───OperationMarrige/倫敦の若大将の涙───
【ケース85:弦月彰利(山本元柳再)/重國】 そうして僕らは昂風街へと訪れていました。 用件といえばもちろん閏璃凍弥を攫うことであり、 さらにその周りの人々をも攫おうという魂胆です。 もちろんホギッちゃんと愉快な仲間達は既に空界へ案内しました。 相当驚いておりましたが、そこのところはテリー教官に任せることで事なきを得ました。 テリー教官もみさおさんも僕に十分謝ってくれたので、 僕ももう気にしないことにしたのです。本当です。 彰利 「フフフ……」 夜華 「………」 僕と夜華さんは鈴訊庵前に降り立つと、怪しく笑ってそこの二階を見上げました。 しんと静まり返った様子から、既にみなさん熟睡中だということが簡単に解ります。 彰利 「えーと、小僧は鈴訊庵に住んでたけど実家がこっちの家、だったよね?」 だとしたら、と僕は鈴訊庵とは反対側に立つ家を見てニヤリと笑いました。 続いてシコルスキーばりの登壁能力を発動させて、家の壁を登っていきます。 そうして辿り着いたベランダ───その先の部屋には、確かに閏璃凍弥がおりました。 ほんに小僧によく似ています。彼に間違いありません。 彰利 「さて……」 ここで僕は少々考えます。 ただ眠っているヤツを攫うより、もっと面白おかしく攫った方が面白いと。 彼には未来でからかわれた覚えがあります。 故に、ただでは済ませたくないのです。 彰利 「よし。確か閏璃凍弥は『由未絵』とかいう人物が好きだった筈だ。     だったらそやつを人質に脅迫して連行させるのはどうでしょう」 ……我ながらナイスアイディアです。 聞くところによると由未絵さんとは閏璃凍弥の幼馴染らしいじゃないですか。 彼女を盾にすりゃあ無敵です。 でも……困りました。 僕は由未絵さんの顔なぞ知りません。 でも考えてもみましょう。 僕的に由未絵さんは鈴訊庵に住んでるものかと思いました。 幼馴染のセオリーとして向かいの家が彼女の家、なんてざらにあります。 でもやっぱり考えてみましょう。 小僧が言うには、 小僧の父親はこのベランダを介して隣の家によくお邪魔していたそうです。 つまりそれだけ気安い相手がお隣さんということです。 それは要するに…… 彰利 「むむっ!ピキーンと来ました!」 このベランダから届くあの家こそ由未絵さんの家に違いないです。 僕はそっとベランダを伝って隣の家のベランダへと降り立ちました。 そして窓から中を覗くと……居ました、女の子です。 長い髪が中々キレイなおなごです。 穏やかに眠る顔もキレイなものです。きっと彼女です。 彰利 「ククク……」 僕は影を発動させて彼女を飲み込むと、部屋の中からこちらへ引きずり出しました。 それでもまだ彼女は眠っています。 でも……なんでしょう。この漠然とした不安は。 僕は何か間違っている気がしてならないのは何故でしょう。 そもそもこのおなご、 なにやら『寝ていれば可愛い』という雰囲気をものめっさ出しているのです。本当です。 もしかして人違いなのでしょうか。 ……いいえ、そんなことはありません。きっとこのおなごが由未絵さんです。本当です。 彰利 (…………《クイックイッ》) 夜華 (…………《コクリ》) 潜入しますよ、ということを夜華さんに手話で伝えました。 すると夜華さんは跳躍だけでベランダまで飛び乗ってみせました。 その事実に僕は驚きましたが、もっと驚いたのは夜華さん自身のようでした。 『本当に出来るとは……』と呟いています。 ともあれ僕がまず黒と化し、閏璃凍弥の部屋へと染み込んで侵入すると、 すぐに窓の鍵を開けて夜華さんを招き入れました。 ところで思ったのですが、 何故由未絵さんも閏璃凍弥もカーテンを締めていなかったのでしょう。 僕はそれが不思議です。 彰利 「………」 夜華 「………」 とりあえず、思わず『ズズ……』という効果音を出したくなる場面に居ます。 部屋のベッドでは閏璃凍弥が寝ていて、 今僕の黒の中では由未絵さんが目覚め始めています。 いまこそ好機です。 彰利 「ね〜むぅるぇええ〜〜〜っ!!!ぬぇ〜〜むぅるぇええ〜〜〜っ!!!!!」 僕は眠れと言いながら閏璃凍弥の腹を布団越しにバスンバスンと叩きました。 これで彼も安眠です。保育園のおばさんもやってたから間違いありません。 閏璃 「うぐ……っ!?な、なななんだぁっ!?」 だがどうしたことでしょう、彼は逆に起きてしまいました。 閏璃 「だ、誰だ───って、あら?」 彰利 「あちょッス」 僕の顔を見てポカンとする彼に、とりあえず春巻先生流の挨拶をします。 さて、ここからが本題です。 彰利 「キミの大切な由未絵さんは預かっている!!     おっそろしいことをされたくなければ僕と一緒に来なさい!!」 閏璃 「不法侵入していきなり脅迫かよ!ってそうじゃない!由未絵をどうしたって!?」 彰利 「とても危険な場所へ収納しているのです。     一応呼吸は出来るけど、長い時間居ると気が狂うよ?     四方八方の全てが真っ暗闇だからね」 閏璃 「っ……いきなりで全く訳が解らないが……俺はどうしたらいいんだ?」 彰利 「僕の結婚式にご招待しに来ました。来てくれるよね?」 閏璃 「……………」 とても呆れた顔をされました。 夜華 「なぁ彰衛門……やはり最初に事情を話しておくべきだったんじゃないか……?」 彰利 「それでは僕の気が済まなかったのです。というわけで、来てくれるよね?     知り合いも連れてきてくれるとボク嬉しい。     金払えなんて言わんから、面白い格好で来てくれ。     そういう服が無い場合は、宅の悠介くんが創造してくれるから」 閏璃 「……とりあえず由未絵を解放してくれ。     俺のことであいつが囚われてるなんて冗談じゃない」 彰利 「フフフ、いいでしょう……。では取引といこうか!     顔だけは見せてあげますが、了承しなけりゃ解放しませんよ!?」 閏璃 「なっ……卑怯だぞこらっ!!」 彰利 「なんとでもお言い!!」 言いながら僕は由未絵さんを黒から出しました。 しかし両手両足を固定した状態です。 閏璃 「由未───……来流美?」 彰利 「ウィ?」 だがどうしたことでしょう。 凍弥クンは彼女を見るや否や、とても悲しそうな目をしたのです。 閏璃 「よし。そいつがどうなろうと俺は知らん。煮るなり焼くなり好きにしろ」 彰利 「うおっ!?手の平返したように!?あれ!?この人幼馴染じゃないの!?」 閏璃 「幼馴染だぞ?けど知らん」 彰利 「………」 なんてことでしょう、僕はどうやら失態を犯してしまったらしいです。 でも少し待ちましょう、これが彼の手なのかもしれません。 だとしたら僕が彼女を解放した途端、彼は反撃に出るかもしれないのです。 危なかったです。もう少しで騙されるところでした。 彰利 「フフフ、危ない危ない……残念だが俺はそんな手には乗らねぇぜ?」 閏璃 「いや、手って……あのなぁ」 来流美「……あのさ。これってどういう状況なのか是非訊きたいんだけど」 彰利 「その前にアンサー?キミの名前ってなんだっけ」 来流美「……来流美。霧波川来流美」 彰利 「───!!!」 オーマイガァ!!(おかしすぎるわよ!!) なんてことでしょう、僕はやってしまったようです!! 彼女は幼馴染は幼馴染でも、彼の大切な人とは関係のない人だったのです!! しかも霧波川!小僧の苗字です!というとこの人は小僧のばーさまということになります! 空界で小僧と会わせるのが楽しみです!本当です! 彰利 「つーことは由未絵さんはやはり鈴訊庵か!ふはははは!!     それでは今度こそ由未絵さんは人質にさせてもらうぞ!!」 閏璃 「あっ───待て!!由未絵に触っていい男は俺だけだ!!」 来流美「……ちょっと。そこのそれに手、置いて」 彰利 「ウィ?これですか?」 窓へと駆け出した僕に、未だ黒に囚われてる来流美さんが言います。 僕は窓近くの箱の隣に手を置くとバゴシャアアッ!!! 彰利 「うぶぅべっ!!?」 僕の頬に、まるでマイク=タイソンのハードパンチが クリーンヒットしたかのような衝撃が走ります。 彰利 (嗚呼……キレイに当てやがるな……。     あれ(ヨウカン)
とヤッたときも……あれ(悠介)とヤッたときも……     脳へダメージもらったときはいつもそうだ……。     こいつら(蟻の幻)が───這い上がってきて───地面が消える……) ドシャアアア…… 閏璃 「うお……大丈夫か?今思いっきり顎辺りに当たっただろ……」 来流美「なまじっか反応出来たのが運の尽きね……。     振り向いた途端に顎にヒットしたから脳が思いっきり揺れたわよ」 閏璃 「こんな時に久しぶりに設置したパンチンググローブが役に立つとは……」 夜華 「はぁ……」 ───……。 ……。 彰利 「グ……グウウ〜〜〜ッ」 目の前がチカチカする中、 僕は『雨の中に放り出されたロビンの唸り声』を口にしながら起き上がった。 正直フラフラです。 黒であるこの僕でも、まだ脳震盪は起こすようです。 夜華 「彰衛門、平気か」 彰利 「あ、夜華さん……と、アウトローな面々」 来流美「誰がアウトローよ。……アウトローってどういう意味だったかしら」 閏璃 「無法者のことだよ。よーするに社会の秩序から外れたヤツらの意。     よかったな、ぴったりの言葉だ」 来流美「なるほど。目覚めた途端に喧嘩売ってるわけね」 彰利 「馬鹿野郎!じゃなきゃ寝てるおなごを人質に使うわきゃねーだろが!」 来流美「い〜い度胸してんのねぇ……さすが凍弥の知り合いだわ」 由未絵「と、凍弥くん、来流美ちゃん、喧嘩はダメだよ……」 彰利 「………」 現在この場には俺、夜華さん、閏璃凍弥、ムナミー(来流美)、由未絵さんがおります。 由未絵さんはムナミーと閏璃凍弥との話し声で置き出してきたらしく、 この場に居る僕と夜華さん以外みんな寝巻きです。 彰利 「由未絵さん、キミってもしかして閏璃凍弥にベタ惚れ?」 由未絵「ふぇっ……!?」 来流美「どっちもどっちよ。凍弥も由未絵が好きなら、由未絵も凍弥が好きって」 彰利 「……それでどうしてキミには春が訪れないんでしょうかね」 来流美「喧嘩売ってるんだったらオセロで買うわよ」 彰利 「いや、オイラもうオセロは……」 来流美「なに?逃げるの?」 彰利 「むっ!?なんですと!?このじいやめが逃げるとな!?」 来流美「だってそうでしょ?     不利なものを出されたからって戦わないんじゃ逃げるってことじゃない」 彰利 「グムム〜〜〜ッ!!下等超人どもが調子に乗りおって〜〜〜〜っ!!     ぶ、ぶっころしてやる〜〜〜〜〜っ!!!」 閏璃 「おお見ろ由未絵、オセロで人を殺す気らしいぞ」 由未絵「すごいね……世界にはまだまだ不思議があるんだぁ……」 彰利 「………」 その時に感じました。 由未絵さん、どうやら天然記念物的なボケというか……そう、ボケ者のようです。 これが伝説のボケ者か……。 ともあれ僕は影でオセロ盤を作ると、ムナミーと熱い大戦を繰り広げたのでした。 ───……。 彰利    「ありません……」 来流美&閏璃『弱ッッ!!』 勝負は相当な速さでつきました……。 僕はどうやらやっぱりオセロが究極に弱ェエエようです……。 自分でも呆れるくらい見事な弱さです……。 来流美「えーと、そっちの。篠瀬さんっていったっけ。あんたもやってみる?」 夜華 「うぇっ……?あ、いや、わたしは……」 来流美「そこの弱いツンツンくんの弔い合戦だと思ってさ」 夜華 「よしやろう」 夜華さんは僕の弔い合戦と聞くや否や、すぐに向き合いました。 けれど───どうなのでしょう。 ルールを知っているのでしょうか。 いや……多分知りませんね。 ───……。 ……。 ───……そうして、僕らはしばし遊びにふけて…… 彰利 「ハッ!しまった!こがあなことしとる場合じゃないんじゃ!!」 大切なことを思い出しました。 暗い部屋で月明かりを頼りに闇のゲーム(オセロ)してる場合じゃあありません。 彰利 「キミたち!すぐに僕らと一緒に空界に行きますよ!」 閏璃 「へ?なに……?空……?」 彰利 「ともかくキミたちを僕らの結婚式に招待したくて参った!!     よってキミたちは誠心誠意を以って     僕らの結婚式に参列しなければぁ〜〜ンならない!!」 閏璃 「正装じゃなくていい上にカタッ苦しくない結婚式ならいいけど」 彰利 「もちろんだ!殿様衣装以外ならばなんでも許す!」 閏璃 「参考までに───訊くまでもないか。風峰の殿様伝説だよな」 彰利 「その通りです。もはや乱闘殿様以外が殿様衣装を着ることは許されません。     それはモミアゲの神様が悠介だけでいいと言えるくらいに当然のことなのです」 閏璃 「……ああ、あのモミアゲは見事だった」 来流美「映像でしか見たことないんだけど……うん、見事だったわね」 由未絵「うん、キレイだったね……」 夜華 「……本人が聞いたら怒り出しそうな言葉だな」 いやはやまったくです。 でも彼は、今では三度は我慢することを心がけています。 その分、三度を越すと滅茶苦茶怖いわけですが。 僕がやったギガンティックミーティアなんて序の口だと思います。本当です。 彰利 「ところで……さっきからやたらと気になってたんだけど、これってアレ?」 僕は閏璃凍弥の部屋になるカセットテープボックスをヒョイと覗くと、 その中にあったステキなものに目をつけた。 テープに書かれているものは『お料理地獄』。 ともなれば…… 彰利&閏璃『おっといけねぇ……マヨネーズも忘れんじゃねぇぜぇ?』 ビンゴのようでした。 うん、あれはとてもいいものです。 来流美「なに、あんたも知ってるの?このよく解らないテープのこと」 彰利 「わけが解らんとはなんだ!ベジータ様のお料理地獄はステキなんだぞ!?     サイヤ人の王子ベジータ様が直々に『お好み焼き』の作り方を教えてくれるんだ!     しかも歌つきだぞ!?もうレアだぜレア!!」 閏璃 「俺は知り合い仲から録音したテープを貰ったから運が良かった。うん」 カチリ。 声  『さぁてめぇら……覚悟しやがれぇ!!     このベジータ様が───たっぷりと料理してやるぜぇ!!     まずはキャベツだ……微塵切り!!木っ端微塵にしてやるぜぇ!!』 閏璃 「って何も聞かずに再生するなって!」 声  『次は貴様だ!人参野郎!人間みてぇなその名前……まったくふざけた野郎だぜ!     貴様の苦味にゃ反吐が出る!ふっはっはっはっはっは!はっはっはっはっは!!     だがそれも……今の俺には通用しねぇ!!     さぁ……ゆっくりと皮を剥いで───バッキバキに刻んでやるぜぇ!!』 来流美「どういう歌なのよ……」 ベジータ様ですから。 声  『ん?……おぉ……次は豚肉だ。いいツヤしてるじゃねぇか……。     新鮮な野郎を見ると、胸が高鳴ってきやがるぜぇ!!     さぁ、パワーを集中させ、200グラムを一気にコマ切りだぁーーーっ!!』 来流美「………」 声  『よぉし、ここらで山芋に挑戦だ。     デコボコしやがってぇ……!化けの皮ヒン剥いてやるぜぇ!!』 閏璃 「───!き、来た!」 彰利 「来た!用意しろ貴様ら!」 由未絵「?」 僕と閏璃凍弥は顔を見合わせると構えました。 声&彰利&閏璃『ツッルツッルツッルツッル♪ネッバネッバネッバネッバ♪         なっまっいっきな〜野郎〜〜〜だぜ〜〜♪         ス〜リス〜リス〜リス〜リ♪ドッロドッロドッロドッロ♪         てっこずっらせっやが〜るぜ〜〜♪』 リズムに合わせて僕と閏璃凍弥とテープが歌います。 ですが他の皆様はポカンとしているだけです。 あ、いえ、由未絵さんだけは閏璃凍弥の歌声に聞き惚れています。 声&彰利&閏璃『滑っても〜……痒くても〜……ここで負け〜ちゃなら〜ねぇ〜……。         最後まで〜……摩り下ろせ〜……俺のメン〜ツに懸〜け〜て〜……』 ああ、なんと素晴らしい歌なんでしょう。 僕らの心に染み渡ります。 声  『はぁっ……はぁっ……はぁっ……!!はぁっ……はぁっ……!     さぁっ……残りの野郎どもを───一網打尽にしてやるぜぇっ!!     小麦粉に水をぶっかけぇっ!!天カスと卵もブチ込み!     刻み生姜も入れたら……引っ掻き回してやれぇえええっ!!     さっきの野郎どもも───     ぐっちゃぐっちゃに……!めっちゃくちゃに混ぜ合わせ───!!     あとは鉄板の上で、じっっくり焼き上げてやるだけさぁっ!     ソースに青海苔、おかかでトドメだぁっ!!どうだまいったかぁっ!!     はっはっはっはっは、はっはっはっはっはっはっは!!     お好み焼きバトルも、さぁ口を大きく開けて───これでいただきだぜぇっ!!』 彰利 「き、来た!」 来流美「また!?」 僕と閏璃凍弥は顔を見合わせて頷きました。 声&彰利&閏璃『おっといけねぇ……マヨネーズも忘れんじゃねぇぜぇ?』 こうして歌が終わりました。 僕と閏璃凍弥は心の底からジ〜ンと来ていて、しばらくそうして陶酔してました。 彰利 「……ところでさ。人参にだけ異様に殺気が篭ってるのは……     やっぱりキャロットっつーかカカロットだからかな」 閏璃 「多分そうだな」 なんにせよ、まさかここでこれを聞けるとは思いもしませんでした。 僕は満足です。 夜華 「……こほん。あー……彰衛門?戻らなくていいのか?」 彰利 「───はうあ!しまった!」 満足してる場合じゃあありませんでした。 僕は大変驚くとともに閏璃凍弥をキッと見て、先へ進めと促しました。 彰利 「僕らの結婚式へキミらを招待!べつに金は要らんから賑やかに行こう!     そして服はなんでも良し!ただし殿様衣装だけはダメ!OK!?」 閏璃 「べつにいいけど。賑やかな方がいいならもっと誰か呼んだ方がいいよな?」 彰利 「ウィームッシュ」 来流美「うわぁ……また三馬鹿が揃うのね……」 閏璃 「はっはっは、自分で言ってりゃ世話ないな」 来流美「そんなものの数に入れるんじゃないわよ!!     わたしが言ってるのは凍弥のことよ!?」 閏璃 「俺はもう馬鹿じゃないが。     由未絵との勉学の末、貴様とは次元が違う場所へ辿り着いたのだ」 来流美「ぐっ……!!ちくしょう……!!」 その時の彼女はとても雄々しかったです。本当です。 夜華 「いや……嫌がっているのならべつに強制は───」 閏璃 「照れてるんだ。照れ屋だから」 来流美「殴っていい……?力の限り」 閏璃 「こいつでいいなら好きにしろ」 彰利 「いきなりお客様を盾にすんなや!!」 来流美「殴っていいの?」 彰利 「いいわきゃねぇだろタコ!!」 由未絵「来流美ちゃん、タコだったの?」 来流美「違うわよ!!」 困りました、なんだかどんどん話がズレます。 話を一に戻しましょう。 彰利 「ともかく友人だの知り合いだのを連れてくんだったら手伝うぜよ?」 閏璃 「おお、そりゃよかった。早速だが柿崎と鷹志を攫おう。     姉さんは……よし無視だ。居たら死ねる」 由未絵「鷹志くん呼ぶなら、真由美ちゃんも来るんじゃないかな」 閏璃 「あ〜……この前紹介されたベッピンさんな。     驚いた驚いた、あいつにあんなベッピンな彼女が居たとは」 来流美「話は聞いてたんでしょ?」 閏璃 「話だけだって。ゴンザレスって名前が似合うだろう野性的な女を予想してた」 来流美「あんたって……」 彰利 「皆様幸せ街道まっしぐらですな。     ……それでどうしてキミには春が訪れないんでしょうかね」 来流美「しつっこいわねぇっ!!ほっときなさいよ!!     未来の映像ではちゃんと子供も居たでしょうが!!」 彰利 「この時間軸が未来と同じとは限らんけどね……」 来流美「ねぇ……殴っていい?」 彰利 「ほっほっほ、こりゃあアグレッシヴなお嬢さんじゃあ……でもダメ。     あのね、今はこっちの時間より空界の時間の方が流れるのが速いのよ。     だからここでのんびりしてると向こうじゃ朝になっちまうの。     悠介の話じゃあそろそろ時間の流れが遅くなってくらしいけど、     少なくともまだ遅くはならないから今は急ぎましょう」 閏璃 「ややこしいなぁ。まぁともかく急いで鷹志と柿崎を攫えばいいんだな?」 彰利 「アイドゥ。寝巻きでも構わん。というわけでまず何処に?」 閏璃 「鷹志だろ」 来流美「橘くんね」 由未絵「うん、鷹志くん」 満場一致らしかったです。 これは話が早いです。 僕はそれに頷くと、黒で彼と彼女らを包み込み、顔だけ出させると外へ飛び出しました。 もちろん空を飛んでです。 閏璃 「おおお!来流美!空飛んでるぞ来流美!」 来流美「うわぁ……!!映像では見てたけどホントに飛べるなんて……!」 由未絵「どういう原理なのかな」 彰利 「答えはコウモリだけが知っている」 夜華 「知り合いに蝙蝠が居るのか?」 彰利 「……居るね、一応」 僕は晦さん家の吸血鬼さんを思い出しました。 あまり見せてはくれませんが、彼女は霧の他にコウモリにもなれるのです。本当です。 悠介くんがスリッパで、コウモリになった彼女を叩き落したのを僕は確かに知っています。 でも僕が空を飛べる原理は知らないと思います。 彰利    「で?どっち?」 閏璃    「む───空から見下ろすと昂風街も解りづらいな……」 由未絵   「あっちだよ?」 閏璃    「ってそっか、駅のある方から辿れば解りやすいな」 来流美   「あ、あはは、馬鹿ね、それくらい解りなさいよ」 閏璃    「視線泳がしてるお前に言われたくない」 彰利    「オッケ、こっちね?スピードつけるから案内ヨロシク由未絵さん」 由未絵   「う、うん。わたし頑張る」 閏璃&来流美『激烈に不安だ……』 そげな不安は僕は知りません。 ですから僕は飛翔しました。 シュゴォオオオオオオッ───っと。 由未絵「わぅううっ!!?は、速い!速いよぅっ!!これじゃあ解らないよぅ!!」 彰利 「むむっ!?それはいかんっ!!」 でも速すぎたようです。 僕は速度を弱めて、景色の流れが余裕で見えるくらいの速さで飛翔します。 とりあえず線路を辿るように。 由未絵「えと……とりあえず次の駅まで飛んでください」 彰利 「むう……キミの方が産まれは早いんだから、敬語はせんでええよ?」 由未絵「あぅ……で、でも初めて会う人ですし……」 彰利 「私は一向に構わんッッ!!」 閏璃 「なんで烈海王なんだ?」 来流美「ていうかさ、千年生きてる人に産まれは早いとか言われたくないわねぇ」 閏璃 「まったくだ───っと、アレじゃないか?」 来流美「あぁ、あれね。一応明かり点いてるけど───」 閏璃 「まあ、旅館だからな」 由未絵「……?ねぇ凍弥くん。さっきから……えと、篠瀬さん、だっけ。     この人が固まったまま何も喋らないよ……?」 閏璃 「うん?……って、ホントだな」 彰利 「あ……忘れてた」 そうです、夜華さんは高所恐怖症なのです。 足場がきちんとしている場所なら大丈夫だそうなのですが、 こうして普通に浮いているのはとても怖いのだそうです。 彰利 「い、いか〜〜ん!!夜華さん!すぐに下ろしてやっからね!?」 僕は大きな旅館目掛けて降下し、 周りに人が居ないことを確認するとそそくさと着陸しました。 ですがここでゾロゾロと皆様を解放するわけにはいきません。 だから僕は皆様の顔を引っ込めて、 傍目では僕ひとりの状態で橘旅館へと乗り込んだのです。本当です。 もちろん文句は─── 彰利 「たのもぉおおーーーーーーっ!!!!」 ───です。 一応入り口は開いたのでなんとかなりそうです。 鷹志 「はいはいただいまギャアアーーーーーーーッ!!!!」 迎えてくれたのはとても失礼な人でした。 鷹志 「な、なにしに来やがった!!」 彰利 「貴様を攫いに来やがった!!まいったか!」 鷹志 「参るかっ!!───じゃなくて……!!     あ、あのなぁ……今日は休みとかじゃないから、     真面目にやらなきゃならないんだよ……!     一緒にやってた真由美も穂岸からの連絡で誰かの結婚式に行っちまったし……!」 彰利 「俺の結婚式だ。そこに真由美さんもおわす。だから来い」 鷹志 「んなっ……!!ちょ、待て!!行きたいのはやまやまだけど───」 仲居 「あぁ坊ちゃん?真由美さんのことが気になって皿割ってばかりなくらいなら、     いっそ出かけてくれた方が利益になりますから」 鷹志 「曽根伊さぁあーーんっ!!外出許可は嬉しいけど言葉的にそれ突き刺さるよ!」 仲居 「いいからいいから。ささ、連れ出してしまってくださいな?     御園さんにはわたしから言っておきますから」 彰利 「御園さん?」 鷹志 「……旅館のお目付け役。厳しいばあさん」 彰利 「なるほど」 鷹志 「じゃ、じゃあ悪いけど頼むよ。     どうもだめだ、真由美が傍に居ないと落ち着かない」 仲居 「はいはい、どうぞ」 そうして、鷹志くんは半ば追い出されるような感じに旅館から出た。 鷹志くんが仲間に加わった!! 彰利 「で、次は?」 閏璃 「心のグッジョブ、柿崎だな」 鷹志 「なんだ、あいつも巻き込むのか?」 閏璃 「来流美がさ、そうじゃないと三馬鹿が揃わないって悲しむから」 来流美「たんなる捏造だから気にしないで」 鷹志 「いつものことだろ───つーか……うおわぁっ!!?     ど、どどどどっから顔出してんだよお前ら!!」 鷹志くんが今頃、僕の体から顔を出して喋っているみなさんに気づきました。 案外能天気なのかもしれません。 閏璃 「実は俺達は悪魔超人だったんだ。だから悪魔将軍のボディーパーツになってる」 鷹志 「なんでもないようにいつもの冗談言うなよ!!     えっ……いやおい!どうなってんだよこれ!!」 閏璃 「サンシャインパワ〜〜ッ!!!」 コパァンッ!! 鷹志 「痛ェッ!!」 黒から手を伸ばした閏璃凍弥が、鷹志くんをスリッパで叩きます。 いい音が鳴りました。 閏璃 「な?サンシャインだろ?」 鷹志 「スリッパで叩く行為の何処がサンシャインなんだよ!!」 閏璃 「実はサンシャインは帽子とコートがとても似合わないんだ」 鷹志 「解りきったことだし関係ねぇ!!」 まったくでした。 彰利 「それで?急いでると言っとるのですけどね」 来流美「ほっといたらずっと続けるわよ?     わたしが案内するわ、とりあえず橘くんも悪魔将軍のパーツにしちゃって」 彰利 「だれが悪魔将軍ですか……ダイヤモンドパワ〜〜〜ッ!!」 とか言いつつも僕は体を黒にして、彼の体を通り抜けるようにして黒に閉じ込めました。 鷹志 「オッ……オワッ!?な、なんか体がバラバラになったような感覚……」 彰利 「では飛びますよ?」 夜華 「や、やめてくれ!!歩いていこう!なっ!?」 彰利 「ややっ!?どぎゃんしたとよ夜華さん!さっきまで黙ってたのに!」 夜華 「願ってただけだ!だから空を飛ぶのはやめよう!!     そ、そうだ!さっきの『みっしょん』は無事に終えたんだ!     なんでも言うことを聞くという制約、ここで使わせてもらう!飛ぶな!!」 彰利 「な、なんと!!」 困りました。飛んだ方が早いというのに、夜華さんはそれを断固として拒否します。 未来の妻にこげなことお願いされては、強引に押し通すわけにはいきません。 彰利 「では走りましょう。空を飛びはしないのでご安心ください」 夜華 「あ、ああ……すまない。急がなければいけないのに……」 彰利 「まあまあ。一応柿崎氏とともに彼ら彼女らを空界へ送り届けたら、     今度は他の知り合いも連れてこなきゃならんので」 夜華 「……?他の?誰だ?」 彰利 「んー……恩人と知り合いだぁね。ミズノおばちゃんとシズノおばちゃんと、     そいから俊也と夏純ちゃんと佐知子さ……ババァも呼ばねば。     雪子さんは───今何処に住んでんのかなぁ。     ついでに未来の皆様や天界人の皆様を呼ぶのもいいね」 なんてことでしょう。 テリー教官には知り合いは居ないだのと言っておきながら、何気に結構居るようです。 これはこんなところでグズグズしている場合ではありません。 彰利 「飛ばしますよ!?」 だから僕は走りました。 『飛翔』はしませんでしたが、 建物と建物の間をジャンプしたり、時には垂直の壁を駆けたり。 皆様は叫び、夜華さんは恐怖のあまり声を無くし、やがて─── ───……。 やがて僕らは柿崎邸へと辿り着いたのです。 夜華さんを気絶に導いた状態で。 邸といっても、豪邸ではないただの普通の家ですのでお気にならさずに。 彰利 「さて……閏璃凍弥よ。なにかステキな招待の仕方はないかね?」 閏璃 「そう来ると思ってカセットウォークマンと     単三電池で機能する便利な小型スピーカーを用意した。     流すのはもちろんZTTがお送りするテレフォン民話、キッチョム話だ。     柿崎を招待するならこれしかない」 彰利 「わざわざ録音してたん?あれもうとっくに終わってるっしょ」 来流美「まあ、凍弥って昔っから理解できないことだけには強かったから」 閏璃 「まさか柿崎がソレにハマるとは思いもしなかったが。スイッチらオン」 カチリ…… チャ〜ンチャカッチャチャーチャカチャッチャッチャ〜チャチャッチャッチャ〜ン♪ 閏璃凍弥がウォークマンのスイッチを押すと、そこから懐かしの音楽が聞こえ始めました。 ウォークメン『ZTTがお送りするテレフォン民話、キッチョム話』 ガラァッ!! 全員 『うおっ!?』 キッチョム話が発動すると同時に、 目を閉じて眠ったままの男がベランダの窓を開けて出てきました。 そして音声に誘われるがままに前へと進み───ズルッ、ドグシャア!! 全員 『あ……おわぁああああーーーーーーーっ!!!!』 遥かなる大地に落下しました。 柿崎 「あい、いぢぢぢぢ……!!な、なんだぁ……?」 でも彼は平気のようでした。 平然と目を開くと、頭をさすりながらも立ち上がったのです。 全員 『す───《ゴクリ……》───すげぇ……』 由未絵さんを除いた皆さんが一斉に息を呑みました。 それはそうです、二回から落ちたというのに未だにキッチョムに誘われるまま、 彼はウォークメンへと寄っていくのです。 柿崎 「はぁ……やっぱキッチョムはいいよなぁ……って。     お前らここでなにやってんだ?つーか……どういう状態なんだ?それ」 閏璃 「いや、言うべきことの順序が滅茶苦茶だお前」 来流美「まず最初に言うのがキッチョムね……さすがだわ」 鷹志 「柿崎、お前体なんともないのか?」 柿崎 「んあー……そういやなんか体が痛いような……。     つーかさ、なんで俺、外で寝てたんだ?」 全員 『……やっぱりすげぇ……』 あまりの出来事に私達は大変驚きました。 でもそうそう構っているわけにはいきません。 僕は柿崎くんが何かを喋る前に黒で飲み込むと、さっさと転移を実行しました。 ───……。 ……。 ゴォオオオオ…… 彰利 「フ〜〜〜ア〜〜〜ムア〜〜〜〜〜〜〜イ!!!!!」 そうして、僕は朝月俊也が住む遥か遠い場所まで訪れていました。 いえ、住んでいたらいいと思う場所に訪れていました。 何故なら僕は彼の家など知りません。 ですが高い場所を見つけたのでこうしてフーアムアイを叫んでいます。 ちなみに閏璃凍弥率いる彼ら彼女らは既に空界へ送ってあります。 思い切り驚かれていましたが、その場所は確かに彼らの心を擽ったのでしょう。 ファンタジー万歳と叫びながら、彼らははしゃぎ合いました。 もちろんその騒ぎで眠っていた原中の猛者どもが起き出してきて…… いえ、怒りもしないで一緒になって騒ぎ始めました。 彰利 「夜にここに来たのはマイナス点でした。     こんな時間にあやつが外をうろついているわけがない」 それはそれとして、どうしたものでしょう。 以前ここらで会ったのは偶然でした。 『旅に出る』とか言いながら出なかった時のお話です。 どうしたものでしょう。 彰利 「夜華さん、気配で解りませんか?」 僕は黒の中に便利に収納していた夜華さんに声をかけます。 すると夜華さんは目を閉じて───『探す対象がどんな相手か解らない』と言いました。 そういえばそうでした。迂闊です。 彰利 「仕方ない。ならば家を通過しながら虱潰しに探しましょう」 幸いここらには家が少ないのです。 あまり苦労せずに探し当てられる筈です。本当です。 彰利 「どこに行きやがった〜……」 そうと決まれば話は早いです。 僕は黒を操作して体をドドリアさんにすると、 その状態で空を飛んで彼と彼女らを探し始めました。 ですがドドリアさんの姿をしている限り、 絶対に見つからないだろうという確信を胸に、すぐに変身を解きました。 なにがやりたかったんでしょうか僕は。 ───……。 ……。 ズズ…… 彰利 『ミツケタ』 死神王化(影鎌繰り殺ぐ闇黒の秩序完全解放)しながら壁抜けしつつ発見した彼。 この歳で同棲とはやってくれます。 彰利 『さて、どうしたものかな』 僕の心の中はとても落ち着いています。 それはとてもステキなことですが、 何も口調を変えることは無いとか思っていたりもします。 しかも死神王になっていると霊的な存在がすぐにとんずらします。 魂葬されるとでも思っているのでしょうか。 彰利 『……ふむ。問答無用で連れてゆくとしよう』 考えていても仕方がありません。 僕は黒を動かすと彼をそっと飲み込み、 続いて別の部屋に居る夏純ちゃんとババァを飲み込みました。 落ち着いた真面目な状態ではからかうことすら思い浮かびません。 これは仕方の無いことです。 ですがこの方が早いということで、僕は早速シズノおばちゃんの住む孤児院と、 ミズノおばちゃんが住む漣高等学校の傍へと降り立ちました。 そこで問答無用でふたりを食らい、 あっという間にミッションをコンプリートさせたのです。本当です。 ───……。 ……。 デテンテテコテコ 彰利 「一切合財承知の助ーーーッ!!───続き忘れた!!」 なにはなくとも気分は猛烈です。 ハイ、ただいま僕は全ての知り合いを掻き集めた状態で空界に居ます。 雪子さんも案外あっさりと見つかり(穂岸さん家のノアさんに住所を聞いた)、 今こうして僕らは空界に集ったのです。 って、ミッションが済んだならもう普通の言葉使いでいいか。 彰利 「ミッション済んだぞテリーこの野郎」 中井出「なんでいきなり喧嘩腰なんだよ……。     あ、じゃあ仲人のスピーチの聞き役になってくれないか?」 彰利 「あの……俺、そのスピーチを本番で聞く人なんスけど」 中井出「貴重な体験だと思って受け取ってくれ」 彰利 「断固として断る!ていうか寝ましょう!     俺確かにドッキリコしてて眠れそうになかったけど、今なら寝れる気がする!     つーか悠介は?一応晦家の人々は来てるみたいだけど」 中井出「人々の衣装を創造してる。     予想以上にヘンテコな結婚式になりそうだが……本当にいいのか?」 彰利 「私は一向に構わんッッ!!」 中井出「なんでそこで烈海王?」 彰利 「いや、なんだか散々言われてた気がするので、こちらもと」 中井出「気持ちは解らんでもないけどさ。まあいいや。お前はどんな衣装にするんだ?」 彰利 「ふむん?」 そういやそうだ。 俺、結婚式で着るような上等な服なぞ持ってない。 こりゃやっぱり悠介任せになるんかな。 とか思ってると、庭園の悠介の家からゾロゾロと原中の猛者を始めとする皆様が溢れ出す。 その格好は様々で、まるで仮装パーティ会場にでも居るような気分になってきた。 彰利 「おっとそうだ。さあさ夜華さん?あなたも衣装をもらってきてください」 ズボァと黒から解放した夜華さん。 彼女にそう告げると軽く背中を押して、先を促す。 夜華 「あ、い、いや……衣装といってもどんなものを着ればいいのかわたしには……」 彰利 「着たいと思うものでいいんですよ。僕らは堅苦しい結婚をするのではありません。     僕らがするのは『思い出に残る結婚』です。     それに相応しい衣装を、悠介に頼んで創造してもらうのです」 夜華 「思い出に残る……うん」 夜華さんは悩んだのちにコクリと頷くと、堂々としたままに悠介の家へと歩いていった。 どんな衣装が出来るやら。 彰利 「中井出はどんな衣装にするんだ?」 中井出「クラース=F=レスター」 彰利 「……いきなりゲームキャラか」 中井出「馬鹿お前、こんな時じゃないと着る機会ないだろうが。     俺はそのためなら体に紋様を描くことすら厭わん」 彰利 「そこのところは流石だ提督」 声  「お、よー弦月〜」 彰利 「ウィ?」 中井出との会話中、ふと声をかけられて後ろを向く。 と─── 彰利   「………」 中井出  「………」 アナカリス「?」 アナカリスが居た。 彰利   「えーと……(タレ)?」 アナカリス「我ハハハハハハハ……丘野ナリナリナリナリナリナリ……」 丘野らしい。 とてもそうは見えない。 彰利 「おお、丘野くんなのか。心の息吹、感じてる?」 丘野 「いや、俺の名前ソレと違うから。苗字一緒だからって一緒にすんな」 彰利 「まあそれは捨てておくとして。その衣装……」 丘野 「おう。アナカリスだ。ちゃんと棺も出せるぞ?     凝った要望にも応えてくれるなんて、さすが晦だ。     真面目な風でその実、楽しむことが大好きらしい」 まあ悠介だし。 あいつはあいつで自分が楽しいと思ったことには積極的ですから。 彰利 「で……そっちのキミは殊戸瀬?」 殊戸瀬「……そうだけど。ヘン?」 彰利 「いや、ヘンっつーか」 殊戸瀬さんの衣装はどこぞの埋葬機関の先輩さんだった。 しっかりと黒鍵も持ってる。 でもそれよりも先に理解に至ったのは─── 彰利&中井出『丘野、お前絶対尻に敷かれるわ』 丘野    「へ?な、なんだよいきなり」 だって一方はオウサマとはいえ『棺』。 かたや一方は『埋葬機関』のおなご。 これじゃあねぇ……。 などと思っていた時です。 声  「アキちゃーん」 彰利 「むっ!?その声はキリュッち!?」 再び声を掛けられて回りを見渡すが、キリュっちは何処にもオルランドゥ。 どうなってんでしょう。もしかしてセバスチャン? 彰利 「ど、何処だセバスチャーーン!!!」 中井出「お前って人の姿が見えないといっつもそれな」 彰利 「姿が見えないっていったらコレでしょ」 中井出「そうなのか……?」 ともあれソレらしい姿を探すが……どれだ? 様々な衣装の輩が仰山おるでよ、解らんたい。 ペンギン「……あそこの妙な虚無僧がそうだ」 彰利  「へ?そうなん?ありがとうペンギンさん。つーか誰?」 ペンギン「………」 ペンギンさんがチキリと刀を見せる───って! 彰利  「夜華さん!?早ェ!!つーかなんでペンギン!?」 ペンギン「わ、悪いか。一度その、着てみたかったというか、      近くで感じてみたかったんだ。……やっぱり、似合って……ないか?」 彰利  「や、ペンギンにそう訊かれても」 ペンギンさんがゴソソと動きます。 人並みの大きさのペンギンさんには相当驚きましたが、 それでも夜華さんは微妙に修正をしてペンギンの口から自分の顔を出した。 夜華 「ど、どうだ。これなら解るだろう」 彰利 「───」 どっからどう見てもペンギンに丸飲みされかけている夜華さんだった。 ここで笑ったら負けでしょう。 僕は頑張ります。 でも正直、『丸飲みされかけている人』という印象のある人と 誓いのぶっちゅをするとなると……───うん、確かに凄まじい思い出にはなると思う。 忘れられないどころかトラウマになるかも……。 中井出(……なぁ。正直な感想と心配、囁いていいか?つーか囁く。     お前さ、どんな衣装でもいいって言ったの、後悔してないか?     ありゃどう見ても巨大ペンギンに丸飲みされかけてる人だろ……。     しかもそんな人と誓いのぶっちゅって……こう言うのもなんだけど、大丈夫か?) 彰利 (………) 友の心配が心に突き刺さりました。 まったく同じことを懸念していたようです。 彰利 「ところでキリュっち?なんで虚無僧なの?」 桐生 「一度着てみたかったの。四谷さんの如く」 彰利 「いや、そのネタ多分誰も知らんよ?ていうか覚えてるかどうか」 桐生 「尺八だって吹けるよ?」 ボエ〜〜…… 彰利 「いや、吹かんでええから」 桐生 「残念……」 キリュっちがてほてほと歩いていった。 なんだったんだろね、ほんと。 真穂 「そしてわたしは望月双角〜」 彰利 「親子揃ってなんで虚無僧系かね……」 真穂 「?ちゃんと無惨弾も出来るよ?さっきやったら灯村くんが大変なことに」 彰利 「無惨弾って……練り上げた力で巨人を作って、     そいつに自分を武器にしてもらって敵に振り落とすアレ?」 真穂 「アレ。わたしも無事じゃ済まなかったけど、灯村くんほどじゃないかな……」 ……彼になにがあったのやら……。 や、無惨弾やられたってのは解るけどさ。 声  「私を連れてこい……そう言っているのだろう?」 中井出「なにっ!?お、お前は!!」 彰利 「ミスターオリバッッ!!!」 オリバ「アンタらもう帰っていいぜ」 彰利 「いや俺結婚すんだって!主役が帰ってどうすんの!!」 オリバ「ハハハ、モチロンジョウダンダ」 中井出(ホントにパンツ一丁だ……) 彰利 (パンツだ……さすがオリバ……) 真穂 (オリバ……) 閏璃 (オリバ……オリバ!?) 柿崎 (なんでオリバが!?) 鷹志 (すげぇ……けどなんでオリバが?) サクラ(オリバです……) 俊也 (生オリバだ……) 清水 (かッ……怪力無双ッ……!!) 長井 (これほどのものかッッ……!!) 三島 (胸が……まるでケツだ……) 蒲田 (腕が……頭よりデカい……) 田辺 (だいたい技が通用するのか……?) 総員 『よし無理だ』 オリバ「……いきなりでなにがなんだか解らんのだが?」 皆さんは結局『オリバ=技が通用するのか』に行き着いたようです。 当然答えは『無理』。 サクラ「花山薫は居ないです?」 遥一郎「居ないです」 サクラ「みぅ……残念です……」 一方では漫画の中のキャラの登場に喜ぶが、出てきて欲しい人物が無理と知ると落胆した。 もし会えるなら、俺はドルバッキーに会いたいが。  ◆ドルバッキー  久保帯人氏の漫画、ゾンビパウダーに登場してきたセクシーマッスル。  人力で長い長い妙な列車もどきを漕いでいた。知り合いにクインキーとかが居る。  *神冥書房刊:『C・Tスミスって結局どういったキャラだったんだろ』より 彰利 「ところで中村よ。貴様今すぐ着るもの変えろ」 中村 「あ……やっぱり?」 中井出「って!それ『ダニエル』じゃねぇか!!気色わりぃもん創造してもらうなよ!!」 中村 「いやぁ、晦にも本気で嫌がられたよ。まいったまいった」 中井出「いいからとっとと着替えてこい!!」 中村 「わーたわーた。はぁ……なにがいいかなぁ……。     決まらなかったからダニエルにしたんだけどなぁ……」 中井出「他のならなんでも百歩譲る!だがそれだけは一歩も譲らん!!死ね!!」 中村 「うわー、すげぇ言われ様」 彰利 「で……田辺、お前」 田辺 「スピリッツ・アー・オールウェイズ・ウィズ・ィィユゥウーーーーーッ!!!!」 彰利 「おお!やっぱドン・観音寺か!」 田辺 「おうとも!ちゃんとキャノンボールも出せるんだぜ!?さっすが晦!!」 ボハハハハー!と笑う観音寺田辺。 俺はその横の清水を見て───愕然とした。 彰利 「清水。キミ……」 清水 「い、いや……俺ちゃんと『キャプテンアメリカ』にしてくれって言ったんだ……。     言ったんだよ俺……ちゃんと言ったんだ……。それなのに……」 チラリと見た清水は、なにやらジャングルの王者のような格好だった。 いや、ターちゃんよりももっとワイルドといった感じというか…… 一言で言えばキャプテンアフリカ……。 閏璃 「キャプテンアフリカか。     久しぶりに会ったっていうのに随分とあんまりな再会だな」 清水 「ふ……ふふふ……よぅ閏璃……。その後、支左見谷とはどうだよ……」 閏璃 「順調だ」 清水 「そうか……ふふ……そうか……ははははは……」 彰利 「おお、乾いた笑いだ」 来流美「随分ワイルドになったわね……」 由未絵「……清水くんなの?」 清水 「!!イ、イヤァアアアーーーーーーッ!!!!     見ないでぇえええええーーーーーーーーっ!!!!!」 ザガザガザガ!!───清水は逃げ出した!! 田辺 「清水!?おいどうしたんだ清水ーーーっ!!!!」 柿崎 「哀れな……」 鷹志 「ありゃあしばらく涙は止まらないぞ……」 由未絵「?」 彰利 「まあ見られたくない人に珍体を見られた清水はほっといて。     キミたちのその衣装は……なんぞ?」 鷹志 「トーテムポール」 柿崎 「カオヤイ・ソンチャム」 閏璃 「テウーチ・ソバット」 来流美「邪神ゲンドラシル」 由未絵「えっと……トマトマン」 彰利 「………」 コメント出来ませんでした。 特にカオヤイ・ソンチャムとテウーチ・ソバット。 遥一郎「俺はBUKIボーイだ」 澄音 「僕は仮面ライダーアマゾンだよ」 彰利 「なんで敢えてアマゾンなんだ?」 澄音 「僕の中で仮面ライダーといったらアマゾンなんだよ」 彰利 「そ、そスか……で、桃色ッ子は?」 サクラ「お嬢です」 彰利 「………」 確かに『お嬢』だ。 なにやら妙に似合ってる。 ノア     「知識が偏りすぎてますよサクラ」 サクラ    「失礼ですノア。ちゃんとアルキメデスも喋るです」 猫のぬいぐるみ『我輩はアルキメデス!無機物ではあるが、まあ気にするな!』 遥一郎    「……ほんとに喋ったな」 彰利     「ほんとね……で、ノアちゃんのそれは……もしかしてアレ?」 ノア     「アレです」 彼女はメイド服だった。 専属メイドさんでこの型のメイド服といえば彼女しか居ない。 彰利 「ちなみにそちらのお嬢さんは?」 真由美「え?世良田二郎三郎元信」 彰利 「………」 なんでここにきて影武者徳川家康……? 中井出「……まあみんな普通じゃないってことで。     お前もそろそろ衣装創ってもらったらどうだ?」 彰利 「む。せやね、それがいい」 確かに衣装くらいは決めておいて損はない。 あとは寝て起きるだけなんだし、それくらいの準備はしておこう。 そう思った俺は、悠介の家へと足を運んだのだった。 ───……。 ……。 で……そこに壬無月斬紅郎が居ました。 斬紅郎「ン───って、彰利か」 彰利 「彰利か、って……悠介?」 斬紅郎「そうだが、衣装変えただけで解らなくなるもんか?」 彰利 「……………」 下から上まで見てみる───が、なんというか違和感が無い。 顔とか骨格までは変えてないけど、なんつーかこういう服でも悠介自身に違和感が無い。 なんと言えばいいのか……さすがとしか言いようが無い。 髪型だってオールバックっぽくしただけなのになぁ。 彰利 「ちょいといい?ここをこうしてこう……むう!完璧じゃ!!」 悠介 「……あのなぁ」 髪型をちょちょいといじくった。 ちょいとと言っても、我が髪型に似せた感じでござるが。 彰利 「誰か見間違えたりすっかな」 悠介 「輪郭自体違うのに誰が間違うってんだよ」 彰利 「いやいやいちいちもっとも!!つーかさ、キミその格好で結婚式すんの?」 悠介 「もちろんだ」 即答でした。 彰利 「じゃあさ、俺にも衣装創ってくれ」 悠介 「いいぞ?どんなのがいい?」 彰利 「護廷十三隊十二番隊隊長及び技術開発局二代目局長涅マユリ様」 悠介 「却下」 彰利 「なんで!?」 悠介 「お前がマユリ様になると碌なことが無いって聞いてるからだ。他のにしろ」 彰利 「え〜……?」 悠介 「藤巻十三なんかどうだ?」 彰利 「全力で遠慮します」 それをやったらもう思い出というよりは屈辱の結婚式になりそうだ。 絶対にトラウマになるよ。 しかも『夢精ウェディンガー』として一生十字架背負っていかねばならないと思う。 そうなったらもうお天道様の下歩けねぇよ俺……。 彰利 「ハロウィン───は一度やったしなぁ。     仮面ライダーも名前もじったヲイダーで済ませたし。     校務仮面……はやる権利を剥奪するようなことしちまったし。     よし!!海原雄山にしてくれ!!」 悠介 「微食倶楽部か?」 彰利 「美食倶楽部で」 悠介 「じゃあダメだ」 彰利 「なぜぇええ!!」 悠介 「馬鹿お前、     微食倶楽部の主人たるお前が微食倶楽部を裏切ったらなにも残らないだろうが。     そうなったら一体誰が料理にイチャモンつけるっていうんだ」 彰利 「海原雄山(うなばらおっさん)の存在意義なんてやっぱそんなもんか……」 自覚はしてるからいいんだけどね。 さて……どうしたもんかな。 なにか衝撃的───インパクト抜群のステキな格好は無いものか。 妖怪腐れ外道……は、まるっきりターちゃんスタイルだよな。 しかも下半身隠しきれて無いから民の視線が痛いほど集中すること請け合い。ダメだ。 じゃあ───おお! 彰利 「ロビンだ!ロビンマスクにしてくれ!!」 悠介 「いいが……本気か?」 彰利 「本気だ!!」 悠介 「大衆の面前でロビンマスクになることになるが……いいんだな?」 彰利 「?なにかヘンかねそれ」 悠介 「いや……いいんだったらいいが。     じゃあこの『ロビンズ・イコン』を首に掛けて、     外にあるあの石柱を持ち上げてくれ」 彰利 「オオッ!!」 こうして僕は人間から超人へと生まれ変わるために駆け出した。 けど───僕は気づくべきだったのかもしれません。 彼の創造が完璧なもので、行動の全てに手抜きが無いのだということに─── ───……。 ……。 キィーーン!キィーーン!! 彰利 「おおっ!ロビンズ・イコンが反応を!!」 ロビンズ・イコンが光り輝き、僕を導きます。 彰利 「こっちだ!」 僕はなんの疑いもなく光が示す通りの方向へと歩き、やがて─── 彰利 「これかぁーーーっ!!す、すごい!黄金に輝いている!!」 僕は黄金に光り輝く石柱を見つけたのです。 彰利 「ようしオレの運命を変えるのはこの石だぁ〜〜〜っ!!」 僕は運命を変えるためにストーンヘンジ(もどき)へと駆け出しました。 全てはロビンズ・イコンの導きのままに。 彰利 「ホハッ!」 ドガァ!! 彰利 「テハッ!」 ガゴォ!! ともあれ僕はあまり気合の入ってなさそうな掛け声とともに石柱を支える石を倒し、 その上に存在していたロビンの紋章がついた石を両手で受け止めます。 すると───ババババババ!!! 彰利 「ウオッ!!」 僕の体に鋭い電流のようなものが流れます。 しかもその途端に筋肉が異常に発達していき、 体がどんどんとマッスルになってゆくのです。 けれどそれは外見だけで、思うほどの筋力が無いことなど簡単に理解出来ました。 少なくとも自分で鍛えた力、黒の方が強かったです。 ですがそんな力が影を潜める一方で、僕の体は勝手にマッスルになっていきます。 しかもモリモリとヘンな音が鳴ってます。 まるでビッグをしているようで、 僕は体の変調に苦しみながらもとても恥ずかしい気分を味わっています。 何故って、本日ここに集まってくれた皆様が僕をジッと見守っているからです。 モリモリモリモリ……!! 彰利 「ウギャアア〜〜〜〜ッ!!!!」 僕は痛みと恥ずかしさで逃げ出したい気分でいっぱいでした。 でも多分、超人化するまでは離してはいけないんだと思います。 創造が創造でなければいけないのと同じように、 ここで投げ出したら中途半端な力を持つことになると思ったからです。 多分ここでストーンヘンジを置いたら僕の筋肉はこのままです。 全てが終わったら、 この石か超人の力と引き換えにした“黒”を回収しなければなりません。 彰利 「アアア〜〜〜ッ!!!」 中井出「み、見ろ!彰利が苦しんでる!!」 彰利 「アアア〜〜〜ッ!!!」 丘野 「み、見ろ!弦月の服が筋肉の隆起で破れてゆく!!」 彰利 「アアアア〜〜〜ッ!!!」 中村 「み、見ろ!弦月の筋肉がボコォ!とかバコォ!とか鳴って巨大化してる!!」 彰利 「アガガガ〜〜〜ッ!!!」 田辺 「つーかオイ!あまりのマッスルっぷりにズボンやパンツまで裂けたぞ!?」 彰利 「ゲェエエエーーーーーーッ!!!!!」 麻衣香「す…すごい!元のロビンマスクの鋼の肉体だわ〜〜〜っ!!」 彰利 「イヤァアアアアアアアーーーーーーーッ!!!見ないでぇえーーーーっ!!!」 この時僕はようやく悟ったのです。 そう、あまりにも気づくのが遅すぎたのです。 ストーンヘンジで超人化するロビンといえばアレ。 僕は悠介くんが念を入れて訊いてきたことを 何故聞き返さなかったのかと本気で後悔しました。 悠介 「いいやまだだ!ロビンマスクが完全体となるにはこいつが必要だぜ!」 何処からか、修行者が持つような物入れを手にした悠介くんが現れ、 そこからロビンアーマーを取り出して僕に投げつけます。 彰利 「!ヘアアーーーッ!!」 こうなったらもうフルティンで居るよりゃマシです。 僕は咄嗟に離したストーンヘンジを、それが落ちる前に踏み台にして跳躍しました。 そして飛んでくる篭手と具足をグワキィグワキィと装着します。 というか何故先にパンツをくれなかったのでしょうか。 これでは篭手と具足のみでケツを見せながら浮遊する変態です。 中井出「バハハハハハハハ!!ブッハッ!!ぶわははははははは!!!!」 丘野 「ぶぼほっ!かははははははははは!!!!」 現に原中の皆様や招待した皆様は爆笑中です。 原中の女性軍も恥らいながらも、パンツと胸当てが投げられるのを ケツを見せながら浮かんで待っている僕を見て、本気で笑い転げています。 悠介 「さあお次は……こいつだぁーーーーっ!!」 ここにきてようやくパンツと胸当てが投げられます。 具足を穿いた状態なのに何故か横になりながらケツを見せて宙を浮いていた僕は、 飛んでくるパーツを見てようやく安堵します。 とりあえずフルティンからは脱することが出来るからです。本当です。 彰利 「ヒョオオ〜〜〜ッ!!」 キュル───グワキィ!! 僕はまず、蟹股フルチン状態で横回転したのちにパンツを装着。 次に胸当てをグワァキィン!と装着。 ギャラリーはもう、蟹股フルチン横回転の時点で泣くほど笑いまくっています。 神様、僕もう穴があったら入りたいです。 悠介 「さあ、これで“仮面の貴公子”の完成だぁーーーっ!!!」 神に祈っている余裕も無く投げられるロビンのマスク。 僕は涙を拭うこともなく構え、もちろんそれを装着するために無駄な動きをしていきます。 なんでわざわざ逆さま状態で被る必要があったのでしょう。 そこのところを僕はロビンに問い詰めたいです。 ……むしろ蟹股フルチン横回転のところを念入りに。 彰利 「シュアアーーーッ!!!」 グワァキィ!! ───そうして、とうとう僕はロビンのマスクを装着して完璧なロビンとなりました。 ですが地面に降り立つ僕を見ても、 誰もアリサの真似をして『…ロビン!』と言ってはくれませんでした。 麻衣香「かはっ……!!ぷぐっ……くふふはっ……!!!」 真穂 「けほっ!こほっ!!あ───あははははははははは!!!!」 島田 「がははははははは!!!ぐっは!がはははふふははははは!!!」 何故なら皆様はそれどころじゃあなかったからです。 今なら人間の状態の時に不良に絡まれた際、 『グ…グウウ〜〜〜』と言っていたロビンの気持ちが解ります。 でも蟹股フルチンで『ヒョオオ〜〜〜ッ』とか言ってた彼の気持ちは一生解りません。 これは絶対に絶対です。 ロビン「グ……グウウ〜〜〜ッ、このロビンが復活したからには     イギリス国民には指一本触れさせはしない!」 中井出「バハハハハハハハ!!!バーーーハハハハハハハ!!!     ちゃ、ちゃんと『グ……グウウ〜〜〜ッ』って言ってるよ!!     あはっ、あはははははははははは!!!ダメだ腹痛ぇ!!!」 なんだかもう僕は超人になった途端に泣きたくなりました。 だから僕はラグビーで培ったタックルをしようと構え、中井出に向かって突進しました。 ロビン「そうりゃあーーーっ!!!」 しかし先ほどまで立って笑っていた彼が、突然体を折って屈みながら笑い出したのです。 立っていられなくなるほどおかしかったのでしょう。 当然僕はそんな彼に足を取られ、勢いのままに宙を舞い、 その先にあった木に右肩からガガンと衝突してしまったのです。 ロビン「グ……グウウ!」 これはたまりません。 僕はあまりの痛さに右肩を押さえながら転がってしまいました。 硬度9サファイヤの鎧がなんの役にも立ってません。 僕はロビンマスクに殺意を覚えました。 ロビン「グ……グウウ〜〜〜ッ」 でも僕は思うのです。 ロビンマスクっていくらなんでも『グ……グウウ〜〜〜ッ』と言いすぎです。 お陰で『またグウウ〜〜〜ッて言ってる』とか言われて笑われ続けています。 僕の涙は止まりません。 たまらず、元の姿に戻ろうとストーンヘンジを持ち上げますが、なんの効果もありません。 ロビン「う……お、オレを人間に戻してくれ〜〜〜っ!!     考えてみればこの姿では誓いのキスもできーーーん!!」 悠介 「悪い、そのストーンヘンジ、結婚式が終わるまで力を戻さないように創造した」 ロビン「ゲェエエエーーーーーーーッ!!!!!」 なんていうかもう、口から素直に『ゲェエー』と出ました。 涙は勢いを増すばかりです。 黒を行使しようとしても、一切使用できません。 代わりに割れたガラスを握りしめたら鈴が出来る程度の能力です。 ロビンだからメイルストロームパワーもありません。 今にして思います……どうして僕はロビンなんぞになろうと思ったのでしょう……。 先に立つ後悔があれば苦労はしないという教訓なら、もう腐るほど味わっています。 ……ではこんな事態になったのは、ひとえに僕に学習能力が無いということでしょうか。 悠介 「じゃあみんな、そろそろ本格的に準備にとりかかろうか」 総員 『げほっ……かはっ……む、無理……』 悠介 「……動けなくなるほど笑うこたないだろ……」 その場で蹲る皆さんのもとに歩き、 疲れと笑いすぎによる腹痛を治める理力を振り掛ける悠介くん。 それでその場が収まると思ったのでしょうが、彼ら彼女らは再び笑い始めました。 それはそうです。 笑える余裕が出来れば誰だって何度でも笑います。 その笑撃が収まるまで、きっと笑い続けます。 そして僕は、顔を隠したまま結婚するという事実を今さらながらに大後悔したのです。 これでは僕の思い出というよりロビンマスクの思い出です。 神様……僕は本当に馬鹿なんでしょうか……。 Next Menu back