───言葉の無いお別れ───
あとから来たやつらと経緯を話してしばらく。 天界の男が口を開きおった。 レイル「ようするに?霊体を受け入れる許可をおろせって?」 リヴァ「そうだ」 レイル「面倒だから断る」 リヴァ「そうか、じゃあ久しぶりに改造してみるか?」 レイル「慎んで受諾させていただきます!ハイ!それはもう!!」 リヴァ「そうか」 ……これは脅迫って言うんじゃねぇザマショウか。 しかしまあ、誰かの慌て様を見るのも悪くねぇ。 リヴァ「じゃ、今すぐ頼む」 レイル「今すぐかよ!物事には段階ってもんが」 リヴァ「ああ待ってろ。今すぐ歪みから工具を引き出す」 レイル「ああもうやるよ!やりゃいいんだろぉっ!?」 レイルとやらは何かに絶望するように天を仰いだ。 そんな中…… 遥一郎「………」 ひとりだけこの上なく楽しそうな顔をした男が居た。 レイル「……嬉しそうだな」 遥一郎「ハッキリ言うぞ。ザマァみろ」 レイル「………」 なんか恨みでもあるんかね。 彰利 「そんでさ。これで完璧なん?」 リヴァ「どっちの了承も得たしな」 彰利 「んじゃ、このメェ〜ンを復活させる儀式を行う!」 レイル「俺は天界に了承を得てくるよ……。アルに頼みゃあどうとでもなるだろ……」 リヴァ「そうか、頼むぞ」 レイル「ほいよ」(どさくさ紛れで逃げてやる……) リヴァ「報告に戻ってこいよ。じゃないと引きずり戻して改造するぞ……」 レイル「………っ」 ……あ、泣いた。 ───……。 レイル「済ませてきたぞ!いいんだろこれで!俺もう帰るからな!」 リヴァ「まあ待て。お前の経験データを調べてみたいから……うん、ちょっとこっち来い」 レイル「なっ……おいコラッ!!それじゃ話が違うじゃないか!」 リヴァ「いーから来い」 がっし。 レイル「うわっ……や、やめろっ!やめてくれ!実験はイヤだ!     やめろ引っ張る……い……嫌ァ!嫌ァアーーーッ!!」 男が引きずられていった。 しばらくして、泣き声と悲鳴が混ざったような奇声が響いたが…… ここに居る者は特に気にしなかった。 サクラ「それじゃ……美紀ちゃん」 美紀 『うん』 メェ〜ンの中からオナゴが現れ、撲殺ウーメンの傍に寄る。 美紀 『えーと……』 浅美 『波長の合わせ方、教えたでしょ?』 美紀 『うん』 オナゴが光を放ち、撲殺ウーメンの中に入り込んだ。 ……波長の云々は成功したらしい。 浅美 『それじゃあわたしの番だね』 メル 「はい、どうぞ」 今度は別のオナゴが死神さんの中に入ってゆく。 こっちのオナゴは波長云々は上手いらしい。 メル 「……これで大丈夫ですね。あとは何をお手伝いしたらいいんでしょうか」 彰利 「アタイの愛の成就を手伝ってくれ」 メル 「嫌です」 彰利 「………」 ひでぇや。 彰利 「で、いろいろ済んだみたいだけどこのメェーン、起きんよ?」 浅美 『それは能力酷使の問題ですからねぇ……』 メル 「魂結糸、本当に結んでしまっていいんですか?」 浅美 『あ……そうだった。確かメルちゃんがわたしに結んで、力を送る手はずで……』 メル 「そう……でしたね」 彰利 「おいおいウ〜メン、キミたちは僕が居ないとなんにもできないのか〜い?」 浅美 『ど忘れですよ失礼な』 彰利 「ほっほっほ、ドアホ忘れか。ステキねぇ」 ボゴォッ! 彰利 「はごぉっ!」 サクラ「妙なこと言わないでください……!」 彰利 「今はキミに殴られる理由が無かったでしょう!?」 サクラ「女の子に失礼なことを言う人は女の子の敵です!」 彰利 「なんじゃあこならぁ!お前なんて大嫌いじゃあ!」 サクラ「わたしだってあなたなんか大嫌いです!」 彰利 「おー!?やるかこのわらしゃあ!雌雄なんて決まってるが雌雄を決めてやる!」 サクラ「うぅうううっ!!」 ───…… 彰利 「がぼっ……がぼっ……」 リヴァ「……なにをやってるんだお前は」 彰利 「アタイ……女は殴らない主義なの……」 リヴァ「そうか。立派だと思うぞ」 彰利 「そ、そうよね!俺様最強よね!     拳を上げられなくても口で勝てばいいんだよね!?     てわけで貴様の強さもタカが知れたぞ!この幼児体型がぁっ!」 ブチリ。 彰利 「ギャア!?いきなりキレた!え、えっとあの、話をしよう話を!     そしたら対等な争いになると思うんだ!     つまりその上でアタイに勝てばキミの真の勝利に」 サクラ「ガァアーーーッ!!!」 彰利 「ひゃぁああーーっ!!!」 ドガグシャベキゴキガンガンガン!ゴシャッ!メキャベキッ!! リヴァ「……もういい加減無視するが。ところでもう終わったのか?」 浅美 『えーと……はい。手違いでメルちゃんの中に入っちゃいましたけど』 リヴァ「そうか、まあいい。消費するものが居なくなったんだ、回復も早いだろう。     あとは……うん、わたしが同調して回復の手助けをしよう」 浅美 『それが出来るんだったら最初から……』 リヴァ「わたしはお前らの力の回復まで担うつもりが無かったんだ。     わたしにだって苦手なものはある。凍弥の力が特別なだけだ」 浅美 『よく解りませんけど……』 リヴァ「じゃあ、始めるぞ」 ───……。 カチリ、カチリ……カチリ。 ───そしてまた、同じ夢を見ている。 不定期になる音を耳にしつつ、自分の感覚がおかしくなってゆくのを感じる。 頼れるものがひとつだけだというのは辛いものだ。 まして、それが聴覚だけでは。 目を開いているのに何も見えないのは気持ち悪い。 いつからか、吐き気がするのに吐けないような矛盾が俺を襲った。 最初は凄く嫌だったのに……ひとつ感覚が増えた、だなんて喜んだものだ。 やがてどんどんと感覚が蘇ってゆく。 熱が上がって、怖いくて、痛くて、吐きたくて、でも吐けなくて。 気が狂いそうになる中で腕が消えてゆく。 凍弥 「───……!!」 叫びたくても声が出ない。 異常なほどの熱だ。 自分が消えてしまうんじゃないかって思うほどに。 ───でもやがて。 その闇に光が訪れた。 崩壊を導く光じゃない、見たこともない光。 その時に思った。   ───ああ、ようやく助かるんだ、って─── 凍弥 「───……!」 目を覚ますと、その世界は滲んでいた。 その目を拭った時、自分が泣いてたんだって解った。 凍弥 「あ、あれ……?」 で、拭った涙の先の景色を見たら……いつの間にか鈴訊庵に居た。 しかも皆様が俺を見てる。 リヴァ「………」 凍弥 「リヴァイア?」 リヴァ「凍弥、まずはスマン」 凍弥 「え?」 ……なにがなんだか。 リヴァ「お前の能力は厄介なものだったんでな。いろいろあって……その」 凍弥 「な、なんなんだ?歯切れが悪いな……。いいからハッキリ言ってくれないか?」 リヴァ「いいんだな?」 凍弥 「ああ……って、いいもなにも。まるっきり解らないんだから当たり前だろ」 リヴァ「そうか。それじゃあ……」 リヴァイアが手鏡を渡してくる。 凍弥 「へ?」 リヴァ「覗いてみろ」 凍弥 「………」 いや、既に覗いたんだが。 そこには……───……ドシャアア。 リヴァ「あ」 遥一郎「ま、そりゃ気絶するだろうな」 凍弥 「って待てーっ!!」 メル 「あ、起きました」 リヴァ「安心しろ凍弥、同調はお前が回復した時点で外しておいたぞ」 凍弥 「そうじゃなくて!どうして俺女になってんだよ!」 リヴァ「同調の副作用……としか言えないが」 凍弥 「じゃなくて!どうして女装させられてんだって……ええっ!?     も、もしかして本気で女になってる……とか?」 リヴァ「なに?そういう意味で言ったんじゃなかったのか?」 凍弥 「───……」 ドシャア。 リヴァ「あ」 サクラ「普通は気絶しますよね……」 凍弥 「あぁあああっ!!!」 浅美 『あ、蘇りましたね』 凍弥 「同調がどうのって、どうしてそんなことになったんだよ!」 リヴァ「お前が能力を酷使して意識不明になったからだ」 ぐさっ。 凍弥 「…………自業自得ってこと……?」 リヴァ「そうだ。協力してくれたヤツらに感謝するんだな」 凍弥 「………」 俺は集まっている人達を見渡した。 途端に申し訳無い気持ちに駆られる。 凍弥 「えと……みんな、ごめん。迷惑かけたみたいだ」 彰利 「まぁよ」 視界の中のみんなが苦笑する中、ひとりだけ踏ん反り返って声をあげた。 サクラ「あなたが一体なにをしたんですかっ……!」 彰利 「うるせぇペチャボディ!きさんだって何やったと!?えー!?」 サクラ「ペチャ言うなぁあああああっ!!!!」 彰利 「キャ……キャーッ!?」 ドガグシャベキゴキガンガンガン!ゴシャッ!メキャベキッ!! ストレインを手に、阿修羅(怒り面)顔で吼えるサクラにボコボコにされる彰利氏。 凍弥 「おいおいサクラ……そんな勢いよく殴ったら死んじまうだろ……!」 サクラ「この人はこれくらいじゃ死なないし懲りませんっ!」 凍弥 「それでもダメだ。やめてやれ」 彰利 「おおメェーン!助けてくれるんか!?キミってば最強YO!」 サクラ「う……だってだってこの人、わたしのことペチャって!」 凍弥 「事実だろ」 サクラ「凍弥さんっ!?」 凍弥 「あ、いやその……あ、そ、そういや誰なんだ?俺にこんな格好させたの」 サクラ「………」 リヴァ「………」 遥一郎「………」 メル 「………」 浅美 『………』 美紀 『………』 みんなが黙り、ひとつの方向を見る。 その先には─── 彰利 「わぁ、アタイったら愛されてる♪」 ひとりの馬鹿がおりました。 凍弥 「───サクラ」 サクラ「なんですか」 凍弥 「……一緒に殴ろうか」 サクラ「がってんです」 彰利 「ひゃあああぁーーーーーーっ!!!!??」 ドカグシャベキゴキガンガンガン!! ゴシャ!ドゴベキメキメキャ!!ゴシャメシャベキボキャアア!! ───……やがて夜の闇が静かに訪れた頃、サクラが俺達に頭を下げていた。 サクラ「お世話になりました」 俺が眠ってる間に来たレイルって人と一緒に天界に帰るんだそうだ。 レイル「お世話になりたくもないのによくもまぁお世話してくれました……」 リヴァ「口が減らないのは相変わらずだな」 レイル「うるせぇ!もう二度と顔を見たくないわ!     いいか!?もう引きずり出すんじゃねぇぞ!?」 リヴァ「随分反抗的だな。なんならその性格を叩き直してやってもいいんだが」 レイル「ボク、帰ります」 リヴァ「よろしい」 レイル「ちっ……くしょぉおおお…………!!」 ……よく解らんが、中々の苦労人らしく思う。 彰利 「別れに涙は似合わねぇぜ……?ホラ、涙をお拭き」 レイル「お前……すまん」 彰利が差し出すハンケチーフを受け取って、涙を拭うレイ レイル「ぐぁあああああああああああああっ!!!!!」 彰利 「タバスコとワサビがたっぷり染み込んでますが」 レイル「てめぇええええええっ!!」 彰利 「来い!来やがれ!こちとらストレス溜まっとんじゃい!     女じゃねぇならハラショーぞ!?」 やがて鈴訊庵前で喧嘩を始めるふたりはあっさり無視され、 それぞれがサクラに別れの言葉を言っていた。 俺はというと……そんな風景を少し離れた場所でぼ〜っと見ていた。 凍弥 「これでお役御免か……」 あんなに嬉しそうに笑っちゃって。 ───……よかったな、サクラ。 凍弥 「さてと」 俺は苦笑を漏らしながらその場を離れた。 しみったれた別れの場なんてものは嫌いだ。 別に言う言葉も見つからないし、 何か言えだのあれがどうだの言われる前にとっとと逃げた方が上策だ。 ───……。 で、辿り着いたのが途切れた丘。 父さんに教えてもらった、俺のとっておきの場所。 そこから見下ろせる景色の中に鈴訊庵がある。 豆よりも小さな姿で見える俺の知り合いは、未だに別れを惜しんでいるのだろう。 俺はそんな景色に溜め息を吐いて寝転がる。 遥一郎「よっ」 凍弥 「……なんだ、来てたのか」 遥一郎「まあな。サクラだってガキじゃないんだ、どうってことないだろ」 凍弥 「………」 遥一郎「……で。お前はいいのか?」 凍弥 「言うと思ったよ。俺はいい」 遥一郎「そか」 与一はそれ以上何も言わず俺の横に座って星を見た。 凍弥 「……よーやく解放ってところだよな」 遥一郎「うん?」 凍弥 「サクラ。あんなに嬉しそうに笑ってただろ」 遥一郎「そうだな、嬉しそうだった」 凍弥 「そもそもこんなに長く俺の傍に居ること自体がおかしかったんだよ。     こんなヤツと一緒に住んでたんだ、喜ぶのも無理はないさ」 遥一郎「そう思うんだったら、もうちょっとやさしくしてやればよかったじゃないか」 凍弥 「俺には俺のペースがある。     誰かがそこに介入してきたからって、     そうそうペース崩してちゃ生きていくのが億劫になるだろ」 遥一郎「……まったく」 苦笑する与一は俺の額に軽いデコピンをした。 俺はそれを苦笑しながら受け、体を起こす。 凍弥 「……面倒なことばっかりでくだらないって思ってたけどな」 鈴訊庵の前が少し輝いた。 それを見た時、不思議『ああ、帰るんだな』って感じた。 凍弥 「ま、つまらなかったわけじゃないしな」 だから俺はその光に手を振った。 また会えるかなんて知らないし、知ったことじゃないけど…… 今まで家族みたいな存在だった彼女に、一応のお別れを。 遥一郎「素直じゃないなぁ」 凍弥 「これが俺の素直だよ。そうじゃないとしたら俺は俺のことなんて知らねぇ」 遥一郎「……お前がサクラにキツく当たってたのって今日のためなんだろ?」 凍弥 「……違うよ」 遥一郎「子供の頃からそんな気ばっかり使って。よくハゲなかったな」 凍弥 「うるさいな、違うって言ってるだろ」 遥一郎「図星言われたからってそう怒るなよ。……さてと」 与一は軽い反動をつけて起き上がった。 凍弥 「与一?」 遥一郎「やっぱりもうちょっと別れでも惜しんでくるよ。お前はどうする?」 凍弥 「いかないよ。勝手にしてろ」 遥一郎「……そかそか。んじゃ、勝手にさせてもらうよ」 凍弥 「───……与一」 遥一郎「うん?」 凍弥 「さっきのこと、わざわざサクラに言うなよ?」 遥一郎「さぁな。俺は勝手にさせてもらうだけだからな」 凍弥 「っ……おいっ!」 遥一郎「はっはっはっは!そんじゃな〜!」 嫌な笑いを飛ばしながら、与一は闇に消えていった。 凍弥 「……ったく」 追うのも面倒くさくて、起こした体をまた寝かせた。 凍弥 「………」 ───やがて、それからしばらく経った時、光が空へと登ってゆく。 始まったばかりの夏の日に、空に広がる黒を消すように登る光を見送った。 まるで星が空に帰ってゆくような景色の中。 子供の頃から俺の傍に居た少女は、自分が居るべき世界へと飛び立っていった。 そう確信したあたりで俺は苦笑しながら……もう一度手を振った。 呆れるくらいに穏やかな世界の中で、その夜空を見上げながら……─── Next Menu back