───あなたに届けゴートゥーヘル───
キーンコーンカーンコー……ン…… 彰利 「離したまえ!なにをするのかねキミ!無礼ではないのかね!」 夜華 「黙れ!」 椛  「わたしカスじゃないよ!」 ……えーと、昼になりました。 やってきたセンセ達は椛に暗示をかけられて退室。 ふたりは今もなお、彰衛門に翻弄されていた。 俺は俺でもう昼を済ませて戻ってきたところだ。 争いが終わってますようにって願いはあっけなく打ち砕かれたけど。 浩介 「ふーむ、食した食した。やはり掻き揚げうどんは最高だな」 浩之 「しかしな、やはりとんこつラーメンをメニューに入れるべきではないか?」 浩介 「知ったことか……って、なんだ。まだ争っていたのか。     苦労が尽きないな、盟友」 凍弥 「ハハ……」 乾いた笑い声しか出ませんでした。 凍弥 「あのさ、そろそろお開きに……」 椛  「黙っててください!」 夜華 「黙っていろ!!」 彰利 「そうだこのハゲ!」 凍弥 「ハゲ!?」 なんかヒデェ中傷された! 夜華 「だいたい貴様、楓さまを放ってどこへ行っていたのだ!!」 椛  「あ!食事してきたんですか!?     ヒドイです!一緒に食べようって思ってたのに!」 凍弥 「え!?あ、いや、でもさっ……」 さっきも声かけたら『黙っててください!』って突き放されたんですけど!? 夜華 「でも、なんだ!」 椛  「なんですか凍弥先輩!!」 凍弥 「あ、う、うおお……」 なんたる殺気か……! 彰衛門のやつ、こんな殺気をこの時間になるまで浴びていたのか! しかも意地でもからかい続けてたし。 彰利 「おやめなさい!」 夜華 「なんだ!何故止める!」 椛  「おとうさん!?」 彰利 「ふぁ〜ったくクソカスどもが……。いい加減にしなさい」 夜華 「クソカス……!?お、おのれ貴様!」 椛  「わたしクソカスじゃないよ!」 彰利 「それじゃあなんなのかね!?     ワタシにも解るように平明に答えてほしいものだね!」 夜華 「え?あ、えと……?わ、わたしは……」 彰利 「なにかね!?答えられないというのにワタシの言葉を否定したのかね!?」 椛  「わ、わたしは……魔法使い」 彰利 「うむうむ、楓巫女は偉いのぅ……」 なでなで…… 椛  「え、えへへ……♪」 夜華 「!わ、わたっ、わたしはっ……!」 答えた椛が撫でられたのを見て、篠瀬も何かを言おうとする。 夜華 「わ、わたしは───そう!武士だ!」 彰利 「そうか」 夜華 「………」 彰利 「ん?なにかね、ワタシの顔になにか付いておるのかね?」 夜華 「……おい、彰衛門?」 彰利 「なにかね……言いたいことはハッキリ言いたまえ」 夜華 「そ、その……だな。わ、わたしも……」 彰利 「なにかね!ハッキリ言いたまえと言っているだろう!     ワタシはそんなに暇ではないのだよ!?」 夜華 「あ、す、すまない……うん?何故わたしが謝らねばならぬのだ!?」 彰利 「そんなことはワタシは知らぬよ!何を言いたいのかねキミは!」 夜華 「あ、あ───えと……!そのっ……!」 顔を真っ赤にしながら俯く篠瀬。 こうして見ると、実に女らしい。 夜華 「わ、わたしも───わたしも、その……!」 椛  「……!」 きゅっ……。 彰利 「む?」 椛  「………」 椛が彰衛門の胴に抱きつく。 まるで、手放したくないように。 夜華 「楓さま……何故……」 椛  「ごめんなさい夜華……。     でも……やっぱりわたしにとって、ただひとりのおとうさんなの……!     失いたくないの……!」 夜華 「楓さま……!」 ふたりの間になんとも言えない空気が流れる。 ……とても居心地の悪い、イヤな空気だ。 彰利 「む、険悪な雰囲気ですな」 だというのに、どうしてあいつはここまで冷静なんだか。 浩介 「なんだ?よく解らんが……もみ……いや、朧月は二股をしているのか?」 凍弥 「そういうのじゃないよ、あれは」 浩之 「そうなのか?謎だな」 俺は志摩兄弟に囲まれながら溜め息を吐いた。 彰利 「これこれキミ達、     なにが原因で争っているのかは存じませぬが、それくらいにしておきなさい」 夜華 「………」 椛  「………」 彰利 「ややっ!?なにやら喩えようのない地雷を踏んでしまったような気配!」 夜華 「な、なにが原因だか解らないぃい……!?」 椛  「おとうさん……!!」 彰利 「え?なに?なんなの?なんでふたりしてアタイに熱い視線を……?     ああ!もしかしてアタイってニクイやつ!?」 夜華 「くわがあああああああああああっ!!!!」 椛  「おとうさんのばかぁあああああっ!!!!」 彰利 「へ?キャッ……キャーッ!?」 ボコベコザクドシュガンゴンゴシャザシュガンガンガンガンゴシャアッ……!!!! 彰利 「というわけでさ、変わり身の術で逃げてきたわけですけど」 椛&夜華『あれっ!?』 ふたりが驚いて手を休めると、その中心にはマスオさんのぬいぐるみが。 彰利 「彼女ら、なにゆえに怒ってんの?     そこんとこ、もおちゅう詳しゅう聞かせぇかぁ」 凍弥 「はぁ……えっとなぁ」 本気で何もしらない彰衛門に、俺はわざわざ説明することになった。 彰利 「なんと!それではあのおなご達はアタイのために争いを!?」 凍弥 「……まだ何も説明してないんだが?」 彰利 「大丈夫、知ってたから」 凍弥 「だったらその時点で解決しろって!」 彰利 「ったく……これだから素人は困るんだよカスが……。     そんなことでは真のからかい上手にはなれなくてよ……?」 凍弥 「しみじみとカスって言うなよ……」 彰利 「ま、それはそれだ」 そう言って、彰衛門はいがみ合ってるふたりに死線を向け───死線!? 彰利 「……抜きな。どっちが早いか勝負だ」 ドシュッ。 彰利 「ギャアアアアア!!!!!」 抜きなもなにも、彰衛門は既に抜いていた刀で見事に斬られていた。 だが次の瞬間。 彰利 「なにをなさるの!?痛いじゃない!」 夜華 「……っ……わ、わたしはなぁ……!貴様が……!」 篠瀬が彰衛門の胸倉を掴み、顔を赤くして口を開いた。 だが─── 椛  「だめっ!だめだめだめ!おとうさん取らないで!やめて夜華!だめぇっ!」 椛が告白しようとする篠瀬の腕を掴み、泣きながら懇願した。 夜華 「っ……!何故貴様だったのだ……!貴様じゃなければわたしは……!!」 彰利 「……えーと、なんのお話で?」 夜華 「くそっ!こんなではダメではないか!どうすればいいのだ!?」 彰利 「知りませんよあたしゃあ!なに逆ギレしとんじゃい!     それよりも離したまえ!なにも出来ないではないか!」 夜華 「くっ……!せっかく……!     せっかく自然で居られるヤツと出会えたというのに……!」 篠瀬は力なく彰衛門を離し、涙を散らした。 彰利 「……はぁ。しゃーのない」 そんな中で彰衛門は息を吐き、椛の頭をポンポンと叩いた。 椛  「おとうさん……?」 彰利 「言っておきますが、じいやはいつでも、     いつまでも、何処にいようが楓巫女の親ですぞ?」 椛  「うん……」 彰利 「何かがあったからってそれが変わるわけじゃあありませぬ。     楓巫女も、それは解っておるじゃろう?」 椛  「う……」 彰利 「……それとも、いっそじいやのことは忘れた方が幸せかの?」 椛  「っ……!やっ!もういや!そんなのやだ!!」 彰利 「……そう。     楓巫女がじいやのことを忘れぬかぎり、じいやは楓巫女の親ですじゃ。     それなら欲張りになる必要などないのですよ。     それにホレ、楓巫女には隆正がおるではないか」 椛  「あ……」 凍弥 「………」 こちらを向く椛に、苦笑気味に笑いかける。 彰利 「じいやは楓巫女の幸せを願っておるのですじゃ。     だから……今まで出来なかった分、誰よりも幸せになりなされ。     そしてその幸せを与えてあげられるのはじいやではなく、小僧じゃ」 椛  「で、でもわたし……おとうさんが居ないと怖くて……」 彰利 「大丈夫ですじゃ。じいやが居なくても楓巫女や楓は成長しましたじゃ。     それは紛れも無いおぬしの頑張りじゃろう?」 椛  「で、でもあの時は隆正さまや、鮠鷹さまや夜華が一緒に居てくれたから……!」 彰利 「……今、そのふたりともが椛の傍におる。それがわからぬか?」 椛  「───……!」 彰利 「……強くなりなさい、楓巫女。おぬしにはそんな力がある。     そして、支えてくれる人がおるのじゃ……。     あとは楓巫女が立ち上がればええ……そうじゃろ?」 そこまで言うと、彰衛門の姿がゆっくりと消えてゆく。 椛  「あ……え……?お、おとう……さん……!?」 彰利 「む……?おお……とうとう時間切れのようじゃな……」 椛  「時間切れ……?」 彰利 「じいやはな、この時代に居られる時間をあらかじめ決めておいたんじゃ……。     そして今日というこの日が最後の日になったようじゃな……」 椛  「そ、んなっ……そんなぁあ……!!     や、やだ……やだよぅ……おとうさぁん……!!」 彰利 「……ふふ、じいやは幸せでしたぞ……楓巫女」 やがて、椛の頭を撫でていた手が消え……彰衛門は消えた。 椛  「うっ……うあぁああああああああんっ!!!!!」 ……椛は泣いた。 子供のように、誰の視線を気にするでもなく。 俺はそんな椛に胸を貸してやることしか出来なかった。 そして気づけば篠瀬の姿は無く─── その場には、クラスメイト達と志摩兄弟と、俺と椛が残された。 夜華 「っ……!くそぅ……くそぅくそぅくそぅ!!     なんだというのだ……!涙が……涙が止まらぬ……!!」 わたしは無我夢中で走っていた。 彰衛門が目の前で消えた途端、嗚咽が止まらなくなってしまった。 胸の苦しみは限界を知らないかのようにキツくわたしを苦しめた。 夜華 「くっ……くふっ……!うぅ……!うわぁあああああっ……!!!」 やがて走りながら声を出して泣いた。 足がもつれそうになっても立ち止らずに。 やがていつの間にか知らない場所に辿り着き─── 夜華 「情けない……!何が武士だ……!何が女である前にだ……!!     これは女の感情ではないか……!くそっ……くそっ……!!」 わたしは立ち止り、そこが川だと知ると顔を洗うことにした。 夜華 「……っ……だが……苦しくて仕方が無いのだ……!涙が止まらぬ……!     彰衛門……───彰衛門……!!」 ポタポタと、川がわたしの涙を流してゆく。 わたしは乱暴に水を掬いあげ、顔を洗った。 そして拭ったあとに見えた視線の先に─── 夜華 「!」 熊が居た。 かなり大きい。 わたしはもう一度涙を拭うと、刀を構えた。 熊  「………」 だが熊はわたしを無視するかのように食料の調達を始めた。 器用に腕を振るい、魚を飛ばした───その時! 声  「アァアアアアアアアアアッ!!!!!」 夜華 「!?」 その声は聞こえ、森の方から人が走ってくる。 そして何を血迷ったのか、熊に体当たりをした。 夜華 「馬鹿な!何を考え───あ」 その男は立ち直った途端に熊に殴られ、距離をとった。 そして何やら体術の構えをとった途端に熊に後ろ回し蹴りをくらい、 怯んだ瞬間に下段蹴りをくらっていた。 夜華 「な、なぜ……?」 だが男は空を指差して熊の気を引いた。 熊は空を見上げ───その瞬間、男は熊に金的をくらわせる。 ───が。 熊  「………」(ニッコリ) 男  「……えーーーーーと……うわっはっはっはっはっは!」 ゴバァン!! 男  「スービエ!」 満面の笑みで微笑まれたのち、思いきり殴られていた。 金的は効かなかった上に、笑って誤魔化すことも無意味に終わった。 そうこう考えている間にもゴバァングボォンドゴォンと殴られ続けてゆく。 男  「イヤァたすけてーーっ!!この熊強い!マジ強い!」 ゴリッ。 男  「ギャアアア!食われるーーーっ!!く、こ、この!調子に乗るなカスが!」 ゴッ! 熊  「グオッ!?」 男  「ククク……虎口拳をくらわせてやった。     貴様は次の攻撃をまともにくらうことになる。───くらえぃ!」 ズボォッ! 男は熊の腹に拳を叩き込んだ。 だが─── 熊  「グルルル……」 男  「アレ?……いやっはっはっはっは!!」 男は再び笑って誤魔化そゴバァン!! 男  「つぶつぶーーっ!!」 ……うとしたのだが、怒りを露にした熊に横殴りにされた。 そして───わたしはもう我慢できずに飛び出した。 夜華 「彰衛門!貴様、消えたのではなかったのか!?」 彰利 「アレー!?なんで夜華さんがここに!?」 夜華 「そんなことはどうでもいい!こいつをなんとかするぞ!」 言って、刀を抜いた。 が─── 彰利 「おやめなさい!アタイの前での殺生は許しませんよ!?」 夜華 「な、に……!?」 彰衛門がそれを止めた。 夜華 「ならばどうするというのだ!」 彰利 「こうするのさ!」 彰衛門は落ちていた魚を拾い上げ、逃走した。 夜華 「なっ───ま、待て!!」 わたしは急いでそれを追ようにして走る。 夜華 「質問に答えろ彰衛門!貴様、何故ここに居る!?」 彰利 「あーん!?もとの時代に戻ってまた来ただけじゃよ!?」 夜華 「なに!?」 彰利 「ゼノならもう倒したんでね!ほれ見てみい!もう制服じゃないでしょ!?     ちなみにアタイ、もとの時代に戻ってから結構時の経ったアタイぞ!?     田舎の夢は最強でした!そしてアタイも最強!」 夜華 「よく解らんぞ!」 彰利 「よーするに元の時代でやりたいことをあらかた済ませてきたのよ!     卒業したかったし悠介と旅に出たかったし!そして見よ!     これが伝説の刀、冥月刀ぞ!?ステキでしょ!?」 急いでいる所為か、彰衛門は言うことがバラバラだった。 確かにすぐ後ろに熊が居て、急がないわけにもいかないのだが。 彰利 「いんやぁー、月操力をこの刀の中に封印したはいいけどさ、     ほら、やっぱこの時代のことが気になるじゃん!?     だから悠介と粉雪には内緒で来ちゃいました!最強!」 熊  「ガオオ!」 ボゴォッ! 彰利 「ヘキャーッ!?」 夜華 「彰衛門!?」 彰衛門が熊に殴り飛ばされた。 それを見たわたしはカッとなって刀を抜き─── 夜華 「貴様ぁあああっ!!」 彰利 「おやめなさいっつーのに!!」 夜華 「無事だったのか!?」 彰利 「冥月刀がある限りは死んでも死なんよ多分。     月光の煌きっつーのかね、月明かりの波動が流れ込んでくるから、     いつでも全快でいられる優れものです!」 夜華 「よく解らんがこの状況をどうする気だ!?」 彰利 「こうすんのよ!冥月刀よ、アタイに力を!」 彰衛門がそう言うと、刀が黒く光った。 彰利 「月空力、異翔転移!熊さん、川へ戻りなさいの術!!」 夜華 「なにっ!?」 突如、熊が透明な闇の球体に囲まれ、やがて消えた。 夜華 「な、なにをしたのだ?」 彰利 「いえね?さっきまで居た川に返してあげたんですよ。ちなみに魚も一緒に」 夜華 「なに!?それではなんのために拾ってきたのだ!」 彰利 「面白いからです!」 夜華 「くはっ……!!」 全然変わっていない。 それに怒りを覚えるが…… 夜華 「くふっ……」 わたしは感情とは逆に、笑い出した。 彰利 「ややっ!?どうされた!?もしやヘンなものでも食べましたかな!?」 夜華 「あはははは……ははっ……はぁっはっはっはっはっは!!」 おかしくて、だけど何がおかしかったのかが解らない気持ち。 だけどこれだけは言えた。 わたしは確かに嬉しいと感じている。 それは隣に居るこいつのおかげなのだろう。 夜華 「はははっ……なぁ彰衛門」 彰利 「なんぞね?」 夜華 「わたしは……わたしは、貴様が好きだ」 彰利 「───…………」 夜華 「言っておくが本気だぞ?」 彰利 「………………」 夜華 「……彰衛門?なにをしている?」 彰利 「いや、カメラはどこかなぁと。だってこれ、ドッキリでしょ?」 夜華 「どっきり?」 彰利 「人を驚かせて笑うやつのこと」 夜華 「……あ、あのな彰衛門!わたしは本気で貴様を好きだと言っているのだ!」 彰利 「……うそですじゃ?」 夜華 「わたしは本気だ!!」 彰利 「………」 夜華 「………」 彰衛門は目をパチクリとさせた。 彰利 「えやっはっはっは!またまたご冗談を!」 夜華 「本気なんだ!わたしは貴様が好きなんだ!」 彰利 「……今、なんと……?」 夜華 「わたしは貴様が好きだ!」 彰利 「俺を……マジすか」 夜華 「本気だ!」 彰利 「……と見せかけてドッキリ!?」 夜華 「本気なんだ!恥じをかかせるな!!」 彰利 「なんとまあ……マジすか」 彰衛門は狼狽(うろた)えていた。 だがわたしは構わずに詰め寄る。 夜華 「返事を聞かせてくれ!か、覚悟は出来ている!」 彰利 「か、覚悟っつったって……」 彰衛門は困った顔をわたしに向けると真剣な顔をした。 彰利 「……すまん。俺にはもう恋人が居るんだ」 夜華 「恋人……」 その言葉を聞いて、ズキリと胸が痛んだ。 まるで、心地良かった心が突然毒にでもなってしまったようだ。 夜華 「だ、だがそれは貴様の時代のことなのだろう!?     頼む、この時代に居る間だけでいいんだ!わたしを貴様の傍に置いてくれ!」 彰利 「………すまん。それは出来ない」 夜華 「なぜだっ……!わたしは貴様になら……!」 彰利 「あいつが俺を好いてくれてるように、俺もあいつが好きなんだ。     ……それを裏切ることは出来ないし、裏切ろうとも思えない」 夜華 「くっ……!わ、わたしがガサツだからか……!?     わたしが刀を振るうことしか出来ないオトコオンナだからか……!?」 彰利 「二股なんてしたくないだけだよ。他意はない」 彰衛門は本当に真剣な目で、真っ直ぐに答えてくれた。 だけど……わたしは納得が出来なかった。 夜華 「いやだ!わたしは……わたしは貴様じゃなければダメなんだ!     諦めないからな!わたしは貴様が好きなんだ!」 彰利 「夜華さん……」 夜華 「───っ」 ちゅっ…… 彰利 「むぐっ!?」 浅美 「───……っ……」 わたしは彰衛門の口に自分の口を押し付けた。 そして距離をとり…… 夜華 「諦めるなんて絶対に嫌だ……!き、貴様好みの女性になってみせる!     刀を捨てろというなら捨ててもいい!だから───!」 彰利 「………」 彰衛門は口に手を当て、カタカタと震えていた。 夜華 「っ……だから……───嫌いにならないでくれ……っ!!」 たまらなくなって、わたしはその場を走り去った。 震えられるほどに嫌だったんだと感じてしまった。 そして───わたしにはそれを訊くほどの勇気がなかった。 結局、肝心な時には弱い女なのだと……痛感してしまった。 ───……。 彰利 「……………」 アタイはカタカタと震えながら口に手を当てた。 まだ残ってる柔らかい感触と暖かさ。 そして、心地良い髪の香りに女らしさが滲み出る夜華さん。 その全てが危険だったが───なにより恐ろしいことが別にあった。 彰利 「あ、あああああ……!!こ、粉雪に殺される……!!」 アタイの頭の中には恋人の顔が『阿修羅面・怒り』に変貌し、 アタイがボコボコにされる風景が大絶賛上映された。 ───つまり、それだけ粉雪に知られたらマズイってこと。 彰利 「イヤァアアアアアアアアッ!!!!」 目に見える景色が夕暮れに変わる頃。 アタイは泣くしかなかった。 Next Menu back