───力の在り方、最強の竜───
【ケース51:晦悠介/思念へ向かって】 悠介 『紅蓮に染まれ!“黄昏を抱く創造の世界(ラグナロク)
”!!』 幻獣たちが彰利の黒い極光に消されている合間にゲートを通り、すぐさまに黄昏を創造。 純粋な思念に囚われていない竜族と精霊、親友のみに回復を齎す場を固めた。 ここで思念を例外とするのは、レヴァルグリードにまで回復されたら困るからだ。 悠介 『行くぞ彰利!!』 彰利 『任せとけ!!』 ゲートから次々と竜族が入り込み、狭界の空を飛翔する。 当然、それを見た幻獣達が黙っている筈も無い。 外の世界を求めて咆哮し、こちらへと駆けてくる。 それに対し俺は、ラグに蒼竜の力を流して解放した。 ───“皇竜王”の理は既に我が裡にあり。 黒竜珠から読み取ったレヴァルグリードの力が、 赤、緑、蒼、黄の全ての竜王の力の引き出し方を俺に教えてくれた。 それ故に竜王の珠を竜王たちに返した。 今首に下げているのは黒竜珠のみだが、これも時が来ればジハードに返そうと思っている。 そう───例えば、次元の歪みを正してから。 悠介 『“烈空刃”!!』 フゥォッ───……ザゴシャシャシャシャシャァアアアンッ!!!! 幻獣 『ギャアアアアアアアアアッ!!!!』 振るった刃から放たれるは疾風の刃。 風が通り抜け、先頭の幻獣のたてがみを揺らした刹那、 風が届く限りの幻獣どもを風の刃が切り刻んだ。 黄竜王『ここは我に任せよ王!さっさと思念とやらを潰せ!!』 悠介 『ああ!ザコ達は任せた!───彰利!』 彰利 『解ってる!北の大地はこっちだ!付いてきてくれ!』 黄竜王『さぁ行くぞディルゼイル!!     一度は死に、思念の末に現世した悪夢など我らの力で滅ぼす!!』 ディル『承知!!』 シュバルドラインとディルゼイルが咆哮する。 その二頭が邪魔者だと判断したのか、幻獣どもが襲い掛かってゆく。 黄竜王『うつけ者どもが!身の程を知れ!!』 シュバルドラインは言葉と同時に極光のレーザーを放った。 それにより幻獣どもは消し飛び、当たらなかった者も飛翼に叩き落とされ、 ディルゼイルが放ったレーザーに撃たれて消えた。 ……さすが。 これが全力を出せるようになったシュバルドラインか。 負けてない。 幻獣たちに負けてない。 俺はその様子を後ろ目に見ながら、全力で行く先へと向かった。 彰利 『開け地獄の扉!出でよ地獄の門番、ケルベロス!!』 後方で光が飛び交う中、彰利がロードオブハーディスで地獄の門を開く。 その先から来る存在は三つ首の巨犬であり、地獄の門番と言われていた番犬だった。 ケルベロス『オォオオオオオオンッ!!!!』 響く咆哮。 大地に降り立ったケルベロスは疾駆し、次々と幻獣どもを食らってゆく。 悠介 『お前、あんなことまで出来たのか……?』 彰利 『スッピーにいろいろアドバイスもらった。     悠介と似たようなもんだけど、自分が自分に枷を作るな、だそうだ。     出来ると信じろ、そうすれば汝はより完全はブラックオーダーになれる、って』 悠介 『……そっか。ほんと、人間やめてるよな、俺達』 彰利 『そだな。それが……今はこんなに嬉しいんだから不思議だ───なっと!!』 バグシャァンッ!! 幻獣 『ギッ───』 ケルベロスが噛み砕き、飛んできた幻獣の首を拳で破壊する彰利。 その力は以前に比べてかなり上昇していた。 彰利 『───悠介!上!』 悠介 『解ってる!』 見上げれば、空からこちらへ向かってくる幻獣どもの姿。 思念がそうさせているのか、既に俺達を狙うことしか頭に無いように襲い掛かってくる。 彰利 『邪魔するヤツは殺す、かね?』 悠介 『そうだろうな。     敵さん、どうやら俺達がやろうとしていることに気づいてるらしい』 言いながらラグを構える。 だが───何かを実行する前に、幻獣どもに向かって飛翔する姿があった。 蒼竜王『王!ここは我ら蒼竜族に任せてもらう!』 悠介 『マグナス!?』 アーガ『心配すんなって!こいつらブチノメしたらすぐに追い着くからよ!』 悠介 『───ああ!任せた!』 緑竜王『王、私もここらで別行動を取らせてもらうぞ』 ヴァル『狭界の中心にて癒しを実行します。皆様が全力で戦えるように』 悠介 『すまない!助かる!』 マグナス、グルグリーズがそれぞれ飛翔してゆく。 それに続くようにアーガスィー、ヴァルトゥドゥスと蒼竜族と緑竜族が。 ベリーが時間操作で無理矢理成長させたらしいけど、大丈夫か緑竜族……。 ……いいや、こうして分かれたからには信じるだけだ! 任されたことくらいやれなくてどうする! 悠介   『急ぐぞ彰利!』 彰利   『解ってる!ケルベロス、緑のおっちゃんのサポート頼む!』 ケルベロス『ショウチシタ、ニンゲン……』 飛翔し、疾駆する。 既にどれくらいの距離をそうしてきたのかは解らないが、 少なくとも思念の濃さが増してきたのは確かだ。 だがそれにつれ、巨大な幻獣どもが増えてきたのも事実だ。 思念に食われ、思念に囚われ、次々と塵を重ねられていき、 無理矢理カタチを変えられてゆく幻獣がそこかしこに居た。 彰利 『どうなってんだ……?何処から塵なんてものが……。     言っちゃなんだけど、     今の空界にモンスターをこんなに一気に滅ぼせるやつなんて……』 悠介 『……次元の歪みが大きくなったってことだろ。     ここが時間軸に囚われない空間なんだとしたら、     次元の歪みが広がれば広がるほど影響を及ぼすものも増えてくる。つまり───』 彰利 『塵も然りか───!!』 幻獣 『グギャァアアォオオオオンッ!!!!』 無理矢理形状を上書きされている幻獣が吼える。 体が軋み、既にその目は理性を失っていて。 だが幻獣同士が争いあうこともなく、やはり俺達目掛けて襲い掛かってくる。 彰利 『くっそ───!!どうなってるんだよ!!』 赤竜王『ここは任せろ。早く行け』 悠介 『ドラグネイル!?……───解った!行くぞ彰利!』 彰利 『えっ───いいのか!?あんなやつらが相手じゃ───』 悠介 『目的を違えるな馬鹿野郎!!幻獣を潰せばこの戦いは終わるのか!?     そうじゃないだろう!!次元の歪みを修正しないと戦いは終わらないんだよ!!     だったら一刻も早く歪みを修正するほうが先だろうが!!』 彰利 『……悠介……』 赤竜王『よく言ってくれた、皇竜王。……貴様の信頼、確かに受け取った』 悠介 『……死ぬなよ』 赤竜王『誰にものを言っている。さっさと行け』 悠介 『───』 振り向かずに駆け出した。 彰利も頷くとそれに習い、先へ先へと駆け出す。 赤竜王『さあ、行くぞヘイルカイト。覚悟は出来たか』 ヘイル『元より。ただし、死ぬ覚悟などしてやらない』 赤竜王『いい答えだ───!!』 幻獣 『ロガァアアアアアアォオオッ!!!!』 ───最後に幻獣の咆哮を聞いた時点で後方は極光に溢れ、 もはや何も見えなくなってしまった。 だから走った。 先へ、先へと。 一秒でも早く、この争いを終わらせるために───! 【ケース52:スピリットオブノート/幕間】 オォオオオオオオオオオオオンッ…………!!! ノート『ふむ……』 固定しているゲートの先が激震している。 それは空界までも揺るがすほどのものであり、 大気からの振動だというのに相当な影響を齎した。 リヴァ「ッ……凄い振動だ……!!いったい何が起きているんだ……!?」 ベリー「起きてるのは歪みの巨大化だけでしょ。     でもそれがこれほどの振動を世界に齎してる。     ……ちょっと、シャレになってないわ。     もしあのまま放置してたら、狭界どころか空界だって滅んでた」 ノート『その通りだ。だが塞ぐにはそれだけの時空知識が無ければならない。     その点で言えば弦月彰利は適材だとは思うが───』 ベリー「思うが……?」 ノート『果たして、話に聞く黒竜がそれを許すかどうかな』 ベリー「……結局黒竜の目的ってなんなんだろねぇ」 リヴァ「わたしに訊かれたって知るもんか」 ノート『少なくとも空界を滅ぼすことが目的ではないだろう。少なくとも、な』 リヴァ「………」 ベリー「ところでゲート閉じないの?」 ノート『たわけが。私がただゲートを開いたままで居ると思ったか。     こちらから少しだけでもゲートが歪むのを抑えているんだ。     これを閉じようものなら干渉出来なくなり、思念が溢れかえるぞ』 ベリー「うえ……」 ノート『ダレるな。そんな暇があったら思念の流出をもっと押さえろ』 ベリー「はーいはいはい……」 ノート『………』 軽口を叩いてはいるが、長くは保ちそうにないな。 急げよマスター……弦月彰利─── 【ケース53:晦悠介/断罪の世界へ】 ゾボボシャビギシャシャシャシャシャシャァアッ!!!! 悠介 『ッ……くそ!キリが無い!!』 北の大地への道を彰利が先導する中で、剣を奔らせては幻獣どもを屠りさってゆく。 俺が倒した分の幻獣の思念は彰利に流れるようにしてあるが、 俺自身の疲労はストームブリンガーのお陰で大して無い。 彰利 『いろんな光の武具の能力を引き出せる武器ね……!羨ましい限りだなっと!!』 彰利が腕を突き出すと、ソレが黒い豹に変貌。 眼前に迫っていた幻獣を限界以上に広げた口で噛み砕き、咀嚼して飲み込んだ。 ……俺としてはお前のその能力のほうが、ある意味で羨ましいが。 悠介 『彰利、そりゃ間違いだ!ラグは光の武具の力を引き出してるんじゃなくて、     俺が記憶した光の武具の在り方を再現してるだけだ!     だから力を重ねることも出来れば、どんな姿にでもカタチを変えられる!     っ……いい加減しつこいんだよ!!“剣槍雨”!!』 あまりにしつこく群がってくる幻獣どもに向け、イメージを読み込ませたラグを放った。 ラグは瞬時に無数の剣と槍に姿を変え、迫りくる幻獣どもを貫き殺してゆく。 彰利 『ギャアア!!ちょっ……あんま一気に殺されると飲み込み切れねぇっての!!』 悠介 『だったら腹空かせるためにもっと暴れろ!!     こんなに敵が居たんじゃ進めやしない!!』 彰利 『了解!“影鎌繰り殺ぐ闇黒の秩序(アンリミテッドブラックオーダー)”!モード“黒縄天譴明王”!!     我が闇黒の魔手にて───灰燼と化せェエエイッ!!!』 ゴォッ───ドォッゴォオオオオオンッッ!!!! 幻獣達『ギャアアアアアアアアアアアッ!!!!』 巨大化した彰利が全鎌力を込めた拳を落とし、その場に居た幻獣どもを吹き飛ばした。 それにより道が開け、進みやすくなった。 悠介 『よしっ!急ぐぞ彰利!!』 彰利 『おう!』 瞬時に元の大きさに戻ると、俺と彰利は再び疾駆する。 しかし敵もそう馬鹿じゃない。 すぐにまた俺達を囲むと、しがみついて噛み付いてきた。 彰利 『がぁっ!くっそ……!!こいつら俺達を食うつもりか!?』 悠介 『ここまで同胞を滅ぼしてる俺達だ……!     食えば強くなるって、狂った思考でも解ってやがるんだ……!』 だがその行為が馬鹿だ。 食おうとせずに一斉に攻撃を仕掛けてくれば、まだこちらにダメージは残せただろうに。 悠介 『彰利……腹、空いたか?』 彰利 『ああ。全力使ったからペコペコだ。頼むわ』 悠介 『了解───』 ラグにイメージを込める。 それとともに剣が篭手と具足になり、密着状態でも十分に当てられる得物へと変化した。 悠介 『フッ───!』 ドバガァッ!! 幻獣 『ゲアッ───!?』 まず一体。 腹を拳で貫き、ベオウルフから光を溢れさせてやると粉微塵になり滅んだ。 続いて水面蹴り。 ヴィーダルを装備した足払いで幻獣どもの足を根こそぎ破壊し、 立ち上がると同時に篭手と具足をゲイボルグに変換。 三十矢として放ち、再び槍の雨を降らせると全てを滅ぼした。 彰利 『よし───!』 悠介 『走るぞ彰利!ぐずぐずしてられない!』 彰利 『解ってる!』 彰利はすぐさまスレイプニルへと変化すると大地を駆ける。 俺はそのまま飛翔し、風を切って北の大地を───…… 彰利 『───!』 悠介 『……っ……』 ……目指すために、厄介な壁と衝突した。 キングベヒーモス『グォオオオオオオオオオンッ!!!!』 ───キングベヒーモス。 それも、思念によって無理矢理強化されたような相手だ。 逃げるべきだ。 逃げ、北の大地を目指すべき。 だっていうのに。 力の上がったこいつからは、もう逃げられるような気がまるでしなかった。 彰利 『っ……どうするよ、悠介……!』 悠介 『決まってる……───ブッ潰して通る!!』 彰利 『オーケイ!!』 ああそうだ、立ち止まってなどいられない。 いちいち考えてる暇があったら、障害など破壊して進め。 今の俺達にはその力がある筈だ───!! 悠介 『オォオオオオオオオッ!!!!』 彰利 『だぁあありゃあああああっ!!!』 疾駆と飛翔。 俺が舞い、彰利が駆け、それぞれに攻撃を始める。 悠介 『“雷神槍(ヴィジャヤ)”!!』 彰利 『ビッグバンかめはめ波ァアーーーーッ!!!!』 当然ハナから加減などせず全力───!! 放たれた最大の雷と黒の光はキングベヒーモスの体を貫き、焦がし、爆発させた。 が─── キングベヒーモス『グルルルル……グォオオオオオッ!!!!』 貫いても爆発させても、その規模はあの巨体にしてみれば大したものではない。 キングベヒーモスは俺達を憎々しげに睨むと咆哮し、地面を爆裂させて疾駆した。 彰利 『───!?速ッ───』  ───ゴブシャアッ!!! 彰利 『ぐあぁああああああっ!!!!』 悠介 『彰利!?───はっ!!』  ヒュオドパァンッ!! 悠介 『げはっ!!!』 物凄い勢いで彰利にぶちかましをし、止まると同時に反動のついた尾撃で俺を叩き落す。 その行動は思念に囚われているとは思えないほど巧みであり、 気づいた時には地面に叩きつけられていた。 悠介 『っ───彰利!まだいけるか!』 彰利 『当然!』 だがすぐに起き上がると構え、再び突進してきたキングベヒーモスを迎え撃った。 悠介 『来い!ラグ!』 俺は飛翔しながらラグを手元へと戻し空中へ。 彰利は再びキングベヒーモスを見上げるカタチとなる。 悠介 『疾───!!』 彰利 『シッ───!』 突進は同時。 俺は剣をキングベヒーモス目掛けて振り下ろし、彰利は跳躍とともに顎へと攻撃を加える。 上下からの全力の攻撃───アルティメットライン。 だがそれさえも、相手に悲鳴を上げさせる程度の威力しか出せなかった。 だが、キングベヒーモスの顎は上顎と強く衝突し、血を撒き散らした。 ───そう、ダメージが無いわけじゃないんだ。 キングベヒーモス『グアァアアォオオオオンッ!!!!』 悠介&彰利   『〜〜〜〜っ……!!』 鼓膜を劈く咆哮。 だが確信してからは俺達にはただ『自信』があった。 そう───今の俺達ならば出来るのだと。 彰利 『悠介……これって───』 悠介 『ああっ!いけるぞ彰利!!』 そうだ……俺達は初めてキングベヒーモスに会った頃の俺達とは違う。 だったらそれこそが結果なんじゃないのか? それに元々理解はしていた筈だ、『神魔竜を開放すれば勝てるだろう』と。 ならば、今俺が出せる力の中で最も神魔竜に近い今の状態ならば、 少なくともダメージは与えられるということだ。 彰利 『よっしゃあ!そうと解りゃあ───悠介!!』 悠介 『解ってる!!』 俺は素早く飛翔し、その勢いとともに拳を硬く握った。 飛翔する先はキングベヒーモスの足元。 もちろん相手はそれに反応しないほど馬鹿ではない。 おもむろに咆哮を放つと凄まじい速さで牙を向けてきた。 悠介 『甘いッ!!』 それを躱す。 勢い余って転げそうになるのを全力で回避し、 足場が爆発するほどの力を込めて地面を蹴った。 悠介 『───ッ……おぉおおらぁっ!!!!』  ゴォッ───ゴガベキャァアッ!!!! キングベヒーモス『グォオオオオオオオオオンンッッ!!!!』 全力を込めた拳はキングベヒーモスの左前足を砕き、バランスを崩させ転倒させた。 それを合図に俺と彰利は跳躍し、それぞれが己の力を解放した。 悠介   『いくぞ彰利!!』 彰利   『おう!!今こそ開発した“必殺技”を見せてやる時だ!!』 悠介   『イメージ解放!“黄竜斬光剣(エクスカリバー)”!!!』 彰利   『鎌力全開!!“魔人極光剣”(ダークネスキャリバー)!!!』 悠介   『反発する力を以って破壊へと変換する!』 彰利   『光と闇の標に彷徨え汝!!』 悠介&彰利『光伎 神魔吼竜剣(オメガレイドブレイバ)ァアーーーッ”!!!!』 両手に灯した極光をひとつにし、倒れているキングベヒーモス目掛けて振るう!! 放たれた極光と漆黒は双方を殺すこともなくただ輝きを増し、 俺達を見上げるキングベヒーモスへと落ち───  ズフィシュバッガァアアォオンッ!!!! 悠介 『ッ───!!』 凄まじい爆発、凄まじい光と闇の炸裂とともにキングベヒーモスの半身を粉々に粉砕した。 ───否、“これでも半身”だ。 彰利 『っ……なんつう頑丈さだよ……!必殺技な自信があったのに……!     絶対粉々に出来るって思ってたのに……!』 悠介 『───……次の一撃で決める。彰利、抵抗する力を奪うから食っちまえ』 彰利 『へ?ちょっと待った!     これだけの攻撃に耐えたヤツ、お前ひとりでツブせるわけが───』 飛翼をはためかせる。 向かう先は当然、大地でもがく上半身のみの幻獣。 ラグを強く握り、戦斧石の力を引き出すと同時に紅蓮に染め、 さらに反発反動力からなる諸力と魔力、竜人力や月の家系としての力をラグに───!!  キヒィンッ───!! 急降下とともに剣を回転させ、肩に構える。 その反動とともに全力の出せる状況を作り、やがて相手と衝突するかしないかの境───! 悠介 『“───黄竜剣”!!』  ギシャゴバァアアアアォオオオンッ!!!! キングベヒーモス『グォオオオオオオオオオオゥウッ!!!!』 紅蓮に染まったラグナロクがキングベヒーモスの顔面を断滅すると同時に、 金色の竜の闘気がその場に散る。 着地とともに彰利を見上げると、 口ではああ言ってた彰利も俺を信頼してか、既に黒を全開で発動させていた。 彰利 『くらえ!これが俺らのファイナルショット!!     “千を生きる闇黒の勇者(サウザンドブレイバ)ァアーーーーーーッ!!!!”』 全身を巨大な獅子の顔にした彰利は倒れ伏す超獣の首と体目掛け、巨大な黒の極光を放つ。 大気に猛る轟音と、眩しく美しいとさえ思えるほどの黒い極光。 それは最後にひと哭きした超獣の頭と体を破壊すると一気に吸収した。 やはり幻獣とはいえ、脳から切り離してやれば体に力など入らない。 結果として硬質化していた体も傷口から削られ、やがて消滅した。 彰利 『ビィクトリィイーーーーーッ!!!!』 やがて、それら全てを吸収した親友は叫ぶと同時にガッツポーズ……。 黒の規模が一気に増え、親友からは相当な力の波動を感じられた。 悠介 『勝ち鬨は全部終わってからだ!急ごう!!』 彰利 『解ってる!了解!!』 そうして再び飛翔。 目指すべき北の大地は近いのか、もう思念がかなりの密度に達していた。 彰利 『つーかお前さ!あんなことが出来るなら最初からやれっつの!!     どういう強さしてんだよ!キングベヒーモスを一刀両断!?何者!?』 悠介 『その前までの攻撃で傷ついてた場所に添っての一撃を落としただけだ!!     最初からあんなことが出来るんだったらそれこそ最初からやってる!!』 彰利 『……それもそっか。急いでる状況で悠介が手抜きなんてするわけねぇもんな』 悠介 『───……それより、まだか?結構な距離を飛んだと思うんだが───』 彰利 『その間が気になるけど流しておこう。     ……そろそろだよ、もう地図的には北の大地自体に入ってはいる』 ───そっか。 だったらここからが本番ってことになる。 彰利 『───見えた!!あれが思念の渦だ!』 悠介 『っと───なっ……!?』 彰利に促されるように空を見上げた。 すると───俺達が立つ大地の遥か上空に、その渦は存在していた。 そう……本当に『渦』という言葉が似合っている。 黒く渦巻き、まるでブラックホールを連想させる形状でありながら───しかし、 ブラックホールという名で呼ぶには効果が真逆。 思念を吸い込むどころか放出し、塵さえも放出しているためか、 幻獣たちがボロボロと空中から生まれてくる様は─── 正直破壊兵器の生産工場を連想させた。 しかもその全てが俺達目掛けて飛翔、または落下してきている。 彰利 『くっそがぁぁあっ!!!なんなんだよこの数は!!』 悠介 『───』 どうする。 俺は次元干渉は出来ない。 つまりあの渦へ向かうのは彰利でなければならない。 だが幻獣自体はあの渦から現れているようなもので、 俺が引きつけて戦う、なんてことは出来そうに無い。 否───!!なに今さら悩んでやがる!! 悠介 『彰利!飛べ!!ここは俺が引き付ける!!』 彰利 『へ……?───ははっ、了解ぃっ!!!』 ズーの翼を生やし、彰利が空へと飛翔する。 その姿を、飛翔幻獣が狙おうとするが─── 悠介 『“伎装弓術(レンジ/アロー)”!!“光が拠代たる閃光の矢(ディカヴナルラインゲート)”!!』 ラグを弓へと変化させると同時に十点を描き、光のラインゲートを開く。 そこから溢れる光の力を矢に変え、空を飛び交う幻獣へと発射する───!! 幻獣 『ガ───ァアアアアアアアアッ!!!!』 放たれた光の矢は無数の光に拡散し、 数えるのも嫌になるくらいの数の幻獣たちを貫いてゆく。 だが当然、一発で終わらせるつもりはない。 幾度も幾度も放ち、俺が邪魔者だという認識さえさせれば俺のみを狙う筈だ。 ───そしてそれは見事的中することになる。 幻獣どもは俺の身に標的を絞り、その全てが一気に俺を目指して襲い掛かってきた。 悠介 『来い……!お前らが来れば来るほど、彰利の力が増すんだからな───!!』 そう、俺が殺した思念の力は彰利に流れるようになっている。 殺せば殺した相手の力が自分に流れるという異常空間である狭界。 その理から自分を乖離するため、俺と彰利にはそういった理力が張られている。 故に、俺がここで幻獣を引きつけ、さらに倒していけば、それだけ彰利の力が増す。 そして力が増せば歪みの修正に使う力も増していく筈だ───! 悠介 『はぁ……けどな。さすがにこの数を見ると頭が痛くなる……』 見た目だけでなら予想は立てられる幻獣も居れば、見ても解らない幻獣も居る。 マカラやマフート、ムシュフシュやナーガ、 コカトリスにカトブレパスにオドンティラヌス、アンフィスバエナ─── 記憶を辿れどキリは無い。 召喚獣というよりは、本当に幻獣と呼んだほうが合っているものばかりだった。 悠介 『いくぞラグ……覚悟を決めろ───“伎装剣術(レンジ/ブレイク)”!!』 その場に紛れも無い殺気が幾百と溢れる。 握り締めた弓は剣に変わり、 俺のイメージを汲んで“退けるもの”から“滅ぼすもの”へと変化した。 ───加減はしてやらない。 世界を救うなんて大それたことを言うんじゃない。 ただ、親友が成そうとしていることや、 俺が守りたいと願ったものを破壊するというのなら─── 俺は、俺達は、それを絶対に許さない!! 悠介 『()ッ!!』 戦斧石の力を極限まで引き出した剣が、 疾駆とともに紅蓮の軌跡を残しながら高速で奔る。 迎え撃とうとする爪や牙はしかし、目前で得物を見失い、気づけば既に消滅していた。 幻獣 『ギ───!?』 その誰もが驚愕しただろう。 幻獣として生まれ、誰かの思念を受け取って現世したそいつらは、 確かに人などよりは優れた存在である筈だった。 現に、人などには太刀打ち出来るほどの力も無いだろう。 ただしそれは、相手が“人ならば”。 人であった頃から人から外れ、異端として生き、 やがて竜となった俺に───そんな既存など通用しない。 常識から外れているからこその異端なのだ、当然だろう。 悠介 『ハアァアアアアアアアアッ!!!!!』  ゾフィィン!!パギャッ、ザシュンッ!!ゾガガガガガッ!!! 溢れる幻獣の姿を切り裂き、削ぎ、破壊し、幾重にも貫いてゆく。 イメージで繋がったラグは“こうあって欲しい”という場面において、 まったくイメージ通りの形状へと変化した。 穿ちたい時には槍、届かぬ時は弓、近すぎる時は篭手や具足、硬い時には戦斧と。 さらに離れようとする相手には剣鞭となり、 その一撃一撃が大勢の幻獣どもを滅ぼしていった。 ……いったい誰が予測出来ただろう。 絶対の自信を以って襲い掛かった筈が、たったひとりにここまで破壊されるなど。 本能として恐怖を感じた幻獣も出てくると、逃げ出そうと後退するが─── 溢れ出してくる思念に囚われ、狂い、結局は向かってくることとなった。 ……それが、絶命へのきっかけとなるとも知らずに。 悠介 『“捻り穿つ(ディグスラスト)”!!』  ゾシャアッ!!───ベキャッ!ゾフィィンッ!!! 槍で貫き、引く石突きで後方の幻獣を砕き、変換した剣で薙ぎ払う。 さらに群がる幻獣を、 ラグではなく光の武具として創造したストームブリンガーで殺してゆく。 自動殺戮の剣であるストームブリンガーがザコどもを殺してゆく中で、 俺は巨大な幻獣を穿ち、斬り伏せ、砕き、破壊してゆく。 キリが無い───いや。 たとえそうだとしても、それは彰利が歪みを修正することで終わる。 だったらどこまでだって耐えてやる。 悠介 『来やがれ!!お前らの目的の全てを俺が破壊してやる!!』 変換し、突き立てた槍が大地にクレーターを作った。 一瞬のみ怯む幻獣───だが即座に咆哮し、襲い掛かってきた。 上等だ……存分に暴れてみせろ!! その全力と自信の全てを破壊してやる!! 【ケース54:インタールード/───】 黄竜王『ガァアアアアアアッ!!!!』 バガァッ!!チュゥウウウウウウウンッ!!!! 幻獣 『グギィヤァアアアアアアッ!!!!』 黄竜王『ディルゼイル!二時の方向へ放て!!』 ディル『承知!!ルゥウォオオオオオオッ!!!』 ガガァッチュゥウウウウンッ!!!! 幻獣 『ギッ!?ギアァアアアアアアッ!!!!』 凄まじい速度を誇っていた幻獣が消える。 黄竜王と飛竜を散々振り回していた筈のソレはしかし、 いとも容易く行動のパターンを見切られると、狭界の虚空へと消え去った。 ───これぞ知性竜の力。 あらゆるものを見切り、解らぬことなどすぐに理解し、乗り越えてゆく力。 黄竜王『存分にかかってくるがいい!我が力の真、とくと味わわせてやる!』 声  「はいはーい、協力するよー」 黄竜王『ぬ……?』 ふと、トンと境目から降り立つ人の姿があった。 その姿は、かつて己と一対一で向かい合った魔導術師の姿。 イセリア「やっぱりわたしもこっちで手伝うね。      今は手を取り合おっか、シュバルドライン」 黄竜王 『……望むところだ。せいぜい足を引っ張るなよ、小娘!』 イセリア「あはは、言ってくれるなぁ。───“魔導極光剣・弐式(ツインキャリバー)”」 彼女は───信じられないことに、両腕を極光の剣へと変えて構えた。 さすが開発者、やることが半端ではない。 イセリア「言っておくけどね。      ババアの薬の所為で弱ってなければあなたに遅れはとらなかったんだよ?      だから『力不足』なんてことにはならないと思う」 黄竜王 『ほう?言ってくれる』 ふたりはニィ、と笑ったのちに幻獣を迎え撃った。 腕を振るうたびにエクスカリバーを放つ両腕と、 避ける方向を見切られて狙い撃ちされてしまう極光。 そのどちらもが一撃必殺の威力を持っており、 穴に群がるような幻獣ごときが太刀打ちできる筈もない。 ───否。 たとえ、中々の力を持つ幻獣が現れたところで、恐らく─── イセリア「“双身(ゼクス)ッ……極光剣(カリバ)ァーーーッ”!!!」 両腕の極光を合わせ、放たれた光はそれすらも両断し。 残った塵めいた幻獣を、シュバルドラインのレーザーが消し去った。 それは息の合った戦い方だった。 かつては敵対した者同士だというのに、今の戦い方を見た者のだれがそれを信じるだろう。 ひとりと一体の間には恐らく、絶対の自信が有ることだろう。 黄竜王 『少しはやる。褒めてやるぞ、小娘』 イセリア「それはどうも、インテリさん」 黄竜王 『インッ……!?こ、小娘がぁああああああっ!!!!』 イセリア「なによぅ!あなたの所為でわたしの人生ずっと停止してたんだから      これくらい言っても許されるでしょ!?」 ……が。 緊張感は無さそうだった。 黄竜  『王!来ます!』 黄竜王 『解っている。我よりもこの小娘に報せてやれ』 イセリア「むっ!?シュバちゃん!?今のはいただけない言葉だよ!?」 黄竜王 『だっ……誰がシュバちゃんだ!!』 ……やはり緊張感は無さそうだった。 ───……。 アーガ『こンのっ───クソがぁあああああっ!!!!』 飛翔する青は多数。 弧を描くように飛翔し、迫る幻獣を迎え撃つ。 迎撃した数は幾数にも及び、だが逆に、ブルードラゴンたちも弱っていた。 蒼竜王『怯むな!!モンスターの塵と人の思念ごときに我ら竜族が負けるか!!』 アーガ『負けるかよっ!!ォオオオアァアアアアッ!!!』  ガガァッチュゥウウウウウウンッ!!!ボガガガァアォオオオオオンッ!!!! 吐き出すレーザーが幻獣の飛翼を削ぎ、飛行能力を無くすことで相手を落下させる。 その後は落下してゆく無防備な存在に再びレーザーを放つことで消滅に導く。 そんな戦い方が続いていたが、マグナスだけは違った。 空を物凄い勢いで舞い、その巨体で幻獣どもをぶちかましで吹き飛ばすと、 身を捻ってから放つ極光で一気に十以上の幻獣を滅ぼしていた。 が、現れる幻獣どもは後を絶たない。 悠介が北の大地へと向かう中で、 いつしか黄昏の範疇から外れてしまった竜たちは、己の力のみで戦っていた。 故に疲労は既にピークに達し、飛翔する力が削られてゆく中─── アーガ『……!?───来た来た来た来たぁあああああああっ!!!』 体を包むような“癒し”が、この淀んだ世界に溢れた。 さらに遠くより来たる紫色の竜族たちが、飛翔する幻獣どもを薙ぎ払ってゆく。 蒼竜王『貴様は───?』 紫竜王『御託などあとでどうとでも出来る。手伝っていいのなら手伝わせてくれ。     なんでも、己の生きた世界すら守ろうとしない者には誇りなど無いらしいのでな』 蒼竜王『……なるほど、王の差し金か。ならば断れんな───来るぞ!』 紫竜王『命令はするなよ?我は己の誇りのために戦うまでだ!!』 蒼竜王『貴様こそ我が誇りある戦いの邪魔をするなよ!?』 紫竜王『フン……ならばどちらの誇りがより優れているか、試すとしよう』 蒼竜王『望むところだ───!!』 アーガ『……どうでもいいけど、戦ってくれよ』 己の誇りを糧に戦う者同士では意見が合いそうにはない。 その時、側近である飛竜はそう思ったそうだ。 ───……。 ヴァル『くっ……雑魚とはいえ、こう数が多いと……!』 緑竜王『癒しの実行には成功した。この世界に清い泉があって良かった。     あとはこの戦いが終わるまで耐えるのみだ……なんとしても乗り切るぞ!!』 ヴァル『心得ております!緑竜王!』 狭界の中心、巨大井戸の前にて戦うは緑竜王とその側近であるヴァルトゥドゥス。 そして─── ケルベロス『グォオオオオオオオオンッ!!!!』  ───ガブシャアッ!! 幻獣 『ギャアアアアアアアッ!!!!』 彰利の力にて放たれた、地獄の門番ケルベロス。 放った主から随分と離れているにも係わらず、その力は全く衰えを感じさせない。 それもその筈、元より地獄の門番としてこういった空気に慣れている彼にしてみれば、 この思念渦巻く禍々しき狭界は実力の最を出せる場所。 恐らくはこの場に群れ為す雑魚の幻獣どもよりは巧く戦える存在だろう。 現にケルベロスが破壊した幻獣の数は既に百を超え、 ヴァルトゥドゥスとグルグリーズもその強さに驚いているほどである。 さらに言えば彰利との連結もあり、悠介が幻獣を殺せば殺すほど、彼の強さも増すのだ。 幻獣たちにしてみれば、これほど厄介な相手など居ないだろう。 ……もっとも、現在北の大地でひとり戦っている存在と比べれば、 どちらが嫌なのか解ったものではないが。 ケルベロス『ウォオオオオオオオオンンッ!!!!』 三つ首が吼える。 それぞれの口から炎、氷、雷撃が放たれ、正面に居た幻獣のほとんどを破壊してみせた。 緑竜王『……あの能天気な小僧に感謝だな。まさかここまで助けられるとは』 ヴァル『流石は皇竜王が親友と呼ぶだけはありますね。あの性格は頂けませんが』 緑竜王『王の言葉を借りるならば人それぞれだろう。     王が親友と呼ぶのなら、それだけの理由があるということだ。     ───さあ、正念場だぞヴァルトゥドゥス。気を引き締めていけ』 ヴァル『言われるまでもありません───!』 ───……。 赤竜王『グゥォオオオオオオオオオオッ!!!!』  バギシャァォン!ズガガガガァアアッ!!!! 幻獣 『ゴォオオオオオオオオァアアッ!!!!』 巨体と巨体がぶつかり合い、極光と極光が弾け合う。 轟音とともに飛翔し、 十を数える間に二十の幻獣を滅ぼすは空界最強の竜王、ドラグネイル。 その実力はまさに真。 それぞれの竜王でもここまでの強さは出せまいと思うほどの力を見せつけ、 側近であるヘイルカイトが一体を倒す間に相当数の幻獣を滅ぼしていった。 これほどまでかと思うほどの実力差にさしもの幻獣どもも怯むが、 それでも手強い相手は居るのだ。 それが先ほどから相手にしている幻獣。 ラドンと呼ばれる。ヒュドラと同様に百の頭を持つ蛇である。 再生能力など無いが、その分頑丈であり、狡猾で頭もキレた。 実力で言えば確かにドラグネイルの方が上だ。 だというのに何故こうも振り回されるのか。 赤竜王(チィッ……!こんな幻獣ごときに……!) その答えを挙げろというのならば、恐らくそれは“焦り”にこそあった。 自らが始めて“主”と認めようと思った者の信頼を身に受け、 格下の相手になぞ遅れを取るわけにはいかないと思ったが故。 攻撃が単調となり、その全てが躱されてしまうのだ。 もちろんドラグネイル自体、そんなことには既に気づいている。 だが感情というものはそう簡単ではないのだ。 まして、誇りを持ちながら竜王中最強を謳うドラグネイルならば尚更である。 幻獣 『クッ……』 小さく笑みをこぼすのは目の前の幻獣ラドン。 しかし焦りに飲まれたドラグネイルの耳や視覚にそれが届くことなど無い。 あとは疲弊させてゆっくりと食らえばいい。 この時のラドンは、恐らくはそう思ったに違いない。 ───だが。 赤竜王『ルゥォオオオオオオッ!!!』  キィイイ───ドガチュチュチュチュゥウウウウン!!!! 幻獣 『───!!?』 明らかな驚愕はラドンのもの。 どこにそんな余力が残っているのかと思うほどの極光が放たれ、 ラドンの四方───即ち頭上と左右、それから体の下という逃げ場を塞いだ。 訪れる一瞬の怯み。 それが命取りとなった。 赤竜王『終わりだ!小僧めが!!』 四方に放ったものより強力な極大の光が放たれる。 既に四方に放たれたレーザーは彼方へと消えているが、 その身に訪れた一瞬の怯みが、巨大な光を見た途端に硬直へと変わった。 幻獣 『ヂッ……ヂシャアアアアアアアアアッ!!!』 絶叫を上げようが遅い。 眼前に迫った光はいとも容易くラドンの体を削り、遠く景色で大爆発を起こした。 だがやはり“削っただけ”なのだ。 ラドンの首はその実、八十は滅んだ。 だが残りの二十は忌々しげにドラグネイルを睨み、大口を挙げて吼えていた。 事此処に至り、とうとう余力が無くなってきたドラグネイルはそれを見て息を吐いた。 人で例えるならば、巧くいかぬものだという溜め息めいたものだっただろう。 と───その時。  ゾパァアンッ!!! 幻獣 『───……』 ドラグネイルにばかり気を取られていたラドンは、 ひと太刀で残りの二十もの首を刎ねられた。 体はすぐに塵となり、やがては消える。 そしてその先に立つ者は─── 赤竜王  『……よもやな。巨人族に救われるとは』 ゼプシオン『仕える者が同じならば、古より続く禍根など関係ないだろう』 かつての英雄、ゼプシオン=イルザーグだった。 さらにその後ろには狭界の巨人族たちが集い、 再び群がってきた幻獣どもを薙ぎ払っていた。 赤竜王  『どういう風の吹き回しだ。貴様らは協力を断ったと聞いたが』 ガラハッド「自分より小さな存在に怒られ、       あまつさえ同じ巨人族に怒鳴られても動かんのでは、       王として立場が無かっただけのこと。       なに、ようは己の住む世界くらい守ろうとしない者に、       誇りを名乗る資格は無いということだな」 ゼプシオン『最後まで渋っていた王がよく言う』 ガラハッド「やるからには全力を出すまでよ。もちろん、力を貸してくれるな?」 ゼプシオン『それが召喚師の願いなのでな。断る理由が無い。……貴様はどうだ』 赤竜王  『構わん。邪魔をされれば話は別だがな』 ゼプシオン『それで構わない。……さて、それでは滅ぼすとするか』 赤竜王  『せいぜい死なないように頑張るのだな』 ゼプシオン『その言葉、貴様に返す』 ようやく届いたグルグリーズの癒しが疲れと傷を癒す中、 クッ、と双方が笑い、幻獣へと向かってゆく。 既にどのような事柄の末に争うようになったのかも解らない巨人族と竜族。 ───だが。 それは案外、過去のことを忘れようとすれば手を取り合えるのではないだろうか。 現に今、その種族同士が協力して異なる種族を滅ぼしている。 ならば───ドゴォンッ!! ゼプシオン『ぐはっ!!───貴様!!言った傍から飛翼で攻撃をするか!!』 赤竜王  『貴様がそんなデカい図体をしているのが悪い!!       隅で戦っていろ!!そもそもここは我が王に任された場所ぞ!!』 ゼプシオン『……貴様では役不足だ。失せろ!!』 赤竜王  『なんだと貴様ァアアアッ!!!!』 ───……和解など、まだまだ無理そうであった。 【ケース55:弦月彰利/思念の渦中】 彰利 『ぅ───くぁっ……!!遮断してるってのになんて嫌な空気だよ……!!』 思念の渦前へと飛翔する。 だがそこの空気はお世辞を言うにしても『耐えられる空気』ではなかった。 息を吸うたびに気分が悪くなり、下手をすれば思念に飲み込まれそうになる。 彰利 『つーか……おぉい!!どういう勢いで幻獣ども殺してんだよ!!』 力を最大限に解放しながら自分を黒で覆っているというのに、 次から次へと力が満たされてゆく。 その原因は悠介が幻獣を殺しているからなのだが、 空腹になった腹が満たされる速度は半端じゃない。 ……そりゃそうか。 神魔竜人状態で、さらに竜の力を引き出してる悠介がそこらの幻獣に負けるわけがない。 少し見下ろしてみれば、幻獣で溢れかえっている大地では金色の竜の闘気が飛び散り、 そのたびに幻獣の数がゾボリと塵と消えている。 黄竜剣使いまくってるんだろうな……。 修行中に見せてもらったけど、アレの威力は半端じゃない。 彰利 『って!いやいやいや!!さっさとこの渦をなんとかしねぇと!!』 考え事なんてあとでいい! 今は早くこの戦いを終わらせるべきだ!! 幸い力が有り余ってるから、渦が吐き出す思念の並に吹き飛ばされるようなことはない。 さっきも言ったように、黒で自分を覆って近づけばいいだけのこと。 彰利 『月空力!全開!!』 渦の正面まで来た俺は早速次元干渉を開始する。 次元の捻れは相当で、 月空力を放った先からバラバラの時間軸が自分に降りかかるのを感じた。 だが俺に異常が起こるなどということはない。 これでも“黒”の能力を手に入れる前から次元干渉については極めていたに近い。 こんな時空の捻れ、すぐに───!! 幻獣 『ウバァシャアァアアアアアッ!!!!』 彰利 『いっ───!?しま───』 ヤバイ───!渦にばっか気を取られてキャヒィンッ!! 幻獣 『…………!!』 彰利 『へ……?』 ……気を取られていたのは確か。 でも、俺に向かってきた筈の幻獣は一瞬にして消えた。 光の矢によって、その身を穿たれたためだ。 しかもその矢の数はたったの一本。 それを……あんな遠くから命中させたのか、俺の親友は。 彰利 『イーグルアイか……本当に羨ましさが凝縮されたような能力者だよ、まったく!』 だから俺も存分に力を解放できる。 周りのことなど気にするな、それらは全て悠介が滅ぼしてくれる。 あいつは俺を信頼してくれたからこそ自分が引き付けるって言ったんだ、 それを今さら疑ってどうする。 “信頼してくれた”あいつが期待に応えなかったことなどきっと無い───!! 彰利 『“微動無き時操の理(セカンドハンズフリーザー)”!!!』 だから俺も全力で応えてみせる。 あいつが俺を信頼してくれたように、俺もあいつの信頼に応えるために───!! 彰利 『ッ……直りやがれぇええええええっ!!!!!』 ギシミシと空間が軋む。 散々捻れた時空の歪みだ、それを正すのであれば、相応の時間を要するのだろう。 だがそんなものは次元操作と時間の操作の前には関係無い。 俺はただ、全力でこの捻れを直すだけだ。  ───だが待て。  俺達は何かを忘れてやしないか? そう気づいた時が引き金だったように。 ここよりも遥か上空で俺を見下ろしていた存在に今さら気づいた。 そして、気づいた時にはソイツが嫌ってくらいに溜めた極光が一気に放たれていた。 その威力は食らってみるまでもない。 大気さえ破壊しながら降り落ちるソレは、一発で容易く俺という黒を消滅させるだろう。  だから俺は。  見上げた空と、極光の先に居た黒竜を見て、小さく舌打ちをしたのだった。 声  『ホウケるなって言ってるだろうが!!!』 彰利 『───!!』 けどその言葉で目が覚めた。 なにやってるんだ俺は……信頼するって決めたばっかりじゃないか。 あいつは、そうと決めたことは貫く男だ。 だったら俺は───俺がするべきことはただひとつだ!!  パギシャゴッパァアアアアアアンッ!!!! 炸裂する光と光。 恐らくは俺に喝をいれた言葉とともに放たれたであろう巨大な光は、 黒竜が溜めるに溜めた光を相殺し、空へと散らした。 その様はまるで花火。 その中を飛翔する親友の姿に、俺はただ心強く月空力を発動させた。 【ケース56:晦悠介/VS黒竜レヴァルグリード】 悠介 『オォオオオオオオオッ!!!!』 昇ってゆく───遥か上空まで。 纏わりつかんとする幻獣を全力を以って滅ぼし、 途中で見下ろした大地へと“架空・雷迅槍(ヴィジャヤ)”での“無限を紡ぐ剣槍の瞬き(インフィニティ・バレット・アームズ)”を放ち、 見上げる姿の全てを穿ち殺した。 悠介 『レヴァルグリィイイドォオオッ!!!』 黒竜 『………』 ラグをキィンと振るい、一気に黒竜を見下ろす場所まで飛翔した。 そうして対面する───出会うのは初めてだ。 ……確かに、感じる力強さは相当だ。 悠介 『……もし言葉が届くなら答えろ!どうして地界へ行こうとする!!     ここまで思念を増幅させて、幻獣を狂わせる理由はなんだ!!』 黒竜 『……クッ……クフフハハハハ……!!     地界?思念の増幅?そんなものはもうどうでもいい。     俺はただ、貴様と弦月彰利を殺したかっただけなんだからな……!!』 悠介 『なに……?』 黒竜 『迷ったな!?隙有りだ!!』  ガァアアォオオオオオンッ!!!!! 悠介 『───!!』 突如として放たれる極光はあまりに巨大。 昇る朝日が何処までも届くような様を連想させるそれを、 さらに上空へと飛翔することで躱した。 が、その頭上で既に待ち構えていた黒竜が尾撃を振り下ろす。 黒竜 『さらに隙有りだ───!!』 悠介 『ふざけろ。隙なんてもう見せない』 黒竜 『なに───!?』 だがこんなものは予測していた。 俺は右手で握っていたラグを両手で握ると戦斧石の力を全開に引き出し、 全力を以って振るった。  ───ザガキャヒィイイインッ!!!! 黒竜 『ギャァアアアアアッ!!!!』 紅蓮の軌跡を残す斬撃は黒竜の鱗を重い抵抗ののちに斬り裂く。 当然黒竜はそんな事態を予測していなかったようで、尾を庇うようにして引いた。 黒竜 『ッ……キサマ……!!』 悠介 『───……呆れたヤツだよ。どこまでしぶといんだ……“逝屠”』 黒竜 『チッ……おちょくりながら殺してやろうと思ってたのによ。     だが“俺”だけじゃねぇんだぜ……?俺や俺の前世や時の番人、     お前や弦月彰利を恨んでいる全ての思念がこの体を象ってる。     しかも嬉しいことに、空界と狭界両方で言うところの“最強”の存在、     レヴァルグリードってヤツの塵で体を作ることが出来た。     当然力もレヴァルグリードのものだ……笑いが止まらないな!!     この絶大な力を以って、人形ォ……てめぇを今度こそ殺してやるよ!!』 悠介 『───……』 黒竜が咆哮する。 そして“信じられない速さ”で飛翔し、俺へと向かってきた───
ベリー「はぁ……ね、ねぇノーちゃん?     もし悠介たちが黒竜と遭遇したとしてさ。勝てると思う?」 ノート『ふむ』 丁度───悠介と黒竜が戦っている頃。 空界でゲートを維持していた精霊たちとベリーは、そんなことについて話していた。 一方のベリーは疲れこそ見えるが、まだ余力は残っている。 スピリットオブノートは言うまでもなくまだまだ平気だ。 だがその質問には眉を歪めた。 ノート『汝はどうあってほしい』 ベリー「え……そりゃあ勝って欲しいわよ。     でもさっき言ったじゃない、黒竜は神魔竜状態の悠介並に強いらしい、って」 ノート『ああ、言ったな』 ベリー「じゃあ」 ノート『そうだな、マスターがミルハザードを倒した時点で     強くなることを拒否していたのであれば、いい勝負にはなっただろう』 ベリー「え?じゃあ……」 スピリットオブノートは一度だけクスリと笑い、笑みを吐き出すように言った。 ノート『ポッと出の皇竜王が、全ての竜王の上を行ったマスターに敵うか。     地界で言うところの【漫画やアニメ】とは違う。     相手がどんな“力”を得ようとも、     それを自分の力として解放出来ない限りはマスターには敵うまいよ。     つまり───狭界の果てに居る黒竜は、     全ての力を解放したマスターの強さに比べれば“とんだ三下”だ』
───ああ、まったく……なんて信じられない速さだ……!! 悠介 『遅いんだよ鈍間!!』  ズパギャァアアッ!!! 黒竜 『ギャアアアアアアッ!!!!!』 振るったラグが黒竜の眉間を砕き裂いた。 当然黒竜は飛翔方向を誤り、俺の下を飛んだのちに振り向いた。 黒竜 『……!?どうなっている……何故……!     この力は世界最強だ!!キサマ───貴様ごときに!!』 悠介 『解ってないようだから言ってやる。     お前が何もしないで“最強とやら”の力を手に入れたのとは別に、     俺はずっと自分を鍛えてきた。お前が誰かを憎んだりしている中、ずっとだ。     ……噛み砕いて言ってやろうか。他人から得た力なんてな……     “自分が”操れるようになって初めて自分の力だって自慢できるものなんだよ!』 黒竜 『───!!』  ヒュオッ───ソブシャア!ゴギィンッ!! 黒竜 『ガ───ア……!!』 突き、払う剣が黒竜の鱗をいとも容易く裂いてゆく。 当然だ、相手が黒竜だと気づいた時点で、 ラグは己の身に俺のイメージを受け止め、屠竜剣を解放していたのだから。 相手が竜である以上、これほど有効的な武器など存在しない。 黒竜 『ふざけるな……ふざけるな!!俺はこの力で───』 悠介 『何も出来やしない───!寝言は寝て言え馬鹿野郎が!!     お前の力はデカいだけで、なんにも出来やしない見せ掛けの力だ!!』 黒竜 『黙れよ人形!!この体が出せる限界はこんなもんじゃねぇ!!     てめぇごとき、十と経たずに抹消できる力なんだよ!!』 悠介 『……そんなに力に溺れたいかよ。     だったら見せてやる……お前が望む“力”っていうのを───!!』 ゴォッ!ギキィッ───……ィインッ!!! 黒竜 『……?黄昏を消した……?』 悠介 『消したんじゃない……“力”に変えるんだ……。     初めて、自分の力を以って断言してやれる。     ……お前、後悔する時間が自分にあるなんて思うなよ』 黒竜 『なに……?ほざけよ人形が!!』 飛翔し、吼える黒竜。 その咆哮が俺が放った言葉を掻き消す。 元より誰かに聞かせるべき言葉ではない。 だがその言葉は放たれたのだ───……“神魔竜、解放”と。  ガカァアアォオオオオオオオンッ!!!! 黒竜 『───!!なっ……な、なんだ……この気配は……!!     馬鹿な……馬鹿な馬鹿な!!嘘だ!!     竜人だかなんだか知らねぇが、人の姿のままでそんなっ……!?』 ───彰利は言った。 黒竜は俺が神魔竜化した時と同じくらいの気配だったと。 だがそれは、未だ完全に竜の脈が体全体に走っていなかった上に、 俺の意思とは関係無く暴走していた時のこと。 不安定だったし、能力の全てを生かしきれてはいなかったのだ。 故に……こうして自分の意思で竜化が出来る今とはくらぶるまでもない───!! 悠介 『疾ッ───!!』 ゴゥンッ───!! 沸き立つ力に加え、飛翔の速度さえ既に全てを凌駕した領域。 絶対の自信を誇っていた黒竜はしかし、俺の姿を見失って唖然とするだけだ。 だが宣言した通り、後悔する時間など与えてやらない。 俺はラグを強く握ると、加減も無しに皇竜の力を全開にした。 神速とともにエクスカリバーをエンチャントした黄竜剣で飛翼を斬り裂き、 返す刃で極光を込めた烈空刃を放つと硬い鱗を捻り穿ち、 怯む暇も与えないままに“四空、誓約ヨリ矛盾ヲ分カツ(人技、疾空にして蒼雷)
”にて斬り刻む。 さらに───トドメとして大きく空へと飛翔し、 落下の勢いとともにラグを回転させて構えた。 そして幾年ぶりかに唱えた。 己が血筋の力を、さらに全力で解放するために。 悠介 『解放せよ汝……!!たとえその全てを否定することになろうとも、     たとえその目に写る愛しき者を否定することになろうとも───!!     我は……その全てをも否定する!!───時間軸からその思念ごと消滅しろ!!     お前らが生きていい場所なんてもう何処にも存在しない!!』 唱えた言は月の家系である存在のリミットを外す言葉。 俺の体は限界以上の限界を凌駕した力に溢れ、 それを流すことでラグに俺の全ての力が込められる。 紅蓮では足りずに極光へと変わる力の具現はまさに太陽の如し。 ようやく己の体が切り刻まれたことに気づいた黒竜が俺を見上げたが─── それはあまりに遅すぎた反応だった。 悠介 『皇竜斬光剣(ラグナブレイク)”!!!!』  キヒィンッ!ギガビシャァアアォオンッ!!! 全ての光の武具のイメージに加え、全ての力を込めたラグの一閃を降ろす。 まるで雷鳴を思い出させるような轟音を上げたそれは、 黒竜の体を両断するだけでは足らず、たった一閃でその存在を消滅させた。 ……当然悲鳴を上げる暇すらない。 塵にもなることさえ許されず、その思念ごと黒竜は消滅した。 悠介 『……夢に抱かれて消え失せろ。     お前らなんかより、ミルハザードの方がよっぽど強かった』 息を吐くとともに、ゆっくりと力を解いた。 そうした時にようやく、幻獣が生まれてきていないことに気づいた。 そうして離れた場所を見てみれば─── 次元の歪みは丁度、親友の手で修正されたところだった。 大慌てでこちらへ飛翔してくると『加勢する』と叫ぶ親友。 けど、相手が居ないことに気づくと愕然とし、 ただ俺の肩に手を置くと、しみじみと『バケモノ』とだけ言った。 ……この時点で既に戦いは終わっていて─── そんなことに今さら気づいた俺は、ただ普段するように苦笑した。 Next Menu back