───頭文字Zと頭文字Kと軍曹さんもどき───
【ケース28:晦悠介(愛再)/探し物は見つけにくいから探し物って言うんだよ?】 悠介 「───というわけで。くれぐれも適当に開けたりしないこと。いいな?」 リオナ「解った」 リアナ「……あの。もし好奇心に負けてしまったらどうなるんでしょうか……」 悠介 「地界に行くなとは言わないが───頼れる当ても無い上に、     空界の服着ながら歩いて警察に捕まらない自信があるなら止めない。     それに道に迷っても助けてやれないからな」 リオナ「ふん?お前が一緒に来れば問題無いんじゃないか?」 悠介 「用があるって言ったろ。無理だ」 リオナ「……そういえば聞いてなかったな。用ってなんだ?」 悠介 「……相変わらず根掘り葉掘りが好きだな」 リオナ「謎が謎なままなのは許せない」 相変わらずのリオナを前に、溜め息がモシャアと漏れた。 まあ、気にしていても仕方が無いのは確かだ。 悠介 「……ゼプシオンのオーブを探しに行くんだよ。     召喚獣のオーブってのは『セット』唱えなくても召喚獣自体が落とすらしいんだ。     だから、同じく狭界から来たゼプシオンもオーブを落とした筈なんだ。     それをこれから探しに行く。     ……ついでに、みんながコロがした召喚獣のオーブの回収にも」 ロビン「そうそう。そのオーブ全てを悠介に押し付けるんだ。面白そうデショ?」 バタンッ─── 声   「その話───俺も噛ませろ!」 悠介  「なにぃっ!?」 ロビン 「き、貴様どうやってここに!!」 中井出 「人ンこと置いて転移しやがったみたいだから飛空艇でパパッと」 悠介  「私用で使うなよ……」 中井出 「いやいや、100%私用ってわけじゃないぞ?      ホレ、悠黄奈ちゃんとイセリアさんを連れてきた」 イセリア「や、悠ちゃん。大会見てたよー」 悠黄奈 「あまり無茶をしないでくださいね」 悠介  「………」 まだ見ぬ探索への心が一気に砕けた気分だった。 よし、とりあえずイセリアと悠黄奈にはリオナとリアナの相手を頼もう。 うん、それがいい。 悠介  「というわけで留守番頼む」 悠黄奈 「はい?」 イセリア「あれ?」 きょとんとするふたりをリオナとリアナの前に立たせ、 椅子を人数分創造してから座らせる。 そしてロビンと中井出を外に促し、とっとと散開した。 声  「あ……ちょっと悠ちゃーーん!?」 ロビン「呼んどるよ?」 悠介 「あー聞こえない聞こえない!何も聞こえない!!」 中井出「……強くなったな、晦」 悠介 「馬鹿おまえ、ファンタジーの旅っていったら“男”の浪漫だぞ。     それも、今回の旅はオーブ探しだ。     正直な話をするけど、振り回されるのはお前らにだけで十分だ……」 ロビン「そりゃおめぇ……なにか?     この紳士超人と中井出提督がキミをからかって振り回すとでも言うのか?」 悠介 「一字一句間違い無い」 中井出「よっ!苦労人!!」 悠介 「シャレになってないと言うのに……」 中井出「けどさ、そんなことばっかしてると女に嫌われるぞ?」 悠介 「ん?べつに好き合いたくて一緒に居るわけじゃないぞ俺は」 ロビン「うわ……出ましたよ中井出さん……。女に言い寄られる男の余裕……」 中井出「羨ましいですねー、俺も一度でいいから言ってみたいです」 ロビン「よし、言ってみてくれ」 中井出「フッ……べつに好き合いたくて一緒に居るわけじゃないぞ俺は」 …………。 中井出「やべ……泣けてくる……。モテない男が言っても虚しいだけだわ……」 ロビン「だそうだが?」 悠介 「……お前らさ、いい加減やめないか?なんでもかんでもそっちの方に考えるの」 中井出「そんなこと言ったってな、連れ添いを作るのは人生の目標みたいなもんだろ?」 悠介 「それは故人の見解だろ。誰かと一緒にならなくても人生は送れる」 中井出「ム───既婚者は言うことが違うな」 悠介 「いや、だからな……」 ロビン「まーまーいいじゃねぇの!!     悠介だって『ルナ以外と連れ合う気は無い』って断言しちまってあるんだし!     今さら誰かが悠介を好いたって知らぬ存ぜぬってことでOK!!」 中井出「あ……そういやそうか。     けどさ、それってやっぱ一度結婚した責任ってやつなのか?     だとしたら……なんか相手にも失礼な気がする」 悠介 「……ああ、解ってるよ、そんなこと」 中井出「……そか。まあ時間はたっぷりあるんだし、のんびり考えるのが得策だな」 ロビン「影ながら応援するぜ親友」 悠介 「俺にロビンの親友は居ない」 ロビン「ゲッ……!!いやだってこれ取れねぇんだって!!しょおがねぇんじゃよ!」 中井出「彰利……いくらビーンダイナスティに加わったからって、     生涯をマスクマンとして生きなくても……」 ロビン「キミ……人の話聞いてます?」 ……ロビンと中井出の会話を聞きながら、 俺はただ胸の奥に現れた感情に嫌気を感じていた。 くだらない、って断ずるのは簡単だ。 けど、そのために生きている人だって居るという事実が先を突くと、 罵倒なんて出来るはずもない。 でもそれは確かな感情だ───“正直、俺は色恋沙汰を嫌っている”。 取り戻したからといって、 手に入れたわけでもない感情のことであーだこーだ言われることに酷く苛立つ。 悠介 「……ガキだよな、まったく」 ロビン「ウィ?なにか言ったかね?」 悠介 「……なんでもない」 思えば体ばかり鍛えてきた自分。 自分の感情なんて二の次にしてきた自分が、 今さら何を思って感情を育てろというんだろう。 興味がないのかと言われれば……正直興味が無い。 恋愛感情だのを手に入れたところで、それは結局置き去りにしたままの子供の感情だ。 それを育てるか否かと訊かれれば、俺は─── ロビン「……後悔しとる?」 悠介 「してるな。現時点の感想を断言しろっていうなら間違い無く後悔してる」 ロビン「……ン。茶化して悪かったよ。     でもじっくり考えていきゃあいいってのは同意見だ」 悠介 「解ってる。解ってるから頭が痛いんだよ」 ロビン「ちなみに……今一番とっつきやすいのって誰?」 悠介 「イセリア、だな。これもまた正直な話になるが、     悠黄奈は『俺自身』だったわけだからそういう感情は一切浮かばない。     どちらかというと双子の妹みたいに思ってるよ」 ロビン「なるほど」 話しながら空を飛んだ。 さすがに中井出は飛べないので、自然と俺とロビンが引っ張って飛ぶようなカタチになる。 ロビン「こうして竜人にもなれて、黒竜王さえツブした男がねぇ……。     まさか色恋沙汰に勝てんとは……」 悠介 「そういう言い方やめろ。そういうの、嫌いだ」 ロビン「そだな、もし同じ立場だったら嫌な思いするのは目に見えてら。     色恋沙汰でからかわれることほどムカツクことは無いしね」 経験者は語る、と呟いて、ロビンはケタケタと笑った。 ロビン「まあムカツクといえば、     俺はあの『くりぃむしちゅ〜』とかいうコンビが嫌いでね。     つーかお笑いコンビって売れてくるとどうして態度悪くなるんかね。     や、そもそも偉そうな司会者ほどムカツクものはないというかなんというか」 悠介 「いきなり言われても知らんが」 ロビン「あれは……あれだな。『笑い者にしていいとも』で、     いつまでもしつこくゲストや視聴者を笑いまくってる誰かさん並にムカツクわ」 中井出「ああ、あれな。     一度ウケると、笑われてるヤツのことも考えないで同じことを言いまくる……」 ロビン「我ら原中生のように全面的に了承した上で言うならまだしも、     ゲストとして呼んだ人などを馬鹿にし続けるのはさすがに冷めるんだよな……。     その時の笑いネタに身振りがついてると、それを何度もやってみせて……。     なんかね、そういう時のそのゲストの微妙な顔見てると怒りがこう……なぁ?」 中井出「お昼は微妙だよな。仕事してる時はどうってことないけど、     気力充実のオフ日とかにアレ見るとストレス溜まる」 ロビン「かといって『昼は○×、全力テレビ』を見ても、     ストローレインコートさんがむかつくし……」 中井出「ストローレインコート?……ああ、『みの』ね」 ロビン「そんなわけで、我が家ではお昼はテレビをつけません」 中井出「俺はエロビデオ見ながら昼食食ってるが」 ロビン「……勇者だねキミ」 中井出「よせよ……照れるじゃないか」 ……楽しそうでなによりだ。 ロビン「さてそこで質問。恋愛感情を成長させる気はありますか?」 悠介 「成長させようとして成長するもんじゃないだろ。なにより興味が無い」 ロビン「そんなこと言ってっと、またルナっちに襲われるぞ」 悠介 「やめろ生々しいっ!!     あいつ人を壁抜けの要領で畳に埋め込んで、     身動き取れなくしてまで襲ってきたんだぞ!?あんなのもう冗談じゃない!!」 ロビン「うわぁ……ルナっちもやるねぇ……。でもそれってさ、     悠介が初夜に愛して上げなかったから寂しかったとかそんなんじゃないの?」 悠介 「……神魔竜解放してキサマを灰燼にしてもいいですか?」 ロビン「ど、どうどう……!!さすがにそりゃシャレにならん……!!     融合ミルハザードを軽くヒネり潰すような力、吸収出来んよ……!」 はぁ……本当に、色恋沙汰って面倒臭い……。 解らないと不思議なもんだ……どうしてこんな面倒なことに夢中になれるヤツが居るのか。 こんなことをしている暇があったら、修行してた方がまだいい気がするが……。 悠介 「……なぁロビン。誰かを好きになるってどんな感じなんだ?」 ロビン「ウィ?んー……とりあえずキミが恋するところなんて想像出来ねぇわ」 悠介 「俺じゃなくて……。いや、そりゃあ俺も想像出来ないことは確かだ。     けどそうじゃない、お前の話だ」 ロビン「ふむ……恋ねぇ。まずね、ハートがドキリコしてね」 悠介 「ふむ」 ロビン「次に、気づけばそいつのことばっかり考えててね」 悠介 「ふむ……」 ロビン「顔が近づけばムチュリとチスのひとつでもかましたくなるような……」 悠介 「………」 ロビン「もうなんつーの?いつまでだって傍に居てイチャイチャしてぇような……ねぇ?」 悠介 「……そか。とりあえず今の会話の中で解ったことは───」 中井出「ロビンが照れながら色恋話するの、すげぇヘン」 悠介 「それだ」 ロビン「キミが言えって言ったんでしょうが!!」 ムハァーと怒るロビンを余所に、俺は飛翼をはためかせて飛ぶ。 ……そしてふと気づく。 俺達は何処に向かっているんだろうか、と。 悠介 「どうなんだ?」 ロビン「へ?ああそうさカタパルトさ」 悠介 「そうじゃなくて……。俺達何処に向かってるんだ?」 ロビン「ヌ?目的地があって飛んでたんじゃないの?」 悠介 「………」 ロビン「………」 中井出「まだ行ってない場所とかあるだろ。     ほら、映像の中で言ってたアズナトラ地方とか」 ロビン「何処そこ」 悠介 「ベヒーモスの縄張りとハローナル渓谷との間辺りだ。     けどそれより先にジハードとゼプシオンが戦った場所に行ってみよう」 ロビン「それこそ何処なん?」 悠介 「伝承ではウォルトデニスの泉だって言われてる。だから案外───」 ロビン「おお、泉ン中に沈んでるって可能性もあると?」 ふと考えてみる。 ウォルトデニスの泉はそう深いものじゃない。 けど、確かに深く中の方まで見えない場所があった。 もしかすると─── 悠介    「……可能性はあるかもしれない。じゃ、行ってみるか」 中井出   「よし!全速前進だヒヨッ子ども!!」 悠介&ロビン『Sir(サー)YesSir(イェッサー)!!』 俺とロビンは言葉通り『全速』を出さんがために力を解放した。 ロビンはブラックオーダーを、俺は神魔竜人を解放し、 中井出がツッコミを入れようとした瞬間───シュゴォオオオウゥウンッ!!! 中井出「キィイイイイヤァアアアーーーーー───………………」 体を打ち付ける風の膜のためか奇妙に聞こえる中井出の声を無視し、 俺達は全速前進で飛翔を始めたのだった。 ……もちろん、ウォルトデニスの泉に着く頃……彼は者言わぬ気絶者と化していた。 悠介 「……どうする?」 ロビン「とりあえず起こすべきでしょう。     既にこやつも魔導術師の卵、理力系でも月操力ででもなんでもござれ」 悠介 「それもそうか。じゃあ───」 気絶している中井出の体を持ち上げ、 泉を囲むように生えている森と大地との境目に中井出を投げた。 するとバヂィイインッ!!!! 中井出「ほぎゃあああああああーーーーーーーっ!!!!!」 起きた。 どうやら世界が融合しても結界は生きていてくれたらしい。 ロビン   「グッドモーニング?」 中井出   「死ぬわっ!!」 悠介    「バッドモーニングだな」 中井出   「どちらにしろ死ぬわっ!!」 ロビン   「───バイオレンスモーニング!!」 中井出   「ぜ……全然ナイスネーミングじゃないぞ!        なんだその“これが決定打”って感じのさわやか笑顔は!!」 悠介&ロビン『我が儘だなぁ……』 中井出   「てめぇら……楽しむのはそれくらいにして、さっさとオーブ探そうや……」 ロビン   「おおそうだった!        え〜〜と、そう!中井出なんぞで遊んでる場合じゃなかった!」 悠介    「あ〜……おおそうだ、危うく目的を忘れるところだった……!」 中井出   「しょっ……少年のような笑顔でなんてことを!!        つーかわざわざ人が傷つく言葉を選んで言うのやめようよ!ね!?」 ロビン   「寝惚け眼な貴方を完全覚醒の麓へご招待」 中井出   「そんな回りくどい起こされ方されんでも完全に覚醒してたわ!!」 ロビン   「無理すんなよ……友達だろ?」 中井出   「ここで無理だとか友達だとかは関係ねぇだろうが!!        なんなのこの展開!ワケ解らんよ!!」 ……ン、よし、と。 悠介 「気にするなよ、結界の構造を変える時間の暇潰しをしてただけだから」 中井出「構造?って……そか、“人”は通れないんだったよな」 悠介 「そういうこと。だから構造に『条件』を付け加えておいたんだ。     俺と彰利と中井出だけは通れるって風に」 中井出「おお……会員メンバーみたいでいいな」 ロビン「キミが会員とか言うと、エロビデオコーナーの裏会員みたいに聞こえてイヤだね」 中井出「すまん……」 悠介 「そう思ってたのかよ……」 ロビン「中井出だし」 中井出「俺だし」 威張っていいことなのだろうか。 まあなにはともあれ俺達は移動を始め───バチィッ!! ロビン「ギャア!?」 ロビンが結界に弾かれた。 ロビン「グ、グウウ〜〜〜〜ッ……こ、これはどうしたことだーーーっ」 悠介 「……?おお」 ロビン「ゆ、悠介?なにその手打ち。なに納得しとるの……?」 悠介 「お前はロビンであって彰利じゃない。だから通れないんだ」 ロビン「へ?」 中井出「ああ、そういや『俺と彰利と中井出だけは通れる』って言ってたもんな。     だからロビンは通れないんじゃないか?」 ロビン「あの……悠介くん?キミは人のことなんだと思っとんのかね……」 悠介 「ロビンだろ」 中井出「ロビンだな」 ロビン「お、おのれ貴様ら……ならば───これでどうだ!」 彰利、ブラックオーダー状態のままにロビンの仮面を“吸収”し始めた。 やがてそれが終わるとその下から彰利の素顔が現れだし、 今度こそ彼は弦月彰利そのものに戻ったのである。 が─── 彰利 「フフフ……よし通れた!あとは吸収したロビンの仮面を黒から引き出して、と」 ゾブリ……ゾブリゾブリ……マキィン!! ロビン「パーフェクトゥ!!」 結界を越えるなり、彰利は吸収した仮面を黒で再現し、 ブラックロビンマスクと化したのだった。 と……普通なら考えるんだが、黒の鎧や仮面などが明るさに照らされていると、 どうにもロビンというよりは…… 中井出「ケビンだ、ケビンマスク」 悠介 「……やっぱりそう思うか?」 というわけで、今この時から彼の認識がケビンへと変わった。 中井出「だがそうなるとビーンダイナスティの跡取りとしての威厳が……」 悠介 「一応『ケビン』で『ビン』は付いてるから大丈夫だろ」 中井出「あ、そういやそうか」 ケビン「………」 などということを話していたらケビンは悲しそうな顔をし、仮面を引っ込ませた。 彰利 「……行こうか」 中井出「ありゃ、ケビンもう終わりか?」 彰利 「いや……ケビンといえばロビンダイナスティを捨てた男なわけで……。     だから真似をするとなると、ビーンダイナスティから抜けるということに……。     せっかくお付き合いを許してもらえたオヤッサンを裏切ることになるので……」 悠介 「どうして真似ごとになるとそう細かいかな、お前」 彰利 「自分でも不思議でしょうがない」 ムンと胸を張る彰利……謎だ。 まあ、ここでこうしていても始まらない。 さっさと奥へ行こう───そう頷いて、歩き出した。 彰利 「あ、でもここだったよね?妖精さんが居たのって」 中井出「おお、そういえば。裸のねーちゃんじゃなかったのは残念だが、あれはあれで」 悠介 「思考回路がオヤジになってるぞ、中井出」 中井出「健全だと言ってくれ」 ともあれ奥へと進んでいくと、綺麗な泉が眼前に広がった。 そしてその泉の周りを楽しげに舞う、色とりどりの妖精たち。 その何人かが俺の存在に気づくと、申し合わせたかのように俺の傍へと飛んでくる。 ……が、彰利と中井出を見ると、途中で停止した。 中井出「う……うおおおおおお!!ねーちゃーーーん!!!」 彰利 「よ、妖精!!妖精だーーーーーっ!!夢にまで見たナマ妖精!!」 悠介 「ナマとか言うなよ……」 中井出「だがいかん!妖精たるもの、もっと裸体である心を」 悠介 「たわけぇえええーーーーーーーっ!!!!」 マゴシャア!! 中井出「へぶしーーーーっ!!!」 暴走し始めた中井出を殴り飛ばして黙らせた。 続いて彰利を見ると、 ハタハタと手を振ってから口をチャックで閉じるゼスチャーをしてみせた。 騒ぐつもりはない、という意思表示らしい。 悠介 「はぁ……その、すまない。いきなり大声上げられれば驚くよな」 妖精 『あの……そちらの方々は……?』 悠介 「一応俺の友達で、怪しいだけでべつに危険はない筈だから」 彰利 「うわー、すげぇ言い方」 悠介 「それが事実じゃなかったら、俺は中井出を殴らずに済んだと思うが」 彰利 「まったくだ」 悠介 「は〜ぁああ……」 解ってるなら最初から、と……今までの人生の中で何回思ったんだろうな。 望んでこいつと同じ時間軸で馬鹿やっていこうって思ったのに、 こうして振り回されてばかりの人生は───やはり時に残酷である……。 妖精 『それで悠介さん、今日はここへどのような用で?』 悠介 「ん、実はさ、その泉の底にある穴のことを調べたくて来たんだ。     もし知ってたらありがたいんだけど、どうだ?」 妖精 『わたしたちもこの泉で沐浴をしたりしますが、流石に潜ったりはしないので……』 悠介 「そっか……」 中井出「じゃあ是非ともその沐浴をする大まかな時間帯を事細かに」 ゴスゥッ!! 中井出「はぶしっ!!」 悠介 「眠ってろ、お前は……」 大体、『大まか』な時間帯を『事細かに』ってなんだよ……。 悠介 「悪い、それじゃあ中に潜ってみたいんだけど───」 妖精 『それは構いませんが───     体に病原菌などが付いているとウォルトデニスが死んでしまう可能性があります。     もし可能でしたら、除去してから───』 悠介 「解った。じゃあ水面にそういったものを消す膜を創造して───と。     準備と覚悟は出来たか?」 彰利 「つーか息続くか?何処まで深いか解らんのでしょ?」 悠介 「俺は一時間は呼吸せずにいられる自信がある」 彰利 「バケモンですかアータ!!」 悠介 「いや、さすがに冗談だが……酸素くらい創造できるからな、     やろうと思えば長い間水中の中で行動可能だ」 彰利 「あ、なるほど」 本当はウンディーネが居てくれたらよかったんだけど、 悠黄奈のところに行ってるから無理だ。 と、なれば自分で潜るしかない。 悠介 「コーチ……俺いくぜ!!」 彰利 「あー……悠介?なんかヘンなもんでも食ったか?」 悠介 「喰うか!───ただ俺は悟っただけだ。     色恋がどうとかで感情磨り減らすよりは楽しんで磨り減らす!!」 中井出「ゲフッ!……結局磨り減らすんだな」 彰利 「悠介って思いっきり馬鹿に走ったことってあんまり無いからね」 悠介 「第四のコース!(ながれ)くん!!」 彰利 「おお、自ら不吉なコースに行くか流くん」 中井出「でも……思いっきり無理してんな」 彰利 「それだけ色恋が嫌いなんだろ。受け入れたのが子供の頃の悠介の感情なら、     今悠介が持ってる感情も子供の頃のものだしなぁ」 中井出「おお、それもそうか。     でもさ、それって逆に素直に誰かを好きになったりしないか?」 彰利 「ああほら……俺と悠介って複雑な状況で生きてきたからさ、     誰かを好きになるって感情自体を半殺しにしてきたわけよ。     好きになっても裏切られるだけって理解してるからねぇ。     だから今さらそげな感情受け取ったって、     すぐに誰かを好きになるわけじゃねぇのよ」 中井出「なるほど……さて、そんな晦が好きになるヤツってのは誰なんだろうなぁ」 彰利 「知らん。悠黄奈さんは絶対に無いとして、     『好き』って意味でいけば一番近いのはイセリアさんかね」 中井出「なるほどなるほど……っと、     おお晦氏、俺達の談話はシカトしていいから潜ってこい」 悠介 「………」 釈然としなかったが、無理はいかんと思って素の自分でいくことにした。 慣れないことはするもんじゃない。 【ケース29:晦悠介(阿修羅再)/ZとKと軍曹さんもどき】 ……そうして、泉の中に潜り込んでしばらく。 ゆっくりと酸素を吐き出しながら底の底を目指し───って深すぎだろこの泉!! あ、ああいやいや、深いのは一部分であって、泉全体は浅いもんなんだが…… 悠介 (底が真っ黒で何も見えやしない……) 試しに光を創造してみたが、岸壁が見えるだけで底自体は全く見えない。 ……一気に潜ると内臓破裂する恐れがあるよな、これだけ深いと。 困ったもんだ。 悠介 (しゃあない……何処までも伸びる竹槍が出ます───弾けろ) 試しに竹の槍を創造し、それを底目掛けて伸ばした。 ……伸ばしまくった。 伸ばして伸ばして───もう、これでもかってくらい伸ばした。 すると───ベキャッ! 悠介 (───!?) 先の先の先のそのまた先の方で、槍が折れた感触を感じた。 いや……折れたんじゃない、“折られた”。 悠介 (……なにか……居る……?)  グイッ─── 悠介 (───ぶっ……!?) 突然、伸ばした槍が引っ張られた。 ヤバイ───そう思ったが、何かが居るのならそれを見るのもまた───男の浪漫!! 悠介 (水圧に影響されない膜が体の周りに出ます……弾けろ) 最初からこうしとけばよかったと、ちと反省。 けど───これでなんとかなる。 悠介 (それにしても……どういう力だ……!?) 水の中だというのに、浮力を無視した力でどんどんと引っ張られる。 と───その途中、額に何かがゴヅゥとぶつかった。 何かと思いそれを手に取った途端─── 悠介 (……!?浮力が逆転した……!?) 引っ張られ、『沈んでいた』筈の体が『浮き上がって』ゆく。 ヤバイ───なにかヤバイぞこれ……!! そう思った時はもう遅かった。 暗闇しかなかった筈の景色はほんの少しの明かりに照らされ、やがて─── 悠介 「───……え?」 ザバリ、という音とともに景色は開け、俺は絶句した。 目の前に巨大な獣が居て、その手には槍が掴まれていた。 つまり───見たこともないこの巨大な獣は槍を引っ張った存在であり、 さらにこの存在から感じる気配は“召喚獣”。 そして、明らかに空界とは違うこの空気と景色は─── 獣  『ゴォオオオオオオオオッ!!!!』 悠介 「っ───!!」 状況を把握しようとしてる場合じゃない───! 俺は瞬時にそう判断し、槍を手放して振るわれた拳を避けた。 見れば、俺が引き上げられた場所は巨大な井戸のようなものであったようで、 この召喚獣はここで水を飲もうとしていたのだと見て取れた。 ああいや、召喚されたわけじゃないんだから幻獣ってことでいいのか───!? ……召喚、されたわけじゃない───?って……ことは…… 悠介 「っ……冗談だろ……!?ここ───」 この景色、この空気から感じるものはミルハザードに近いものがあった。 彼がそこ至るまで生きていた場所の気配だ、間違えるわけがない。 即ち───ここは……! 悠介 「狭……界……!?」 幻獣 『ガァッ!!』 悠介 「───っ……考え事してんだから邪魔すんなたわけ!!バゴッシャァアアアアアアアンッ!!!! 幻獣 『ギャアアアアアッ!!!』 悠介 「っ……たく……!!」 しつこく攻撃を加えようとした幻獣を神魔竜人拳で黙らせた。 けど───油断はしないほうがよさそうだ。 考え事するなら神魔竜人のままのほうがいい。 悠介 「に、してもだ……。まさか空界の中心にある泉が狭界に繋がってるなんて……」 ……笑えないな、くそ。 悠介 「これからどうするか───ん?」 緊張と興奮からか、自然と握り締めた手に違和感を覚える。 と───俺の手の中にはひとつのオーブが握られていた。 なんだこりゃ……って、もしかして水中で額に当たったのってこれか? 浮力の境目にあったけど……───マテ。 もしかしてこれって─── 悠介 「……よし」 誰にともなく頷いて、指に傷をつけて血を出す。 それをオーブに落とし、さらに魔力を流して唱えた。 悠介 「我が名は晦悠介……輝石の加護の下、この儀式を司りし者───。     契約は完了せり!出でよ───ゼプシオン=イルザーグ!!」 ゴォッ───ドォッゴォオオオオンッ!!!! 唱えとともにオーブが砕け、中空に巨大な人型が出現する。 それは轟音とともに地面を砕き、やがて体の鈍りに払拭するかのように───咆哮した。 ゼプシオン「オォオオオオオオオオオッ!!!!」 悠介   「オ───……、……は、はははは……」 マジか……?本当に出た……。 ゼプシオン「───!」 悠介   「へ?」  ゴォッ───ドガァンッ!!! 悠介 「だわぁっ!!?ちょ、ちょっと待てぇえーーーっ!!     い、いきなりなにをっ……」 突如として振るわれたオリハルコンの剣の一撃を避けた。 竜でさえ断ち切るって云われた一撃だ…… いくら神魔竜人状態だとしても、くらったら危なかった。 ゼプシオン「覚えているぞ……あの時の竜族だ。我が両腕を断ち切った……」 ゼプシオンが俺の顔を見て言う……ヤバイ、神魔竜人状態なのに気づかれてる? 悠介   「あ……あー……その節はどうも」 ゼプシオン「答えを言え。私は何故、再びこの狭界に居る……。       そして、今はあれからどれだけの時が経っている……。       巨人族は……我らの種族はどうなった───」 悠介   「……巨人族は……滅んだよ。ミルハザードに滅ぼされたって聞いてる」 ゼプシオン「…………ならば、今の空界はミルハザードによって支配されているのか」 悠介   「───いや。ミルハザードももう空界には居ないよ」 ゼプシオン「なに?何故だ。ミルハザードはそれこそバケモノだ。       寿命で死ぬにしても千や二千で潰える命ではない」 悠介   「隠しても仕方ないから言うな。───ミルハザードは……俺が倒した」 ゼプシオン「───!?」 ゼプシオンの目が驚愕に揺れる。 馬鹿な、と叫ぼうとしたが─── 明らかに以前戦った俺と雰囲気が違うことを感じたんだろう。 ゼプシオンは押し黙り、小さく『そうか』とだけ唱えた。 悠介   「あんたがジハードと戦ってから、少なくとももう二千年は経ってる。       その間に空界も大分落ち着いて、       今はもう人間と亜人と竜族の争いは無くなった。       けど……相変わらずモンスターは存在して、       時に人を、亜人を、竜族を苦しめている。       戦って負けた俺が言うのも変だけど……       モンスターから空界を守るために、あんたの力を貸して欲しい」 ゼプシオン「…………」 ゼプシオンは何も言わず、ただ俺の目を見てきた。 そして……小さく目を閉じると、やはり小さく呟くような声で言葉を放った。 ゼプシオン「我が体がここに現存するのは……貴様が召喚した故か?」 悠介   「そうだと思う。多分、俺の魔力が姿を形成して固めたんだ。       その証拠に、巨人の召喚には魔力は必要無い筈なのに魔力消費を感じる」 ゼプシオン「……そうか。やはり二千年も経てば存在とは変わるものなのだな。       抵抗するだけで手一杯だった小僧が、ここまで強くなったか……」 悠介   「ウグッ……!そ、そっちだってそんな俺に両腕吹き飛ばされただろうが……。       それに、リビングアーマーなんかに頼って……」 ゼプシオン「ヌグッ……!貴様、いい度胸しているな……!」 悠介   「そりゃどうも……!」 ゼプシオン「だが互いに力を認め合うことは出来た。       ……いいだろう、貴様とともに在ることを誇りにかけて誓う。       そも、私の力ではジハードは倒せてもミルハザードを倒せたかは解らん」 悠介   「リビングアーマーになったりしなきゃ、       いけるところまではいけたってことか」 ゼプシオン「そうだ。全ては貴様に両腕を斬られたためだ」 悠介   「……ほんといい性格してるなあんた……」 かつての空界の英雄とされていた存在はその実、とっても人間チックだった。 当然だ、英雄だろうが巨人だろうが人格を持っている。 巨人をただ体が大きい人だというのなら、人の性格に似ているのは当然のことだ。 悠介   「ところで……こんなところに空界への行き道があるっていうのに、       なんだってこの世界の幻獣たちは召喚されるまで行き来しないんだ?」 ゼプシオン「簡単だ。幻獣たちにはこの水が清らかすぎる。       時に克服しようとしに訪れる幻獣も居るが、成功した者は未だに居ない」 悠介   「……ってことは」 拳で黙らせて、今もなおぐったりマイハートなあの幻獣は水を飲みに来たわけではなく…… この水に慣れて空界へ行こうと目論んでいただけなのか。 弱点を克服しようとしてた精神には悪いことをしたとは思うが、 流石に幻獣が空界に行くのは反対だ。 悠介 「今まで大丈夫だったんだから無理にすることはないとは思うけど……念のためだ。     ここと空界の浮力の境目に結界でもつけておいたほうがいいかもしれない」 そう言った俺に、ゼプシオンは『悪くない考えだ』と頷いた。 ……よし、そうと決まれば───ザポシィイーーーーンッ!!! 彰利 「フィナァーーーレの時間だぁっ!!」 悠介 「………」 彰利がやってきた。 この馬鹿……いったい何しに……。 彰利 「いやいやいやいや、考えてみりゃあ俺もう黒化してるから、     酸素がどうとか考える必要ねぇんだわ!     だから来たね!一気に潜りすぎて内臓破裂したけどすぐ再生したし!」 悠介 「よし、それじゃあ帰るか」 彰利 「早ェエ!!つーかあの、ここ何処?     空界ではないとお見受け致しますが……」 悠介 「幻獣たちの住まう場所、狭界だ。ベヒーモスだとかリヴァイアサンが元居た場所」 彰利 「なんと!?で、では───幻獣喰い放題!?」 悠介 「……楽しそうでいいな、お前」 彰利 「HAHAHAHAHA、キミの口からそれを聞くのは何回目かねぇ?     ともかく!人生楽しまなきゃ損!!つーか影と闇が腹減ったっつーからさ。     つーわけでここに倒れてる謎の幻獣さん、喰っていい?つーか喰う」 ジュルン───ゾブッ!! 幻獣 『ギャアアアアアッ!!!!!』 彰利の足元から黒が伸び、巨大な口になったかと思うと─── 幻獣の硬い鱗をいとも簡単に食い破り、次々と飲み込んでいった。 メキッ……ベキ、ガヂュッ……ぞぶり、かしゅっ……ごりごり、コキ……。 やがて黒い影に沈んでいった幻獣は完全に姿を消し、 だが地面に広がる影からはしばらく咀嚼音が鳴り続けた。 ……本当に。本ッ……当〜〜に人間やめてるな、親友。 彰利 「ぷふぅ……なかなかの量……と言いたいところなんだけどね。     この程度じゃあ666体の皆様が満足してくれん……。     ね、悠介?せっかくだから少々探検していかん?」 悠介 「いや、あのな……ここは危険でだな……」 彰利 「“男”なら冒険……だろ!?」 悠介 「任せとけっ……!!」 こうして俺は、危なくなったら逃げる方向で歓喜のままに了承した。 俺だって男だ、こんな冒険空間を見せられて、震えないわけがない。 冒険……そう、それはいつだって男の浪漫である。 彰利 「360℃敵だらけ……いいね!!これもある種のファンタジー!!     しかもなんかね!?ここすっげぇ空気がいいよ!!     見てよホラ悠介!!俺の黒ボディがツヤツヤに!!     まるで湿気を手に入れた軍曹さんみたいに輝いてるよ!!」 悠介 「へぇ……もしかしてここの空気、お前の黒に合ってるのかもな」 見るからにどんよりとした空気だが、彼にとっては最高らしい。 ふと見てみれば、今まで散々ナマケていた親友の目に、 久しぶり覇気というものが見て取れたりした。 彰利 「い……いける!この世界なら俺、世界を目指せる気がする!!     つーわけで、置いてきた中井出は妖精に夢中だから俺達ここで修行していこ!?     俺……今なら修行も進んで出来る気がする!!」 悠介 「………」 体質に合った場所で修行するのは確かにいい。 俺だって黄昏の世界で修行する時は随分と調子がいいもんだ。 だったら─── 悠介 「よし、じゃあ早速ここにおわすゼプシオンと組み手でも」 彰利 「へ?ゼプキャアアアアアーーーーーーッ!!!!!?」 振り向いた彰利が絶叫した……というか気づいてなかったのか? お前さっき360℃見渡してただろうが……。 彰利 「もうオーブ見つけたの!?あいやそうじゃない!お、押忍!!     まずはブラックオーダー状態のままをキープする修行をしたいであります!!     だから実戦は少し待って!ね!?」 悠介 「いきなり不甲斐なく見えてきたな……」 彰利 「ハハハハハ!!でも大丈夫さ!     だって狭界のナンバーワン的存在だったのってミルハザードなんでしょ!?     だったら少なくとも、悠介がここで負ける要素なんて無いわけじゃん!!     融合して通常の三倍磯野カツオだったミルちゃん倒したキミなら安心!!」 悠介 「二倍だったしカツオ関係ねぇ」 彰利 「細かいツッコミなどナッスィン!!つーわけで景気付けに適当な幻獣と戦───」 用も無いのに出したままなのもどうかと思い、 ゼプシオンに俺の中に入ってもらった時───ふと、彰利が固まった。 ……?なんだ彰利のヤツ、人の背後見て固まっ───!? 悠介 「…………あ、あー……えと、彰利ぃい……?     な、なんか物凄く嫌な予感がするんだが……?」 彰利 「キ、キキキキミの予感は正しい……!!     な、なにせゼプちゃんがとっとと引っ込んじまった……!!」 悠介 「い、いや……ゼプシオンは俺が引っ込ませただけだ……けど、     ぜぜぜ全然気配っ……か、感じなかったぞ……?」 彰利 「しょうがないっす……すげぇ速さだったから……」 体が自然に震えた。 ヤバイ、神魔や竜人程度じゃあまず勝てない、っていう予感が体を貫き回る。 俺はせめて相手の正体だけでも見ようと、ゆっくりと振り向き───叫んだ。 悠介&彰利『キングベヒーモスだぁあああーーーーーっ!!!!』 あとは全力疾走───というか逃走。 リアナの言うとおりだ、自分の力量が解らないほど未熟なつもりは無い。 アレには勝てん。絶対に勝てん。 そもそもミルハザードが狭界で強者を謳っていたのは三千年以上も前のこと。 ともなれば、この世界でミルハザードと同じく 様々な能力を吸い取って強者になった幻獣も当然居る。 迂闊!嗚呼迂闊!素直に帰っときゃよかった!! キングベヒーモス『ゴシャァアアォンッ!!!!』 悠介&彰利   『おわぁああああーーーーーーーーっ!!!!!』 雷光と極光と地震と咆哮と角攻撃と爪攻撃と牙攻撃とぶちかましから逃げ回った。 が───やっぱ速い!速すぎだこいつ!! 悠介 「い、行け彰利!!ここでのツヤヤカなお前の実力、見せてやれ!!」 彰利 「お、おぉおおう!!!鎌力(れんりょく)全開!!“影鎌繰り殺ぐ闇黒の秩序(アンリミテッドブラックオーダー)”!!     オォオオオオオラァアアアアアアッ!!!!」 逃げていた足を立ち向かう足へと変え、 彰利がキングベヒーモスの前足に向かって全力の拳を繰り出す───!! が───バゴチャァアンッ!!! 彰利 「いぎっ───!?あがぁああああああっ!!!」 かつて、ベヒーモスと戦った時がそうだったように─── キングベヒーモスの体毛がその攻撃を受け止めた。 一方の彰利は拳が砕け、その場に黒が散った。 硬さはやっぱりベヒーモスより上か───どうする……!? 彰利 「無理!こりゃ勝てない!!     戦うっつーならせめてもっと強くなってからだ!!」 悠介 「お───おおっ!!やる気になったか彰利!!」 彰利 「俺ゃここに来てから常にやる気だ!でも今は無理!」 悠介 「ああっ!一旦逃げる!魔導万象十式、ユニフラッシャー!!」 魔力を込めた指先で式の十点を描き、強烈な光を具現する。 それはこちらへ走る彰利を追ってきたキングベヒーモスの視界を完全に照らし、 これ以上無いってくらいの隙を作ってくれた。 彰利   「行くぜ親友!」 悠介   「おうっ!!」 彰利&悠介『とんずらぁああーーーーーーーっ!!!』 あとはやっぱり全力疾走。 神魔竜を解放すれば勝てただろうが、せっかく彰利がやる気になってくれたんだ。 そのきっかけを潰すなんてことはしない方がいい。 それに───正直に言えば、神魔竜の解放は修行の中でも試してない。 だったら彰利のブラックオーダーとともに成長させていった方がいいだろう。 それなら今は逃げるだけだ。 もうちょっとランクの低いヤツが居そうな場所へ。 Next Menu back