───超時空放浪彰利───
彰利 「グ、グウム……」 チカチカする頭を数回揺すると、我が脳内はスッキリサワヤカになってゆく。 彰利 「むぅ……こ、ここは……?」 自分の居る場所がよく解らんタイ。 確かオタ子になって、俺を車で轢いたヤツが居て…… それでむかついたから追いかけて、 エドモンド本田ばりのスーパー頭突きをブチかまして百裂張り手もやって…… ああ、つまり『鬼無双』をやったわけだ。 ちゃんと『ほんにぃいい〜……美味そうじゃーいっ!そーぅりゃあああっ!』って。 あれ、どう聞いたって『鬼……無双じゃーい!』とは聞こえないんだよなぁ。 で、そしたら車が突然爆発して、火花と煙とともに天空に吹っ飛ばされて…… そして? そしてどうなった? 彰利 「……うむ、解らんことは訊くに限るでゴワスな。これ、そこの者」 道行く者に声をかける。 我が美声を聞き届けた男はこちらに向き直り、アタイを見据えた。 男  「なんだ貴様は。珍妙な格好をして」 彰利 「そんなことはどうでもよい。ここはどこじゃね?」 男  「貴様、私を愚弄しているのか?     斬られたくなくば、口の聞き方に気をつけるのだな」 彰利 「斬るとな!ほっほっほ!斬るとな!この拙僧を!」 確かに刀を装備してるようだが、いやはやまったく! この天下の往来で斬るなどと! そうかそうか!ここは江戸村というとこだな!? そうかそうか、爆発の中で無意識に月空力が発動したってわけじゃな!? ぬっはっはっは!まったく笑わせてドシュッ…… 彰利 「あれ?」 男  「無礼者が……」 男の刀が、俺の腹を…… 彰利 「ゲホッ……マ、マジですか……」 口から血が溢れた。 どうやら内臓を貫通されたようだ。 男  「あの世で悔いるのだな。     このような寂れた村の男ごときが私に声をかけたことを」 グブッ……! 彰利 「ゲハッ……」 刀が抜き取られた。 それとともに腹からも血が吹き出る。 男は俺に振り向きもせず、急ぐこともせずに歩いていった。 彰利 「……げ、月生力……」 ひとまずは斬られた場所の回復だ。 彰利 「あのマゲ野郎……躊躇もせずに斬りやがって……」 ……む。 腹が治った。 彰利 「俺は怒ったぞーーっ!フリーザーッ!!」 相手の名前が解らんのでひとまずフリーザ扱い。 彰利 「しかし参りましたな。まさか江戸村にあんな殺人狂が混じってるなんて」 これは一大事だ。 一刻も早く……おお! 彰利 「これ!そこの小娘!」 小娘 「はい……ひっ!」 なんじゃいこの小娘!アタイを見て悲鳴をあげおった! 彰利 「なんぞね!人を見て悲鳴あげるとは!」 小娘 「ち、血……!」 彰利 「あ〜ん?」 小娘の目線を追ってみる……と、 彰利 「ウヒョオ!さっき刺された時の血が満載!」 小娘 「ひいいいっ!」 彰利 「あっ!こ、これ小娘!貴様に言わねばならぬことがあるのだ!     この江戸村に殺人───」 小娘 「ひぇえええっ!」 小娘が全力で逃げ出した。 彰利 「なっ……待てコラァーッ!!」 俺はそれを追うことにした。 彰利 「止まれコラ!人が親切で助言しようってのになに逃げとんじゃーっ!」 小娘 「あぁれぇえっ!どなたか!どなたかお助けーっ!」 彰利 「わぁ!名演技!───じゃねぇ!演技してる場合ではないのじゃ小娘!」 小娘 「おまえさん!おまえさぁああん!!」 彰利 「誰がおまえさんだこの野郎!」 小娘 「だ、だれかーっ!」 ……無視された。 男一 「なんだなんだ?」 男ニ 「おう、助六。     なんでもあの野郎が桶丸んとこの女を襲おうとしてるらしいんでぇ」 助六 「そりゃえらいこっちゃ!おう、あのバカヤロウをこらしめてやるか!」 男ニ 「よしきた!おうお前ら!暇なやつは手伝え!助平野郎こらしめるぞ!」 彰利 「キャーッ!?」 よく解らんが、聞こえた声に振り向くと後ろから追ってくる野郎ども。 男一 「うんだりゃーっ!!待ちやがれこの助平がぁーっ!」 男三 「妙な服着やがって!おぅ野郎ども!そいつをひんむいちめぇ!」 男衆 『おぉおおおっ!!』 さらによく解らんが、なんか叫び合ってる男ども。 ……ああ! 彰利 「そうか!みんなも殺人狂が居ることを小娘に伝えたいのね!?     よしみんなこっちだ!小娘は向こうに」 ザゴォッ! 彰利 「ゴエッ!?」 背中に激痛。 見てみれば、背中にくっついたまま落ちない棒キレ……いや、クワ。 彰利 「ゲハッ!く、くそ!まさかこの村……!殺人村なのか……!?」 男  「いまだ!のしちまえ!」 彰利 「ま、待てーっ!貴様らよってたかってひとりをボコって何様だーっ!」 男一 「この村を荒らす奴は許さねぇ!みんな、やっちまえ!」 ボコッ!ゴスッ! 彰利 「や、やめてー!痛い痛い!やめてくれ!ぼくが何をしたっていうんだよぅ!」 月生力で回復は続けてるからそこまで痛くはないが。 もとより殴られ馴れてますし。 桶丸 「おめぇかぁ!ワシのヨメに手ぇ出そうってゆう、ふてぇ野郎は!」 彰利 「ち、違う!俺じゃない!」 桶丸 「あぁ!?だったら誰だってんでぃ!」 彰利 「こいつ」 助六 「なにぃ!?でまかせ言ってんじゃねぇやい!俺ゃこの目で見たんでぃ!     この助平野郎が桶丸の嫁に手ぇ出そうとしてたのを!なぁおめぇら!」 男一 「おう俺も見た!お清さんを荒い息遣いで追ってやがったんだ!間違いねぇ!」 彰利 「ゲェーッ!?あんたら目が腐ってんじゃない!?」 助六 「あんじゃとぉっ!?」 ボコッ!ドゴッ!ボスッ! 彰利 「ギャッ!ギャッ!」 男どもが殴る蹴るどつく! まったくなんたることか!こやつら馬鹿だ! 桶丸 「ふん、とにかくこいつがワシのお清に手を出そうとしてたんだな?     おい、どけ。ワシが一発で後悔させてやる」 男  「お、おお……」 オケマルさんがなにやら物騒な棍棒を用意した。 グッと天に構え、それを─── 彰利 「うわっ!馬鹿!それちょっとシャレに」 ゴンッ!! 彰利 「ハッ───……」 な、なんとまあ……目の前が暗く……! この馬鹿マッチョ……!思いっきり後頭部に振り下ろしやがって……! 彰利 「お、おんどれ……貴様よくも……」 桶丸 「な……これでもくたばらねぇのか!このっ!」 ゴスッ! 彰利 「かはっ!」 ───ぶつん。 ……ああ、視界がブラウン管みたいに切れおった。 こりゃイカンなぁ……頭はヤバイよ馬鹿……。 彰利 「う、むむ……」 ふと、意識が蘇る。 彰利 「む、むおお……」 頭に手を添え、小さく振───ギャア! 彰利 「わあ、体が縛られてる♪しかも夜だ。これから一体どんなプレイが?」 シャァアアアア…… 彰利 「キャーーーーアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」 目の前で刀が抜かれちゃった! あれですか!?斬首ですか!? 彰利 「ま、待てーっ!キミ、そりゃあんまりですよ!?親御さんが悲しみますよ!?     それにアタイにも権利ってもんがあるでしょ!?ほ、ほら、黙秘権とか!     ……だ、だめだ!黙秘権はダメだ!この状況で黙ってなにになる!?     そ、そう!人権でどうだ!?貴様だって好きでこの江戸村始めたんでしょ!?     そんなアナタが衝動的に殺しても未来が閉ざされるだけですよ!?」 男  「黙れっ!」 彰利 「黙れるかボケ!」 男  「なんだとっ!」 彰利 「なんだととはなんだコラ!」 男  「貴様……この状況が解ってるのか!」 彰利 「解らんとです!」 男  「貴様っ!」 じゃきんっ! 彰利 「キャーッ!?」 喉下に刀が突きつけられる。 彰利 「な、なにかねこの刀は!納めたまえ!     まったく不理解だ!キミの考えることはまったく解らんよ!」 ヅプッ。 彰利 「いぎゃーっ!ギャーッ!ギャオォーーーーーッ!!!!」 男  「黙れ」 彰利 「そう言うならこの刀を納めたまえ!順序というものを知らんのかね!」 男  「黙れ、と言っている」 彰利 「あーそうかね!わたしは納めたまえと言っているがね!」 男  「くっ!」 ゴギュッ! 彰利 「───!ッ!」 ウヒョウ……喉刺しやがった……! 声帯が潰されたか……だが。 ひと思いに心臓を貫かなかったことが貴様の敗因ぞ! 彰利 「───ッ!」 バツンッ! 男  「なっ……!縄を引き千切った!?」 彰利 「───!───!」(これぞ白華の奥義のひとつ、白華爆虚拳!!) 刀に手を添え、気合とともに一気に下ろす! この要領で刀がパキィンと折れ───ゾブシュシュシュッ! 彰利 「ギャオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!」 刀は折れず、それどころか勢いで刺さった部分から下が、大きく裂けた。 月生力で治った声帯から出た第一声がこれとは……おいたわしや、俺。 彰利 「いたやぁあああああああっ!!!おーいて!おぉおおおおいてぇええっ!」 ええい治れ治れ!さっさと治れ! 彰利 「ベホイミ♪」 パァアア……ゾブシュッ。 彰利 「アレレーッ!?」 男  「おのれ妖怪!まさか妖怪だったとは!」 彰利 「ぬ、ぬーべー!」 おのれ妖怪、という言葉に反応して、つい口からぬーべーという言葉が。 彰利 「てゆうかなに刺してんじゃい!人を妖怪扱いした上に無言で斬るなよ!」 男  「黙れ!この村では今宵、神を祭る儀式があるのだ!     貴様のような妖怪を野放しに出来るか!」 彰利 「妖怪……貴様!人を『妖怪・腐れ外道』と申すか!     俺に『もう我慢できねぇなぁ〜』とか言えと申すか!     自分の腕でも食ってろって申すか!もはや辛抱たまらん!ブラストォッ!」 ドシュンッ! 男  「なにっ!?」 ドゴォンッ! 男  「ごぉぁあああああっ!!」 男が思いっきり吹き飛んでいった。 彰利 「ムヒョヒョヒョヒョ!ザマァみさらせ!始末しないのは慈悲だと思えボケが!」 ───……ザッ。 彰利 「む!」 男が吹っ飛んでいった先からの足音。 彰利 「なんとまあ……さすがに加減しすぎたか?」 男  「……赤次さんなら気を失っているけど」 彰利 「左様か!ならば、うぬは何者だ!名を名乗られま……なにぃ!?貴様は!」 夜の闇から歩いてくる人物。 そいつぁ……ちっこいが、凍弥ってやつだと直感がそう言った。 凍弥?「俺は禊。禊隆正。お前の名前は?」 彰利 「なに寝惚けとんじゃい!貴様俺の名を忘れたか!?」 隆正 「お前の名前?……どこかで会ったっけ」 彰利 「……ははーん?こりゃ、アレだな?ドッキリなんたらってやつだな?     あとで驚かそうって魂胆だろ。てゆうかそれならキミやりすぎだぞ!     俺じゃなかったら死んでるわ!     てゆうかどういうメイクですか?背が縮むなんて」 隆正 「質問に答えろよ。名前、なんていうんだ」 彰利 「…………無視ですか」 ひでぇ。 彰利 「まーいい、実は知ってました。ってほうが、ドッキリの仕返しにはなるし。     よーくお聞き小僧。アタイの名は……グウム……おお、あれだ。     弓彰衛門(ゆみのあきえもん)ぞ?」 隆正 「あきえもん?」 彰衛門「左様。余こそはこの世界最強の存在、彰衛門ぞ」 隆正 「ふーん……変な名前」 彰衛門「お前が聞いてきたんだろが!」 これだから子供って嫌いよ! 変にピュアなんだもの! 隆正 「どうでもいいよ、そんなこと。それよりお前さ、妖怪なのか?」 彰衛門「誰が妖怪だこの野郎!」 隆正 「なんだ、じゃあただの助平なんだ」 彰衛門「ウェッヘッヘ、旦那も人が悪ぃでっせ。     男ってのはウッシャッシャッシャ、スケベなもんでっせ?」 隆正 「そんなことないよ。俺、そんなの嫌いだし」 彰衛門「なぜゆえ?」 隆正 「心が汚くなる。そんなの、俺は嫌いだ」 彰衛門「それはまだ貴様が真の愛を知らぬからだ」 隆正 「当たり前だろ、なに言ってるんだよ。愛と助平は違うに決まってる」 彰衛門「グウム……この子ったら的を射たこと言いおって」 てゆうか子供に諭される俺ってなに? ……なんか冷静に考えたらムカツイてきた。 彰衛門「小僧!」 隆正 「なんだよ」 彰衛門「わしは天狗じゃ!」 隆正 「てんぐ?ほ、ほんとか!?」 彰衛門「ウソじゃ」 隆正 「………」 おっほっほ、睨んでおるわ睨んでおるわ。 だが、これしきのからかいで参ってしまっては困るのだよ。 彰衛門「小僧、貴様の親御はどこだ。迷惑金だけでも徴収せねば気が済まぬわ」 隆正 「親?居ないよ」 彰衛門「なぜかね!わしを騙そうとしてるんじゃないかね!?」 隆正 「だって俺、ひとりっこだし。親も兄弟も居ないぞ」 彰衛門「ウソおっしゃい!」 隆正 「こんなことで見栄張ってもしょうがないじゃないか。     お前、もしかして頭悪いのか?」 彰衛門「馬鹿とはなんだこの野郎!」 隆正 「馬鹿だなんて言ってないよ」 グウウ〜ムムウ〜〜……! この小童めが!ああ言えばこう言うところなんざ、クソ生意気なことこの上無し! 隆正 「それで、えーと……ドラえもんだっけ?」 彰衛門「だれが猫型征服ロボだこの野郎!やっぱこれドッキリじゃねぇか!」 隆正 「あれ?違ったっけ。まあいいや、ドラえもんさ、ほんとのところ妖怪なのか?」 あっさりと無視され、勝手に話を進められた。 彰衛門「す、少しは人の話聞こうって気はないのかねキミ!     そもそもワタシは彰衛門!ドラえもんじゃないのだよ!!     そこんとこ、よろしく」 隆正 「あきえもん、だな?うん、覚えたよ。それで、どうなんだ?」 彰衛門「馬鹿め、こんなダンディズム溢れる妖怪が居たら、     世界中のオナゴが俺のものぞ?」 隆正 「だんでずむ?なんだそれ」 彰衛門「知らん。自分で考えろ」 隆正 「………」 小僧が呆れた顔で俺を見た。 俺も負けじとその瞳を見つめかえした。 隆正 「う……オエッ」 彰衛門「オイそりゃどういう意味だこの野郎!!」 タイマツ燃ゆる祭壇の上、アタイと視線を交わした小僧は吐きそうになった。 中々に失礼で無礼なヤツだ。 隆正 「ところでさ、彰衛門はこの村になんの用があって来たんだ?     なにもないだろ、この村」 彰衛門「馬鹿め、ちゃんとした家や井戸があるではないか。     なにもないなどと、滅多なことを口にするもんじゃあありませんよ」 隆正 「う……それはそうだけど。でもさ、それって血だよな?     血を流してまでここに居る理由ってなんだ?」 彰衛門「捕まってたんですよあたしゃあ!逃げられるわけないでしょ!?」 隆正 「ん……よく解らないや」 彰衛門「小僧……」 この小僧、都合の悪いことになるとすぐに話題を逸らそうとしやがる。 い、いや、小僧なんだから解らないことだらけなのは目を瞑ろう。 彰衛門「ところで小僧。     この村で今宵起こると言われている神を祭る儀式とはなんぞや?」 隆正 「そのまんまだよ。年に一度、神さまに舞いを捧げるんだ。     今年も豊作でありますように、とか」 彰衛門「なんと!して、その願いは叶うのか!?」 隆正 「どうだろ」 よく解らない、と首を振る小僧。 彰衛門「……ハン、まあそうであろうな。神など、所詮はおらぬのだ」 隆正 「神様は居るよ。それは間違い無い」 彰衛門「あ〜ん?どうしてそないなことが言えるんじゃい」 隆正 「もう昔のことになるんだけどさ。こういう話があるんだ。     『ひとりのもの言えぬおなごが、ひとりの守衛頭に恋をして。     神を授かりて、その者を友に託す』って話。     その話が悲しいのか可笑しいのか解らない話なんだけど、     でも……うん、神は居るよ」 彰衛門「よく解らんぞ小僧。麿(まろ)にも解るように語られよ」 隆正 「えっと……妙な格好をした男がそのふたりの恋を実らせたんだ。     それによって、その後の降臨祭って儀式で神を授かったんだよ。     幸せはずっと続く筈だったんだけど……その内のひとり、     男の方が悪いヤツに殺されちゃったんだ。     それを追うように女の方も死んじゃって……残された妙な格好のヤツは、     神を任されて、辛い思いをしながら生きてゆくって話」 彰衛門「うむうむ……なるほど」 隆正 「わかった?」 彰衛門「さっぱり解らん!」 解らんので真剣に答えてみた。 隆正 「……そうそう。彰衛門も性格ってその男によく似てるよ」 呆れられたようだ。 彰衛門「なんと!このハンザムガイである俺に似てるとな!」 隆正 「……でも違うかも。純之上はもっと愉快でいいヤツだった筈だし」 彰衛門「なんじゃい、その『すみのじょう』ってやつぁ」 隆正 「だから、妙な格好をした男だよ。彰衛門も変な格好してるし」 彰衛門「ヘンな格好とはなんだこの野郎。漣高校の制服ナメんなよ?」 隆正 「でもヘンな格好だよ」 彰衛門「グッ……グウム」 変なんだそうです。 子供は純粋ですねー、ウソが感じられません。 彰衛門「まぁいいコテ、それならそれでも。     アタイもその儀式とやらを見ていくとしよう」 隆正 「ふーん……」 彰衛門「なんじゃい」 隆正 「もしかして、純之上の時みたいに神様が降りてきたりして」 彰衛門「知るかンなもん」 こうしてアタイは儀式とやらを見ることを決意した。 彰衛門「ってちょっと待て小僧」 隆正 「なんだよぅ」 彰衛門「神聖な舞いをするところに血だらけの俺様が行くのは妙ではないか?」 隆正 「思いっきり妙だよ」 彰衛門「そうか。ならば……」 隆正 「?」 ─── 男  「ど、どろぼぉーーーーーっ!!!」 彰衛門「とんずらぁぁぁーーーっ!!」 アタイはほっかむりを装着後、ガラの悪い連中の家から服をかっぱらってきた。 これでおーけーね? ─── 彰衛門「みろ、これで俺も江戸村デビューだ」 江戸装束に身を包みながら言う。 ちなみに制服は月然力(水)で洗い、月然力(風)で乾かしてある。 隆正 「彰衛門さぁ……そんなことやってると打ち首されるよ?」 彰衛門「なにを言うか。ほっかむりしてやったからバレませんよ」 隆正 「そういう問題じゃなくて……     あ、でもやっぱり行動が純之上にそっくりだと思う」 彰衛門「なぜそう言えるのかね?」 隆正 「うん、お話に出てくる『純之上』はさ、どうやってるのかは知らないけど、     いろんな歴史に現れては『追い剥ぎ』だとか『食い逃げ』だとかをしてる。     その度に『とんずらぁー』とか『あばよ〜とっつぁ〜ん』とか言ってるんだ」 彰衛門「………」 やべぇ、なんかライバルになれるかもしれねぇ。 彰衛門「ま、まあそれは置くとして。それより小僧、その儀式とやらはまだか?」 隆正 「人が集まってきてるし、もうすぐだよ」 彰衛門「そうか。ところで小僧。俺は腹が減ったぞ」 隆正 「え?」 彰衛門「なにかないか、小僧」 隆正 「なにもないよ。俺だって一日を生きるのが精一杯なんだ」 彰衛門「なんじゃいそうなのかい。ならば……」 アタイは梨の種を取り出した。 隆正 「彰衛門?」 彰衛門「小僧、ここでは目につく。ついてまいれ」 隆正 「うん……」 小僧は少し訝しげにしながらも頷き、アタイのあとを付いてきた。 隆正 「ここで何をするんだ?」 人の目につかない場所まで来て、アタイはクォックォックォッと笑った。 彰衛門「小僧、腹が減ってるか?」 隆正 「う、……で、でも馴れてらい。俺はこうやって生きるしかないんだ」 彰衛門「そかそか。俺はお前みたいな強い男は大好きじゃい。     誇りを失ってないのがまたイイ。どうやらここはマジで過去みたいだが、     未来の者どもはまるっきりダメだ。芯が弱い。     ということで小僧、貴様には褒美をやろう。     なに、礼はいらんよ。じいやはおぬしのような若者の味方じゃけぇ」 隆正 「……何言ってるんだ?」 彰衛門「まぁよ。見てれば解るタイ」 アタイはまず土を触ってみた。 彰衛門「この土ならいいサイバイマンが出来そうだぜ」 そこに指で穴を空け、梨の種を埋める。 彰衛門「よいか小僧。これからここで起こることは他言無用ぞ?」 隆正 「……なにが起こるかも解らないのに約束なんて出来ないよ」 彰衛門「なんと!貴様、魔法使いの孫だったのか!」 隆正 「……?」 彰衛門「あ、いや、貴様は約束の大切さを知ってるようじゃなから特別に教えよう。     ワシはね、魔法使いなんじゃよ」 隆正 「魔法使い?ほんとか!?」 彰衛門「ウソじゃ」 隆正 「………」 おお睨んどる睨んどる。 彰衛門「でもまあ似たようなもんじゃな。どれ、その証を立てようか。     月然力……月空力……。自然の力を育み、樹枝を育てたまえ……。カァーッ!」 種を埋めた場所に力を送る。 するとその土が盛り上がり、種が苗となり、苗が木となり枝となる。 やがて……その場には大きな梨の木が生った。 隆正 「う、うわ……わ……」 彰衛門「さ、小僧。これはこの麿、彰衛門からの贈り物じゃ。食すがよい」 隆正 「え……い、いいの?」 彰衛門「だめじゃ」 隆正 「………」 おお睨んどる睨んどる。 彰衛門「冗談じゃい。ホレ、届かぬのならじいが取ってしんぜよう」 ブチッと梨をひとつ取り、それを小僧に手渡す。 隆正 「わぁ……!」 彰衛門「ほれ、食しなさい。梨は水分も豊富で、喉も潤うこと請け合いじゃて」 隆正 「あ、ありがとう!」 小僧は元気な笑顔でそれを頬張った。 隆正 「おいしい……!おいしいよっ……!」 彰衛門「……子供が泥棒をしなければ生きていけない時代……。     ワシはそんな世界を創った者が許せん……」 隆正 「泥棒したのは彰衛門だろ」 彰衛門「グ、グムーッ!」 いきなり冷静にツッコまれた俺はそう言うしかなかった。 彰利 「満足したかね」 それからしばらくして、ひとりで3個食した小僧にそう訊ねた。 隆正 「うん!ありがとう彰衛門!」 彰衛門「ほっほっほ、言うたじゃろ、じいやは貴様のような小僧の味方じゃて。     食したくなればいつでもここに来るがええ」 隆正 「……彰衛門は食べないの?」 彰衛門「いいや、じいやは小僧の幸せそうな顔を見れただけで腹がいっぱいじゃあ。     よい笑顔をするようになったの、小僧」 隆正 「な、なんだよいきなり……」 小僧は照れくさそうに顔を伏せた。 隆正 「あ……でもさ、俺じゃああの実まで手が届かないよ」 彰衛門「む、そうじゃの。ではじいやが『木登り』を伝授してやろう」 隆正 「え……」 彰衛門「よいか小僧!これより木登りを伝授する!」 隆正 「あ、彰衛門?」 彰衛門「解ってる!なにも言うな!」 隆正 「え、あ、あの……」 こうして俺はよく解らずに木登りの伝授をすることにした。 ドシュシュッ!バオバオッ!ビッ!ブバッ! でげででげででげでで〜ん♪ 彰衛門「うむ、よく堪えたのぅ。これで貴様は木登りを覚えた」 隆正 「いちち……何度も落ちた所為で背中が痛いよ……」 むう、せっかく人が『霊幻道士』の修行の音まで月奏力で醸し出してやったのに。 彰衛門「そうか、どれ……見せてごらんなさい」 アタイは小僧の背中に手を触れ、そこに月生力を流し込んだ。 隆正 「え……あれ!?痛くない……」 彰衛門「ほっほっほ、じいやは軽いことならばなんでも出来るのじゃよ。     あ、だが先に言っておくがの、     死人を蘇らせる術はまだ身につけておらぬのじゃ。無理を言ってはいけませぬ」 隆正 「そ、そっか」 いきなり言われそうだったことを先手を打って封じた。 すまんの、やろうと思えば出来なくはないのじゃが……ぬか喜びはさせたくないのじゃ。 おそらく親御さんを生き返らせたかったんじゃろうが……グウム。 ───どんちゃかどんちゃ、どんちゃっちゃ。 彰衛門「む?小僧、なにやら向こうが賑やかだが」 隆正 「あ……儀式が始まったんだ。行こう、彰衛門」 彰衛門「御意」 Next Menu back