───自己紹介惨殺未遂劇場───
スゥ、と襖が開く。 その視界の先に、楓巫女は居た。 楓巫女「あっ……」 まず目につくのが涙。 そして、不安と期待に染まった瞳。 『許してくれるのかな』『まだ怒ってるかな』『嫌いにならないで』 様々な心の気配が入り乱れている。 ……うむ、ちゃんと反省したようじゃな。 彰衛門「楓巫女」 楓巫女「っ……!」 手を伸ばすと、体をビクッと強張らせた。 彰衛門「ほっほっほ、楓巫女?じいやが楓巫女を叩いたことがありましたかな?」 楓巫女「うくっ……で、でも……怒ったことなかったのに……怒った……」 彰衛門「あれは楓巫女が自害したからですじゃ。     あんなものは、どんな理由があるにせよやってはいけないことなのですじゃ。     じいやは、楓巫女に良い子に育ってほしいと願ってましたじゃ。     それなのに、一番やってはいけないことをしましたじゃ。     だから、じいやは心を鬼にして楓巫女を叱ったのじゃ……」 楓巫女「うん……」 彰衛門「……大丈夫。もう、怒っておりませんよ」 楓巫女「……ほんと?」 彰衛門「ほんとですとも。さ、おいで……」 楓巫女「っ……!!」 軽く両腕を広げると、楓巫女はすぐさま飛びついてきた。 楓巫女「ご、ごめっ……ごめ……なさい……!!」 彰衛門「これこれ……。     じいやはもう怒ってないのですから、謝る必要などないのですよ?」 楓巫女「や……!やなの……!また会えたのに嫌われたら……     おとうさんいない……そんなのヤ……やぁああ……っ!!」 彰衛門「………」 やりすぎたか。 だがしかし、もう二度とあんなことはしてほしくないから。 ひとりになって嫌なのは、なにも楓巫女だけではないのだから。 彰衛門「……楓巫女。じいやとて、ひとりにされた時は……とても辛かったのです」 楓巫女「うん……うん……」 彰衛門「ですから、約束してくだされ。もうあのようなことはしないと。     ひとりで居ることの怖さを知る者が、     ひとりで居ることの怖さを教える者にはならないでくだされ……」 楓巫女「あ……」 楓巫女はハッとしてアタイを見上げた。 アタイはそんな楓巫女の頭をやさしく撫でて、微笑みかけてやる。 ……つくづく、娘には甘くなりそうだ。 楓巫女「え、えへへ……♪」 楓巫女はまだ残る涙を拭わず、顔を赤くしてアタイに頬を擦りつけてきた。 うむ、まるで子猫だ。 彰衛門「ところで楓巫女?ここは……あの村なのじゃな?」 楓巫女「……うん。焼かれた村を建て直してから、もう永い時が経った時代……」 彰衛門「そうかそうか。じいやもあの大樹を見て解りましたじゃ……てゆうか」 ほんと、どっかで見た気がするんだよなぁ、この場所も、あそこにある大樹も。 いえ、過去で見たってゆう安直なことじゃなくてね? 彰衛門「それはそれとして、楓巫女」 楓巫女「あう……あ、あのね、彰衛門」 彰衛門「なんじゃね?」 楓巫女「……んと……」 彰衛門「大丈夫じゃ、怒りませんよ。じいやは楓巫女の味方じゃ」 楓巫女「う、うん……あのね……?わたし、もう楓巫女じゃないの……」 彰衛門「む?」 楓巫女「わたし、今は楓……簾翁楓……」 彰衛門「……むう、そうじゃったの。話は夜華さんから聞いておりますじゃ」 楓  「ごめんね、彰衛門……せっかく名前、つけてくれたのに……」 彰衛門「構いませんですじゃ。生まれ変われば名も変わるものです。     それに……楓は変わらず、カワイイからのぅ」 楓  「わっ……」 楓をやさしく抱き締め、再び頭を撫でる。 楓  「………」 彰衛門「楓?」 楓  「……すぅ……くぅ……」 彰衛門「なんと!寝ておいでか!」 むうう、撫でている途中で寝るとは。 まあいいコテ、寝かせておいてあげましょう。 彰衛門「寝顔もまたラブリーだ。100点ですよ、楓」 思わず顔を緩ませながら、アタイが寝ていた布団に楓を寝かせシャァッ───ストン! 彰衛門「む?」 襖……てゆうか障子の開く音がしたので振り向いてみる。 すると 夜華 「あ、彰衛門。少々話がギャアアーーーッ!!!」 彰衛門「へ?」 夜華 「き、貴様!楓さまに何をする気だ!!」 彰衛門「なにって……」 マジマジと現状を思い返してみれば、 眠っている楓を寝かせ、その楓に向けて顔を緩ませているアタイ。 ……冷静に考えると寝込みを襲おうとしているように見える。 彰衛門「なっ!ば、馬鹿違うわ!!」 夜華 「慌てたな!?貴様やはりやましいことを!」 彰衛門「やましくなんかありませんよ!失礼だぞキミ!!」 夜華 「黙れ!ならば貴様は何をする気だったのだ!」 彰衛門「なにって……あなたの知らない世界」 夜華 「ごっ……ごごおがぁああああああああああっ!!!!!」 彰衛門「キャーッ!?」 突然、爆発でもするかのように顔を真っ赤にした夜華さんが咆哮した。 彰衛門「アイヤーッ!?ま、待て落ちつけ!アナタ絶対勘違いしてるヨー!!」 夜華 「だ、だだだだだ黙れ!わ、わたしとて男との関係のひとつやふたつ……!」 彰衛門「キャア大胆発言!でも違う!アタイが言ってるのは『子守り』のことヨー!」 夜華 「こっ……!?」 彰衛門「子守り」 夜華 「………」 夜華はアタイの言葉にポカンと口を開けた。 どうやら本気で勘違いしていたらしい。 彰衛門「……夜華さんたら、見かけによらず男遊びが上手なのね♪」 そんな彼女の肩にポンと手を置き、言ってやった。 すると 夜華 「おっ……おがぁあああああああああっ!!!!!」 彰衛門「うっ、うおっ!?うぉおおおおおおおおわぁああああああああっ!!!!」 重病患者のように顔を真紅に染めた夜華さんが刀を抜いて襲いかかって 彰衛門「きゃぁーーーーーーあああああああああああっ!!!!!」 ザシュドシュズバッザクシュッ!!ドシュドシュドシュ!!!! 彰衛門「……えーと。それでアナタが男性経験豊富な夜華さんで」 夜華 「だ、黙れっ!わたしに男など居ない!!」 あれから散々刺されたが、その騒ぎ……というかアタイの悲鳴で目を覚ました楓が、 自己紹介をしましょう、と提案してきたので今はその最中である。 彰衛門「なんと!では貴様は仕える者の前でウソをついたのかね!!」 夜華 「あ、ぐ……そ、それは……」 彰衛門「キャアア!この忠誠心0娘!カスめ!カスめ!」 夜華 「カスと言うな!!それにわたしは楓さまのためなら死すら」 彰衛門「たわけ!!」 夜華 「なっ……!?」 彰衛門「そうやすやすと『死』などと言うものじゃありません!!」 夜華 「だ、だがわたしは楓さまへの忠誠の旨を……」 彰衛門「おやめなさい!そのような忠誠は主に失礼じゃぞ!」 まったく何を考えておいでか!この娘ッコは! 夜華 「そんな……!楓さま、わたしは───」 楓  「夜華。わたしも、彰衛門と同じ意見です」 夜華 「───!」 楓  「わたしは夜華に死んでもらいたくありません。     傍に居る人が死ぬことは、自分の中にあった『自然』が消えることと同じ。     わたしは、そんなことは嫌です」 夜華 「楓さま……」 楓  「夜華、これは『友達』としてのお願いです。     もう、『死ぬ』だなんてことは言わないで」 夜華 「友……は、はっ!もったいないお言葉です!」 ……友として見られてる自覚、ゼロじゃな。 彰衛門「のぅ、夜華さんや」 夜華 「なんだ」 うおう、いきなりドスの利いた声に変換? 彰衛門「貴様にステキな愛称をやろう」 夜華 「愛称……?」 彰衛門「そうじゃ!忠誠心零子(ちゅうせいしん ぜろこ)!ステキでしょ!?」 夜華 「な……何度言えば解るのだ貴様!     わたしは楓さまのためならどんなことでも出来るぞ!!」 彰衛門「なにぃ、そうなのか」 夜華 「当たり前だ!」 彰衛門「……ふむ」 楓  「?」 アタイは楓にチョイチョイと、こっちに来るように手招きした。 楓  「!」 それを見た途端、楓は俺に抱き着いてきた。 夜華 「ぬがっ!?」 夜華さんはそれはもう驚いている。 彰衛門「というわけで」 アタイは持っていた木刀を楓に突き付け、ニヤリと笑った。 彰衛門「ふはは!一歩でも動けばどうなるか解っているな!」 夜華 「なに!?き、貴様楓さまをどうする気だ!」 彰衛門「撫でる」 夜華 「なにっ!?」 なでなでなで……。 楓  「…………♪」 夜華 「ご、ごがが……!」 彰衛門「ごらん、このなんとも気持ち良さそうな笑顔。     貴様も撫でたいか?ン?撫でたいかぁ〜?」 夜華 「なっ!なななにを馬鹿なことを!     わたっ、わたしは楓さまに仕える身であって、そのようなことは……!」 彰衛門「でも……本当は撫でたいんじゃろ?」 夜華 「当たり前だ!」 彰衛門「ダメじゃ」 夜華 「ごっ……ごがぁあああああああああっ!!!!!」 夜華さんが顔を真っ赤にして地団太を踏む。 やがて刀を手に 彰衛門「おやめなさい!」 夜華 「ごが!?」 彰衛門「その刀、少しでも抜けば……アタイの豪腕が楓の首を……!」 夜華 「なっ……!や、やめろ!」 彰衛門「撫でますよ?」 夜華 「なに!?」 なでなで……こちょこちょ。 楓  「あっ!あうっ!う、うくっ……!」 夜華 「ごっ……おぉわぁあああああああああっ!!!!」 彰衛門「ふはは!見たまえ!このくすぐったそうな顔を!     羨ましいか!?えぇーっ!?羨ましいかね!!」 夜華 「こ、このっ!貴様斬る!!」 彰衛門「おやめなさいと言っとるでしょうが!」 夜華 「ぐっ……!」 彰衛門「これが最後の忠告です。     それ以上刀を抜けば、楓が泣くことになりますよ?(くすぐりで)」 夜華 「なっ……!」 彰衛門「しばらく立ち直れないかもしれませんなぁ〜。ン?それでも……抜くかね?」 夜華 「くっ……!な、なにが目的だ!」 彰衛門「ン〜、話が早くて助か……早いか?まあいいや、助かるわぁ〜♪     それじゃあまず……」 夜華 「な、なんだ」 彰衛門「脱げや」 夜華 「!!」 キヒィンッ!! 彰衛門「おわぁーーーっ!!」 再び髪が飛んだ。 屈まなければ首が吹っ飛んでましたよ!? 夜華 「き、きっ……貴様!斬る!!」 彰衛門「お、おっとこいつぁいけません。完全にキレてらっしゃる」 夜華 「おがぁああああああっ!!!」 彰衛門「っはは〜っ!逃げるぞ楓〜♪」 楓  「きゃ〜っ♪」 楓を抱えて、夜華さんから逃げ出す。 夜華 「まて貴様!おのれおのれぇええっ!斬る!成敗してくれる!」 彰衛門「きゃ〜、やめて〜、男性経験豊富な夜華さ〜ん♪」 夜華 「うっ……うがあああああああああああっ!!!!!!」 涙目になりながら顔を真っ赤にして斬りかかる夜華さんは、 それはもう恥ずかしさの塊のようなものだった。 あんまりに恥ずかしくて泣いて、しかもキレてしまったらしい。 ……うむ、こやつはからかい甲斐がありますぞ。 100年に一度の逸材じゃあ!ズバァッ! 彰衛門「キャーッ!?」 夜華 「わたしだって好きでひとり身で居るわけじゃないぃっ!!!」 彰衛門「キャア!それって行かず後家!?」 夜華 「───っ……う、うわぁあああああああああんんっ!!!!」 彰衛門「アイヤーッ!?地雷踏んじゃったヨー!!」 楓  「きゃーっ♪きゃ〜っ♪」 逃げ惑いながら背中を斬られまくる中……楓は終始、満面の笑顔だった。 自己紹介の仕切りなおしです。 彰衛門「……それで、えーと……行かず後家で男性経験豊富な夜華さん」 夜華 「ッ!」(ギンッ!) 彰衛門「……は、置いといて」 夜華 「先ほど説明しただろう!わたしは元服を迎えてからまだ2年だ!」 彰衛門「元服って成人式みてぇなもんでしょ?     それから2年って……キャア行かず後家!」 夜華 「う、うるさい!守衛の仕事で嫁ぎが遅れるのは仕方の無いことなんだ!」 彰衛門「やぁねぇ、モテねぇからって仕事の所為にする人って……」 夜華 「ご、ごがぁああああああっ!!!」 夜華さん、再びキレる。 そして追われる俺を見ている楓は、もはや抱腹絶倒だ。 ほんと、さっきから笑いっぱなし。 夜華 「………」 彰衛門「む?」 そんな楓を見ていたら、夜華さんの攻撃が止まった。 夜華 「……不思議な男だな、貴様は」 彰衛門「じいやは普通ですぞ?」 夜華 「笑顔もなく、ただただ凛々しく、     誰にも甘えることのなかった楓さまが、貴様の前ではまるで子供のようだ……」 彰衛門「そう思うなら『貴様』ってのをやめない?きっと良い言葉に聞こえるよ?」 夜華 「それに、楓さまは先ほど眠っておられた。     ここ数日、眠ることもなかったというのに」 無視された……。 彰衛門「しかし、眠っていなかったとな」 夜華 「ああ。楓さまは神の降臨の儀式を行なうために、     もうずっと眠っていないのだ。     ……いや、眠ろうとしても眠れなかったのだ。     恐らくこの村の人々の期待に答えたい気持ちと、     自分にかかる責任のためだろう……ひどい話だ」 彰衛門「まったくだ……アタイの話は思いっきり無視してたのに、     楓の話になったらいきなり返事をするなんて……ほんとひどい話だ」 夜華 「……おい、なんの話をしている」 彰衛門「夜華さんがなかなかのボインで、男性経験豊富な行かず後家だって話」 夜華 「それはもう忘れろと言っている!」 彰衛門「言われてませんよあたしゃあ!!なんザマスのこの娘ったら!」 夜華 「〜〜……い、いやいい。貴様と言い合っていても疲れるだけだ」 夜華さんは心底疲れたように息を吐いた。 楓  「で、でも……夜華のそこまで元気な姿を見るのは、わたしでも初めてですよ?」 夜華 「なっ……」 笑いの涙を瞳に溜めながら、楓がそう言った。 そんな言葉に、アタイはひとつの結論を見出したのじゃった……! 彰衛門「そ、そうか……!普段は猫被ってたのかこの最低娘め……!」 夜華 「わたしは普段通りだ!貴様が調子を狂わせているだけだ!!」 楓  「くふっ……くふふふふ……♪」 夜華 「か、楓さま……!?」 ポム。 彰衛門「おい……笑われてんぞ?」 肩に手を置いて、見下しながら言ってぱぐしゃあ!! 彰衛門「ギャア!?な、殴ったな!?     グーで殴ったな!?ママにもぶたれたことないのに!」 夜華 「黙れ!」 彰衛門「夜華さんてば大抵、二言目が『黙れ』よね」 夜華 「だ、だまっ……」 彰衛門「ホレみろ」 夜華 「ぐ、ぐぬぬぬ……!!」 顔を真っ赤にしてアタイを睨む夜華。 こんなにまで顔に血を巡らせて大丈夫なのかこいつは。 彰衛門「ま、とにかくやりましょか。じいやは弓彰衛門。魔法使いですじゃ」 楓  「わたしは簾翁楓。魔法使いです」 夜華 「え?あ、えと……篠瀬夜華……魔法使いです」 彰衛門「うそおっしゃい!!」 夜華 「な、なに!?こう言えということではなかったのか!?」 彰衛門「違いますよ!貴様は守衛者でしょう!?」 夜華 「だ、だが楓さまが」 楓  「わたしは癒しの巫女ですから」 楓がクスクスと笑う。 夜華 「は……そ、それで魔法使いですか……」 彰衛門「……む?癒しの巫女ということは……」 楓  「うん。もう夜華は知ってるの」 彰衛門「そうかそうか」 楓  「あ、でもね、ちゃんと魔法使いです、って言ったよ?」 彰衛門「うむ、じいやとの約束を守ってくれたんじゃな?良い子じゃ」 なでなで…… 楓  「えへへ……♪」 夜華 「グッ……グムムウウ……!!」 撫でられる楓の幸せそうな顔を見て、 何故かコメカミあたりをミチミチと鳴らす夜華さん。 ……なんか怖いから無視しましょう。 彰衛門「して?楓と夜華さんの関係はいつから?」 楓  「夜華はこの村に瀕死の状態で辿り付いた人なの。     その時、彼女を見つけたのがわたし。そしてこの社に運んで、癒したの」 彰衛門「ほほう、その時に癒しの力のことを悟られたと」 楓  「うん」 夜華 「楓さまはわたしの命の恩人だ。そして、とても寛大で清らかであった。     凛々しく、そしてやさしい楓さまに、わたしは仕えることを決めたのだ」 チキ、と刀を鳴らし、夜華さんが遠い目をした。 楓  「彰衛門、わたし、何度も『友達がいい』って言ったのに、     夜華ったら聞いてくれないんだよ?」 夜華 「め、滅相も無い!わたしは女である前に武士です!     仕えると決めた以上は仕えねば!」 彰衛門「これ、夜華さんや」 夜華 「なんだ」 彰衛門「脱げや」 ぱぐしゃあっ!! 彰衛門「ぶほっ!?ま、また殴りおった!」 夜華 「な、なななな……!いきなり何を言うのだ貴様は!」 彰衛門「あ〜ん?女である前に武士なんじゃろ〜?     だったら脱ぐことでそこまで恥じることなど無いのではないのかねぇ〜?     えぇ〜っ!?どうなんだい!」 夜華 「がっ……ぐ……!」 彰衛門「……言葉飾りなヤツ」(ボソリ) 夜華 「!!い、いいだろう!そこまで言うなら脱いでやるわ!!」 彰衛門「へ?あ、ギャア!こ、これ!おなごが人前で裸(ら)をさらすなど!!」 夜華 「貴様が脱げと言ったのだろう!」 彰衛門「バカモン!からかっただけじゃ!……あ」 夜華 「───……」 いやーん!つい口が滑っちゃった!! 夜華 「そうか……!貴様はわたしの武士としての心を弄んだのだな……!?」 彰衛門「違いますじゃ。ただ貴様が行かず後家で男性経験が」 夜華 「がぁああああああああああああっ!!!!!」 彰衛門「キャアーーーーアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」 今度の夜華さんは素手で殴りにきました。 よっぽど『攻撃をした』という実感が欲しかったようです。 やがて夜華さんの拳が血に染まる頃、 楓が慌ててそれを止めに入ることで、一応の自己紹介の幕は下りた。 ふと、意識が戻る。 彰衛門「う、むむ……」 ゆっくりと起きあがってみれば、そこは社の中だった。 彰衛門「む、むおお……」 どうやら夜華さんの熱い拳での語らいで気絶してしまったようです。 確実に急所のみを狙ってくる拳は、ブライアン・ホークじゃなくてもびっくりでした。 彰衛門「さてと」 社の中にはアタイしかおらず、楓や夜華さんはどこかに行ったのだということを確認した。 彰衛門「……んむ、大樹にでも行ってみますかぁ」 懐かしい思いを胸に、アタイは襖に手をかけ、外に出た。 彰衛門「むう……」 空からは眩しい光。 どうやら気絶してからそう時間は経っていないようじゃ。 彰衛門「………」 その場からでも見える大樹の木。 かつて、楓巫女のために作った大きな寝所だ。 おそらく、そこに入るために作った、 琥珀珠と翡翠珠を持っているヤツなんて、もう居ない。 彰衛門「……せっかく作ったのにのぅ。馬鹿なことをしおって」 少し寂しい気分に襲われながら、アタイは大樹のもとへと歩いた。 彰衛門「大樹である!」 当然だった。 彰衛門「グウウムムウ……!やはりどこかで見た気が……!     この枯れ具合といい、大きさといい……!」 むう……だが思い出せんものは仕方なきこと。 彰衛門「まずは中に入ってみますか」 草木の前に立つと、草木が横に分かれ、中に入れるようになった。 彰衛門「FUUUM……アタイの魔法も長生きするもんじゃねぇ……。     さてさて、中は……」 ……特になにもなかった。 むう、流石にもう楓も使ってないか。 彰衛門「そんじゃ、上の方はどうなったんかな」 アタイは『スキル:木登り』を発動させ、スルスルと登っていった。 そして隆正の部屋として作った場所では─── 楓  「………」 なんと、楓が寝転がっていた。 ……むう、実はラヴだったとか? まあそりゃあそうでしょうなあ。 寂しいだろうからって自害までしちまうんですもん。 彰衛門「………」 こうして、親離れしてしまうんじゃね、子供ってのは……。 あ、やべ……マジで涙が出てきた……。 これは悟られてはなりませんな。 もう下りるとしましょう。 声  「おーい貴様!そのようなところで何をしているー!」 彰衛門(ギャア!?) 下から聞こえる声に驚き、見下ろしてみれば……そこには怒り顔の夜華さん。 おそらくよそ者のアタイがうろちょろするのが気に入らないのでしょう。 声  「貴様!答えぬか!その木は」 彰衛門「ノゥッ!!」 アタイは枝を折り、それを夜華さんにドゴォッ!! ……バタッ。 彰衛門「成敗!」 ズビシィッ! 枝を投擲して夜華さんをやっつけたアタイは決めポーズを取った。 楓  「……誰?」 ギャア!?気づかれた!? 彰衛門「とんずらぁああーーーっ!!!」 三十六計逃げるが勝ち!! アタイは大いなる蒼空へと羽ばたいた。 とんでもない高さだが、計算が無いわけではないのだ。 彰衛門「彰利七つ道具の参、ふろしき〜♪」 大きな風呂敷を広げ、それをハットリ君風味に掴む。 あとは月然力・風で煽り、ゆっくりと降りるだけぞ! 彰衛門「おお……このそよ風のなんと心地良いことよ」 アタイは上手く風に乗り、ゆっくりと─── 彰衛門「ややっ!?」 その時、ロートのCMのように小鳥たちがアタイの横を羽ばたいた。 彰衛門「うおお、なんと美しい光景……!ア、アタイ、鳥になった気分……!」 ズボォッ! 彰衛門「ややっ!?───ゲ、ゲェエーーーーッ!!???」 何を思ったのか、小鳥の一匹が風呂敷に頭から突っ込んできた。 凄まじい勢いだったのか、風呂敷には穴が空き─── 彰衛門「て、てめぇ鳥この野郎!どこのスパイだぁああああっ!!!!」 やがて風を受けとめる場所が無くなったアタイは敢え無くドグシャアと落下。 彰衛門「ギャア!」 夜華 「うぶぅっ!!」 キャア!?ついつい夜華さんをクッションにしてしまったがよ! 彰衛門「や、夜華さん……身を呈してアタイを守ってくれるなんて……」 夜華 「お、おのれ貴様……!!おぼえて……おれよ……!」 彰衛門「忘れましたじゃ!」 夜華 「───」 がくっ。 彰衛門「キャーッ!?」 い、いかん!反応が無くなってしまった! 声  「誰か……居るのですか……?」 彰衛門「キャーッ!?」 いかん!楓が出てきてしまう! それイコール、アタイが覗いてたことがバレる! 彰衛門「すまん夜華さん!治療は別の場所でやるから耐えてくれ!」 アタイはぐったりと動かない夜華さんを背負い、その場から全力で逃げ出した。 ───…… 彰衛門「ベホイミ♪」 パァァァ…… 夜華 「ぐ、ううう……!!」 彰衛門「痛むか?痛むよなぁ……すまんな、俺が慌てたばっかりに……」 夜華 「……く、ふふっ……貴様が謝るとはな……」 彰衛門「もちろんジョークじゃ」 夜華 「じょーく……?なんだ、それは」 彰衛門「ウソのことですじゃ」 夜華 「き、貴様!ぐぅうっ!?」 アタイに殴りかかろうとした夜華さんが、痛みに顔を歪ませる。 彰衛門「これ!治療中じゃぞ!動くでない!」 夜華 「し、しかし……」 彰衛門「大の男を受けとめたんじゃ、普通なら内臓が破裂してもおかしくないほどじゃ」 夜華 「……受けとめた?なんのことだ」 彰衛門「覚えておらぬのか?貴様はアタイが大樹から落ちたのを見て、     身を呈して守ってくれたのじゃぞ」 夜華 「いや……覚えがないが……そうなのか?」 彰衛門「ウソじゃ」 夜華 「こっ、このっ!そうだ思い出したぞ!貴様わたしに木の枝を投げただろう!」 彰衛門「………」 ぬう、なんとも面倒なことを思い出しおってからに。 夜華 「なんとか言え!」 彰衛門「……武士のくせにあげなもんもよけられなかった」 夜華 「う……」 彰衛門「いえいえ、別に責めているわけじゃありませんよ。     ただですね、お願いがありまして」 夜華 「ね、願い?なんだ、言ってみろ」 彰衛門「……酒、飲める?」 夜華 「なに?」 Next Menu back