───騒ぎ騒げよ馬鹿者ども───
【ケース86:弦月彰利(人斬り抜刀再)/“美”よ、“愛”よ、今こそ───目覚めよ!】 ガランゴロンガランゴロン!! 中井出「シャァアンドラの火を灯せぇええーーーーーっ!!!!」 そうして向かえた結婚式当日───というか昼。 大戦士カルガラの格好をした中井出とモンブラン=ノーランドの格好をした綾瀬が、 一応と創造された金色のウェディングベル(黄金の大鐘楼)を鳴らしまくる。 中井出のやつ、クラースくんになるのはやめたらしい。 麻衣香    「カルガラァッ……!!」 中井出    「ノーランドォオッ……!!」 中井出&麻衣香『シャンドラの火を灯せぇえええーーーーっ!!!』 ガンゴラガンゴラゴララゴガラゴロ!!ズリャッ───ゴワッシャァアアンッ!!! 総員 『ゲエエーーーッ!!シャンドラの火が壊れたーーーっ!!』 中井出「貴様ノーランド!なにをやっている!!」 麻衣香「貴様が落としたんだカルガラ!!私は悪くないぞ!!」 とんだ永遠の親友だった。 綾瀬も随分成り切っている。 ───さて、それはそれとして。 一同が寝たのは結局朝方近くであり、昼過ぎまで寝ていたというのは実際のところである。 が、悠介は逸早く起きると空界の知人を呼びに回ったそうで、 今では様々な方々が揃っている。 人や精霊や妖精が入り乱れる中で見たこともない人も居て、 タレ?と思ったりすることもしばしば。 悠介の知り合いなんかね。 ロビン「ちょっと失礼キミ、何者だ?     これを機に暗殺などを考えているのならこのロビン、容赦せんぞ〜〜っ」 男  「……寄るな暑苦しい。     ただでさえこんな格好で窮屈だ。怒りに触れぬうちに失せろ」 ロビン「な、なに〜〜〜っ!?」 男2 「大体貴様こそ何者だ。怪しい面などつけていないで顔くらい見せろ」 ロビン「これは超人の証だから見せられん。というより……あれ?     なぁんかキミたちの声、どっかで───」 男3 「……?貴様、王の周りをいつもうろちょろしているあの男か?」 ロビン「へ?ってこの声───緑のおっちゃん!?」 男3 「誰が緑のおっちゃんか!!口の利き方に気をつけろたわけ者が!!」 ロビン「うへぇ……」 どうやら間違いないらしい。 もしかして悠介が竜の在り方を書き換えて人間にしたのか……? 竜王の皆様がまさかの人間化……こりゃ驚いた。 なるほどなるほど、道理で戻ってきた悠介が随分とぐったりしてたわけだ。 ロビン「しかし皆様結構若々しいんだねぇ。誰なんだかまるで解らんかった」 オレはそれぞれ、髪の色の違う男達を見渡した。 髪の色で見分けはつくが、まあ……違和感は拭い去れない。 赤髪の男「誰が誰と解らぬなら髪の色で見分けろ。当然私はドラグネイルだが」 蒼髪の男「言うまでも無いが。マグナスだ」 黄髪の男「シュバルドラインだ」 緑髪の男「グルグリーズだ」 ロビン 「ロビンマスクだ」 皆様が名乗りをあげる中、僕も自己紹介をしました。 が───なんなんでしょうか。 なんだかとても悲しくなってきました。 竜王たちの名乗りとロビンの名乗りでは差がありすぎる、というか……。 ロビン     「あ……えっと、その。飛竜たちも居るんかな」 マグナス    「向こうで人間の女どもに『しゃしん』とやらを撮られている」 ロビン     「へえ……どげな顔なんデショ」 ドラグネイル  「外見から見れば貴様らとそう変わらない」 グルグリーズ  「ちょっとした子供でも持った気分だ。複雑なものだ」 シュバルドライン「ああして囲まれては居るが、そろそろ疲れが表に出る頃だろう」 ロビン     「へ?」 シュバちゃんに促されるように人垣を見る。 と─── 声  「だぁあっ!!散れ人間ども!!見世物じゃねぇぞ!!」 高い声が響き渡った。 すると蜘蛛の子が散開するようにとんずらする原中の猛者ども。 そうして開けた景色の先には───ガラの悪そうな男と、落ち着いた雰囲気を持つ女と、 どこかに凄みを持っている男と、どこか楽しそうにクックと笑っている男が居た。 あ、あとその後ろにもうひとり。 それぞれガラの悪い男は蒼髪で、落ち着いた雰囲気の女は緑髪。 凄みを持った男は赤髪で、楽しそうな男は紫髪。 後ろの男は黒髪だった。 つまり───あれがそう? アーガスィー  「ったく、冗談じゃねぇ。これだからオウサマ以外の人間ってのは」 ディルゼイル  「腐るな、アーガスィー。たまにはこういう感覚も悪くない」 ヴァルトゥドゥス「その通りだ。それに騒いでは王の迷惑になる」 ヘイルカイト  「私としてはこの窮屈なものを脱げれば文句は無いが」 ジハード    「やめておけ。王に『それだけはするな』と釘を刺されているだろう」 ヘイルカイト  「……まったく、私は嫌だと言ったんだがな……」 ディルゼイル  「言った割に、          人間の姿にすると言われた時はすぐに飛びついてきたらしいが?」 ヘイルカイト  「気の迷いだ。今は後悔している」 各々がなにやらぶつくさと呟いている。 こちらも髪の色で見分けはつくが───つーかヴァルトゥドゥスって雌だったん!? ロビン     「いや、それはそれとして。そういやさ。紫竜王は?それとその側近も」 グルグリーズ  「全ての竜王が留守にするわけにはいかんだろうと、          己の領域で世界を見守っている」 ロビン     「そ、そスか」 マグナス    「それで?今からなにが始まるというのだ人間」 ロビン     「仮装結婚式ですよ。          皆様各々が様々な格好で、結婚する人を祝うのですますよ」 マグナス    「結婚……?ああ、そういえば          人間はそんなことをすると聞いたことがある」 グルグリーズ  「なるほど?つまりここで始まるのは王の結婚式ということか」 シュバルドライン「王の相手はどんなヤツなのだ?          あの王の相手だ、さぞや豪気なのだろうよ」 ロビン     「いえ、半端モンの死神ですよ?人と死神のハーフです」 シュバルドライン「……解らんな。王は何故そんな存在を娶る?」 ロビン     「好きだからっしょ。バッチグーっしょ」 シュバルドライン「種族の繁栄に選り好みなど必要か?          我ら竜族は強い雌竜と交わり子を産む。          そこに外見がどうのなどという概念は無い」 ロビン     「おおう……こげなところで種族の差が。強けりゃいいってこと?」 マグナス    「そういうことだ。竜族はそうして、より強い血を残してゆく」 ロビン     「あ〜、俺そういうのちと苦手。自分の血の所為で散々な目に合ったし。          それってさ、もしその血から弱い竜族が産まれたら          いろいろと疎まれるってことだろ?」 シュバルドライン「疎まれはしない。          どれだけ弱かろうが、意思さえ強ければ誇りは潰えないのだからな」 ロビン     「む……」 俺は濃い血を持ちながらも能力の開化が出来なかったために疎まれた。 産まれてきたことに後悔するような状況の中、ただ母さんだけが味方で─── でも結局その母さんにも裏切られて。 そうして俺の味方が悠介ひとりになったあの時。 それを思い出すと、どうしてもさっきのような質問をせずにはいられなかった。 ……結局。 どれだけ時間が経とうが、 子供の頃に頭の中に植えつけられた辛い記憶ってのは消えないものなのだ。 まったく嫌ンなるぜ……過去ってのは。 思い出が残るのはいいことだけど、 どうして楽しい思い出なんかより辛い日々の方が記憶に残ってしまうのだろう。 人間ってのは、こんなところばっかり上手く出来てない。 ロビン「まあ今の僕は人間じゃなくて超人だから関係ないさー!」 そんなことを叫んでみて、どうせならピエロにしてもらえばよかったと本気で後悔。 そ、そうだ!デスティニーブレイカーで、 結婚式が終わるまで元に戻れないって決まりごとを破壊しちまえば─── って!だから鎌も行使出来ないんだってばよ!!戻れないんだってばよ!! ナルトアイスだってばよ!!ナルト8巻だってばよ!!よし訳解らん!! 凍弥 「ウェディングベル、元に戻したぞー」 椛  「はぁ……なんでこんなことを……」 中井出「シャンドラの火を灯せぇええーーーーーーーっ!!!!」 ゴンガラゴンガラドゴゴシャバシャアーーーーーーンッ!!! 中井出「きっ……気ン持ちいい〜〜〜〜っ!!!!」 鷹志 「ほうほう、コレが霧波川の子孫か……ほーほーほー、     なるほどなるほど、確かに凍弥によく似てるわ」 閏璃 「なるほどなるほど、これが来流美の孫か。確かに俺にどことなく似てるわ。     ……というかさ、俺の血を引いてるわけでもないのにどうして似てるんだ?」 凍弥 「や、俺に訊かれても」 来流美「へぇ……確かにね。でも性格はどうなんだか」 鷹志 「凍弥に似てたら救いが無いな、うん」 閏璃 「友よ。それは友の居る傍で言うようなことじゃないと思うんだが」 柿崎 「たまにはいいクスリだろ」 来流美「ていうかさ、橘くん?真由美さんはどうしたの?」 鷹志 「向こうで料理並べてる。もう始まってるってのになぁ。     ていうかさ、なんで主役の片割れのロビンがこんなところうろついてるんだ?」 ロビン「自慢の上腕二頭筋と大胸筋の張りを見てもらおうと、トレーニング中だったんだ」 真穂 「って居たぁーーっ!!ちょ、なにやってるの弦月くん!みんな待ってるよ!?」 ロビン「………」 真穂 「弦月くん!?」 ロビン「………」 真穂 「……ロビンマスク?」 ロビン「オオ、どうしたお嬢さん。この紳士超人になにかようかな」 来流美「蟹股フルチンで回転する人って紳士って言えるのかしら」 総員 『ぶふしゅっ!!……〜〜〜〜……!!』 ロビン「………」 聞き耳を立てていたらしい人々が一斉に吹き出した。 くそ、なんでこんなことになってしまったのだろう……。 俺は……間違って───いたんだろうなぁ……。 ともあれ俺は真穂さんに手を引かれ、花嫁さんたちが待つ庭園の家へと案内された。 【ケース87:晦悠介/ウェルニードユーアゲインキャッチトゥマスティニング(謎)】 悠介 「……キレイだ───」 ようやく化粧が終わったとかで、俺はルナの待つ一室へと通された。 そこで待っていたのは憧れだったらしいウェディングドレスを身に纏ったルナだった。 悠介 「───朝日が」 ルナ 「悠介、今昼」 悠介 「うむ、馬子にも衣装。ハッキリ言って似合ってはいるがキレイだとは思わん。     というか思えん。俺って景色以外に対するそういう感性が乏しいのかもしれん」 ルナ 「ウソでもいいからキレイだ〜とか言ってほしいんだけどなぁ〜……ダメ?」 悠介 「キレイだ───脇の花瓶が」 ルナ 「花瓶なんて無いから」 悠介 「……あのな。俺が素直に人の姿をキレイだとか言うの、似合うと思ってるのか?」 ルナ 「全然。だって文鎮高島田の時もキレイの一言も無かったし」 悠介 「一応自分というものを弁えての発言だったわけだが……おかしいか?」 ルナ 「ううん全然。わたし、悠介のそういう悠介らしいところが好きだから。     ぶっきらぼうだもんね〜、悠介って」 悠介 「やかましい」 今鏡を見たら、顔の紅い馬鹿者が映ることだろう。 面と向かって感情をぶつけられるのには未だ慣れない。 どこまでガキなんだろうな、俺は。 悠介 (……いや) ガキだっていいさ。 結婚してもどうしても、あいつと一緒にいつまでだってガキのように馬鹿をしよう。 結局最後はいつも俺とあいつ。 それは、昔からずっと続いてる俺達の関係なんだから。 ……ほんと、あいつに出会えてよかった。 ルナ 「ぶーぶー、ゆーすけー?     これから結婚するっていうのに他の人のこと考えてるでしょー」 悠介 「うん?ああ、はは……解るか?」 ルナ 「これでも女の子ですから」 悠介 「女は女だが……『子』はつけていい歳か?」 ルナ 「女はいつでも心の中は永遠の16なの」 悠介 「そか。そらよかった。     それでもうちょいそのガキっぽい性格改めてくれりゃ俺は何も言わないよ」 ルナ 「むー……で?誰のこと考えてたの?女の人?」 悠介 「あのな。俺にそんな色気があると思うか?」 ルナ 「周りがどう思ってるのかはともかくとして……悠介にそんな甲斐性は無いね」 悠介 「当たり前だ。昔っから人にやさしくするのは苦手なんだよ。     こんな俺が一体誰を思って誰に好かれるってんだ」 ぶっきらぼうにそう答えると、ルナは可笑しそうにして小さく笑った。 悠介 「……その小さな含み笑いにどういう意味があるのか、聞いていいか?」 ルナ 「言ったでしょ、周りがどう思ってるのかはともかく、って。     悠介、なんだかんだで無意識に周りに気を使ってるからさ、     悠介自身を嫌いなんて人はきっと少ないよ」 悠介 「……熱でもあるのか?」 ルナ 「な、なんで?」 悠介 「あのな、俺は昔っから『人』には嫌われやすい性質だったんだぞ?     なのに嫌いなんて『人』は少ないなんて言われたって信じられるか。     そもそもそんな『人』は居やしないよ。第一お前だって人と死神のハーフだろ」 ルナ 「あはは、まあね〜」 からかっとるんかこいつは……。 ……でもまあ、べつに構わない。 俺の我が儘で現代に連れてきちまったんだもんな、 これからは少しは旦那らしいことを少しずつでも出来るようにならないと。 悠介 (……といっても、夜の相手は勘弁してもらいたいが) ハッキリと言えば俺はああいうのが苦手……というか嫌いの部類に入ってる。 子を作るという行為に嫌悪感を抱いてるって言った方がいい。 なにせ、真実を知らなかったガキの頃、俺は十六夜の親に散々な目に合わされたのだから。 当時記憶が曖昧で、実の親だと思っていたこともある頃だ。 当然ショックで、自分はなんのために生まれてきたのかをずっと考えもした。 理解したのは『殴られるため』だとかそんなことだ。 子供心にそれはとても冷たい刃となって、俺の心の中にずっと突き刺さったままだった。 俺は自分の子供にそんなことをしないと胸を張って言える。 でも……うん。理屈じゃないんだよな、子供の頃の嫌な思い出ってのは。 なにせ一生懸命に周りから情報を集めて記憶しようと頑張っている頃だ。 辛い感情が大人になってからも鮮明に残り、 楽しい思い出が大人になるにつれぼやけていってしまうのと同じだ。 子供の頃は大人の頃なんかよりよっぽど感情が育まれる。 記憶力も然りだ。 だから子供の頃に受けた心の傷っていうのは、 大人になってから同じように受ける傷とは違って、癒されることがまず無い。 悠介 「……はぁ」 小さく溜め息をついてから思考を振り払った。 思考するのが必須条件の能力を持っているからか、 思考のコントロールは……まあ、一般人のそれよりは得意なつもりではある。 雑念が入っていなければ精神統一くらいはお手の物だ。 悠介 (……なんだかな。なんで今日に限って……) 昔のことなんか思い出すんだろう。 そう思って、また俺は思考を振り払った。 なんだか今日は落ち着かない。 緊張とかじゃないのだが、それでも落ち着かなかった。 なんだろう。胸騒ぎ───とかじゃない、と思う。 訳の解らない不安めいたものがずっと心の中に渦巻いている。 喩えを挙げようにも喩えられる言葉が見つからない。 ルナ 「……どうしたの?悠介、なんか怖い顔してる」 悠介 「ん……なんだろな。妙な不安みたいなのが心の中にずっとある。     危機感とかじゃないんだ。緊張でもない。ただ……そう、なんていうのかな。     俺達は───ああ、ここで言う俺達ってのは俺と彰利のことだけど───」 ルナ 「うん……」 悠介 「……俺達は、幸せになっていいのかな」 ルナ 「え?なにそれ」 悠介 「いや……うん。なんなんだろうな」 解らない。 けど、不安めいたものの意味がそれだということだけは確信できた。 でも解らない。 幸せになっていいか、なんて……なっていいに決まってる。 だからそうじゃない。考えていたこととは少し違う。 それはなんというか……そう、例えば───俺達は『祝福されていいのか』。 俺達はいろいろな人が祝福される場面を知ってる。 いろいろな人たちがささやかだけど、確かな幸せを手に入れた瞬間も知ってる。 でも……じゃあ俺達自身は?受け入れてしまっていいのか? 解らない───だって、幸せになる方法が結婚なんて誰が決めた? 別に結婚が嫌だとかいうんじゃない。 俺は……ああそうだ、俺はここにきて、感情の成長にぶつかってるんだ。 ガキの感情から必死に大人になろうとしてる。 それは解る。漠然とした不安の意味も受け取れた。 でもそれだけだ。やってられない。 どんな修行でもやってこれたけど、心の修行だけは上手くいかない。 悠介 「悪い、質問を変える。俺達はさ、祝福されていいのかな」 ルナ 「祝福?されるのが怖い?」 悠介 「怖い、とかじゃないんだ。あー……だめだ、喩えが見つからない」 不安を恐怖に喩えるなら、確かに恐怖してるかもしれない。 それに、未来でのルナとの生活が幸せかって訊かれても正直詰まる感はある。 なにせその時の俺は、感情が解放されていなかったのだから。 悠介 「〜〜……ダメだ」 ルナ 「え?」 悠介 「すまんルナ、結婚ちょっと待っててくれ。彰利と会ってくる」 ルナ 「え?え?ちょ、悠介〜?」 こんな気持ちじゃダメだ。 俺は心を奮い立たせるために親友の存在を頼り、部屋から飛び出した。 そして───ザッ。 悠介&ロビン『あ』 出たところで、目と目が合った。 そしてなんとなく思い─── 悠介&ロビン『お前も?』 言ってみれば、見事に声が被った。 そうしてみれば行動は早くて─── 俺とロビンは笑い合うと、花嫁達に見つかる前にとっととその場を離れたのだった。 ───……。 ……。 ロビン「いやさ、なんか結婚するんだなぁ〜とか思ったら、     急に不安だけど不安じゃないみたいなよく解らんものが湧き上がってきてさ」 悠介 「やっぱりお前もか……」 俺とロビンは皆の目から逃れるために光の精霊の聖堂へと飛翔し、胸のうちを話し合った。 当然……っていうのもヘンなものだけど、心境は一緒。 結局俺達は自分たちが祝福されることに違和感を感じているのだ。 悠介 「これ、なんなんだろうな」 ロビン「さあ。未来で結婚した時、こんなことあった?」 悠介 「……いや。特に人は呼ばないで身内だけでやったからな。     騒がしいだけで、実際結婚のイメージはあまりなかったかもしれない」 ロビン「そか……」 悠介 「………」 ロビン「………」 はぁ……と溜め息を吐いた。 けどふたりで悩んでいると、案外心が落ち着いたような気もした。 ロビン「でもさ。なんとなく解るよな」 悠介 「うん?なにがだ?」 ロビン「このモヤモヤの意味さ。……ほら、こうして結婚してさ。     妻の相手したり周りからの反応にも応対したりしてさ。     いつかは子供も作って……そしたらさ、     多分俺達……こうして好きな時に遊べなくなるんだよな」 悠介 「あ……」 漠然としていたパズルが完成した気分だった。 俺が理解したことと、ロビンが理解したこと。 そのふたつが揃って初めて、このモヤモヤの意味は成り立ったようだ。 つまり俺達は、結婚の先にある幸せよりも…… こうして馬鹿やっていられる先にある幸せを、 いつだって心に描いていたいって思ってたのかもしれない。 結婚相手が悪いだなんてことは言わない。 時間が全く無くなるって言えばウソになる。 でも……そう、やっぱり理屈じゃないんだ。 悠介 「……いいさ。大人になって子供も出来て、     そしてその子供が成長したら───またこうやって馬鹿をやればいい。     またこうして皆で集まってさ。そういう希望があれば───」 ロビン「……そだな、まだ頑張れる」 俺とロビンは視線を合わせると笑い合い、軽く互いの胸をノックした。 悠介 「戻るか。なんかさ、モヤモヤ無くなっちまった」 ロビン「俺もだ。おかしなもんだねまったく」 簡単なことだった。 ひとりで悩んで解らないならふたりで悩めばいい。 いつだって、ずっと前からふたりで馬鹿したり悩んだりしてきた俺達なんだから。 ああまったく、なにを不安に駆られていたのか。 遊びたくなったらそうすればいい。 べつに家庭を持つからといって、全ての自由が無くなるわけじゃないのだから。 ロビン「覚悟しとけよー?俺はやると言ったらやる男だかんなー?     この時代の未来で、頃合が来たらマジで皆様呼んで馬鹿騒ぎすっからな」 悠介 「ああ。その時には自分たちのガキどもも巻き込んで騒ごう。     そうだな、長い休み───夏休みとかがいいと思う」 ロビン「よし決まりッ!ガキどもがそれなりに大きくなったら、     夏休みに皆さん呼んで馬鹿騒ぎ!───じゃ、戻るかぁ!」 悠介 「ああっ!」 気分はいつの間にか晴れやかだった。 俺とロビンはそんな気分の中で空気を大きく吸い込むと、 ゆっくりと庭園へと降りていった。
───その頃の皆さん 中井出「えー、というわけで。     何故か大戦士カルガラの俺が司会進行役に抜擢されたわけだが……     主役はどうした?そろそろ来てもいい頃だろ」 真穂 「それがさ、ちょっと晦くんと弦月くん、どっかに行ってるみたいで」 中井出「逃げたとかじゃないよな?」 真穂 「そんなことするふたりじゃないでしょ?」 中井出「そらそうだ、彰利はともかく」 晦はともかく、彰利ならそういうことはする。 けど……ああ確かに。 人の心を踏みにじってまでするとは思えないな。 だったらなにやってんだか。 閏璃 「えーとお前。名前なんていったっけ」 中井出「んあ?ああ、中井出博光だ。みんなからは提督って呼ばれてる」 閏璃 「何故?ああいやそれはいいか。それよりさ、何かやって間を繋いでくれないか?」 中井出「へ───へえっ!?な、なんで俺が!?」 丘野 「おお、そりゃいい。司会進行役ならそれくらい出来るだろ」 中井出「あ……えと。それじゃあ───コホン。     それじゃあ前の宴会の時にやろうと思ってた芸を……」 総員 『いえーーーい!!』 俺が小さな段差の上に立って咳払いをすると、その場が一気に盛り上がる。 俺は小さな緊張を悟られないように務めると、弾けるように語り出した。 中井出「漫談やります」 丘野 「漫……?」 中井出「どもーーーっ!!なぁ〜かいで博光でございまーーす!!     いやぁ〜、最近めっきり寒くなってきまして〜」 中村 「あ〜あ……つまんねぇな〜……」 中井出「コラ待てぇえい!!まだなんにも言ってないだろうが!!」 中村 「今の掴みを見れば後のことは大体察しがつくって……」 麻衣香「もっと手品かなんか、出来ないの?」 中井出「え───て、手品?いやちょっ……手品はちょっと……」 麻衣香「わ〜っ、博ちゃんの手品見た〜〜い♪」 中井出「やっ、そう言われても……」 久しぶりに博ちゃんと言われた恥ずかしさから、俺は照れを隠すように俯いた。 その途端、皆が手を叩くと同時に一定のリズムで俺を煽った。 総員 『てっじっなっ!!てっじっなっ!!』 中井出「てっじっなっ!!あ・てっじっなっ!!     おう解った解った!手品やってやるよよし!でも……簡単なヤツだぞ?」 総員 『イエーーーーイ!!!!』 押しと煽りにゃ弱い……どうしようもなかった。 でも必要とされると嬉しいと思うから複雑だ。 中井出「まったく我が儘さんなんだから……。     えー……はい。ここにトランプの絵札があります」 真穂 「あ、戻ってきた」 中村 「おう中井出ご苦労さん」 中井出「テメふざけんなこの野郎!     えぇ!?ふざけんなよてめぇ!手品どうすんだよ!!」 麻衣香「あぁもうなにやってるの!?トランプなんていじってる場合じゃないでしょ!?」 中井出「いやっ、『ないでしょ』って…………───なんかすっごく可哀想なボク……
───そうして一度戻り、俺はルナに、ロビンは先輩と篠瀬と日余に謝ると、 ようやくみんなが待つ庭園の広場に来た───んだが。 中井出「ひ〜と〜り〜が〜大好きさ〜……ど〜せ死ぬときゃ……ひとりきり〜……」 大戦士中井出だけは、庭園の隅の方で体育座りをしながら黄昏ていた。 なにがあったのかは知らないが、相当に悲しいことが起こったのは事実だろう。 悠介 「……どうしたんだ?中井出」 丘野 「や、提督ならすぐ復活するから。それより話し掛けてる暇があったらホレあそこ」 丘野が促す先には、相変わらずの神父姿のノートが居た。 なにやら不服そうな顔をしているが、 似合いそうなヤツがノートしか居なかったから仕方が無い。 ノート『汝ら、さっさと来て指輪の交換でもなんでも済ませてしまえ』 ロビン「さっさととはなんだてめぇ!!人の門出をなんだと思ってるのかね!!」 ミズノ「彰利ー?お前なんだってそんな被りものしてんだい」 ロビン「止むに止まれぬ事情があるんですミズノおばちゃん!!」 粉雪 「うあああ……みんな見てるよ……」 春菜 「こ、こここ粉雪ちゃ、んっ……!?こここういう時は胸を張って、堂々と……!」 粉雪 「弓道着姿で結婚に挑もうとする先輩に言われたくありません……」 春菜 「うぐっ……こ、粉雪ちゃんこそテイルズオブエターニアのレイスの装備だよ……」 粉雪 「い、いいじゃないですか!レイスはお気に入りのキャラなんですから!」 夜華 「………」 春菜 「……篠瀬さん。歩きやすい?」 夜華 「訊くな……」 春菜 「……ごめん……」 粉雪 「……ルナさん、普通だねー」 春菜 「死神にウェディングドレスだよ?」 粉雪 「……そう考えると普通じゃないですね」 ルナ 「………」 俺とルナ、ロビンと先輩と日余と篠瀬が歩く中、 ルナは三人の声を聞いて難しい顔をしていた。 が、すぐに気にするものから度外して幸せそうな笑顔をこぼした。 閏璃 「えーと、この場合どうすればいいんだろうか」 柿崎 「紙吹雪を力いっぱい投げつける、じゃなかったか?」 鷹志 「舞い散らせるだけで十分だろそれ」 遥一郎「とりあえずまずは『おめでとう』だと思うけど」 澄音 「それは誓いが終わってからのほうがいいと思うな」 遥一郎「あ……それもそうか」 所詮は結婚式初心者の集まり。 詳しい形式など誰も知らず、 ともかくみんな楽しめればいいという目をしてコトは進んでゆく。 ノート『あー……汝ら。健やかなる時も病める時も、     常に寄り添い互いを助け合うことを誓うか?』 神父代わりであるノートの前に来た俺達に、ノートがそう言う。 当然俺は─── 悠介 「断る」 ロビン「同じく断る」 総員 『なんだってぇええーーーーーーーっ!!?』 断った。途端に湧き上がるその場に居たみんなの疑問。 悠介 「常に一緒に居るのは無理だ。助け合うことはするが」 ロビン「オオ、私もだ〜〜っ。常に一緒というのは約束できーーーん!!」 ノート『……まあ、な。順当に考えればそうなる』 ルナ 「わたしは常に一緒でも困らないけど」 若葉 「コロがしますよそこの馬鹿死神!!」 木葉 「姉さん、武器ならロディエルが落としていった銀の弾丸が」 ルナ 「きゃーっ!?シャレになってないわよぅー!たんまー!それずっこいー!!」 セレス「ぎぎぎ銀の弾丸ッ!?い、今すぐ捨ててください!!     ひぃいぁああっ!!こちらに向けないでください!!」 とりあえず……うん、誓いどころじゃねぇ。 ノート『では省こうか……さて汝ら。     健やかなる時も病める時も、互いを助け合うことを誓うか?』 悠介 「正直に言えば場合にもよるが、誓う」 ロビン「……つーか俺、この娘ッ子さんたちが相手で『助ける』ことは出来ても     『助けられること』なんてあるのかな」 ギュムゥッ!! ロビン「いたやぁあああーーーーーーーーっ!!!!」 春菜 「……誓って?ね?」 ロビン「いがががが……!!な、なにすんねん……!!」 ムギュッ! ロビン「いってぇえっ!!」 ロビン、再び足の付け根を抓られて叫ぶの図。 何故二度目が『顔面を三発殴られた一星龍』風だったのかは謎だが。 粉雪 「誓うの?誓わないの……?」 ロビン「だ、だってキミたちの今してること、絶対俺への『助け』になってねぇよ!?     これでどうやって誓えるっての!?思い出に残る儀式でウソつくなんて嫌だよ俺!     ンなことしたら祝福してる人を裏切ることになるじゃん!!     俺、そんな先でウソつくヤツと離婚するヤツが一番嫌いなんだって!!」 夜華 「い、いいから誓え!誓えば貴様と夫婦になれるのだろう!?     誓え!誓わなければ───!!」 ロビン「いやちょ───なんでそこで刀抜くの!?やめましょうよペンギンさん!!     見た目はプリティーだけど中は筋金入りなんてロシア猫だけで十分だよ!!     ねぇ神父さま!?これって助け合いですか!?     僕もうなにがなんだか解んないです!タスケテー!!」 ノート『……解った、文句を変える……。     健やかなる時も病める時も助けることを誓うか……?』 ロビン「助けるだけですか!?     ケースバイケース無し!?フィフティフィフティですらない!?     み、見返り望んじゃいけねーっつーんじゃよ!?」 ノート『我が儘なヤツだな……ならばどう文句をつけてほしい』 ロビン「お、俺をっ───不老不死にしろーーーーーっ!!!!」 三人娘『関係ないっ!!』 ロビン「グ……グウウ〜〜〜ゲェエエエーーーーーッ!!!!」 悠介 「だぁっ!やかましい!さっきからなんなんだお前は!!」 ロビン「だってYO!なんか自然に『グ……グウウ〜〜〜ッ』とか言ってんだもん!!     叫びたくもなるって!!こうなったら一刻も早く結婚式を終わらせて、     ストーンヘンジから力を返してもらわねば!!」 中井出「……おい。睨まれてるぜ?」 ロビン「おお復活したのか提督───ってオワッ!!?」 見れば、確かにロビンの嫁三人がロビンを睨んでいた。 そらそうだ、せっかくの記念日を『早く終わらせよう』なんて言われれば怒りもする。 ルナは───まあ落ち着いたものだ。 さすがに経験者は違う。……俺もだが。 ノート『……悪いことは言わん。誓っておけ』 ロビン「あの……じゃあ、互いが助け合って生きていくことを誓いたいです。     ウソでもいいから」 ノート『汝らは?』 ルナ 「相手が悠介なら誓う」 春菜 「誓います」 粉雪 「誓います」 夜華 「誓う」 ノート『……む。では指輪の交換を』 悠介 「……指輪?」 ノート『指輪だ』 悠介 「精霊の指輪ならあるが」 ノート『たわけ、それをこの儀式で使うなら私が怒るぞ』 悠介 「使えって言われたら俺が怒ってた」 ノート『………』 悠介 「………」 ノート『その、なんだ。つまり───無いのか?』 悠介 「あー……すまん。結婚式って全て、杯交わして紡ぐんじゃないのか?」 ロビン「……あの、悠介?今時子供でもそんな馬鹿言わないよ……?」 悠介 「そ、そうなのか!?いやっ……俺、結婚式って全部そういうものかと……!!     未来でやった凍弥と椛の仮結婚式も、ただ飾りとして指輪を持ってるのかと……」 総員 『天然記念物だ……天然記念馬鹿だ……しかも子供以下……』 悠介 「うわっ!やめろ言うな!!恥ずかしすぎる!!」 中井出「お前……そこまで倭を愛していたのか……」 清水 「だからお前、俺を『アメリカ』じゃなくて『アフリカ』にしたのか……」 丘野 「さすがだ日本好き……」 島田 「日本好き……」 ロビン「ジャパンスキー……」 悠介 「だぁぁっ!!やめろって言ってるだろぉおっ!!?」 閏璃 「ジャッ!パッ!ンッ!!ジャッ!パッ!ンッ!!」 総員 『ジャッ!パッ!ンッ!!ジャッ!パッ!ンッ!!』 悠介 「や、やめろぉおおおおーーーーーーっ!!!!」 俺は自分の顔が相当に赤くなるのを感じながら、 ノートが創造した指輪を受け取ると指輪の交換とやらをして、 さっさと誓いの口付けをしてとんずらしようと─── 佐古田「ぶっちゅぶっちゅ!!ぶっちゅッス!!」 思ったが、上手くいかない根源があった。 中井出    「ぶっちゅ!ぶっちゅ!!」 丘野     「ぶ〜っちゅ!!ぶ〜っちゅ!!」 原中の猛者ども『いけ!やれ!そこだ晦!ぶっちゅぶっちゅ!!』 悠介     「てめぇらぁああああああっ!!!!」 閏璃     「おお!赤面魔人が起こったぞ!!」 鷹志     「いやほんとユデダコだな……」 遥一郎    「……ていうかさ。なんで弦月、三人と結婚してるんだ?」 雪音     「ん、解んないや。ホギッちゃんGO!こういう時の頭のいい人だよ!」 遥一郎    「解ってたらお前なんぞに訊かん」 雪音     「うあっ!ホギッちゃんヒドイ!!」 殊戸瀬    「……いいから。ほら、ぶちゅっとやっちゃいなさい」 悠介     「ででで出来るかっ!!ていうかなんでお前ら人を囲んでるんだよ!!」 真穂     「わっ、また赤くなった」 悠介     「ならいでかっ!!」 中井出    「晦……もういい加減観念しろ。         ロビンはもう誓いのぶっちゅを済ませたぞ」 悠介     「マスク越しでも誓いって言えるもんなのか!?」 凍弥     「ていうか……随分純情だったんだな、悠介さん」 椛      「まあおじいさまですから……」 悠介     「マテ!それどういう意味だ椛!!」 佐古田    「お?なにッス?話逸らしてぶっちゅ逃れでもするつもりッス?         ン?ンン〜〜?立派なのはモミアゲだけッス?ハートはカスッス?」 悠介     「さ、佐古田テメェ……!!」 佐古田    「ホレ、相手が待ってるッス。やるッス、ぶちゅっとぶっちゅッス」 悠介     「〜〜〜〜っ……ああもう!!」 まちゅり─── 総員 『おぉいったぁああーーーーーっ!!!』 素早く誓いの口付けを済ませると、俺はとっとと─── 佐古田「まだッス!!……モミアゲ、なにッスそのぶっちゅは。     それが誓いのぶっちゅと言えるッス?     ヤケクソで結婚するなら祝福される意味が無いッス!!」 逃げられなかった。 ただ佐古田への敵対心が『挑発』を使うよりも大きく跳ね上がったのは確かだった。 By.FF11。 中井出「お前の知り合い、人の勇気をここまで言えるなんて外道だな」 凍弥 「否定しないからどんどん言ってくれ」 佐古田「ホレちゃんと『誓いのぶっちゅ』をするッス!!     そんなヤケクソじみた誓いのぶっちゅが何処にあるッス!?     霧波川凍弥のぶっちゅの時の方が、まだ堂々としてたッス!!」 悠介 「なぁ……誰だよこいつ連れてきたの……」 凍弥 「とりあえず俺じゃあありません……」 中井出「俺でもないぞ」 丘野 「俺でもない」 清水 「右に同じ」 麻衣香「わたしも」 真穂 「わたしも」 島田 「おいどんも」 田辺 「それがしも」 中村 「やきいも」 閏璃 「……随分賑やかな知り合いなんだな」 柿崎 「まったくだ。お前みたいのがうじゃうじゃ居る」 閏璃 「嬉しくない表現だなぁそれ……」 佐古田「ほぅれどうしたッス?もしかして怖いッス?チキンッス?」 悠介 「ガ、ガガガ……!!」 凍弥 「ゆ、悠介さん堪えて……!!黙らせたい気持ちは解りますけど、     こんなヤツでも一応人間なんです!」 佐古田「どういう喩え文句ッス……」 悠介 「ああいや……いい……。確かに今のみたいなヤケクソはよくなかった……。     これじゃあルナに失礼だ……」 佐古田「おおまたやる気ッス!!ぶっちゅ!ぶっちゅ!!」 鷹志 「……お前ンとこの孫の知人、心底ヒドイな……」 来流美「頭痛いわ……」 俺は再び周りに囃し立てられながらも、照れ笑いを浮かべるルナに顔を近づけてゆく。 そうだ、真剣にやらなきゃいけない。 未来の俺とルナにとっては二度目だが、現代の俺とルナにとっては初めてのことだ。 さっきみたいな風に適当にやったら失礼ってものだろう。 だから俺は今度こそと思い、ゆっくりとルナと唇を重ねた。 中井出「おぉおおっ!!あ、あの晦がねっとりと長いぶっちゅを!!」 丘野 「奇跡だ!奇跡の瞬間だぁーーーっ!!」 遥一郎「……簡単に奇跡を語られる瞬間ってどうだ?」 澄音 「あはは、複雑だね」 ノア 「複雑ですね」 サクラ「です」 カシュンカシュン!! 悠介 「あっ!て、てめぇ!!」 佐古田「なに怒ってるッス?記念日に写真を撮るのは当たり前ッス。それともなにッス?     みんな騒ぐのに夢中で撮ったりしないと思って安心でもしてたッス?」 中井出「あ!そういや撮影忘れてた!」 中村 「迂闊じゃったわ……原中の猛者ともあろうものが……」 中井出「よ、よし!仕切り直しをしよう!今度は指輪も最初っから用意して!!」 悠介 「じょ、冗談だろ!?また接吻しろってのか!?」 佐古田「お!?逃げるッス!?とんだチキンッス!!モミアゲチキン!!」 悠介 「こいつ連れてきたヤツ今すぐ前出ろブチコロがす!!」 凍弥 「だ、だから落ち着いてくださいよ悠介さん!!殺しはマズイですって!!」 悠介 「殺すんじゃない……コロがすんだ……」 凍弥 「いや訳解りませんってそれ!!と、とにかく落ち着いてですね……!!」 ルナ 「悠介……?わたしなら大丈夫だよ……?」 俺が大丈夫じゃない。 しかし瞬時に多数決モードに入った猛者どもと観衆は多数決を始め、 反対派が俺と晦家の面々しか居なかったために仕切り直しを要求されることとなる。 ……ああ。とりあえず佐古田の人間性を考えてなかった俺の失態だ。 ていうか本当に誰だ、佐古田連れてきやがったのは……。 ───……。 ……。 そうして俺達は事前に用意しておいた指輪を交換し、再び誓いの口付けの場面へ。 俺は脱力しながらチラリとロビンの方を見たが、 しっかりと三人に誓いの口付けをしていた。 ……か、覚悟……決めるか。 悠介 (神よ……) 俺は目を閉じて神に祈りつつ、ゆっくりと心を清ませたのちにルナへと口付けを─── 佐古田「ぶ〜っちゅ!!ぶ〜っちゅ!!」 総員 『ぶ〜っちゅ!ぶ〜っちゅ!!』 ───コメカミに躍動を感じつつ、済ませた。 一応これで結婚式自体は済んだ───のだが、 俺をからかう観衆は一向に引く気配を見せない。 佐古田「ユデダコッス!ユデダコ!!」 中井出「真っ赤だな〜♪真っ赤だな〜♪」 丘野 「貴様のフェイスが真っ赤だな〜♪」 悠介 「歌うな!」 口付けを終えたロビンが苦笑しながらブーケで視線を逸らさせようとするが、 女衆がそれを取り合いする中、男衆は引くことを知らずに俺をからかいまくった。 そらそうだ、男にはブーケなんて関係ない。けどなんで佐古田、貴様まで微動すらしない。 悠介 「はぁ……」 こうして俺は、この状況から脱出する方法を考える続けることにしたのだった。 ……まいった。式が終わったら創造しておいたポッドに乗って、 大地を滑走してぶらり空界の旅をしながらスピードイーターと戦う予定だったのに……。 ああいかん……そろそろ我慢の限界が─── 【ケース87:ロビンマスク/パラガス】 ザッ…… ロビン「もうじき彼の我慢も限界を迎える……。そうなれば観衆の意識も終わるだろう」 俺は群集の中からひとり抜け出し、 ハネムーン……というか新婚旅行用に俺が作ってもらった、 対スピードイーター用のポッドを見下ろした。 ロビン「可哀想だがブロリー……お前はここでこの星ごと消えてもらう。     暴走を始めたお前は力を解放し続け、カルガラどもをコロがすだろう。     だがその力はもはや制御する術を無くした私にとって邪魔でしかない……」 ポッドが自動で開く。 俺はそれに乗り、小さく溜め息を吐いた───時。 ブロリー「何処へ行くんだぁ……?」 開いたポッドの扉が閉まった途端、そのガラス部分に彼の姿が映し出された。 すっかり暴走なさっているようで、 ロヴァンシュフォルス化をしている上にキレている所為で、 白目だったり筋肉ムキムキだったり首飾りがブロリーっぽかったり、 金色の髪が力の波動で変色して薄い緑になっていたりで、 もう彼は悠介というよりブロリーそのものだった。 さらに離れた景色では竜王を含めた存在全てがピクリとも動かなくなっていた。 スッピーは無事のようだが、それ以外はアウトだ。 その事実を知ってしまったら、からかわれている親友を置いて 新婚旅行とシャレ込もうとしていたなんて言えやしなかった。 ロビン 「お、おぉおおおっ……お前と一緒にっ……避難する準備だぁっ……!!」 ブロリー「ひとり用のポッドでかぁ……?」 ガシィンッ!!───からかわれすぎてキレた彼は俺が入っているポッドを両手で掴み、 それを頭上に持ち上げると腕力にモノを言わせてゴキベキとヘコませていった。 ロビン 「おっ……おぉおおおっ……!!じ、自分の子供に殺されるとは……!!      こ、これもサイヤ人のさだめかっ……!!」 ブロリー「ルァアアアアアアアッ!!!!」 バゴキャッ!!メゴッ!!ベゴゴゴゴゴゴ!!!! ブロリー「ルェエエエエエエヤァアッ!!!!ドンチュゥウウウウウウウンッ!!!!! ……こうして俺は、二本の腕のみでぺしゃんこに潰されたポッドごと、 庭園から眺める景色へと思い切り投げ飛ばされたのだった……。 しっかりとポッドごと潰した俺を抱えながら横回転して、それからポッドを投げてた。 さすがだブロリー……もはや貴様はこのパラガスの……あ、あれ? なんで緑色の光溜めてんの?え?その構えなに?スローイングブラスター!? 超武闘伝2でブロリーが使ってたけど、 ドラゴンボールZSparking!で再び使われることになったアレ!? いやちょっ───ギャアア!! 【ケース88:晦悠介/暴れん坊モミアゲ将軍】 ───……そうして気づいてみれば、その場は屍でいっぱいだった。 悠介 「………」 うん、散々からかわれたところまでは覚えてる。 けど途中で頭の片隅で『ブチリ』という音を聞いてから、なにも覚えていない。 となると……やっちまったということか。 悠介 「あ〜……魔法を弾く障壁が佐古田にだけ出ます。弾けろ」 しょうがないなと思いつつ、頬を一度掻いてからイメージを紡ぎ、弾かせた。 それからすぐに癒しの魔法を解放し、その場に居る全員を癒す。 もちろん、佐古田だけは回復しないわけだが。 閏璃 「う……むむ……」 柿崎 「む……むおお……」 鷹志 「む……むむう……」 それはそれとして、閏璃凍弥陣営はなぜ起きる時の掛け声めいたものが餓狼伝説なんだ? 中井出「いや〜、やっぱ晦をからかうのって命懸けめいててスリル満点だ」 中村 「この緊張感がたまらねェYO!!とか言うだろうな、弦月なら」 みさお「それで……その肝心の彰衛門さん、というかロビンマスクさんは?」 悠介 「?知らないぞ?」 総員 『……?おお、佐古田が気絶したままだ。さすが晦』 悠介 「妙なところで感心しないように」 などと、気絶させられたことへの不満も一切無しに、 いつものように振る舞う原中の猛者ども。 それは穂岸たちや閏璃たちや、 巻き込まれた雪子さんやミズノおばちゃんたちも同じようで、案外気楽に楽しんでいる。 中井出「……ありゃ?そういやさ、     仲人のスピーチとかってどんな時に言うモンなんだっけ」 中村 「アレじゃないか?この後みんなでどっかに行って、     広い場所でメシを囲みながら……あれって披露宴って言うんだっけ?」 丘野 「『披露』宴とか言うくらいなんだから、結婚式の前にやるもんなんじゃないのか?     や、正直俺もよく知らないんだけどさ」 真穂 「お母さん、どうなの?」 桐生 「えあっ!?え、えと……」 真穂 (……あ、そっか。なんだかんだでお母さんも結婚はしてないから解らないか) 桐生 「ご、ごめんね真穂」 真穂 「いいよいいよ。で……誰か知ってる人居るー?」 悠介 「いや、順序なんていいんじゃないか?     それは先人がやったことで、俺達には関係無い。     俺達は俺達で、思い出に残るようなことが出来ればそれでいいだろ?」 真穂 「晦くん……」 中井出「うむ!よく言った晦一等兵!!     では仕切り直しだヒヨッ子ども!!心の準備は十分か!?」 原中生『サー・イェッサー!!』 中井出「愛は溢れているか!?」 原中生『サー・イェッサー!!』 中井出「男気も忘れるな!!」 原中生『サー・イェッサー!!』 中井出「おやつは300円まで!!」 原中生『サー・イェッサー!!』 中井出「バナナはおやつに入りません!!」 原中生『サー・イェッサー!!』 中井出「うむよし!!ではヒヨッ子ども!     今すぐ作ってある料理を並べて披露宴へと移行する!!     イェア・ゲッドラァック!!ライク・ファイクミー!!」 ザザッ!! 原中生『Sir(サー)YesSir(イェッサー)!!』 ……今まで楽しげだった空気が一気に軍人風になった。 原中のノリにまだ付いてこれていない輩たちはただただ呆然とするのみで、 しかし妙に波長が合ったらしい観咲雪音は、 原中の猛者どもと一緒に叫ぶは駆けるはで楽しそうだった。 雪音 「ウォ〜〜〜〜〜……イェッサー♪」 丘野 「オ〜〜〜〜〜……イェッサー♪」 田辺 「ウェルキィン・ファッソゥ・ホッスホッスホッス♪」 清水 「ウェルキィン・ファッソゥ・ホッスホッスホッス♪」 言ってる言葉自体は飲み込めていないが、ノリさえ守れればいいのが原中だ。 ゲーム中の本当の言葉など、知りたいだろうが解らないなら別にいいといった感じ。 ようするに子供のノリだ。 けど、それが『ノリ』としては一番とっつきやすのも事実なんだろう。 いつしか傍観していた穂岸や閏璃や俊也率いる陣営も、 ノリに引かれるように動き出し始めた。 そうしたらもう止まらない。 みんながみんな騒ぎ合って歌い合って笑い合って、 それだけで十分楽しい結婚式へと繋がっていった。 聖  「……あの。パパを何処にやったんですか?」 悠介 「うん?って聖か。俺は知らないが」 みさお「でもですねぇ……悠介さんが暴走したあの時になにかがあったとしたら、     やっぱり彰衛門さんだけ居ないのは悠介さんが原因なんじゃないかと……」 悠介 「そう言われてもな……あ、じゃあ悪いみさお。俺のこと月視力で視てくれ」 みさお「あ、そうでした。それじゃあ───」 みさおの薄く赤い目が濃く染まると、その場に月操力の波動が溢れる。 しばらくするとみさおは『はふ……』と息を吐いてから、改めて溜め息を吐いた。 みさお「……やっぱり悠介さんが原因ですね。     ブロリーになって、超高速ポッドに乗った彰衛門さんというかロビンさんを     パラガスさんのように潰してから遠投してます」 悠介 「ぐあ……」 聖  「………」 聖の視線が痛いな……思いっきり睨んできてる。 みさお「うわー……力の完全解放と暴走の所為で     筋肉ゴリモリで白目で髪の毛も薄緑のトンガリ……     しかも精霊の首飾りがまたブロリーっぽくて……ていうかブロリーですね、もう」 悠介 「あー……どこら辺に落ちたか解るか?」 みさお「えっと。最後にスローイングブラスターをくらって吹き飛んでいるので……     この速度で計算すると、恐らく世界の中心───ウォルトデニスの泉ですね」 悠介 「紫竜王の領域か……大丈夫かあいつ」 みさお「人間の侵入には警告と制裁がありますからね……。     『超人』とはいえ『人』には変わりありませんから」 悠介 「………」 かなり心配だな。 料理並べるのにも時間がかかるだろうし───探しに行くか? 紫竜 『王よ』 悠介 「うおっ!?───っと、紫竜?」 探しにいこうとした矢先、紫竜がその場に翼を休めて降り立った。 飛竜よりもずっと大きいが、 この庭園ならば場所には困らないために余裕で降り立つことが出来る。 悠介 「どうしたんだ?ここには来ないって聞いてたんだけど」 紫竜 『私は紫竜王にこれを預かっただけだ。隕石のようなものが飛んできたとかで、     中に生命力を感じるので王に調べてもらえと』 悠介 「隕石?って……あ」 紫竜の手の中に、確かにそれはあった。 隕石というか( ひ)(しゃ)げたポッドだ。 そして確かに、あれほどまでに無惨に潰されてもなお、ポッドの中からは生命力を感じる。 さすがキン肉マンキャラクター。 凄まじい生命力の持ち主ばかりだ。 紫竜 『それではな、王。確かに渡したぞ』 悠介 「あ、ああ。助かった」 バサァッと飛翼をはためかせ、景色の果てへと消えてゆく紫竜を見送った。 そして……視線はブロリーに潰されたサイヤ人の宇宙船のような感じのポッドへ。 悠介 「とりあえず、回復だよな」 ポッドを分析、カタチを元に戻すと、中から潰れたロビンを救出した。 どうやら硬度9サファイヤアーマーが思いのほか役立ったらしく、 腹部にはそう損傷は無かった。 だがアーマーの無い部分はもうベキョベキョだ。 俺は自分の暴走っぷりに心底反省しながら魔法を使い、ロビンを癒していった。 ───……。 ……。 そうして復活したロビンも加えての披露宴。 俺とルナ、ロビンと篠瀬と日余と先輩を中心に、 円を描くように儲けられたそれぞれのテーブルと椅子にそれぞれが座り、 その中心よりやや横に中井出が立っていた。 ご丁寧にマイクも持っている。 先ほど頼まれて創造したものだ。 中井出『レ、レディースウェーーンドゥ!ジュィェントュルミェエエエンヌ!!!』 中村 「噛むなー」 中井出『やかましいっ!!え、えー、それでは。僭越ながら、不詳!この中井出博光!     おふたりの披露宴の司会進行を勤めさせていただく!』 雪音 「帰れ〜」 中井出『始めたばっかで帰れるかボケ!!』 閏璃 「態度悪いぞ〜」 中井出『だったら茶化すな!ったく……えーはい。本日も大変お日柄も良く……』 ウィル『光の精霊である私が、マスターの記念日に闇を落とすわけがないだろう』 中井出『う、うっさい!!これでも一生懸命考えたんだからほっといてくれ!!』 まあその……中井出はいっぱいいっぱいだった。 中村 「よし提督!     そこで『ほっといてくれ!俺はもういっぱいいっぱいなんだよ!』って言え!」 中井出『そんなネタ誰も覚えてねぇよ!』 中村 「まったくだ!!」 俊也 「どういう結婚披露宴なんだろうな……」 夏純 「♪」 佐知子「夏純は楽しそうだけど?」 俊也 「ん……まあ、俺も楽しんでるけど。料理も美味しいし」 ミズノ「今日は存分に腕を振るわせてもらったからね。思いっきり食べとくれ」 シズノ「悠介と彰利の結婚って聞いたら黙っていられやしないよねぇ」 雪子 「かつての保護者としては複雑な気分……。     昔は『雪子さん雪子さん』って後を付いて回ってた子供がねぇ……。     はぁ……時間が経つのって早いわ」 浩之 「ところでブラザー、     提督とやらの傍に転がってる佐古田好恵はあのままでいいのか?」 浩介 「面白いからあのままでいいだろう」 浩之 「おお、さすがだブラザー」 凍弥 「まあ、佐古田だしなぁ」 椛  「佐古田さんですから」 佐野崎「佐古田先輩だからねぇ」 風間 「佐古田先輩なら……ねぇ」 皆槻 「佐古田先輩ですからねぇ……」 佐古田の存在もみんなの中でそう変わっていないらしい。 まあ、あの性格だからか。 凍弥 「ところでさ。葉香さんとオチットさんに留守番押し付けるカタチになったけど、     本当によかったのかな」 椛  「仕方ありませんよ。おとうさんが絶対に連れてくるなって言ったんですから」 凍弥 「や、そうだけど。紅花のことも任せちゃったし、あぁ心配だ……」 椛  「───む。……凍弥さん?     今日は夫婦水入らずで楽しむんじゃなかったんですかぁ〜……!?」 ギリリュッ……!! 凍弥   「あいぃーーーーーっ!!!!!そ、そうそうそう解ってる覚えてる!!       だから抓るな!!お前の抓りハンパじゃなく痛いんだって!!」 椛    「当たり前ですっ!!痛くないと罰にならないじゃないですか!!」 浩介   「フッ……尻に敷かれてるなブラザー」 シルフィー「仕事ほっぽらかして出てきた人が、なにを偉そうにしていらっしゃるんで?」 浩介   「シルフィー、その妙に畏まった言葉使いはいい加減やめてほしいのだが?」 シルフィー「さあ、知りませんね」 浩之   「結局我らも子供を預けてきてしまったからな。       マルボロ魔人に子を預けてよかったのかどうか……」 菜苗   「大丈夫ですよ〜、きっと煙草の煙にも負けない強い子供に育ってくれます〜」 志摩   『それはそれで嫌だな』 レイル  「まあ大丈夫だろ?エッグも置いてあるから煙草の煙くらいすぐ浄化される」 アル   「毎度聞きたかったんだが。どうしてお前はピザ屋の服をよく着てるんだ?」 レイル  「お届け30分以内は当たり前!だからだ」 アル   「……真面目に訊いた俺が馬鹿だった」 賑やかで結構。 けど、中井出のスピーチが完全にほったらかしにされてる。 中井出『……というわけで、俺は今日というこの日、     友達ふたりの結婚式に立ち会えたことを心から───って聞けよてめぇら!!     俺がどれだけ寝る間を惜しんで考えたと思ってんだ!!』 オリバ「無理ダ……オマエサンガコノ仲人ノスピーチヲ身ニ付ケルタメ     ドレホド試行錯誤シタノカハ知ランガ───     俺ガ本気(リアル)デ腹筋ヲ固メタトキニハアキラメタ方ガイイ……」 総員 『腹筋関係ねぇ!!』 オリバ「オマエサンガ上手ク喋ルタメニ想像ヲ絶スルトレーニングヲシタヨウニ───     俺ハ俺デ色々ヤッテイルノサ……幾度モ、幾度モ、幾度モ……」 中井出『薬貰って飲んだだけだろうが!!ああもういいもういい!!     もうどんなこと言ってたか忘れたからこれで終了!ハイ次の演目!!』 中村 「お、おい提督……」 中井出『なんだよ!!』 丘野 「お、落ち着け提督」 中井出「これがぁあっ!!落ち着いてぇええっ!!!おられようかぁ丘野くん!!!     僕は今にもハートがゴートゥヘヴンしそうなんだよ!!」 田辺 「うわぁ……提督がキレた……」 中井出『次ぃっ!!次次次次次次ィイイッ!!丘野くん!!……次なに!?』 丘野 「……怒るなよ、司会者なんだから」 中井出『司会者だって人の子なんだよ!!』 中井出はもう暴走寸前というか暴走中だ。 散々悩んだスピーチがあっさりと流されて、 今まで無視してきた校長の長話の大切さが解ってしまったかのようだった。 というか解りたくもなかったから暴走してるのかもしれない。 丘野 「じゃ、じゃあえっと……なぁ、披露宴って他になにをすりゃいいんだ?」 閏璃 「……ケーキの入刀と、仰天ニュース名物の『ロウソクで花嫁の髪が燃える』とか」 丘野 「そか。とりあえず後者は捨てておくとして、ケーキの入刀らしいぞ〜」 閏璃 「……なぁ友よ。何故後者は『置く』どころか『捨てられた』んだろうな」 柿崎 「儀式的に髪の毛燃やして楽しいのかお前は」 閏璃 「髪の毛の燃える匂いは嫌いだが」 鷹志 「だったら疑問にも思うなよ」 まったくだった。 ともあれ俺は巨大ケーキを創造しようとして─── ミズノおばちゃんがニコリと笑うのを見た。 そういえば、ミズノおばちゃんには色々と説明したあとに、 料理用にあれやらこれやらを創造してくれって頼まれて─── ミズノ「ウェディングケーキなら用意してあるよ。     あー、ちょっとそこのガキンチョども、手伝ってくれないかい」 閏璃 「おお、ご指名だぞ友よ」 柿崎 「いやいや指名されたのは貴様だ友よ」 鷹志 「いやいや順番は守ってもらわんと」 三馬鹿『じゃあ来流美(霧波川)ってことで』 来流美「なんでそうなるのよ!!大体『ガキンチョども』って言ってたでしょ!?     仮に呼ばれてたとしてもわたしだけじゃないわよ!!」 二馬鹿『今ならスペシャル特典で柿崎をつけよう』 柿崎 「あっ!て、てめぇら!!」 閏璃 「行け柿崎!友のために贄になれ!!」 柿崎 「せめて『生贄』って言え!!贄じゃ死んでるだろうが!!」 鷹志 「よし行け生贄!!友のために!!」 柿崎 「だからって改めて言われても悲しいだけだからやめろ!!」 二馬鹿『どうしろっていうんだお前は!!』 柿崎 「やかましい!!」 ミズノ「ぐずぐずしてないでとっとと立つんだよっ!!     ふたりだけで運べるわきゃないだろうっ!!」 三馬鹿『おわっ……!はいぃいっ!!』 ザザムッ!!と立ち上がる閏璃率いる軍勢。 ミズノおばちゃん、 学食で見てた頃から子供に言うこと聞かせるのだけは上手かったからなぁ。 ───……。 ……。 そうして、ケーキが運ばれてきてから数分。 俺とロビンと篠瀬と日余と先輩とルナはケーキの前に立ち、長いナイフを手にした。 俺とルナはまあ普通なんだが、ロビンサイドは随分と窮屈そうにナイフを持っていた。 そりゃそうか、なんたって四人だ。 中井出『では、ケーキ入刀です』 夜華 「……この刃でこれを斬ればいいのか?」 中井出『斬るんじゃなくて、ただ【ストン】とナイフを通すだけでいいんですよ。     間違っても刀技などは使わないでください』 夜華 「そうか。大きいから斬り応えがあると思ったんだが……」 中井出『絶対にヤメてください。皆様それを食らうのを、     ミズノ女史が作っている段階からずっと楽しみにしていたのです』 夜華 「こ、これは食べられるものなのか。     すまない、食べ物を粗末にするようなことを……。     わたしは世に生を受けてから、こんな大きな食べ物は見たことが無かったから」 中井出『まあ……普通はウェディングケーキが食卓に上がることは無いからね。     そういえばね、普通は入刀する部分だけ本物っていうけど、     ミズノ女史が作ったそれは全てが本物だ。     ちゃんと食えるし、摘み食いを実行したところ、     今まで食ったこともないような美味しさが口内に広がった。食わないと後悔確実』 島田 「つーかさ、この料理ってもう食っていいものなのか?」 中井出『入刀するまで待てヒヨッ子!!』 総員 『Sir(サー)YesSir(イェッサー)!!』 既に全員が慣れたのか、中井出……というか提督の言葉に反応して、 見事なくらいに声を揃えての『サー・イェッサー』。 こういうのを面白い繋がりっていうんだろうなぁ。 ともあれ俺達はストンとケーキにナイフを通し、ケーキを斬ったナイフを天へと掲げ─── 悠介&ロビン『敵将!!討ち取ったりぃーーーーっ!!!』 叫んだ。 中井出『お主こそ!万夫不当の豪傑よぉ!!』 中村 「出すぎておる!自重せい!!」 みさお「訳が解りませんよ!!」 総員 『まったくだ!!』 レイル「はっはっは、まあまあガキンチョ。     こういうのは騒げる時に騒いだモン勝ちなんだよ。だからそんなに気にすんな」 みさお「ガキンチョ……」 ロビン「あ……そういやどうするんだ聖。     これで正式に、キミは夜華さんと俺の娘になったわけだけど。     一緒に暮らす?それとも未来に残る?」 聖  「す、住むよっ!パパとママと一緒に住むっ!!」 ロビン「そかそか。こんなロビンな俺だが、思い切り甘えてくれてよござんすよ?」 聖  「う、うんっ!!」 と、早速中心である俺達が居る場所まで駆けて来て、がばしいっ!とロビンに抱きつく聖。 だが─── 聖  「っ───!!」 すぐに身を離すと、距離を取った。 ロビン「オオ……ど、どうしたというのだ聖〜〜〜っ」 夜華 「……黙っていたが、彰衛門。貴様、汗臭すぎるぞ」 ロビン「な、なんだって!」 粉雪 「うん……ちょっともう流石に限界……」 春菜 「わたしも……」 ロビン「グ……グウウ〜〜〜ッ、い、言われてみれば大衆の前に出る緊張のため、     せめて自慢の上腕二頭筋を締め、     大胸筋の張りも磨くためにトレーニングをしてからシャワーを浴びていなかった」 悠介 「なんか汗臭いと思ったら、お前だったのか……」 ロビン「ああっ、これは失礼!」 シューシューシュー…… 粉雪 「デ、デオドラント」 春菜 「…スプレーーッ!」 中井出「あー……じゃあロビンに成り切ってるロビンは無視して、料理でも食いますか」 総員 『ハワァアアーーーーーーッ!!!!』 龍公 「……そうだな。どんなカタチにせよ、娘の晴れ姿を見れたんだ。     娘が喜んでいるならそれでいいだろう……。さ、食事をするとしようか」 ロビン「いえお父さま、結構です。オレにはこの……プロテインがあります!」 悠介 「あ、じゃあロビンの分の料理は誰か食っちまっていいぞ」 ロビン「ゲェエエーーーッ!!!ちょ、待って!冗談───」 中井出「俺が頂く!」 中村 「いや俺だ!」 丘野 「俺にも寄越せ!」 田辺 「それがしも!」 島田 「やきいも!!」 猛者どもが一斉にロビンの分の料理を奪い尽くした。 当然ロビンの分の皿には既になにも乗ってなく…… ロビン「………」 プロテインを持ったままのロビンが、悲しそうな目で俺を見ながら固まっていた。 ゴキュゴキュゲボハァッ!!! ロビン「ぶえぇえっ!!不味ィッ!!」 仕方なく飲んだがすぐに吐く悲しい男が居た。 まあ無視していいだろう。自分で断言した食料があれなんだ。 プロテインを吐き出しながら涙目で俺を見ているが、無視だ無視。 ……こうして、一先ずはひと段落。 賑やかな食事の一時が始まった。 ───……。 ……。 パクパク、カチャ、モグモニュ……ゴキュゴキュゲボハァッ!! 中井出「んお……これ美味いなぁ……」 中村 「いやいやこっちの特製なんたらソースのかかったアスパラもまたなんとも……」 カチャカチャ……コリコリ。……ゴキュゴキュゲボハァッ!! 麻衣香「マホりーん、これとこれ、交換しない?」 真穂 「うん、いいよ」 桐生 「麻衣香ちゃん、これとこれ交換しない?」 麻衣香「割に合わないから却下です」 桐生 「うー」 カチャ、モグモグ、はっはっはっは。 そうそうそれでさー。え?そうなわけ?……ゴキュゴキュゲボハァッ!! ロビン「うっうっうっ……不味い……不味いよぉお……」 ───様々な音と声が交差する中、 ひとりプロテインを飲んでは吐き続けていたイギリス紳士がとうとう本泣きしだした。 が───モグモグ、シャリシャリシャリシャリ…… 閏璃 「美味か〜」 鷹志 「どえりゃあ美味かよ〜」 柿崎 「ほんなこつー」 由未絵「こ、こりゃあとんこつラーメンばい」 来流美「無理に合わせなくていいわよ由未絵」 完全に無視されていた。 誰一人として気にする者などおらず、ミズノおばちゃん製作の食事に心を奪われている。 浩介 「う、うむっ……!この絶妙な味付け!舌触り!そしてこのコク!     非の打ち所がない!!最高の味だぞブラザー!」 浩之 「う、うむ!まったくだブラザー!     これは食い溜めして味を覚えておかねばならんぞブラザー!!」 凍弥 「ちゃんと噛んで食えよ?失礼だぞ」 浩介 「馬鹿者同志!料理を作る者にとって『失礼』なんてものは『食べ残すこと』のみ!     むしろこうしてがっつくくらい一気に食した方が喜ばれるというもの!!」 ミズノ「礼儀正しく食うんだよ」 浩介 「ごめんなさい」 浩之 「ざまぁないなブラザー」 ミズノ「あんたもだよ」 浩之 「ぎょ、御意」 その中でも、志摩兄弟は相変わらずのようだった。 俺も食事に手をつけて、その味に頬を緩ませていたりする。 ロビンがモノ欲しそうにこちらを見ているが当然無視。 それは、先ほど将来を誓い合った三人も例外ではないらしい。 ロビン「た、助け合うのが誓いだった筈では……?」 春菜 「だってアッくん、     自分で『結構です』とか『プロテインがあります』とか言ったでしょ」 ロビン「グ……グウウ〜〜〜ッ」 粉雪 「だからこれは自業自得だと思って我慢我慢」 ロビン「ウムムム〜〜〜ッ」 夜華 「己の言葉に責任くらい持て。でなければ先が知れる」 ロビン「うっうっうっ……でもさぁ……これ本気で不味いんだもん……」 みんなが賑やかに騒ぐ中、ロビンマスクだけが悲しみの涙を流したという。 なにはともあれ、最初はぎこちなかったやつらも今では散々騒ぎ合っている。 そんな景色を眺めると、なんだか『良かった』って思えた。 Next Menu back