───校務仮面日記───
【ケース73:校務仮面二号/勇者と魔法使いに憧れた彼と彼女の先】 ……そして、数年の月日が流れ─── ゼット「じゃあ、行ってくる」 セシル「いってきます」 真似事の魔法が魔術に変わり、真似事の剣術がカタチを作ってきた頃。 ゼットとセシルは王国から、前線で戦うための訓練を受ける命令を出された。 どこからかふたりの実力が漏れ、王国がそれを力として使おうと頷いたんだろう。 当然俺達はそれを見送ったのちに後を追い、ただいま校務仮面として城に潜伏している。 一号 「見える……全てが」 一号……彰利はガサガサと創造した紙袋を揺らし、 その横に居る俺はゼットの鍛錬を暖かく見守っていた。 ……ちなみに言うと、一号が見ているのはセシルが居る場所。 元々魔導術の素質があったセシルはどんどん実力をつけていき、 ゼットもそれに負けないように強くなっていった。 そして─── ゼット「なぁセシル。セシルはどうして俺のところに遊びに来るんだ?     セシルにも魔導の勉強があるだろ?」 セシル「うん?いいんだよ、適当で。     わたしが欲しいのは争いの力じゃなくて、……えと、人を救うための力だから」 いつか見た過去の夢が、目の前で展開されてた。 ゼットが俺に見せた過去の夢……それは、本当に何気ない日常の一角だ。 ゼット「それじゃあ、今日は攻撃魔術の練習だったわけだ」 セシル「……ん。だからね、抜け出してきちゃった。     あんなことしてるよりゼットくんと一緒に居た方が───あ、あぅ」 ゼット「……?俺と一緒に居た方が……なに?」 セシル「や、あゎぅ……な、ななななんでもないよっ、うんっ」 ゼット「………」 子供の頃はセシルのことが気にかかってしょうがなかったゼットも、 日々鍛錬に打ち込むなかで大人になり─── 今では逆に、セシルの方がゼットが気になってしょうがないような状況が出来ていた。 ゼット「ん……なぁセシル」 セシル「は、はいーーーっ!!」 ゼット「うわっ!?ば、ばかっ!そんな大声出したら見つかるだろうがっ……!」 セシル「は、はぅっ……!!ご、ごめんねゼットくん……!     うぅ……やっぱりわたしってばかだぁ……」 そう思うと、この光景はなんて平和なんだろうって思えた。 このままなにも起こらず、普通に生きていられたならきっと幸せだったろうに。 ゼット「……ん。じゃあ俺、稽古に戻るから。セシルもほどほどにしとけよ」 セシル「えっ?あ───あぅう……」 それでも争いの無い世界なんて無いのだ。 違う意思があるのならぶつかるし、喧嘩だって殺し合いだってする。 特にこの世界はまだ、癒しが復活したというだけで荒れたままなのだ。 それが解決するまではずっと戦いが続いて、大切な誰かを失ってしまう時が必ず訪れる。 そうならないためにも俺達はここに立っている筈で─── 今の俺達ならば、きっとそれが出来る……そう思った。 ───……。 ……。 そして、運命の分岐点─── 魔導術師「ねぇセシル?あなた……召喚術を行使してみない?」 セシル 「え……?しょうかん……?」 召喚術の意味も知らないセシルに近づく者が居た。 一緒に魔術の練習をし、いつもセシルの魔力に嫉妬していた女だ。 が─── 二号 「校務材木スピン!」 カゴスッ!! 魔導術師「ほきゃあっ!!?」 長い角材が振り向きザマの勢いをその身に宿して魔導術師の頭にヒットする。 当然魔導術師は頭を押さえてカカカカカ……と唸りつつしゃがみこんだ。 二号  「おっと失礼、校務仮面だから校務に努めようと思っていたんだが、      誰かに呼ばれた気がして振り向いたらキミの頭が。大丈夫か」 魔導術師「だっ……大丈夫、な、わけっ……!!なんなのアナタは!!」 二号  「校務仮面だ。見ろ、この額の“校務”の文字を。      俺は校務仮面であり、それ以上でもそれ以下でもない」 魔導術師「ふざけないで!!その妙な被り物を外して顔を見せなさい!!」 二号  「いかん!!校務仮面の素顔は絶対に秘密なのだ!!」 紙袋に掴みかかろうとする魔導術師からバックステップで逃げる。 と、その時。 一号 「校務まきびし!!」 ジャララララグサァッ!! 魔導術師「ほぎゃああああーーーーーっ!!!!」 俺を追おうとした魔導術師の足に一号が放った黒まきびしが炸裂。 一号  「ややっ!?これはどうしたことか!      演習のために撒いたまきびしが誰ともとらぬお嬢さんに!!」 魔導術師「っ……同じようなヤツが……!?誰よあなた……!!」 一号  「……校務仮面だが?」 何を言ってるんだこいつは……と言わんばかりに肩をすくめる一号。 まったくだ、校務仮面が校務仮面じゃなかったらなんだというんだ。 魔導術師「偉ぶる前にその妙な被りものを取ったらどう……?」 一号  「いかん!校務仮面の素顔は絶対に秘密なのだ!!」 魔導術師「………」 あ、頭抱えた。 一号  「そんなわけで、自分でやろうと思わないものを人に押し付けるのはやめるんだ」 魔導術師「───!な、なんのこと!?」 二号  「召喚術のことだ。      他の誰の目を誤魔化せようが、この校務仮面の目は誤魔化せんぞ」 セシル 「……?あの、召喚術っていうのを使うとどうなるんですか……?」 二号  「この場に幻獣っていう存在が現れて、ゼットが食われる」 セシル 「───!!」 一号  「ちなみにお嬢さん、あなたは真っ先に食われるから馬鹿なことはやめなさい」 魔導術師「なっ……そ、そんなことはやってみなければ解らないわ!      成功するわよ、だってセシルは天才だもの、出来ないことなんてないわ」 一号  「オイオイ嫉妬かよ……醜いねぇ」 魔導術師「う、うるさいっ!!召喚が成功すれば人間は有利になるのよ!?      そうなれば召喚したセシルは英雄になれるの!ならいいじゃない!!」 二号  「や、だからな?召喚したらお前も食われるんだって」 魔導術師「どうなるかなんて解るわけがないじゃない!大体成功するかも解らないのに!」 一号  「失敗で力が暴走することを望んでいたと?」 魔導術師「うっ……ぐ……」 図星か……最低だなこいつ。 そんなに召喚が見たいなら─── 二号 「出てきてくれ」 ───全ての召喚獣を見せてやる。  キィンッ───ドドドドドンッ!!! 魔導術師「ひっ……!?」 グリフォン、ベヒーモス、リヴァイアサン、 ゾーンイーター、ゼプシオンが、魔導術師を囲むように出現する。 フェンリルは以前言ったように セルシウスが契約しているため、俺の意思では召喚出来ない。 もちろん召喚術が公に広まっていないこの時代の魔導術師は、突然の事態に驚くばかりだ。 魔導術師「え……あ……え……!?」 二号  「満足か?これが召喚術だ。満足したらとっとと失せろ」 魔導術師「あひっ───ひぁああああっ!!!!」 腰が抜けたのか、四つん這いに近い状態で走り去る魔導術師。 フードに隠れて顔は見れなかったが、 まあ……普通に妬みの心を持つヤツだってのはよく解った。 一方セシルは─── セシル「す……すごいです……これが召喚術……」 恐怖するどころか感心。 さすがみさおの前世だと、俺と彰利は顔を見合わせて語り合った。 セシル「あ、あのっ!わたしにもこういうことが出来るんですか!?」 二号 「これは校務仮面じゃなければ出来ないことだ。諦めろ」 セシル「うっ……そ、そうなんですか……?     だったらその校務仮面っていうのにはどうしたらなれるんですか?」 二号 「竜王を倒せるくらいの実力を得れば、自ずと心のゴッドから紙袋を進呈される」 一号 「ノリノリですな」 二号 「解るかね」 俺って変身願望でもあるんだろうか。 自分でも不思議だと思うくらい、 校務仮面の姿をしている時の自分は普段の自分から離れてる。 二号 「少なくとも今のキミの技量では無理だ。     いいか、徒になんでもやってみようと思うんじゃない。     特に召喚術はダメだ。キミがそれを行使しようとした場合、     ゼットが死ぬ可能性が高いんだ」 セシル「ゼットくんが……?どうして……」 二号 「それは校務仮面だけの秘密だ。だが疑うな、これは真実だ。     キミが少しでも信じてくれるよう、少しだけ話すが……     キミがもしここで、あの魔導術師が言ったように召喚術を行使すれば、     未完成の力で幻獣を操りきれず、     現れた幻獣は魔導術師を食い、さらにキミを襲う。     だがそんなキミを庇ったためにゼットは腕を噛まれ、     狭界という名の空界の裏世界へと引きずり込まれてしまうのだ」 セシル「そ、そんな……だってここにはゼットくんは居ないし───」 声  「セシルー!」 セシル「───!!」 否定しようとした途端、遠くから聞こえるゼットの声。 その声を聞いた途端にセシルの顔は蒼白になり、俺と一号を見つめた。 二号   「校務仮面はウソは言わない。なぜなら校務をする者だからだ。       校に務める者として、子供に悪い見本にならぬよう、       校務仮面はいつでも真面目に生きるのだ」 セシル  「…………あ、あの!あなたがたは一体───」 一号&二号『校務仮面だ』 セシル  「いえあの、そうじゃなくて。その被り物の下の顔は一体どんな……」 一号&二号『いかん!校務仮面の素顔は絶対に秘密なのだ!!』 セシル  「………」 うずり、とセシルの体がうずいた。 その様子はまるで、素早く動くものに狙いを定め、腰を振る仔猫のようだった。 グリフォン『……王?用が無いのなら呼ばないでほしいのだが』 二号   「あ、悪い。戻ってくれ」 俺の言葉にそれぞれが『しょうがないやつだ』って感じの笑みをこぼし、 俺の中へと戻ってゆく。 ───その時!! セシル「───はっ!!」 セシルが魔術行使をし、風を巻き起こす! 恐らく狙っているのは校務仮面だ───が!甘い!! 二号 「爽やかな風をプレゼントしよう」 俺はきゅっと固めた手の平を構え、体の捻りとともに一気に振るった。 すると、手の平から風が発生し、セシルの魔術を相殺した。 ……といっても、瞬時に分析して複製しただけなんだが。 セシル「え……あ……」 二号 「時間切れだ。ゼットが来たな」 ゼット「セシル?……って、誰、こいつら」 二号 「校務仮面だ」 一号 「ああそうさ校務仮面さ」 ゼット「………」 パパァン!パァンッ!! ゼット「ぉゎいってぇええっ!!」 紙袋へと手を伸ばしたゼットの手を凄まじい速さで三回叩く一号。 当然の対処。紙袋に触れるヤツは敵だ。 ……手を叩かれた際、何故ゼットが 『超サイヤ人4ゴジータに三発殴られた一星龍の声真似』をしていたのかは謎だが。 二号 「礼儀がなってないぞゼット。     校務仮面の生命とも言える校務仮面を触れようだなどと……恥を知れ」 ゼット「な、なんなんだよお前ら……」 二号 「校務仮面だ」 ゼット「じゃなくて!……ああもういい!セシルになにか用なのか!?」 二号 「ああ……実はな。もう少しでゼットが死ぬところだったんだ……!」 ゼット「なっ……大丈夫なのか俺!───訳わからねぇよ!!」 二号 「まったくだ!!」 一号 「二号は一度コワレると元に戻るまでが大変だからなぁ。     ま、とにかく。あまり無茶はせんように。校務仮面との約束だ」 ゼット「だから訳解らないって言ってるだろ!?無茶ってなんだよ!!」 二号 「む───一号!二時の方角にてモンスターの軍勢の動きを確認した!急ぐぞ!」 一号 「了解だ二号!!」 ゼット「へっ!?あ、こら待て!!待───」 ドシュゥウウウウウンッ!!!! ゼット「速ァアアアーーーーーーーーッ!!!?」 ゼットの声を無視してモンスターの軍勢の居る方向へと疾駆した。 さすがに空を飛ぶと怪しまれそうだからだ。 ───……。 ……。 ───一週間後。 兵士 「た、大変です国王!!城の外に───」 国王 「なんだ騒々しい……どうした」 兵士 「城の外に、……作物の列が……」 国王 「……?なにを言っていおわぁあーーーーーっ!!!!」 大臣 「これはどうしたことか……!何故作物が……!?」 オウサマの戯言が耳に届いた。 が、無視して畑と田圃を広げてゆく俺達。 二号 「豊作じゃーーーっ!!」 一号 「豊作じゃーーーっ!!」 三号 「豊作じゃーーーっ!!」 そして俺達の傍には新たな仲間、校務仮面三号の姿が。 過去の旅といえば、ということで、急遽次元干渉で転移させたみさおである。 実際転移させて事情を話すと怒ること怒ること。 どうしていろいろやってしまう前に呼んでくれなかったんですかとか、 どうして最初に誘ってくれなかったんですかとか、もう散々怒られた。 けど今はこうして一緒になって騒いでる。 既に未来の地界の記憶を元通りにしたことも伝えてあり、 その事実のお陰で機嫌を良くしたのは確かだ。 みさお自身、俺達が狭界のこととかでいろいろやってる間は未来の地界に居たらしい。 道理で姿が見えなかったわけだ、と俺と一号は頷いた。 けど、その割には記憶を元に戻しに行った時に姿を見なかったな……と思ったら、 その時には現代の地界に時空転移していたんだそうな。 二号 「なぁ三号。結局地界で何やってたんだ?」 三号 「はぁ、えっと……最初は空界で、     病気に関することを調べていたんですけど     当てにならない素人の生兵法ばっかりでして。     で、元が地界人なら地界の療法の方が効くんじゃないかと思って、     それで地界に行ったんです。     まず最初に未来の地界の方に胃炎の治し方を調べに行っていたんですけどね。     思いのほか時間がかかった上に、それらしい情報は得られず……     もしかしたらと思って戻った現代では、     晦家の人々に捕まって延々と“縁”がどうたらこうたらと言われて……」 二号 「えーと……すまん」 ようするにみさおは俺の胃炎を治そうと思って地界に行ってたわけだ。 空界の時間の流れは速い。 故に、みさおがちょっと地界に行ってる間にいろいろなことが終わってしまい、 戻ってきてみればいつの間にか悠黄奈は消えていて、世界は融合していて…… そりゃあ訳の解らないことだらけで怒りたくもなるだろう。 俺は本当に悪いことをしたと思い、三号の頭をわっしゃわっしゃと撫でた。 みさおは『あぅううう……』と唸ったが払おうともせず、 どちらかといえば擽ったそうな顔で笑っていた。 一号 「とに!かく!!人々の心が荒んでいるのは食う物に困っているからだ!!     ホラ、腹減ると怒りやすくなるじゃん?」 二号 「だからこうして腐るほど作物育ててるんだろ」 三号 「世界中の人々にも送れるくらい、たくさん作りましょう!」 三人 『ハワァアアアーーーーーーッ!!!!』 …………。 国王 「………」 兵士 「いかがいたしましょうか……」 国王 「よくは解らんが、あれは食料のようだ。奪え、ひとつ残らずだ」 兵士 「はっ!!」 ───……。 ……。 む〜〜〜〜ん……(擬音)瞬殺!! ともかく俺達は突然やってきた兵士どもを一瞬で気絶させると、 世紀末三兄弟の如く奇妙なポーズを取っていた。 バイクヘルメットなぞ無いので、そこは校務仮面で補った。 一号 「で……こいつらなんなの?」 二号 「国王の声が聞こえた。     どうやらこいつらはここの野菜と米、全部奪おうとしたみたいだ」 三号 「うわ……最低ですね、この国の王って……」 まったくだ。 有無も言わさず校務仮面を武器で脅すなど、礼儀を知らなすぎだ。 校務仮面は人々の味方だというのに。 一号 「でも……これでやること決まったな。     まずオウサマを説得するか脅すかして、竜族と和解しよう」 二号 「ああ。現代と同じで領土を決めれば竜族も文句は言わないと思う。     竜族の説得には俺が向かうから、オウサマの説得は一号に任せる。     三号はゼットとセシルを見守っておいてくれ。     なにかあったら月操力を解放して、気配で知らせてくれ」 一号 「三号、校務仮面の名に恥じぬ行動を取るんだぞ」 三号 「解ってます。成り切ってみると意外に楽しいことが判明しましたから」 三号がガササ……と頷く。 紙袋だから頭が動けば嫌でも鳴る音だ、仕方ない。 二号 「っと、忘れるところだった。一号と俺を繋ぐ意識の糸が出ます───弾けろ」 言った通りのものを創造し、一号と俺を繋ぐ。 目には見えないものだ、邪魔になったりはしない。 一号 「二号?」 二号 「いろいろやってくるから、これはその下準備だ。じゃ、健闘を祈る」 一号と三号に別れを済ませると俺は疾駆。 王国から離れた場所に着くや否や、俺は竜人化して空を飛んだ。 よし───まずはグルグリーズからだ。 【ケース74:校務仮面一号/ゴルゲニックアンガムサーヤさん(意味不明)】 ガササ…… 校務仮面「俺、今とっても輝いてる!!」 ギシャァアアアアアッ!!!! 総員 『ヒィイイイイイッ!!!!』 叫ばれてしまった……大変な人気だ。 ただ顔面を輝かせただけなんだけどなぁ……黒い光だけど。 国王  「な……ななななんだ!貴様なんの用だ!」 校務仮面「調印が欲しくて参上した。竜族と和解する機会である」 国王  「竜族と和解ぃ……!?何を寝惚けたことを!おい何をしている!摘み出せ!!」 兵士  「はっ!」 兵士たちがあれよという間に群がってくる。 兵士は俺を引っ張り出そうとするが、俺は微動だにせずに直立不動。 だがその手が校務仮面の命である紙袋に伸ばされた時───!! 校務仮面「いかん!校務仮面の素顔は絶対に秘密なのだ!!!」 パパパパパパァンッ!!!! 兵士たち『あべしーーーっ!!!』 兵士たちの顔面にパンチをかまし、とりあえず気絶に導いた。 国王  「なっ……?」 校務仮面「国王?貴様も一国の王ならば、誰かにやらせる前にまず自分から来い。      そうでなくてもこの校務仮面、      先ほどせっかく作った食物を強奪されそうになって怒り心頭だというのに」 国王  「わ、私の領土で作られたものだぞ!?私が奪って何が悪い!!      この国は私のものだ!そしてこの世界も!!      今にモンスターや竜族や亜人どもを皆殺しにして、私が世界の王になる!!      そのためにはどれだけ兵や村人が死のうが知ったことではない!!」 校務仮面「……あんた、以前村を見捨てたそうだな」 国王  「あん?あぁ、キリシマ村か?あんな村、どうなろうが知ったことじゃない。      だが驚いたな、あんな場所からあれだけの実力者がふたりも。      やはりあれか?ハングリー精神というやつか?      それとも餓死寸前で生きてきたから芯が丈夫なのか?ははははははは!!!」 校務仮面「───……今、お前と同じ空気吸ってることが嫌になった。オマエ、シネ」 国王  「なにぃ?なにを言って」 バガァン!!───国王の背後で巨大な扉が開く。 次の瞬間にはその奥から巨大な刀が飛び出て、国王を串刺しにした。 国王  「あへ……?」 校務仮面「片道切符はアンタの命。地獄に行ったら閻魔によろしく言ってくれ」 国王  「あ……アァアアアアアアアアッ!!!!」 突き刺した刀はどれだけもがこうがビクともしない。 やがて刀は突き刺した国王ごと扉の奥へと消え去り、 それと同時に扉も閉ざされ───消え果てる。 校務仮面「……死神王ね。案外悪く無い」 小さく笑い、これからのことを考えた。 とりあえず、見てたのは気絶してなかった唯一の人……大臣だが、 何故だか逆に安心しているように見えた。 ああ、確かに先ほどの光景に震えているのは確かのようだけど─── 大臣  「……ひとつ、お訊ねしたい」 校務仮面「むっ……なにかね!?」 実は俺……メイドさんも好きだけど、大臣という職業も嫌いではない。 一部では王よりも優秀な職業とされるものだ、 ダイ=ジンさんのことも考えれば、かなり好感が持てる。 大臣  「国王は……どうなったのか」 校務仮面「地獄に行きましたが」 大臣  「つまり、死んだ……と?」 校務仮面「その通りです。知ってますか?      他人を捨て駒としか思わない人にはいずれ罰が下ります。      それがたまたま今日だっただけのことです、騒がないでくださいましね」 大臣  「……よく解っているつもりです。あの国王はやりすぎた。      自分が裕福に暮らしたいがために、      兵を動かして村や町から食料という食料、金という金を奪いました。      兵たちも嫌がりましたが、      自分達が食えなくなってもいいのかと脅されて仕方なく……」 ぬう、そんな裏が……校務仮面びっくり。 そして校務仮面としてそんな悪行は許せん! 大人は子供の見本であるべし!そんなことは学校で習う筈!! それを疎かにするとは……これは学校およびそこに務める校務仮面への冒涜だ!! 校務仮面「大臣!名をなんという!!我は校務仮面!」 大臣  「アビスゲート=セバスチャン七世ですが……」 校務仮面「凄まじい名前だね……だが良し!今日からキミが───王様だ!!」 大臣  「な……ほ、本気ですか!本気でそのようなことを!!」 校務仮面「本気です!そして王の仕事第一歩!      竜族と和解し、戦争なんて無意味なことをやめなさい!!」 大臣  「し、しかし……竜族に和解などが通りますか……?」 校務仮面「通る!!すぐにだ!!今日にでも通る!絶対に!!」 大臣  「な、何故ですか……?」 校務仮面「校務仮面だからだ!校務仮面に不可能の文字無し!!」 でも素顔を見せることだけは不可能。 校務仮面が仮面を外したらただの用務員の人になってしまうからだ。 そんなの校務仮面じゃない。 校務仮面「だからね?人々に竜族との戦いの終わりを知らせて欲しいのだ。      及ばずながら、この校務仮面もお手伝いいたそう」 大臣  「しかし……」 校務仮面「っ───あんたはなにか!?世界の平和が欲しくないのか!?      それともあんたの理想とする平和は沢山の屍の上にしか成り立たないのか!?      そんなものは平和なんかじゃねぇ!ただの無駄死にの先の末路って言うんだよ!      ぐずってる場合なのか!?こうしてる間にもモンスターは人を襲う!!      だったら竜族や亜人と結託してモンスターを殲滅する方がいいだろうが!!」 大臣  「っ……でしたら証拠を見せてくだされ!!      このセバスチャン、竜族に家を焼かれてからこの国に拾われました!!      憎むべき竜族……そんなものが本当に和平を結ぶ証拠を見せてくだされ!!」 校務仮面「よろしい!!ではここで待っておりなさい!!      貴様が間違っていること、とくと見せ付けてやる!!」 俺はドンと構え、セバスチャンとともに二号の報せを待つことにした。 この解らず屋め……今に見ておれ……!? ───……。 ……。 で……待つこと一時間。 突然ドッゴォオオオンと巨大な地震があった───と思ったら、すぐに静まった。 つーか……なんだろね。 なんだかよく解らんけど、どんどんと黒の密度が上がっていく。 べつに何をしたってわけでもないんだけど、 これって狭界で幻獣コロがした時に思念強度が流れてくる感じに似てるよね。 校務仮面「…………えーと」 はは、まさかねぇ? いくら俺に妙な糸を繋げていったからって、二号が狭界で暴れてる、なんて……バサァッ! 大臣  「っ───!!ひっ……こ、黒竜……!?」 校務仮面「む……違いますぞ、こいつは───」 突如、オウサマの部屋のテラスの先に舞い降りた黒い竜。 や、黒竜には変わりないけど、黒飛竜だ。つまりジハード。 ジハード『……ここに校務仮面一号とやらは居るか』 校務仮面「我輩ナリ……って、もしかしてキミ、この時代のジハード?」 ジハード『……?言っていることがよく解らないが。      ともかく人間よ、我ら竜族は貴様ら人間と和平を結ぶことにした。      領土も決め、そこに侵入しない限りこちらから手出しはしない。      多少の侵入は許すが、その場合竜族が姿を現す。      そのまま領域から立ち去れば良し、      立ち去らぬのであれば攻撃を加えるものとする。それが誓えるか?』 校務仮面「セバスチャン、和平結んでくれるっつーけど、どうする?」 大臣  「なっ───!?こ、言葉が解るのですか!?」 校務仮面「言ったでしょう、校務仮面に不可能の文字は無い。でもね、条件つきなんだわ。      領土を決めて、そこに侵入しない限りは攻撃を加えない。      もし領域に侵入しても早々に立ち去れば良し、      立ち去らなければ実力で叩き出すって」 大臣  「……………」 校務仮面「気持ちは解るけど、私怨で空界の民全員を巻き込むなよ。      どうすればいいかなんて、もうわかってるだろ?戦争なんて無意味だ」 大臣  「…………解りました。では、ともにモンスターと戦うことを誓ってください」 校務仮面「……だってさ」 ジハード『元よりそのつもりだ。      今まで癒しの枯渇のために食われてきた竜族の子……その無念を晴らす時だ』 校務仮面「OK。セバスチャン、OKだってさ。和平完了。王様第一の仕事、お疲れ」 大臣  「───!!……感謝しますっ……!!」 セバスチャンは俺ではなく、ジハードに頭を下げた。 一方ジハードは呆れたように息を吐き、飛び立とうとする。 校務仮面「あ、ちょっと待ったジハード。なんだっていきなり和平を?」 ジハード『……ちょっと前、貴様と似たようなものを被った者が我が前に現れた。      校務仮面二号と名乗る男は、何を言い出すのかと思えば人間との和平。      丁度、東西南北全ての竜王と集っていた時のことだ、当然皆が激昂した。      したんだが……その中でもその男は平静を持って和平を願った。      それぞれの竜王の罵声も普通に受け止め、怯える様子を一切見せずだ』 校務仮面「ワァオ……」 なにやっとんのですか二号……。 ジハード『散々罵られ、馬鹿にされてもなおそいつは話を続けた。      そしてついに───そのしつこさに怒りを燃やしたマグナスが攻撃を仕掛けた。      男は避けることもなく甘んじて攻撃を受け、      それでも我らの目を見て話を続けた。……竜族とは誇りの生き物だ。      自分の攻撃を受けても話を続ける男に、マグナスはそれはもう激昂した。      そしてもう一撃、さらに一撃と連ねた時───そいつは変貌した』 校務仮面「変貌?」 ジハード『そう、変貌だ。今までの穏やかさは何処に行ったのか、      角と翼を伸ばし広げると髪を金色に、目を紅蓮に変えた。      その時感じた力は……思い出したくもないほどに高きものだった』 校務仮面「うあ……ってことは……」 ロヴァンシュフォルス化したんか、二号のヤツ…… ジハード『あとのことは……あまり思い出したくもない。      四体居た竜王が赤子のように捻られ、我が力も全く敵わなかった。      地面に叩きつけられ殴り飛ばされ蹴り飛ばされ……ああ、思い出したくない。      あれは悪夢だ……あの男だけは怒らせるべきじゃない……』 校務仮面「仏の顔も三度までか……」 三回我慢してからキレたってことはそういうことだろう。 二号らしいといえばらしいけど。 多分返答が罵倒だけならずっと耐えてたと思う。 俺や原中とか、気心知れたヤツなら遠慮なく実力行使に出るヤツだが、 話をしているのに罵倒ではなく攻撃を仕掛けてくるヤツが大嫌いな二号だから。 二号自身確かに人に攻撃したりもするが、それは一方的にこちらが悪い時ばかりだ。 さらにからかいすぎれば誰だって怒るし、 俺は殴られることを覚悟でそういうことをやっているのだから、 あいつもそれを解っている上で俺を殴っている。 けどそれは友人間の話なわけで……まあ、お疲れさん。 マグナス、キミがやったことは竜王全員を巻き込んだとてもヒドイ行為だ。 でもキミならやりそうだって、簡単に想像出来るよ。 校務仮面「ジハード、キミちょっと勘違いしてる。      確かにあいつは怒ると怖いけど、      あいつが怒るってんなら悪いのは一方的にキミらだよ」 ジハード『……確かにな。人でも竜でもない中途半端な存在と、      目を合わせた途端に罵倒した。特にマグナスだ。      攻撃をされても懸命に話を続けようという態度に、      マグナスを抜いた我らは心を置き換えるつもりだった。      だがマグナスは違った。      攻撃されても仕返しもしなければ怯みもしないあの男に対し激昂。      さらに攻撃を重ね……結果、あの男を怒らせた。      なるほど、あの場に居て止めようとしなかった我らにも非はあり、      あの男には些細の非も無い。……これは、反省点だ』 校務仮面「けどすぐ治してもらえたっしょ?」 ジハード『ああ、不思議な男だ。散々マグナスに仕返しをし終えると、      とばっちりを受けた我らをとてもすまなそうな顔で癒した。      そうした時に思ってしまった。こんな男も居るのか、と。      だから一度だけ信じてみることにした。人という存在を。      だが勘違いするな、信じるのはあの男の意思であり、      汚い人間の意志などではない』 校務仮面「解っておるよ。で……当の二号は?」 ジハード『二号?ああ、あの男か。あの男ならば狭界へ行った。      よくは解らんが、      【この時代のノートの力を借りて、融合しちまおう】と言っていたな』 校務仮面「………」 理解した……COOLにな……。 つーか多分もう融合完了してる……絶対だよ……。 さっきの地震が多分融合した証だよ……。 あのさ、二号……?今まで散々苦労してやってきたこと、 たった一時間で終わらせるか?普通……。 もう少し……もう少しさぁ、のんびりしようって思ってもいいじゃない……。 なんて悲しんでいた時、キィンという音とともに二号がその場に降り立った。 二号 「悪い、時間かけたか?」 しかもこんなこと言ってるよ……。 一号  「あのね、キミ……」 二号  「っと、ジハードか。悪い、伝言なんて頼んで」 ジハード『構わない。力ずくとはいえ、貴様は我らを納得させた。      これからのことを考えれば、これくらいはどうということもない』 二号  「そっか、サンキュ」 二号の返事に見送られ、ジハードさんはクッ……と笑みをこぼすと飛んでいってしまった。 一号 「………」 二号 「一応俺のやっておきたいことは終わったけど……そっちはどうだった?」 一号 「和平成功。万事滞りなくってやつだ。     けどね、キミ……なんでもかんでもいっぺんにやりすぎ」 二号 「ん?思念ならちゃんとオリジンとゼクンドゥスの力で封印してきたぞ?     幻獣も悉く散らしてきたから世界融合しても問題無いし。     この時代のノートにも手伝ってもらったから、契約中のノートの消費も僅かだし」 一号 「だから、いっぺんにやりすぎだって言っとるでしょーが。     もっとゆっくりやっても良かったんじゃないの?」 二号 「馬鹿お前、狭界がある限り、いつゼットが引きずり込まれるか解らないだろが。     因果ってのはしつこく付いて回るもんだってお前が一番知ってるだろ?     『運命的なもの』ってのは一度その分岐から逃れても、     そうなりやすいから『運命的』っていうんだろうが。     そういう要因をいっぺんに片付けておかないでどうする」 一号 「むう……」 それ言われるとオラ辛ェ。 一号 「となると、これで狭界に引きずり込まれて、     思念を吸収して竜化する心配は無くなった、と?」 二号 「ああ。竜族のほうも、マグナスが完全に友好的になるまで地獄見てもらったから。     もう口出しもなにも無いと思う。一番の問題がマグナスだったからな」 一号 「うわぁ……」 あの(・・)
二号が地獄(・・)って……───ううむ、さすがにマグナスが気の毒に思えてきた。 恐らく本気で地獄を見たことだろう。 それも、ヘタな“技”など使わず、竜人ナックルでもボコボコ。 尾を掴まれ大地に叩きつけられまくったり、勢い込めて踏み潰されたり、 まあ……やめよう、想像してて可哀想だ。 一号 「えっと……ちなみにさ、どれだけの地獄を見せたん?」 二号 「ん……あいつが大事にしてたプライドをズタズタにしてやった。     散々ボコボコにしたあとに回復させて、向かってくるならまたボコボコ。     それの繰り返しだ。結局諦めたのが三十二回目の回復の途中だった」 一号 「………」 マグナス、あんたすげぇよ。 よく二号相手にそこまで……。 二号 「でもまあ地獄って言っても、それはあいつのプライドに対する地獄であって……     終わってみれば、プライドよりも信頼が付いて回ったみたいだ。     卑怯な手を使ったわけでもなければ、油断させたわけでもない。     正々堂々戦って、敗北を認めたんだ。マグナスも案外スッキリした顔してた」 一号 「男は敗北を知った時に本当の男になる、か……」 ふと、ターちゃんとマイケルの戦いを思い出した。 名前が示すようにジャングルの王者ターちゃんの話だが、俺結構あの戦い好きなのよね。 一号 「まあこっちもそっちも問題が解決したなら、三号のところに行くか。     新しい王様のこともそっちで一緒に話してしまおう」 二号 「新しい王様?」 一号 「ん、歩きながら話すわ」 俺は二号を促して、のんびりと王城を歩いた。 三号が居るのは練兵場……ゼットが居るところの筈だ。 そこへ向かって。 【ケース75:校務仮面三号/不安数えて見ればキリが無い】 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!! 校務仮面「………」 はい、校務仮面三号です。 わたしは今、他の兵と一緒に剣の練習をしているゼットを監視しています。 ええ、ローリングストーン(ズ)は基本です。 でもちょっとこの体勢って監視には向かない気がしますよ彫刻家さん。 もう、ちょっと……こう───ベキャッ!! 校務仮面「ゲェエエエーーーーーッ!!!ってうひゃわぁああっ!!!」 兵士  「誰だっ!?」 もうちょっと身を乗り出そうとした途端に木の枝を踏んでしまい、 あまりの出来事に大変驚いたわたしは、つい彰衛門さんのように叫んでしまった。 その事実に驚いてさらに叫び、バタバタと逃走。 ああもう、なにやってるんでしょうかわたしは……頭痛いです。 やっぱりローリングストーン(ズ)って監視に向きません……。 なんて思いながら走っていた時─── 声  「ブラボ〜〜」 声  「ブラボ〜〜〜……」 ……なんて、そんな声とゆったりした拍手の音が聞こえました。 もちろん聞き覚えがあって、 しかもわたしの行動を見てたとしか思えない嫌みったらしい声でした。  ───スパタタタァンッ!! 兵士たち『ぐっはぁっ!!』 と、リヴァース元帥が殺してしまった兵士のような断末魔を聞いて後ろを振り向くと、 追ってきた兵士たちが大地に倒れ伏して気絶していた。 けどひとりだけ。 ゼットだけは立っていて、突然倒れた兵士を見下ろして驚いている。 一号  「誰かが校舎で悩む時!!」 二号  「そこに彼らは現れる!!」 一号  「跳び箱片手に修理して!」 二号  「剥げた塗装も元通り!!」 一号  「乱れた校風直します!!」 二号  「超絶学校仕事人!その名も───」 校務仮面『校務仮面!!ドッギャァアアアアアアーーーーーンッ!!!!! ゼット 「………」 三号  「………」 校務仮面『決まった……』 高いところでなにやら叫んでいたふたりは、 自分が超自然的に取った決めポーズに酔いしれていた。 なにをやっているんだろうかあのふたりは……。 ゼット 「またあのヘンなやつらか……!!おい!なんの目的でこいつらを───」 校務仮面『ノー!!違うぞヒヨッ子!我らは【ヘンなやつら】ではない!!』 ゼット 「じゃあなんだってんだ!!」 校務仮面『アイム校務仮面!!』(ズビシィイインッ!!!) 三号  「………」 一号  『三号!!貴様なにをボ〜っとしている!!貴様それでも校務仮面か!!』 三号  「まだそこまで暴走できませんよわたし!!」 ゼット 「なんだか知らねぇけどとにかく!      顔も見せないやつらが何言ったって理解出来ないね!!      なにか言う前に顔くらいみせてみろよ!!」 むっ!! 校務仮面『いかん!!校務仮面の素顔は絶対に秘密なのだ!!』 これだけは譲れません。 わたしはゼットに向き直ると一号さんと二号さんと一緒に声を大にして言いました。 その気迫にたじろぐゼット……なんだか新鮮です。 ゼット「…………なぁ、素顔のことには触れないから目的だけでも教えてくれないか。     なんのためにこの王国に居る?それとも俺が来る前から王国に居たのか?」 一号 「いや。校務仮面は学校にこそ務める者。学び舎を愛し、壊れた場所を修繕する。     だが校務仮面は割りとお節介なのだ。何故なら校務仮面だからだ」 二号 「そう、校務仮面だからだ」 三号 「仕方ありませんよね、校務仮面ですから」 ゼット「………」 ゼットは頭を痛そうに庇い、溜め息を吐き散らした。 一号 「キミ、校務仮面として忠告しておくが溜め息を吐くと幸せが逃げるぞ」 二号 「それ、お前にだけは言われたくない」 三号 「一号さんの所為で二号さんが吐いた溜め息、相当数ですからね」 一号 「グウウ……」 と、わたしたちはゼットをほっぽりっぱなしでヤハハハハと笑い合った。 どうしてエネル笑い(漫画版)なのかは謎にしても、笑う時間があるのはいいことだ。 ゼット「……なあ。質問に答えてもらってないんだけど?」 一号 「む、これは失礼。校務仮面ともあろう者が。     我らがここに来たのは貴様とほぼ同時期だ。     だが校務仮面だから学び舎以外の場所には長居はしない。     故に我らは旅する校務仮面。そして訓練場に度々顔を出すのは、     学校とまではいかないものの『学ぶ場所』だからだ」 二号 「校務仮面は学ぶ者の味方なのだ。     それ以上に校務仮面の素顔は絶対に秘密なのだが」 ゼット「それはもう聞き飽きた」 言われてますよふたりとも。 ゼット「ていうかさ、今さらだけどその服……トンガリと魔法使いじゃないのか?」 一号 「校務仮面だ」 二号 「そうだ。校務仮面の正体に迫ろうなどと、馬鹿か貴様は。     正体もなにもない、校務仮面は校務仮面だ」 三号 「そうです、なに考えてるんですか」 ゼット「なんか俺泣きたくなってきた……」 まあ確かに、融通が利かない紙袋三人衆を前にすれば疲れもするし泣きたくもなると思う。 一号 「む!それはいかん!悩みがあるなら話してみろさあさあさあさあさあさあ!!」 ドシュドシュドシュドシュドシュドシュと手を差し伸べまくる一号さん。 ゼットはそんな一号さんに疲れ果てた顔を向けて ゼット 「その被り物、取───」 校務仮面『いかん!校務仮面の素顔は絶対に秘密なのだ!!』 ゼット 「はぁああ……」 わたしたち三人に返される言葉に溜め息を吐いた。 悩みはてんで解決しなかったようです。 一号 「まあ安心するのだ少年。この世界の危機は先ほど解消された。     貴様はモンスターのみと戦えばいい。竜族とは既に和平が済んだのだ」 ゼット「えっ───なんだって!?」 一号 「馬鹿野郎!そういう時は『なんだってーーーーっ!!!』と伸ばさんか!!」 ゼット「ど、どうして和平が!?だって竜族だぞ!?」 一号 「とあるモミアゲの長いブレイバーが竜王どもを蹴散らして言うことを聞かせた。     竜族は彼の実力を認めるとともに意思をも認め、     一度だけ信じてくれることになったのだ。     つまり、人間の敵はモンスターだけになったわけだ」 ゼット「モミ……まさか魔法使いの兄ちゃんが?」 一号 「俺は校務仮面だからよく知らんが、石を剣に変えるモミアゲだったと聞く」 ゼット「やっぱり……」 三号 「あの……二号さん?顔色が優れないようですけど……」 二号 「い、いや……なんでもない……」 一号 「………」 一号さん、二号さんの隣で心無しカタカタと震えてます。 ああ……これはあとでボッコボコですね。 非常に嫌がってるって知ってるのにモミアゲって言うんですから……自業自得です。 二号 「それでは我らはこれで失礼しよう。     とりあえず月の無い夜は気をつけろ……」 ゼット「え?な、なんだよそれ」 二号 「なんでもない」 そう言い残して二号さんは歩いてゆく。 ……一号さんの襟首を引っ掴んで。 一号 「あっ!いやっ!!離してぇええ!!俺が!俺が悪かったぁあああああっ!!!     でも喩えとしては面白いと思ったんだよ!面白かったっしょ!?     ……え!?非常につまらなかった!?そげな!!     あ、ちょ───人気の無いところ連れていかないで!!     僕みんなと一緒がいい!ひとりぼっちはイヤァアアアアアッ!!!!     あ、あれ?三号さんなんでこっちに……え?わたしが一緒なら文句無いでしょ?     いやいやいやいやそういう問題じゃなくて!!     知り合いじゃなくて他人が居てくれた方が心強いっていうか!!     あぁイヤァ!!行かないでゼットくん!!そっちの角を逸れちゃダメだ!!     姿が見えなくなったその時が死刑時刻になってしま───あぁあっ!!!     行ってしまった!!僕の天使が!!カムバックトゥ天使の君ぃいーーーーっ!!!     ジャ、ジャストモーメン───はうあ!!か、顔だけは!顔だけはやめて!!     校務仮面が紙袋が命!……え?だったら歯を引っこ抜く!?     やめろーー!!芸能人は歯が命ーーーッ!!!ってそういう問題じゃなくて!!     ね!?やめよ!?軽いオチャメってことで許ルォヴァアアーーーーーーッ!!!」 その日。 二号さんは校務仮面以外のあらゆる部分をボコボコにされました。 Next Menu back