蓮氷輪丸(だいぐれんひょうりんまる)”!!」 ビシィッ!ビキビキビキビキ……!! 彰衛門さんが構えた鎌から巨大な氷竜が現れたと思ったら、 工房の中が痛いくらいの冷気に包まれた。 中井出「おお……神龍(シェンロン)だ神龍……。神龍が凍ってら……。     火照った体に冷たい冷気がありがた───痛い!?     いてっ!!冷たくて痛い!!痛いくらいに───つーか痛すぎるくらい寒い!!」 悠介 「や、やめろ彰利!酔いが醒める!!」 彰利 「ウフフフフ……了解……。“氷壊せし時凍の理”(アブソリュートフリーザー)解除……。     次いこうね〜……ウフフフフ……」 みさお「………」 悠黄奈「………」 多分、もう何を言っても無駄だと思った。 それなら無茶して気絶するまで待ちましょう。 どこまで解放できるのかが気にならないって言ったらウソになりますし。 彰利 「卍解───“清虫終式(すずむしついしき)閻魔蟋蟀(えんまこおろぎ)”」 取り出した鎌はダークスライサー……ゼノさんの鎌だった。 だがその鎌はすぐに形を変えると、その場を漆黒で包み込み─── …………全ての感覚が殺された。 ───…… …… 全員 『───はっ!?』 彰利 「ほい終了、っと」 感覚が戻ってきたことに気づくと、漆黒の消えた景色の先で彰衛門さんが笑っていた。 彰利 「“影黒に染まる殺覚の闇(キリングオブダークネス)”。     漆黒内に居る存在の、痛覚を含む全ての感覚を殺し───     相手に気づかれないうちに相手を殺せる闇の空間を作れる能力じゃよ。     半端な力で抗おうとしても、漆黒に力を吸収されるだけさね」 中井出「…………酔い、醒めたわ……」 悠介 「……ああ、驚きだ。見事に感覚が殺された」 彰利 「すげぇでしょ?でもまあ“黄昏”(ラグナロク)には負けちまうと思う。     こっちは固有結界っつーのかな、ただ『黒』で擬似的に空間を作ってるだけだし。     『世界の創造』からしてみれば、     前に悠介の黄昏がスッピーの世界に塗りつぶされた時みたいになると思う」 悠介 「……なるほど。これで……何本目だ?三段階まで引き上げた鎌」 彰利 「6本じゃね。この二週間の間、     モンスターを吸収しまくろうとうろついてた時にヘンな召喚獣と会ってさ。     その時、あんまりにもボコボコにされたんで、是非とも吸収しようと思ってさ。     で、その時に卍解出来たのがもう一本。ダークイーターの昇華でござる」 みさお「ああ……アレですか」 彰利 「うむ、アレだ」 ブリーチ好きなら誰でも知ってるあの卍解。 彰衛門さんは気に入っていたようだけど、 始解の時点でイヤになるくらい周りに迷惑かけるくらい強いので、 『ひとりで戦う時以外は使わないでください』と釘を刺しておいたアレだ。 彰利 「どうする?見たい?ね、見たい?」 中井出「んあ?あ、あ〜……そりゃあここまで見たら見たいかもしれないけど……」 みさお「うわわダメですっ!!     こんなところで使ったら練成したものとかが全部水の泡になりますよ!?」 悠介 「じゃあ───ラグ」 みさお「え?あ、ああーーーっ!!!」 悠介さんが首飾りを剣に変え、鞘に収めたままに床に突き立てた。 するとその場が黄昏の草原に染まり、遮蔽物もなにも無くなってしまう。 イセリア「う、わ……わ、わー!わー!!」 悠黄奈 「わぁ……」 それを初めて見るイセリアさんと悠黄奈さんは興奮気味にキャイキャイ騒ぎだした。 ……それどころじゃないっていうのに。 彰利  「では見せようか。まずは始解から。      アブソーブダークネスの闇以外を対象とした力をお見せしよう」 中井出 「おー!やったれー!」 彰利  「……えと。死なないでね?」 中井出 「へ?」 彰利  「散れ───『千本桜』」 悠介  「───!うわ馬鹿っ!!“それ”だったんなら最初に言え!!総員退避!!」 悠黄奈 「え───?」 イセリア「ちょ、なに!?」 ザァッ───!! 悠介 「あぁくそ間に合わん!!───フェンリル!!」 みんなを抱えて離れようとした悠介さんだったけど、 間に合わないと判断したのかフェンリルさんを召喚した。 フェンリル『フゥウウオオォーーーーーーーーンンッ!!!』 そして───すぐに力を解放させると、ダイヤモンドダストカーテンを散らさせた。  ヒィン───ジャギヂヂヂヂヂヂィイイインッ!!!! 中井出「おわぁあーーーーーっ!!!!」 無数の目には見えない黒と、同じく目には見えない無数の白銀が空中でぶつかり合う。 その音は轟音であり、耳を劈くくらいに頭に響くものだった。 彰利 「ギャア!うっせぇ!!」 悠介 「だったらさっさと引っ込めろ!!     それやられれば卍解がなんなのかくらい解るわ!!」 彰利 「ノンノンノン!!ここまで見せたら卍解も見せなくては!!     つーわけで─────────卍解」 彰衛門さんが無造作に鎌を地面へと落とす。 てっきり音を立てて転がるだけかと思われたそれは、地面に飲み込まれて消えた。 が───次の瞬間。 地面からは無数の巨大な刃が現れ───って! みさお「やっぱりですか!?やっぱりそのまんまなんですか!?」 彰利 「散れ。『千本桜景厳』(せんぼんざくらかげよし)」 キィイイイイ───シャァアンッ……!! 突き出ていた巨大な刃の全てが塵となった。 そうなってしまったらもう遅い。 草原の草が次々と千切れ消え、塵となってゆくさまが彰衛門さんを中心に広がってくる。 悠介   「……はあ。フェンリル、いけそうか?」 フェンリル『……いや。忌々しいがヤツの方が上だ。       黒、というのか?それの密度が濃すぎる。       放ったダイヤモンドダストもヤツが放った黒の塵に吸収されてしまった』 悠介   「なるほど。消すならもっと強い力でってことか。悪かった、戻ってくれ」 フェンリル『ああ。またいつでも呼べ、王よ』 みさお  「って───えぇっ!?下げちゃうんですか!?どうするんですかこれから!」 悠介   「どうって……おーい彰利ー?卍解さっさと引っ込めろー!」 彰利   「貴様と私とで何が違うのか教えてやろうか?───格だ」 みさお  「……成り切ってやがりますね」 悠介   「はあ……仕方ない。離れてろ、みさお、悠黄奈、イセリア」 イセリア 「え?」 悠黄奈  「はい」 みさお  「なにをする気か知りませんけど───」 中井出  「……あの。俺には離れろって言ってくれないの?」 悠介   「安心しろって。黒の塵には“近寄らせない”から」 そう言うと、悠介さんはラグナロクを強く握ることで戦斧石の力で赤く染め─── 悠介 「“黄竜斬光剣(エクスカリバー)”」 紫電を纏った極光を、その剣から放った。 あとは───まあ。言うまでも無く───ゾブシャア!! 彰利 「ギョエェエエエエエーーーーーーーッ!!!!!」 彰衛門さんが両断されました。 中井出「おわぁあーーーーーーっ!!?あ、彰利ぃいいいーーーーっ!!!」 彰利 「ああいやいや大丈夫大丈夫。     黒モードなら黒全てが消されん限り死にゃあせんから」 縦一線に両断された彰衛門さんだったけど、すぐに体をくっつけて事なきを得ていた。 まるでDIOさまだ。 でもどこかパーツが足りない気が……。 ヤケに右目と左目が近いというか……正中線にかけての鼻の間隔が無くなってる。 中井出「……ほんとお前らってバケモノな……」 みさお「同意見ですね……」 彰利 「フッ……ファンタジーに生きるってこたぁこういうことよ。     散った黒を回収するのもお茶の子さいさい。     黒は俺であり、俺は黒であるからして───     散った黒も思いのままに呼び戻せるのです」 ゾリュッ───ギュポンッ! 彰利 「ね?」 あ……頭頂から鼻、股間にかけての正中線が復活しました……。 本当にバケモノですね……。 彰利 「というわけで、卍解紹介はこれにて終了。     酔いもすっかり醒めたところで、世界を戻しましょう」 悠介 「だな」 小さく呟くと同時に、黄昏の景色が工房のソレへと戻る。 ……本当にとんでもない能力だ。 壁はここにあるのに、世界が創造されればそこはもう無限に広がる別世界だ。 でも……もしこの壁のある場所に自分が立ってたらどうなっていたんだろうか。 そんなことを考えたら、ちょっと頭が痛くなった。 悠介  「それで……どうした?ここに来たってことは俺に何か用だったのか?      それとも地界に行こうと……って、根掘り葉掘りはよくないな、忘れてくれ」 みさお 「いえ、べつにいいですよ。      あのですね、ここに来たのはベリーさんに飛ばされたからであって、      わたしたちの意志ではなかったんです」 イセリア「うあ……やっぱりまだ居るんだ、あのババア……」 悠介  「言っても仕方ないだろ?」 みさお 「?……で、ですね。あの……ちょっといいですか?」 悠介  「ん?───ああ」 気づけば、みさおの影が俺の影に繋げられていた。 月影力か。これで言葉を送受信しようってことだな? 悠介 《それで、どうした?》 みさお《あのですね。わたしの意識調査のついでに悠黄奈さんの意識調査もしたんですよ。     それで……困ったことに、悠黄奈さんの中に天地空間の回路が存在してるって》 悠介 《……本当なのか?》 みさお《はい。それで……その、ほら。     悠黄奈さんって人なのに角が残ってるじゃないですか。     あれってなんなのかなぁって思ってたんですけど、     あの角に竜の要素が残っているらしくて……。     今、悠黄奈さんの中ではその小さな竜の力が     反発反動力を吸収して大きくなっているらしくて……。     その、いずれ……竜の力が完全に目覚めるかもしれない、って》 悠介 《あー…………魂自体が一度完全に一体化したんだ、     そういうことが起きても不思議じゃないな……。それで?     ここに送られたってことには、それなりの理由があるってことだな?》 みさお《はい……悠介さん。     悠黄奈さんの中に、何人か精霊さんたちを移してくれませんか?》 悠介 《精霊を?》 みさお《はい。そうすれば、竜が吸収しようとする反動力を     精霊たちが吸収してくれるって言ってました。     それに……精霊たちは悠介さんと繋がってますから、     上手くすれば悠介さんに流せるかもしれません》 悠介 《……なるほど。解った、やってみよう》 みさお《うえっ……?そ、そんなに簡単に納得しちゃうんですか?》 悠介 《断る理由が見つからない》 ……あっさりした人だった。 でもすぐに了承してくれるあたり、他の誰よりも相談しやすいことは確かだ。 ぶっきらぼうに見えるのに、何気にお節介焼きなんですよね、悠介さんって。 悠介 《けどな……諸力も魔力も無いとなると、消費するのは精神力ってことだろ?     大丈夫なのか?精霊を移したりして》 あ……そうでした。 精霊を身に納めるっていうことは、諸力を消費するっていうこと。 でも悠黄奈さんには諸力なんて無いから─── 必然的に、消費するのは精神力っていうことになる。 声  (それならば心配いらない) 悠介 《……?ノート?》 声  (誰かに移すとしても『契約』をしたのは汝だ。     汝以外の力が消費されることはない) 悠介 《……マテ。それは喜んでいいことなのか?     いや、そもそもノート。なんだって回路を残したまま悠黄奈を分離させたんだ?》 声  (そのほうが面白いからだ) 悠介 《……………》 うわ……今物凄い勢いで『苦労の波動』が送信されてきました……。 声  (というのは冗談だ。     汝も知っての通り、汝と悠黄奈はふたりでひとりのような存在だ。     汝は竜の魂を持ち、悠黄奈は人の魂を持つ。     だが考えてもみろ。汝は今でこそ人の形を象っているが、     人のソレでは竜の魂を内包したまま生きるのには無茶がある。     過ぎた力が弱い外殻を破壊するのと同じだ。     いずれ、人の体が竜の魂に耐えられなくなる) 悠介 《……ああ。それは俺も考えてた。     いつまでも理力で人の体象ってなんていられないって》 声  (そこで取ったのがこの方法だ。     悠黄奈とマスターを分離させ、ひとりひとりの魂を強化させる。     汝らは元はひとつ。     故に、何処かで繋がっていて互いの魂を支え合えるのだ。     ……汝には、汝の義理の妹たちを喩えに上げたほうが解りやすいか?) 悠介 《あ……》 そうか、連結魂。 若葉さんと木葉さんが生まれながらにしてもっていた、双子特有の能力。 声  (悠黄奈の魂は人の魂の部分的なものを重ねて満たしたものだ。     ふとした拍子に崩れる心配がある。故に竜の魂がそれを支える。     マスターの魂は竜の部分が強すぎるために、いつか人の体がついていけなくなる。     それを防ぐためが故に、悠黄奈の人の魂がそれを支える。     その効果は互いの魂が器に馴染めば馴染むほど効果が現れる。     やがて安定もするだろう) 悠介 《今朝言ってた魂の安定ってのはそういう意味も含めて言ってたのかこの野郎……》 声  (面白いから黙っておいた。     汝らの言う原中魂とはこういったものだろう、笑って許せ) 悠介 《ノートォ……頼むから原中の真似だけはしないでくれ……》 悠介さんも、わたしに心労を流すようなことはしないでください……。 ……ともかく内緒の話が終わったわたしは影を戻し、悠介さんを促した。 悠介 「解ってるよ。ちゃんとやるから急かすな……」 みさお「目に見えて疲れてますね」 悠介 「仕方ないだろ、最近こういったことばっかりなんだ……」 眉間を押さえるように頭を痛めてる悠介さんを見るに、 少し気の毒だったけど気にしないことにした。 苦労から救ってあげられるわけでもないので。 悠介 (……そういうことなんだけど。悠黄奈の中に行きたいってヤツは居るか?) 悠介さんが念じるかのようにそう呟いた。 きっと指輪の中の精霊たちに話し掛けているんだと思う。 と───雷、然、無を除く全ての指輪が輝きだした。 悠介 (そか。じゃ、頼んだ) 呟くや否や、指輪の輝きは瞬間的に悠黄奈さんへと飛び、やがて消えた。 みさお「あの……悠介さん?今のって……」 悠介 「ああ。精霊の大半が悠黄奈を支えるって言った。     ニーディアとニンフとノート以外、全て悠黄奈に移ったよ」 みさお「えっ……ウ、ウンディーネさんもですか!?     意外です……予想外です……!絶対に残ると思ってたのに……!」 悠介 「『それがあなたのためになるのなら』って、あっさり了承したが」 みさお「あ……なるほど、そうきましたか……」 乙女心は複雑なんですね……。 そうまで尽くすなんて、一途すぎて尊敬してしまいますよ。 彰利 「さて……夜になるにゃあまだ少し時間があるね。どうしよっか」 中井出「とりあえずもう痛みは落ち着いたからさ、この拘束解いてくれないか?」 総員 『それはだめだ』 中井出「なんで!?」 総員 『馬鹿野郎!!面白いからに決まってる!!』 中井出「ナイス原中根性!───なんて言うかぁっ!!解け!解けよぅ!!」 彰利 「トコロデボクハ、一度地界ニ戻ッテ粉雪ノ親御サンニ挨拶シテオコウト思ウンダ」 中井出「無視かぁっ!?ここで無視するか普通!!」 彰利 「誰だって自分が一番かわいいのさ……あんただってそうだろ?」 中井出「ここでトルネコさんの真似する意味全然無いよな!?なんなのそれ!!」 彰利 「つーわけで俺、ちょっと行ってくるわ。悠介はどうする?」 悠介 「ン……明日になるまでは暇だしな。解った付き合うよ」 彰利 「……もし何かあったときのフォローは任せた。駆け落ちも有り得るから」 悠介 「少しはプラス思考でいけよ……」 中井出「あのさー……拘束されて身動きが取れない状況───     マイナス思考しか働かない時はどうすりゃいいのかなー……?」 悠介 「じゃ、行くか。留守番よろしくな」 みさお「あ、はい。わたしも悠黄奈さんやイセリアさんにお話があるので」 悠介 「そか」 くしゃっとわたしの頭を撫でて、悠介さんは笑った。 その笑顔が、信じられないくらいに自然に浮かべられたものだった事実に、 一瞬考えていたことが消えた。 ……本当に、どうしてこの人達はこんなに無邪気な笑顔を見せるんだろう。 小さく彰衛門さんの笑顔を思い出すと、そう思わずにはいられなかった。 【ケース22:弦月彰利/愛】 彰利 「ムッハァーーーッ!!!地界の空気も久々だぜ〜〜〜っ!!そしてマズイ」 悠介 「ああマズイな。本当に不味い」 空界の空気に慣れると、地界の空気はやっぱり不味い。 どうにかならんものかと思うも、やっぱり不味いものは不味いのです。 地界の服を着て構えたはいいけど、なんつーか……空気が不味い。 悠介 「……ニンフ、頼めるか?」 と───ふと悠介が右手の薬指にある指輪に語りかけると、 そこから六人の精霊が近いの虚空に舞い降りた。 ドリアード『……空気が濁っていますね』 ちなみに開口一番はこれでした。さすが自然の精霊。 彰利   「お願いしたいんだけど、パパ〜っと地界の空気を綺麗に出来ませんかね?」 ナイアード『……可能ですが、後から汚れていくのは変わりません。       この世界の空気の汚れ方は異常です。       この世界の王はなにをしているのですか……?』 ネレイド 『この神社はまだ良いほうですが、他は……全てが最悪と言えます。       このような世界に住むことが出来るなんて……』 彰利   「ヒドイ言われ様ッスネ……気持ちは解るけど」 ナパイア 『解りました───というより耐えられません。すぐに空気の浄化を始めます。       と───その前に。行動範囲を教えてください。       その範囲だけを浄化して空気を綺麗にします。その方が効果が高いので』 彰利   「御意。んでは───」 我輩アポカリプスは必要な場所を鮮明にイメージし、 黒にそれを転写して境内の石畳に映像を映し出した。 ドリアード『……解りました。では───』 頷きとともにドリアードさんが杖を振り翳した。 と───それだけで場の空気が変わり、空気が浄化されてゆくのが解る。 ば、馬鹿な……どこにこげな力が……?って───そうだよね。 考えてみりゃあニンフって、スッピーと同じ高位精霊なんだよね。 だったらこれくらい造作もないことなのかもしれません。 ドリアード『……空気の浄化、終了します』 彰利   「へ?もう終わ……ヌオオ!!?」 し、信じられん!!意識して空気吸ってみたら……こりゃあすげぇぞ!? なんつーか肺から体が浄化されてくっつーんスカぁ!? 空気が醸し出す洗浄のハーモニーっつーんスカぁ!?ともかく!ともかくです!! 『これはぁああーーーっ!!この味はぁああーーっ!!』とか言いたくなるくらいに…… そう!空気が美味い!! 悠介   「……凄いな。まさかこんな短時間で……」 彰利   「自然の精霊恐るべし……でも───はぁ〜〜〜、心地良いわい……。       空気が美味いってやっぱいいねぇ〜……って、もしかして……       空界の空気もニンフさんたちが調整しとるん?」 オレアード『いいえ。もちろん聖魔戦争が段落をつけてからはそうでした。       ですが元々は自然の多い世界です。空気は綺麗でしたから』 悠介   「聖魔戦争って……あれだよな、       人間と亜人と竜族とモンスターが戦ったっていう」 彰利   「ああ、あのみさおの前世が生贄にされたっていう?」 アルセイド『……そう。あの頃は空気には死の匂いしかしなかった……』 ドリアード『わたしたちが力を行使したのはその空気の浄化の際のみです。       それだけで力を使い果たしたわたしたちは、       癒しの潰えた世界で命を削りながら生きてきました』 彰利   「苦労したんだねぇ。でも悠介が癒しを回復させたあとは絶好調なんでしょ?」 ドリアード『ええ、それはもちろん。マスターには感謝をしてもしきれないほどです』 ドリアードさんは穏やかでやさしい笑みを浮かべながら、喉の下あたりに手を当てた。 よくおしとやかなおなごがやる、あのポーズだ。 まさか実際に見ることが出来るとは。 とまあそげな小さな感激に浸りながら隣を見てみると、 悠介が顔を赤くしてソッポを向いていた。 おお、ナイス純情ボーイ。 彰利   「よっしゃ、んじゃあそろそろ行きますか。       粉雪ももう家に戻ってるだろうし、このまま豆村の家に直行です」 悠介   「解った。ドリアード、ナイアード、オレアード、       アルセイド、ナパイア、ネレイド、助かった。ありがとう」 ドリアード『いいえ。こんなことでお役に立てられるのならいつでも呼んでください』 悠介   「ああ」 悠介が頷くのを見ると、ニンフさんたちは満足そうに頷いて指輪に消えてゆきました。 悠介 「……ん。よし、行くか」 彰利 「そうね。しっかし……どうなるんかな。     やっぱ『娘と付き合うことは許さーん!』とか言われるんかな」 悠介 「覚悟してて損は無いと思うが」 彰利 「シャレになってないねそれ……」 悠介 「けどさ、実際一週間以上は余裕で会ってないんだろ?     そう言われても仕方ないだろ。約束破っちまったのはお前だ」 彰利 「そ、そうだったな……今日は粉雪のオヤッサンに久々に会う日だ……。     ウムムム〜〜〜〜ッ……せっかくオヤッサンに会うんだ……。     自慢の上腕二頭筋を締めておかないと」 悠介 「筋肉関係あるのか?     ───って、そういや日余の親父さん、元ボクサーだったっけ」 にしても関係ないだろ、という親友を余所に上腕二頭筋を黒で締めてゆく。 彰利 「だ、大胸筋の張りも見てもらわねばーーーっ」 悠介 「……ロビンマスクの真似かよ」 さらなるツッコミにもめげず、大胸筋から始まる肉体美の元素を固めてゆく。 おお美しい!!マーベェラス!! 彰利 「悠介、悪いが先に行っててくれないか。     俺はもうひと汗かいてからお宅に参上するよ!」 悠介 「お前が行かなくてどうするんだよ!!     俺は日余の親父さんのことなんて知らないぞ!?」 彰利 「ウムムム〜〜〜〜ッ」 悠介 「ウムムムゥじゃねぇ!!」 彰利 「グ、グウムッ……よ、よし、覚悟が決まったぜ〜〜〜っ。     タ、タクシーを拾ってゆっくりと行こうーーーっ」 悠介 「転移すれば一発だろ」 彰利 「お、俺の緊張も少しは察してくれよ!!」 悠介 「それが覚悟が決まったって言った男の言葉か……前途が多難だな」 彰利 「ウググ〜〜〜……」 ああもう……666体のモンスターを吸収する過程でも、 こげなドッキンコはなかったってのに……。 【ケース23:晦悠介/ビーンダイナスティ(豆王朝)】 カコーーーン…… 粉雪 「……はぁ。ししおどしの音、これで何回目だっけ……」 龍公 「知らんな。それより、諦めはついたか?」 粉雪 「つくわけないでしょ、お見合いなんて……。     わたし、彰利以外の人なんて嫌だからね」 龍公 「約束も守れんようなヤツなど忘れろ。それよりもだ───」 バン! 龍公 「ム───?」 彰利 「お……遅れて申し訳ございません。     タクシーが捕まらなかったものでトレーニングがてら走ってきましたァ〜〜ッ!」 悠介 「それに付き合わされた親友だ」 粉雪 「彰利───!?それに、晦くんも……」 龍公 「ウッ……凄い汗の匂いだっ……!!」 彰利 「ああっ、これは失礼!!」 シューッ、シューーーッ!! 龍公 「デ……デオドラント」 粉雪 「……スプレーーッ!」 いきなりでなんだが、さすが日余だ。 まさかしっかりとアリサママの真似をするとは。 こういうヤツだからこそ彰利と気が合うのかもしれないが。 粉雪 「お父さん……やっぱりわたし、彰利以外の人なんて嫌よ!」 龍公 「なにを子供のような我が儘を言っている!お前は私が選んだ男と結婚するんだ!」 彰利 「は……はじめまして。お父さまお母さま、オ……オレが、いや……わたしが……」 龍公 「なにがはじめましてだ!約束も守れない男が今さらなにをしに来た!!」 ミサコ「まあまああなた。せっかくですし夕飯をご一緒しながら落ち着いて話ましょう」 彰利 「いえ、お母さま結構です。オレにはこの……プロテインがあります!!」 ゴキュゴキュゴキュゴキュ……!! 彰利が、ここに来る途中で買ったプロテインをがぶ飲みし始めた。 なんの真似かと思ったら…… どうにもあまりの緊張に頭の中がロビンマスクになってしまったらしい。 ゲボハァッ!! 彰利 「ぶえぇえっ!!不味ぃ!!」 吐いた。 どうやらしこたま不味かったらしい。 龍公 「グムムム〜〜〜〜ッ……と、時に彰利くん、だったな。     ひとつキミに訊きたいことがある。今さらここへなにしに来たんだ……」 彰利 「ハイッ!わたしの夢は超人オリンピック優勝ですっ!!」 龍公 「ち……ちょうじん……?なにを言っている、私は───」 彰利 「世界に冠たる我が大英帝国の正義超人の代表として、     超人オリンピックで優勝することです!!」 悠介 「……アホ」 龍公 「こ、この馬鹿者めが!     人の質問にも満足に答えられず、答えを濁そうとするとは!!     もういい!やはり貴様なんぞに私の娘はやれん!」 彰利 「超人オリンピックで優勝して、腰に黄金に輝くベルトを巻けたら最高です!     そしてさらに正義超人チャンピオンとして     憎っくき悪行超人たちの悪の禍根を絶つことです!」 だめだ……こいつもう緊張のあまりに泣いてる。 自分でもなに言ってるのか満足に解っちゃいないだろう。 そう考えると、酷く哀れに思えてきた。 彰利 「お父さま、中には血の気の多いやつも居ますが、     ほとんどがフェアプレイ精神を重んじる者ばかりですよ。そうそう───」 彰利がさらに懐からポスターを取り出し、オヤジさんに見せた。 彰利 「ちょうど今日、大9回超人オリンピック     イギリス予選のポスターが刷り上ったところです!」 龍公 「グゥ〜〜ッ!!」 やばいって彰利……オヤジさんすげぇ怒ってるぞ……? ただでさえポスターがかっぱらってきた劇場版アンパンマンポスターだってのに、 これ以上ヘンなこと言ったら─── 彰利 「もちろんお父さまお母さまにはスペシャルリングサイドを用意しておきますので」 龍公 「ウヌヌ〜〜ッ!!帰れーーーッ!!     キミにお父さまと呼ばれる覚えはなぁーーい!!!     約束を破ったからといって、モノで釣ろうとするその根性が気に喰わん!!」 彰利 「お、お父さま!!」 龍公 「黙れ!お父さまと呼ばれる覚えは無いと言った筈だ!!     出て行け!!キミがその情けない根性を改めるまで、     二度とこの家の敷居は跨がせん!」 彰利 「ちょ……超人界をぬ……抜ける……?に、人間になる……?」 龍公 「グッ……人の話を聞けと言っているのだ!!キミは私をコケにしたいのか!!     もういい!キミがどういう人間だかよく解った!!     二度と娘と会うことは許さん!出て行け!!」 そう言うと、親父さんはお手伝いさんに彰利を放り出すように命じ、 混乱中の彰利はあっさりと外へと連れ出された。 ───……。 ……。 というか……さっきまで嫌になるくらいの天気だったのに、 どうして雨が降ってるかな……。 使用人「出て行きなさい!」 ドゲシッ───バシャッ!! 彰利が雨の降る中に投げ出され、俺はそれに続くようにのんびりと歩いた。 使用人「……申し訳ありませんでした。     旦那様も、普段は温厚な方なのですが……。あ、せめて傘を───」 悠介 「いや、いいよ。たまには雨に濡れるのもいい」 使用人「そうですか……。あの、どうか旦那様を憎まないであげてください。     旦那様は彰利さんのことを物凄く気に入っていらっしゃったんです。     それがこんなカタチで裏切られて、それで……」 悠介 「解ってるって。今回のは全部、トチ狂ったこいつが悪い」 彰利 「グ……グウウ〜〜〜〜ッ」 悠介 「お前も。いつまでロビンマスクの真似してるんだよ」 彰利 「………」 バシャッ……バシャッ…… 悠介 「……?お〜い、何処行くんだ〜?」 落ちたプロテインやアンパンマンポスターやデオドラントスプレーをそのままに、 彰利はフラフラと歩いてゆく。 ……どこまでロビンマスクやるつもりかは知らないが、 まあ……見守るのも面白そうだと判断した。 ということで、彰利の着ているもの(洋服)をロビンマスクの鎧に変換し、 さらに頭にロビンのマスクを創造した。 が、追い出されたという事実が相当に利いたのか、気づいた様子はない。 どういう神経してるんだあいつは……。 ───……。 ……。 さて───ロビンに付き合うのもいいかな、と思ったのが少し前のことだった。 ああ、そう記憶してる───が、早くも後悔した。 ドガシャアアーーーーーンッ!!! ロビン 「とんずらぁああーーーーーーっ!!!」 バーテン「の、飲み逃げだぁああーーーーーっ!!!!」 悠介  「くっはぁあああーーーっ!!この馬鹿ぁあああああーーーーーっ!!!!」 初めて訪れたバーでスコッチを飲むだけ飲んだらとんずら。 俺はそれを追うようにして逃げ出した。 ロビンマスクのようには当然いかなかった。 そりゃそうだ、ロビンの時にはジョンブルマンが訪れて代金を払ってくれたが、 そもそも俺達は無一文だった。 故にロビンは逃げ出し、俺も巻き込まれて逃げる羽目となった。 ……言っておくが、俺は一滴も飲んじゃいない。 だから逃げる理由なんてひとつも───いや、 仲間と思われて払わされるのは御免だから逃げる意味はあるかもしれない。 知らない人ですとか大ボラを吹くという手もあったが、 それじゃあ無一文でバーに入る意味が無い。 結局は……反射的に逃げてしまったものはしょうがない、ということだろう。 こうなったらもう逃げるだけだ。 ああくそ、紳士超人の風上にも置けない。 バーテン「そ、その男は飲み逃げ犯だーーーッ!!捕まえてくれーーーっ!!」 ヤクゥザ「あぁん!?おれっちのナワバリで飲み逃げたぁいい度胸だーーーーっ!!」 ふと、雨の中を傘差して歩いていたヤクゥザと遭遇。 ヤクゥザは傘を放り投げるとロビン目掛けて駆け出し、殴りかかった───!  ───ドガァ!! ヤクゥザ「ぐはっ!!」 しかしロビン、それをタックルであっさりと吹き飛ばす。 ヤクゥザはまるで、 ロビンにタックルされた人間のように錐揉み回転しながら壁に激突した。 普通吹き飛ばされた人は頭から壁にぶつかりそうなものだが、 ヤクゥザは何故か足から壁に激突していた。 そんなところまで完全に再現されているのは……ヤツがロビン的に壊れたからだろうか。 だったら俺も少しは気休めに付き合ってやるべきか。 ヤクゥザ「て、てめぇ〜〜〜〜っ……こ、このオレにこんなことをして、      ただで済むと思っちゃいねぇだろうなぁ〜〜〜っ」 悠介  「あきらめな!      ロビンマスク主将がボールを持ったら誰もタックルできやしない!」 ヤクゥザ「ロビンマスクだぁ〜〜〜っ?……なんだおめぇら、ロビンマスクのファンか?」 悠介  「というか成り切っているのがそこに」 ガバシッ!! ヤクゥザ「ウオッ!?」 ロビン 「アリサ!キミは素晴らしい女性だ!キミに犠牲を強いたりはしない!!      ……オレは決心したよ!」 ヤクゥザ「な、なにしやがるてめぇ!!いきなり抱きつくんじゃあねぇ!!」 ロビン 「オォアリサ!!アリサーーーーーッ!!!」 ドチャァッ!!───ロビン、なにを思ったのかヤクゥザを押し倒すの図。 というより、ただヤクゥザが雨に足を取られただけだろうけど。 ただまあ結果的には転倒し、腹をしこたま打ち付けたロビンは口から…… というかマスクから、プロテイン混入のスコッチをだばだばと吐き出し始めた。 ヤクゥザ「オワッ!?ギャ、ギャアアアーーーーーーーーーーッ!!!!」 ロビン 「オエェエエエ……」 ヤクゥザ「キャーーッ!!?キャーーーッ!!キャアアアーーーーーッ!!!!」 安らかに眠れヤクゥザ、せめて十字は切ってやる……。 ───……。 ……。 ロビン「ふぅ……スッキリ♪」 先ほどまでの落ち込み様も何処吹く風。 ロビンは吐くだけ吐いたら、 カラ元気も真っ青なくらいの笑顔(といってもマスクの所為で解らんが)で 気を取り直していた。 ロビン「違う……洋服を脱ぎ捨て鎧に着替えただけで、     いつも見慣れている風景が全く違って見える。     明日は粉雪と龍公氏にこの姿を見せに行くんだ!」 悠介 「やめといたほうがいいと思うぞ……」 ロビン「そうだ花でも買っていくか!」 悠介 「聞いちゃいねぇ……」 もういい……もう最後まで見守ってやろう。 こいつがどれだけの行動に出るのか楽しみにはなってきた。 フォローを頼むと言われはしたが、本人がこれじゃあ救いが無い気がしてきたし。 ───……。 ……。 そして翌日───と言わず、決心を固めた数分後。 粉雪 「ロビン……あなたロビンマスクなのね!?」 悠介 「というかそれ以外のなにに見えるのか是非聞きたい」 粉雪 「わたしも」 龍公 「馬鹿にしおってぇえーーーーっ!!出て行けぇっ!!!」 ドガシャアアーーーーン!!!!! ロビン「ズイホーーーーッ!!!!」 花束を強奪してとんずらし、豆村家に堂々と正面から会いに行った紳士超人は─── ものの30秒であっさりと追い出された。 玄関に向けて放り投げられたロビンが玄関をブチ破って転がる様は壮観だったが、 ロビンが倒れた瞬間に雨が降ってきたのはなんとかしてほしかった。 ロビン「グ……グウウ〜〜〜〜ッ」 そして再びフラフラと何処かへ歩いてゆくロビン。 ……なんかもう、不毛な気がしてきたんだが……なんとかならないかコレ。 しっかりと、ロビンの姿が見えなくなったら雨が止みやがったし……。 龍公 「キミも!いつまで居る気だ!これだから家系の者は信用できなかったんだ!     出て行きなさい!!もう二度と会わせるつもりはないと言っただろう!」 悠介 「……俺は中学時代の『友人』に会いにきただけだ。     家系の人としてならともかく、友達として追い出される謂れは無いつもりだ」 龍公 「屁理屈をこねるな!大体───」 悠介 「待った。……聞きたいことがある。彰利の何が気に喰わない?     約束を破ったことだけか?     あんたの信用ってのは約束を一度破られただけで崩れるほどヤワなものなのか?」 龍公 「信用がどうとかの問題ではない!     その『一度』さえ守れないヤツが、どうして娘を幸せに出来る!     私は───私はただ娘の幸せを願っているだけだ!」 悠介 「……幸せを願ってるなら、     どうして『一緒に居たい』ってヤツと一緒に居させないんだ?」 龍公 「不幸になるに違いないと思って、なおも付き合わせる馬鹿が居るものか!!     それを阻止しようとしてなにが悪い!!」 悠介 「あんたのその思考そのものが悪い」 龍公 「なにっ───!?」 粉雪 「ちょっ……晦くん!?」 グイ、と服を引っ張って止めるように促す日余を目で制し、 真っ直ぐに龍公さんに向き直る。 悠介 「あんたのそれは結局自分の我が儘だろう。娘の幸せが、とか気に喰わないだとか。     娘の幸せを願ってるなら、どうして娘の望む通りにさせてやらない。     それでもし日余が不幸になったとしても、それは日余が選んだ道だろう。     いくら不幸になろうが自業自得で、幸せになれればそれに越したことはない。     心配するなとは言わない。けどな、望むことさえさせてやらないヤツのどこが、     相手の気持ちや幸せを考えてるっていうんだ?」 龍公 「ぐっ……!しかし、それは───……」 悠介 「俺達は誰よりも孤独の辛さってのを知ってる。     その中で心を許せる相手が居たことがどれだけ嬉しかったのかも知ってる。     だからこそ人との絆を簡単に捨てたりしないし、信頼だってする。     だからこそ……全てを『信頼の所為』にして、誰かを縛るヤツが許せないんだよ」 龍公 「ム……グ……!お、おのれ貴様……小僧の分際で私に説教なぞタレおって……!」 悠介 「説教として受け取るか、学ぶものとして受け取るかはあんたの自由だ。     けどな、だからって人の幸せの可能性を潰していいなんてことは絶対に無い。     それは誰にしたって『自由』である権利じゃない」 龍公 「………」 龍公さんが俺を睨む。 だが───次の瞬間には脱力し、俺と日余を見比べるようにして交互に見た。 龍公 「粉雪……あの男と一緒に居たいのか」 粉雪 「……うん」 龍公 「不幸になるかもしれんのにか?     私にはあの男が人を幸せに出来るほどの甲斐性があるようには見えないがな……」 粉雪 「だったらお父さんの目は耄碌だね」 龍公 「も、もうろくっ───!?コラッ!粉雪っ!!」 粉雪 「あははっ、でも本当のことだよお父さん。     彰利は今まで、いろんな人を幸せにしてきた。     自分をいっぱい傷つけながら、それでも他人ばっかり幸せにしてきた。     お父さんはわたしに『不幸になる』って言ったけどね、     そんなこと本当はどうでもいいの。わたしが、彰利を、幸せにしたいんだから」 龍公 「こゆ……───そうか。思慮が足りなかったのは私のほう、というわけか」 粉雪 「そうだね。それに───彰利と一緒なら、     生きてるだけでも退屈はしないと思うから。それって幸せってことじゃないかな」 龍公 「………」 龍公さんは少し複雑な顔をしていたけれど、『小娘が一端の口を』と言って笑った。 龍公 「ああ解った、もういい。私だけ真剣に考えて、まるで道化だ」 粉雪 「わたしだって真剣だったけど」 龍公 「もういいと言ってるだろう。     ……家のことは心配するな、思いっきり不幸にでもなってしまえ、馬鹿娘めが」 粉雪 「お父さん───うんっ!思いっきり不幸になってくる!」 喜びに声を張り上げているのがよく解る声だった。 が、そんな声もすぐに虚空へと塵、気づけば日余は靴を履いて飛び出していっていた。 悠介 「………」 龍公 「……時に。晦くん、だったね。酒と将棋は出来るほうかね」 悠介 「少しなら」 龍公 「よし。付き合ってくれ。飲まなければやっていられそうにない。     ついでに私に説教をたれたキミの幸せの状況はどうなのか、是非聞かせてくれ」 悠介 「ぐあ……」 軽く後悔。 このオヤジさん、転んでもただでは起きない性格のようだった。 もし俺が幸せへの感情の初心者だって知ったらどうなのか……考えただけで頭痛がした。 ───……。 ……。 悠介 「あー……そんなわけで、     めでたくも我が親愛なる愚親友が日余との交際を完全に認められた」 ロビン「わ、我はしこたま戦慄!!」 中井出「落ち着け───つーかさっきから気になってたんだけど、なんでロビンなんだ?」 ロビン「ビーンダイナスティに入るならば、ロビンの真似をしなさいと」 粉雪 「言われてないでしょ。それとビーンダイナスティって言わないの」 ロビン「グウウ〜〜〜ッ」 中井出「……んで?訊くまでもないと思うけど、晦のほうの将棋はどうだった?」 悠介 「………」 粉雪 「全戦全勝。お父さん、自信があっただけに落ち込むくらいにボロ負け」 総員 『あぁやっぱり……』 長居をすると空界の時間に置いていかれると判断して、駆け足で戻ってきたのが数分前。 工房の中で談笑していた中井出とイセリアとみさおと悠黄奈は、 眠たそうな顔をしながらも俺達の話に付き合ってくれていた。 最初は突然の日余の来訪に驚いていた一同だが、説明するとあっさりと納得。 そのまま現在に至る。 ロビン 「しかしもう深夜か……地界に居た時間なんてほんの少しだった筈なのに。      こういうことしてると、ウラシマ効果ってのも信じられる気分だ」 中井出 「ロビンのくせに時空理論唱えてんじゃねぇよ……」 ロビン 「ロビンのくせにとか言うな!!超人博士ナメんなよ!?」 中井出 「何が博士だロビンめ!      相手が悪行超人だからって、初めての闘いであっさりとコロがしたくせに!      一世時代の時でもだ!ギブアップを聞いてないからって、      紳士超人が相手超人を簡単に殺していいのか!マッキントッシュ氏が泣くぞ!!      いくら貴族とはいえ野蛮な超人レスラーなど言語道断!」 みさお 「紳士超人なのに飲み逃げしたっていうのも酷い話ですよね」 ロビン 「ウムムム〜〜〜ッ」 悠黄奈 「路上で、それも人に嘔吐物をかけたといいますし……」 イセリア「なんていうか、それって既に紳士じゃないんじゃないかな」 ロビン 「ア、アアアーーーーーッ!!!!」 中井出 「パンツ履く時に蟹股(ガニマタ)フルチンで回転しながら      『ヒョオオ〜〜〜ッ!!』とか叫んでるようなヤツだからな」 ロビン 「そ、それはわたしではない!!ほ、本物のロビンマスクが───」 中井出 「本物!?じゃあお前は偽者なのか!!」 ロビン 「グ、グウウウ〜〜〜ッ」 中井出 「ニッセロッビンッ!!ニッセロッビンッ!!」 総員  『ニッセロッビンッ!!ニッセロッビンッ!!』 ロビン 「ア、アアアア〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!」 ───……。 ……。 中井出「というわけで……ロビンマスクがイジケてしまった」 ロビン「酷いよぉおお〜〜〜……好きでこんな格好してるわけじゃないのに、     みんなが僕をいじめるんだよぉおお〜〜〜……」 みさお「解ったから工房の隅で体育座りしないでくださいよ鬱陶しい」 ロビン「うわヒッデェ!!親友!僕の親友!娘が酷いんだよぅ!!」 悠介 「俺にロビンマスクなんて親友は居ない」 ロビン「ゲェエエエーーーーーッ!!そう言うならこれ取ってよ!!外れねぇよこれ!」 悠介 「スマン、ジャストフィットするように物質変換したから外せないんだ」 ロビン「ゲ、ゲェエエーーーーーーーーッ!!!!」 ……その日。 広い工房の中に、ロビンマスクの悲痛の叫びがこだました。 Next Menu back