───ナス───
【ケース36:晦悠介(超再)/ウゴバシャドアシャア】 ───……で。 Gナス『……それはきっと陰謀じゃぜ?』 清水 「聞いた途端にそれかよ」 コトのおおまかを話せばこの答えだった。 Gナス『きっと神社に戻ったらヤクザ様がいっぱい居るに決まってるんじゃよ!!     未来で国家遺産に認定されるような神社じゃよ!?     それを見越してヤクザ様が地上げに来たんじゃよーーっ!!     そしてそのヤクザ様を裏で動かす黒幕……それがオージービーフ!!』 清水 「黄仁だろ」 Gナス『ごちゃごちゃうるせぇーーーっ!!ともかくこれはユーを戒める陰謀なんじゃよ!     そして血で血を洗わずにはいられねぇバトルが開始するんじゃよ!?     ついでに皿を洗っちゃくれねぇだろうか!番町皿屋敷にも負けんように熱烈に!』 清水 「なぁ晦。このアズーマ、口が悪いんだが」 悠介 「それくらい見逃してやってくれ。     弱体化してるから周りに当たらなきゃやってられないんだろ」 Gナス『そこまで解ってるなら紳士としての解放を!     アンサー!!お願いだぁーーーーっ!!!』 悠介 「だめだ」 Gナス『なぜぇええ!!?』 悠介 「何故もなにも、さっきノートとハデにやりあった所為で力がカラッポなんだよ。     だから助けたくても助けられん」 Gナス『な、ななななにぃーーっ!?     だったらその口に付着した微量の団子の香りはなんなのかーーーっ!!』 悠介 「へっ!?あ、や───これは、だな」 これは困った。 確かにやろうと思えば創造出来なくもなかったが、 弱りきった状態で団子を創造した所為で、再び打ち止め状態になったなんて言えない。 Gナス『へへへ、とはいえ俺の分もあるんじゃろ?今ならそれでハッピープライスですよ?     心優しき素足な俺に感謝のひとときを。真心込めて進呈願う。オゥトワラヴィ』 悠介 「すまん、無い」 Gナス『ハーーーーッ!!!死ね若僧がぁあーーーーーーっ!!!!』 自分の分が無いと知るや否や、Gナスはナスパンチを放ってきた!! 俺は条件反射でついそれに合わせ、カウンターを───パギャァン!! Gナス『ギャヤヤーーーーーッ!!!!』 悠介 「あ───」 清水 「うわっ!今すげぇ音鳴ったぞ!?」 ナスのバケモノがズシャーーーアーーー!!と滑ってゆく。 だがそれもやがて止まると……ナスは動かなくなっていた。 ていうか死んだ。 清水 「うわ弱ェエ!!なんだこの弱さ!今までのあのしぶとさが夢のようだぞ!?」 必要以上に血だらけになって動かないナスを見て、さすがの清水もう混乱気味だ。 もちろん俺もだが。 ───……。 ───1分後。 Gナス『一度でいいから自殺しようとしている人に     【貴様のやろうとしていることは自殺行為じゃぜ!?】って言いたいにゃー』 蘇った。 どこか言語回路がイカレ気味だが、まあなんとかなるだろう。 『アズーマと呼ばれたからには、  それはもういろんなことしてヤツの評判落とさねば』とか言ってるし。 天才肌のアズマより努力家の河内の方が好きなのは俺も同じだが。 努力ばっかりしてた昔の河内は、確かに非常に気に入れるキャラだったんだけどなぁ。 その後の河内は作者の陰謀によりクズに。やってられん。 東の知名度を下げようとするGナスの気持ちも、正直解らんでもない。 清水 「ホントに不死身なのな」 Gナス『唯一の特技じゃよ。履歴書に書いたら仕事が貰えるじゃろか』 清水 「ヤクザの鉄砲玉に推薦状が腐るほど書けると思う」 Gナス『も、もうちょっと心がマイナスイオンで満たされそうな仕事が欲しいです』 そりゃあ無理だろ……とか思ってたら、Gナスの着ぐるみがモゴモゴと形を変えてゆく。 結局ナスだが、何故か額の文字が『−』になっていた。 ナス 『ナスとは違うのじゃよ、ナスとは……。Myナス=ジオン』(自己紹介) 清水 「………」 ジオン『なんじゃよ!?その哀れみを込めた目は!!     なんにも変われないんじゃから着ぐるみくらい変わってもいいじゃねーの!!』 清水 「いや……なんでナスなのかなって真剣に思っちまった……」 ジオン『きっとババアを象ってた思念の大本の人物がナス嫌いだったんじゃよ。     お陰でこんな姿……わあ、今なら霊魂乗せて霊界に行けそうじゃよ。     仁・義・礼・智・忠・信・考・悌の心とともに、     愛も溢れる真心便で魂様を昇天……じゃよ?』 清水 「逆にお前が昇天しそうだけどな。参考までに……どうやって昇天させるんだ?」 ジオン『まず背中に乗ってもらいます』 清水 「普通だな」 ジオン『走ります』 清水 「飛ばないのか?」 ジオン『轢かれます。昇天。……じゃよ?』 清水 「そりゃたんなる無理心中だ!!」 ジオン『なんじゃよ!?このMyナスに文句を付ける気かキサマーーーッ!!!     ジ、ジーク・ハイル!ハイル・イオン!!俺さえ吸えば健康じゃぜ!?』 貴様の名前にはイオンなんて文字は何処にも無いんだが。 清水 「……なぁ晦。このままじゃ話が進まねぇよ……。     こいつ連れて、さっさとじいさんのところ行ってくれないか?     こいつとここで留守番なんて、夢に見そうで嫌だよ俺……」 ジオン『ハーーーーッ!!!こ、この若僧がーーーっ!!!     なんじゃよ!?このナスの何が不服か!?     色か!?光沢か!?はたまた栄養素か!?好き嫌いは体に毒じゃぜ!?』 清水 「ナスは好きだがお前は嫌いだ」 ジオン『俺はその言葉を挑戦と受け取った!死ね若僧!!』 清水 「お前が死ね馬鹿ッ!!」 メゴシャーーン!!! ジオン『ギャヤヤーーーーッ!!!!』 再びカウンターを食らったジオンがゴロゴロゴシャーーと転がり滑ってゆく。 だが今度は死ななかったらしく、フラフラしながら血を吐いていた。 ジオン『ウウ……い、犬より強い……ぜ?』 清水 「じゃあ俺は犬以下かぁっ!!」 ジオン『た、たすけてえ……』 清水、正座しながらフラフラ揺れてるナスの襟首(?)を掴んで立ち上がらせるの図。 ナスは地面から離れた手足をバタバタさせて必死に抵抗するが、まるで効果が無い。 だめだ……不憫でならない。 ここまで弱体化するとはつくづく運が無いな、彰利……。 ───……。 ……。 ともあれ、地界の母屋へと辿り着いた。 ジオン『わあ、なんだか静かで俺の王国って感じじゃぜ?     勝手知ったる他人撃ち?不意打ちが基本じゃよー』 ブス。 ジオン『ギャアア!!』 母屋に来て僅か二秒で画鋲を踏んだ。 しかも素足だ、そりゃ痛い。 踏む前に言ってた言葉も謎なら、痛みのあまりに寝転がってバタバタ暴れるこいつも謎だ。 ジオン『ウウ……エウーーーッ!!!こんな不意打ち欲しくねぇーーーっ!!』 悠介 「お前さ、少しは静かに出来ないのか?」 ジオン『好きで騒いでるんじゃねぇんじゃよ!!     痛いんじゃよ!?アンナにしか解らんくらいの限定痛覚じゃよ!?     ……となると、俺にも解らんのじゃろか?』 悠介 「知るかっ!……とにかく。俺はじいさんと話するから、静かにしててくれよ?」 ジオン『ウウ……熱き血潮が止まらねぇ……。     じゃが俺はこれしきでは挫けねぇんじゃよ!?     聞け!激しいシャウト!!聞かねば俺の喉が粉骨砕身じゃぜ!?(意味不明)     もうなに謳ってるのか自分でも解らねぇが叫べば思いは届くのじゃよ!?』 悠介 「解ったから黙れ。お前がいきなり騒ぎ出すのは今に始まったことじゃない」 ジオン『うう……ちくしょう……』 しくしく泣いているジオンを置いて、俺は階下へと降りていった。 縁側が見える場所まる歩き、そして───そこでじいさんと、ひとりの少女を発見した。 悠介 「……?誰だ?」 羽棠のじいさんは解る。 けど、あの女の子は誰だ? ジオン『わあ、ナウイ言葉で言うところのナオンじゃよ?』 悠介 「いつ来た不幽霊」 ジオン『足の怪我が完治したので     マッハの速度で階段を転がり落ちて死んで復活したんじゃよ。     それよりナオンじゃよ。ここまで弱体化した俺じゃが、ナオンには勝てるのでは?     あわよくばマイナスイオンで心を清らかにさせて愛を語らいたい』(ただの願望) 悠介 「日余に見つかったら殺されるぞ」 ジオン『…………勝負を挑むだけじゃよ?』 悠介 「そのたっぷりの間はなんなんだよ」 ジオン『ええい小賢しい!いい子だから黙ってなさいジャパンスキー!!     ここまで醜態さらしておいて他にさらすものがあろうか!!』 その姿をしてるだけで、もう何度でも醜態さらせる気がするんだが。 ジオン『GO!!』 悠介 「あっ!馬鹿っ!!」 ジオンが駆け出してゆく。 標的はもちろん、部屋の一室に座っていた少女だった。 少女 「……?」 ジオン『じょ、嬢の女体にもういろんなことしてやるわ!     す……すぐによくなるし、大声をあげてもあのー……誰も来やしねぇのじゃよ?』 少女 「………」 目的が変わってるし、しかも悲しい目で見つめられてるジオン。 ジオン『な、なんじゃよその目は!?     大人しくしねーと俺の五臓六腑(ハート)
が大変なことになるんじゃよ!?     五体満足には居られねーんじゃよ!俺が!!』(盛大に混乱中) ポム。 ジオン『誰じゃよ!?俺は今、嬢と明日の架け橋について談義をギャアアーーーッ!!!』 肩を叩かれ振り向いてみればヤクザ様。 ヤクザ「くっ……叔父貴の娘になんか用か宇宙人」 ジオン『な、ななななんでもないんじゃよーーーっ!!!     小生用事を思い出したのでこれにて失礼する!!』 ジオンは一目散に逃げ出しガシィッ!!───捕まった。 ジオン『ハ……ハーーーッ!!!』 ヤクザ「まぁ待て宇宙人……誰が逃げていいって言った。落とし前つけてけ」 ジオン『オギャアーーーーーッ!!なななんていうかもう死んだーーーーっ!!!!』 ヤクザ「さあ、どうやって死ぬ?」 ジオン『え、選べるんですね!?     ヤクザ様!どうか苦しまないようにお願いします!!』 ヤクザ「それはだめ」 ジオン『苦しむことは必須じゃったのねーーーっ!!!?     落ち着くんじゃよ!ここは冷静に!!取り引きといこうじゃないかね!?     じょ、嬢を逃がす代わりに俺を殺して……あれ?』 ヤクザ「よし死ぬんだな?」 ジオン『ギャア違うんじゃよーーーーっ!!!     今のは巧みなブレインコントロールが発生したゆえなんじゃよーーーっ!!!     聞き流してプリーズ!!訪れてワンスモアチャンス!!     ちなみにブレインコントロールしたのは俺の脳だから脳味噌は正常じゃよ!?     ギャヤヤーーーッ!!言ってることがよく解んねーーーっ!!     それだけ大変ってことです!解りやすいですか!?』 ヤクザ「くっ……いいからこっち来い」 ジオン『ギャア待ってーーーっ!!!助けて……たすけてえ!!!     ジャパンスキー殿!!ジャパンスキー殿ーーーーーッ!!!』 泣き叫ぶジオンがヤクザに連れ去られてゆく。 俺はそんなジオンをただ静かに見送った。 そうしてからようやく深呼吸したのち、羽棠のじいさんのもとへと歩いていく。 悠介 「……じいさん、何の用だ?」 ……気軽にかけたつもりの声はしかし、無意識に棘が付属されていた。 自分で自分を嫌う瞬間ってのはこういうところにあるんだと思う。 黄仁 「おう悠の字、帰っとったのか。     石段の方から来たような気配はなかったようじゃがの?」 悠介 「裏の山道から上ってきた。それよりどうしたんだよ。     ここに来るなんて、ハロウィン以来だろ」 黄仁 「……そうじゃな。早速で悪いんだがの、     ヤクザさんどもの出世祈願をしてやってくれんかの」 悠介 「………」 ヤクザの出世祈願? ああ、いや……それで一応ヤクザが居た理由は解った。 けどそれって出世祈願とは言わないんじゃがかっただろうか。 確かにヤクザが神社に訪れて、 今後についての悪い気を払ってもらうことがあるっていうのは聞いたことがあるが。 悠介 「用件はそれだけなのか?」 黄仁 「おお、これだけじゃ。おまいさんはワシに用があったのかの?」 悠介 「ひとつ。若葉も木葉も誰も居ないけど、あんたの仕業か?」 黄仁 「ヤクザモンと一緒になぞ居たくないじゃろ。少し移動してもらったんじゃよ」 悠介 「そっか。それが解れば十分だ。祈祷はこっちでやっておくからとっとと帰れ」 黄仁 「悠の字……」 悠介 「それから、俺の仕事はこれで最後だ。     “晦”は名乗らせてもらうけど、神社の仕事はもうしないことにした。     康彦さんの気持ち、解っちまったんでね。もうこの神社の子で居たくなくなった」 黄仁 「康彦の気持ち……?」 悠介 「……なんでもない。とにかく俺はこの神社を出ることにした。     それだけは言っておきたかった。……仮にも、祖父ってことになってるあんたに」 黄仁 「………」 じいさんは一度黙り、けれど俯きながら『やはり覚えておったか』と呟いた。 かつて、俺と若葉と木葉がこのじいさんと出会ったのは随分前。 俺がここに拾われ、彰利と友人関係になったばかりの頃だ。 結構の時間が経っていたし、そもそも一度しか会っていない。 若葉や木葉が覚えていないのは無理は無いし、 俺だって正直───ハロウィンの時に会わなかったらずっと忘れていただろう。 それでも俺は思い出してしまった。 自分の息子の葬式に来ることもなく、 全ての処理を何も知らない子供たちに任せっきりだったこのじいさんを。 突然頼る当ても無くし、兄妹だけで生きることになんの手も貸さなかったこのじいさんを。 それを思う度に散々殴られた腹や胸がうずき、 今でもあの苦しみしかなかった日々を思い出させる。 何も出来ず、ただ訪れる親族どもに殴られていた日々を。 確かに自殺しようとしていた若葉や木葉を救ってくれたのは、結果的にはこのじいさんだ。 けど、それまでのことのそもそもの原因がこのじいさんにあったとしたなら、 それは果たしてプラスマイナスがゼロだと言い切れるのだろうか。 ……いいや、もうそんなことはどうだっていいんだ。 俺はただ、もうこのじいさんを許せるくらいの思いなんて、これっぽっちも残ってない。 解りきっているのはそれだけなんだから。 黄仁 「ここを出て……どうする気じゃ?行く当てなぞあるのか?」 悠介 「あんたには関係無い。言う必要も無ければ言うつもりもない。     言った筈だ、仕事するのはこれが最後だ。     あんたとの縁もこれで終わり。もう俺に干渉するな」 黄仁 「なんじゃと……?」 悠介 「もともと俺は血の繋がりなんて無かった。だったら今さら縁がどうとか関係無い。     妹たちに干渉するななんて妙なことは言わない。あんたは実の祖父なんだから。     けどそこに俺との干渉は関係無い。あとは勝手にやってくれ」 黄仁 「いっ……妹まで……妹との縁まで断つ気なのか!?」 悠介 「孫を駆け引きに使うなよ、たわけ」 黄仁 「ぐっ……」 悠介 「けど言ってほしいなら言ってやる。家族としての縁はこれっきりだ」 黄仁 「───!!」 じいさんは驚愕の表情で俺を見た。 だが前言撤回など訪れない───必要が無いからだ。 黄仁 「……なにがあったのじゃ悠の字……。     おまいさんはそんなことを言うような者では……。     ───ワ、ワシか?ワシが嫌なのならワシは……」 悠介 「……もうそんな些細なことなんてどうでもいいんだよ。     俺はここに居たくなくなったからここと縁を切る。     元々が貰われの身だったんだ、それでいいじゃないか」 黄仁 「じゃが……若葉や木葉にしてみれば、おまいさんは兄以上に兄じゃろう……」 悠介 「二言は無いよ。縁は切る。何を必死になってるのかは知らないけどな───     今までずっとほっぽっといたくせに、なに今さら祖父ヅラしてんだお前」 黄仁 「う……ぐ……」 悠介 「もう干渉してくれるなよ、俺に。     これからあんたが若葉や木葉の祖父として振舞ってくれるならそれでもいい。     けど、やっぱり俺には関係なんて無いんだよ。俺は───」 声  『ギャワーーーーーッ!!!!』 ドタドタドタドタ!! 叔父貴「オラ待てコラァ!!」 ジオン『ギャヤヤヤヤヤァアアーーーーッ!!!!     寄るんじゃねぇぜ!?寄ったら嬢がそれはもう大変なことになるんじゃよ!?』 ヤクザ「てめぇお嬢に手ェ出しといてタダで済むと思ってんのかコラァ!!」 ジオン『思うだけならタダですね!?思っていいですか!?』 ヤクザ「だめだ死ね」 ジオン『思うだけで命が必要ですか!?高すぎて手も足も出ねぇーーーっ!!!     じょ、嬢!この強面さんたち説得して!     今ならキャプテンガントレットの秘密をキミだけにレッスントゥーミー!!     こんな魅力的な話、他にはあの……無いんじゃよ?だめじゃろか』 女の子「だめ」 ジオン『なぜえぇ!!!嬢!俺は死んでも平気じゃからーーっ!!     兄弟子のゾフィー兄さんが代わりの命を持ってきてくれるの!……誰かの!     しかもそれ、力ずくらしいぜ!?誰の命だったんじゃろね!?』 もはや何を言いたいのかまったくもって解らない。 そりゃそうか、力が無いところにヤクザの群集じゃあ混乱もする。 ヤクザ  「くっ……いいから手ェ離して命捧げろ。今すぐ」 ジオン  「ギャ……ヤヤ……!!       たすけて!助けてえ!!ヤクザ殿ーーーっ!もうご勘弁をーーっ!!!」 ヤクザども『だめだ』 ジオン  「なぜえぇ!!!こ、こうなったらもう意地でも捕まってやらねぇんじゃよ!!       駆け出せ俺の素足!靴下なんざにゃ負けんのじゃよ!!       俺の健足がメロスに代わって世界を駆ける!!」 グサ。 ジオン「ギャアア!!」 あ……また画鋲踏んだ。 ジオン「ア、アウウ……!!おとなしくしろーーーい!!!」 ヤクザ「くっ……お前がな」 ジオン「ハーーーーーッ!!!」 画鋲を踏み、足を庇ってバタバタと転がっていたジオンをヤクザが囲む。 ジオン「こ、殺すなら殺せーーーっ!!さあ殺せ!!     どうせ死ぬんじゃからひと思いに殺したらいいんじゃよーーーっ!!!」 叔父貴「それはだめ」 ジオン「やっぱり苦しむことは必須条件なのですねーーーっ!!?     ファイト!ファイトネ!ジョーヤブーキ!!たすけてぇええ!!     いい加減にしねーと俺の守護霊『阿弥陀魚雷』が火を吹くぜ!?」 いつから阿弥陀如来は魚雷になったんだ? 叔父貴「くっ……いいから付いてこいや。……海の底まで」 ジオン「全力でお断り申してぇーーーーーーっ!!!!かまいませんですか!?」 ヤクザ「だめだ」 ジオン「なぜえ!!だったらせめて川に負かりませんか!?     川ならきっとサムソンティーチャーが助けてくれるんじゃよ!     サムソンの野郎は足を無くすが俺の命にゃ換えられねーんじゃよ!?」 ヤクザ「だめ」 ジオン『なぜえぇ!!ギャ……ヤヤ……!!だ、だめぇ!!ナスの頭持っちゃだめぇ!!     ナスは食べるものであって海の底に沈めるものじゃないですよ!?」 ヤクザ「ほお……だったらヤスの出番だな」 ジオン「ヤ、ヤス?ナスの仲間じゃろか。     こ、この際海の藻屑にならないならなんでもござれじゃよ!!」 ヤクザ「ホモだ」 ジオン「ギャアア!!やっぱ遠慮してぇえーーーーーーっ!!!」 ヤス 「ヘッヘッヘ、よろしくお願いするぜ」 ジオン「お願いされたくねーーーーっ!!!     ふ、触れないでください!!着ぐるみには触れないでください!!」 ヤス 「す、好きじゃあああ……!!狂おしいほど好きじゃあああ!!!」 ジオン「ギャアアだめぇえ!!     僕たちは出会ったばかりでしてなんていうかその……全てが速すぎる!!     だから止まってぇ!!素早く着ぐるみ脱がそうとしないでぇーーーっ!!!     わ、解っておいでかオトコスキー殿!甘いワナには……ワナがあるんじゃぜ!?」 悠介 「………」 ……なにを言いたいのかまるで解らんが……。 どうしよう。 止めるべきか止めざるべきか……。 つーかあの着ぐるみ、自分では脱げないくせに他人の手でなら脱げるんだな。 ジオン「ギャア神様!!ダメ……ダメェエエエ!!人を呼びますよ!?     どなたか!どなたかいらっしゃいませんかーーーーっ!!?」 グサッ。 ヤス 「いっ!?」 ナスの着ぐるみを脱がしにかかったヤスの手に、ナスの棘が刺さった。 新鮮なナスの頭部分には棘があるものだけど……一応新鮮だったんだな、あのナス。 ジオン「ハアア……!!しょ、小生に触れれば火傷じゃ済まねーんじゃぜ!?     触るとあのー……いろいろと痛い目見るのじゃよ?」 叔父貴「折れ」 ヤクザ「ウス」 ボキリ。───棘が折られた。 ジオン「ギャア折っちゃダメーーーッ!!!     エルドラドが!最終防衛システムが斯様にあっさりと!     あっちゃならねぇーーーーっ!!!人権問題ですよ!?」 ヤクザ「ナスだろお前」 ジオン「わあ、へへへ……そうじゃった。つまり食卓に上がればいいんじゃね?」 ヤス 「い、いただきまぁす!!」 ジオン「ギャアやっぱ嬉しくねぇーーーーーーっ!!!!     ナ、ナスとして!食われる側の意見を紳士的に発言してぇ!いいですか!?」 叔父貴「だめ」 ジオン「なぜぇえ!!?ギャアアアアアアアアア!!!!」 ……そして連れていかれた。 なにやってんだかなぁ。 叔父貴「ン……オウ坊主、オメェがここの神主か?まだ若造じゃねぇか、大丈夫か」 悠介 「やるからには真面目にやる。それより他人の家で暴れるな、鬱陶しい」 ヤクザ「アァン!?叔父貴に向かってなんてクチ利いてんだコラァ!!」 ジャカカカカッ!! 何処に潜んでいたのか、叔父貴とやらの周りから次々とヤクザが現れ、 俺に拳銃とドスを突きつけてきた。 悠介 「間違ったことを言ったつもりは無い。     それとも他人の家に来てデカいツラしたヤツが正しいのか?     人種差別するつもりは無いから言う。     それくらいガキの頃に自分で学ばなかったか?」 ヤクザ「───ンのガキャァアアアアッ!!!」 悠介 「───ラグ」 ス───フィィン!! ヤクザ「……あ?」 獣王の鞭に変化させたラグで、ドスと拳銃の全てを粉砕した。 あとに残ったのは、バラバラと音を立てて床に落ちる部品だけだ。 悠介 「言葉に武器で対抗するなんて情けないって思わないのか?     それともなんだ?あんたらの拳は飾りか?」 叔父貴「……小僧、オメェ何者だ?」 悠介 「この仕事が終わったらここと縁を切る神主だよ。     自己紹介はそれだけだ。もういいだろ?さっさと始めよう」 叔父貴「おーおー……牙王の頭であるこの俺にここまで啖呵切るたぁ度胸がいい。     どうだお前、神社やめたらウチに入ンねぇか?」 悠介 「……牙王?」 牙王って……あの佐古田好恵の事務所の……? 悠介 「やめておく。俺は俺でやりたいことがあるから」 ゴスンッ!! 悠介 「───……?」 ヤクザ「てめぇもっぺん言ってみろコラァ!!叔父貴がこうして言ってンのに何───」 バゴッチャァンッ!! ヤクザ「うぶるげぇえっ!!?」 叔父貴「───!」 問答無用で殴りかかってきたヤクザを、逆に殴ってやった。 ……威力の差なんてこの際無視だ。 俺はほんのちょっと痛かっただけで、 相手がただ天井につくかつかないかくらいに吹き飛んだだけだ。 悠介   「……で?祈祷されに来たのか、喧嘩売りに来たのか。どっちだ?       喧嘩したいなら全員でかかってこい、その代わり二度とここに来るな」 叔父貴  「……上等だ、ガキが。やっちまえてめぇら、なにやっても構わねぇ!!」 ヤクザども『オォオス!!!』 頭が後ろを向き、娘とともに歩き去ろうとするのとは反対に、 手下どもは揃って俺にかかってきた。 武器は全て破壊してあるから、当然拳でだ。 悠介 「ガキ?なにやっても構わない───?」 ヤクザ「アァン!?何言ってんのか聞こえねぇなぁ!!ビビって声も出ねぇかガキィ!!」 悠介 「───寝言は寝て言え」 ヒュオズガガドゴゴシャガゴドゴドゴゴガゴパァンッ!!!! ヤクザども『…………!!』 コトは二秒とかからず片付いた。 俺は軽く手を揺らしながら、未だ去ろうとしている男の背中に声をかける。 悠介 「……で?何処に行くんだよお前」 叔父貴「あぁ?───、なん……───だ……!?」 頭が振り向く。 その先に広がる光景は、誰が見ようと一目瞭然。 叫ぶ暇も無く床に殴りつけられたヤクザどもと、その場にひとり立っている俺。 速いだけの拳で全てを黙らせた俺は、ただゆっくりと叔父貴とやらに近寄るだけだ。 悠介 「もう一度だけ訊く。祈祷、受けるのか受けないのか。     喧嘩、続けるのか続けないのか。どっちだ?」 叔父貴「…………第三択目。オメェを殺す」 叔父貴が堂々とした態度と速度で拳銃を抜き、俺の眉間に突きつける。 悠介 「子供の前だぞ」 叔父貴「……フン?もう慣れてる」 悠介 「───!」 叔父貴「じゃあな、ガキ」  ───パガァンッ!! 叔父貴「いぎっ───!?ぎやぁああああああっ!!!」 眉間に突きつけられ、引き金を弾かれた拳銃はしかし、 弾が行き先を無くしたために爆発した。 何故弾丸が行き先を無くしたのか───そんなことは簡単だ。 ……竜の皮膚は、拳銃の弾ごときを通さないからだ……!! 叔父貴「ひっ……!?ひ、ひひひ額に……鱗が……!?」 悠介 「───子供ってのはな……!小さいし解らねぇことだらけだから、     一生懸命見える景色から知識を取り込もうとする……!     だから大人になっても、忘れやすい脳になっても、     子供の頃に覚えたことは大体のやつらが覚えてるんだ……!     これが……どういう意味か解るか……!?」 叔父貴「バ、バケモ───……!?」 悠介 「てめぇにはこの子の父親を名乗る資格がねぇってことだ!!」 叔父貴「ひっ───」 ヴオッ───ビキャアッ!! ジオン「ギャアア!!」 悠介 「へ───!?」 叔父貴「……?」 叔父貴をブチノメそうと振るった拳はしかし、 突然叔父貴を庇ったジオンの頬に埋まることで止まった。 ……というか今の感触、骨がイかなかったか……? ジオン「ホ、ホホ……喧嘩はよろしく……ねぇんじゃよ?     お手前こそよく考えるんじゃよ……。子の前で親を殴ってはいかんのじゃよ……」 悠介 「彰利……お前……」 ジオン「確かに、子として親どもには絶望した俺らじゃよ?     じゃけど、じゃからこそ嬢の目の前では     父は強く頼れる存在だと思わせるべき……なんじゃろか?」 ……そこまで言うと、ジオンはゲボハァと血を吐いて倒れた。 つーか死んだ。 悠介 「うわぁやっぱ死にやがった!!     彰利!?おい彰利!!なんで最後が疑問系だったんだよ!!オイ!!」 吹き飛ばす程度の力で殴ったっていうのにどうして骨が砕けるかなこいつは!! 弱さに足してモロさまで目立ってやがる!! ……でもまあ、ほっといても生き返りそうだし。 ひとまず仕事の方をさっさと済ませよう。 悠介 「ン───」 残り少ない力を振り絞り、ヤクザや叔父貴を“視た”。 すると───なにか黒いモヤのようなものが存在していて、 それが不吉を呼び起こすような雰囲気を持っていることに気づく。 それに気づいたあとは速かった。 黒いモヤを気迫で追っ払い、 倒れていたヤクザどもを起こし、仕事は終わったと伝えて追い出した。 半信半疑なヤツもそりゃあ居たが、 黒いモヤに憑かれていたヤクザは体が軽くなったとか言って軽快に去っていった。 悠介 「………」 俺は苛立ちのために頭をわしゃわしゃと掻き乱し、大きく溜め息を吐いた。 ……俺も彰利と同じだ。 家族がどうとか、そんなことでいちいち苛立っている。 子の未来を鑑みない親を見ると無償に腹が立ち、その苛立ちが自分の過去を思い出させる。 そんなこと、もう吹っ切れた筈だったのに。 時の番人との邂逅が、俺にそれを思い出させた。 悠介 「……なにやってんだ俺は……」 冷静にならなきゃいけない。 こんなことしたって、きっと自己満足にすらならないだろう。 だったらどうするか……そんなことは簡単だ。 俺にはやっぱり色恋沙汰なんて解らない。 けど、今度こそ……いい父親になれると思うから。 悠介 「……覚悟、決めるか」 もういいだろう。 空界に平穏の幕は下りたし、地界での俺の最後の仕事も終わった。 だったらあとは……ゆっくりと幸せってものを探せばいい。 好きだの幸せだのは確かにまだ解らない。 そんな状態でルナと結婚したりするのは心がざわめいたものだけど─── そんな感情は、きっと結婚した後でもいくらでも探せる筈だから。 悠介 「断言する───俺はあんな父親にはならん!!」 今までの自分を省みて、反省するところなどいくらでもある。 置き去りにしてきた感情の所為にするつもりはない。 そんなもの、心構えひとつでどうとでも出来た筈なんだ。 だから……今度こそ、俺は“家族”ってものを愛せると思う。 悠介 「彰利、起きろ彰利」 ジオン『な、なんじゃよ……?復活途上で鼻血が止まらん小生に何用なんじゃろか……?』 悠介 「俺さ、結婚することにした」 ジオン『わあ、それはめでてぇんじゃよ!なんじゃってぇーーーーっ!!?』 喜ぶのか驚くのかひとつにしてもらいたいもんだ。 ジオン『正気か若造!!……それで、式の日取りはいつじゃって?』 悠介 「正気を疑うのか賛同してくれるのかどっちだよ……」 ジオン『親友が幸せを目指すのに喜ばねぇヤツは例外残して居ねぇんじゃよー。     死ぬのが幸せとか言ったら喜べねぇんじゃからね?』(諭すように) 悠介 「そりゃそうだ。……日取りはお前と同じでいい。     今すぐやりたいっていうなら、ナスの姿のまま式を挙げることになるが」 ジオン『願ってもねぇくらい嫌じゃよ!!?元の姿に戻るまで待っていただきたい!!』 悠介 「だめ」 ジオン『なぜぇええ!!?』 悠介 「冗談だ、のんびりいこう。     そして、それまでにやっておきたいことをやっておこう。     それで……構わないか?」 ジオン『もちろんじゃよ。     東和馬がどれだけワッショイされてるか思い知らせてやるんじゃよ。     天才肌の主人公より、努力家の主人公の方が良いに決まってるんじゃよ!』 悠介 「解ってるならお前ももうちょっと努力しような……」 ジオン『わあ、そうじゃね』 納得したようだ。 これを機に変わっていってくれればいいんだけど。 悠介 「じゃ、まずは休むか。正直体がダルくて仕方が無い」 ジオン『休んだら俺のナスの呪縛を解いて、それからやりたいことやって結婚じゃよー!     ついに……ついに俺も真のパパりんになるんじゃよ!     ハッ……ハアア!茄子の胸が躍る!!ど、どーんとくるんじゃよーーーっ!!!』 悠介 「………」 ジオン『茄〜子を愛するひ〜と〜は〜♪こ〜ころ強き人〜♪     筋肉はゴリラ!牙もゴリラ!燃える瞳は原始のゴリラ!     その名はゴリラ!!バイオレンスゴリラ!!……それはゴリラじゃろか?』 ブスッ。 ジオン『ギャアア!!』 そしてまた画鋲を踏むナス。 とりあえずバイオレンスゴリラじゃなくてバイオレンスジャックだ。 ちなみに普通の言い方は 『筋肉はゴリラ!牙は狼!燃える瞳は原始の炎!  その名はジャック!暴力(バイオレンス)ジャック!』である。 ゴリラは最初だけだ。 ───こいつが結婚か……物凄く先行き不安だ。 Next Menu back