───夢が醒める日───
彰利 「やあ!お待たせ!」 リヴァイアの部屋の中でボ〜ッとしていると、彰利が戻ってきた。 その肩には……サクラ。 サクラ「お、おろしてください!なんてことするんですか!」 彰利 「こんなこと♪」 なでなでスリスリ…… サクラ「ひややわやぁあああああああああっ!!!!!」 彰利がサクラを抱えながら尻を撫でる。 当然、サクラは絶叫しボグシャア!! 彰利 「ギャッピー!!」 彰利の後頭部に鋭いエルボー。 それとともにサクラは見事に脱出を果たした。 彰利 「はっはっは、やんちゃな小娘だ」 サクラ「半径2メートル以上近寄らないでください!」 彰利 「わぁ、ヒドイ言われよう」 確かに。 彰利 「リヴァっち、そっちはどうだ?」 リヴァ「ああ、発掘場所に向かう途中に知り合いと会ったらしくてな。     譲ってもらったそうだ。すぐに作れるぞ」 彰利 「よし頼む」 リヴァ「任せておけ。2分で終わらせる」 リヴァイアが鉱石を手にして、式を広げる中。 サクラ「……すいません……またお邪魔しなくちゃいけなくなっちゃいました……」 だぅ〜……と、滝のように涙を流すサクラがそう言ってきた。 なんでも天界に居られなくなっちゃったとか。 ……ふと彰利を見てみると、『最強!』と言いながらポージングをとった。 凍弥 「……災難だったな」 そして俺は、サクラにそう言うしかなかった。 ───そしてきっかり2分後。 リヴァ「よし、精製は成功したぞ。これでどんなものの移植も可能だ。     ……言っておくが、臓器などの移植は専門化に頼めよ」 彰利 「グ、グムーーーーッ!!!」 彰利、絶叫。 サクラ「……どうしたんですか?あれ」 凍弥 「あ〜……大方『移植』って言葉に触発されて、     『臓器移植も出来るのかね!?』とか言おうとしたんだろ」 サクラ「あ〜……」 彰利 「これそこ!妙に納得するでない!!」 でも事実のようだった。 リヴァ「それと検察官。移植をより確実なものにするために、シェイドを呼んでおいた。     記憶の操作は得意のようだからな、確立はより成功に近づくぞ」 ルヒド「誰の記憶を移すのかは知らないけどね」 彰利 「おっけおっけ!そんじゃちょっと待ってろ!!」 彰利が部屋を飛び出していった。 ルヒド「…………忙しい人だね」 リヴァ「わたしもそう思う」 だだだだんっ! 彰利 「うおらーっ!うおらうおら!うおらうおららうおららら〜!うぉら!!」 アタイは階下へ降りると、椛チャンを発見する。 その横ではダーリンが具現化して、新聞を見ているようだった。 悠介 「ん……ああ、彰利か」 彰利 「オウヨー!ちょっと椛チャン借りてくぞ!?」 悠介 「へ?あ、ちょっと待て!お前に話さなきゃならんことがあるんだ!」 彰利 「なに?え?もしかして」 悠介 「告白?とか言うなよ……?」 ギャアバレてる!! 彰利 「あー、えっと……なんでしょう?」 悠介 「この新聞、見てみろ」 彰利 「新聞?……FUUUUUM」 ダーリンが投げてよこした新聞を広げる。 すると…… 彰利 「ヒャッホウ!明日は晴れだぜ!?」 ぱぐしゃあっ!! 彰利 「オリバッ!?」 見事に顔面を殴られました。 彰利 「うあがが……!鼻が折れた……!やっぱダーリンの拳って速いや……」 悠介 「そっちの、月詠街での行方不明事件のことだ。     いい加減、おかしいと思わないか?」 彰利 「むう……」 とりあえず月生力で回復。 ああイタイ。 悠介 「彰利、月詠街に戻らないか?なんか嫌な予感がする。     さっきも椛に電話をかけさせたんだが、ルナが出ないんだ」 彰利 「ルナっちが?……そりゃああれだろ、面倒臭がってるとか」 悠介 「嫌な予感は消しておくに限るだろ。頼む、お前の力があれば簡単だろ?」 彰利 「むう……転移を見ておったか」 悠介 「あれだけ堂々とやられればな。───いいか?」 彰利 「うっしゃあ、他でもないダーリンの頼みじゃい。     その用件を飲みましょう。でもちょっとお待ちになってね?     椛チャンを借りたいんじゃが」 悠介 「……いいか?椛」 椛  「え?あ、はい」 椛チャンは椅子から立つと、アタイに導かれるままに二階へと付いて来た。 彰利 「おまっとさーん!」 皆のものにそう言って、アタイは構えた。 リヴァ「移植するのはその娘なのか?」 彰利 「ザッツラァ〜イ!おう小娘、キミって奇跡の魔法なんぞ要らんよね?」 サクラ「え?そ、そりゃあ……強く願うと自分が消えるだなんて……」 彰利 「いーい答えです!     そんじゃあリヴァイア、小娘の中の奇跡の魔法を椛チャンに移してくれ」 椛  「あ、あの……?」 彰利 「じゃーじょーぶじゃーじょーぶ!!任せときんさい!     キミが屋上で誰を待ってたのか解りますから!」 椛  「え……?どうしてそのことを……」 彰利 「魔法使いだからよぅ!!」 ズビィッ! 美しきマッスルポージングをキメる。 ……しかしその場に居る全員から冷たい目で見られてしまった。 彰利 「ああ、それから小僧」 凍弥 「小僧……って俺!?」 彰利 「そうだ。お前、全月操力とか言いながら、月蝕が無いだろ」 凍弥 「あ、ああ……」 彰利 「……そりゃそうだろうなぁ。あ、それじゃあリヴァイア。     奇跡の魔法の移動が済んだら、     次はこの小僧の中にある月操力全部と、『楓巫女』の記憶を全部移してくれ」 リヴァ「かえでのみこ、だな?」 彰利 「あ、それと『楓』の記憶も頼む」 リヴァ「承知した」 凍弥 「え……!?あ、ちょっと待ってくれ!それってどういう───」 彰利 「隆正、今度こそ幸せにならなきゃ本気でハッ倒すからな!」 凍弥 「ちょ───待てって!」 彰利 「いいかリヴァイア!この小僧がなんて言おうが移植しろ!     アタイはちょっくら晦神社に行くから!アディオース!!」 アタイは小僧が何かを言う前にとんずらすることに成功した。 なにやら怒声が聞こえてが、まあなんとかなるだろう。 彰利 「フフフ、待たせたな」 悠介 「ああ。それじゃ……頼む」 彰利 「オーケーイ。あ、そうだ悠介、アタイに同調しておきんさい。     アタイの月操力を媒介にすりゃあ多少の無茶は出来る」 悠介 「彰利?」 彰利 「な〜んかね、転移した先に俺がもっともブチノメしたいヤツが居そうなんでね」 悠介 「───解った」 ダーリンがアタイの波長に自分の波長を合わせる。 それを確認してから、アタイはプレイスジャンプで晦神社へ飛んだ。 キヒィンッ!! 彰利 「おーし、到着到着」 ルナ 「ゆーすけぇえええええええええっ!!!!!!」 どがしゃああああ!! 悠介 「ぶわぁっ!?」 ルナ 「ゆーすけゆーすけゆーすけぇええっ!!」 転移した途端のタックルに、さしものダーリンもメロメロだ。 悠介 「……妙な考えをしなかったか?」 彰利 「気の所為だ」 ルナ 「!ホモっち危ない!」 彰利 「ホモ言うな!って、うおっ!?」 頭上から襲いかかる黒い物体をかわした。 そして距離をとってからその先を見てみれば─── 男  「よけたか……ツマラナイな」 どこかコワレた感じの男がそこに居た。 そしてその顔は忘れる筈もない、櫂埜上喜兵衛のものだった。 彰利 「へえ……えらく若く転生したじゃないか。喜兵衛」 喜兵衛「喜兵衛……?誰だソレハ……。俺は……オ、レは……」 悠介 「───逝屠!!」 彰利 「ほへ?」 ルナ 「そーなのよ!また現れたと思ったら『力をよこせ』って!     どうなってるの!?悠介が月蝕力で消したんじゃなかったの!?」 ……話が見えん。 逝屠?「ソウ……俺は十六夜逝屠ダ……!     喜兵衛……キヘイキヘイ……?そんな名は……?」 彰利 「あのー、いっちゃってるとこで悪いんだけどさ。     ダーリンがその『逝屠』ってヤツを月蝕で消したのっていつ?」 悠介 「高校卒業する前だが」 彰利 「………」 そんじゃあまだ楓は転生してないじゃん。 神の子の血ィ飲むと、同じ時期あたりに転生するんじゃないの? 悠介 「……そうか。その体……俺の実体だな?」 彰利 「実体?……ああ、そういや今のダーリンたら童心なんだっけ」 逝屠 「ソウダ……この体はイイぞ……!月蝕力というとんでもない力を操れる……!     それに気づいた俺はお前を殺すために手当たり次第に蝕んでやったぞ……!     潰えた家系以外はだいたい手に入れた……。     そしてそこの死神の中にある月癒力に引かれ、ここに来たのさ……!」 彰利 「……説明好きなんだな。なんて親切な」 俺だったら面倒なことは嫌だが。 逝屠 「人形ォ……おまえの中で俺は……ずっとこの時を待っていた……!     貴様が眠った時を見計らっては、     いつでも乗っ取ろうとして少しずつ馴らしていった……」 悠介 「……だから俺の意識だけが飛ばされたってことか?」 逝屠 「そうだ、邪魔だったんだ。だがそのまま消すのは俺が納得できねぇ……。     お前は俺がそうされたように、月蝕で蝕んでやるんだからな……!」 ルナ 「なによなによ、あいつむかつく!     悠介、あの時みたいにばばーんとやっちゃって!」 悠介 「いや……俺には実体が無い分、あいつの方が上だ。     それにあいつは他の家系の能力を蝕んできたんだろう?だったら……」 逝屠 「そう……今のお前が勝てると思える相手じゃない。     今度はお前が月蝕の混沌の中で苦しむがいい!」 ……ごちゃごちゃうっさいやっちゃのう。 彰利 「ブラスト」 ドチュンッ!ガキィン! 彰利 「ややっ!?」 アタイのブラストは喜兵衛もどきの周りに現れた光の壁によって弾かれた。 彰利 「…………むかつく力使いやがって。     その能力はお前が使っていいようなもんじゃねぇんだよ!」 逝屠 「来るカ!?クルカ!!?コイ!全部飲み込んでヤル!!!」 彰利 「ダーリン!!ルナっち!いくぞ!」 悠介 「お前が仕切るな!」 ルナ 「そうよホモっち!!」 彰利 「ホモっち言うな!!」 ───。 リヴァ「……ふう。奇跡の魔法の移植は完了した。あとは記憶と能力だな」 ルヒド「そうだね。キミは……凍弥だったね?」 凍弥 「あ、ああ……」 ルヒド「ちょっと失礼するよ。キミの中の記憶を調べさせてもらう」 凍弥 「え!?あ、ちょっと待て!それは───」 人の話も聞かず、死神サンは俺の額に手を添えた。 その途端─── ルヒド「───!!」 凍弥 「……?」 死神さんは強いショックを受けたように驚いていた。 だけどやがて涙を流した。 ルヒド「……かあさん」 凍弥 「え?」 俺の中の記憶に何を見たのか。 死神は小さく震えた。 だけど涙を拭うと、微笑んだ。 ルヒド「そうか……転生してたんだ……。     それなら───あなたたちに返したいものがある」 えーと、何がなんだか解らん! 解らんけど、死神は俺と朧月を見て微笑んでるんです! ルヒド「さあリヴァイア。記憶と能力の移植を始めるよ。僕は記憶、キミは能力だ」 リヴァ「任せておけ」 で、やっぱりわけの解らないままに作業は続く。 ……なんだかなぁ。 朧月のヤツ、居心地悪そうにしてますよ? 彰利 「がはぁあっ!!」 月醒力で吹き飛ばされた俺は、神社の石畳に叩きつけられた。 悠介 「彰利!」 ルナ 「ホモっち!」 彰利 「ホモやめぇ!!緊張感ってもんがないんかいアータ!」 悠介 「お前がそれを言うか!?ゼノ戦でママレモン使う馬鹿がそれを言うか!?」 彰利 「ごめんなさいごめんなさい!!恥ずかしいから思い出させないで!!」 ハッキリ言って、この逝屠とかゆうヤツは厄介だった。 月操力のなにもかもが効かない。 何を放っても、あいつに届く前に消されちまう。 というわけで 彰利 「小石投擲ーーッ!!撃(て)ェーーッ!!」 ブンッ!!ボゴシャッ!! 逝屠 「ぐがっ!?」 彰利 「キャアア!!イケる!これはイケるわ!!     ダーリン、ルナっち、石だ!石を投げれーっ!いてもうたれー!」 悠介 「よしきた!」 ルナ 「石ね?よっと」 おのおの方が石を拾ったのを確認すると、合図と同時に投げまくった。 それはもう、イジメられっこをいじめるように。 彰利 「カスめ!カスめ!!」 悠介 「クズめ!クズめ!!」 ルナ 「馬鹿め!馬鹿め!!」 ドボッ!ゴスゥッ!ゴドォッ!! 逝屠 「ぐっ!ぐはっ!!き、貴様ら……!!」 でもここまででした。 逝屠が光の壁───電磁場をより具現化すると、石すらも弾かれてしまった。 しかもみるみるうちに逝屠の傷が消えてゆく。 彰利 「うわあ……あいつ月生力の家系まで飲んだのかよ……」 勘弁してほしかった。 ───不思議だと感じた。 気づけば心の中はとても暖かく、 どうして今まで忘れていたのかが不思議なくらいに嬉しかった。 椛  「……鮠鷹さま……」 凍弥 「楓……?本当に楓なのか……?」 目の前に、あの人が居る。 そして……わたしの体も病に侵されていない。 凍弥 「……!楓……いや、朧月……その髪……!」 椛  「え……?」 言われてみて気づいた。 目に掛かりそうな髪の色を見てみれば、それは銀色じゃなくて……綺麗な黒髪だった。 ルヒド「……かあさん」 椛  「え……?あ───あなたは……」 ルヒド「おひさしぶりです……どれくらいになるでしょうか」 椛  「やっぱり……あの時わたしが作った子供の……男の子の方ですね……?」 ルヒド「はい……。あの時、僕はあなたに作られたことで生を受けた。     けれど僕の中に死神───ウィルヴスが流れ込み、     僕は冥界で生きることになりました。     そして……妹として作られたあの子が───恐らく、月の家系を作った」 椛  「………」 ルヒド「かあさん、あなたに会えたら必ず渡そうと思っていたものがあるんです。     受けとってもらえますか?」 椛  「渡したいもの……?」 ルヒド「……ウィルヴスがあなたがたから頂いた献上品です。     この記憶には、あなたがたの大切な思いが宿っている。     でも……強制はしません。僕にもこれがなんの記憶なのか解らないんです」 椛  「………」 ルヒド「だけどあなたがたにとって大切な記憶だったのは確かです。     ……どうしますか?」 楓は悩む。 だけどどこかやさしい笑顔をすると、まるでひとりごとのように死神に言った。 椛  「わたしには……父がどういう人だったのかという記憶がありませんでした。     誰がどうやってわたしに微笑みをくれたのかも覚えてません。     その意味が……ようやく解った気がします。     だから……わたしはそれを受け取ります」 ルヒド「……はい、かあさん」 死神は楓の言葉を受け取ると、手の中に輝く光を霧にして世界に広げた。 その途端───俺の中に、あいつのことがハッキリと浮かび上がってくる。 椛  「あ……ああ……!!」 彼女も同じようで、俺と同じように涙を流していた。 椛  「あきえもん……お……おとうさん……!」 弓彰衛門。 その名前が広がっていき、体が震える。 そして我慢しきれなくなる。 言いたいことがたくさんありすぎて、飛び出したくなるほどに。 椛  「───っ!!」 それは楓も同じだったのか。 彼女は能力を使ったのか、一瞬にしてその場から消えた。 ───……。 彰利 「はっ……はっ……!いぐっ……!かはっ……!!」 逝屠 「……モウ、終わりか……?くはははは……!     なんだろなぁ……お前を見ていると憎らしくて仕方が無い……!」 彰利 「へっ……そりゃそうだろな……!     最初の時代で矢を投げ返して刺したんだもんなぁ……!     恨まなかったら聖人君子だぜ……!」 逝屠 「だが……もう人形も瀕死、死神も虫の息……お前ひとりでなにになる……?」 彰利 「ふ……お前に鼬の最後っ屁ということわざの真意を伝授しよう……!     彰利ィイイイイイイイッ!!」 逝屠 「っ!」 彰利 「……握りっぺ〜♪」 モワッ。 逝屠 「!?がっ……!ぐはっ!ごはっ!!」 彰利 「隙ありゃぁああああっ!!」 逝屠 「───!」 バチィッ!! 彰利 「アウチーッ!!」 くそっ!やばくなると電磁場ばっか使いやがって!! 彰利 「てめぇ卑怯ですよ!?紳士らしく素手で勝負したまえ!」 逝屠 「ウルセェ!!死ネ!!」 彰利 「!うわ馬鹿!本気で殺す気」 ゾボォッ!! 彰利 「ぐはっ……!!が、がはっ……!」 こ、の……ガキ……! 脇腹えぐりやがった……!! 逝屠 「はっ……は、はははははは……ハハハハハハハ!!!!」 彰利 「ゲホッ!ゴホッ!」 だめだ……月生力が使えねぇ……! こいつ、月蝕力で俺の力を押さえてやがる……!! やべ……死ぬ……───キィンッ!! 逝屠 「あ……?」 椛  「おとう───っ!?」 あら……?椛チャンたらいつの間にここに…… 逝屠 「……オマエから家系のニオイがする……!オマエもそうか……!」 ブンッ!! 彰利 「くわっ!?」 逝屠は俺を片手で投げ捨てると、椛チャンに向かって歩いてゆく。 彰利 「ゲホッ……!ば、馬鹿!やめろ!」 解放された俺は脇腹に月生力を流しながら叫んだ。 だけど逝屠は止まらない。 椛  「おとうさんをあんな目に遭わせたの……あなたなの?喜兵衛……」 逝屠 「キヘイ……?俺は……オ、レ……?」 椛  「あなたなのね……?」 逝屠 「ケ……ケヒャヒャヒャヒャ!!ソウダ!俺だ!!あいつのワキバラ削ってや」 ボシュンッ!! 逝屠 「ケ……?」 椛  「許さない……っ!!」 腕を消された逝屠が、腕があった筈の虚空を見て首を傾げた。 あーあ、だからやめろって言ったのに。 彰利 「大丈夫か悠介」 脇腹を回復させてから、悠介に月生力を流す。 それに次いでルナっちにも。 悠介 「……どうなってるんだ?俺達の月操力が効かなかった逝屠が……」 ルナ 「う、うん……」 そうなのだ。 逝屠が張った電磁場や、月蝕力での蝕みも意味を成さない。 彰利 「ひとことで言えば……ポッと出の家系のモンが、開祖に勝てるわけねぇのよ」 悠介 「へ?」 悠介が首を捻った。 その横に見える景色では─── 椛  「おとうさんを傷つける人はぁああ……!!     わたしが許さなぁああああああああいっ!!!!」 ドゴゴゴボゴボシャドッゴォオオオオオオオオンッ!!!!!!! 逝屠 「ひぃい!!ひいいいいいいっ!!!!!」 ガトリングブラストの標的にされてマジ泣きしてる逝屠サン。 うわあ〜情けない。 彰利 「あー……悠介?可哀相だから月蝕っちゃって?」 悠介 「……そうだな。いい加減に体も返してもらわないと」 ……こうして。 魂の根にあった神の子の血液の効果を本人の手によって消された喜兵衛さんは消滅。 逝屠が蝕んだ人達は神の子の力で元通りにして事無きを得た。 そして 椛  「おとうさんっ!」 がばぁっ! 彰利 「ウヒョオ!?も、椛ちゃん!?」 椛  「えへへ〜……頭撫でて?」 彰利 「……え?楓巫女?」 椛  「うん♪」 彰利 「なんと!記憶は死神に献上した筈では!?」 椛  「返してもらっちゃった」 彰利 「……リアリー!?」 椛  「えと……ほんと?って意味だよね?うんほんと」 彰利 「抱き締めっ!」 ぎゅむ!ぱぐしゃあ! 彰利 「ギャア!」 抱き締めた途端に、鋭いショートレンジエルボーがアタイの鼻っ柱を折る。 椛  「あ、あれ……?体が勝手に……」 彰利 「……お、おのれ……!椛(本体)め……!」 椛  「ご、ごめんねおとうさん……痛かった……?」 彰利 「いえ全然。じいやが誰か、忘れたわけではないでしょう?」 椛  「あ……魔法使い」 彰利 「ザッツライト!故に俺は美しい!!」 もう、嬉しくて仕方が無い俺は喜びはしゃいでいた。 忘れられるのは馴れていても、思い出してくれれば嬉しいに決まっている。 その感情はきっと理屈じゃ唱えられないものだろうから、俺はただ喜ぶことにした。 彰利 「邪魔者は居なくなった!さぁ!幸せになる時が来ましたぞ楓巫女!!」 椛  「うんっ!」 アタイは娘を抱きあげ、大いに笑った。 ええ、ワケも解らず唖然としているダーリンやルナっちなどシカトです。 ───さて。 こうして、永い歴史に続いた因果は馬鹿者とともに消えましたじゃ。 訪れる穏やかな日常の中で確かな幸せを感じながら、俺はふと過去を思い浮かべる。 そして……みんなが寝静まった頃、俺はもう一度、今度は自分の意思で過去へと飛んだ。 やりたいことなんてたったひとつ。 歴史はその些細な出来事の数だけ存在するんだから─── ひとつくらい、最初から幸せが続く世界があったっていいと思う。 だからこそもう一度。 俺は自分の子供たちと同じ時間を過ごそうと思った。 「小僧!」 「こぞう!」 「なに、楓巫女、彰衛門」 「わしは天狗じゃ!」 「わしはてんぐじゃ!」 やることなんてからかうことばっかりだけど、 そんなことがあるからこそ日常を実感できることを、俺は親友を通して知った。 だからこそ、今度こそ……人の黒さばかりに染まらない歴史を。 他の誰でもない俺が、こいつらにプレゼントしようと思う。 「え?天狗!?ほんとか!?」 「ウソじゃ」 「うそじゃ〜」 「………」 ───自惚れって言葉がある。 だけどそれは、時として微笑むことさえ許してくれる。 いつからか力を望んだ俺が、ただがむしゃらに走って、転んで。 けれども立ち上がれたのは親友が居たからだった。 その親友をここまで信頼できるのは自惚れなんかじゃない。 「く、くああああああっ!!!」 「キャアア怒ったわこの小僧ったら!逃げるぞ楓巫女〜♪」 「きゃ〜♪きゃ〜♪」 だからこいつらも、互いが互い同士に信頼できるように。 裏切りなんて言葉が解らないくらい、信じることが楽しい未来を作ってやろう。 「どーして楓巫女ばっかり甘やかすんだよー!」 「可愛いからじゃ!」 「からじゃ〜!」 「う、うぐ……」 「!?こ、これ泣くでない!あぁ……すまんかったの、許しておくれ?」 「おくれ……?」 「……つーかまーえた!!」 「なにぃ!?謀ったなブッチャー!!」 「ぶっちゃー?たかまささま、ぶっちゃー?」 「な、なんだよそれ!」 「キャアアブッチャー!!このブッチャー!!」 「ぶっちゃー!」 「む、むがぁああああああっ!!!」 「怒った!怒りおったわ!カルシウムが足らんなぁ!」 「さーもんをくえ!あたまからまるごとな〜!」 「さ、さ……?」 「キャア楓巫女ったら!もう覚えたの!?」 「おぼえた〜♪」 「うがぁああああああっ!!」 「うわ、やばい!やっぱり逃げるぞ楓巫女〜っ!」 「きゃ〜♪」 物語に始まりがあるなら、こいつらの物語はここからだから。 だから、その小さな物語をゆっくりと育ててゆこう。 ───他の誰でもない、俺たちの手で。 Next Menu back