───狭界への疑問と黒いアイツ───
【ケース33:弦月彰利/巨人の里と最強黒竜とKB氏とアヂエンス】 彰利 「ツヤツヤーーーーーーーッ!!!!」 ハワァーーーーーーッ!!!! ということでハイ!!やってぇんきました狭界の国!! いやぁもうここの空気クセになっちまう!中毒ってヤツ!? ちなみに悠介は未だ胃炎に苦しんでおります。 まあ当然ですね、あれから一週間と経ってないのですから。 ともあれ俺は今日も元気に頑張ってます。 もちろんそのことは悠介には伏せてありますがね? 彰利 「フフフ……秘密裏に強くなって、彼奴めを驚かせてやるのだ……。     これぞ名付けて!……作戦A」 すんません、いい名前思いつかなかったンス……。 彰利 「だがその意気やまさに真!!俺はやると言ったら何気にやる男ですよ!?」 漢じゃないのは残念だが、それは仕方なきこと!! 俺……やるぜ!? 彰利 「つーわけでアンリミテッドブラックオーダー!!さぁ今日も張り切りますよ!?     まずは全力出して腹ァ空かせましょう!そしてお食事も兼ねて強者の道を!!」 闇  『わぁーれに触れる者は殺ス!!』 影  『魂の欠片も残さん……!』 彰利 「……キミたち、いっつも口だけは達者なんだからねぇ……」 いい加減、完全に操れるようにしないとね。 こうコワレてちゃあどうにもここぞというときにどーのこーの……。 ───……。 ……。 幻獣 『ボンゲェエエァアアアアアッ!!!』 ゴリラとマントヒヒを合わせたような幻獣が現れた!! コマンドどうする!? 1:食らう 2:蝕む 3:卍解実行/ディファーシックル・エナジードレイン 結論:3 彰利 「卍・解!!“獅子王三日月丸(コア・イレイザー)
”!!」 卍解に走るなー、とは言われたものの、 他に三段階目を例える言葉が見つからなかったのでそのままである。 ともあれマンティコアの力を鎌に送り込んだこの能力。 もともと卍解する時は全ての鎌の力だの黒だの闇だの影だのの力を鎌に送る。 そうすることによって限界以上の力を引き出すわけだが、 そこに幻獣の力が混ざるとこれが面白いんですわ。 幻獣の力を卍解に混ぜるわけだから、もうレーザーだのを撃ち放題。 とはいえそのレーザーこそがこの卍解の能力なんだから当然なんだけど。 ちなみに何故に“獅子王”なのかというと、 狭界のマンティコアってば顔が人じゃなくて獅子だったんです。 それゆえということで。 ……アレ?つーことはマンティコアじゃなくてキマイラだったんかな。 よしそれなら納得だ。 彰利 「ファイヤァアアアアーーーーーッ!!!」  ───ドンチュゥウウウウウウンッ!!!!! 鎌を一体化させ、腕をキマイラの頭部にしたソレから波動砲じみた黒い光が放たれる! クッハァたまりません!!月操力以外でレーザー撃てるってのがまたステキ!! しかもコレ、大気やら万象やらからエナジードレインして、 それを黒に変換して撃つという優れもの!! もちろん相手を破壊したら破壊した分だけ吸収出来ますし。 幻獣 『ヘァアッ!!』 彰利 「なんと!?」 が───ゴリラヒヒはそれをひらりと躱し、こちらへドットコドットコ走ってきた。 い、いかん!!獅子王三日月丸は次弾装填が長いのが唯一の弱点!! あ、いや……撃つ咆哮が一直線だけってのもあるか。 ホーミング性一切無しだからね……。 彰利 「だが残念!キミは俺には勝てない!───卍解!“滅亡を謳う閻王の虚空(ルーイング・セロ)”!!」 幻獣 『ゲッ───!?』 ヴン、と虚空が歪み、ゴリラヒヒを包むように円形の闇が広がる。 これぞキングクリムゾンの卍解、ルーイング・セロ!! ちなみに始解は立体三角形の闇に相手を閉じ込め、 ソレを狭めていき潰し消すというものです。 喩えを挙げるなら、Y∀IBA!に出てきた闇使いの技。 名を“黒王唱えし滅亡の謳”(ブラックンドアドバティス)といいます。 とまあそんな感じで、深緋鎌系は大体そんな感じ。 卍解にも差が無いのが寂しいもんですが、元々そげな感じだし。 ……つーかどうしてウィルヴスって鎌三つも持ってたんだろうね? まあ、やっぱ死神王だからだろうけどさ。 ゴリラヒヒ『ホギョアァアアアアアアアッ!!!!』 そうこうしてる間にも、円球状の闇がゴリラヒヒを潰してゆく。 そう、この離した状態にある両手を近づけていけばいくほど、闇は狭まるのだ。 逃げようとしても無駄無駄無駄、 既に闇の中にはデスクリムゾンとカオスクリムゾンの卍解も解放してある。 正直に言えば、卍解の解放はディザスティングヴァニッシャー以外は成功しているのだ。 全ての持ち主を屈服させるだけの力は既にあったからね。 ……これだけ吸収すりゃあ当然といえば当然なわけだけど。 ただね、ハイペースで解放した所為で、まだコントロールが上手く出来ないのです。 黒として様々な力を吸収したお陰で、 アンリミテッドブラックオーダー解放する時ほど苦しまなかったけど─── それでもコントロールが完璧かと言われればキッパリとノーなのだ。 しかもディザスティングヴァニッシャーって黒、闇、影とは反対側の能力だからね……。 これがまた大変なんだわ。俺、自分で自分が災い系の属性に属してるの、感じてるし。 ダークイーターとはまた別の意味で苦労してます。 アレも“闇薙ぎ”だからね、闇の属性持ってる身となると卍解が大変だった大変だった。 彰利 「というわけでハイおしまい」 ポシム、と手を合わせた。 すると闇の空間も一緒になって狭まり、やがてブヂンッ……という音とともに消えた。 彰利 「ただねぇ……威力は認めるけど相手を吸収出来ないんだよね、コレ……」 空間で殺す、混沌で歪み殺す、抹消で消す……と、そんな能力の深緋鎌シリーズ。 死神王の所有物だけあって、 随分と死神チックなものだが……吸収出来ないと戦う意味が無い。 そりゃあ、悠介と俺で明らかに差のある “実戦経験”を鍛えられるってことでは“意味”はあるのだけど。 そういう点では深緋鎌シリーズは便利だ。 なにせ三つの鎌を一緒くたにして卍解させることが出来るし、 さらに骨子として使用する場合は『黒、闇、影』の俺属性の他に、 『死覆、混沌、滅亡』の属性が追加されるからだ。 死覆……つまり死を覆うっていう意味を持つ属性は、 その名の通り死を覆い、自分を不死にする能力を持つデスクリムゾンの卍解効果。 かなり便利な能力だが、残念なことにやはり光には弱い。 だがそれ以外なら圧倒的に不死なわけで…… 元から光以外はあまり効かない我が身としては結構微妙である。 混沌……体を混沌化させて攻撃を無効化させる属性。 物理攻撃完全無効化というステキな能力で、 さらにその混沌に侵入した者を食えるというおまけつきなカオスクリムゾンの卍解効果。 でも物理攻撃以外には特に効果は無く、やっぱり微妙。 滅亡……相手を滅する能力で、かなりステキな属性であるキングクリムゾンの卍解効果。 だけど相手を消しちまったら吸収出来ないので使いどころは難しい。 しかも自分より弱い相手でなければ効果が無いとくる。 どのみち……黒になった自分には備わっているような能力なので、 マジマジと考えてみると悲しくなりますね。 彰利 「しっかし……どうしてここってマナが無いかね?」 俺の中にはダークマテリアが溶け込んでる分、 マナの支えがあるとその分だけ暴れられる時間も増えるってもんなんだが。 この世界じゃあマナも諸力も魔力も使えないし回復しないとくる。 マナは無理だけど、諸力も魔力も自分の裡で生成されるもんだってのに、 この世界はその理を根本から砕く場であるらしい、と……吸収した幻獣の知識は語る。 そも、この世界で言う幻獣ってのは“思念”。 その思念が自分を形成するために食らうのが“塵”であり“力”である。 この世界では魔力や諸力が大気に散れば、それを糧にして新たな幻獣が生まれる。 ようするに……俺がこの世界に来たことでツヤツヤになるのは、 空界で幻獣……いや、あの場合は召喚獣か。 空界で召喚獣を食い、その根本的な“能力”自体をラーニングしたからなのだ。 つまり俺はこの世界にあって、どちらかといえば幻獣に近い存在ということになる。 魔力や諸力が散ればそれを吸収し、塵が空界から流れればそれを吸収してツヤツヤになる。 そして……スッピーが言うには。 悠介がこの世界にあって、 諸力も魔力も存分に使えない理由は精霊の存在にあるってことらしい。 この世界は“思念”の集まる場所であり、 人よりは“思念側”の万象に位置する精霊体はこの世界に霧散されやすい。 気を抜けば他の思念にくっつかれ、 力を吸収されるか存在自体を吸収されることにもなるのだそうで。 故に───その分悠介の諸力と魔力を糧とし、 己という“思念”を明確にしておく必要があった。 スッピーはそれを悠介に言うとまた無茶をし兼ねないと思い、 ただ“使えない”と言ったのだそうだ。 悠介のことだ、そうと知れば理力を全開して、ただでさえ消費の激しい高位精霊である スッピーやニンフやらに創造した諸力を与えまくるだろう。 そげなこと、俺でも容易く想像出来る。 と……あとなんて言ってたっけ……? ……よし!回想モードオォーーーン!!!
───……。 彰利 「……スッピー、出てきて大丈夫なん?」 ノート『少しは回復したから大丈夫だ。ここしばらくは安静にしていたお陰だろう。     マスターの諸力も魔力も湧き上がってきている』 彰利 「ほうかほうか、そりゃ安心。で……こうして出てきたってことは俺に用があると」 ノート『ああ。マスターにはあまり聞かれたくない』 チラリと見れば、ベッドで眠っている悠介。 とまあそんなわけで、悠介が寝ている隙に俺とスッピーは対面しておりました。 彰利 「で?なんぞね?」 ノート『狭界についてのことだ。     あらかた予想はついていると思うが、狭界とは思念の渦巻く場だ。     私たち精霊には相性的に合わない場所、ということになる。     精霊は人よりは思念に近く、そういった強い念に影響されやすい。     マスターにはああ言ったが、     本来狭界では諸力も魔力も使えなくなる、などということはない』 彰利 「へ?でも……」 ノート『言っただろう、精霊は強い念に影響されやすい。     油断していれば念に取り憑かれ、     それをきっかけに次々と多くの念に纏わり憑かれる。     そのあとは念に押し潰され、自我というものを完全に乗っ取られる。     そうなれば精霊もただの念に成り下がるだけだ』 彰利 「……それと、悠介の諸力と魔力になんの関係が?」 ノート『精霊を精霊として具現させているのは、     それぞれの精霊が持つそれぞれの属性の諸力だ。     私ならば無の諸力、ニンフならば然の諸力、ニーディアならば雷の諸力。     つまり、マスターに諸力や魔力を行使出来ないと言った理由はそこにある』 彰利 「先生、何ひとつ解りません」 ノート『……ようするにだ。私達はあの時、     マスターの中にある諸力を糧として己の存在をより鮮明にしていたのだ。     そのために上手く力が行使出来なかったりしたんだが、     マスターはよりにもよって狭界で神魔竜化の修行を始めてしまった。     神魔竜化をモノにするにはまだ免疫というものが足り無すぎるというのにだ。     結果、マスターは力を失って倒れた。     それだけでは飽き足らず、さらにラインゲートまで開いた。     いくらマスターとはいえ、あれで倒れなければどうかしている』 あぁ……悠介ったらお馬鹿さん。 ノート『無茶をした罰として、力の大半を竜への免疫へと変えてやった。     そのお陰でこうして、力の行使も出来ずに眠っている』 彰利 「……ストレス性胃炎になったのってスッピーの所為?」 ノート『半々だ。ストレスが蓄積されていたのは確かだが、     病気に対する免疫力が高かったようで今までは胃炎になったりしなかった。     いろいろな能力の影響で発病しなかったと言ってもいいだろう。     だが、ここにきて能力の大半を竜への免疫に向けられてしまったわけだ。     そうなれば体にあった免疫力も低下し、発病してしまうのも頷ける』 彰利 「……あー」 遊ばれてんなぁ悠介。 でもまぁたまにはいい薬じゃて。 彰利 「って……その竜への免疫だっけ?それって充実しとんの?」 ノート『ああ。神魔竜になろうがなにしようが消費することは無くなった。     特訓の虫であるマスターは怒るだろうがな。     なに、たまには自分の無茶を思い知らせてやるのもいいだろう。     何を言おうが私は知らん』 いい性格してますね、スッピー。 でも俺も同意見です。 ノート『どの道マスターはもう少し休ませる。精神的に病んでいるのは真実だ。     もし回復し、再び狭界に行く時になったら警告してやれ。     【自分を“思念”から乖離する膜でも張れ】と。     元よりそうすればいろいろ考えることもなかった』 彰利 「ぐあ……そういやぁ……」 ……アホですな、俺達……。
……おお、そういやそげなこと言ってたっけ。 思い出せたからどうということもないことだった気もするけど。 彰利 「っと、思考に耽るのもこれくらいにしとかんと……」 ハッと気づけば幻獣さんが四体。 いやん、どうしましょ……などと思考の中でおどけて見せた途端─── 幻獣1『ケァアアッ!!』 グリフォンに似た翼鳥───ヒポグリフ……だったっけ?そいつが襲い掛かってきた。 ……と思ったら、俺の後ろに居た幻獣2……名前はよぅ知らんけど、馬に襲い掛かった。 随分足の多い馬だな……って、確かスレイプニルっていったっけ? つーか……改めて思ったけど、狭界ってヤバくないですか? 人やらなにやらの“思念”が塵とともにカタチになるんだよね? つーことは……神話だろうがデマ話だろうが、 “思念”として受け取られたらなんだって出現しちまうってこと……だよね? 彰利 「つーことはだよ?     ベヒーモスやらキングベヒーモスやらグランベヒーモスやらも出れば、     リヴァイアサンやらタイダリアサン(笑)も出るってこと……かね?」 や、そりゃあベヒーモスとリヴァイアサンは悠介が契約してるんだから居るのは当然だが。 彰利 「……某ゲームみたいにダークバハムートって居るのかな」 などと考えてみましたが、さすがに居るわけがない。 いやいや今は考えよりも修行です!! このツヤツヤに抱かれながら、今こそ俺は絶対王者になるのだ!! 彰利 「フフフ……来た!ついに来た!この俺の時代が来たのだーーーーっ!!!」 両腕を天に掲げ、悪代官のように『ふむふははははははは!!』と笑ってみる。 ……と、そげな俺を見下ろすなにかに気が付いた。 ついでに言うとソイツは、 俺や他の幻獣たちに気づかれないように手を上げていて、 振り下ろせば間違い無く俺を吹き飛ばしていたであろう軌道上にその手はあった。 野郎……よもやこの俺様に“不意打ち”をしようと目論んでいたとは……! しっかりと『マキィン!』って音を鳴らさなきゃだめでしょうが!! ……いやそうじゃなくて。 彰利 「愚かな……。キミは今、紳士としての絶対条件を手放したのだよ!     紳士でない貴様はなんてただのダンディだ!───訳解らねぇよこの文句!」 自分で言っててなんだが訳が解らなかった! OHなんてこと!ベリーシット!! 幻獣 『オガァアアアアアアアッ!!!!』 見つかってしまっては仕方ないとでも言うかのように、 幻獣さんは咆哮とともに手を振り下ろしてきた。 どうしたものか───そう思ったが、 自分の力がどれくらい上がって居るのかを確かめたくなった。 彰利 「焚ッッ!!」 ドゴシャアアンッ!! 彰利 「───おお!!」 振り下ろされたバカデカい手を片手で受け止めようと試みてみたんだが……上手くいった! うわ!ヤバイよコレ!なんか嬉しい!! さあ!ここですかさずキメ台詞!! 彰利 「……中々いい球だな」 ぐっはぁああああーーーーっ!!そうじゃなくて!! 棒読みで何言ってんだ俺!!もっといいキメ台詞とかあるっしょ!? うわ!ヤバイよコレ!なんか恥ずかしい!! しかもキメ台詞はその瞬間にキメるからこそキメ台詞と呼ぶのであり、 今改めて言ってみても恥ずかしいだけッッ……!! さよならボクのささやかな愛……。 幻獣 『オガガガガガガ……!!!』 彰利 「………」 もう一回殴りかかってきて?と言いたいところだったが、 なにやら必死に拳を押し付けてくるので……頼めそうに無い雰囲気だった。 彰利 「しゃーのない……───卍解」 手を受け止めたまま、闇から引きずり出した鎌を地面に落とした。 すると周りに千本の巨大な刀が───……出ずに、無数の金色疋殺地蔵が現れた。 彰利 「『金色(こんじき)
───疋殺地蔵景厳(あしそぎじぞうかげよし)』」 これぞブラックオーダーの応用。 様々な鎌を骨子として使い、能力を向上させるブラックオーダーの能力を利用し、 鎌と鎌の力を合わせて行使する……OH!まさにグレィトゥ!! 深緋鎌シリーズ以外で行使するにはブラックオーダーで引き出す以外に道は無いし。 彰利    「行けェい!金色疋殺地蔵!!」 金色疋殺地蔵『もろもろもろもろもろ!!!』 地蔵の頭と蝶の幼虫の体を持った巨大で無数な金色疋殺地蔵が 顎の下辺りから無数の刀を剥き出しにし、 黒い侵蝕の霧を吐き出しつつ幻獣さん達に突っ込んでゆく!! うわ〜、使っておいてなんだけど迷惑この上ない能力だなこれ……。 しかもどうしてか開口一番が『うしおととら』で『もろもろ』言ってた妖怪の真似だし。 なにはともあれ……  ゾグシュグチャベチャゴゴシュゴギャメギャブシャシャシャシャァアア!!!!! 幻獣達『ギャーーーーーーーーッ!!!!』 無数の金色疋殺地蔵の口から吐き出された黒の霧に侵蝕され、無数の刀で刺され、 さらには無数の巨体に押し潰されてはたまったものではなかっただろう。 金色疋殺地蔵景厳の餌食となった幻獣たちは、あっさりと黒に食われて消え去りました。 それとともに、金色疋殺地蔵景厳も。 彰利 「……これはなるべく使わないようにしよう」 見てて気持ち悪いわ。頭が地蔵で体が幼虫じゃあなぁ……。 想像してみてほしい、バカデカい蝶の幼虫が無数にひしめき合ってウゾウゾ徘徊する姿を。 ……やっぱ気持ち悪いわコレ。 ともあれ吸収完了。 ウゥム……お腹一杯。 彰利 「エネルギー───全開!!“影鎌繰り殺す闇黒の秩序(アンリミテッドブラックオーダー)”!!」 じゃけんどすぐに力を全開し、満たした腹を消化させてゆく。 彰利 「よっしゃあ!バッチこーーーい!!」 ババァッ!と構えた!───ら、目の前になにかがありました。 で……何気なくツイツイと突付き、ふと上を見上げれば─── キングベヒーモス『……………』 彰利      「……………」 えーと…… 彰利      「……あちょッス!」 キングベヒーモス『ガァアアアアアアッ!!!!』 彰利      「キャーーーーーーッ!!!!」 なんの悪夢だこりゃあ……なんで目の前にキングベヒーモスが……ウィ? 南無 『……ほね?』 彰利 「………」 マテ。 彰利 「オイコラ南無……なに勝手に出て来てんだ……」 南無 『手伝ってやろうとしただけほね。俺、頗る快調ほね。だから』 ゴリリンチョ。 南無 『ほね?』 ……食われた。 南無が。 南無 『ほねぇええええええええーーーーーーーーっ!!!!!     助けてほねぇえええーーーーーーーーーっ!!!!!!』 彰利 「すまん逃げる!」 南無 『うわひでぇほね!!それが死神の力を与えてやった骨に対する言葉ほね!?     キッサマ俺との融合が無ければあの時死んでたほねよ!?』 彰利 「グ、グゥムッ……!!」 南無 『解ったほね!?思い出したほね!?だったらヘルプス!ヘルプスミー!!』 彰利 「ごめん、俺前座だから」 南無 『ほねっ!?訳解らねぇほねよ!?』 彰利 「一言で言えば『今の俺じゃあまだ無理』!!」 南無 『……と、いうことは?』 彰利 「お前、もうおしまい。バイバイ」 バキベキコリコリ─── 南無 『ほねぇえええいやぁああああーーーーーーーーーっ!!!!!!!』 ゆっくりと咀嚼されてゆく南無に向けてハンケチーフを揺らし、 ヒポグリフの翼を黒で象り逃走。 南無 『イヤァ助けてほねぇえええーーーーーーっ!!!!     あっ!そこはダメほね!!そこは噛まないでほねぇええーーーーーーっ!!!』 やがて十分に距離を取ったのちに異翔転移で南無を転移させ、吸収してさらに逃走。 もちろんそれに気づいたキングベヒーモスに散々追われることになり─── もういい加減、勘弁してくれと思ったわけでした。 ───……。 ……。 彰利 「あーくそ……もうやだー……」 ようやく逃げ出せた俺は、溜め息をモフシャアアアアと吐き出した。 陰気は死神の糧になるとはよく言ったものだが、 自分の陰気は吸収出来ないのは如何ともしがたい。 彰利 「しっかし……広い世界よのぅ。     これだけ広いんだから町のひとつくらいあってもいいのに」 でも待てよ?この世界に町が無いのはヘンなんだよな。 だって───ねぇ?この世界には『巨人の住む場所』と『竜の住む場所』がある筈だ。 巨人と竜族の戦いは空界に召喚される以前よりあったって聞いた。 それはつまりここ───狭界から始められた戦だってことだ。 そこにどんな因縁だとかがあるのは知らんし、正直知ったこっちゃない。 けど、そこんとこと状況への理解は別だ。 こんなバケモンだらけの狭界だけど、何処かに巨人の里と竜族の住まう場所がある筈だ。 彰利 「……って、待て……?」 この世界って最初っから思念の集まる場所だったんだろうか。 もしかしたら何かきっかけがあって、こんな世界になっちまったんじゃないだろうか。 彰利 「気になるねぇ───町、探してみっかな」 そうすりゃこの世界のことも少しは解るだろう。 ……町があればの話だけど。 彰利 「よっしゃ、そうと決まりゃあ即行動!」 いやぁ謎はかなりあるけど、この世界の空気はやっぱり嫌いじゃあねぇや。 なにせこの俺がやる気になれる。 フフフ……この世界における俺はステキですよ!?さぁ全力で探しますか!! 彰利 「全力で───……うぃぃっ!?」 いざ、と振り向いた先に、一体の竜が居た。 そいつは紅い瞳で俺を見ると音が聞こえるほどの勢いで口を開け─── 彰利 「や───」 ヤバイ。 そう思った時には全てが遅かった。 巨大であり、黒く雄々しい竜は黒い極光を大きく開けた口から放ち、 全速力で空中へ逃げ出した俺を完全に捉えた。 反応速度がどうとか……そんな次元の問題じゃない。 ミルハザードに似てはいるがミルハザードではないソイツは、 この世界において恐らく最強だと思わせるほどの極光で俺を消し去った。 ───……。 ……。
彰利 「あいや、先に手を放したほうがまことの恋人!」 ギリギリギリ!! 彰利 「ミギャアアアアアアアーーーーーーーーーーーッ!!!!!」 ───……懐かしい夢を見ていた。 それはまだ、自分の気持ちを認めずに馬鹿やってた頃の話。 俺はまだ自分の心を手に入れておらず、 夜華さんや春菜さんや粉雪に自分の気持ちをハッキリ伝えてなかった頃の…… 情けないけど、なんだかあったかい夢。 春菜 「篠瀬さん!手、離してよ!」 夜華 「断る!!彰衛門の言葉が真実か否かなど関係無い!     確かなことはここで手を離せば貴様が彰衛門を抱きとめるということだけだ!!」 春菜 「べつにアッくんのこと好きじゃないならいいでしょ!!それとも好きなの!?」 夜華 「なっ……だ、だだだ誰がこんな馬鹿を!」 彰利 「馬鹿とはなんだコノヤロウ!!」 ギリギリギリギリ!!! 彰利 「ギョエェエエエエエーーーーーーーッ!!!!」 ……なんで俺、こんな夢見てんのかな。 そう思ったけど、やっぱりなんだかとっても暖かかった。 俺は粉雪を選んだ筈なのに……─── 彰利 「タスケテー!タスケテー!!つーか夜華さん!?     春菜さんの家系の力に対抗できるなんてキミどういう筋力を!?     ってそうか!集中することで魂に宿る浅美チャンの力がキミに力を!!」 夜華 「ぐっ……き、筋力だとか言うな!!」 彰利 「なんと!?そりゃ間違い無く筋力でしょうが!     それ以外で呼ばれたいのかねこのマッスル!!」 夜華 「なっ───き、貴様!!     わたしが『まっする』の言葉の意味も解らないと思ったのか!!」 彰利 「知ってんの!?すげぇ!現代派になったね夜華さん!でも悠介は悲しむね。     つーか離してください!痛いです!     それか誰かタスケテ!この際誰でもいいから!───おぉっと!?」 ……過去の自分の視点と今の自分の視点が重なる。 その先には水穂ちゃんが居て、 少し不安そうにこちらを見ながら部屋を通り過ぎようとしていた。 いかん!見て見ぬフリをする気だ!なんとしても止めねば!!気を引かねば! ……なんてことを思っている過去の自分の思考が流れてくる。 チャ〜ン♪チャ〜ン♪チャ〜ン♪マリュリュリュリュリュリュン♪ 彰利 「ヨウヨウそこゆくあ〜〜んちゃん、街〜の掟を知って〜るかぁ〜〜〜〜い?」 みさお「ケンカ厳禁、暴力反対」 彰利 「そうさそうだよ掟は守らにゃダメだぜベイベー?」 みさお「もし破ったら?」 彰利 「オーーーッ!!ノーーーッ!!」 みさお「違反したら?」 彰利 「ぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶる!!」 みさお「どうなるどうなるどうなるどうなる〜〜っ?」 彰利 「おォ〜〜ゥきィてを〜破る悪い子ッにゃ〜〜っ♪     正義の鉄槌お見舞いす〜る〜ぜ〜〜〜ッ!!」 ジャ〜ンチャ〜ンチャ〜〜ン♪ みさお   「いよゥッ!───正義の味方〜〜っ♪」 彰利    「そ〜れ〜が〜オゥレ〜たち〜……そ〜れが〜オ〜レ〜たち〜の〜ゥ……        OH!OH!……仕事だぜぇ〜〜っ!」 みさお&彰利『ウ〜〜ッ!!ボンバァーーーズ!!!』 彰利    「ヨウヨウ……解ったかい?」 水穂    「………」 ギリギリギリギリ!! 彰利 「ギャーーーーーーーッ!!!!!」 悲しそうな顔をされたのち、無視された上に通り過ぎて行ってしまった……。 しかもさらに引っ張る力が増した……。 ひでぇ……ひでぇよ水穂ちゃん……せめて助けを呼んでくれてもいいじゃない……。 ───否!きっとオイラのアプローチが足りなかったのだ! 彰利 「ヨウヨウそッこゆッくベ〜イベ、俺〜の名〜前〜を知って〜るかぁ〜〜い?」 ギュギューーーーッ!!!!! 彰利 「ギャーーーーーーーーッ!!!!」 やっぱ無視です! 自己紹介から始めようとした俺の心意気一刀両断!! すこぶる悲しい!しこたま戦慄!! 彰利 「あの……みさおさん?一緒に歌ってくれたついでに助けてくれない?」 みさお「巻き込まれたくないので」 彰利 「………」 泣きたくなってきました。 くそぅ、こうなったら男も女も関係ねぇ!! 正義の鉄槌お見舞いするぜ!?
───……。 ……。 彰利 「おぉっと鉄槌ィッ!」 メゴシャア!! ???『ペキューーーーーッ!!!』 繰り出した拳に確かな手応え……俺、やったぜ!? などと思った途端、目をパチクリとさせて目覚めた。 …………何処?ここ。 男  「なにをするんですか!!それが命を救ってくれた者に対する仕打ちですか!?」 彰利 「むっ!?何奴!!」 ババッと辺りをねめまわした。 すると───起き上がった我が背後におわした少年。 彰利 「あぁだら?なんじゃあぬしゃあ。こがあなところでなにしとんのじゃ。     ちゅうかここどこじゃ?こがあなところ、ワシは見たことないぞ」 少年 「…………ここは幻獣の里です。     良い思念によって産まれた幻獣たちが集う……」 少々時間をかけてから語った小僧の言葉には、確かな真実味がありました。 オイラが殴った物体以外は、特に俺を敵視するような目では見ておりません。 ……どうやら黒竜の極光に消し飛ばされて空気中に舞い、 こがあなところで元に戻ってしまったらしい。 つーかマジでここ何処?場所解らないんじゃあ帰れないじゃないですか……。 何処も同じような場所ばっかだから、『ここだ』っていうイメージ出来ないし……。 これでは転移したとしても上手くいくかどうか─── 少年 「貴方は何者ですか?正直あまり良い気配ではないような気がします」 彰利 「俺は空界の黒い秩序……弦月彰利さ!!」 少年 「空界の……?それじゃああなたは空界から……?     あ、いや……それにしては名前が……」 彰利 「うむ、よいところに気づきましたな。そう……我は地界人でござる。     およそ、戦いとは無縁の世界に住む地界人さ」 少年 「……そんな人が狭界に何の用で?」 彰利 「修行に来てます。俺……強くなりたいんだ!」 少年 「強くなってどうするんですか?」 彰利 「世界全土を渡り、天地空間を愛で埋め尽くすのだ!!ミュージックスタート!!」 チャ〜ン♪チャ〜ン♪チャ〜ン♪マリュリュリュリュリュリュン♪ 彰利 「ヨウヨウそこゆくベェ〜イベ、街〜の掟を知って〜るかぁ〜〜〜〜い?」 闇  『ケンカ厳禁!暴力反対!』 彰利 「そうさそうだよ掟は守らにゃダメだぜベイベー?」 影  「破ったらどうなるんだ?』 彰利 「Noooooooooooooooーーーーッ!!!!」 闇  『違反しちゃったら?』 彰利 「ブルブルブルブルブルブルブルブル!!」 闇&影『どうなるんだどうなるんだどうなるんだどうなるんだ〜〜ッ?』 彰利 「おォ〜〜ゥきィてを〜破る悪い子ッにゃ〜〜っ♪     正義の鉄槌お見舞いす〜る〜ぜ〜〜〜ッ!!」 ジャ〜ンチャ〜ンチャ〜〜ン♪ 闇     『おのれぇっ!───鍋〜奉行がぁ〜〜〜っ♪」 彰利    「そ〜れ〜が〜オゥレ〜たち〜……そ〜れが〜オ〜レ〜たち〜の〜ゥ……        OH!OH!……仕事だぜぇ〜〜っ!」 闇&影&彰利『ウ〜〜ッ!!ボンバァーーーズ!!!』 彰利    「ヨウヨウ……解ったかい?        つーかコラダークセンチネル!キサマ今間違えたろ!!」 闇     『た、戯言をぬかせぇっ!!』 彰利    「戯言じゃねぇ!いま鍋奉行がどうとか言ったでしょキミ!!」 ───ゾリュンッ!! 彰利 「あっ───て、てめぇ!!」 OHシット!ダークセンチネルとアモルファスの野郎、人の体ン中に逃げやがった!! 彰利 「えーと……」 少年 「………」 見つめられてしまった……照れてしまう。 彰利 「で……ちょほいと訊きたいんだけどさ。     狭界には巨人の里と竜族の縄張りってあるんだよね?」 少年 「ありますよ。それがなにか?」 彰利 「いえべつに。確認取りたかっただけさね。     あとどっちの方向にあるのかも教えてくれりゃあ俺様安心、超安心」 少年 「あっちの方角です」 ゆっくりと指を差す少年。 そちらには……果ての無さそうな荒野がありました。 それだけ遠いってことですか……やンなるぜまったくよォ……。 などと不良っぽさをアピールしてる場合じゃないね。 彰利 「サンクス。よもやこげな辺境で人に会えるとは思わなんだ。安心しましたよ」 少年 「人?……おかしなことを言いますね。     この世界に住むのなら、人でなんて居られませんよ」 彰利 「む?それって───」 いざゆかんとしていた体を少年に向き直す。 すると───そこには少年の姿は無く、一体の幻獣の姿があった。 幻獣っつーか……ノッカ−? ノッカー『貴方からは幻獣の気配がします。貴方も人ではいられなくなった人でしょう?』 彰利  「……キミ、もしや」 ノッカー『いいえ。僕は思念から誕生した存在ですよ。      やさしい思念から産まれることが出来た、幸運の持ち主です』 彰利  「そうだったのかえ……?で……ここに居て大丈夫なのかえ?      思念から産まれたなら、他の思念に食われりゃあ取り込まれるんしょ?」 ノッカー『大丈夫ですよ。ここには良い空気が存在していますから。      悪い思念は好んで近寄ろうとは思いません。      悪い思念が良い思念を食らえば、      善悪が相殺し合って弱体化することもあるのです。      それは強者になろうとする悪い思念からすれば望みたくも無いこと。      ですからよほどのことが無い限り、      悪い思念と良い思念の幻獣がぶつかることはありません』 彰利  「あやや……わざわざの説明痛み入る。お陰でこの世界の原理が少し解ったワイ」 ノッカー『どういたしまして。      ……ああ、手ぶらだとなんでしょうからこの世界の地図を渡しておきます。      世界の70%が荒地ですから、これが無い者はよく迷うんですよ』 彰利  「世界地図って……」 コサ、と渡された厚紙を広げると、そこには確かに地図が描かれていた。 うわ〜……物凄く広そう。 彰利  「すまんね、空界文字も狭界文字も俺にゃあ読めんのだわ。現在地って何処?」 ノッカー『ここですね。これで幻獣の里、と読みます。      そしてここが巨人の里。里というよりは王国のような場所ですが』 彰利  「ホウホウ……」 さっぱりだった。 じゃけんど現在地がここってことは、確かにあっちの方角に行けば巨人の里はあるようだ。 彰利  「オッケーサンクス。んじゃあオイラはもう行くわ。      それと、一応あんがと。話せる相手が居て安心したわ」 ノッカー『いえ、気にしないでください』 穏やかに笑うノッカーさんに手を振り、やがてあたしゃあ旅立ちました。 いやはや、やっぱこう……戦いに明け暮れてばっかだと人と話せる時間が貴重だね。 なにはともあれ、行きましょうか……巨人の里に! ───……。 ……。 ───三日後。 彰利 「お出でなさい!“地獄竜(ニーズレッグ)
”!!」 それぞれの卍解にも慣れてきて、 俺はいろいろな応用を駆使してさらなる高みを目指しておりました。 ……困ったことに道に迷ってしまった故に。 一直線に向かった筈が、どうやら地形の所為で感覚が狂ってしまっていたようなのだ。 ともかくロードオブハーディスの応用で地獄の門を開き、 そこから地獄に存在する竜を召喚し、トロルどもを滅ぼしていきました。 ……このトロルがねぇ、まったくもってしぶとくてさ。 しかも空界とはまた違ったゴブリンをぎょーさん従えててさ。 面倒だから地獄竜に食ってもらいました。 黒内のモンスターや幻獣どもは既に腹がいっぱいだったようなので。 もうね、散々食らいまくったから俺の体ン中ってば王国になってますよ? だから黒の内部と書いて“黒内(こくない)”と読みます。 彰利 「はぁ〜……しかしユニコーンには驚いたね」 ゲームなどでは聖なる馬だとかなんとか言われてたユニコーンさんだったが、 実際はかなり獰猛な暴れ一角馬でした。 とことんゲームの知識破壊してくれますよここ。 もうね、出会った時は感激のあまり手を広げて抱きつこうと走ったもんですけどね。 ハリケーンミキサーで吹き飛ばされた時は状況を疑いました、ハイ。 彰利 「じゃけんど……ここらは比較的、弱い幻獣しかおらんようだね」 俺でも余裕で勝てるヤツらがよく目立つ。 今ではよっぽどの相手じゃない限りは襲って来もしない。 でもこうなると不安なのよね。 俺、ちゃんと強くなれてるんカナ。 確かに皆様が避けるのは確かだ。だけどそれって、ただ食われたくないから、とか…… 彰利 「……ウム!ダメ元でレッツチャレンジ!!」 強そうな相手と戦って、己の力量を弁える戦いをしてみましょう! ヤバかったら転移逃走の方向で。 彰利 「やってやる!俺の心が猛って燃える!今こそ我が脳内にビッグバン!!     イリュージョンは成功しますか!?あわわわ……レッツ運動!!」 やる気満々だ!さぁ敵は何処だ! 今なら俺はやれる気がする! 彰利      「さあ気になる対戦者はーーっ!!?」 キングベヒーモス『…………』 彰利      「ハーーーーーーッ!!!!」 当然死んだ。 ───……。 ……。 彰利 「生きてることに感謝を。     そしてKB氏との因果が剥がれない我が裡なる黒い骨に絶望を」 全力での抵抗も虚しく、南無を囮に逃げてきたワシはすこぶる痛手を負っていた。 ちなみにKB氏とはキングベヒーモスのことである。 解りやすいですか? 彰利 「ともかくこんな失態……認められん!!     ワンナイトカーニヴァーール!!(訳:求めよされば滅ぼされん!!)」 ───……。 ……。 彰利 「ハーーーーーーーッ!!!」 巨人?『ガァアアアアアーーーーーーーッ!!!!』 彰利 「いきなり何故ェエーーーーッ!!!?     何故こんなことになってるのかとかそういうようなこと訊きてぇーーーーっ!!!     ともかく大地を駆ける今の俺は危機的状況にあります!解りやすいですか!?」 ワ、ワンナイトカーニヴァル!!(訳:求めよされば滅ぼされん!!) このままではシャレが真実になってしまう! 巨人かと思って話し掛けたら実はキュクロプスでした! なんてシャレにならん!! あ、キュクロプスとか言うけど、 実はサイクロプスもキュクロプスも同じなんだよ?知ってた? 確かキュクロプスの英語読みがサイクロプスだった筈。 ……でも空界のサイクロくんと狭界のキュクロくんじゃあ強さが段違いです。 こりゃイカンわ。 彰利 「勝利への脱出!!」 ゴバキャアッ!! 彰利 「ぐっへぇっ!!?」 ───まさに失敗!! 巨体では細かい動きに付いてこれまいと踏んだが、読みが浅かったようです。 細かく動いた途端に無駄な動きの部分を正確に狙われて鉄棍の餌食です……。 彰利 「ワンモアタイム!!」 バゴチャアッ!! 彰利 「ぶべぇぃや!!!」 なくなってしまーう!(命が) 彰利 「うおぉおおお犬より強いぜぇえーーーーっ!!!」 つーかなんで俺逃げてんの!?絶好のチャンスじゃん!! そう───強い!強いのだ俺は!! かつて一度だけ、幼少の頃に犬に泣かされた俺ではないのだ!!! 彰利 「───……覚悟、決まったぜ」 恐らく悠介も、強敵を前にする時は覚悟を決めていたんだろう。 意識的に、いつか親友がノックした自分の胸をトンと叩いた。 ───ん。いくぜ、俺───!! 彰利 「影黒の闇を我が身に宿さん!」 災狩の大鎌を除いた全ての鎌をブラックオーダーにて卍解に引き上げ、 一緒くたにして骨子にする。 あとは───全力で戦うだけだ!! 彰利 『いっくぜぇええええええっ!!!!』 自分がどの死神よりも死神の色へ染まってゆくのを感じた。 ───それでいい。 元々は死神の因果から始まった俺の人生……それが死神に染まるのならば本望! 今まで散々振り回された分、今度は俺が好き勝手に振り回してやる───!!  ───ゴォッ!ドッガァアアアアアンッ!!! キュクロプス『───……!?』 彰利    『……全開でブラックオーダーを解放した俺は気が高ぶってね……。        悪いが生き延びることは諦めたほうがよさそうだぞ、お前』 振り下ろされた鉄棍を片手で受け止め、小さく笑った。 ……気が高ぶる。 だがそれは、決して慢心から起こる相手を見下したような気配じゃない。 むしろ強敵と戦えることを喜べる心───そう、それが一番しっくりくる。 彰利 『ふざけねぇ俺はちょっと怖ぇぞ───!?』 受け止めていた鉄棍を握り潰すくらいに掴み、一気に引いた。 突然のことだったからかキュクロプスはそれに引かれるように体勢を崩し、 俺目掛けて倒れてくる。 が、キュクロプスはこれぞ好機と見るかのように、全体重を乗せた拳を落としてきた。 彰利 『……馬ァ鹿』 その拳は振り落とされれば確実に俺の体を潰しただろう。 ああ、結果がどうであれ、潰したのは間違い無い。 けどその腕は俺の体を潰す前に宙に舞い、轟音を立てて落下した。 キュクロプスは何が起きたのか解らないって顔で千切れた腕と俺の左腕を見た。 そこには彼のひとつ目を睨みつけるキマイラの顔があり、 大気を焦がした証拠だろう───放たれたばかりの黒のレーザーによる煙が、 少しだけ狭界の中空に漂っていた。 だが腕が飛んだからって倒れゆく巨体の勢いが止まるわけじゃない。 俺は右腕から腐竜の顔を出現させると、その巨大なひとつ目を噛み付かせた。 キュクロプス『ギガァアアアアァアアアアッ!!!!』 響く絶叫。 だが竜の鋭い顎はいとも容易くキュクロプスの眼球を噛み砕き、 腐竜はぐしゃりと潰れた眼球をブギブギと筋を裂きながら引き抜いた。 キュクロプス『アガァアアッ!!グアァアアアアアッ!!!!』 その痛みは幻獣といえど相当なものだろう。 視力の全てを司る自慢のひとつ目を食われたんだ、当然だ。 が───キュクロプスはそれでも残った腕で闇雲な攻撃を続けた。 俺はそれを何度も受け止めると、受け止める瞬間瞬間に幾度もその腕を食らっていった。 ……やがて、巨大な拳を食らい終えた時。 彰利 『食らい尽くせ』 ボタボタと血が流れる腕に闇と影を潜りこませ、内側から食らっていった。 ───響く絶叫。 それをさせないためにレーザーで首を飛ばし、 それを地面に落下させることもなく黒で食らった。 彰利 『……案外、あっけなかったな』 漆黒に染まる体の中、死神の力を集中させている瞳だけが───真っ赤に蠢いていた。 ───……。 ……。 彰利 「よし、反省点」 キュクロプスを食らい終えた俺は、ひとまず魔人化を解除してムフゥと息を吐いた。 興奮するのは構わんかもしれんが、なにもあげに残酷に食らうことなかったね。 もっとこう……影で覆ってから咀嚼してあげれば、首をハネずともよかったかも。 彰利 「……まあどの道食うんだからいいか」 反省点は却下された。 ただいきなり食うのはナシだ。戦って実戦経験積んでから食おう。 キュクロプスとの戦いで、そうしたほうがお得だということがよく解った。 彰利 「オーケオーケ!張り切っていこうぜ!!」 再び魔人化し、興奮に身をおいた俺は全力で狭界の大地を駆け出した。 エモノが必要だ。 もっと、自分を鍛えることの出来る相手が……!! ───……。 ……。 パパァアーーーッ!! 彰利 「世界が嫉妬する髪へ……アヂエンス!!」 巨人 「………」 なんの冗談か、幻獣を捜し求めて適当に動いてたら巨人の里に辿り着きました。 そこは確かに城みたいな場所で、この俺がまるで小人のようッ……!!とか言いたくなる。 だってね、普通の家ひとつがとんでもなくデケェんだもの。 でもね、辿り着いたはいいけど何をするべきかをよく思い出せなかった僕は、 とりあえず冗談めいたことを言うことにしたんです。 それがアヂエンス。 髪の毛を綺麗にしても、世界は嫉妬なぞしませんよ?という皮肉を込めて。 巨人 「何者だ貴様……ここは誇り高き巨人の里、エイジスぞ。     この地に災いを齎そうというのなら、全力で挑ませてもらうぞ」 ギシリ、と背に備えていたらしい巨大な戦斧を手に持つ巨人。 ……や、デッケェわ。 悠介がゼプシオンとやりあって、ボコボコにされたのも頷ける。 こげなもんで攻撃されたら…… そりゃあとんこつラーメンばい(訳:骨までゴタゴタに砕かれてしまう)……。 彰利 「あの、つかぬことをお訊ねいたすが。巨人は竜族と交戦中なのですか?」 巨人 「なに?貴様この狭界にあって、そんなことも知らぬか」 彰利 「押忍、知らんとです」 巨人 「……貴様、狭界の生まれではないな?     この大地にも人は居るが、外から来たのであれば生きていられる筈も無し。     狭界に何の用で来た、人の子よ」 ム……巨人だって人の子のくせに。 でも確かに……俺、何の用で来たんだっけ。 えーと───つーか俺、ただ巨人と竜族が争っているか〜とか、 巨人の里と竜族の縄張りがホントにあるのか〜とか、 そげなことを知りたかっただけではなかっただろうか。 彰利 「えーと……里の中、見学してっていいデスカ?ワタシ、この地に観光に来たネー。     オーウ!ハラキリゲイシャ!!───怖いよソレ!!」 (ハラキリゲイシャ:切腹する芸者さんの意) 巨人 「……この地は遊び場ではない。誇り高き戦士の大地である。     早々に立ち去れ、人の子よ。この地よりではなく、この世界から」 取りつく島もなかった。 巨人はズシンズシンと地面を揺らし、ゆっくりと去ってゆく。 彰利 「………」 なんとも雄々しき男ッ……。 筋肉の造りが明らかに違うッッ……。 彰利 「……フム」 でも言ったよね。 『この大地にも人は居るが』って。 つーことはだよ?この里には巨人以外にもちゃんとした人が居るわけだよね? 彰利 「よし、会ってみましょう」 するべきことは決まったッッ!! あとは見つからんように影に沈みつつ、ゆっくりとニンゲンを探すのみだ!! ───……。 ズズ…… 彰利 「ミツケタ……」 魔人と化した俺は壁抜けの要領で床から顔のみを出し、 別世界の人間サイズの存在へと近づいてゆく。 彼奴めは後ろを向いている……今が好機!! 彰利 「砂になぁ〜〜〜れッ!!石破(せっぱ)ァッ!!」 ?? 「え───?」 声に反応してババッと後ろを向く男を余所に、 俺はその下の床に手を付き円を描くと、月然力・地を込めた掌を円の中心に落とした! するとゾボォンッ!! ?? 「うわぁああああああっ!!!!?」 男の足場が砂となり、急に足場が崩れた男はバランスを崩して倒れた。 以前、過去でやった“秘奥義モーロック”の応用である。 だが俺も格闘家のはしくれ!これだけでは終わらん!!  ───ガッシィ!! ?? 「うわっ!?な、なにをする!お前は誰だ!!」 彼にとっては突如として、床から現れて自分を掴む俺に……彼は当然恐怖した。 だが俺はそげな恐怖を無視して男を逆さにし、凄まじい回転とともにツブシにかかった。 彰利 「淤凜葡繻(オリンポス)スピンヘッドベリアル!!」  ───ガリガリガリガリ!!! ?? 「ぐぎゃあああああーーーーーーーーーーっ!!!!!」 黒で包んだ男を砂の上で回転させてやると、いとも簡単に男の頭は砂に埋もれていった。 完璧だッ……!最強……ッ!! 我が淤凜葡繻こそが最強なのだ!! 彰利 「ってやっちまったぁあああああーーーーーーーーっ!!!!」 話しに来たのになにやってんだ俺ゃ!! 淤凜葡繻スピンヘッドベリアルなんぞやってる場合じゃねぇだろ!! などと思いながらズボリと頭を抜いてやった男は……ものの見事に気絶しとりました。 こりゃいかん……。 彰利 「キミ!しっかりしなさい!キズは浅いぞ!ホレ!!」 ?? 「う、うう……」 彰利 「ヨォオ!しっかりしてくれよぉ!!」 ズパァン!! ?? 「ウベッ!!」 がくり……。 彰利 「あれっ!?」 キツケのつもりのビンタがトドメになったようだった。 馬鹿な……なんてこったい。 ───などと思った時でした。 ガチャリコと音が鳴り、ドアが開くとその先から謎の老人が───! 彰利 「むっ!?」 老人 「ふ〜〜、なかなかしぶといビッグであった……なにぃ!?」 彰利 「た、大変だ!敵襲があったらしい!僕が入った時には既にこの若人が!」 老人 「て、敵襲じゃ〜〜〜っ!!」 彰利 「そう!敵襲!ね!?言っとっけど俺じゃねぇよ!?」 老人 「黙れ!小僧!このワシを騙くらかそうなど10年早いわーーーーっ!!」 遅すぎたくらいだと思うが。 少なくとも900年くらいは。 彰利 「ホッホウ……ではどうするのかね?」 老人 「巨人軍治療班の最高責任者として、おぬしを滅ぼしてくれるわ!」 殺る気らしい……まいりましたなこれは。 彰利 「よいですかご老人。拙者、ただ知りたいことを知りに来ただけの者。     それが解れば何も危害加えたりせんから。     えーとさ、巨人と竜族って戦ってんの?」 老人 「なんと!?貴様そんなことも知らんのか!     巨人と竜族の争いは遥か昔から続いておるわ!」 彰利 「なんと……やっぱそうなのか。戦争とかやってるのですか?そしてどちらが有利な     のですか?それは醜い争いですか?どうしてもやらなければならないことなのです     か?和平を望むことは出来ないのですか?手を取り合うこと出来ないのですか?わ     たしの住んでいた村では別々の種族が手を取り合って生きてきました。もしわたし     の村を訪れる機会があったのなら、ピーチパイを食べてみてください。そして、そ     れを美味しいと感じたのなら……どうか少しでいいですから考えてみてください。     何かを“美味しい”と感じる気持ちに種族の違いはありますか?」 老人 「な、なんじゃ?なにを言っとる。ピーチパイ……?」 彰利 「深層心理が作り出す現実とは異なる虚構の世界。     現実とは明らかに違っていても、     一歩そこに足を踏み入れれば全てが現実へと変わってしまう。     だからピーチパイを食べてください。そして考えてみてください。     何かを美味しいと感じる気持ちに種族の違いはありますか?」 老人 「あるに決まっておるだろう。お主はミミズを美味いと感じるのかの?」 彰利 「……無理ッス」 って、そうじゃなくて。 彰利 「ミミズを美味しいと感じるかどうかじゃなくて!     “美味しい”と思う気持ちに違いがあるかどうかをですな!」 老人 「知らん」 ジジイ……。 彰利 「んじゃあ質問変えるわ。竜族と巨人族ってどうして争ってるんだ?」 ジジイ「過去の歴史なぞ、ここには残っておらんわい。だから誰も知らん。     だがなにかの遺恨があったのは確かじゃろうの。     親がそうであれば子もそのように。巨人族も竜族も誇りの生き物じゃからの」 彰利 「ム……」 双方が誇りに生きる者ならば、 過去になんらかのぶつかり合いがあれば誇りを以って戦うだろう。 その子供がその血筋に誇りを持つなら、親の意思にも順ずるのが誇りを持つ者、か。 難しいなぁ、誇りを持つ者って。 彰利 「……んじゃ、これが最後。竜族に黒い竜が居るよな?黒竜族って居るの?」 ジジイ「黒竜……あやつか。あやつはの、この世界の王たる存在じゃ」 王?王って…… 彰利 「うあ……こっちにも黒竜王が居るんかい……」 ジジイ「言っておくが、あやつとは関わるでないぞ。狭界で黒竜といえば一体だけじゃ。     あやつにさえ気をつけておれば、とりあえず強者であれば死ぬことなどない」 彰利 「……そがあに強いんか?」 ジジイ「強いんじゃ」 キッパリと断言された。 むう……どうやら強いらしい。 実際俺も消されかけたしねぇ……。 ジジイ「この里で黒竜の話は危険なんじゃがな。     正直里に居る巨人ではどう足掻いても勝てはしないじゃろ」 彰利 「うわ……マジ?」 ジジイ「うむ。束になってかかったところで無理じゃ」 うぅわぁ…………ちっと待ってくれ、 巨人つーたら竜さえ断ち切るっつー実力の持ち主って聞いたけど。 それが束になってかかっても通用しないって…… 彰利 「ちょ、ちょっと待った!     巨人族ってこの幻獣だらけの世界で三千年以上も生きてきたんだろ!?     だってのに───……幻獣?……ちょっと待て、もしかして、あの黒竜って」 ジジイ「む?……うむ、あの黒竜は思念の塊、幻獣じゃ。     10年くらい前に降り立ち、それ以来この世界で最強を誇っている」 彰利 「10年……」 10年……じゃあミルハザードが死んだ時間とは合致しない。 確かに時空の波に飲まれたなら、 10年前に落ちた〜とかいう可能性もあるかもしれんけど。 でも火口に落ちたっつーし……となれば……? 彰利 「……解らん。誰かの塵、誰かの思念の先に実体化したのは間違い無いだろうけど」 少なくともミルハザード本人ではなかった。それは確実だ。 ───でも肌で感じた。 あいつは戦って勝てる相手じゃねぇわ。 そりゃもう、ミルハザードと邂逅した時以上の恐怖を感じたのも確かだし。 彰利 「………」 でもそうなると、なんだって俺のようなザコを吹き飛ばしたりしたんだ? 自分で言うのもなんだが、あの黒竜から見れば俺はザコも同然だった筈だ。 自分の力量くらいは解ってるつもりだ……俺では勝てない。 それは恐らく、皇竜王状態の悠介でもだ。 ジジイ「なに、安心するんじゃ。     北の大地にさえ行かなければ、あやつに狙われることもない。     あやつは縄張り意識が強くての。じゃから、北の大地にさえ行かなければ……」 彰利 「………」 いきなり原因解明。 ようするに俺は縄張りとやらに侵入しちまったんだろう。 それで消されかけちゃあシャレにもならんが。 彰利 「……オッケ、解った。ほいじゃあこれが最後中の最後。     キングベヒーモスと黒竜、どっちが強い?」 ジジイ「黒竜じゃ」 即答でした。 だめだな、こりゃ勝てんわ。 目標としてたKB氏の高みでさえ遠かったというのに……。 彰利 「……ぬうう!こうしちゃおれん!粉骨砕身の心意気で強くならねば!!」 こうしてボクは、さらなる強者の道を駆け抜けることにしたのです。 こうなったら一分一秒でも修行することを目的として突撃せねば!! 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