───刺されても馬鹿な人───
彰衛門「だるいよぅ……」 体が悲鳴あげてます。 それもその筈、昨日あんなに騒いだんですから。 てゆうか寝てないし。 やだ、UVケアとかしなくちゃかしら?とか疑ってしまうよ。 ……なに考えてんだ俺ゃ。 声  「おわぁーーっ!!」 声  「斬るゥーーッ!!」 ……やや? なにやら賑やかな声が。 彰衛門「ピエロアイーーーン!!」 目をグミミ……と伸ば……すことは出来ないので、よ〜く見てみる。 するとどうでしょう、朝っぱらから夜華さんに追われている鮠鷹さんが。 彰衛門「むう、ありゃああれだ、寝込みを襲った罰でしょう」 俺が原因ですけど。 彰衛門「さーて、今日もいい天気だし、メシでも食いますかぁ」 くらっ…… 彰衛門「あれっ……?」 くらくら……どさっ。 彰衛門「なんだ……?なんかすごく眠い……」 あー……そういやあの赤マムシャー、 夜は暴走できるけど、その反動として朝はやたらと眠くなるやらなにやら…… 彰衛門「うあ……だめだ……!おやすみ……」 眠気に耐えられなくなったアタイは、大樹の上で寝ることにした。 おやすみ少年少女よ。 夜華さん、殺しはいかんよ? ───…………。 なんだか眩しい光に包まれた気がした。 気になって目を開けてみれば、そこは大樹の上ではなく、社の上だった。 彰衛門「……あれ?もしかしてまた転移した?」 確信は持てないが、なんかそんな感じがした。 声  「いやぁ〜めでたいな!」 声  「ああ、とうとう楓殿と鮠鷹殿の婚儀だ」 彰衛門「なんですと!?」 男  「うわっ!?」 『婚儀』という言葉に反応したアタイは、男衆の間に飛び降りた。 男  「あ、あなたは……いつかの神様じゃないですか!」 彰衛門「鮠鷹と楓が結婚するのかね!?」 男  「え?え、ええまあ……」 彰衛門「ムウ……!ところでキミ!     アタイが神としてキミを助けてからどれくらいになる?」 男  「あ、と……ひと月くらいでしょうか……」 彰衛門「なんと!」 間違い無い、転移しやがった。 しかも人が寝てる間に。 彰衛門「して?鮠鷹と楓はいずこに?」 男  「ええ、今なら双子山に居るでしょう」 彰衛門「双子山?」 男  「はい、この村では婚儀の際に毎回同じ儀式を行なうんですよ。     双子山ってゆう、ふたつに別れた山にひとりずつ登って、     その中心にある親山に向かい、そこで愛を誓うんです」 彰衛門「愛とか言ってて恥ずかしくない?」 男  「……恥ずかしいです」 正直なヤツだ。 彰衛門「まあとにかく、今はふたりとも別々の山に居るんだな?」 男  「そうなります」 彰衛門「そか、んじゃあアタイも行ってくるでよ」 男  「え?い、いけませんよ!あの儀式は夫婦になる者しか」 彰衛門「俺ゃあ神だぞ!?あぁーっ!?」 男  「ひぃいごめんなさい!」 彰衛門「解ればよろしい」 アタイはどこかこそばゆい気分で、みっつの山を目指し─── 彰衛門「みっつの山ってどこ?」 男  「え?あー……遠いですよ?」 彰衛門「構わん、言いなさい」 男  「はぁ……あ、ではこの地図をお持ちください。自作ですが、なかなかですよ」 男がコサッと紙を渡してくる。 和紙に描かれた、なんともステキな地図だ。 彰衛門「うむぅ、字が難しいな」 男  「すいません、字は苦手なもんでして」 彰衛門「いや、昔の字だからってことで」 男  「はい?」 彰衛門「んーにゃ、いい地図だって言ったんじゃい」 男  「あ、ありがとうごぜぇます!あっし、実は地図商人を目指してまして……!」 彰衛門「そうかそうか、励まれよ」 男  「はいぃっ!」 でげでで〜ん♪ 過去の地図を手に入れた! 男  「……なんですかい?今の音」 彰衛門「気にすんな」 こうしてアタイは石段を降り、遥かなる旅路へと旅立ったのだった。 ざっざっざっ…… 彰衛門「……ほんとに遠いな」 地図は簡略化されていて、パッと見では近く感じてしまう。 だがそれらしき場所が見えないとすると、こりゃ相当遠いです。 彰衛門「まいったのぅ……む!?」 ざざざざっ!! 野党1「へっへっへ。殺されたくなきゃあ金目のものを置いていきな!」 彰衛門「な、なにかねキミたちは!いきなり人を囲んで!無礼ではないのかね!」 野党2「うるせぇ!いいから置いてけってんだ!」 彰衛門「ならぬ!欲しければ力ずくで取ったらどうなのかね!男らしく!」 野党3「……へっ、話が早ぇじゃねぇか!」 野党3が刀を構える。 長尺刀……野太刀あたりですかな? 彰衛門「愚かな……武器の長さに頼ると痛い目を見ることを教えてしんぜよう!」 野党衆『うらぁあああああああああっ!!!!!!』 彰衛門「うむ!今から貴様らに戦の奥義を伝授する!!」 ドシュシュッ!バオバオッ!ビッ!ブバッ! でげででげででげでで〜ん♪ 彰衛門「むぅ!よく耐えたの!これで貴様らは戦の厳しさを知ったじゃろう!」 野党1「つ、つぇえ……!!あんた何者だ……!?」 彰衛門「馬鹿者!名前を訊く時はまず自分からじゃろう!!     ええい!今から貴様らに礼儀というものを教えてやる!!」 野党2「な、なに!?」 ドシュシュッ!バオバオッ!ビッ!ブバッ! でげででげででげでで〜ん♪ 彰衛門「うむ!これで貴様らは礼儀……これ!!     人が喋っているのに寝るとはなにごとじゃ!!」 野党衆『………』 野党どもはぐったりと動かなくなっていた。 彰衛門「えーと……やりすぎました?」 ……辺りはしーんと静まりかえってます。 彰衛門「……えーと……ごめんにぇ?」 殴り合いの喧嘩のあとに電話で謝る小僧が如く。 アタイはごめんにぇと謝った。 彰衛門「ら〜ら〜ら〜……♪ららら〜らら・ららら〜ら〜……♪」 まるでRPGの主人公になった気分です。 なにせひとり旅。 敵がひとりずつ現れないのが問題なのですが。 男1 「へへへ……金、置いてきな!」 彰衛門「………」 この時代の人ってそんなに金に困ってるんですか? 男2 「なにをモタモタしてやがる!」 彰衛門「えーと……モーターシティードライヴーッ!!」 ドゴボゴドゴドゴボゴドゴボゴボゴ!!!! 男2「ギャアアーッ!!」 問答無用に襲いかかってきた男2に、 オラオラのラッシュに勝るとも劣らぬ拳を叩き込んだ。 結果、男2はタコ殴りにされたミッキー・ロジャースのように海坊主になった。 彰衛門「い〜いツラになったじゃないか」 男1 「てめぇ!」 男1が逆上して襲いかかる。 この場合、逆ギレとも呼べるかもしれません。 彰衛門「フフフ、今こそ強者のエキスの力、見せてくれるわ……!」 そんな彼に対し、アタイは冷静に体から闘気を出した。 こげなヤツぁ拳3発でK.Oじゃぜ? 彰衛門「ゴーッ!!」 ドパァン!! 彰衛門「トゥーッ!!」 ドパァン!! 彰衛門「ヘヴゥン!!」 ドッパァーーンッ!! 男1 「ワイの完敗やぁーーっ!!」 ドシャア。 男1、三連の拳に散る。 彰衛門「いんやぁ〜、一度はやってみたかったんですよ、     モーターシティードライヴとゴー・トゥー・ヘヴン」 黒鬼ジョニーに感謝です。 さてさて 彰衛門「お前は弱かったよ。しかも間違った弱さだった」 彰利七つ道具の七、油性ペンで額に肉と書く。 彰衛門「マッスルさん、ゴー・ファイト!」 どうせならナッパさんに勝るとも劣らぬ血管を描いてあげましょうね。 きゅっきゅっきゅ〜♪ 彰衛門「うーむ、ようやく目印の場所についたが……     これからまた歩かなきゃならんのか」 山のある場所はここからまだ先の方なのである。 ちょっと面倒だ。 しかも おなご「やめてください!わたしには夫も子供も……!」 ハゲ 「ウヘヘヘ、つべこべ言わずに俺のものになれや……!」 おなご「あぁれぇ〜!」 こんな林の中で何やってんでしょ。 彰衛門「おやめなさい!」 ハゲ 「だれだ!」 彰衛門「ふぁ〜ったくカスが……。おなごはもっと丁寧に扱うものですよ」 ハゲ 「あぁ〜……?なんだてめぇは!」 彰衛門「なんだてめぇは!とな!……そうです、わたしが変なおじさんです」 ハゲ 「なに?」 彰衛門「ヘンなお〜じさん♪だか〜らヘンなお〜じさん♪」 ハゲ 「………」 おなご「………」 彰衛門「ツッコめよ!!」 すっげぇ恥ずかしいじゃない! ハゲ 「よく解らんが邪魔するなら痛い目みてもらうまでだ……」 彰衛門「いいだろう、かかってこい」 ハゲ 「言われなくても───」 彰衛門「おいハゲ」 ハゲ 「ハゲと言うな!」 彰衛門「さぁ来いハゲ」 ハゲ 「ぐ、ぐぐぐぐ……!」 彰衛門「どうしたハゲ」 ハゲ 「貴様ぁっ!」 彰衛門「あたぁっ!」 ドパァン! ハゲ 「ふべっ!」 彰衛門「北斗!操筋自在脚!!」 アタイはハゲの横頭にケリをかまし、脳波に波を送った。 ハゲ 「な、なにを……」 彰衛門「いえ、気分です。脳震盪起こしてるだけだから気にせんでいいよ」 ハゲ 「このっ!」 ガクッ! ハゲ 「な、なんだ……!?歩けん……!」 彰衛門「さ、おじょうさん。もう帰りなさい」 おなご「あ、ありがとうございます……!」 おなごが去って行った。 彰衛門「じゃあな、ハゲ」 ハゲ 「おのれぇええ……!!」 アタイもおなごに続くように、ハゲを無視してその場を去った。 そしてようやく山へ辿り着く。 彰衛門「ウヒョウ……ほんまに遠かったのぉ〜……」 喩えるなら隣町へ歩いておつかいに行く子供の気分ですかねぇ〜。 彰衛門「ま、それはそれとして」 アタイはまずみっつの分かれ道に差し掛かった。 なにやら立て札が刺してあり、『夫は左、妻は右』と書いてあった。 ようするに右へ行けば楓。 左へ行けば鮠鷹。 では真ん中はなんでしょう。 彰衛門「……アレですか?中央の親山ですか?」 ……でしょう。 ってことは、夫婦の誓いとぶっちゅもそこで行なわれると? 彰衛門「……迷うこたぁねぇ!真ん中だ!それっきゃない!」 アタイは堂々たる気分で真ん中の道を登った。 やがて山頂が見えてくる頃、そこには何故か夜華さんが居た。 妙な服を着ちょるばい。 彰衛門「夜華さんでねがー!どぎゃんしたとよ、こげんとこでー!」 夜華 「なに?あ、彰衛門!?」 彰衛門「うむ!麿こそが史上最強の魔法使い、弓彰衛門でゴワス!」 夜華 「貴様今までどこに居たのだ!こちらは大変だったんだぞ!」 彰衛門「何が?」 夜華 「そ、その……楓さまが巫女の仕事を免除され、     普通の女性(にょしょう)として過ごすようになってから……     鮠鷹が社に住むようになったのだ……。     それからはわたしは楓さまの邪魔をするわけにもいかず、     あっちへうろうろこっちへうろうろ……!生きた心地がしなかったわ!」 彰衛門「それとアタイと、どんな関係が?」 夜華 「貴様が居れば話相手にでもなっただろうが!!」 彰衛門「耳もとで叫ぶな!耳が痛い!」 あーもう、ちっとも変わってませんよこの人! 彰衛門「それより聞きましたよ?婚儀なんですってね」 夜華 「あ、ああ……長かったが、ようやくだ……」 どこか嬉しそうに微笑む夜華さん。 アタイはそんな笑顔を見て 彰衛門「子供は何人ぐらい作ろうか……なぁ、夜華……」 ぐっ、と頼り甲斐を醸し出すために夜華の肩を抱いボグシャアッ!! 彰衛門「うぶわぁあっ!!ぐ、ぐおっ……!血が……!」 夜華 「ほんっっっっとうに変わらんなお前は……っ!!     婚儀をするのはわたしではなく楓さまだ!!」 彰衛門「な、なんだって〜?そうなのか〜い?」 夜華 「ええいわざとらしい!貴様は少し黙れ!」 彰衛門「そう言うなよ、一緒に寝所をともにした仲じゃないか」 夜華 「そんなものはもう忘れた」 彰衛門「実はあの時、アタイは夜華のアレをアレして……」 夜華 「な、なななななにっ!?貴様襲ってないと言ったではないか!!」 彰衛門「なんてウッソォ〜♪」 夜華 「な……」 彰衛門「覚えてるじゃない」 夜華 「………………」 あらら、怒っちゃった。 彰衛門「ところでさ、夜華さんはここでなにを?」 夜華 「……婚儀の儀式はな、その恋仲と一番仲のいい者が執り行うのだ。     ふたりとも嘆いていたぞ、彰衛門にしてもらいたかったと」 彰衛門「へっ、買い被るなよ。俺はそんなエライやつじゃない」 夜華 「正直、楓さまに一番に思われていなかったと考えると、     貴様にも嫉妬したものだがな」 彰衛門「そか。ならよかったじゃねぇの。こうして一番の役がもらえて」 夜華 「……ふふ、そうかもな」 アタイは夜華さんの立つ小さな祭壇の横に座り、ふたりが来るのを待った。 彰衛門「しっかし静かじゃのぅ」 夜華 「そうだな」 ごらん、鳥が囀ってる。 彰衛門「そんで?夜華さんに男は出来た?」 夜華 「必要ない。わたしは楓さまに仕えるだけで十分だ」 彰衛門「寂しい人生っぽいけど……ああ、悪くないかもな」 夜華 「だろう?お前はどうなんだ?」 彰衛門「アタイ?アタイはね……うむ。正直、そういうヤツは居ないな。     守りたいヤツなら居るんだけど」 夜華 「守りたいヤツ?」 夜華さんは少し興味を引かれたように言う。 夜華 「楓さまや鮠鷹か?」 彰衛門「んにゃんにゃ、そうじゃねぇズラよ」 夜華 「では誰だ」 彰衛門「んー……俺の故郷に居る盟友だ。俺が心の底から信頼してるヤツ」 夜華 「信頼……ほう、女か」 彰衛門「ブッブゥ〜、はぁっずれ〜♪」 夜華 「男なのか?」 彰衛門「ああ。子供の頃に知り合って、短い間だけど友達になってさ。     一度別れて、もう一度出会って……うん、そうだな。     俺もあいつのためならなんでも出来るって覚悟もあるくらい信頼してる」 夜華 「……そうか。ならわたしと同じだな」 彰衛門「あー……そうだな」 少し苦笑して悠介の顔を思い出す。 思うことは『今何やってるかな』とか、そんなことばっかりだ。 彰衛門「そういやさ、婚儀の儀式って結局なにするのさ」 夜華 「うん?知らないのか。楓さまの親失格だぞ」 彰衛門「オイラはただの育ての親ですから。しかも一日限りの」 夜華 「そうなのか」 彰衛門「うむ。で?なにすんの?」 微妙に話がズレそうだったから、元の話題を促した。 夜華 「ああ。この親山の頂上……まあここだが、ここで誓いの宝玉の交換をするのだ」 彰衛門「宝玉?ほへ〜、どんな?」 夜華 「これだ」 夜華さんは大切そうに取り出したそれをアタイに見せてくれた。 彰衛門「なんと!!」 夜華 「うん?知っているのか?」 彰衛門「知ってるもなにも、これ作ったのアタイですよ?」 夜華 「な、なにっ!?」 夜華さんが取り出したものは、懐かしき琥珀珠と翡翠珠だった。 掌に丁度納まるくらいの、ドラゴンボールくらいの大きさの珠。 彰衛門「いんや〜懐かしい。またこれを見ることが出来るとは」 夜華 「お前……本当になにものだ?」 彰衛門「魔法使い♪」 夜華 「………」 夜華さんは何故か冷たい目でアタイを見た。 彰衛門「グウム……ま、まあこれってアレだろ?木刀と同じところにあったんだろ?」 夜華 「ああ、そう言われている。遥か昔の男と女の話だ。     この珠はその男と女が持っていたものらしくてな、     『たとえ思いが叶わなくても、いつかどこかで』     という思いが込められているらしい。     死んだ男に女が覆い被さるようにして倒れていたところから、     このふたりは愛し合っていたのでは、というのが発端だ」 彰衛門「……なんの因果ですかねぇ」 夜華 「そのふたりが持っていた珠だ、きっと愛し合う者を見守ってくれるだろう。     そういうことで、この珠は婚儀の儀式に用いられるようになったのだ」 彰衛門「んー……」 夜華 「彰衛門、聞いているのか?」 彰衛門「聞いとるよ、うん聞いとる。     ただそういうのって、     些細なことから広がっていくんだなぁって思っただけだから」 夜華 「なんの話だ?」 訝しげに首を傾げる夜華さん。 彰衛門「前に神降ろしの儀式があったこと、知ってるよな?成功例って意味で」 夜華 「ああ。もう随分昔になる」 彰衛門「その時に降りた神が、楓巫女……つまり、今の楓だ」 夜華 「───なに!?」 彰衛門「俺はその神降ろしの儀式の時にその場に居た。     鮠鷹はその頃、禊隆正という名前の子供だった」 夜華 「……信じられん」 彰衛門「ま、いいから聞けって。どうせ暇だろ?」 夜華 「………」 夜華さんはウムム……と唸りながらも、口を挟もうとはしなかった。 彰衛門「神の子として降りた楓巫女には名前が無かった。     『楓巫女』って名づけたのも俺だし、     甘える親も居なかった楓巫女の親代わりになったのも俺。     楓が俺のことを『おとうさん』って呼ぶのはそういうことだ」 夜華 「………」 彰衛門「その宝玉って呼ばれてる珠は楓巫女と隆正のために、俺が作ったもの。     ほら、大樹があるだろ?     あそこの草木の前でそれを翳すと中に入れるようになるんだ」 夜華 「し、しかし楓さまは普通に入れたぞ?     わたしは今まで、あそこには神降ろしの巫女しか入れないのだと思っていた」 彰衛門「あの大樹はさ、俺が楓巫女のために作った寝所なんだ。     だから楓巫女と俺だけは何も持たなくても入れる。     だけどそれじゃあ隆正が仲間はずれだと思って作ったのがコレだ」 アタイは琥珀珠を指差す。 夜華 「……それではこちらの珠は?」 彰衛門「ああそれか。それはな……     俺が隆正にだけ琥珀珠をあげたもんだから、楓巫女が羨ましがってな。     だから俺が細工をして作ってやった翡翠珠なんだ」 夜華 「ね、ねだったのか、あの楓さまが」 彰衛門「あの頃は本当に子供だったからな。その時、楓巫女は生後一日だったんだぞ?」 夜華 「生後一日!?そんな時の記憶を覚えているというのか楓さまは!」 びっくり仰天の夜華さん。 結構オモシロイ。 彰衛門「楓巫女は必要最低限の体を持って産まれた。     当時子供だった隆正と同じくらいの背格好でね。     だから歩くことも出来たし笑うこともできた。     驚いたぞ〜?最初は『あー、うー』しか喋れなかったのに、     俺と隆正の会話からどんどん『言葉』を覚えていくんだ」 夜華 「そうだろう?楓さまは凛々しく、聡明でいらっしゃるからな!」 嬉しそうに胸を張る夜華さん。 彰衛門「……どうしてキミが威張るワケ?」 夜華 「黙れ!威張ってなどいない!」 まあいいけど。 彰衛門「ああそうそう、これがコンパクトポラロイドで隠し撮りしたその頃の写真ぞ?     ほ〜れ、寝顔がステキでしょう?     豆腐を盗む……ゲフゲフ!もらう時にひとりずつ撮ったものぞ?」 夜華 「写真?───ブッ!!」 彰衛門「ウヒョオ!?」 楓巫女の寝顔写真を見せた途端、夜華さんが鼻血を吹き出した。 夜華 「な、なんとまあ……!さすがだ……!カワイすぎる……!!」 彰衛門「でしょ!?そうよね!?最強よね!?」 夜華 「み、見せろ!まだあるんだろう!?」 彰衛門「あ、こ、これ!なにをなさる!」 野獣と化した夜華さんがアタイの手から写真を奪う。 そしてなんともとろけそうな顔でそれらを見てゆく。 夜華 「はぁぁああ〜〜〜……!!なんと可愛らしい……!!」 彰衛門「ちなみにアタイはその楓巫女に、     『あきえもん、だ〜いすき♪』とまで言われたんだぞ?」 夜華 「なっ!?なななんだとぉっ!?」 彰衛門「可愛かったわぁ……!今思い出しても幸せすぎる時間じゃった……!     羨ましいか?えぇ?羨ましいかぁ〜!?」 夜華 「ぐ、ぐぎぎ……!なんと羨ましい……!!」 おお、素直だ。 夜華 「……ん?これはなにをしているのだ?」 彰衛門「あのさ、ところで『写真に色がついてる〜!』とかゆう、     カルチャーショックは無いわけ?」 夜華 「そんなものは知らん。楓さまが可愛いければそれでいい」 彰衛門「うおう……」 確かにそうかも。 鼻血出てるし。 彰衛門「でね、これは楓巫女に木の育て方を伝授してるところ」 夜華 「木の育て方?そんなものがあるのか?」 彰衛門「俺と楓巫女の間でだけね。ホレ、これが少し育った木だ」 アタイは楓巫女が能力で育てた芽の写真を見せた。 夜華 「これは……おい貴様、貴様が楓さまとともに居たのは一日だけなのだろう?     何故、芽がここまで伸びているものがあるのだ」 彰衛門「だから俺と楓巫女の間でだけって言ったろ?     楓巫女には神の子としての能力があったんだよ。     それを使って、木の成長を促したんだ」 夜華 「神の子の能力……?あ、まさか癒しの巫女の力はそれのものか!?」 彰衛門「物分りが早くて助かるよ。子供の頃の楓巫女よりは劣るけど」 夜華 「構わん。わたしの中では楓さまが常に一番だ」 ……幸せそうな思考回路ですな。 彰衛門「しかしあっさり信じてくれましたな」 夜華 「こういった証拠があるのだ。無理に意地を張り、疑う意味もあるまい?」 彰衛門「助かりますじゃ」 夜華 「というわけでこの写真はわたしが頂く」 彰衛門「な、なんですと!?それはさせんぞこの野郎!!そりゃ俺んだ!!」 夜華 「黙れ!このような愛らしいものを貴様なんぞに預けておけるか!!」 彰衛門「預けじゃなくて俺のだよ!なにトチ狂ってんだてめぇ!!     返せ!本気で怒るぞコラ!!」 夜華 「うるさい!これはわたしのものだ!」 彰衛門「ブチ殺してくれるわぁあああーーーーっ!!!!」 夜華 「やかましぃいいーーーーーーっ!!!!!!」 ゴシャドスゴンガンザシャゴシャザシュドシュ…… 彰衛門「おのれぇええ……!!写真を盾にするとは……!」 夜華 「黙れ……!本気で襲いかかってきおって……!     お前には男としての情がないのか……!」 彰衛門「大事なもの取られてんだ!そんなの持ってられっかボケ!返せ!!」 夜華 「断る!」 彰衛門「おのれ小娘ぇえええっ!!!!」 夜華 「動くな!動けば楓さまの写真に傷がつくぞ……!」 彰衛門「グ、グムーーッ!!」 やべぇ、目がマジだ。 こやつが楓巫女を傷つけるようなことをするとは思えんが、万が一もある……! 彰衛門「わ、わかった。用件を言え……」 夜華 「この写真を全部わたしによこせ」 彰衛門「ダメに決まってんだろうがグラァアッ!ッ殺すぞテメェ!!」 夜華 「動くな!」 彰衛門「ガルルルル……!!!」 おのれぇえええ……!俺の可愛い娘の写真を盾にしやがって……!! こんなことなら見せるんじゃなかったわ……!! 彰衛門「あ……そっか」 夜華 「なんだ?妙な真似をすると」 彰衛門「月聖力・標的固定式モード:夜華さん」 夜華 「なに?ぐ、あ……?」 夜華さんの動きを止める。 彰衛門「FUUUUM、てこずらせてくれたね夜華さん。     それでは写真は返してもらうよ?」 夜華さんの手にある写真に手を伸ばし、それを返してもらビシィッ! 彰衛門「なんと!?」 ビキッ……!バキッ……! 夜華 「さ……!させるかぁああああああああっ!!!!!!」 ごっしゃあぁああああん!!! なんと!夜華さんったら気合で月聖力破壊しやがった!! 彰衛門「な、なにモンですかアータ!!普通アレを破壊するか!?」 でも写真は回収したのでオッケーですが。 夜華 「返せ……!それはわたしのだ……!」 彰衛門「これはじいやのですよ!あんたなに!?ジャイアンですか!?」 夜華 「かえ……せ……!!」 既に言語中枢がおかしくなってるような気が。 仕方ない。 彰衛門「わかった俺の負け。これはキミにあげるよ」 持っていた写真をコサ、と夜華さんに渡す。 夜華 「ほ、ほんとか!?」 彰衛門「二言はねぇズラ」 夜華 「すまない!す……───なんだこれは」 彰衛門「アタイのセクシ〜ポーズブロマイド♪」 びりゃあっ!! 彰衛門「アイヤーッ!?」 躊躇することもなく、アタイの写真は引き千切られた。 彰衛門「な、なんてことをするのかね!」 夜華 「そっちの方をよこせ!」 彰衛門「だめじゃ!」 夜華 「おのれぇえええええっ!!!!」 再び鬼と化した夜華さんがアタイを襲う。 そうして、そんなことを数回続けたのち、 楓巫女と隆正の写真を一枚ずつ渡すことで落ち着いてくれた。 ……ちなみに一緒に渡したアタイの写真だけ、何故か千切られました。 ひどいや夜華さん……。 彰衛門「……遅いなぁ」 夜華 「そうだな」 アタイと夜華さんは暇していた。 彰衛門「あ、そういえば話の続きな。     隆正はさ、櫂埜上喜兵衛ってやつに楓巫女を攫われてさ。     それを助けるためにいろいろ無茶をしたらしい。     ようやく助けに来た時、隆正の心は歪んでしまっておったよ」 夜華 「………」 彰衛門「それでも楓巫女をかばって、喜兵衛の放った矢に討たれて死んだ。     楓巫女もそれを追うように自害したんだ。     俺がこの時代に来たとき、楓が大泣きしてただろ?」 夜華 「ああ……あの時はすまなかったな、その……腕のこと」 彰衛門「くっつきゃ問題ないって。ま、とにかくさ。     その時は自害したことを叱ったんだ。俺は本当に楓巫女を大切に思ってた。     それなのに目の前で自害されたらさ……誰だって怒るだろ?」 夜華 「……だから、『反省』か」 彰衛門「そういうこと」 息を吐いて空を見上げる。 空にはうっすらと白い雲の膜が張っていたが、雨が降る予感はしなかった。 彰衛門「しっかし……遅いなぁ」 夜華 「そうだな」 ふたりともなにやってんだか。 彰衛門「も、もしかして!ここに来る前に我慢出来ずに居た鮠鷹が楓を……!」 夜華 「なに!?お、おのれ鮠鷹ぁああああっ!!わたしの楓さまを!」 彰衛門「いや、冗談ですから」 夜華 「なに!?貴様わたしを騙したのか!?」 彰衛門「うむですじゃ!!」 ザクッ。 彰衛門「ギャアーーッ!!!」 Next Menu back