───ゴッド彰衛門の幻───
というわけで、アタイは腹が減ったので下界(村)に降り、 大根を食らっているわけですよ。 彰衛門「もお我慢できねぇなぁ〜!」 妖怪・腐れ外道の真似をして。 彰衛門「むう、しかし……ルナっちじゃないが、     おろしてから醤油をかけて食いたい味だなこりゃあ」 素の大根はそれはもう味気なかった。 男  「あ、お、お前!ワシの畑の大根になにをする!」 彰衛門「む!?」 声をかけられて振り向くと、クワを持ったじっちゃん。 彰衛門「どうも、神です」 男  「神……?ああ、あの神降ろしの儀式で現れた男か。     じゃがそんなことはどうでもいい、ワシの大根になにをする」 彰衛門「いえですね?こうして噛むことで、土の質を調べているのですよ。     この土ならいいサイバイマン……ゲフッ!ゴフッ!     えーと、いい食べ物が育ちましょう」 男  「あたりまえじゃ。ワシが毎日手入れをしていいるのじゃからな」 彰衛門「ですが、どうにも水分が不足している様子ですが?」 男  「ぐっ……ここ最近は雨が降らんからな……。地面も乾いてしまっておる。     だがお前さんには関係ないことじゃろう。     乾いた大根なぞ食っても足しにもならん!とっとと出ていってくれ!」 彰衛門「落ちつきなさいおじいさん。じいやは神ですよ?     お任せください、これくらいの干ばつ、癒してさしあげましょう」 男  「なに……?」 彰衛門「そぅーれ」 アタイは月操力を発動させ、 まずは月然力・水で地面を湿らせ、ミミズ様の行動を活発にさせた。 そしてその部分だけに月聖力を流し、よろしくない栄養は吸収しないようにカバー。 これで農薬いらずです。 この時代に農薬があるかどうかは知らんが。 そして次に月空力と月然力で自然の育みを促す。 するとその場にあった地面が潤い、次々と野菜が育ってゆく。 男  「お、おおおお……!!なんと……奇跡じゃ!」 彰衛門「楓さまに遣わされた神ですから」 男  「ありがとう、いや、ありがとう……!     これで孫たちにも食わせてゆけるわい……!」 彰衛門「いえいえ。ところで訊きたいのですが」 男  「おお、神様、なんでも聞いてくだされ!」 彰衛門「はい、それではお言葉に甘えて。     わたしの降臨の儀式の際、鮠鷹という人はいらっしゃいましたか?」 男  「鮠鷹殿……いいえ、彼は社には近づこうとはしないのです。ですから……」 彰衛門「そうですか、あの場所には居なかったと」 男  「はい、そうなります」 彰衛門「ありがとう、おじいさん。それではじいやはこれで」 男  「あ、ありがとうごぜえましたー!」 おじいさんに見送られながら、次に困っている人を探す。 どしゃっ。 小娘 「うわぁ〜ん!いたいよ〜!」 小僧 「あ、もう何やってるんだよ!ほら立て!」 小娘 「う、うあぁ〜ん!血が出てるよ〜!」 小僧 「泣くな!こんなのツバつけておけば」 彰衛門「おやめなさい!」 小僧 「え……?」 彰衛門「ふぁ〜ったくカスどもが……。ツバをつけて治る例は、     お口の中のエチケットが素晴らしい人のみなのですよ?     じいやに任せてみなさい、治してあげます」 小僧 「こらっ!カスってなんだ!」 彰衛門「知りません。さ、小娘、傷を見せてみなさい」 小娘 「うぐっ……い、いたいの……」 彰衛門「大丈夫じゃ、すぐに治してあげますよ……ベホイミ♪」 パァアアア…… 小娘 「え……あれ……?痛くない……」 小僧 「わ!傷が無くなった!」 彰衛門「ほら、もう大丈夫ですよ。痛くないでしょう?」 小娘 「うん!おじちゃんありがとう!」 彰衛門「おじっ……!?ど、どういたしまして……」 小僧 「すげー!なぁおっちゃん!どうやってやったんだ!?」 彰衛門「おっちゃ……!?あ、い、いえ……じいやは神ですから、     傷を治すことくらい簡単なのですじゃ」 小僧 「かみ……?あ、そういえばお前、かみおろしの儀式で頭から落ちたヤツ!」 彰衛門「左様。楓さまに呼ばれて降臨した神です」 小僧 「うさんくせ〜」 彰衛門「……このガキ」 小僧 「ん?なんか言った?」 彰衛門「いえ、なにも。とにかく神なのです」 ……同じ子供でも、楓巫女や隆正とはエライ違いの小僧です。 小僧 「……神っていうならさ、オイラのおっかあ、治してくれよ」 彰衛門「おっかあ?どうかしたのですかな?」 小僧 「病気なんだ。でも……オイラの家には薬を買うお金なんてないから……」 彰衛門「じいやを連れていきなさい!早く!」 小僧 「え?な、治せるのか!?」 彰衛門「当たり前ですじゃ!じいやはあれですぞ!?神ですぞ!?」 小僧 「う、うんっ!」 小僧は立ちあがり、やがて駆け出した。 小娘 「あっ、まってよおにいちゃーん!」 彰衛門「さ、小娘。じいやの背中に乗りなさい」 小娘 「え?いいの?神様……」 彰衛門「ほぉっほっほ、じいやは小娘のような純粋な心を持った者の味方じゃよ」 小娘 「ありがとー」 彰衛門「いえいえなんのなんの」 こうして小娘を負ぶったアタイは、 『ゴッド彰衛門創造計画』を着々と進めることにした。 小僧 「おっかあ!」 母  「う……ケホッ!コホッ!ど……どうしたの?そんなに大きい声を出して……」 小僧 「おっかあの病気、治るかもしれない!」 母  「……なんだって?」 小僧 「かみさまが来てくれたんだ!もう大丈夫!」 母  「そんな……神だなんて……」 彰衛門「チィ〜ッス」 あまり信用してない母を余所に、アタイはおよそ一番神らしくない言葉で挨拶した。 母  「あ、あなたは……?」 彰衛門「神です。楓さまに遣わされた」 母  「……あの、顔面から地面に衝突していた……?」 彰衛門「それは忘れてください。あまり言われてないけどなんか耳ダコです」 母  「それで……この家にどのような……」 彰衛門「あなたの病気、治しましょう」 母  「………」 む、信じてませんな。 では─── 彰衛門「失礼。むぅう……!」 おっかあの額に指を添え、病気の大元を探す。 んー……こりゃあ肺の方のヤツだな。 彰衛門「うん、治りますよ。気持ちを楽にしてください」 母  「ほ、ほんとうですか!?」 彰衛門「神ですから」 言うや否や、添えた指から月聖力を流し、病原菌を浄化してゆく。 そして元気になるように月生力を流す。 母  「あ……なんだか体が……!まあ……!なんて軽い!」 彰衛門「さ、もう治りましたじゃ。よかったですのぅ」 母  「ありがとうございます、ありがとうございます……!」 小僧 「すっげぇ!ほんとに神様なんだな!?」 彰衛門「ええそうですじゃ。そして、こうしてあなたを救えたのも、     楓さまが神降ろしの儀式を成功させたおかげですじゃ。     おのおの方、それを忘れてはなりませぬぞ?」 母  「はいっ……!はいっ……!」 小僧 「おっかぁー!」 小娘 「おかーさーん!」 母  「ああっ……おまえたち……!」 彰衛門「………」 ……ははっ、馬鹿だなぁ俺……。 『羨ましい』……だなんて。 彰衛門「それではじいやはもう行きます故」 母  「あ、待ってください!なにかお礼を……!」 彰衛門「ほぉっほっほ、じいやは神ですぞ?お礼などは要りませぬよ。     ただひとつ願いがあるとすれば……」 母  「あるとすれば……?」 彰衛門「楓さまはの、鮠鷹殿を思っておられる。     じいやはもう、楓さまを巫女の宿命から救ってさしあげたいのです」 母  「………」 彰衛門「思い合っているのに結ばれないのは悲しいでしょう?     だからどうか、村の人々に『儀式は成功したのだ』と知らせてあげてくだされ」 母  「……はい!必ず!」 彰衛門「ほっほ、それではじいやはもう行きますえ」 アタイは目の前の親子に一礼をして、その家をあとにした。 後ろから小僧と小娘の声で『かみさまありがとう』と聞こえたのが、 なんだか嬉しかった。 それからアタイは村に居る困ったさんを治しに治しまくり、救いに救いまくった。 男  「目が痛くて……」 彰衛門「ベホイミ♪」 男2 「髪が欲しいんです」 彰衛門「月然力で自然な髪を♪」 女  「雀斑(そばかす)が気になって……」 彰衛門「月清力でシミ、ソバカスの原因を沈めましょう♪」 女2 「……ウチの旦那が……その、元気なくて」 彰衛門「これを飲ませなさい。彰利七つ道具の伍、超赤マムシ調合ドリンクです」 女3 「腰痛がひどくて……」 彰衛門「ベホイミ♪ア〜ンド湿布!」 半日回る頃には、もう村全体を攻略していた。 ───そして夜。 彰衛門「月光が無ければ死んでましたな……」 アタイは月明かりを浴びながら、社の屋根で寝ていた。 これでまた夜華さんに捕まると断食の嵐になりそうだし。 彰衛門「しかし無償で人のために動くのも悪くないもんですね」 どこか清々しい気分です。 村長さんも神降ろしは成功したのだな、って納得してくれてたし。 これで晴れて、楓と鮠鷹は一緒になれるってわけだ。 彰衛門「……うー、寒い寒い」 体を震わせながらも、今日は無茶してしまったのでその場に居ることにした。 ───やがて体を震わせながらもアタイは眠り、その日は過ぎていった。 ───……ガヤガヤ……ざわ……ざわ……。 彰衛門「む……?」 妙な騒ぎの中で目を覚ました。 すると 男  「神様はどこでぇっ!やっぱりお礼しなけりゃ気が済まねぇんでぃ!」 女  「巫女さん!神様に会わせて!」 なんて声ばかりが聞こえる。 楓  「あの、神とは……?」 男  「おいおいすっとぼけんねぃ巫女さんよ!彰衛門さまに決まってるじゃねぇか!」 楓  「あきえ……!?」 女  「そうよ!あの方はわたしたちを救ってくださったのよ!     旦那がもう激しいのなんのって!」 楓  「〜〜〜…………」 楓の声が消える。 赤くなったなこれは。 男  「で?彰衛門さまはどこに?」 楓  「あ、いえ……わたしも探しているのですが……」 女  「なに、いらっしゃらないの?」 楓  「はい……」 男  「そうか、それじゃあ彰衛門さまが戻られたら、     村の方までおいでくださいと言ってくんな!」 女  「それじゃ」 ……おお、ムラビトンが帰ってゆく。 夜華 「楓さま……大丈夫でしたか?」 楓  「ええ、大丈夫。人と話すだけで大袈裟ですよ、夜華」 夜華 「しかし……」 楓  「……彰衛門、どうしたのかな……」 夜華 「昨日、社を出てから一度も見ておりませんが……。     村ではなにやら『神に助けられた』という声が多く聞こえます。それと……」 楓  「それと?」 夜華 「神降ろしは成功したのだから、巫女も次に備える必要はない、と……」 楓  「え……!?」 夜華 「まさかとは思いますが、彰衛門があのおかしな能力で村人を……?」 楓  「…………彰衛門」 楓はなにやら涙ぐんだ声でアタイの名を口にした。 てゆうか夜華さん、『おかしな』は余計です。 夜華 「そうか……自分が神だと名乗り、人々を救えば、確かにその通りになる……」 楓  「………っ」 夜華 「ということは……そうですよ楓さま!これで鮠鷹と───!」 楓  「やめて……」 夜華 「楓さま?」 楓  「やめて、夜華……。そんな言葉、聞きたくありません……」 む!? 夜華 「な、何故です!楓さまはずっと鮠鷹のことを!」 楓  「わ……わたしは……!わたしは彰衛門にひどいことをしました……!     育ててもらって、喜びや微笑むことや甘えることを教えてもらいました!     だけどわたしはあの人の暖かさを裏切ったの!     それなのに彰衛門はわたしに笑ってくれた……!     それでいいの……?本当にそれで……?     裏切るばかりでなにも返してあげられないわたしが、     貰ってばかりでいいというの……?」 夜華 「楓さま、それは……」 彰衛門「良いに決まっとるわぁーーっ!!」 夜華 「うわぁあああっ!!!」 アタイは屋根から飛び降り、高らかに叫んだ。 夜華 「貴様どこから出てくるんだ!」 彰衛門「アタイが出たいと思ったところからじゃい!なにが悪い!」 夜華 「わ、悪いとかじゃなくてだな……!」 彰衛門「それより楓!」 楓  「えっ!?あ、は、はいっ!」 彰衛門「おぬし、人がせっかく行なった善行を無にする気かね!」 楓  「で、でも……」 彰衛門「でももヘチマもね!」 楓  「だけど……」 彰衛門「だけどじゃねぇですだ!     隆正───鮠鷹が好きだから頑張ってきたんでしょうが!     だったら素直に嫁いでしまえ!」 楓  「でも、彰衛門……」 彰衛門「子供を大切に思わない親なんて親じゃねぇ!俺はお前が大切だ!     だからお前の幸せを願ってるんだよ!」 楓  「うっ……彰衛門、こわい……」 彰衛門「怖くない!これが素だ!」 楓  「うぐっ……」 ぬう!埒があかん! 彰衛門「わかった、わかったから泣くでない楓さんや。     よいか、お前は鮠鷹が好きじゃろ?」 楓  「……うん」 彰衛門「だったら問題などないのじゃ。婚約でもなんでもしてしまぇい!     じいやが許す!幸せになりなさい!」 楓  「彰衛門……でも……」 彰衛門「……───」 ジャリッ……。 楓  「ひうっ……?!」 彰衛門「じいやは物分りの悪い子は嫌いですじゃ……」 ジャリ、ジャリ…… 楓  「で、でもね、彰衛門……あの……わたし、自分で頑張りたくって……     だだだからわたし自分で神降ろしを遣り遂げて胸を張って鮠鷹さまと、って、     だからあの、えと……う、ううう……!」 彰衛門「それで。婚約するのか、せんのか」 楓  「あ、あう……だから……」 彰衛門「カァーーッ!!」 ガバァッ!! 彰衛門「じいやは聞き分けの悪い子も嫌いじゃっ!」 楓を膝に乗せ、手を構える。 楓  「やっ、やぁーーっ!」 彰衛門「お仕置きじゃ!この親不幸ものめ!」 ばしぃっ!ばしんっ!! 楓  「やっ!やぁっ!いたいっ!いたっ……う、うわぁあああああああん!!!!」 彰衛門「泣いたって許しませんよ!じいやは怒りましたじゃ!」 夜華 「き、貴様!楓さまになにを!」 彰衛門「お尻ペンペンじゃ!」  ■於死莉篇々───おしりぺんぺん  対象となる者を抱えあげ、  片手と膝とで標的を浮かしてもう片手で尻を叩くという躾の最高峰。  屈辱と激痛を負わせるその行為は、子供の心にトラウマをも負わせるらしい。  相手が誰であろうが、どれだけ鍛えてあろうが皮膚への攻撃は敵無しの張り手。  故に、強靭な肉体を持っていようが痛いし屈辱的なのである。  ちなみに『鞭打』の発端はこれにある。  於死莉篇々の特徴を生かし、体のしなやかさと勢いを混ぜたたものが『鞭打』である。  もちろん大デマ。  *神冥書房刊『空道・柳の憂鬱』より 夜華 「なにをこの!楓さまを離せ!」 彰衛門「ならぬ!!じいやは楓をこのような娘に育てた覚えはないわ!」 夜華 「さっきから娘だとか育てたとか、なんのことだ!」 彰衛門「じいやは楓の親じゃ!」 夜華 「なっ……なにぃいいいいいいいいいっ!!!????」 ばしぃっ!ばしんっ!ばしっ! 楓  「うわぁああああああんっ!!!     ごっ……ごめんなさいおとうさぁああん!!!」 彰衛門「ダメですじゃ!じいやの怒りは治まりません!     泣いたって許しませんぞ!」 楓  「うわぁあああああああああああん!!!!」 夜華 「はっ!か、楓さま!───その手を止めろ彰衛門!」 キヒィンッ!! 夜華さんが刀を抜き、アタイに襲い掛かってくる。 そこにすかさず 彰衛門「瑪・羅・門!」 夜華さんの額に人差し指を突き、月聖力標的固定を流す。 夜華 「なっ……か、体が……動かなっ……!?」 彰衛門「そこで黙って見とれ!これは家庭問題じゃ!」 ばしぃっ!ばしぃっ! 楓  「やぁあっ!ごめんなさい!ごめんなさいおとうさぁあああんっ!!」 彰衛門「ただ謝るだけではじいやは納得しませんぞ!」 楓  「うぇ……うぇええん……!!」 彰衛門「楓さん!さあ───む!」 ブンッ!! 彰衛門「甘いわ!」 突然の攻撃をなんなくかわし、アタイはそいつに目を向けた。 鮠鷹 「おのれ貴様……!楓になにをしている!」 彰衛門「お仕置きじゃ!」 鮠鷹 「って……彰衛門!?」 彰衛門「そうじゃ!」 鮠鷹 「彰衛門がどうしてここに……ああ!前に道場破りに来たの、彰衛門だろう!」 彰衛門「人違いですじゃ!」 鮠鷹 「ウソだ!あんな滅茶苦茶な戦い方をするヤツ、彰衛門以外に居るもんか!」 彰衛門「人違いですじゃ!じいやは獄郷地文左衛門なんて知りませんですじゃ!」 鮠鷹 「知ってるじゃないか!」 彰衛門「お、おだまり!とにかく今はお仕置き中じゃ!すっこんどれ!」 鮠鷹 「ま、待ってくれよ!娘を頼んだぞってどういう意味───あ」 楓  「うぐっ……はやたかさまぁ……」 鮠鷹がアタイと楓を見て顔を赤くする。 鮠鷹 「あ、や……えっと……」 彰衛門「なんじゃね!?」 鮠鷹 「ど、どうして楓がお仕置きされてるんだ……?」 彰衛門「そういう貴様こそ、何故に言葉遣いが変わってる?」 鮠鷹 「ん……彰衛門の前だと、なんかね。自然にこういう口調になるんだよ。     多分、楓も同じだよ」 楓  「はやたかさま……おしり、いたいの……」 鮠鷹 「あ……なぁ彰衛門、出来れば離してやってくれないか?」 楓  「はやたかさまぁ……!」 鮠鷹の言葉を聞いて、うるうると嬉し涙を流す楓。 まあ、なんと美しい光景か! 彰衛門「だめじゃ」 楓  「うわあぁああああああん!!」 ばしぃっ!べしぃっ!! 鮠鷹 「わっ!ちょ、ちょっと!楓泣いてるじゃないか!」 彰衛門「楓はの、じいやの心意気も受け取らんと、     うじうじとして言うことを聞かぬのじゃ!     だからこうしてお仕置きをしてるのじゃ!」 楓  「うわぁあああん!!はやたかさま!はやたかさまぁあああ!」 鮠鷹 「すまない楓、諦めろ。     彰衛門の言うことに間違いなんて無い。俺は彰衛門を信じてる」 楓  「えぐぅっ……!?う、うわぁああああああああん!!!!!」 鮠鷹 「でも、どういうことでこうなったのかくらい話してくれるよな、彰衛門」 彰衛門「うむ!とくと聞け!」 べしぃっ! 楓  「きゃうぅんっ!!」 彰衛門「先ほど楓と夜華とで話していたのじゃがな!」 べしぃっ! 楓  「やぁあっ!!」 彰衛門「こやつのはの!じいやがせっかく、     神降ろしの儀式の成功を現実のものとしてやったのにの!」 べしぃっ! 楓  「いやぁあっ!いたいいたいぃっ!!」 彰衛門「鮠鷹と婚約しようとせんのじゃっ!!」 べしぃっ!! 楓  「うわぁああああああん!!!!」 鮠鷹 「……彰衛門。話す時くらい、叩くのはやめてやってくれ」 彰衛門「……まあ、もうよいじゃろ」 叩いた場所に月生力を流して、抱き締めて撫でてやった。 楓  「うぐっ……うっ……ひっく……!うぇええ……!!」 彰衛門「おー、ほれほれ、もう泣くでない」 やさしくやさしく撫でながら、月生力で包み込んでやる。 すると震えていた体は治まり、ただただ楓は抱き着いてきた。 鮠鷹 「あー……なんか複雑。そういう彰衛門と楓巫女は散々見てきたけど……     こうして大人になると、好きな相手が誰かに抱きつくのって痛いなぁ……」 彰衛門「それだけ大事ってことじゃろ。……フフ、小僧も大きくなったのぅ」 鮠鷹 「あ、まだ小僧って言うのか?相変わらずひどいなぁ」 彰衛門「しかし……うむ。やはり以前のお前に戻ったようじゃな」 鮠鷹 「ああ。あの時……死ぬ間際に彰衛門に思い出させてもらった気持ち、     俺……今も忘れてないよ」 彰衛門「うむ、忘れるでないぞ?次忘れたらもう知らんからな」 鮠鷹 「ははっ、ひどいなぁ……」 アタイは鮠鷹と笑い合い、楓を撫でていた手を止めた。 楓  「やっ!」 彰衛門「む?どうされた?」 楓  「もっと撫でて……」 彰衛門「……むう。楓巫女は甘えん坊じゃのう……」 楓  「楓だよぅ……」 彰衛門「ほぉっほっほ、そうじゃったの。     どぉれ、久しぶりにアレを食べさせてやろうか───ムッ!」 ぽんっ! 鮠鷹 「あっ、懐かしいなぁそれ!」 アタイは頭に生やしたマツタケモドキを抜き、ブラストで焼く。 それを四つに裂き、ひとつずつ配る。 彰衛門「っと、忘れてた。ほいっと」 パチンと軽く指を鳴らす。 すると夜華の金縛りが解け、夜華はよろよろと立ち直った。 夜華 「き、貴様!いったいなにを!」 彰衛門「まぁま、これを食いなされ」 夜華 「な、なんだこれは」 彰衛門「いいから食え!」 がぼっ! 夜華 「ふぐっ!?う、うー!んー!ん……んん!?」 口の中に放り、無理矢理噛ませた。 するとみるみるうちに表情が明るくなり─── 夜華 「う……美味い!」 夜華さんは大層喜んだ。 彰衛門「うむ。さ、楓さんや。懐かしのマツタケですよ」 楓  「わぁ……!」 楓は満面の笑みでアタイを見上げ、俺の手の中にあるそれをパクッと食べた。 彰衛門「おっと、ほっほっほ、急がずとも逃げはせんよ?」 楓  「んぐんぐ……♪」 鮠鷹 「はっはっは、楓は楓巫女の頃からあまり性格は変わらんようだ」 鮠鷹も笑いながらそれを食べ、例のごとく『美味い』と言った。 そんな中で、楓はアタイの厚い胸板に頬を摺り寄せながら、幸せそうに微笑んでいた。 彰衛門「これこれ、くすぐったいよ。     楓はこんなに大きくなったのに甘えん坊で、恥ずかしいねぇ」 楓  「はずかしくなんかないもん♪」 彰衛門「先ほどまであれだけひどいことをしたのにのぅ。じいやが怖くないのかい?」 楓  「……しんぱいしてくれてるの、すごくわかったから……。     だからね?わたしとってもうれしいの。おとうさん、だ〜いすき♪」 彰衛門「!!」 ズッギャァアアーーーーンッ!!!! 彰衛門「ハ、ハアワワァアア……!!」 鮠鷹 「む……ちょっと妬けるな……って、うん?どうしたんだ?彰衛門」 夜華 「彰衛門?」 よ、よもやまたこの言葉を聞けるとは……! 大好きって……!楓がアタイのこと、大好きって……!! 楓  「えへへぇ〜……♪」 頭の中に反芻している言葉に酔っているアタイを余所に、 アタイの股の間に居る楓は胸板では飽き足らず、頬に頬を摺り寄せてきた。 うわカワイイ!もう抱き締め───キャアアアアアアアア!!!!! 彰衛門「ギムゥウウウッ!!!」(みちみちみち……!!) な、ならぬ!それはならぬ!わしゃあ親ですよ!?父親ですよ!? 『おとうさん、だ〜いすき♪』ですよ!?父が!父が娘に手を出してどうする! 楓  「……〜♪」 あああ……あああああ……! でも楓のやわらかい頬の感触が頬いっぱいに広がって……! ああ、なんて甘い香りがすることか……! ついフラフラと抱き締めて 彰衛門「きゃああーーーーーーっ!!!」 理性を完璧に無視して楓を抱き締めようとしている手に気づき、それを全力で止める。 耐えろ!耐えるんだ!何かを見て気を紛らわすとか……! そ、そうだ!アタイはメイド好き! ならばそのライバルとも呼べる巫女装束を見れば気が落ち着くというもの! そして巫女装束といえば今まさに楓が着ている!パーフェクトじゃないですか! というわけで 彰衛門「ぶっ……!?」 そしていざ、楓を見下ろしてみれば─── アタイに体を摺り寄せていた所為で少し乱れていた巫女装束の隙間から、 透き通るように綺麗な楓の肌と、チラリと見える胸───ギャア!? 彰衛門「ふごっ!?」 つぅ〜…… 彰衛門「キャッ!?」 ずるずるっ! 彰衛門「キャーッ!?キャーッ!!」 シット!なんてこったい!は、鼻血が……!あろうことか娘の胸を見て鼻血が!! 彰衛門「イヤァアアアアアアアッ!!!!!     産まれてきてごめんなさい産まれてきてごめんなさい!!」 ガンゴンゴシャゴシャ!! 煩悩を振り払うように社の支柱に頭突きをしまくる。 鮠鷹 「うわっ!?な、なにをしている彰衛門!頭が割れるぞ!!」 彰衛門「俺ってやつは!俺ってやつはぁああああああっ!!!!     イヤァアアアアアアアッ!!     今度こそお天道様の下歩けねぇええええええっ!!!」 楓  「おとうさんっ?」 ズルッ…… 夜華 「あっ……か、楓さまいけません!服が乱れて───!」 楓  「え……?あ、きゃあっ!!」 鮠鷹 「───!うぶっ!?」 夜華 「あ」 楓  「あ……!」 彰衛門「キャア鼻血!?助平!助平!!キャアア助平!!カスめ!カスめ!」 鮠鷹 「う、うるさっ……!」 楓  「う、うわぁあああああああああん!!!!!     見られちゃったよぉ夜華ぁ〜〜〜〜っ!!」 夜華 「か、楓さま……!───きぃさぁまぁらぁああああああああっ!!!!!」 鮠鷹 「まっ……待て篠瀬!俺はっ!」 夜華 「黙れ!鼻血を垂らしながら弁解されて、どこに説得力がある!」 彰衛門「そうじゃそうじゃこの助平!」 夜華 「貴様もだろう!」 彰衛門「俺は頭に血が昇りすぎただけじゃい!」 夜華 「黙れ!貴様ら斬る!!」 彰衛門&鮠鷹『お、おわぁあーーーーーーっ!!!!!』 般若の面すら満面の笑みに思える形相を施した夜華さんが、 真の殺意をもってアタイと鮠鷹を襲った。 しかしどんな弁解をしようが『黙れ』としか言わない夜華さんに、 アタイが『殺生院黙子(せっしょういん だまこ)』の愛称を贈ると、 何故か彼女の標的がアタイだけになった。 そんな世界に理不尽さを感じながら、 アタイは石に躓いて転ズシャドシュザクズバゴシュドシュズチャグチャズバァッ!! 彰衛門「ウギャアアアーーーーーッ!!!!!」 そう、彼女は既に殺戮マッスィーンと化していた。 転んだ瞬間に刺し、斬り、潰す行為は人としてどうかと思いますが、 それでも波動が純粋さしか感じないのがとことんおかしいと思う朝でした。ハイ。 Next Menu back