───馬鹿と梨の木───
儀式の祭壇の傍まで来ると、そこでは巫女装束のおなごが踊っていた。 彰衛門「いいぞー姉ちゃん!脱げー!」 隆正 「ば、ばかっ!なに言ってるんだよ!邪魔したらダメだって!」 彰衛門「グ、グウム」 神聖な舞いに横槍をさしてしまった。 彰衛門「んー……それにしてもあのオナゴ、苦しそうですよ?」 隆正 「うん、あの踊り、随分長い時間踊らなきゃいけないんだ。     それを踊りきれた時だけ、祝福が齎されるって聞いたことがあるよ」 彰衛門「なんと……だったら今回、あのおなごは人選ミスじゃな」 隆正 「え……どうして?」 彰衛門「どうやら病み上がりのようじゃ。あれではあと半刻も持ちますまい」 隆正 「そんなっ!な、なんとかならないかな彰衛門!」 彰衛門「……いま俺のこと便利な猫型ロボットだと思っただろ」 隆正 「なんだよそれ!今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ!?     亜小枝さん、今日をずっと楽しみにしてたんだ!頑張らなきゃって!」 彰衛門「ふむ、そうか……小僧、貴様の心、確かに受け取ったぞ。む〜ん……」 アタイは祭壇の影からそっと、影を送った。 月影力の要領だ。 みなさまには黙りたいことだが、アタイはもう月蝕以外は扱える。 彰衛門「もっとも、完璧とは言えんがね」 黙ってたほうが面白いから黙ってるだけだし。 彰衛門「……よし、影を繋げたぞ。あとは月生力を流し込んで……」 隆正 「あ、あ……亜小枝さんの踊り方が軽くなった!」 彰衛門「……ふう、成功じゃ。小僧、貴様の願いは叶ったぞ」 隆正 「ありがとう彰衛門!」 彰衛門「うむうむ。ところで……この舞い、あとどのくらい続くの?」 隆正 「え?まだまだだけど」 彰衛門「まだまだって……どのくらい?」 隆正 「空が白んでくる頃くらいじゃないかな」 彰衛門「ゲェーーーッ!!」 そ、それではそれまで俺に月生力を流せって言うんですかアータ! 彰衛門「………」 ふと見れば、祭壇の下の方では神を崇めるように村人たちが平伏している。 ……こんな状況で失敗に導ける筈もなかった。 しゃん、しゃん……しゃんっ。 空が白む頃、俺の髪の毛も白んできた。 月操力の使い過ぎの上をゆく過多だ。 さすがに3時間ぶっ続けで流すのは尋常じゃない。 隆正 「だ、大丈夫?彰衛門」 彰衛門「だ、大丈夫だよのび太くん……貴様の願いはきっと届く……」 ……しゃん。 舞子が舞う度に鳴る鈴の音。 そんな音を耳にしながら、俺はお花畑に居る心境に陥っていた。 と、そんな折。 隆正 「あ、もう終わるよ彰衛門!」 彰衛門「おお、ついに救いの時が……!」 隆正 「初めてだよ、舞いが最後まで成功したの!     うん、お話の中の純之上の時以来だ!」 彰衛門「そうかそうか。で?そのあと純之上とやらの場合、どうなったんじゃ?」 隆正 「神を授かったんだ」 彰衛門「………」 えーと、なにやらものすごーく嫌な予感がするのはどうしてでしょう。 と思った刹那、舞子さんの体に異変が起きた。 なにやら腹が大きく膨らみ……おお、妊婦さんのようです。 なんて思ってた時だった。 彰衛門「ご、ごわぁあああああああっ!!!」 急に力が吸い取られてゆく。 勝手に月生力を使われているような感じ。 隆正 「彰衛門!?なんか体が光ってるよ!?」 彰衛門「や、やぁあめてぇええーーっ!これ以上力を使ったらアタイ壊れちゃうーっ!」 そう懇願しても、力はどんどん消耗されてゆく。 彰衛門「ぎょよわえあよぉあおガァアアアアアアアアアッ!!!!!」 終いにはよく解らん奇声が喉から搾り出され、ようやくそれが治まった頃、 舞子さんの腹が元に戻るのと同時に、何もない空間に光が生まれた。 その光が弱まってゆくと……それが子供であることが確認できた。 村人A「おお……か、神の子だ!言い伝えは本当だったんだーっ!」 村人B「なんという素晴らしい日じゃ!みんな!今日は宴じゃー!」 村人達『おぉおおおおーーーっ!!』 祭壇の下で村人どもが歓喜乱舞する中、アタイの髪の毛は既に真っ白だった。 どんちゃかどちゃどちゃどちゃちゃちゃちゃーん♪ 村は祭り騒ぎのように熱くなっていた。 ああ、これで明日はホームランだ。 彰衛門「よく解らんがな」 たっぷりと睡眠をとったおかげで月操力も回復し、髪も元通り。 アタイは上機嫌で、既に一日が経過したにも関わらず祭りをしている村人を見下ろした。 彰衛門「見ろ、人がゴミのようだ」 ムスカくん発動。 だがなんとなく虚しかったので溜め息を吐いた。 隆正 「………」 小僧はというと俺の様子を見てくれながらも神の子が気になるらしい。 人々から『神の子じゃ〜』とばかり言われているソレは、 生まれた時には既に小僧に近い背格好だった。 恐らく動くのに不自由無いくらいまで一気に成長してから生まれたんだろう。 だが、あの舞子さんから生まれたのは事実。 しかし……舞子さんにまで『神だ』とか言われてるのは、ちょっとカワイソウだった。 隆正 「あいつ……可哀相だ」 彰衛門「む……」 小僧も同じ気持ちだったらしく、少々悔しそうに眺めていた。 彰衛門(……そっか、こいつ、親御さんが居ないから……) 産みの親ではある者に子として扱われない姿が可哀相に見えたのだろう。 神の子「………」 神の子は寂しそうに人垣を見下ろしている。 その先には産みの親も居るというのに、彼女は神としてしか彼女を見ていなかった。 あのくらいの子なら、親に甘えたい年頃だろう。 そう、たとえ神の子であってもだ。 彰衛門「……うむ」 俺は頷き、祭壇の裏から歩み出した。 隆正 「あっ……彰衛門!どこに行くんだよ!」 小僧がそれを口で咎める。 だが、下々のお方がこの祭壇に登るには、長い階段を登らなけりゃなりません。 つまり、ここに辿り着かない限りは誰にも邪魔は出来んのだ。 彰衛門「ふはは!この馬鹿どもめ!神の子はこの弓彰衛門が頂戴した!」 神の子を着物の袖でやさしく包み、そう叫ぶ。 村人 「なっ……!」 下々で村人どもが驚愕の声をあげる。 彰衛門「おっと!動かないでもらおうか!     ちょっとでも祭壇に近づけば……この子の命は無いと思え!」 村人 「ぐっ……」 男  「あっ!あいつはあの時の!」 男三 「やはり妖怪だったのか!くそ!」 彰衛門「誰が妖怪だこの野郎!!」 男  「うるせぇこのクズが!」 男ニ 「人として恥ずかしくねぇのかカス!」 助六 「いっぺん死ねバケモノ!」 彰衛門「わぁ、人々が俺を尊い敬ってる」 男  「なめんじゃねぇ!誰がてめぇなんかを!」 男ニ 「死ねカス!」 男三 「ボケ!」 ウヒョオ……すごい人気ですよこれは。 神の子「……?」 神の子はきょとんとした顔で俺を見上げた。 ……うん、ほんとちっこい。 彰衛門「言わせておいてあげなさい。きっとボクラの関係に嫉妬してるんです」 隆正 「な……なにやってるんだよ彰衛門!そいつを頂戴するってどういうことだよ!」 彰衛門「フフフ、小僧!黙っていたがワシは最初からこれが目的だったんじゃあああ!」 隆正 「そ、そんな……ウソだろ!?」 彰衛門「ウソじゃ」 隆正 「………」 わぁ、思いっきり睨まれてる。 彰衛門「えーと、キミ?名前はあるかね?」 神の子「……うー、あーう……」 彰衛門「……むう。どうやら身体は子供だが思考はまだ赤子並のようで」 神の子「あーう……う……うー……あきえもん、あきえもん」 彰衛門「むお!?いきなり名前を言いましたよ!?こ、これキミ!キミに願いがある!     ワシをパパと呼んどくれ!」 神の子「あう……あきえもん、あきえもん」 アタイを指差してあきえもんと言う神の子。 ああ、母性に目覚めちゃいそうなくらいカワイかぁ……! 彰衛門「ち、違う違う、パパだ、な?わかるでしょ?」 神の子「あーき、え、もん……?」 彰衛門「違う違う、こうだって。     手本見せるから、アタイの言うことをよっく覚えなさい」 神の子「あい……」 彰衛門「ん……ん゙ん゙!!」 喉を鳴らす。 この小娘の学習能力もさることながら、 カワイサと言ったらステキなくらいカワユイですよ? テイクアウトしたくらいです。 彰衛門「ではいくぞ?えー……」 神の子「?……えー……」 彰衛門「お、俺を不老不死にしろーーっ!!」 神の子「………」 わあ、呆れられてしまった。 隆正 「……なに言ってんだ?」 彰衛門「いや、言わせてみたかったもんで」 神の子「お、おー……おーれ、を……ふろう……?」 隆正 「わっ、ダメだって!こんなヤツの言うこと真に受けちゃ!」 彰衛門「どういう意味だそりゃあ!」 神の子「……あう、う、……っ♪」 彰衛門「お?なんぞね、笑っておるのかね?」 神の子「きゃふふっ♪あはははっ」 彰衛門「……教師生活20余年……こんな物覚えのいい生徒をもって、ワシは幸せじゃ」 隆正 「なんだよそれ」 彰衛門「知らん」 小娘は我らの会話からどんどんとモノを覚えてゆくのだ。 その順応性といったら、かなりのものだ。 神の子「ねー、あきえもん」 彰衛門「なんですか?」 神の子「……うー」 彰衛門「なんぞね!話し掛けといてふてくされるとは!」 神の子「なんですか、きらい。なんぞね、のほうがすき」 彰衛門「………」 ふむ。 どうやら無意識に敬語使われるのが嫌になったようだ。 彰衛門「いやいや、これは敬語とは違うんじゃよ。言うなれば俺様語?」 神の子「おれさまご?」 彰衛門「ザッツライト!故に俺は美しい」 神の子「ゆえにおれはうつくしいー」 彰衛門「真似するでない!」 神の子「まねするでない!」 彰衛門「グッグゥム……」 神の子「ぐっぐぅむ……」 ……どうやら一生懸命学習中なようです。 だってさ、このアタイがからかわれてる。 神の子「あきえもん、ねぇあきえもん」 彰衛門「なんじゃい」 神の子「あきえもん、おもしろい」 彰衛門「俺はそんなに愉快な顔をしてないが」 神の子「おもしろい」 つんつんと俺の頬をつつく小娘。 彰衛門「なにをなさる!」 神の子「ほっぺ、ふにふに〜」 彰衛門「……なんとまあ……マジすか」 ほっぺ、などと……知らぬ言葉までどんどんと覚えていっておるわ。 すごいですよこの娘。 彰衛門「───む!」 祭壇の下の方で喧噪がふくらんだ。 どうやら強行突破に出たらしい。 彰衛門「……小僧!」 隆正 「………」 彰衛門「小僧!!」 隆正 「わっ、な、なんだよ」 彰衛門「小娘に見惚れるのは勝手だが、ちょいと頼まれてくれや」 隆正 「見惚れっ……!?そ、そんなんじゃ……!」 彰衛門「えーがらえーがら!ほれ、この木刀をくれてやる!     彰利七つ道具の壱だ!中学時代の思い出の品ぞ!?これで俺を叩け!」 隆正 「え……どうして」 彰衛門「はやくしろ!時間が無い!」 隆正 「っ……!」 小僧が少しビクッとし、やがて木刀を構えた。 神の子「あきえもん……?」 彰衛門「すまんね小娘。これしか方法がなかったんじゃ……。     強く生きなさい。わしはもう……貴様に教えることはなにもない」 神の子「え……」 彰衛門「小僧、これからはお前がこの小娘に微笑みを与えてあげなさい。     そして、ことあるごとに守っておあげなさい。     貴様はこれから英雄になる。それは、多分良い方に動いてくれる。     そして小娘。これからはなるべくこの小僧と一緒に居なさい。     この小僧はとても澄んだ心を持っている。     きっと、あなたの心を満たしましょう」 隆正 「英雄……?」 彰衛門「時間がない、早くやりなさい」 隆正 「でも」 彰衛門「やらんかぁーーーっ!!」 隆正 「っ!え、えいっ!」 どすっ。 小僧が遠慮がちに木刀で叩いてきた。 彰衛門「ぐわぁああああーっ!おのれっ、こんなところに伏兵がいようとはーっ!!」 隆正 「えっ……?」 俺は大袈裟に叫び、村人に聞こえるように言った。 そして祭壇の階段を転がり落ちる。 隆正 「彰衛門!?」 小僧が転がる俺を見下ろす。 その後ろでは転がる俺を見て泣きそうになる小娘が居た。 ……うむ、守ってやったみたいでステキじゃない。 村人A「おお!神の子は無事だぞ!」 村人B「よくやったぞ隆正!」 隆正 「え……まさか!」 ギャア!気づいちゃならねぇ! 彰衛門「ふんっ!」 俺は慌てて体勢を立て直し、何かを言おうとする小僧に首を振った。 隆正 「───!」 彰衛門「……小僧、小娘、達者で暮らすのですよ……」 村人達には見えないように笑いかけてやり、俺は村人の波に走った。 村人衆『このガキャーーーッ!!』 彰衛門「ふはは!来るがいい!そして我が名をその身に刻み込め!!     我は弓!字は彰衛門!!時を駆ける覇者、弓彰衛門ぞ!!     我が拳の名の下に、貴様らの代表に一騎打ちを申し込む!さぁ、前に出」 ドゴッ!ゴスボゴッ! 人の話も無視してことごとく皆様がボコってくる。 彰衛門「ギャア!?こ、これ!まだセリフが残って」 ドゴッ!ドスドスベキボキ!!ゴキッ!! 彰衛門「イギャアアア!骨!骨折れたって今!ま、待───キャーッ!!」 ひとりの男が刀を振りかざした。 くそっ!神の子の前で人を刺す気かこいつ! 彰衛門「───!」 隆正 「───あっ!」 俺は小僧にアイコンタクトを送った。 振りかぶられる刀に、その先に居る俺。 その状況を見て悟った小僧は、小娘を抱くようにして視界を遮り───ズバァッ!! 彰衛門「かっ……」 次の瞬間、俺の肩から腹にかけて、刀が落とされた。 隆正 「う、うわ……うわぁあああああああああっ!!!!!」 そこから鮮血が吹き出す。 幸い、心の臓とは別の部分だったから即死は無かった。 ゼノの時みたいなのは勘弁だしな……。 彰衛門「……フフフ、ド、ドジこいちまったぜ……」 ……ドサ。 最後に、祭壇の上で涙を流しながら俺の生き様を見ていた小僧に、 『余計なことは話すな』という合図を送って、俺は死んだフリをすることにした。 それはもう、小僧さえも騙す勢いの死んだフリを。 ───どしゃっ。 村人A「ケッ、せっかくの神を祭る儀式に水差しやがって。     そこで鳥のエサにでもなりやがれってんだ」 アタイの体は村の外れにある林の先にある川に捨てられた。 ムラビトンは唾を吐きつつ去っていき、アタイは急いで傷を治す。 彰衛門「ふう、急死に一生ですよ?」 だがまあ予想通り、小僧は小娘を救った者として、中々の待遇を受けたようだった。 長続きはせんだろうが、そういうのもたまにはいいだろう。 彰衛門「さて……小僧には辛い場面を見せたからな。     無事だということだけでも知らせるか」 こうして再び、村に潜伏することを決意した。 彰衛門「フフフ、なんとも警備の薄い村よ」 当然ですが。 オールバック風味にキメていた髪を下ろしただけで、俺だって気づかれてませんよ? 服は洗って乾かしたし。 彰衛門「さて……小僧はどこかね」 ひとまずは祭壇の裏手の山に行くことにした。 梨が生っている木がある。 その木の上で小さく泣いている影ふたつ。 彰衛門「これ、そこは危ないよ、降りといで」 隆正 「うるさいっ!あっちいけっ!」 神の子「……っ……っ」 グウム、どうやら俺だってことすら認識してもらえてないらしい。 神の子「あきえもん……しんじゃったの……?     あのひとたちにころされちゃったの……?」 隆正 「う……」 神の子「たかまさも、あきえもんがきらいだったの……?だから……」 隆正 「そんなわけあるか!俺は……俺は彰衛門に何かしたいくらいだったんだ!     だから言われたことはやろうって思ってたんだ!それなのに……」 神の子「………」 隆正 「村の人が……まさか、人を殺すなんて……思わなかったんだ……」 ……どうやら相当なショックを受けてしまったらしい。 こりゃいかんなぁ。 神の子「あきえもん……」 彰衛門「呼びましたか?」 隆正 「うるさいな!あっちいけったら!」 彰衛門「うおう……」 人を見もしないでそれはヒドイんじゃない? こうなったら…… 彰衛門「あ゙〜……」 神の子「っ!」 まず、小娘が驚いた。 驚いて、小僧の腕にしがみつく。 隆正 「な、なんだよ」 神の子「いま、なにかきこえた……」 隆正 「気のせいだろ」 彰衛門「あ゙〜……」 神の子「ほ、ほらっ!」 隆正 「な、なんだよ……うわっ!?」 小僧が俺を見下ろして驚いていた。 髪を下ろした上で、わざわざ腕に傷をつけて塗りたくった血で顔を染め、 のそりのそりと歩く俺を見て。 隆正 「な、なんだこいつ!」 神の子「……!」 彰衛門「あ゙〜……」 ゾンビ風に演出してます。 ステキすぎです。 彰衛門「あ゙〜……」 木の幹まで歩き、ふたりの足に手を伸ばす。 隆正 「うわっ!」 神の子「ひぅっ……!」 彰衛門「あ゙〜……あ゙〜」 がしっ。 神の子「っ……!やっ……やぁああっ!」 隆正 「!や、やめろ妖怪!」 ごすがすっ! 彰衛門「あ゙〜……!」 小娘の足を掴んだアタイの手を容赦なく蹴りつけてくる小僧。 だがそんなものは無視して小娘を引きずり下ろした。 神の子「やっ……やぁああっ!!やだぁあっ!たすけて、たすけてあきえもんっ!」 彰衛門「あ゙〜……」 むう、なんとかわいいヤツよ。 土壇場でアタイの名を呼んでくれるとは。 もう抱き締めちゃいたい♪ ぎゅむ。 神の子「うっ……うわぁあああああああんっ!!」 わぁ泣かれた! 隆正 「このっ……!そいつを離せっ!」 小僧が木から飛び降り、ライダーキックばりのポーズでアタイをゴシャア!! 彰衛門「あぶあ!」 おもいっきりキマりました。 思わず吹き飛ぶほどです。 ですが小娘に怪我をさせたとあっちゃあアタイの名折れ。 倒れる寸前、抵抗力ゼロでやさしく小娘を地面に座らせズシャアアアアッ!! 彰衛門「あごごががぁあっ!」 神の子「え……?」 あいたたた……顔面を思いっきり擦ってしまいましたよ。 隆正 「こいつにはもう指一本触れさせないぞ!」 彰衛門「あ゙〜……?」 隆正 「彰衛門が俺に言ったんだ!これからはおまえがこいつを守れって!だから……」 彰衛門「あ゙〜!」 がしぃっ! 隆正 「ひっ……!」 神の子「っ!」 小僧に掴みかかる。 彰衛門「あ゙〜……」 隆正 「に、逃げろ!こいつは俺が抑えておくから!」 神の子「で、でも……」 隆正 「早くしろ!」 神の子「う……」 彰衛門「あ゙〜!」 がぶり。 隆正 「うあぁああああっ!!」 神の子「たかまさっ!」 軽く噛んだだけでこの驚きよう。 うむ、恐怖は場の雰囲気を盛り上げるようです。 隆正 「なにやってんだ……早く逃げろよぅ……!」 神の子「う、う……」 小娘がジリジリと後退る。 そんな折、アタイは小僧には見えないように顔の血を拭い、髪を元に戻した。 神の子「あ……」 彰衛門「し〜っ♪」 そして、小僧には見えないように小娘にシャラップの合図。 神の子「………」 すると安心したのか、涙を流しながら微笑む小娘。 隆正 「早く逃げろってば!」 そして必死に小娘を守ろうとしている小僧。 ……うむ、それでこそ男だ。 だが! 彰衛門「フンッ!」 ババッ! 隆正 「あっ……うわっ!」 俺は小僧を素早く倒し、それを掲げるように技を仕掛けた。 彰衛門「轟天弦月流奥義!ロメロスペシャル!」 大地を背に、小僧を天高く持ち上げる。 隆正 「いぐっ……う、うわぁああっ!」 彰衛門「ほぅ〜れ!ほれほーれほーれ!」 メキメキッ、コキン。 隆正 「あがぁあ!うぁああああああーーーっ!く、くそ!この妖怪!」 彰衛門「誰が妖怪だこの野郎!」 隆正 「え……?」 グキキッ。 隆正 「おごおわぁああああーーーっ!!」 彰衛門「痛いか?ン?痛いかぁ〜?」 隆正 「その声……ま、まさか……あきえ」 メキッ。 隆正 「おわぁあーーーーーっ!!」 ……むう、これ以上はさすがに危険か。 俺は小僧を離すことにした。 隆正 「う、うぐぐ……あれ?痛くない」 彰衛門「既に治してありますゆえ」 隆正 「お、お前なぁ!……あ、彰衛門……?」 彰衛門「左様」 隆正 「おばけじゃないよな?」 彰衛門「誰がおばけだこの野郎!」 神の子「……クスクス♪」 視界の端で、小娘がクスクスと笑っていた。 うむ、どうやら元気になったようだ。 隆正 「生きて……生きてたんだなっ!?」 彰衛門「実はもう死んでいてな……お別れに来たんじゃ……」 神の子「!」 隆正 「そんなっ……うそだろ!?」 彰衛門「ウソじゃ」 隆正 「っ!」 ボゴォッ! 彰衛門「ヘンリーッ!!」 思いきり殴られてしまった。 隆正 「しっ……心配したんだぞっ!     それなのに……うそばっかり言わないでくれよぅ……!」 彰衛門「いえですね、あたしゃあ場の雰囲気を」 隆正 「うるさいっ!」 彰衛門「キャア!?」 あーあ、怒られちった……。 神の子「あきえもん……いきてた……」 彰衛門「フフフ、小娘よ。俺様はそげに簡単にゃあ死なねぇのよ。     なんてったって魔法使いですから。     ごらん?この木だってアタイが生やしたのよ?」 神の子「ふぇ……」 小娘が梨の木を見上げる。 そして驚いたように声を漏らした。 彰衛門「すごかろ」 神の子「すごいすごい!どうやったの!?」 彰衛門「うむ、まずはだね……」 こうして俺は小娘に種の育て方を教えることとなった。 Next Menu back