───忙しない僕らの旅───
【ケース57:弦月彰利/事後処理という名の……事後処理】 ……そうして、“空界”にひとつの伝説が生まれました。 悠介がレヴァルグリードを抹消したのとほぼ同時くらいに、狭界に居た幻獣はほぼ全滅。 思念の汲々も途絶え、ようやく正気に戻った幻獣も居れば、 元から凶暴で暴れる幻獣も居た。 もちろんそんなヤツは竜王やら巨人族にあっという間にコロがされたわけだが。 ともあれ狭界大戦は終わったのです。 で、俺達がどうなったのかというと───まあ全員壮健、死者無しの万々歳状態だ。 傷ついてたヤツも癒し、今ではみんなが落ち着いて戦いのことを振り返っていた。 そんな中でも悠介は“たったひとりで元皇竜王を倒した男”として、 余計に空界の存在から尊敬だの忠誠だのの眼差しで見られ、 さらには狭界の者たちからも尊敬の眼差しで見られていたりもした。 狭界の竜王である紫竜王さんも悠介の強さを認め、忠誠を誓うようになっちまって…… 彼は頭を両手で抱えながら、『魁!クロマティ高校』の前田くんのように唸ってた。 そうした中でも、案外コトが終わってしまえばあとは早いというか。 悠介は狭界の荒地をグルグリーズとともに癒し、緑豊かな大地へと変えた。 さらに精霊と契約し直すと早速ニンフたちに頼み、 空気の浄化や緑の育みを豊かにし、より住み易い場所へと変えていった。 狭界の巨人族や竜族はその事実を素直に喜んだものだ。 そんでもって肝心のスッピーの独り言についてだが─── 彰利 「なぁスッピー?結局さ、俺が黒竜の強さに関して言った時に呟いた     『それは弱ったな……』的なことの意味ってなんだったの?」 実はかなり気になっていたことだった。 すると─── ノート『なにな、実際に黒竜がどれほど強いのかを考えていたんだ。     そうしたらどうだ、不完全な頃の神魔竜の強さだと言うじゃないか。     拍子抜けだ、それではマスターが本気を出した時の訓練相手にもならない。     ……あれはそういった意味での呟きだ』 彰利 「あ……そスカ……」 至って単純だった。 つまり最初に相手がレヴァルグリードだと知った時は、 悠介へのいい刺激になると思ったんだろう。 ところがドッコイ相手はとんだ三下で、ただ力を無駄に放出してるだけのザコだったと。 えーと、要約すればこうです。 感じる波動は確かに凄まじかった。 けど、実際の実力はミルハザードくらいだったってこと。 暴走ミルハザードに比べてみればザコであり、神魔竜状態の悠介にしてみればゴミも同然。 せっかくの力も自分のモノに出来てなけりゃあ持ち腐れって教訓だ。 俺も気をつけよう。 ……まあ、思念ごと破壊された所為で黒竜の力は俺には流れてこなかったわけだけど。 まあそんなこんなでのんびりと狭界を散歩すること数日。 とある場所で俺と悠介はとんでもないものを発見することになります。 なんと……空界の癒しの大樹によく似た枯れ木です。 本当に、ほ〜〜んの微量だけど“マナ”を放っていたからこそ気づけたものです。 “自然の声”が聞ける悠介にしてみれば、 実際に“助けてくれ”という悲痛な声が聞こえたために気づいたらしいけど。 ……ともあれこういったものを見過ごす悠介ではありません。 早速ニンフとスッピーを召喚すると、大樹を癒していきました。 元から人工物が少ない場所だったため、 世界自体が案外パパッと綺麗になってくれました。 ……そう。あんなにも禍々しかった狭界はその日、 美しく生まれ変わることが出来たのです。本当です。 ───……でもそれで驚くのはまだ早かった……いや、早すぎたのです。 ある日僕は悠介とスッピーとガラハッドのおっちゃんと、 さらに紫さん(紫竜王)とリヴァっちが話し合ってるのを見たのです。 その内容は……あまり思い出したくありません。 でも実行されてしまったものは仕方が無く……白状します。 ……空界と狭界、融合しちゃった……。 ───……。 ゴォオオオオオ…… 彰利 「フ〜〜ア〜〜ムア〜〜〜〜〜イ!!!!」 というわけで、久しぶりにやりましたのフーアムアイ。 場所は巨人の里の近くの丘。 融合した空界はとんでもなく広いです。今までの地図が全部無意味なほど。 元々地形が変わったりすると上書きされたりする地図だったけど、 今回ばっかりはそう巧くはいってくれませんでした。 えーとつまりええと……ハイ、まだ混乱してます僕。 彰利 「はぁ……スッピーもよくよくやるよね……。なにもまた融合せんでも……」 現在、スッピーは力の使いすぎで休養中。 空界のマナと狭界の復活したマナ両方を足しての融合だったが、 それでもやっぱり辛かったみたいです。 それにしても表裏世界の融合ね……まるでファイナルファンタジー5だね。 彰利 「はぁ〜〜〜あああ……」 丘の上で深呼吸をひとつ。 そうしてみて、もう一度振り返ってみます。 今俺が何故こげなとこに居るのか。 それは───暇だから。 そして悠介が今何処でなにをやってるのか。 ……世界をジハードさんと飛び回り、事細かに地図を描いています。 描くといってもイメージに溜めて、地図として出すんだからステキである。 こう……羊皮紙を手に持って世界を周ってさ、羊皮紙にイメージを転写するんです。 するとその地域の分だけ地図が出来上がって、 各所に行くたびに完璧な地図が出来上がってゆくんです。 ついさっきここに悠介が来て、今現在の地図の出来栄えを見せてもらいましたが これがなかなかどうして、かなりの出来だったわけですよ。 雰囲気出てるっつーのか、詳細部分まで事細かに。 あ、それというのもね? その場所に指先で触れると、その場所についての詳細が現れるように出来てあんのです。 私はあまりの出来事に大変驚きました。 でも理力を使えばこそのものです。 僕では真似出来そうにありませんでした。 とまあそんなわけだが、見せてもらった地図の中に妙な建物があったのです。 “学校”とありましたが、何故かモンスターや妖精が通ってたりするらしいんです。 モンスターといっても凶暴なわけではなく、 みさおさんが操ってた時のように、結構やさしい目をしてるんだとか。 みさおさんが操ったやつがそのまま心優しきモンスターに変わったか、 それとも世界が変わってゆくように、 モンスターの中にも変わり者が出てきたのかもしれません。 FF11のゴブリンだって街に居て商売をするほどですから。関係ないけど。 気になるのは校長がオウファに似ていたらしいこと。 けど、もしそうだとしたらとっととレファルドに乗り込んでいるだろうとのことで、 似た人間だということに落ち着いた。 そりゃそうだ、あの自意識過剰馬鹿に校長が務まる筈が無い。 第一イクスキィ蒼山から落下したのだ、 生きてたとしても何処かで野垂れ死んでることだろう。 彰利 「退屈だぞ〜〜〜」 とまあ振り返り終わった僕は暇を持て余しております。 修行すればいい、と悠介に言われたが……実は今、修行し終わって退屈してたところです。 俺はもう悟ったのだ。 力ばかり吸収していても、使いこなせんようでは意味が無いと。 だから自主的に修行を始めるようになったし、着々と実力はついてってると思う。 ……それでも悠介と組み手やった時、ボロクソに負けたけどね。 あの人トンデモナイですマジで。 一度遊び半分で黄竜剣当ててみてくれーって言ったんだけど、本気で死ぬかと思いました。 キングベヒーモスが両断されるわけです。思わず納得してしまったほどでした。 ……あ、ちなみに。 それぞれ東西南北を縄張りとしていた竜王たちですが、 このたび世界の融合とともに付属品として付いてきた紫竜族は、 世界の中心を守る竜王として認定されました。 竜王の皆様は口を揃えて『皇竜王が就くべきだ』と言いましたが、悠介はそれを却下。 紫竜族に世界の中心を任せたのでした。 それで自分は地図作り……いやはや、威厳があるのか無いのか。 ともあれ俺達は平和な時間を生きている。 突然現れた新たな竜族や巨人族に驚く人々はもちろん居たが、 世界が融合し、未知の部分が広まったことで喜ぶ魔導術師や研究者は大勢居た。 ここ数日は騒ぎばかりで大変だったけど、普通に考えてみれば世界が広がっただけのこと。 モンスターが増えたわけでも暮らし方が変わったわけでもない。 そんなことに気づいたからか、いつしか騒動も治まり……今に至る。 彰利 「………」 それとは関係無いが、狭界での戦いが終わったのちに悠介は黒竜珠からジハードを出し、 手にあった黒竜珠を返却しようとした。 だがそれは受け取られず、ジハードはただこう言った。 “それは皇竜王にしか似合わないものだ”と。 ようするに拒否された。 でも“空界”が悠介を真の皇竜王と認めてしまったのだからそれは仕方が無い。 竜族たちはレヴァルグリードを越えた悠介をレヴァルグリードの二代目と見ることをやめ、 新たな名で呼ぼうと決めた。 いろいろな名が飛び交い、竜族語で“希望”の意味を込めた名前だとか、 “王”の意味を込めた名前だとかがいろいろ上がったのだが─── 結局は、名前を決めるまでは引かないという竜族全体の意見に圧し負けた悠介が呟いた。 ……そうしてついた名が“ルドラ”。 ルドラ=ロヴァンシュフォルスである。 今では竜族からは王やらルドラやらと呼ばれている彼だが、 俺達は当然、悠介だの晦だのと呼んでいる。 一度『皇竜王ロヴァンシュフォルス』と呼んでみたが、 『お前までやめてくれ!』と真剣に拒否願いを出された。 ……あ、今さらだけどね? この融合世界の名前、結局は“空界”ってことになりましたので。 彰利 「はぁ……まいったなぁ……いや、弱ったなぁ……」 さて、退屈な筈の僕が何故こんなに唸っているのか。 それは僕の力に問題があった故なのです。 ある日のことですが、僕の目の前に彼が現れたんです。 シェイド=エリウルヒド───またの名をウィルヴス=ブラッドリア。 彼は僕を見つめてこう言ったのです。  『───キミ、僕より強いから死神王の名、受け継いで』 ……と。 当然もう吃驚仰天です。 なんでも死神王になる条件は鎌を数本持つことらしく、 シェイドよりも遥かに多く、さらに卍解にまで至ってしまった僕は死神王に認定。 こうして僕は名実ともに死神王の名を受け継ぎ…… 全ての死神の王様となってしまったのです。本当です。 そうして、あまりに突然のことに驚く僕を余所に、彼は息を吐きながら言いました。  『それじゃあ事務的な仕事の全般、よろしくね?』 と。 もちろん僕は彼の肩を叩いて言い返しました。  『王様命令だ!貴様がやりなさい!』 と。 その時の彼の絶望を含んだ顔は、今でも忘れることが出来ません。 散々文句を言われましたが、そこんところは無理矢理通しました。 まあでも死神王の名を継いだことで冥界の門を開けるようになりました。 いつでも冥界に行けるようになったわけです。 ……死神の仕事なんてやりませんがね。 ───さて、そんなことから約一週間。 地界ではまだだが、空界では秋も終わろうかという時。 中井出「第四回原中恒例、上映会を終了する!ヒヨッ子ども!存分に驚愕出来たか!」 総員 『提督が魔導術師になってたことが一番驚きだったわ!!』 大体のコトが済んだ今現在、俺達は原中恒例の上映会を空中庭園にて行い終えていた。 当然、行い終えてみれば皆様の反応は予想通りだったわけだけど。 丘野 「まあでも、狭界と空界の世界大戦も何気なく堪能させてもらった。     “超究武神覇斬ver.5”みたいなラストも面白かったし」 中村 「アドバントチルドレンだな?あれもなんでver.5なんだろうなぁ」 殊戸瀬「他にいくつか案が出たけど、     五番目が一番しっくりきた、とかそういう話らしいけど」 総員 『なるほど』 丘野 「つーかさすが提督だ。エロビデオのために魔導術師になるとは」 中井出「儚い夢だったがな……」 藍田 「うわっ!すげぇ悟った人の顔!!」 悠介 「……そもそもさ。なんでお前ら絶対に全員で来るんだよ……」 総員 『面白いからだ!!』 即答でした。 悠介 「桐生センセ……あんたも結局皆勤賞だよな……」 桐生 「わ、わたしは真穂の保護者として来てるだけだよ?」 彰利 「ウソくせ〜、な〜〜んかウソくせ〜〜」 桐生 「アキちゃん!」 彰利 「なんじゃいおりゃ〜〜〜っ!!!」 ズパァアーーーーーンッ!!!! 彰利 「ぶべぇえええーーーーーーーっ!!!!」 桐生 「アキちゃん!名前を呼ばれたって自覚したら真面目に対応しないとダメでしょ!」 彰利 「ほがががが……」 振り向きザマだったもんだからクリティカルに……。 つーか返事するときに『なんじゃいおりゃ〜』って言うと絶対叩かれてるよね、俺。 丘野 「けどさ、あの逝屠ってやつってホントしつっこいよなぁ。     なんのために生まれて何をして喜ぶんだか」 彰利 「答えられ〜なーいーなんてー♪」 中井出「そ〜んなのーはーい〜やだぁ♪」 中村 「今をっ生きるっこーとーでー♪」 藍田 「熱いっ心っ燃ーえーるー♪」 総員 『お前が熱く燃やすのは“愛だけ”だろうがオリバ』 藍田 「歌の最中にツッコむなよ!文句ならアンパンマンに言え!!」 でも平和です。 いや、やっぱり原中の猛者どもと一緒に居ると落ち着きますなぁ。 中村 「まあオリバはほっといてと。     結局のところ、弦月がナスにされたのってプラスになったわけだよな」 彰利 「死にまくったけどね。     確かに努力することの喜びを得ることができたのですから。ツヤツヤにならずに」 麻衣香「でもさ、空界と狭界……だっけ?それが融合しちゃったってことは、     また何かのきっかけで思念が漏れ出したりすることがあるってことなのかな」 悠介 「いや、それはない。     映像には映さなかったけど、俺と彰利とでそのへんの調査はしてある」 彰利 「そゆこと。もともと狭界の次元の壁が弱かったのはね、     空界と狭界が分離したきっかけになった     レヴァルグリードとアハツィオンとの攻撃によって発生した衝撃が、     表世界である空界よりもその場である狭界の方が高かったからでしてね?     ようするに衝撃が大きかった分、狭界に小さな歪が出来てしまったわけです」 夏子 「そうだったんだ……って、似たようなこと言ってたね、確かに」 彰利 「そうでしょう?でももう大丈夫じゃよ。     表裏世界を一体化させることで、より強固に安定させたらしいから。     その所為でスッピーは未だダウン中だけど、どうせすぐに直るさね」 真穂 「ホントなの?晦くん」 悠介 「ああ。この世界にはマナを発生させる癒しの大樹が二本もある。     加えて俺からの諸力の汲々もあるし、かなり早くに復活すると思う。     ……まあ、汲々なんて言えば聞こえはいいけど、     言っちまえば復活するために物凄い勢いで吸収してるんだが」 は〜ぁ、と溜め息をつく僕の親友。 やっぱりいつでも何処でも心労絶えない男……それが僕の親友です。 それでこそっていうかなんていうか。 だって考えてもみてください。 日に一度は溜め息吐いてるような彼が、 一年間満面の笑みで生きている場面が想像できるでしょうかよし無理だ。 (べつに一年間という期間に意味があるわけではありませんよ?) 彰利 「まあそげなわけで……粉雪」 粉雪 「えっ……な、なに?」 彰利 「見ての通り、全部終わった。結婚……しよっか?」 粉雪 「ぇ───ぁ、ぅぁっ……!?     ば、ばかぁっ!!もうちょっとムードってもの考えてよ!!」 彰利 「馬鹿とはなんだコノヤロウ!!つーかムードってなに!?一度訊いてみたかった!     そもそもおなごどもってムードがどうとか言うけど、     そのムードって本気でなに!?オイラ解らねぇよ!!」 悠介 「あ……俺も」 中村 「俺もだ」 島田 「わいも」 田辺 「おいどんも」 藍田 「あちきも」 丘野 「やきいも」 麻衣香「ムード……気分、情調、雰囲気。     この場合で言うムードは『雰囲気』を意味するものね」 彰利 「だったら雰囲気を考えろと最初からお言いなさい失礼な!!     わざと妙な言葉を使って俺を混乱させよーって気かてめぇ!!」 悠介 「落ち着け。また喧嘩でも始める気かお前は。キリが無いからやめてくれ」 彰利 「ほっといとくれ!これは僕らの問題だぞ!?」 悠介 「毎度人のところに泣きついてくるヤツが一端の言葉使うなたわけっ!!」 彰利 「ご、ごめんなさい」 怒られてしまった……しかも正論だから言い返せやしねぇ。 夏子 「でも確かにね。いくら気心知れたクラスメイツたちとはいえ、     こんな大勢の中で結婚しようって言われたって素直に喜べないよ」 彰利 「そうですか?」 夏子 「うん。だって喜んで抱き合ったりしたら絶対からかうでしょ。     ぶっちゅ、ぶっちゅとか」 彰利 「粉雪さんごめんなさい、俺の思慮が足りなさすぎました」 中井出「……まったく否定しなかったぞこいつめ」 悠介 「主に自分がやりそうなことだから余計だったってことだろ」 中井出「なるほど。で───お前はどうするんだ晦。やっぱ一緒に結婚するのか?」 悠介 「ああ。仲人はお前に任せる」 中井出「そっかなにぃ!!?」 彰利 「納得した途端に疑問か。器用なやっちゃのう」 中井出「やかましっ!!つーかおい!俺なんかに仲人が出来るわけが───」 彰利 「てーいーとく!てーいーとく!!」 総員 『提督!提督!!提督!提督!!』 中井出「う……や、やらないぞ!?俺は本当に嫌だからな!?」 総員 『エッロマッニアッ!!エッロマッニアッ!!』 中井出「なっ───ちょ、待て!!なにこの歓声!!     そんな歓声聞いて誰がやる気になるんだよ!!     提督コールのほうがまだ良かったよ!!     そこ!リズム取るな!───ウェーブするな!踊りもするなぁっ!!」 彰利 「やる気になったろ?」 中井出「ならねぇよ!!」 もっともだった。 彰利 「というわけで中井出はダメらしい」 悠介 「そうか……中井出はダメか……」 藍田 「中井出だもんな……ダメだよ」 中村 「ダメなんだよ、中井出は」 中井出「だから待てっつの!それって俺が仲人やるのをダメだって言ってるんじゃなくて、     中井出博光という俺自身がダメ人間だって言ってるように聞こえるだろ!!」 真穂 「……大衆の面前で堂々とエッチなビデオを見れる人の何処が正常人間なの?」 総員 『うわ痛ッ!!』 中井出「………………」 悲しい風が吹きました。 おなごに言われたよ……しかもアイドル的存在だったおなごに。 男に同じ言葉を言われるより数倍こたえますよこりゃあ……。 彰利 「あ、いやその……な?気にするなよ中井出」 藍田 「そ、そうだよそう、生きてりゃいろいろあるって」 中井出「たとえばクラスメイトに人格疑われるのが常になるとかか……?」 中村 「ばっ───ばか!!自分で自分を苛めるなよ!!もう許してやれ!な!?     じゃないと俺達のほうが泣けてくる!!」 中井出「今にして思う……。     なんで俺は、エロビデオなんかにあんなに熱を上げてたのだろう……」 麻衣香「中井出くんから───あ、ちょ、丘野くん?」 何かを言おうとした綾瀬麻衣香さんを制し、ズイと前に出たのは丘野くん。 原中メンバーにしては珍しく、なかなか思いやりの心を持っている男である。 ノリのためならいろいろ言うが普段はやさしく、 捨て犬を見つけたら飼い主が見つかるまで走り回ってしまうくらいのやさしい男です。 そんな彼が彼女を制し、小さく息を吸ってから言いました。 丘野 「お前から人物特性“エロビデオ好き”を取ったら何も残らんだろ」 中井出「………」 それはきっと綾瀬麻衣香さんが言おうとした言葉。 だが丘野くんは知っていたのだ。 それを、クラスメイツとはいえ“女性”に言われることは男としての屈辱だと。 だからこそ彼は心を鬼にして唱えました。 おなごが唱えれば“ザラキ”な言葉も、 男が唱えればきっと“ザキ”程度にはなってくれる筈なんです。 そして男には最大の武器……“不器用だけど仲間思い”というものがある。 中井出は彼の心の鬼を受け止め、小さく涙をこぼして彼に感謝しました。 男衆 『友情だ……』 麻衣香「……なんなのコレ」 夏子 「女の子には解らないってことじゃない?」 男は男との友情を大事にします。 友情を愛情より友情を選ぼうとした心の友を自ら突き放し、時には自分が悪になり─── そして時には、フラレた友のヤケ食いに付き合ったり……そして確認するのだ。 ああ、俺達友情やってんなぁと。 平気で友を裏切りおなごに走るヤツなど男ではない。 そのまま永劫に帰ってくんな馬鹿者めが。 裏切りが平気じゃないから男なんだ。友情なんだ。 それが解らないなら───性別変えてしまえ!!お前なんかスパイだスパイ!!(誰?) 彰利 「まあそんなわけで。     男衆の心意気が一体となった今、結婚式の日付を決めたいと思います」 男衆 『ウオオオーーーーッ!!!!』 僕の言葉に男衆が感涙を流しながら叫びます。 握り拳を天に突き上げるのは基本です。というかもう仕様の域です。 彰利 「結婚式は明後日とします。仕事がどうしても抜けられない、     または大学が忙しいなどの人は無理には呼びません。     そんな薄情者のクズどもに送る招待状など無駄だから来るな。     原中の乱世に生きたのなら仕事や学校よりクラスメイツを優先するべし」 中村 「馬鹿野郎っ!上司を質に入れてでも来るわっ!!」 丘野 「俺もだ。中華屋の仕事あるけど、どうにか言って通させてもらうわ。     さすがに結婚式があるって言やぁ納得してくれるだろ」 藍田 「もちろん俺も来るぞ。お前らのことだ、墓に入るまで離婚なんてしないだろうし。     当日は思いっきり祝福してやっからさ。思いっきり幸せになれよ」 島田 「だな。最近の若者ときたら、結婚したらすぐ離婚ばぁ〜っかだ。     なんのために結婚してんだキサマと何度思ったことか。     祝ってくれたヤツに申し訳ないとか───思ったりはしただろうな、一応」 灯村 「それで思わなかったら最低だろ、人として」 中井出「その点で言うと、     お前らって大人の汚い部分ばっか見て育ったから安心な気がする」 悠介 「ああ。俺はあんな大人にはならんぞ」 中村 「思いっきり誓ってたからな。うん、その気持ちは解る」 それはもちろんでござるよ薫殿。 でもそれはそれとして、俺はちょほいと気になってることがあったんですよね。 丁度いいし、訊いてみよかー。 彰利 「なぁ悠介?神社との縁を切った時さ、     若葉ちゃんたちとの兄妹の縁も切るって言ってたよね?あれって本気の本気?」 悠介 「本気だ。けど守るって意味は消えない。     縁は切ったけど『守りたい』って思ってるのは変わらないからな」 彰利 「あ……そう来ましたか。でもなんか納得した。お前らしいわそういうの」 悠介 「そいつぁ〜どうも。で?明後日にしたからには明日なにかする気なんだろ?」 彰利 「今日はもう遅いし、ホレ───やることあるっしょ?     俺とキミは狭界での戦いが終わったらどんなことをしようって約束してました?」 悠介 「ゼットとセシルが幸せになれる時間軸を作ろうって言ってた」 彰利 「言ってませんよそんなこと!!なんで敵さんの幸せを願わなならんねや!!」 悠介 「『現代』でのゼットが敵だったとしても、過去のゼットは敵じゃない。     そう言いたかったんだけどな」 彰利 「ダメ!ダメねダメダメ!ノーノーノー!!あたしゃゴメンだよ!!     なぁんであんな悪ガキなんかの未来を築かなきゃならないんだい!!」 中井出「……なんで豪気なオバサマ語なんだ?」 中村 「ひとえに弦月だからだろ」 総員 『なるほど』 彰利 「妙なことで納得せんといてや!!つーかそれよりも!キミはどうかしてる!!     ミルハザードがいろいろと苦労してきたのは俺も知ってるよ!?     でもそやつのために明るい未来を紡ぐのはいかがなものか!?     俺は散々親友をボロボロにしやがったあいつを、存在自体から許せん!!」 悠介 「それはセシルを生贄にされた所為で狂ったゼットだろ。いいんじゃないか?     前にお前が言ってた通り、ひとつくらい明るい未来があってもいいと思う」 彰利 「グ、グウウ〜〜〜ッ……」 中井出「ロビンの真似か?」 彰利 「違いますわい!!───ああもう!     キミがここまでお人好しだとは思わんかったわ!!」 真穂 「そんな晦くんだからこそ親友になったんでしょ?」 彰利 「真穂さん……それを言っちゃあオシマイだぜ……」 そうですよ、ええどうせそうですよ。 しゃあないじゃん、悠介ほど重くない友などはそう居ないもの。 遠慮なく付き合えて、殴る時には殴る存在なんて滅多に居ません。 彰利 「でもねぇキミ……ほんにお人好しすぎませんか?     ホレ、俺達じゃなくても、別の時間軸の俺達がやったかもしれんじゃん?     考えてもごらん?ゼットを庇うってこたぁ、竜族と戦うってことだよ?     キミはそれでいいとでも言うのかね?」 悠介 「ん?いいぞ?殺しに行くんじゃないんだ、なんとかするさ」 彰利 「………」 神様よ、説得は無駄なようでした。 彰利 「ああもう解ったよ!!今日中にそれ終わらせて明日花見!     そんでもって明後日が結婚式!それでいいんだろ!?     誰だよもう!狭界の戦いが最後だなんて言ったの!」 悠介 「腐るなよ、いいじゃないか」 彰利 「とにかく!これが最後の『後悔の旅』ですよ!?     あとで後悔なんぞ腐るほど出てくるだろうけど、ともかくこれが最後!OK!?」 悠介 「ああ。というより、お前が行かないなら俺だけで行くつもりだった」 彰利 「なんと!?キミ次元関係出来ないのにどうやって!?」 悠介 「……ん」 質問に対して悠介氏は自分の前髪をとけて、額を見せてきました。 するとそこに……というか首にも、見慣れぬ輪っかがあったのです。 ナニコレ───……って─── 彰利 「……あの。悠介さん?あなたってばもしかして───」 悠介 「映像からは省かせてもらったけど、“時”の精霊と“元素”の精霊と契約した。     マナの枯渇の所為で出て来れなかったみたいだけど、     元々は狭界に存在した精霊だったんだそうだ。     地図作成してる時にいろいろな場所で洞窟見つけたんだけどな?     その中の海底大神殿に時の精霊ノイズ=ニーミッド、     復活したマナの樹に元素の精霊オリジンが居た」 彰利 「……時がゼクンドゥスで、元素がマクスウェルじゃないの?」 悠介 「そりゃゲームの話だろうが」 確かに。 でも氷の精霊は是非ともおなごで、名前はセルシウスであることを願う。 俺、あの精霊好きなんだよね。 麻衣香「あ、質問。“オリジン”って“根源”って意味でしょ?     それがどうして“元素”の精霊になるの?」 悠介 「元素っていうのは“これ以上分解出来ない物質”のことだろ?     逆を辿れば物質の大元、つまり“根源”を担ってるのは“元素”であるわけだ。     だからオリジンなんだってさ。俺も同じこと訊いて説明された」 麻衣香「あ……なるほど」 真穂 「あ、わたしも質問。時の精霊さんの名前、どうして空界人みたいな名前なの?」 悠介 「……時の精霊には名前が無かったから俺が適当につけた」 殊戸瀬「適当、じゃないでしょ。“時”とかけて“次元”って読んで、     さらに英文化してディメンション……DIMENSIONね。     それを分割して逆さ読みしてみると───」 真穂 「あ……ほんとだ、ノイズ=ニーミッドって読めなくもない」 彰利 「どらどら?……おお」 普段は目立たないが用意周到だと噂の殊戸瀬睦月が地面に文字を描く。 と───DIMENSIONの文字がNOIS=NEMIDと分けられていた。 総員 『うわぁ単純……』 悠介 「や、やかましいっ!!どうせ名付けの良し悪しなんて持ち合わせてないわっ!!」 中井出「それにしたって晦……ディメンションの逆さ読みは無いだろ……」 しみじみと言うのは中井出。 それにはさすがのオイラも頷きました。 真穂 「んー……この場合、     下手に捻るよりもSIONの部分を取ってシオンの方がいいと思うな」 彰利 「親の影響受けたりしたらカットカット言いそうな名前だね」 真穂 「?なにそれ」 彰利 「いえべつに。それよりも性別は?」 悠介 「オリジンともども男だ」 彰利 「ナルホロ。じゃあもっと雄々しい名前の方がよいでしょう。顔は?ゴツイ?」 悠介 「……出てきてくれ、ノイズ」 質問攻めに溜め息を吐いた彼は、輪っかから精霊を出しました。 全員その姿に釘付けであり、さらにこう叫ばざるをえなかったのです。 時の精霊『何用だ、主よ……』 総員  『ダッ……ダオスさまだぁああーーーーっ!!!!』 さらに声を聞いた僕らは───そう、叫ぶしかなかったのです。 だってその声は塩沢兼人氏の声そっくりで、さらに容姿はダオスさま。 もちろん名前はあっさり決定、見事ゼクンドゥスになりました。 呼び名は略してゼクス。うん、ステキな感じです。 彰利 「オリジンは!?やっぱ金髪で黒服、さらに両手に槍みたいなの装備してんの!?     それともマクスウェルみたいにモレキュラーアタックを駆使する爺さん!?」 悠介 「……オリジン」 オイラの怒涛の質問ラッシュに頭を痛めた彼は、オリジンまでもを呼び出します。 すると───確かに金髪で黒服だけど、どこか大人しそうな男が降り立ちました。 彰利  「コレが……オリジン?」 悠介  「ああ。元素、根源を司る狭界の精霊だ。      マナの枯渇の影響を一番身に受けた所為で、まだ完全には回復してないんだ。      だから復活の手伝いをするために契約した。      同調も済んだし、時の諸力も元素の諸力も湧き上がってきてる。      ノートと同じで、回復までにはそう時間はかからないと思う」 彰利  「おお……そか。そりゃよかった。でー……オリジン殿?ちょいと喋ってみて?」 オリジン『………』 彰利  「……無口な精霊ですね?シャイなの?」 悠介  「いや、それがな……マナを枯渇させる原因となったのは“思念”らしくてさ。      さらに思念ってのは人間から流れたものだろ?だから……」 真穂  「あ……もしかして人を嫌ってる、とか?」 悠介  「そういうこと。俺は……まあその……なんだ」 彰利  「……“人”として見られなかったんだろ?解るから無理に言わんでいいよ……」 悠介  「いや……いいんだけどな……」 中井出 「だがゼクスは間違い無く塩沢さんボイスだからナイスだった。      声が聞こえんのは残念だけど、      テイルズオブシンフォニアのオリジンみたいな声は勘弁だな」 中村  「あ、同感」 島田  「俺も」 藍田  「わいも」 丘野  「あちきも」 灯村  「それがしも」 田辺  「おいどんも」 彰利  「やきいも」 悠介  「だから……どうしてパイロットウィングスしか持ってないのに      そういうことには詳しいんだよお前は」 彰利  「ピエロだからさーーーーーっ!!!!!」 悠介  「それはもういい」 あっさり言い捨てられました。 けどまあアレだ、目的忘れちゃいけないよね。 彰利 「で、話は戻るけど……ゼクスの能力で次元干渉が可能になったと?」 悠介 「ああ。知っての通り、諸力を別の諸力と合わせることで魔法は完成する。     だから時の諸力が随分と満たされた時点で、時空魔法は完成した」 彰利 「わあ……なんか俺、     キミを空界と狭界におけるエレメンタルマスターにしたくなってきた」 そうすれば本気で完璧超人になってくれそうです。 悠介 「いや……実はもうなってる」 彰利 「へ?ア、アアーーーーーッ!!!」 今まで気づかなかったけど、悠介の左右の腕にそれぞれ一個ずつ輪っかがあります! しかも感じるマナは───やはり精霊のもの!? 悠介 「氷の精霊セルシウスに、死の精霊イドだ。出てきてくれ」 彰利 「なんと!?」 セルシウスとな!?しかも氷の精霊!ア、アイラブジャパン!!(混乱中) ともかく手首の腕輪から出てきた存在は、赤っぽい服に身を包んだ男と、 青色の髪をサラッと流した綺麗なねーちゃん。 ……つーか、なんだか見覚えがあるような無いような……。 彰利 「……なぁ。これって───」 悠介 「彰利、ちょっといいか?」 彰利 「……んむ。実は俺も訊きたかったことがある」 俺と悠介はコクリと頷き合うと、 精霊に釘付けの原中の猛者どもから離れ、話をすることにした。 ───……。 ……。 彰利 「……そか。やっぱり」 悠介 「黙ってたのは悪かった。けど───」 彰利 「ああいいって、急がなきゃヤバかったんだろ?     それに納得してたんならそれでええやん」 悠介 「……悪い。そう言ってもらえると助かる」 彰利 「いやいやなんのなんの。で───どうする?ほんとにええんか?」 悠介 「ああ、やってくれ」 頷く悠介の意思は硬いようで、何を言っても無駄なように思えた。 だったら───うん、いいんだろうな。 俺だって多くの人には覚えててほしいとは思う。 彰利 「じゃ、戻ろか〜。じっくり上映するから、覚悟しとき」 悠介 「……ああ」 再び頷く悠介とともに、未だ騒ぎ続けてる原中の猛者どもが居る場所へと戻った。 そして説明もそこそこに上映する。 先ほどの上映では映されなかった、悠介がこの世界でしてきたことの数々を。 Next Menu back