───ネギ=バトルフィールド───
【ケース89:ロビンマスク/グランデってどういう意味なんだろうね】 ぐるるるぎゅ〜〜〜…… 鷹志 「………」 モグ……ぎゅるるるる〜〜〜…… 閏璃 「………」 モグモニュ……きゅ〜〜るるるるる…… 柿崎 「………」 パクッ……モニュモニュ……オォォォォオオオオ…… 柿崎 「ちょっと待て!なんで俺の近くに来た時だけ     『地獄先生ぬ〜べ〜』の妖怪が出た時の効果音が鳴るんだよ!!     お前はなにか!?腹に妖怪でも飼ってるのか!?」 ロビン「ウ、ウウーーーッ!!お腹が空いた!ご飯が食べたい!!」 柿崎 「プロテインでも飲めばいいだろ!?大体そのマスクでどうやって食うんだよ!!」 ロビン「グ……グウウ〜〜〜ッ」 そう、困ったことにマスク状態ではストロー付きのプロテインは飲めても、 固形物といった類のものは口まで運べそうにないのである。 ロビン「ですがお腹が空いて本当に死んでしまいそうだったのです!本当です!     だから僕にそれをください!お願いです!!」 柿崎 「こんな美味いモンおいそれと渡せるか!断固拒否する!」 ロビン「グ……グウウ〜〜〜ッ!!     紳士的に平和的解決をしてやろうと思えば図に乗りおって〜〜〜!!     ゆ、許せ〜〜〜ん!!」 俺の怒りは即座に紳士的に爆発した。 俺はすぐさまにそれを行動燃料にすると、柿崎とやらに向かって駆け出し─── ロビン「トハッ!!」 ゲシッ!! 柿崎 「いてぇっ!?」 ロビン「テハッ!!」 ドスッ!! 柿崎 「ちょ、待て!なにすんだいきなり!」 ソバット、ドロップキックとキメてから、 柿崎くんを持ち上げるとタワーブリッジの体勢に移行した。 ロビン「俺は素人ではないーーーっ!!!!」 ギリギリギリギリ…… 柿崎 「うゎだいでででででっ!!!ちょ、シャレにっ───鷹志っ!!」 鷹志 「おうっ!加勢するぜ柿崎!とあっ!!」 鷹志くんがテーブルに飛び上がり、 そこから前方回転ミサイルキックを我がロビンアーマーにキメた。 不覚にもこのロビンは不意をつかれ、柿崎くんを離して倒れてしまった。 ロビン「グ……グウウ〜〜〜ッ」 だがこのロビン、ただでは負けん!! 俺はすぐさま上体を起こすと、ラグビーで培ったタックルで鷹志くんへと向かっていった。 鷹志 「待ってました!凍弥!」 閏璃 「おう!」 しかし鷹志くんは我がロビンタックルを腹で受け止めると、 上から我が腰に腕を回して一気に持ち上げた。 その上からはテーブルから跳躍した閏璃凍弥が落ちてきて、 逆さになった我が足を掴むと一気に体重を乗せ───ドゴシャッ!! ロビン「ブゲッ!!」 見事なツープラトンパイルドライバーが決まった。 ロビン「グ……グウウ〜〜〜ッ」 だがこのロビン、それでも負けん!! 俺は再び起き上がると駆け出し、しかし思いのほか脳にダメージがあったようで転倒。 精霊野郎率いるメンバーが座るテーブルへ突っ込んでしまい、 料理を滅茶苦茶にしてしまった。 ロビン「オ、オオ〜〜……なんともったいのない〜〜〜……」 雪音 「あ、あわわ……楽しみにとっといたデザートが……!!」 遥一郎「……久しぶりの美味い料理が……」 ノア 「マスター、それは日頃料理を作っているわたしへの当てつけですか?」 サクラ「は、はぅう……!サクラの、サクラのプリンがぐちゃぐちゃです……!!」 ───ギンッ!! ロビン「あ」 閏璃側に穂岸組が仲間に加わった!! 対するはイギリスが誇る紳士超人、ロビンマスクただひとり!! ロビン「ナンバーワーーーーン!!!」 こうなったらヤケクソだった。 俺は超人パワーを全開にすると、脆弱な人間どもへと向かっていった。 ロビン「超人ロケットーーーッ!!!」 ドゴォーーンッ!! 来流美「ふぎゃあっ!!」 ロビン「オオッ!?しまった!目測を誤った〜〜〜っ!!!」 ノア 「女性に手を上げるとはなんたる愚行……!容赦しませんよ!」 誤って来流美さんを吹き飛ばしてしまったこのロビンに対し、 ノアちゃんがアークを解放してガトリングカノンを放ってくる。 だが───ガガギンゴンギンゴン!! ノア 「……っ!?弾き飛ばして……!?」 ロビン「くどいようだがこの鎧は硬度9サファイヤで出来ている!!     弾丸など効きはしねぇ〜〜〜っ!!!     さらに人間の作った銃では超人は倒せん!!天界人とて同じことよ〜〜っ!!」 ノア 「滅茶苦茶ですね……」 サクラ「ではサクラが行かせてもらうです」 ロビン「オオ、桃色ッ子ではないか。キミもこのロビンマスクに挑むというのか」 サクラ「へえ、胸ェ借りさせていただきやすです」 ロビン「へ?」 しゃらん、と桃色ッ子の手の中で何かが抜かれた。 桃色ッ子はそれを低いところで両手で持ち─── サクラ「シャアアアアアアーーーーーッ!!!!」 それ───ドスを、我が腹部へ向けて突き出してきた!!! ロビン「オワッ!!」 咄嗟にそれを躱して、項に手刀をトスンと一閃。 サクラ「みぅっ!!」 それで桃色ッ子は気絶してくれたが─── 清水 「フッ……子供に手を出したとあっちゃあこの清水、黙ってられねぇ」 丘野 「加勢するぜ、キャプテンアフリカ」 清水 「アフリカ言うな!!」 田辺 「水臭いぜアフリカ。同じ原中生だろ?」 清水 「臭くなくてもどっちでもいいからアフリカ言うな!     ああもういい……我が怒り、受け取るがいいロビンマスク!!」 ロビン「そういうのを八つ当たりって言うんだよ!!」 清水 「黙れ!!」 即答で黙れ宣言。ひどいやっちゃ。 そんな悪い子はこのロビンが制裁を加えてやらねば〜〜っ!! ロビン「ロビンパーーンチ!!」 ボゴシャアッ!! 清水 「ほごっ!」 ロビン「ロビンパーンチ!!」 メゴシャアッ!! 清水 「ぶべぇっ!!」 ロビン「ロビンパァアアアンチ!!!」 バゴッチャァッ!! 清水 「ぶっはぁああっ!!」 ロビン「パンチパンチビンタパンチしっぺパンチしっぺぇえーーーーっ!!!」 ボゴドゴズパァンボゴシャベシィボゴシャベッチィインッ!!!! 清水 「おごろがあああああっ!!!!」 清水に言葉通りの攻撃を連ねてゆく。 属に言うターちゃんコンボである。 かつて、過去の時代で鮠鷹にもやったことがあるアレだ。 凍弥 「うわっ……!嫌なこと思い出すコンボだ……!アレ痛いんだよな……!     そういやまだあの時の仕返ししてないな───よし!俺も加勢する!!」 浩介 「おおやるか同志!ならば我らも黙っておらんぞ!!そうだなブラザー!」 浩之 「おうともブラザー!!」 俊也 「よ、よしっ!こうなったら俺も!」 飯田 「俺も!!」 麻衣香「わたしも!」 殊戸瀬「……わたしも」 瀬戸 「わたしも!」 灯村 「おいらも!」 田辺 「おいどんも!」 丘野 「それがしも!」 島田 「やきいも!」 ロビン「グ……グウウ〜〜〜ッ!!」 ふと気づけば、男衆全員と豪気なおなご衆に囲まれているこのロビン。 だがこのロビンは負けん!何故ならわたしは───超人博士だからだ!! ロビン「私は超人のことならば大体のことを知っている!     だからこそ万が一にも貴様らなぞに負けたりはゲゲェエエーーーーッ!!!」 言ってみて気づいた。 相手側に超人がひとりも居ねぇ。 ロビン「グ……グウウ〜〜〜ッ!!」 これは困った……さっきから自分が超自然的に 『グ……グウウ〜〜〜ッ』と言いまくってることに今さら気づいたことくらいに困った。 い、いくら私が超人だからといって、この数の人間に勝てるものなのか〜〜〜っ!! ロビン「グ……グウウ〜〜〜ッ、こうなったら〜〜〜!!」 私はすぐさま近くのテーブルへと駆けるとグラスを割り、 それを掻き集めてギュッと握った。 ロビン「ロビン・パワー全開!!」 ギュンギュンギュンギュンギュン!! ロビン「出来た!グラスの破片で作ったガラス製の(ベル)
だ!」 ガラスを握って力を込めると摩訶不思議、ガラスの破片があっという間に鈴に。 凍弥 「……えっと。それで?」 ロビン「………」 凍弥 「………」 ブンッ!ゴワシャッ!! 柿崎 「いってぇえっ!!!」 ヤケクソになって投げた鈴が柿崎くんの顔面にぶつかりました。 そう、もうこうなりゃヤケだ。 ロビン「ロビンパワー全開!!」 とにかく私はグラスを割りまくり、 片っ端から鈴に変えると男衆と一部の女衆に向けて鈴を投げまくった。 凍弥 「うわっ!たっ!とっ!飛び道具は反則だぞ彰衛門!!」 ロビン「うるせぇ!これはイギリスに古来より伝わる伝統、キャッチベルっつーんだよ!     イギリス人はみんなポケットに鈴を持ってて、     敵と対面したら投げ合う風習があるんだよ!ポケベルっての知らんのか!!」 凍弥 「それ絶対違《ドボォッ!!》痛ぇっ!!」 小僧の脇腹にベルがヒットした。 この調子だ。 どんどんベルを作っていって、敵を近寄らせなければ───このロビンの勝ちだ!! ロビン「オラァッ!!オラァアッッ!!ロビンの怒りを思い知れてめぇら!!」 ベルを作って投げまくる。 それがドスドスと顔より下の部分に当たり、男どもは怯んでいる。 中村 「ひ、卑怯だぞロビン!てめぇそれでも紳士か!!」 ロビン「紳士だって人の子なんだよ!!オラてめぇ寄るんじゃねぇ!!     ここから先はこのロビン様の陣地だ!!」 丘野 「お、おのれこの腐れ紳士が!」 ロビン「なんだとてめぇ!!ロビンを馬鹿にするのは構わんが紳士を冒涜すんな!!」 麻衣香「ロ、ロビンは馬鹿にしていいんだ……」 田辺 「つーかおい!お前の今してることこそ紳士への冒涜だろうが!!」 ロビン「うるせぇ!ロビンだって勝つためにゃあなんでもやるんだよ!!」 丘野 「くっそ!近寄れねぇ!!」 殊戸瀬「ん……もうちょっと待って」 丘野 「え……殊戸瀬?」 ロビン「はっはっはっはっは!!どうだぁ!手も足も出まい!!     所詮貴様ら人間など、このロビン様のロビンパワーの前ではクズなのだぁ!!」 殊戸瀬「……ん、いいよ」 丘野 「へ?……ああ」 ロビン「あ〜〜ん?なにくっちゃべってやがる。     言っておくがこちらにグラスがある限り、このロビン様は無敵───」 ……あれ? ロビン「あ、あれ?おかしいなっ……あれっ……あれっ……?」 ……ヤバイ、グラス、ナイ…… 俊也 「さて……ロビン?よくもまあ今まで好き勝手やってくれたな……」 ロビン「ア、アワワ〜〜〜ッ」 来流美「あ〜……超人ロケット痛かったわぁ……。     力というものがどんなものか教えてあげるから、覚悟しなさい?」 ロビン「グ……グウウ〜〜〜ッ」 凍弥 「まあとりあえず……」 浩介 「アレだな」 浩之 「うむ」 私を見る人間が、その手にロビンパワーで作ったベルを手にする。 それだけで私は悟ってしまった。 凍弥 「受けてみろロビンパワー!!」 浩介 「ほうれロビンパワー!!」 浩之 「ロビンパワー!!」 ドゴォッ!!ドボッ!!ガツンッ!! ロビン「いでっ!あがぁっ!!おごっ!!」 予想通りだった。 男衆は私が散々投げたロビンベルを手にすると、それぞれが全力で私に投げてきたのだ。 閏璃 「そらっ!ロビンパワー!!」 鷹志 「ロビンこのっ!!」 柿崎 「ロビンッ!!ロビンめっ!!」 ドゴゴスガスゴスガコォッ!!! ロビン「オアーーーーッ!!!」 私はたまらず蹲り、頭を抱えるようにして身を固めた。 遥一郎「ロビン!ロビンが!!」 俊也 「このロビン!クソロビン!!」 雪音 「ロビン!ロビン!!」 ドゴゴシャゴシャべキャガシャンゴシャンバッシャァアアアアンッ!!! ロビン「オアーーーーーッ!!!」 中井出「ロビンロビン!このロビン!!」 中村 「よくもロビン!!ニコでもないロビンめが!!」 田辺 「くらえロビン!!ロビンマスクめが!!」 ゴシャゴシャバキャゴキャゴワシャゴシャワシャガッシャァアアンッ!!!! ロビン「オアーーーーーッ!!!」 投げつけられるベルが次々と我がロビンアーマーにぶつかって砕ける。 ガラスとサファイヤでは硬度が違うからだが、 アーマーで砕けられると破片が皮膚に刺さって痛いのなんのって…… しかもその破片の上にベルがブチ当たった時など激痛だ。 ゴシャゴシャゴシャゴシャ!!!! ロビン「オアーーーーーーーーッ!!!!!!」 それでも容赦無くベルは投げられてくるからもう大変。 とりあえずこのラグビーで鍛え抜かれたボディを以って、 向こうの方のベルが無くなるまで耐えるだけだ。 ロビン「オアーーーーッ!!……オア?」 そしてそれは思いのほか早く訪れた。 飛び道具が無くなった彼ら彼女らは困惑し、私を見て恐れ慄いたのだッッ!! ロビン「フ……フフフ……ナンバーワーーーーン!!!」 だから私は人差し指を天に掲げて叫びました。 超人オリンピックを優勝したケビンのポーズだが、もう関係ない。 ロビン「ククク……どう料理してくれようか、この人間どもがぁ……!!」 中井出「待て!紳士超人は『ククク』なんて笑い方しねぇぞ!?」 ロビン「だまらっしゃい!!誰だって怒れば人格くらい変わるんだよ!     そりゃセイウチンだって『グロロ〜〜〜』とか言い出すわ!!」 中井出「そういう問題じゃないだろが!!」 ロビン「うるせ〜〜っ!!ともかく私は紳士超人として貴様らを許さん!!」 中井出「くっ……こうなったら……ヒヨッ子ども!集団リンチだ!!」 総員 『Sir(サー)YesSir(イェッサー)!!』 ロビン「フッ……人間どもが豪気なことだ。     超人の中でもエリートである97万パワーの持ち主、     このロビンマスクに勝てると思っているのか」 中井出「勝てる。だってこっちにゃオリバが居る」 ロビン「ゲェエエエーーーーーッ!!!!」 そうだった……オーマイガァ(おかしすぎるわよ)……。 中村 「おおどうしたロビン。戦意喪失か?」 ロビン「グ……グウウ〜〜〜ッ」 丘野 「おおっ!オリバはパンツに自分の手を差し込んでハンドポケットの構えだ!!」 清水 「いや……ポケットっていうのか?これ」 ロビン「グ、グムム〜〜〜……」 オリバ「オヤオヤ、フフ……相手ガ自分ヨリ強イノデ自分ハヤメル……     意外トミミッチイト言ウカ……」 パァンッ!! オリバ「ウベッ!!」 余裕かましてたオリバに近づき、ビンタ一閃。 不意を突かれたのか、オリバの顔が一瞬反動に持っていかれる。 ロビン「何故抜かぬ」 オリバ「………」 ロビン「反撃できぬまでも、ポケットから手を抜くことぐらいは出来るだろう」 オリバ「………」 ロビン「速すぎたのかな?ならば……」 ゴッ!!───手を抜こうとしたオリバの側頭部に拳がキマる。 ロビン「どうした。抜いたら反撃だろう」 ボリュッ───ボグチャァッ!! ロビン「ウベロヴァァアアーーーーーーーッ!!!!」 反撃されました。 胸への一発───だがそれは容易く硬度9サファイヤのアーマーを砕き、 私の体に多大なダメージを負わせたのだったッ……!! 当然私は吹っ飛び、地面を跳ね転がってようやく止まった。 ロビン「グ……グウウ〜〜〜ッ」 か、怪力無双ッ……!!これほどのものかッ……!! じょ、冗談じゃねぇ……!強ぇ……こいつ強ぇえよぉ……!! ロビン「だ、だが私は諦めない!!今こそ正義超人の底力、見せてくれる〜〜っ!!」 中井出「鈴投げながら散々罵倒してたくせに、自分が正義だと思ってるよ……」 ロビン「う、うっさい黙れ!!」 オリバ「ソレデ、ドウスルンダ?続ケルノカ続ケナイノカ」 ロビン「続行だーーーっ!!」 総員 『ヤーーーッ!!!』 ロビン「そうりゃああーーーーっ!!!」 やると決めたらやる!!やってやる!! そう心に誓い、私はラグビーで鍛えたタックルで突進!! しかし顔面目掛けて振るわれた巨大な拳がすぐ目の前にバゴシャア!! 【ケース90:晦悠介/アガメムノンに捧げる下克上】 …………。 ロビン「グビグビ……」 中井出「すげぇ……ロビンマスクがあっさりと……」 終わってみれば呆気なかった。 ロビンマスクは何度か立ち上がったが、その度にオリバに殴られ、やがて動かなくなった。 鎧もマスクも既にボロボロだ。 生きてたのが奇跡だな、これは。 中村 「つーかさ、一応結婚式自体は終わったんだから     さっさと力を取り戻しに行けばいいのにな」 丘野 「なんだかんだ言って、ロビンマスク状態が気に入ってるんじゃないか?」 蒲田 「ああ……あるかも」 マスクをベコベコにヘコませたロビンがグビグビと泡を吐き出している中、 原中の猛者やその他のみんなは随分と呆れていた。 ……もちろん俺もである。 悠介 「お前らもう大体食べたか?」 中井出「まだだ!まだデセルのケーキが残ってる!!」 蒲田 「イエス!これを食うまでは腹が裂けても『もう食えん』などとは言いますまい!」 悠介 「落ち着け蒲田、言いたいことは解るが言葉が適切じゃない」 中井出「まあとにかくこうなっては主役がどうとかなど関係ナッスィン!     ヒヨッ子ども!存分にケーキを食らえ!!それでキミは硬派になれる!」 総員 『訳解らんがイェッサー!!』 声を揃え、ケーキへと駆けてゆく総員。 俺はそんな彼ら彼女らを見送ると、苦笑しながらストーンヘンジを持ってきた。 悠介 「あ〜……順番が逆になったけど、超人ごっこはおしまいだ。ホレ」 ヒョイとストーンヘンジをロビンに向かって投げた。 するとロビンの目がクワッと輝き、 すぐさまに立ち上がると両手でストーンヘンジを受け止めた。 途端にストーンヘンジが受け取った『彰利の黒』と、 『ロビンマスクの超人パワー』が入れ代わってゆく。 ロビン「ウ……ウグアア〜〜〜……ち……超人パワーを吸い取られるということは……     こ……こんなに苦痛を伴うものなのかぁ〜〜〜っ……     ま……まるで体中の血液が入れ代わってい……いくようだぁ〜〜〜っ」 ……ご丁寧に解説してくれてる。 ロビン「グ……グウウ〜〜〜しかしオ……オレは耐えるぞ〜〜〜っ。     あ……愛するアリサのた……ために〜〜〜っ」 悠介 「どうでもいいけどさ、どもりすぎじゃないか?」 ロビン「グ……グウウ〜〜〜ッ」 シュゴォオオオオ!!! ───……。 ……。 ズーン! 悠介 「ア……アアーーーッ!!」 あれからしばらくして、ロビンパーツが外れた彰利はストーンヘンジを落とし、 その場に倒れてしまった。 ……というか、どうすれば倒れるだけで鎧とマスクが外れるんだ? しかも見当違いの方向に。 一番の疑問はロビンパンツだな……。 足から脱げる筈なのに、なんで倒れた彰利の横に落ちてるんだ? 具足はちゃんと足元に落ちてるのに。 彰利 「グ……ウ……ウゥ……ウォァァ〜〜〜ッ!!」 そして起き上がるだけの行為に全力を込めてるロビン……というか彰利。 ありゃあまだ完全に目が覚めてないな……。 彰利 「こ……これは……む……胸も……足も!ハッ!マ……仮面(マスク)!     ……そ……そうだ!オレは愛するアリサのために、この古代のロビン家が     建造したと言われる超人パワー制御装置ストーンヘンジで     “足抜け”(ドロップアウト)の儀式により超人から人間へと生まれ変わったんだーーーっ!!」 そしてわざわざ状況説明までしてくれる全裸の彰利。 帰ってこ〜いと言ってやりたかったが、話し掛けた途端に襲われても嫌なので無視した。 というか、いっつも変形オールバックがトレードマークだった彰利の髪が今は降りてる。 パッと見てすぐに、彼が彰利だとは思わないだろう。 彰利 「な……なれたんだぁ……ほ……本当に人間に!     これでマッキントッシュ氏のお許しがもらえる!     は……早くこの手でアリサを抱きしめたい……!」 そして彼は旅立った。全裸で。 花嫁が居る、ケーキが切り分けられている場所へ。全裸で。 毎度思うんだが、ロビンは全裸で店に服を買いに行って、 どうして通報されなかったんだろうか。 不思議でしょうがない。 などと思いながら、俺も総員が騒ぎ楽しむ場へと足を運び─── 彰利 「アリサーーーーッ!!!」 女性軍『キャアアーーーーーッ!!!』 彰利 「アリ……あれ?俺こんなところでなにキャーーーッ!!!!」 男性軍『おわぁああーーーーーっ!!!』 彰利 「キャアアーーーーッ!!!キャーーーーーッ!!!!」 女性軍『キャーーーッ!!?キャーーーーーッ!!!!』 男性軍『おわっ!!おわぁああーーーーーーーーっ!!!!』 女性軍『きゃああああーーーーっ!!!キャアーーーーッ!!!!』 彰利 「キャアアアアアアアーーーーーーーーッ!!!!!」 その場は騒然となった。 ───……。 ……。 しくしくしくしくしく………… 庭園に鬱陶しい泣き声が流れている。 もちろん誰でもない、馬鹿な親友のものだ。 中井出「お前さ……結婚式ってイベントでどれだけ恥を曝せば気が済むんだよ……」 彰利 「うぐっ……ひっく……うぇえええ……」 裸を民達に曝し、竜王たちにボコボコにされた彰利が体育座りをして泣いている。 何故体育座りなのかは解らないが、とりあえず服はもう着ている。 各死神が着る死神の黒衣だ。 彰利は他のどの死神よりも死神の要素が濃い分、 黒衣までもが他の死神とは異なったものだが。 死神の王になったこいつがこんな風でいいんだろうか。 丘野 「提督!それよりも例のものをやりましょう!!」 中井出「ム───準備は整っているのか!」 蒲田 「ハッ!あとは長ネギを用意するだけであります!!」 中井出「あい解った!!晦一等兵!汝に指令を与える!     今すぐ長ネギを腐るほど沢山創造してくれ!!」 悠介 「……?長ネギって───ああアレか。久しぶりにやるのか?」 中井出「これほどの人数が揃っているのだッッ!!!当然だッッ!!」 悠介 「よし!それじゃあ───」 俺はイメージを解放させて、長ネギを大量に創造した。 これから始まる祭りごと───『原中名物:剣仮魔都裏(けんかまつり)』のために。 彰利 「け、剣仮魔都裏!?オオ!それは参加せんわけにはいきますまい!!     俺も喜んで参加するぜ!?もうどんと来いだ!!」 悠介 「よし!それじゃあいっちょ大暴れするかぁっ!!」 彰利 「オウヨーーーッ!!」 そうして創造された山のような長ネギを理力で浮かし、 俺達はみんなが集まっている場所へと駆け出した。 ───……。 ……。 ドンッ!! 中井出「それでは剣仮魔都裏のルールを説明する!!     何分初めての輩も沢山いるため、じっくりと説明させてもらうぞ!!」 総員 『サー・イェッサー!!』 中井出「まず剣仮魔都裏の掟を説明する!!使用していい武器は長ネギのみ!!     拳、または足といった体術全てを認めぬものとする!当然頭突きもだ!!     使用していいものはあくまで長ネギのみ!!それ以外を使った者は弱者である!     卑怯者として、『寂海王』の名が嫌でも進呈される!!」 総員 『サー・イェッサー!!』 中井出「剣仮魔都裏の歴史は我らが原中にあり、     一度他学年の者どもにイチャモンつけられた際に行われた     伝説的な死闘方法である!!勝負方法は長ネギで五回叩かれたら死亡形式!!     五回叩かれた者は速やかにあちらのテーブルに座るように!!」 総員 『サー・イェッサー!!』 中井出「なお今回は晦一等兵が『殴られタイマー』を創造してくれた!!     長ネギで叩かれた場合、このタイマーに回数が刻まれる!!     五回叩かれると爆発するので隠しようがない!!爆発したら速やかに退場!!」 総員 『サー・イェッサー!!』 中井出「我ら原中の名の下に、敗者復活などという文字は無し!!     散らば消え失せ、斬らば勇めよ!!それこそが原中魂である!!」 総員 『サー・イェッサー!!』 中井出「なおこのタイマー、30秒に一回は誰かを長ネギで叩かねば、     漏れなく『チキン』の焼印を腕に押される!!それが嫌ならば存分に戦え!!     逃げる者になど闘者を名乗る資格無し!!いいかヒヨッ子ども!これは戦争だ!     チキンではなく女でも男でもなく、ただ戦いし者となれ!!     ここは戦場!殺意の篭らぬ攻撃で止められるものなど何一つとして無し!!」 総員 『サー・イェッサー!!』 中井出「長ネギが折れた場合、すぐさま投げ捨てよ!!     そうすればすぐに新たな長ネギがタイマーから創造される!!     まず最初はここにある長ネギとタイマーを手に取り、     タイマーは左腕に、長ネギは両手に持つこと!!」 総員 『サー・イェッサー!!』 中井出「それでは各自!!存分に用意せよ!!そして戦え!!     イェア・ゲッドラァック!!ライク・ファイクミー!!」 ザザッ!! 総員 『Sir(サー)YesSir(イェッサー)!!』 それぞれが一斉に長ネギとタイマーを手にし、装着し、構える。 そんな中で俺と彰利もそれを装着し、 力の差がありすぎるという文句の末に『弱体化』の呪いをみんなにかけた。 死の精霊イドの力から精製した魔法の一種だ。 効果時間は自分で決められるから、いつでも好きな時に解除できる。 ちなみに弱体化の基準としているのは『中井出の身体能力』であり、 つまり力は全員『全く互角』。誰が勝つかは解らないわけだ。 夜華      「……鮠鷹、今度こそ勝たせてもらうぞ」 凍弥      「篠瀬……よし、望むところだ。こっちだって負けない」 ゼプシオン   「同条件でなら望むところだ。負けはせんぞ」 悠介      「ああ。お互い生き残れるといいな」 シュバルドライン「いい機会だ。真剣勝負といこうか、王よ」 悠介      「確かにいい機会だな。力の差なんてまるで無い。          けど、人間の体にはもう慣れたのか?」 シュバルドライン「誰にものを言っている。知性竜を甘く見るな」 悠介      「はは、なるほど。じゃあ、お互い生き残れたら戦おう」 リアナ     「師匠、手加減しませんからね」 悠介      「ああ。全力で来い。同条件で負けるならなんの文句も無い」 彰利      「敵いっぱいやね」 悠介      「剣仮魔都裏が始まればそんなことも言ってられなくなるって」 彰利      「そらそうだ。周り全てが敵なわけだし」 ノート     『精霊全ても噛ませてもらっている。全力でいかせてもらうぞ』 悠介      「……あ、そっか。もしかしたらこの戦いで、          誰かがノートに勝つかもしれないわけだ」 彰利      「あ、そか。力が同じなら勝てるやも……」 けど、もし勝てるとしてもどうせなら普通の状態で勝ちたいもんだ。 なんて思ってる間に全ての準備が整った。 そして─── 中井出「正々堂々!!試合開始!!」 合図は落とされた。 それぞれは一番近くに居た者に斬りかかり、 しかしそれを予測していた相手に躱され攻撃され、受けて避けて叩かれての連続。 中村 「サーーームソーーーーン!!!」 丘野 「麦チョコ!!」 ジパァンッ!! 中村 「うべぇっ!!」 様々な仮装をした者たちが戦う様は異様の一言。 しかしみんな真剣なんだから不思議なものだ。 蒲田 「チョエエエ〜〜〜ッ!!」 フォンッ!! 蒲田 「ハッ!!」 フオンッ!!! 蒲田 「ち、ちくしょ〜〜〜、何故当たらねぇ〜〜〜」 悠介 「まあ……力は同じでも戦闘経験があるからなぁ」 蒲田 「ぐあ……」 悠介 「じゃあな蒲田。ゆっくりと観戦しててくれ」 蒲田 「ア、アワワ〜〜〜ッ!!」 俺は中井出の実力で出せる、最善かつ無駄の無い動きをイメージして長ネギを振るう。 いや、振るおうとした。 が───後ろに気配を感じて横に飛んだ───途端、聴覚に風を斬る音が届いた。 菜苗 「あらあら〜、残念です〜」 悠介 「ぐあ……!南条……!?」 振り向いた先には南条菜苗が居た。 あまり残念そうではない口調とは裏腹に、 タイマーに表示された斬撃数が二桁に達しているところに驚きを隠せない。 ───嘗めてかかるとやられるな、こりゃ。 それにそろそろ30秒経つし─── 悠介 「てい」 コパァン!! 佐古田「ほきゃっ!?」 既に復活し、戦いに参加していた佐古田の後姿に一閃を放った。 よし、これであと30秒は平気だ。 佐古田「誰ッス!?───も、モミアゲ!?不意打ちとは卑怯───」 凍弥 「隙ありゃあ!!」 コッパァン!! 佐古田「はきゅっ!?ム、ムナミー!?おのれ」 浩介 「隙あり!!」 スッパァン!! 佐古田「あいたッス!!ちょ、待つッス!!卑怯───」 浩之 「以下同文です」 スパァン!! 佐古田「ハオッ!!」 悠介 「隙あり」 パァンッ!!───ボゴォンッ!! 佐古田「あっ……あぁあ〜〜っ!!」 佐古田、あっという間にリタイア。 一筋縄ではいかないのがこの剣仮魔都裏の怖いところだ。 って……いつの間にか南条が居なくなってるな……。 何処いったのやら───って 夜華 「何処を見ている鮠鷹───!!」 凍弥 「おわっ!?」 フオッ───パシィンッ!! 凍弥 「お、お前なぁっ!いきなり───」 夜華 「不意打ちが卑怯か?馬鹿を言え、以前のお前ならなんなく避けられた筈だ」 凍弥 「っ……なんの!」 パパァン!!パァンパァンパァン!! それぞれが両手に構えた長ネギが音を鳴らしてゆく。 後ろからの不意打ちにも瞬時に反応する篠瀬に、危ないところで不意打ちを躱す凍弥。 気配探知に随分と差があるが、正面での打ち合いにはそう差は無いらしい。 凍弥もあれでなかなか、修行三昧の篠瀬に負けてない。 皆川 「おぉ〜〜りゃ〜〜〜っ!!」 スパァンッ!!! 皆川 「ゲェエエーーーーーーッ!!!」 俺は俺で正面から挑んできた皆川に一閃を与えてからどんどんと前へと進む。 既に誰が誰を狙ってるかなんて解らない状況───そんな中、 竜王たちや飛竜たちはそれはもう大激戦を繰り広げていた。 ……あそこに近寄るのはやめておいた方が良さそうだな。 竜王たちは余裕を以って原中の猛者どもの攻撃を見極めて対応していて、 飛竜たちもそれと同じ。 けどヴァルトゥドゥスは相手が男だろうとなんだろうと一歩も引かずに打ち勝って見せ、 ディルゼイルとアーガスィーは開始直後からずっと争っているようだ。 ヘイルカイトは───リアナと戦ってる。 へぇ、やるもんだなヘイルカイトも。 人の姿になったばっかりだっていうのに、リアナと互角にやりあってる。 いくら実力が同じになったとはいえ、リアナには剣術の経験があるっていうのに。 彰利 「フッ……二刀流なら俺は負けん……!」 真穂 「弦月くん……中学の時の真デレラでの決着、真剣勝負でキメようか」 彰利 「いいでしょう真穂さん。存分に───かかってこい!!」 そしてこちらにもガチ勝負を始めるやつらが。 俺は30秒経つ前に適度な攻撃を不意打ちにて繰り返し、奥へ奥へと歩いていった。 そして─── ゼプシオン「……?そこに居たか」 先の方で何人もの屍の上に君臨しているゼプシオンを発見した。 ヒット数75を記録しているタイマーが、その強さを見せ付けている。 少なくとも16人近くは屠っているかもしれないということだ。 背の低い状態で召喚されているゼプシオン───その手にある長ネギはとうにボロボロだ。 彼はそれを放り投げ、新たな長ネギを手に取ると俺を見て笑った。 ゼプシオン「得物に納得はいかないが───こんな機会はそうそう無い」 悠介   「───皇竜王、晦悠介」 ゼプシオン「召喚獣、ゼプシオン=イルザーグ」 悠介   「いざ───誇りある戦いを!!」 言葉を放ってすぐに疾駆した。 一瞬にして詰められる間合いは、たとえ中井出の身体能力が基準だとしたって変わらない。 双方が限界以上の力の出し方を知っている以上、力が人間並みだという枷など超越済みだ。  シパパァン!!パパパパァンッ!!!! 振るわれる弧が弧に弾かれる。 間合いを詰めては打ち、打たれては間合いを外し。 一進一退の攻防をし、荒い息を吐いては、その充実感を心から楽しんだ。 そう、こんなに簡単に疲労が訪れるのは久しぶりだった。 かつて自分が人だった頃にも、こんなに早く疲れたことなど無い。 それが酷く新鮮で、とても楽しかった。 ───連撃の雨は止まない。 30どころか2と経たぬうちに双方の得物を打つ弧は凄まじく、 細い得物が振るわれるたびに風を斬る音がその場に充満した。 飛び散る汗の数などとうに十を越え、 吐き出す荒い息と心臓の音すら既に数え切れなくなっていた。 それでも不意打ちをしようとする者が来れば反応できるのだから、 覚えたことというのはやはり体が覚えているもんだって思えた。  ジパァンッ!! ゼプシオン「───!チィ!」 ゼプシオンの持っていた長ネギがヘシ折れる。 彼はすぐさま長ネギを捨て、新たな長ネギを手にしようとするが─── 悠介 「その隙───もらった!!」 それこそ最大の隙だった。 息も荒く、痛いくらいに高鳴っている心臓に鞭を打ちながら、 俺は間合いを詰めて弧を連ねた。  シパパァンッ!! ゼプシオン「───っ……まだだ!!」 だがそれも二発までに終わり、三発目ともなると、弧は新たな弧に弾かれた。 そればかりか今度はこちらの得物が砕ける。 ゼプシオン「返させてもらうぞ───!!」 悠介   「───!」 俺は咄嗟に砕けた得物の、 持っていた部分を右手の手の平に並べ、それでゼプシオンが振るう一撃目を受け止めた。 続いての二撃目はタイマーから出てきた長ネギを左手で取り、それで弾く。 ゼプシオン「───っ……さすがにやる!一筋縄ではいかんようだ───!!」 悠介   「はっ……はっ……はぁ……はー……すぅ、はっ!」 すぐに息の乱れを整えると、心を落ち着かせて前を見る。 すると、ゼプシオンも同じく息を整え、俺を見たところだった。 と───その時。  フフォン───シパァンッ!! 悠介   「っ───!?」 ゼプシオン「ぬぐっ……!?」 俺とゼプシオン、それぞれに鋭い不意打ちがあったのだ。 ヴァルトゥドゥス「───さすがは英雄。まさかこの一撃を……」 シュバルドライン「相手をしてもらうぞ、王よ。雑魚どもは粗方片付いた」 ヴァルトゥドゥスとシュバルドラインだ。 それぞれが一端引き、少し離れたところでそれぞれの追撃を待つ。 その間、俺は周りを見渡したが───なるほど、生き残っているのが既に少数だ。  シッパァアアアンッ!!!! ヘイルカイト「ぐっ───!?しま───」 ビビー、ボゴーーン!! ヘイルカイト「ぐあああっ!!!」 ヘイルカイト、リタイア。 遠くの方でリアナが息を荒くしながら勝利を噛み締めているのが見えた。 一方では凍弥が篠瀬に敗北したり、彰利が姑息な手で竜王たちを仕留めたり。 しかし次の瞬間にはジハードに隙を突かれてあっさり惨敗し、 しかしそのジハードも南条に不意を突かれてリタイア……。 南条のやつ、何気に気配が解り辛いんだよな……。 おお、ジハードが悔しがってる。 ───さて、その一方で。 既に何人か敗北している精霊たちの中でも、ひとり懸命に戦ってるヤツが居た。 セルシウス『───っ……はぁあっ!!』  シパパン!パパンパパァンッ!! アーガスィー「ぐあっ……!マジかよ……!!」 ───セルシウスだ。 動きに無駄が無く、疲労が見えたらすぐに息を整えてる。 その戦い方はまるで───……ああそうか、似てる筈だ。 あいつの中に彼女が生きてるなら。 セルシウス『………』 セルシウスは一度俺を見て小さく笑むと、次いで襲い掛かってきた観咲雪音と戦闘を開始。 がむしゃらに長ネギを大振りする観咲に対し、 冷静にそれらを避けていき、疲れたら連撃で詰める。 俺ならきっとそうすると思う方法を的確にこなすセルシウスを見て、 俺もやっぱり自然と笑っていた。 そして─── 悠介      「いくぜ、シュバルドライン」 シュバルドライン「いつでも来い」 言って、地を蹴る。 ゼプシオンも同時に地を蹴り、ヴァルトゥドゥスへと突進していった。 やがていつか言っていた別の事柄での戦いをするべく、 俺とシュバルドラインは得物を交えた。 武器が長ネギというのがイマイチ笑えてしまうが、 それも『負けられぬ』という意思があれば確かな武器へと変わる。 たとえ草の葉一本でも、それが武器になるのだと確信できる場面ならば信頼をするように。  パパァン!!ゴッ!シパァンッ!! 描く弧、突き出される線が幾重にも連ねられてゆく。 息切れの間隔など刹那に訪れるくらいの無茶な工房を連ね、 だがそれを無理矢理押さえて戦う。 汗は出ても呼吸のリズムは乱さぬよう。 シュバルドライン「ふ───!」 悠介      「っ───!」 得物が千切れれば刹那に次を。 次が来るまでに隙があればそこに弧ではなく打突を。 連ねてゆく弧や線は互いへ一切の間隙(かんげき)を逃さずに放たれる。 振るい、弾き、突き、逸らし、避け、追い詰め、描き、弾かれる。 それらを幾度も連ねてゆき、それでも体を止めることはしない。 丘野 「……提督……お前も頑張ればあれだけ動けるらしいぞ……」 中井出「冗談だろ……?あれ、完全に人間の限界超えた動きだろ……」 蒲田 「経験の差というやつか……。どっちにしろ既に負けた俺達には関係無いなぁ」 敗北者『まったくだ』 吐く息の苦しさよりももっと大事なものがある。 息の乱れを止めようとする構えよりも大切なものがある。 遊びで始めたからといって、それが勝負だというのなら引けない思いがある。 それが男ってもんだ───!!  パパパァン!!───ジパァンッ!! 悠介 「次───!」 折れれば次を用意し、折れば打突を。 弧では辿り着けぬ位置を線で穿たんとし、 だがその一撃は予測されたかのように避けられる。 さすが知性竜───こちらの行動を予測することだけでも相当な速さだ。 けど───! 悠介 「っ───そこだ!!」  パァンッ!! シュバルドライン「ぬっ───!?」 その腕に一撃が振るわれた。 それが予測出来なかったのか、予測していても避けきれなかったのか。 シュバルドラインは舌打ちをしたのちに間合いを離し、体勢を整えた。 だがその間合いこそがこちらの勝機だった。 悠介 「“閃空 飛翔ニ堕ツル万物(閃技 飛翼にして刃)”───!」 放った得物が空を裂く。 シュバルドラインはそれに逸早く気づき、奥義を完成させんがために突進してきた。 そう、たとえ投げた得物が衝突しようと関係無く。 悠介 「“疾空 交差セシ白銀ノ閃(疾技 交わりにて無二を砕く)”!!」 振り下ろされる交差。 だがそれが衝突するより早くシュバルドラインは跳躍し、俺の後ろに回った。 構わない───そのまま振り向き様に三撃目を───!! 悠介 「“───烈空 無斬ガ故ニ砕ヲ齎ス(烈技 無刃にして連壊)”!」  フフォンッ───ザァアッ!! が、振るった三撃目も後退により避けられた。 さすがによく見ている。 だが俺は最後の一閃のために集中し、一気に駆け出した。 シュバルドラインもそうして駆け出し、やがて─── 悠介 「“終空 是即チ歴戦ニテ敗北ヲ知ラズ(終技 我が生涯は刹那にして無限)───”!!」 シパパパパパパァンッ!!! 悠介      「……へ?」 シュバルドライン「ぬぐっ!?」 終空を放とうとした時、俺達を容赦無く叩きまくる存在があった。 それに気づいてみればタイマーは爆発し、今までの戦いがウソだったかのようにリタイア。 呆然とする俺とシュバルドラインの視界に映っていたのは───南条だった。 菜苗 「勝ちました〜♪」 ほんやりとした笑顔で長ネギを持つ彼女。 見れば、彼女以外残っていない戦場がそこにあった。 悠介      「………」 シュバルドライン「………」 こういう場合、俺達の決着はどうなるんだろうか。 ……やっぱり無決着のまま……か? 中村 「お前らさ、個人の戦いに熱中しすぎ。     途中まではちゃんと周りにも気がいってたんだろうけど、     奥義の辺りから相手しか見てねぇんだもん。そりゃ叩かれるわ」 中井出「というわけで優勝は!大穴の南条菜苗さんに決定ィイイーーーーーッ!!!     精霊スピリットオブノートやオリジンまでも倒したその勇姿を称えよ!!」 総員 『ハワァアアーーーーーーッ!!!!』 歓声が飛ぶ。 南条は皆に抱えられて胴上げをされ始めた。 悠介      「………」 シュバルドライン「………」 そんな中で俺とシュバルドラインは向き合い、微妙な顔をして溜め息を吐いた。 嫌な決着の着き方だったと呆れるようにだ。 と、そんな時ドグシャア!! 菜苗 「うきゃっ!!」 中村 「ゲェエエーーーーーッ!!!!」 丘野 「なんてこった!優勝者を落としちまった!!」 蒲田 「こりゃやべぇ……とんずらぁあああーーーーーっ!!!!」 まあなんというか、予想通り胴上げ状態から南条を落とした猛者どもはとんずらした。 それに触発されてとんずらする閏璃凍弥陣や、穂岸遥一郎陣に朝月俊也陣。 未来の地界の民のみがそこに残り、南条の心配をしていた。 【ケース91:弦月彰利/愛のコリーディング】 ───そうして、結婚式+披露宴は滞り無く……はなかったが、終わった。 特に他にやることを見い出せなかった皆はそれぞれが話し合いに笑い合いを始め、 いつしか俺達もそれに混ざり、飽きることなく談笑した。 時には戦いのことを思い出し、時には平和な世界のことを思い出し。 そうして話し合っている最中、ふと思い立って悠介に振ったのが『あの話』。 彰利 「なぁ悠介。ちょっと上映会やってみんかね?」 悠介 「上映会?……ああ、ゼットの過去のヤツか?」 彰利 「そ。一応済んだことだし」 悠介 「ああ、いいんじゃないかな。見られて困るようなものは無いと思う。     けど───豆村のおやっさんとかミズノおばちゃんとか居るぞ?平気か?」 彰利 「平気平気!なんとかならぁ!んでは早速!!」 了承が出るや否や、月視力を解放しておりました。 ───……。 ……。 景色はまず、過去の空界に降りたところから始まりました。 ……語りが丁寧なのは、昔話っぽくするためですのでお気にならさらぬよう。 中井出「うーわー、一目見て解るくらいに空気が汚れてるな……」 中村 「こりゃ精霊たちじゃなくたって嫌になるって」 映像の中で語られる言葉に同意して『うんうん』と頷く一同。 彼らはとっても正直でした。 ミズノおばちゃんや豆村さん家のご両人や俊也などは口をポカンと開けたままですが、 それも次第に慣れていっているようなのでまあなんとかなるでしょう。 そうして───すぐにサウザーントレントに向かった我らでしたが…… 中井出「おお見ろ!予想通り迷ってるぞ!」 中村 「さすがだ晦!お前なら絶対に迷ってくれると信じていた!」 悠介 「そんなもん信じてもらったって嬉しかないわっ!!」 あっさり迷った俺と悠介を見て、その場の皆様は妙に納得していました。 別に方向音痴ってことはないのですが、 竜族の王ともなったクラスメイツが道に迷って考え込む姿が面白かったのでしょう。 グルグリーズ  「見ろ、王が道に迷ってるぞ」 マグナス    「無様だな」 ドラグネイル  「ああ無様だ」 シュバルドライン「迷いの森の呪いくらい弾き飛ばせる実力を持っているだろうに」 悠介      「お、お前らなぁああ……!!」 シュバルドライン「王、貴様の悪いところは          『実力があるのに自分では出来そうにない』と思うことだ。          もっと己の力を過信しすぎる程度でいいと思うがな」 ドラグネイル  「同意見だ。今の王には出来ぬことが無いと言っていいくらいだ。          だというのに己の力を足りないものと見る。          お陰で成長は早いが、成長したところでまだ下に見る。          それではキリが無いぞ王よ」 悠介      「ばか、なに言ってんだ。強くなることにキリなんて無いほうがいい。          そうすれば強くなった分、誰かを守れるだろう」 シュバルドライン「ふむ……確かにな。          王はなにかを守ろうと思った時には恐ろしいまでに人格が変わる。          一種の呪いともとれるくらいにだ」 マグナス    「普段はこれだけ普通の人間と変わらんというのに、          戦いが始まればまるで別人だ。正直やりきれん」 悠介      「必要な時に必要な力が出せるのはいいことだろ?          そんな、常に力を出した状態じゃあ周りが怯えるよ」 グルグリーズ  「ふむ……なるほどな」 などという会話が、竜族方面から聞こえてきます。 そこに飛竜たちも混ざってあーだこーだと話を渦にしてゆくのです。 これではキリがありません。 ディルゼイルは「王のことは私が一番知っている」と言い、 それに対してヴァルトゥドゥスが 「知るというのは一緒に居た時間で決まるものではない」と反論。 それに対してアーガスィーが「どうでもいいんじゃねぇの、そんなの」と言い、 ヘイルカイトが「ただ王の傍は居心地がいい。それで十分だ」と言います。 それに対して全ての竜族が「なるほど確かに」と頷くと、 僕の親友は顔を赤くして俯いてしまいました。 相変わらず、感情を直にぶつけられるのは苦手のようです。本当です。 ───まあそれはそれとして、 映像の方では丁度親友が超究武神覇斬ver.5をやっているところでした。 それを見るに、今までの映像を見ていなかった 閏璃凍弥や穂岸遥一郎を始めとする人々は興奮状態です。 ニンフの歌に感動しているおなごも居れば、戦いに夢中になる人々もかなり居ました。 リアナさんは悠介がゼットに教える剣術の型を映像を見ながら真似して吸収していったり、 リオナさんは悠介がセシルに教える魔術の法を映像を見ながら真似して吸収していったり、 聖にみさおは僕の子供に甘い部分を見て膨れっ面になったりしています。 中村 「おお、さすが変態オカマホモコン。しっかりと子供の相手も万全だな」 彰利 「あの。今現在その言葉ってとてもシャレにならんからやめてください」 中井出「そういやお前、なんだかんだで子供の世話をよくやってるよな。     地界でも天界でも神界でも」 彰利 「神界は南無っつーか田吾作どんがやったことでしょうが。それも聖に。     俺、そのことに関してもう聖に散々怒られたんだから勘弁してよ」 そう、僕は彼女に散々怒られて泣かれました。 アレは僕じゃなくて南無だと言っても聞いてくれませんでした。 きっとあれは一種の八つ当たりだったのでしょう。 リアナ「師匠!わたしにもああいう技が出来るようになるでしょうか!」 悠介 「へあ?あ、ああ……うん、無理だな。空飛べることが大前提だし、     大剣六本を片手で振り回せるくらい腕力が無いと無理だぞ」 リアナ「あうぅ……」 リオナ「わたしが魔術でサポートしたらどうだ?」 悠介 「それなら出来ないこともないかもしれないけど───     そもそもお前ら、ああいう融合大剣は用意できるのか?」 リオナ「………」 リアナ「………」 無理のようでした。 まあ普通に考えて、悠介の真似をすること自体が難易度を難しくしているのだと思います。 悠介は『それなら創造して譲ってください!』とリアナさんに詰め寄られて、 相当に参っています。 さらには『悠介に近づくなー!』と言い出したルナっちと、 『話の邪魔です!割り込まないでください!』と言い出すリアナさんに囲まれて、 重苦しい溜め息をモシャファアアアアアと吐いています。 彼に安息が訪れる日々は来るのでしょうかと少し思案してしまうほどでした。 ───……。 ……。 そうして、時は流れてゆきます。 キリシマ村の皆様は自分で日本料理を作れるようになり、 ゼットもセシルもブレイバーやメイガスとして小さく胸を張れる程度にはなった筈です。 中井出「なぁ。そういやどうしてセシル嬢は魔術が使えるんだ?     魔術使うのって魔力が必要だろ?     しかもそれ、千年の寿命が無いと内側から精製されない筈だし」 悠介 「あ、そっか。     この場合、俺がゼットに見せられた記憶の中でしか理解出来なかったんだったな」 中村 「ぬ?」 悠介 「えっとさ、この空界で使われてる魔術とかは使用されれば霧散するだろ?     軽い魔術にしても魔導術にしても。     それらは風やマナと一緒になって空気中に漂ってる。     でもそんなのがずっと漂ってれば、     いつか誰かが放った魔力に誘発されて爆発かなんかを起こすと思う」 丘野 「え……じゃあ、なんだって今までは爆発とかが起こらなかったんだ?」 悠介 「この世界にはさ、魔力を受け止める『媒体』ってのが存在する。     それは木であったり人であったりモンスターであったり竜族であったり、     本当にいろいろなんだ。現に───チェルシートンの魔術研究所の傍にある木も、     そういう媒体のひとつで、今も大気から魔力を吸収して成長してる」 中井出「んじゃあ、このセシルって娘───」 悠介 「そういうこと。セシルも媒体のひとつだ。     だから魔力行使が出来たし、他の魔術師に比べれば高い魔力を誇ってた。     けど、それが未熟ながらに召喚術を成功させてしまったんだ。     その力がゼットを狭界に引きずり込んだんだ……     セシルのやつ、相当辛かっただろうな……」 中井出「あ……そか」 中井出はもうそれ以上追求しませんでした。 みさおが微妙な顔をしていましたが、僕は彼女の頭をなでなでと撫でると、 いつか楓巫女にしてあげたみたいに股の間に座らせて、撫でながら映像を見続けます。 みさおさんは擽ったそうにしていましたが、嫌だというわけではなかったらしく、 されるがままに映像を見ていました。 椛  「〜〜〜……」 なにやら殺気を感じますが、僕は気にしないことにします。 なにせ、みさおの他に聖までもがそこに座ったため、 僕は余所を気にしている余裕など無いからです。 でも聖が加わったことで、さらに殺気が増したような気がするのは気の所為でしょうか。 佐古田「やれやれ、ヒス女は怖いッス」 ゴパァン!! 佐古田「ベップ!!」 ドシャア……。佐古田さん家の好恵さんが眠りにつきました。 だめです、やはり無視しておいた方が身のためになりそうです。 何故なら僕は、佐古田さん家の好恵さんが 大地に叩きつけられてバウンドするのを確かに見たのですから。 あれでよく死なないものだと本当に感心します。 案外、喜兵衛に取り付かれた時に生きしぶとさをダウンロードしていたのかもしれません。 ───などということをしている間に、映像の中の人々はどんどんと成長していきます。 そんな中でちっとも成長しない僕と悠介くんを見て、皆様は何故かうんうんと頷きました。 ……どうせ寿命が長いです。ほうっておいてください。 中井出「ほへー、この小僧、随分と剣が上達してきてるな」 リアナ「教える人の腕がいいですからっ!」 中井出「とすると、この小僧の方がもう腕は上ってことか?     リアナちゃんより教えてもらってる時間が長いだろ」 リアナ「師匠……今すぐ稽古つけてください。今すぐ!!」 悠介 「中井出っ!煽るな!!」 中井出「あっはっはっはっは〜、いや愉快愉快ぃ」 リアナ「師匠……さあ立ってください!師匠!!」 悠介 「ああもう……悪い彰利、俺ちょっと行ってくるから」 彰利 「オウヨ。映像は流しっぱなしでええんか?」 悠介 「言っただろ、見られて困るようなものは無いって」 彰利 「了解。リアナちゃんはいいの?映像見れなくなるけど」 リアナ「一本試合ったら戻ってきますので!さあ師匠!!」 悠介 「な、何度も言ってるだろうが……!あまり師匠とか言うな……!!」 リアナちゃんが悠介くんの腕を引っ張って庭園の離れた場所まで行きました。 僕は遠目にそれを見ますが、そこから『コパーン!』という音が高鳴ると、 しばらくして目を回しているリアナちゃんを悠介くんが引きずってきました。 リオナ「お、おい!大丈夫なんだろうな!」 悠介 「全力で来てくださいっていうから、人の状態で全力でやっただけだ。     死にゃしないし、目を回してるだけだ」 リオナ「そ、そうか……」 30秒も保ちませんでした。 それはそうです、弱体化の呪いは既に解除されているのですから。 安堵しているリオナ嬢を余所に、悠介くんがリアナちゃんに喝を入れると、 リアナちゃんは奇妙な声とともに目を覚ましました。 そしてあっさりと負けたことを思い出すと、落ち込んで溜め息を撒き散らしました。 でもそれも長くは続かず、 今度は映像に映る悠介くんを見て剣術をより高度な域に発展させようと頑張っています。 静かに傍観している他の人にとっては邪魔以外のなにものでもありませんが、 彼女が一生懸命だということを知っている分、何も言わないやさしさがありました。 ───……。 ……。 そうして時は校務仮面へ。 既に王国入りしているゼットとセシルはそれからも自己鍛錬を続け、 僕と悠介くんとみさおさんは校務仮面を被って今日も元気に頑張ってます。 と、そんな中で悠介くんが竜族との和平を開始せんがために単独行動に出て───
───……。 風を繰って飛翔し、竜王の気配が集まっていた場所へと辿り着いた。 ジハードを中心に東西南北の竜王が集うその場で、 俺は早速竜族と人間の和平のことを提案し始める。 校務仮面「人間代表、なんて大げさなことは言わないけど───一応そのつもりで来た。      願うことはひとつだ。人間と和平を組んで、ともにモンスターと戦ってほしい」 緑竜王 『……雰囲気で解る。以前、癒しを復活させた男だな?』 校務仮面「違う、校務仮面だ」 竜王の反応は……もちろん威圧的。 グルグリーズだけは友好的なわけだが、俺は敢えて校務仮面を貫き通した。 蒼竜王 『和平だと……?くだらん。何故我ら竜族が人間どもと馴れ合わねばならん』 校務仮面「馴れ合ってくれだなんて言ってない。      ただ、領土を決めてそれぞれが争わないようにしてくれればそれでいいんだ。      それとモンスター退治をやってくれたらそれでいい」 蒼竜王 『つくづく馬鹿馬鹿しい。      癒しが復活した今、我ら竜族は繁栄を邪魔される理由が無い。      卵を奪っては美食を謳い、      産まれてくる筈の竜族の子の可能性を食らう人間なぞ知ったものか』 校務仮面「……頼む。願うことしか出来ないし、見返りもなんにもないのも解ってる。      けど、そうなったらいいって思ってるのはなにも俺だけじゃないんだ。      平和な世界を真剣に願ってるヤツが居る。      争いが無くなればいいって思ってるヤツが居る。      それを願うのは悪いことなのか?無闇に殺して、得るものはあるのか?」 蒼竜王 『くどい!!人間ごときと和平など反吐が出るわ!!』 校務仮面「………」 マグナスの態度は予想通りに頑なだった。 こちらを完全に見下し、苛立ち、罵倒を浴びせてくる。 ジハードとグルグリーズだけが俺の出方を見守り、 しかし他の竜王は俺に向かって容赦なく罵倒を落とした。 赤竜王 『失せろ、話にならん。無謀な話だと何故解らん』 校務仮面「無謀だなんて思ってない。きっと叶うって信じてるからこうして来た。      叶わないものに向かって行くのが無謀なんじゃない。      叶わないからってなにもかもを投げ出して生きるのが無謀なんだ。      信じれば必ず届くって願うことは誰にでも許された行為だろう?      それは人でも精霊でも竜族でも同じだ。      思考することを禁止されたら、生き物にはどんな自由が残るっていうんだ」 蒼竜王 『黙れ人間!クズ風情が誇り高き我ら竜族に説教か!!』 黄竜王 『刹那に消えろ!!さもなくば我らの手で消すぞ!!』 校務仮面「……引かない。頼む、和平を受け入れてくれ。      あんたたちが憎むべきはモンスターだけの筈だろ?      力の差があるからってなんでも見下さないでくれ。      俺は……そんなものが竜族の誇りだなんて思いたくないんだ」 蒼竜王 『なんだと貴様っ……!!』 校務仮面「だから願わせてくれ。そして……受け入れてくれ。      人間たちにはもう竜族の領域に足を踏み込むなって言っておくから」 蒼竜王 『そんな戯言、誰が信じるか!!時間の無駄だ!失せろ!!』 ズパァンッ!! 校務仮面「づっ───……!!」 マグナスが振り下ろした翼爪が俺の肩を引き裂いた。 それでも俺は前を見て、説得を続けた。 黄竜王 『ほう……?傷つけられても戯言を続けるか』 赤竜王 『マグナスよ。腕が鈍ったのではないか?』 蒼竜王 『っ……』 校務仮面「頼む。和平を───」 蒼竜王 『貴様───!我が一撃を受けてなにを清ました顔で述べている!!      死が怖くないとでもいうのか!!』 校務仮面「……俺は。自分が死ぬよりも他の誰かが傷つくことが怖いよ。      だから俺が傷つく程度で誰かが救われるなら甘んじて受ける」 蒼竜王 『ふっ……く、ははははは!!よく言った!!      ならばここで死のうが依存は無いな!?』 校務仮面「それは、困る。自分の目で和平が見届けられないなんて意味が───」 ゾブシャアッ!! 校務仮面「ぐっ……、づ……!!」 蒼竜王 『言っただろう!人間どもと馴れ合うつもりは無い!!      何を言っても無駄だ!貴様はここでくたばるがいい!!』 校務仮面「……頼む、和平を───」 蒼竜王 『黙れ下郎が!!なんなら貴様の首を手土産に、      人間ども全てを滅ぼしてやってもいいんだぞ!!』 ガッ───ブギィッ!! 校務仮面「───……」 左肩から先を食われた。 もぎ取られ、咀嚼される音が耳に障る。 頭の中は妙にスッキリしていて、ただ─── 蒼竜王『……?どうした。恐怖のあまり、痛みが麻痺したか?』 ただ───ゆっくりと撃鉄が落ちた。 校務仮面「……和平をする気は無いっていうんだな?」 蒼竜王 『ああそうだ。そして人間どもも殺してやる。      元々蟻のように目障りだった存在だ、今さら潰えようが知ったことではない』 校務仮面「そっか……じゃあ───武力行使するしかないな」 蒼竜王 『フン?人間風情が馬鹿なことを……。やれるものなら───』 ガチン、という音が頭に響く。 鳴り響いた撃鉄の音は確かに俺の理性のタガを外し、 俺はロヴァンシュフォルスへと変化した。 それと同時に千切れた左腕を再生させ、ゆっくりと拳を握り締めた。 蒼竜王『───!?な……!!』 ルドラ『無益な争いを好む馬鹿野郎どもに……俺が喝を入れてやる』 竜人の状態での神魔竜解放。 溢れる力が俺の身に宿り、それを感じ取ったからか、竜王どもは息を飲んだ。 だがすぐに驚愕を拭いさると、本能としてだろうか───一斉に俺に向かって襲い掛かる。 ───まずはマグナス。 巨大な顎を俺に向かって落とし、噛み砕こうとした。 だが俺は勢いとともに飛翔するマグナス自体の鼻と口の間を押さえることで飛翔を止め、 次に襲い掛かってきたドラグネイルへと投げつけた。 衝突する竜王と竜王。 その上から飛翔してきたのはシュバルドラインであり、 上空から全力のレーザーを放ってきた。 俺はそれに向けて分析したレーザーと同じものを複製し、相殺。 瞬時に間合いを詰め、驚愕の色に染まるシュバルドラインの顔面を、 竜王の姿からしてみれば小さな手で掴み─── ルドラ『クハハハハハハハッ───ゥラァアッ!!!!ドッゴォオオオオオンッ!!!! シュバルドライン『ごあぁあああっ!!!!』 抵抗するシュバルドラインの力をも完全に無視した強引な力で、地面へと叩きつけた。 それを見たドラグネイルとマグナス、ジハードが激昂するかのように飛翔。 俺へ向けて飛んでくる。 ルドラ『グングニル……ガガァォンッ!! 大したイメージの時間も取らず、虚空から神槍を二本放つ。 それはドラグネイルとジハードの体を吹き飛ばし、 残る一体───マグナスのみが俺のもとへ突撃してくる。 ルドラ『───……ハッハッハッハッハッハァッ!!!』 右手に竜人力を込め、俺も飛翔した。 マグナスは忌々しげに俺を睨んだまま俺に向かい、俺はキレた笑いをしながらマグナスへ。 そして距離がゼロになるか否かの境、 俺は右手に凝縮させた竜人力をマグナスへと放り、巨大な爆発を起こした。 蒼竜王『っ───!?』 訪れる驚愕と隙。 いくらキレているからとはいえ、それを逃すほど甘い修練をしてきたつもりはない。 俺の体は俺が考えるより先に動き、巨大な山の岸壁へと吹き飛ばされたマグナスを追い、 その巨体が岸壁に衝突すると同時にその体に拳の弾幕を幾度も幾度も連ねてゆく。 蒼竜王『がっ!ごはっ!っ、ア───!!』 バガン、バガンと一撃ごとに、マグナスの背中ごしに破壊されてゆく岸壁。 その度にマグナスの体は山に埋もれてゆき、しかしそれが反対側まで貫通し、 マグナスが宙に投げ出されると俺はその頭を勢いよく掴み、一気に勢いを付け─── ルドラ『───ゥリディアアアッ!!!!』 渾身を以って、マグナスの後頭部を地面の岩盤へと叩きつけた。 当然地面は砕け、巨大なクレーターが出来る。 マグナスは力なく倒れたが、それでもまだ動こうとする。 ルドラ『フ───ハッハッハッハッハッハ……!!!イヤァアッ!!!』 それを見るとキレた俺は満足気に笑い、力を溜めつつ上空に離れ、 高い位置からレーザーを圧縮させたような巨大なエネルギーの塊を放った。 蒼竜王『ガ、ハ……!ま、待て───』 言ったところでもう遅い。  ───ギバシャゴォッガァアアアッ!!!! 薄緑に輝く光は大地に触れると同時に大爆発を起こし、 マグナスを完膚なきまでにボロボロにした。 余波に巻き込まれて吹き飛んだ竜王たちとて無事には済まない。 ジハード『馬鹿な……!!悪夢か……!?おのれぇっ!!』  バガァッ!!ガォオオオオオオオンッ!!!! ジハードがレーザーを放つ。 それを、手にした槍で粉砕してみせた。 ジハード『な───!!』 驚愕した時にはもう遅い。 俺は瞬時にジハードの後ろにまで飛翔し、振り向くその顔面に拳を叩き落していた。 ジハード『ガッ───』 そこからは地獄絵図。 吹き飛ぶジハードをさらに追い、蹴り上げ、殴り飛ばし、地面に叩き落すと、 次は尾を掴んで、起き上がったドラグネイルへと投げ飛ばす。 それに怯んだドラグネイルの顔面に全力で神魔竜人拳をキメると地面に叩きつけ、 さらに尾を掴んで地面に叩きつけまくった。 その辺りで、一番最初に地面に叩きつけたシュバルドラインが起き上がり、 咆哮とともにレーザーを放つ───が、それをより巨大なレーザーで消滅させ、 驚愕に染まるその姿を殴り飛ばして蹴り飛ばして、 それにいい加減我慢ならなくなったらしいグルグリーズも巻き込み、 もう普段の俺からは想像がつかないくらいにボコボコにして───…… ……ふと気づけば、竜王たちとジハードはぐったりと動かなくなっていた。 悠介 「うわっ!?やっちまった!!」 キレた状態から正気に戻った俺は、 すぐに竜王とジハードに癒しの魔法を流して回復させた。 危ないところではあったが、とりあえず全員無事だ。 俺は再び校務仮面を被り、安堵の息を吐いた。 が───それも束の間。 蒼竜王 『誰が貴様ごときを認めるか!!敗れたからといって従うとでも思ったか!!      今のは不意を突かれただけのことだ!!嘗めるな!!』 赤竜王 『……やめておけマグナス。我らでは勝てん』 蒼竜王 『黙れ!!滅ぼしてやるぞ人間!!』 校務仮面「……あのなぁ」 激昂に激昂を重ねたマグナスは再び俺に襲い掛かってきた。 他の竜王たちは諦めてくれたようだが、マグナスはてんで引こうとしない。 それでも俺は話をしようと冷静にと努めたが─── 再び何度も話の最中に攻撃されたことでブチギレ、俺はロヴァンシュフォルスと化した。 ───……。 目の前で再びギガンティックミーティアをされるマグナスを見て、 竜王たるものがこれではいかんと言って突っ込んできたドラグネイルが壁画と化し、 それを見たシュバルドラインが知性的な戦力を以って挑んでくるも、 千里眼で予測されて逆手に取られて海の藻屑となり、 グルグリーズがそれらを癒そうとしたが投げつけられたジハードとの衝突で吹き飛び。 再びその場には竜王たちとジハードの倒れる様が広がっていた。 正気に戻り、それらを回復する頃にはマグナス以外のやつらは完全に諦めてくれた。 ───が、やっぱりマグナスだけは何度も俺のことを気に入らないと言い張り、 何度も何度も挑んできて───その度にギガンティックミーティアをされて気絶していた。 ───……。 ……。 ……それから何度かギガンティックミーティアを続け、 いい加減『本ギレ』した俺は回復した途端に有無も言わさずマグナスをボッコボコにした。 殴り、蹴り、叩き、折り、倒し、起こし、落とし、潰し、減り込ませ、吹き飛ばし─── それを幾度も繰り返すうち、回復途中でついに彼は折れた。 蒼竜王『お、俺の負けだッ〜〜〜!!!許してくれッ〜〜〜!!!!』 ……何故降参の仕方がシコルスキーだったのかは知らないが、 なんにせよこれで……ひと段落はついたのだった。 ───ちなみに言うと、それからすぐに和平の提案は飲み込まれた。 領土さえ守ってくれるのなら、と。 マグナスも最初こそ反発していたが、 徹底的に叩きのめされるなかで俺のことを認めてくれたらしく、 済んでみれば案外信頼されていた。 俺は安堵しながら彰利への伝達をジハードに任せ、 エルフの里の奥地───ノートの聖堂を目指したのだった。
…………。 マグナス    「…………!!!」 彰利      「あの……マグナっさん?震えてます?」 中井出     「いや……震えもするって。いくらなんでもありゃキツイ」 シュバルドライン「今、心から言える。          勝負方法が力を統一した上でのもので本当に良かった」 中井出     「俺も……」 中村      「おいらも」 夏子      「あたいも」 殊戸瀬     「あちきも」 丘野      「ミーも」 蒲田      「おいどんも」 田辺      「それがしも」 島田      「やきいも」 ……思うのですが、その『やきいも』っていうのは一人称って言えるのでしょうか。 僕は時々悩んでしまいます。 彰利 「で……この後すぐに狭界に行ったん?」 悠介 「いや、あの時代のノートに会いに行った。     俺が契約してるノートと共同で、すぐに世界の融合をしてもらえるように」 彰利 「ナ、ナルホロ……」 納得しながら映像を見ます。 映像の中は丁度、悠介くんが狭界に降り立ち、 マナの大樹を復活させるために移動しているところでした。 その中でも襲い掛かってきた幻獣をボッコボコにし、消滅に導いています。 やはりあの時感じた感覚は間違いではなかったようです。 彼が僕らと別行動を取る際、彼は僕に彼と僕とを繋ぐものを創造していきました。 その先で幻獣を消滅させまくり、僕へと流していたのです。 中井出 「うわ……」 マグナス「バケモノか、王は……」 呆れるしか無い状況が目の前にありました。 束になってかかってきた相手をとことんブチノメし、 逃げるやつは無視して追ってきた者だけをとことんブチノメーション。 やられてる幻獣の方が変身ヒーローシリーズのやられ役に見えるほどです。 ……もっとも、ヒーローってのはここまで強くないと思いますが。 ともあれ悠介くんはマナの大樹を復活させるとオリジンと話し合い、 狭界にマナを齎してもらったのちにそれぞれの精霊が居る場所を巡りました。 ウンディーネの力で浄化させた海の底、海底神殿に行ってゼクンドゥスを復活させ、 イーディンジルド氷河に行ってセルシウスに力を齎し。 そして───まだ大きく広がってもいない思念の場───北の大地に訪れると、 そこに群がっていた幻獣どもを悉くブッ殺。 向かってくる者のみをコロがし、 しかし逃げ出した幻獣が大勢の仲間を連れてきても怯むことなく皆コロがし。 ……なんだか気の毒になってきた。 この場に居たら俺、絶対に幻獣どもに『お逃げなさい!』と叫んでたと思う。 結局、仲間が仲間を呼んで、呼んだ先から皆コロがしにされ…… そんなことが何度か続いたのち、ようやくその場に静寂が訪れた頃。 悠介くんはひとりその場に立っていて、周りには消滅へと向かう幻獣の屍だけが残された。 その思念も全て僕へと流されたのでしょう。 僕の中であらゆる思念が渦巻いているのを感じます。 でもそれも、黒と闇と影が次々と食らっていっているので どんどん聞こえなくなっていってます。 さてそれはそれとして。 ひとり立っていた悠介くんは過去の時代のオリジンとゼクンドゥスと 現代のオリジンとゼクンドゥスに協力を煽ぎ、一気に思念の渦を封印しました。 それを合図に狭界のスッピーと空界のスッピーが力を発動。 世界はあっという間に融合し───物語はあっさりと終焉へ。 北の大地の死気に誘われて現れたイドとも話し合い、 しかし結局は戦うハメとなった悠介くんは彼を瞬コロがしだ。 契約こそしなかったものの、死を見届ける者になってくれと願われて渋々頷いていました。 彰利 「苦労してんだ……」 イド 『マスターには負けるだろうがな』 悠介 「やかましい」 イド 『空界の精霊から聞いているぞ。貴様はかなりの苦労人と』 悠介 「言わんでいいっ!!ていうか精霊(おまえ)
たちもそんなこと教えるなよ!!」 ノート『退屈だったのでな』 ノーム『事実なんだからべつにいーだろー?』 悠介 「苦労人って事実を広められて喜ぶヤツが居るなら見てみたいわ……!!」 桐生 「ん」 悠介 「俺は喜んでないから指差さないでくれ桐生センセ!!」 もうみなさん随分と馴染んでます。 相手が精霊だろうがなんだろうが、 危険が無いと知れば慣れるのが人間なのかもしれません。 悠介 「……まあ、そんなこんなでやること無くなったからここに戻ってきたんだ。     彰利に様子を見てもらった限り、     後悔の念も無かったし未来視でも心配はなかったらしい」 来流美「ほへ〜……や、これは驚いたわ……」 閏璃 「なるほど、つまりここはファンタジー……男の夢と希望がウェルカムする場所か」 彰利 「偏りはあるけどね」 遥一郎「冒険の世界か……。精霊の状態だったら案外楽しめたのかもしれない」 彰利 「あ、そういや気になってたんだけどさ。     精霊野郎って精霊だったわけじゃん?     空界で喩えると、何に部類する精霊だったんかな」 悠介 「ニンフだろ。一応『桜の木の精霊』だったんだよな?」 遥一郎「一応だけど」 彰利 「うおう……精霊になって、しかもいきなり高位精霊か……。やりおるやりおる」 アル 「奇跡の魔法にはあまり手抜き……というか半端が無い。     穂岸自身を桜の木に変えた辺りから、     既に人ではなくそういった存在として具現させていたのかもしれない」 悠介 「つまり『桜の木』でも『幽霊』でもなく、     元から精霊として転生してたってことか?」 アル 「そういうことだと思っている」 遥一郎「……なるほど」 悠介 「ところで……凍弥?さっきからなにをソワソワしてるんだ?」 凍弥 「え?あ、いやえっと……」 ふと気づけば小僧が近くに来ていて、 精霊野郎を見て期待と不安を混ぜたような顔をしています。 ……なるほど、僕はピコンと閃きました。 ようするに彼はこの穂岸遥一郎が、 自分のことを知っているのかどうか気になっているのでしょう。 未来のことを話していたのです、気にもなりましょう。 なにせ、小僧にとっては恩人なのですから。 俺が未来へ転移したことで未来の皆様が俺を思い出したように、 未来の皆様も時間軸から外れることで精霊野郎のことを思い出したのでしょう。 それも未来に戻れば忘れてしまうことですが、 この場で出会えたことは無駄ではありません。 遥一郎「はぁ……なんて情けない顔してるんだ、凍弥(・・)」 凍弥 「───!!……は……は、ははっ───うわぁあああっ!!!!」 がばしぃいーーーーっ!!! 遥一郎「とわぁっ!!?こ、こらっ!いきなりなにをっ───」 凍弥 「おっさん!おっさぁあああんっ!!!」 遥一郎「再会して抱きついてきて、まず言うことがそれかっ!?     本当にお前ってヤツは───!!」 凍弥 「STO!!」 ドゴシャッ!! 遥一郎「あでっ!!」 精霊野郎改め、穂岸くんにキレイなSTOが決まりました。 穂岸くんは後頭部を押さえて起き上がりますが、 その先に待つのはニヤリと黒い笑みを浮かべる小僧の姿でした。 凍弥 「FUFUFUFUFUFU……!!この小悪外道精霊めが……!!     よくもあの時、人の話を聞かずに同化などしやがったな……!!     ずっと文句が言いたくてたまらなかったぞ……!!」 遥一郎「なにがずっとだ、忘れてたくせに」 凍弥 「忘れさせたのはあんただろうが!!」 遥一郎「妙なところで怒りやすいのは成長しても変わってないのか?     少しは大人になったと思ったら」 凍弥 「童心を忘れるなって言ってたあんたに言われたくない!」 遥一郎「じゃあ忘れろ」 凍弥 「そんなすぐに忘れられるかっ!!」 閏璃 「……お前の孫、うるさいな」 来流美「それをわざわざわたしに言うあんたの方が五月蝿いわよ」 閏璃 「なにぃ馬鹿な。俺は冷静沈着で静かだとご近所でも有名なんだぞ」 来流美「聞いたことある?」 由未絵「ふぇ……そうなんだ……。初耳……」 閏璃 「そらみろこの野郎」 来流美「どうしてそこで胸を張れるのかしらね……」 柿崎 「凍弥だからだろ」 鷹志 「凍弥だからだな」 ともかく、小僧は穂岸くんに言いたいことが沢山あったようです。 向かい合って座った状態で、あれよこれよと話まくっています。 ……ここは素直にそっとしておいてやるのが人情と感じた僕は、 ルナっちと話を始めた悠介くんに習うように自分の妻となった人たちに話し掛けました。 ───……。 ……。 それから何があったかといえば……特に目立つことなどなかったんだと思う。 いつも通り笑ったし、いつも通りふざけあった。 新たなふざけ仲間も出来たことも手伝って、俺達はその日一日をずっと楽しんだ。 歌も歌ったし『原中名物:苦威頭蛇異暇畏(くいずたいかい)』もした。 そうして散々暴れて笑って、呆れて苦笑して───やがて夜が来る頃。 いつか未来の先で再び集まることを約束して、その日の祭りは解散という形で幕を閉じた。 祭りの後っていうのはいつだって寂しいもので、 みんなを送り届けたのちに空界に残った俺達は、なんだかんだで力が抜けた気がした。 悠介 「……疲れたな」 彰利 「そだな……」 星の無い空を見上げる。 庭園に寝転がった俺と悠介は特にこれといったことを喋るでもなく、 祭りが終わってからずっとこうしている。 彰利 「はーっ、やっぱりリンゴは部屋(インドア)で豪快に限る」 悠介 「そうか?」 創造してもらったリンゴ食ったり、歯ァ磨いたり。 時折にみさおが悠介の傍に、聖が俺の傍に来て、 遊びをねだる子供のように俺達の体をポンポンと愉快げに叩いてゆく。 その度に俺達は即興で作り上げたくだらない昔話を話し、 ネタが尽きたら親友に語り手の権利を譲るなんてくだらない遊びをした。 それでもなんだかんだで笑えるんだから……うん、 思うほどくだらなくなんかないのかもしれない。 彰利 「……そろそろ寝るか?」 悠介 「ん……そうだな」 支離滅裂な昔話に小さく笑いながら、くったりと眠りこけてしまった聖を抱きかかえる。 隣では悠介が同様にみさおを抱え上げ、俺と目が合うとやっぱり笑った。 彰利 「いい未来、築けるといいよな」 悠介 「そうだな。努力だけはずっとしていけるといいな」 彰利 「諦めたら終わりって現実をずっと見てきた俺達ですぞ?     今さら努力をやめたりなんかせんわい」 悠介 「……そだな」 彰利 「つーわけで、まあその……頑張れ?」 悠介 「?なにがだ?」 彰利 「や、ほら。今日一応結婚したわけじゃん?そんで迎える夜っつーたら、ねぇ?」 悠介 「死ね!!」 彰利 「即答でなんてヒドイ!!」 悠介 「そーいうことはわざわざ口に出すな!     せっかくそんなこと微塵にも意識してなかったのに───!!」 彰利 「あの……普通すると思うんですけど?」 悠介 「大体な、それを言うならその……なんだ。お、お前のほうが大変だろうが」 彰利 「うあー、夜でも解りやすいほど顔真っ赤」 悠介 「灰燼と化してみるかこの野郎……!!」 彰利 「だーもう!ちょっとの茶化しで怒んなや!!その手の話が苦手で、     そのことで赤面を指摘されるのも嫌いだってのは知ってますがね!     毎度キレられちゃこっちの身が保たんよ!!」 彼はおなごとの関係がどうので茶化されたり冷やかされたりするのが苦手だ。 硬派とはまた違うんだけど、 高校時代で培ったぶっきらぼうな性格は今もずっと続いているらしい。 悠介 「あー……このまま綺麗な夜空に羽ばたいたらどうなるかな」 彰利 「とんずらしたら激怒されるよ?     そんでもって地の果てまでも追いかけられて、     どことも知らぬ場所で壁抜けの要領で沈められて、     そこで野外プレイって可能性も《ボゴシィ!!》へぶぅ!!」 喋り途中に殴られました。 悠介 「どうしてキサマはそういうところばっかりにペラペラと舌が回るんだ……!?」 彰利 「ほがががが……ど、どうしてでしょう……」 舌噛んだ……おお痛ぇ……!! 悠介 「……とにかく。そんなことは起こらないよ。     ルナももう寝てるだろうし、俺にはそんな気が無い」 彰利 「そうなん?もしかして不能?」 悠介 「不能?なんだそりゃ、別に力の行使が出来ない状態じゃないぞ?」 彰利 「や、そういう意味じゃなくて……って、なんか俺セクハラオヤジみてぇだ……。     この話、やめましょ。キミにこういう話するのって危険な気がする」 悠介 「?」 彰利 「ん〜じゃ、おやすみ〜」 悠介 「おやすみ。明日から気分一新するつもりで───今まで通りやっていこうか」 彰利 「気分だけ一新するわけね。オーライ」 それだけ言ってみさおと聖を悠黄奈さんの部屋に寝かせたのち、 俺達は自分の家へと戻った。 悠介はどうかは知らないけど、そこには並べられた布団と四つの枕が用意してあり、 その傍で三人のおなごが三つ指ついておがったとしぇ……。 彰利 「………」 神様、これは僕の男が試される時ということでしょうか。 つーかどうしましょう、滅茶苦茶ドキリコしてます。 してますが、離れた場所から親友の絶叫が聞こえたあたり、 彼はもう壁抜けの要領で床に沈められたんだと理解しました。 神様……女の子って怖いですね……。 そげなことを思いながら、僕は言われるままにデスティニーブレイカーを解放。 『死神は子供が作れない』という決まりごとを一時的に破壊するハメになり─── その後、身を千切られるような思いで襲われました。 神様……僕はおなごが苦手になるかもしれません。 粉雪との結婚を考えた時から密かに胸に抱いていた 静かなる愛の営みなどそこには無かったのです。 そうっ……!これはまさにっ……戦争っ……!! ひとりの男を奪うというっ……聖戦なんだっ……!! などとカイジ的な発音で語りたくなるくらいのものでした。 だから腹癒せというわけでもありませんが、 しっかりと親友にも運命破壊の波動を届かせたのです。本当です。 つーかもう恥ずかしいので語りはこのへんにします。 それでは無事、朝が来ることを願って……さよなら、さよなら……さよなら。 あ、ちなみに。 スピードイーターとのバトルは中止になりました。 遊び半分で殺したりするのはやめようと悠介くんが提案したからです。 なんならスピード勝負だけでもいいと言ったのですが、 相手がそれだけで済ませるとは思わないというのでやっぱり中止に。 ……どちらにせよ……僕は清しこの夜、青春という名の華を散らしました。 さようなら、少年だった僕─── Next Menu back