───志摩兄弟のお正月だよなんとなく集合───
───回想VTR─── ちゃんちゃかちゃんちゃんちゃちゃちゃちゃん。 浩介 「新年ッ!」 浩之 「明けましてェッ!!」 志摩 『おめでとうござーまーっすェ!!』 志摩兄弟がハワーッ!と叫ぶ。 ふたりは何故か紋付袴を装着していて、いかにもな格好。 高校一年の元旦、早朝の鈴訊庵は今日も妙に賑やかだった。 志摩 『というわけで銭よこせ』 凍弥 「失せろ馬鹿ども」 浩介 「馬鹿者。お年玉も貰えずに、なんのための正月だ」 浩之 「まったくだ。だからホレ、よこせ」 いきなりエベレストよりもデカい態度で手をズズイッと突き出す志摩兄弟。 そんなふたりを軽く切り捨てて俺は 浩介 「おっさん!雑煮よこせ!早くしろ!早く!」 浩之 「焼け!餅を焼くのだ!」 ……逃げ出すタイミングを失った。 遥一郎「お前らな、それが人にものを頼む態度か?」 浩介 「む……確かに。ならば改めよう」 浩介がコホンと咳払いをして与一を真っ直ぐに見る。 やがて 浩介 「苦しゅうない、とっとと雑煮を出すのだ平民よ」 ばしゃっ。 浩介 「ぐあちゃぁああああああああっ!!!!」 雑煮汁を顔面にぶっかけられた浩介が床を転がりまわる。 遥一郎「どうだ、美味いか貴族野郎」 浩介 「そ、それはもう身悶えするほどに……」 雑煮汁の控えを手に持っている与一を前に、浩介は頷く以外に道がなかった。 浩之 「フッ、無様だなブラザー。     そうやっていつまでも地べたに這いつくばっているがよいわ」 浩介 「お、おのれブラザー……!我を裏切る気か……!」 浩之 「裏切り行為などした憶えなどないがな」 浩介 「言われてみればそうだな」 解決したらしい。 浩介 「しかし盟友よ、なんだその格好は。日本人らしくもない」 浩介が俺の私服を睨んで語る。 凍弥 「その気持ちは解らんでもないが、ここにはそんな紋付袴なんて無いんだよ」 浩介 「なに?そういうことはもっと早く言え」 浩介が持っていた荷物から何かを漁る。 そして出てきたのは袴だった。 凍弥 「………」 浩介 「なに、退屈だったから作ってみた」 凍弥 「なにぃ!?マジか!?」 浩介 「マジだ。ブラザーとともに正月を目指して編んだのだ。     さあ受け取れ、これで盟友としての絆も深まる」 凍弥 「あ、あ……ああ……」 袴を手に入れた。 凍弥 「じゃ、着替えてくるよ」 浩介 「うむ、寸法に一切の狂いは無いから安心しろ」 凍弥 「そ、そか」 ……ん? 凍弥 「って、どうしてお前が俺の寸法を知ってるんだ」 浩介 「調べたからさ!」 凍弥 「いつの間に調べたんだ」 浩介 「貴様が屋上で呑気に寝ている間にさ!ザマァみさらせ盟友め!」 凍弥 「……どういう罵倒なんだそれは」 確かに寸法測られたのに起きなかった自分が悲しいといえば悲しいが。 浩介 「ともかく着るのだ同志。きっと似合わん」 凍弥 「お世辞でも似合うと言えないのかお前は」 浩之 「似合う!きっと似合うぞ同志!ああもう最高だなぁ!」 凍弥 「……とりあえずこういうヤツって殴りたくならないか?」 遥一郎「気持ちは解る」 浩介 「まったくだ」 浩之 「ええ!?ブラザー貴様!」 ブラザー浩介の突然の裏切りに驚く浩之。 裏切りというよりは個人個人の意見だが……浩之は納得いかない面持ちだった。 浩之 「やいブラザー!」 浩介 「ところで盟友よ。雑煮を食し終えたら初詣へ行かぬか?」 浩之 「!」 しかし鮮やかに無視された。 浩之 「………」 しかもそれのショックで、なんかもうどうでもよくなってしまったようだ。 俺はそんな景色に呆れながら部屋に戻り、着替えることにした。 ───。 袴に着替えた俺は、なんだか江戸時代の人物になった気分だった。 遥一郎「着替えたのか?」 凍弥 「ん?ああ、与一か」 声をかけられて振り向けば、ドアから覗くようにしている与一。 俺はそのままの姿で廊下へ出て、与一の前に立った。 凍弥 「……なんか動き辛いな」 遥一郎「そんなもんだ。洋服に慣れすぎたんだろ?」 凍弥 「日本人として痛い言葉だな……」 遥一郎「まあまあ、言い方が悪かったよ。逆らえない環境や文化はあるもんだよ。     洋服の方が一般化してる上に安いんだ、どうしてもそっちに行くだろ。     なにより日本だっていうのに、     和服を着ている方が奇異の目で見られるなんて……。     どこでこんなに曲がってしまったんだろうな、この世の中は」 凍弥 「そうだよなぁ。いつから外国チックになったんだか。     もし俺が大統領になったら和服着用義務でも儲けたいもんだな。     ……高い確率で暴動と各国との関係崩壊が待ってるだろうけど」 遥一郎「だな。……世知辛いなぁ」 ふたりして溜め息を吐いた。 ああ、そうだよ。 日本っていつからこんなのになったんだっけ? 確かに発達することはいいかもしれんが…… どうせなら『日本』として発達してほしかったと思うのは贅沢だろうか。 どう発達するかなんて見当もつかないけど……なぁ。 遥一郎「……ま、似合うぞ。雑煮なら用意出来てるから下行ってさっさと食べてしまえ」 凍弥 「うい、了解。それとお世辞あんがと」 欠伸をしながら階段を目指して歩く。 その後ろをゆっくりと歩く与一は、『世辞だと解るなら上等だ』と言っている。 それを聞いた俺は苦笑を漏らした。 なんてゆうか、妙なところで『落とし』があるところが与一らしいなと感じたからだ。 素直に人を誉めたりしないのは流石だと思う。 ……もっとも、今の状況では誉めること自体が無かったわけだが。 ─── さて。 階下に下りて客席に辿り着いた俺だったが─── 浩介 「ムゥウ!!足りぬ!更に足りぬ!尚も足りぬ!おい娘!もっと雑煮をよこせ!」 サクラ「わんこソバじゃないんですよ!?いい加減にしてください!」 浩之 「似たようなものだ!だからよこせ!」 サクラ「そんなに言うなら自分でよそればいいでしょう!」 浩介 「ったく、なにを言い出すかと思えば……いいか娘。     たとえ貴様のような貧相な体格の娘でも娘は娘。     雄々しいマッチョボディな兄貴によそられるよりはオナゴの方がいいだろう。     否、いいに決まっている。というわけでよそれ」 サクラ「───……貧相な……体格……?」 ───逃げよう。 瞬時に俺はそう思った。 そしてその思いの旨を与一に知らせようとしたが、与一は既に走っていた。 瞬間移動できるんだからそれ使えばいいのに。 そういうことから考えるに、相当に必死なのだろうと感じた。 かくゆう俺ももう走っている。 が、様子が気になってしまったから始末が悪かった。 俺は厨房付近からその様子を覗くことにした。 サクラ「懺悔が必要です……そこに並んでください」 浩介 「断る」 サクラ「並びなさい」 浩之 「いきなり命令口調か。態度が太いぞ貴様」 サクラ「───」 メゴシャア! 浩之 「ホギャアウッ!!」 ストレインの一閃が浩之を床に叩き伏せた。 サクラ「シュウ……シュウウ……修正……修正ィイイイッ!!」 ドカベコメゴゴシャガンガンガン!! 浩之 「うげっ!ぐげっ!や、やめっ……!」 ガンッ! 浩之 「ふごっ!」 ……どしゃ。 倒れて尚ボコボコにされ、ついには動かなくなる浩之。 それを確認した上で、 サクラは白い息をモシャファア〜……と吐き出し、浩介に向き直った。 浩介 「……ッ!」 そこまで来て、サクラの恐ろしさを思い出したらしい。 恐らく今の彼の脳裏には中学時代にボコられたあの頃が上映されていることだろう。 浩介 「ま、待て……!待てぇえっ!話し合えば解り合える!     確かに貴様は救いようが無いほどに幼児体型だ!だが世の中は広いぞ!?     貴様以上の幼児体型なオナゴなどわんさかと───!……居るわけないな」 凍弥 「ブッ……!」 浩介の自己納得劇場を聞いて噴出してしまった。 俺はなにやら嫌な予感を払拭出来ず、ふとサクラを見てギャアア!! うわー!思いっきり睨まれてるよーっ! ボゴシャア! 浩介 「もぎゃあ!な、なにをするかーっ!」 突如殴られた浩介の講義。 しかしサクラの目は座ってしまっていて、手がつけられそうもない。 サクラ「………」(にこり) 浩介 「キャーッ!?」 極上の黒い笑み。 ハッキリと撲殺風景を予想させたそれは、俺を突き動かしてくれた。 凍弥 「とんずらーっ!!」 浩介 「なっ……ど、同志!同志ーーーッ!!同」 メキャアッ!! 浩介 「ドッピオゥ!?」 逃げた景色の中、浩介が殴られた。 サクラ「懺悔を……!懺悔をォオオッ……!!」 浩介 「断る!我はなにひとつとして間違ったことなど語ってはおら」 ボキャア! 浩介 「ホルマジオッ!?」 サクラ「悔い改めるのです……さあ……!」 浩介 「こ、断る」 ガキッ!! 浩介 「ゲウッ!!」 ……どしゃっ。 志摩浩介……殉職。 いや、殉職? サクラ「………」(ギロリ) 凍弥 「キャーッ!?」 思いっきり睨まれました。ということで 凍弥 「やっぱ逃げる!」 サクラ「だめです」 がしっ。 凍弥 「ギャア!?」 サクラ「……笑いましたよね?……笑いましたねぇ……」 凍弥 「いや!気の所為だ!だからそのストレインを仕舞え!」 サクラ「懺悔しなさい……そうすれば神も許してくれるでしょう……」 凍弥 「……神に懺悔したらいくらでも幼児体型って言ってもいいってことか?」 サクラ「ッ!!」 サクラの顔がガボンッ!と真っ赤に染まボギャア!! 凍弥 「ギャーッ!!」 染まった途端、横殴りにされた。 サクラ「あ、あなたはどうしてそう捻くれているんですか!     あなたには懺悔なんて必要ありません!今すぐ神罰を受けなさい!!」 凍弥 「ままま待てって!だって今のはどう聞いたってそういうことじゃないか!     お前が幼児体系だなんてことはお前を知ってるやつなら誰だって」 サクラ「うわぁあああああああん!!」 凍弥 「うわっ!墓穴!?しまったぁあーーーーっ!!」 顔を真っ赤にしながら涙目で襲いかかってくるサクラを見て俺は畏怖ゴブシャア! ドカバキグシャベキガンゴシャペキャメシャ…………─── ───……。 遥一郎「……お前ら馬鹿だろ」 与一の声が聞こえた。 だが返事をするだけの余裕が無いのは確かでした。 目を覚ましたのは9時近くだった。 早朝……まあ6時程度だったが志摩兄弟が現れた。 それから考えると3時間もオチてたのか。 からかうだけならどうってことはないんだが、 体型のことに触れられるとキレるのはなんとかしてほしい。 凍弥 「別に殴られたくて言ったわけじゃないんだけど」 遥一郎「結果的に殴られてるじゃないか」 凍弥 「結果論なんて嫌いだ」 遥一郎「今この場で、だけだろ?」 凍弥 「うう……」 ほんと、与一には見透かされてる気がするよなぁ……。 桜の精霊ってそんなことも出来るのか? それとも元からそんなヤツだったのか。 ……別にいいけど。 浩介 「グッ……グウム……」 浩之 「う……むむ……む……むぉお……」 志摩兄弟がわざとらしく復活を果たした。 浩介 「ム……?ど、同志凍弥よ……あの魔人はどうした……?」 凍弥 「魔人?……ああ、サクラか。知らんぞ」 浩之 「ならよし。赤裸々撲殺も磨きがかかっているからな。     なるべくは会いたくないものだ」 凍弥 「中学卒業する前は大変だったからな。よく生きてたもんだよ」 浩介 「我は強ぇのよ」 浩之 「あっという間に撲殺されたのではなかったのかブラザー」 浩介 「フッ、貴様と一緒にするな。     我はヤツと互角以上に争い、つい注意が散漫した隙をつかれて撲殺されたのだ」 凍弥 「あっという間に撲殺されてたが」 浩介 「盟友貴様!我を裏切るというのか!?」 凍弥 「いきなりなこと言うなよ。事実だろ」 確かに浩之よりはもった方だが。 浩之 「おのれブラザー!貴様我を愚弄するか!修正ィイッ!!」 ボグシャア! 浩介 「ラブリィイイイッ!!」 頬に拳を浮けた浩介が宙に舞う。 だが体を捻って回転させ、見事に着地した。 凍弥 「おお、三回宙返り1/2捻り!」 浩介 「オリンピックも夢ではないぞーっ!」 浩之 「ハラショーマイフレンド!ウェ〜ンド・マイブラザー!」 俺と志摩兄弟は無意味にお互いを励まし合った。 ……励まし?……まあいい、励ましということにしておこう。 凍弥 「それより与一、雑煮ってまだある?」 遥一郎「この馬鹿どもが食い散らかすことくらい予想できていたからな。     あるぞ、死なない程度に食え」 志摩 『任せろ』 凍弥 「お前らまだ食うのか!?」 浩介 「当然だ」 浩之 「さあ食すとしよう」 ……どういう胃袋してるんだ。 凍弥 「っと、それはともかく腹ごしらえしなきゃな」 俺は厨房へ行き、元旦の食事準備をするのであった。 ─── 凍弥 「ところでさ」 遥一郎「うん?どうした?」 凍弥 「与一って料理上手いよな。なんで?」 雑煮を摘みながら、疑問に思っていたことを訊いてみた。 与一は微妙な顔をしながら一度頷いてみせた。 遥一郎「生身の人間だった時の俺の夢って話したか?」 凍弥 「いや全然」 志摩 『知らん』 遥一郎「……志摩ども、お前らは黙ってろ」 志摩 『なにぃ!?……いいだろう』 同時に頷く兄弟を見て呆れた。 いいなら『なにぃ』とか言うなよ……。 そんな思いを余所に、志摩兄弟は雑煮を食らい続けた。 遥一郎「俺の夢はな、ひとり暮らしをすることだったんだ」 凍弥 「ひとり暮らし?そんなものが夢だったのか?」 遥一郎「本当は夢というのとはちょっと違ったんだけどな。     自分の実家でいろいろあってな。     多分、俺はただその家を出たかっただけだったんだろうな」 凍弥 「それで、その夢は叶ったのか?」 遥一郎「夢は夢でしかないんだよ。叶ったところで次の夢が現れる。     もっとも、俺のは叶わなかったわけだけど───後悔は無いな。     あの夢は夢のままでいい夢だったって思えたからな」 凍弥 「そんなもんかな」 遥一郎「人それぞれってやつだ。ほら、雑煮食え、冷めるぞ」 凍弥 「あ、ああ……って、そうだ。与一ってさ、どうして桜の精霊になったんだ?」 遥一郎「秘密だ」 即答だった。 その即答が、なんだか踏み込んではいけない領域のように感じた。 浩之 「……ゔ」(ビクンッ) で、そう思った途端に浩之が震えた。 そしてみるみる内に真っ青になってゆく。 浩介 「む?どうしたブラザー」 浩之 「……っ!」 浩之が喉をトントンと突つく。 どうやら餅がつまったらしい。 浩介 「なに?何かのゼスチャーか?ムゥ……上がってこい、ここまでな……か?」 浩之 「…………!!」 見当違いもいいとこすぎる浩介の対応に、首をぶんぶんと横に振る浩之。 浩介 「なに、ゼスチャーではないというのか?」 浩之 「……!」 こくこくと頷く浩之。 かなり必死だ。 俺も心配になってきたので対策を考えつつ近寄りズボォッ!! 浩之 「───……」 どしゃあ。 浩之が崩れ落ちていった。 浩介 「決まった……」 凍弥 「なっ……なにやってんのキミィーッ!」 浩介 「む?日本少林寺拳法秘伝『仏骨』だが。     こう、喉仏のくぼみを親指で貫くのだ。     ……ブラザーもこれを望んでいたのではないのか?」 凍弥 「ンなもん望むか!!どうするんだよこいつ!」 口から何故か緑色の汁をコポコポと吐いている浩之を見下ろす。 その顔は生気を失ったような純粋無垢なフェイスだった。 だが途中でゴポッ!と痙攣すると、その口から餅が出てきた。 浩介 「おお見ろ。どうやら危機は去ったようだぞ」 浩介が浩之を見下ろしてハワーッ!と喜んだ。 ……それはまあ、いいのかもしれないが…… 凍弥 「でも……浩之動かんぞ」 浩介 「……うおう」 痙攣は続いているものの、復活はしない浩之クン。 なんか殺人現場に居合わせてしまった気分になるのは何故なのだろうか。 浩介 「どうやら必殺してしまったようだな。流石は少林寺拳法秘伝」 凍弥 「感心する場面じゃないと思うんだが……」 浩介 「しょうがない、火葬と土葬、どちらがいいと思う?」 浩之 「殺すなたわけ!」 あ、復活した。 浩介 「お、おおブラザー、我は貴様が蘇ると……信じていたぞ」 遥一郎「声が震えているが」 浩介 「だ、黙れ!」 浩之 「おのれブラザー……!我に少林寺拳法秘伝『仏骨』をキメるとは……!     もう許せぬ!表へ出ませいっ!羽根突きで勝負ぞ!」 浩介 「羽根突きとな!いいだろう!」 志摩 『ヌゥオオオオオオ!!』 咆哮。 そしてズドドドと外へ駆けてゆく志摩兄弟。 凍弥 「お、おいぃっ!?」 呼びとめようとしたが、そう思った頃には外に行ってしまっていた。 遥一郎「……やれやれ、仕方ないな」 凍弥 「与一?」 そんな様子を見ていた与一が一歩前に出た。 凍弥 「あいつらをどうにかする方法でもある」 遥一郎「羽子板は俺が用意しよう」 凍弥 「のか……」 ……プラスに考えた俺が馬鹿だった。 凍弥 「与一って時々物凄くノリがいいよな……」 どっから出したのか解らない羽子板を手に、外に出てゆく与一にそう言った。 遥一郎「なに、そんな日もあるさ」 返ってきた言葉はお決まりのやり過ごしセリフだったが、 俺は呆れながらそのあとを追うように外に出るのであった。 ───……カンカカカカカカカンカカンッ!! 浩介 「はい!はいはいはいはいはいはいはいはいはいィ!!」 浩之 「ソラソラソラソラソラソラァ!!」 物凄い勢いで羽根が飛ぶ。 浩介 「そこォッ!」 スカァン! 浩之 「甘し!!」 カポーン!! 浩介 「更に甘し!!」 コカーン!! 浩之 「こりゃまたとんでもなく甘し!!」 ペキャーン!! 浩介 「セイッ!」 カキャーン! 浩之 「───!墳波ッ!!」 シュカァーン!! ビシッ! 浩介 「ゲェーッ!」 羽根が浩介側に落ちた。 浩介 「な、なんとまあ……!我が負けるなど……!」 浩之 「フフフ、さあ盟友よ。墨汁と筆を用意してたもれ」 遥一郎「それならここにある。好きな文字を一文字だけ書くがいい」 浩之 「一文字?それはルールか」 遥一郎「普通はそうだろ。何文字も描いたら一度で決着だろう?」 浩之 「……一度勝てば十分なのだが……まだやるというのか?」 遥一郎「余裕、見せてやれ」 浩之 「ふむ……」 浩之が浩介を見る。 悔しがっている浩介を。 ……そしてフムと頷いて筆をとった。 浩之 「ではまず一筆を入れよう」 墨汁に浸した筆をかかげ、浩之が浩介の顔に文字を書いてゆく。 大きく『鑾(らん)』の文字を書いた。 もちろんその一文字で、顔はほぼ真っ黒状態だ。 浩之 「さあブラザー、かかってくるのだ!余裕を見せてくれようぞ!」 浩介 「おのれブラザー……!その言葉、後悔という念で繰り返させてくれる!」 そして再び始まる高速の羽根突き。 ふと、なんとなく気になって与一の横顔を見てみたら、 彼はとんでもなく楽しそうに笑っていた。 そこで悟る。 彼は俺達をダシに楽しんでいるだけなのだと……。 桜の精霊ともなると、普通のことでは飽きているのかもしれないなぁ……。 ───回想終了─── Next Menu back