───残された思い出の写真───
───……え? 凍弥 「───……!」 生きてる!? てゆうか……切れた部分もくっついて……嘘だろ!? ───途切れていた意識を取り戻した俺が見たのは、 体になんの異常もない俺の姿だった。 そして肩膝をついて起きあがってみる。 すると目につくひとりの男性。 ……俺と同い年くらいだろうか。 男  「………大丈夫か?」 男は俺に向かってそう言った。 俺は訳も解らず、だけど一応体に異常はなかったので頷いた。 男  「そうか。……まったく、死神と対峙するなんて無茶なことをするな」 呆れた声。 男  「……離れてろ。また襲われても知らんぞ」 言われて、視界の先を見る。 ……そこには死神の気配を放っている朧月。 凍弥 「───!治ったわけじゃなかったのか!?     それじゃあさっきまで見ていた景色は───!?」 浅美 『……椛ちゃんの心です』 凍弥 「浅美?」 浅美 『お願いします、椛ちゃんを救ってください」 凍弥 「浅美……」 浅美 『……無茶を言ってるのは解ってます……でも……!椛ちゃん、泣いてる……!』 見ると、朧月の表情は死神のままなのに……その瞳からは涙がこぼれていた。 ───……でもどうすればいいんだろう。 男  「任せておけ」 だが、男は助けられて当然とでも言うかのように微笑んだ。 凍弥 「ちょ、ちょっと待った!───助けられるのか!?」 男  「……当たり前だ。無責任なことは言わない」 凍弥 「ど……どうやって」 男  「見てれば解る」 男は朧月を見ながら立ち上がった。 椛  「キサマ……ナニモノダ……!」 男  「……ああ、せっかくだから名乗っておく。俺は悠介。晦悠介だ」 椛  「ツゴモリ───!?家系ノ人間カ!!」 悠介 「悪いがお前を消させてもらう」 椛  「馬鹿ナ!ソンナコトヲオスレバ、コノ本体マデ───」 悠介 「そんなつまらないことを盾にしてるなら見当違いもいいとこだ。     ───……覚悟はいいな?」 椛  「……!ナラバキサマヲ殺スマデダ!」 朧月の大鎌が、男に向かって振り下ろされる。 しかし───ガキィインッ!! 椛  「ナニッ!?」 鎌は空中で制止して、それ以上進まなかった。 悠介 「残念だが俺に家系の力を含む攻撃は通用しない。     家系の祖が死神だってゆうなら、死神のお前だけを消すことだって出来るが。     どうする?大人しく自分で消え去るか?」 椛  「ホザケ!我ハ何者ニモ負ケヌワ!!」 朧月の体から闇が溢れ出す。 ───これが、もしかして……『蝕むモノ』!? 椛  「キサマガ家系ノ人間ダトイウノデアレバ話シハ早イ!     ソノ存在ゴト飲ミ込ンデクレル!!」 闇が、男を包んでゆく。 だっていうのに、男は焦る風でもなく溜め息を吐いた。 椛  「ドウシタ!恐怖ノアマリ、気デモ振レタカ!」 死神は笑う。 だけど男は平気な顔で朧月を見た。 悠介 「おい」 椛  「ア?ナンダ」 悠介 「お前にいい言葉を教えてやる」 男は目を真っ赤に染めた。 そして───ブワァッ!と、腕の一振りでその闇を薙ぎ払った。 悠介 「───……寝言は寝て言え」 そして、その赤い目で睨む。 椛  「……バ、馬鹿ナ……!」 悠介 「安心しろ、馬鹿はお前だ。……そして、消えるのもお前だけだ。じゃあな」 椛  「マ、待テェエッ!!ヤメ───ヤメロォオオオッ!!!」 悠介 「朧月椛に存在する死神を飲み込み消し去るブラックホールが出ます!!」 男が言葉を放つと、彼の背後にとてつもなく大きな漆黒の渦が現れる。 椛  「ヒッ……!ヒ、ヒィイイイイイッ!!」 死神は抗った。 だが、やがて朧月の体から黒い何かが出てきたかと思うと、 それは人のカタチを取る間もなく───闇に飲まれ、消滅した。 ───……。 悠介 「……ふう。なんとか間に合ったな」 男は息をついて空を見上げている。 俺は─── 凍弥 「お、おい……あんた……」 悠介 「ん?ああ、今見たことなら気にするな。忘れてくれていい」 凍弥 「そうじゃなくて……あんた、何者だ?」 同じくらいの背の男を見る。 見慣れない服を着た男。 悠介 「何者か、か。あんた、死神とかには慣れてるか?」 凍弥 「殺されかけても恨まない程度には」 悠介 「そりゃいい根性してるとしか言いようがないがな。     ……まあいい、それなら教えよう。俺は悠介。月の家系の者だ」 凍弥 「月の家系……って……朧月の知り合いかなんかか?」 浅美 『……悠介さま、なのですか?』 突然、それまで黙っていた浅美が話し掛けてきた。 悠介……さま? 悠介 「浅美か。……ああ、正真正銘、晦悠介だよ」 凍弥 「…………あの、状況が掴めないんだけど」 浅美 『悠介さまの気配を探ってみてください。大体は解ります』 凍弥 「気配ったって……え?これって……」 朧月と似たような気配? ……なんで? 浅美 『この方は椛ちゃんの祖父、晦悠介さまです』 凍弥 「そっ───祖父ぅうううっ!?」 いやっ……だってどっからどう見ても俺と同年代っぽいぞ!? 悠介 「この姿か?これならちとワケあり……だと思う。     魂だけの存在みたいなもんだから、あまり気にするな」 凍弥 「……確かに人間としての気配は薄いけど……」 解らねぇ。 そんなことまで出来るのか月の家系ってゆうやつは。 浅美 『魂だけ……?それでは』 悠介 「いや、俺にもよく解らない。気づいたらこの姿だった。     人間本体の方の寿命がきたのか、     それとも思い残しがあったからこんな風にバケて出たのか。     って、それじゃあ結局どっちも死んでるな……」 凍弥 「───あ」 ……この気配……。 凍弥 「……童心」 悠介 「うん?」 凍弥 「あんたから感じるものだよ。     死神の気配と人間の気配と、朧月に似た気配と……あと、子供のような気配。     前に子供のような気配を持った霊体と会ったことがあるんだ。     その人……童心の具現みたいなものだった。     楽しむためとか、誰かのためになにかをしたいとか、そんな気持ちの塊だった。     ……あんたからはその人と同じ気配がする」 悠介 「───童心か」 男───悠介はどこか納得したように俯いた。 凍弥 「でも……祖父ってことは、朧月みたいに【蝕む者】なのか?」 悠介 「まあ、そうだな。ああ、コントロールは出来てるから心配するな。     だが……椛はどうやらそれに抗うだけの自我が無かったようだな。     ここまで死神が具現するのを見るのは初めてだった」 凍弥 「………」 ……そんなに自分に自信が無かったんだろうか。 それとも拠り所が無かったのか。 凍弥 「ひとつ、訊いていいか?」 悠介 「ああ」 凍弥 「……どうして今の今まで朧月の死神を消してやらなかったんだ?     あんたにはそれが出来た筈だろ……っ?」 無意識の内に声がキツくなっていた。 だけど事実だ。 死神を早く消していれば、朧月は悲しむことなんてなかった筈だ。 だったら─── 悠介 「……ありがとう」 凍弥 「え───?」 悠介 「本気で椛のことを心配してくれているんだな。祖父として嬉しいよ」 凍弥 「………」 悠介 「……知ってるかどうかは解らないが、椛は死神の血を多く受け継いで生まれた。     その影響で髪も銀色だった。……俺もなんとかしようと思った。     だが、人としての家系よりも死神の力の影響下で生きていると気づいた時、     俺にはその力を消すことは出来なかった。     ……消してしまえば椛の生命力は極端に減り、     永く生きられないことを悟ったからだ」 凍弥 「そんな……」 悠介 「だから大きくなって人間としての影響も大きくなってから消そうと思った。     だが……馬鹿なイジメ野郎どもの所為で力は暴走。     友達だった浅美を月蝕力で蝕んでしまった。     そうなってしまったら全てが後手に回った。     確かに浅美の存在を吸収したために人間としての影響は上がったんだが、     椛の中の死神は普段から意識の底の方に潜っていた。     無理に消せば精神に異常が出る。───だから待った。     死神の意識がハッキリと具現され、その存在だけを消せる時を」 凍弥 「あ───じゃあ今がその時だったってわけか?」 悠介 「ああ。ハラハラしたけどなんとかなったよ。     椛が内側から必死に抵抗していたから、     死神も意識を奪われないように必死だった。     まあ大方、ここで意識を奪われたら二度と出れないとでも思ったんだろう。     消される瞬間でもずっと引っ込まなかった」 凍弥 「………」 そういうことだったのか。 凍弥 「あれ?それじゃあ朧月は───大丈夫なのか!?」 悠介 「安心しろって。孫を殺すようなこと、する筈がないだろう。     ……とはいえ、このままじゃマズイか───」 悠介が朧月を見る。 その額に触れ、難しそうな顔をする。 悠介 「……死神に抗うために力を使い果たしたんだろう。このままじゃ衰弱死する」 凍弥 「なっ───」 浅美 『そんなっ!』 俺と浅美は驚愕した。 せっかく助かったのに。 これからもっと楽しいことがある筈なのに、と。 悠介 「そんな顔するな。     ……危険な状態ではあるけど、どうにでも出来る状態でもある」 凍弥 「どうにでも……?それってどういう意味だ……?」 悠介 「…………俺の魂を、椛に渡す」 浅美 『っ!?』 凍弥 「魂を……!?そんなことしたらあんたが!」 悠介 「ちと無茶をしたんでな。     魂だけの存在なのに死神を消すだなんて理力を使った。     体力が無いのにそんなことをしたら魂が削られることくらい解ってた。     ───もう何も創り出せないんでな。こうするしか他に方法が無いんだよ」 凍弥 「だけどっ!大切な人のためだからって命を捨てるなんて間違ってる!     大切な人とは一緒に居られなきゃ意味がないじゃないか!     思い出の全てが幸せだなんて思ってるのか!?     朧月にっ……!それだけの思い出があるって……思ってるのかよぅ……!」 涙が溢れた。 誰かのために誰かが犠牲になる状況。 そんな風景がとても悲しく見えたから。 ───どこか遠い過去の世界で、 どうしてか……ひとりの大人がひとりの少女を庇って事故に遭う景色が浮かんだ。 空から降る雪が冷たくて。 約束とは違う夢の中、少女は笑ってはくれず、泣いているんだと感じた。 懐かしい風景に抱かれながら廊下を歩いて、約束の場所に辿り着いた頃─── 自分を叔父と呼んでくれていた少年の泣き声が聞こえて。 ……笑いかけてやりたかったけど、どうすることも出来なくて。 そんな綺麗な景色の中、 俺は……自分に微笑みかけてくれる人とともに、生きることをやめた。 凍弥 「ぐぅっ!?」 頭が割れそうになるくらい痛んだ。 凍弥 「……な……に……?」 なんだ……今見えたものは……。 ……頭が痛い。 そういえば俺、風邪引いてるんだっけ……? 凍弥 「ぐ……」 ───霞む視界の中、俺は悠介を睨んだ。 悠介は申し訳なさそうな顔をすると、俺に苦笑してみせた。 悠介 「……悪い。確かに椛には辛い思いをさせた。     だけどな?俺はもう十分に生きたよ。それに……なんか嬉しいんだ。     俺の知り合いに……多分、生涯をかけて笑い合いたいくらいの友達が居たんだ。     俺はそいつの顔も思い出せないけど、     どこかで何かが引っ掛かる度に泣きそうになるくらい嬉しいことがある。     そいつが居たら、きっとああだったんだろう、とかさ。     ……その空想の未来が幸せすぎて、どうしても泣いてしまうんだ」 凍弥 「………」 どうしてそんなに幸せそうに笑えるんだよ……! 解らねぇよ……! 悠介 「空想に抱かれたいから未来を託すんじゃない。     俺は、いつかそいつがしてくれたように、     消えるしかない命なら……他の誰かのために消えたいんだ。     確かに俺は泣いてしまったけど……でも、幸せに生きることが出来たから。     俺はそんな幸せこそ、誰かに分け与えたいと思う。     他ならぬ、悲しみばかりを知って生きてきた椛に───な」 悠介の体が光に包まれてゆく。 俺はその姿を見ても、泣くことしか出来なかった。 子供みたいに首を横に振って、ただ……泣いた。 悠介 「ありがとう。会ったばっかりだっていうのに、     誰かのために泣いてくれた『人間』はお前だけだったよ。     ……もし迷惑じゃなかったら、これからも椛をかまってやってくれ。     あいつは寂しがり屋だから……もう、泣かせないでやってくれ───」 誰かのために泣けること。 消滅を目前にして笑っていられること。 そんなものがなにになるのかなんて知らない。 ───だけど。 その人は幸せそうだったから。 ……俺は泣き顔のままで、ゆっくりと頷いた。 ……───やがて光が消えて無くなる頃。      一枚の古ぼけた写真が地面に落ちた。      色あせてしまって、ところどころがボロボロだったけれど。      その中で笑い合っているふたりの少年は……とても幸せそうだった─── ───……。 ……その日、俺は眠ったままの朧月を鈴訊庵に運んだ。 家が解らなかったし、浅美もそれがいいと言っていたから。 正直、今日はいろんなことがありすぎて頭が混乱していた。 鈴訊庵に辿り着いた頃、その前で待っていたサクラに散々怒られて。 未だテストのために勉強をしていた志摩兄弟が朧月を心配して騒ぎたてて。 志摩兄弟の馬鹿っぷりに呆れてた与一が俺を見て心配して。 ……だけど。 そのどれもが、全て虚ろに感じられた。 人の消滅を間近で見たのが利いたのか。 ……違う。 多分、ただ悲しかっただけなんだと思う。 俺はきっと、あそこまで人を大切に思える人に消えてほしくなかったんだ。 そう考えると全ての辻褄が合って。 俺は朧月を与一に任せて、自室へと駆けた。 乱暴にドアを開けて、乱暴に閉めた。 ……体が震えた。 苦しくて、悲しくて。 だけど、どんなに我慢したところで彼が消えたのは現実なんだという答えが出た時。 俺はただ───涙した。 そんな時に思う。 俺はきっと、人が死ぬよりも霊体が消滅することの方が悲しいんだと。 昔から、俺を見ていてくれたのはその存在だったから。 きっと人と接するよりも長かったその存在との付き合い。 笑い合ったりふざけあったりして、楽しかった。 人は、死んでも笑っていられるってことが嬉しかったんだと思う。 だけどそんな存在にも消滅がある。 その事実を知ったら───涙が止まらなくなっていた。 ……それでも夜は明ける。 人の気も知らないで、その世界をどんどんと明るくしてゆく。 多分、人の心も似たようなものなんだと思う。 あれほど泣いたくせに、いつか泣けなくなってしまう。 だけど多分、悲しみの量は変わらない。 それはその悲しみに耐えられるくらい自分が強くなれたんだと思う。 ……無意味な死なんて無いのだから。 だから、俺もその消滅を受け入れよう。 強くならなきゃいけない。 俺が俺で居られるためにも─── ───じゃりりりりんっ! 凍弥 「うわっ!?」 目覚ましのベルの音を聞いて飛び上がった。 凍弥 「……?」 見渡してみれば自分の部屋。 ……あれ? 凍弥 「……俺、どうしたんだっけ」 考えてみる。 ……さらに考えてみる。 凍弥 「…………夢?」 出てきた結論はそんなものだった。 くだらねぇ。 凍弥 「……変な夢見ちまった」 欠伸を噛み殺して起きあがった。 そしていつものように着替えて、身支度を整える。 凍弥 「……よし、と」 よく伸びをして、やがてドアへ向かって歩いた。 そして今日も、平穏である一日が始まる───ドボォッ!! 凍弥 「ごほぉ!!」 伸ばした手が空振りをした。 開ける筈だったドアが勝手に開き、そこからサクラが飛び込んできたんだが、 その手に持ったストレインが俺の脇腹を襲ったのだ。 凍弥 「な、なにしやがるこの……!」 しかも思ってもみなかった出来事だった所為でとんでもなく痛い。 サクラ「あ、いえ、その……お、起こしに、来たんです……けど」 申し訳なさそうにして俺から距離をとるサクラ。 でしんっ! サクラ「あうっ!」 サクラの頭に手刀を落とした。 凍弥 「お前はなにか……!?     人を起こすのにその撲殺ステッキを使う気だったのか……!?」 サクラ「す、ストレインは撲殺ステッキなんかではなくて……」 凍弥 「やかましいっ!朝の空気台無しにしやがって!     どうして朝は穏便に出来ないんだお前は!」 サクラ「う、うう……うわぁああん遥一郎さぁあああん……!」 サクラが泣きベソかきながら廊下を走っていった。 ……ったく。 凍弥 「……いかんな。少し気が立ってるみたいだ」 あそこまでキツく言うつもりはなかったんだがなぁ。 ……でも相変わらず泣き虫だ。 凍弥 「……あー、もういいや。ガッコ行こ」 ガッコ行ってゆっくり寝れば気分も晴れるだろ。 そ、ガッコ行けば───ガッコ? って、今日は祝日休みだよな。 頭ボケたか……?───否! 凍弥 「……そういえば……反省テストって今日じゃなかったっけ?」 …………うおう!なんも勉強してませんよ!? くそっ、せっかくの祝日なのに! あー……と、とにかくガッコ行きながらでも勉強するかっ! 凍弥 「そうと決まれば───」 俺は慌てて階下へと駆け下りた。 そこには呆れている与一とグスグスと泣いているサクラ。 与一が何か言おうとしたがそれを手で制し、 パンを焼かないで牛乳で押し込んで、顔を洗って歯を磨いて飛び出した。 のだが、それを追うようにして志摩兄弟も飛び出した。 浩介 「グッドモーニングだ同志!いやさ、盟友!」 同じだろ。 浩之 「さあ盟友!テストなぞとっとと終わらせて帰ろうではないか!     家では椛が待っているぞ!」 ───へ? 凍弥 「朧月が?なんで?」 浩介 「……何故とな!?貴様が昨晩、椛を鈴訊庵に負ぶってきたのだろう!」 凍弥 「え……だってアレ、夢……」 浩之 「寝惚けたことを言うな同志よ!     あのような幸せ環境が夢のままで終わりなぞ冗談ではない!」 凍弥 「………」 じゃあ。 本当に、あの人は消えたのか。 …………そっか。 凍弥 「はぁ……相当ショックだったんだな……俺」 浩介 「む?なんのことだ?」 凍弥 「なんでもないよ。ほら、とっとと走れ」 浩之 「走らずとも十分間に合う時間だがな。     盟友はいつもこんな早朝から出ているのか。感心するより呆れるな」 凍弥 「……そ、そうか?」 浩介 「当然だ」 本当に当然のように言う浩介。 だけど俺はそんな言葉もあまり耳には入らず、別のことを考えていた。 彼の実体はどうなるのだろう、と。 童心という魂が具現され、その魂は朧月に託されたとしよう。 でも童心以外の魂が存在しているなら、彼は死んだわけじゃない。 ……そう願いたい。 浩介 「どうした盟友。奥歯にスルメでも挟まったか?」 凍弥 「昨日からトーストしか食ってねぇのにどうしてスルメが出てくるんだ」 浩之 「そうなのか?断食はお肌の敵なのだぞ。UVケアよりも大切なことだ。     だが食いすぎにも注意しろ。肥満は下痢ももたらし、下痢は肌荒れを」 凍弥 「よく解らんうんちくはいいからさっさと終わらせよう!」 志摩 『もちろんだ盟友!』 ───『毎日』は続いてゆく。 誰が死んでも、きっとそれは変わらない。 変わらないものなんてないってゆうけど、 世界の方式ってゆうのは変わってくれないのかもしれない。 まあそんなものがあるからこそ『毎日』は続いてくれている。 俺はそれをありがたいと思うし、無くなってほしいとは思わない。 ……いや、無くなった時点でこの世界は終わるのかもしれない。 日常の存在しない世界なんか想像が出来ない。 だけど日常って固定概念に囚われすぎてて、それが日常だと信じるのも自分らしくない。 ……結局、身近にあるその当然でさえ自分には不思議だった。 それでも、誰がどう疑問を抱こうが毎日は続いてゆく。 俺達はそんな世界を歩く。 ───ふと、日常の些細な出来事を思い返して苦笑してみた。 だけど何が変わるわけでもなく───俺は空を見上げて、溜め息を吐いた。 Next Menu back