───高校生日記───
ざしゃぁっ! 風間 「よぉっし!」 俺の放ったシュートがゴールネットに勢いよくきまる。 亮  「ナイスシュート!今日調子いいじゃないか」 風間 「まぁな、昨日いいことがあったからその所為かも」 そりゃあセンパイに彼女が出来たのはちょっと残念だが、 困ったようでもやっぱり嬉しそうなセンパイを見ていたら祝福もしたくなるってもんだ。 あ、別に俺は男色じゃないぞ。 残念ってゆうのは、話せる時間が少なくなるからってことだ。 恋人優先にするだろうし。 柴  「おーし!朝練はここまでだー!!」 風間 「おつかれッしたぁーっ!」 サッカーの朝練を終えると、俺は部室にシャワーを浴びに行った。 ウチのサッカー部は中々期待されていて、去年校長がつけてくれたらしい。 風間 「運動のあとのシャワーっていいよなぁ」 亮  「けどさ、早起きしなきゃなんないのは部活として面倒だよな」 風間 「それは言えてる。     でもまあ、俺達より早く起きてガッコ来てる人も居るわけだし」 亮  「……マジ?誰そいつ。部活は?」 風間 「部活は帰宅部。ほら、居るだろ?凍弥センパイ」 亮  「あー……納得。あんなに早くガッコ来て何がしたいのか謎だよなぁ」 風間 「静かな時間が好きらしいぞ。俺も見習いたい」 亮  「ふーん……よくわからん」 喋りながらシャワーを浴び終え、適当に乾かして外に出た。 風間 「でもまあ、やっぱり部活終わってすぐに勉強ってゆうのもキツイか」 亮  「だよなぁ」 思わず溜め息が出る。 と、そんな時だった。 女の子「あの……」 風間 「ん?」 突然、女の子が俺達に声をかけてきたのだ。 しかも相当にカワイイ。 でも───うん。 風間 「ああ、亮ね。ホレ、お呼びだぞ」 亮  「あ、おいっ」 亮はこれで、かなりモテるのだ。 今までにも相当告白されているが、それに頷いたことは一度としてない。 どういう人かも解らんのにいきなり付き合うのは間違ってるそうだ。 ……俺から言わせてもらえば、付き合わない限りは相手のことを解れる筈も無い。 風間 「んじゃ、先に教室行ってるから」 亮  「ったく……で、なに?」 亮が女の子に声をかけるのを耳にしながら、俺は学び舎へ向かった。 まったく、フるからっていったって、もうちょっと愛想よくしてやればいいのに。 風間 「おはよーっす」 教室に入ると、まだ人数もまばらだった。 随分ゆっくりだな〜とか思いながら、見知った顔に挨拶する。 品田 「おーっす。部活ご苦労さん」 風間 「ありがたい挨拶あんがと。センセはまだ来てないか」 品田 「センセ来るにはまだ時間あるしな。……って、森本は?」 風間 「アレだよ、アレ」 品田 「……アレか。くっそぉ、どうしてアイツばっかモテんだよ……」 風間 「知らね。人徳とかルックスの問題じゃないか?」 品田 「……お前、遠回しに俺がブ男だって言ってないか?」 風間 「まさか。それならそうって言うぞ俺は」 品田 「普通にヒドイのな」 品田の声に苦笑して、俺は席に 亮  「おい風間っ!」 座ろうとした途端、亮が現れた。 そして急いでいるかのように俺に声をかける。 風間 「なにお前、告られてたんじゃなかったの?」 亮  「そんなんじゃねぇんだって!!     お前足速ぇんだよ!今すぐさっきの場所に行け!」 風間 「お前まさか……泣かせた女の子の始末を俺に押し付けようと」 亮  「ンなことするかぁっ!」 風間 「しただろうが!あの時なんでか俺がビンタくらったんだぞ!?」 亮  「あ、そ、それは悪かったと思うけど……     でも今はそれどころじゃねぇんだって!」 風間 「なんだそりゃ」 亮  「はよ行け!!いいから!」 風間 「………」 はぁ。 風間 「わかったよ。さっきの場所だな?」 俺は立ち上がって歩を進めた。 品田 「なに、今から行くのか?センセ来るぞ?」 風間 「こいつが行けってんだからしょうがないだろ?個人的には面倒だから嫌だけど」 亮  「そんなこと言ってると後悔するぞ?」 風間 「なんだよ、それ」 亮  「オモシロイから言わん」 風間 「………?」 俺は首を傾げながら 教室を出た。 そしてさっきの場所。 女の子「あ……」 風間 「どもッス」 ひとまず手を軽く挙げてみた。 風間 「で……亮にここに行けって言われたんだけど……何かあったわけ?」 女の子「え、えっと……あの……」 風間 「…………?」 なんだ? よく解らんけど異様な雰囲気が漂ってる。 女の子「……わたし、皆槻静香(みなつき しずか)といいます。     あの……風間雄輝くん、わ、わたしの一生のお願いです!     つ、付き合ってください!」 風間 「いいけど」 皆槻 「ほっ……ほんとですかっ!?」 風間 「うん。で、何に付き合えばいいんだ?」 どしゃあっ! 風間 「ん?」 目の前の女の子が突然ズッコケた。 皆槻 「あ、あいたたた……あ、の……そうじゃなくて……     わ、わたしと、付き合ってくださいって……そういう意味なんですけど……」 風間 「キミと?……はて」 これはどういう状況なんだ? 風間 「えーと、ごめん。今どういう状況なのかが解らないんだけど」 皆槻 「う、うー……告白してるんですっ!わたしがっ、風間くんにっ!」 風間 「………」 告白? ……告白って…… 風間 「告白って、あの好きですとかなんとかってやつ?」 皆槻 「ほかになにがあるんですかっ!」 他に……ふむ。 風間 「ほら、実は殺人してしまったので共犯になってくださいとか」 皆槻 「そんなこと告白する人いません!」 風間 「そうかな」 皆槻 「……あの、間違えていたらすいません。もしかして動揺してます?」 風間 「いや、告白なんて初めてでさ。喜んでいいやら警戒していいやら。     どこかにカメラがあるなら冗談言いつつ探すのも一興かなって。     俺のよく知ってる人だと絶対そうするだろうから」 皆槻 「あの、真剣に聞いてください。     わたし、中学の時から風間くんのことが好きだったんです。     でももう恋人が居るだろうからって……でもやっぱり諦められなくて!」 風間 「恋人?居ないけど」 皆槻 「ええっ!?で、でも付き合いが悪いから恋人が居るに違いないって……!」 風間 「あー……」 そりゃそうだ、凍弥センパイのこと追いかけ回してたし。 風間 「恋人は居ない。断言するよ」 皆槻 「よ、よかったぁ……」 目の前の……皆槻っていったっけ? そいつは心底ホッとした顔で俯いた。 で……どうしてこんな話になったんだっけ? ───ボソッ。 風間 「うん?」 空からアンパンが降ってきた。 そしてそのあと───タンッ。 凍弥 「っと」 凍弥センパイが降ってきた。 凍弥 「いやいやまいったまいった」 センパイは落ちたアンパンを拾って苦笑していた。 風間 「センパイ……どっから降ってくるんスか」 凍弥 「お?風間じゃないか。なにやってんだこんなとこで」 風間 「………」 平然と喋るセンパイをよそに、空を見てみた。 ……あるのは木と、屋上……くらいだろうか。 窓は全部閉まってるし。 凍弥 「あ、そかそか。どっから降ってくるんだって話だったな。屋上からだけど」 風間 「……平然と人間を超越したことを言わないでください」 凍弥 「なに言ってんだ、校舎の壁と木を利用して重力を殺しながら降りれば、     こんなの誰にだって出来るぞ」 風間 「……それが無茶だって言ってるんスけど」 凍弥 「まあまあ。前世のおかげでいろいろ出来るんだ、やらせといてくれ」 ゼンセ?なんだろうか。 とか思ったら木と校舎の壁を跳ね返るように交互にジャンプしながら屋上へ消えた。 ……すげぇ、やっぱあの人すげぇ。 風間 「………」 よっ! ズルドシャア!! 風間 「ぐはっ!無理これ無理!」 登れませんよ!無理!なんかの達人じゃなけりゃ無理だって! 皆槻 「…………あの」 風間 「あ、えと……ごめん、忘れてた」 皆槻 「………っ」 風間 「うわっ!?ご、ごめん!」 皆槻は泣き出してしまった。 風間 「ど、どうして泣くんだ!?おいっ!」 皆槻 「ひどいです……忘れたなんて……」 風間 「あー……う、えっと……」 皆槻 「ぐすっ……う……っ……」 風間 「え、と……」 まいったなぁ……俺こういうのって苦手なんだけど……。 皆槻 「……返事、聞かせてください……」 風間 「返事?」 皆槻 「告白の返事……」 風間 「………」 返事って言いわれたってなぁ。 風間 「……あのさ。俺、キミのことなんにも知らないんだぞ?」 皆槻 「だったら……だったら今からでいいです、わたしを知ってください」 風間 「う……」 なんか誰かに聞かれたりしたら誤解を招きそうな言葉だ───なぁあああっ!!?? 風間 「……さ、佐古田センパイっ……!!」 皆槻 「……?」 最悪だ。 こんな場面を見られるだなんて……!! しかもジョジョ第5部の最後あたりに出てくる画家みたいにねちっこく睨んでるし。 えーと、エレベーターの中から覗いてきてるシーンね? スタンド名、ローリングストーンだっけ? あ〜……って、こんなこと考えてる場合じゃないよな。 どうしよう。 佐古田「…………」(ニヤリ) 風間 「!!」 だだだっ! 佐古田センパイが逃げ出した。 うわっ!物凄く嫌な予感がする!! 風間 「ご、ごめん!俺ちょっと用事が出来たからっ!」 皆槻 「えっ!?あ、あのっ!」 風間 「佐古田センパイ!ちょっ……ちょっと待っ……速ェーッ!!     なんでサッカー部の俺より足速いンスか!?」 ───……。 皆槻 「……フラレ……ちゃった……かな」 風間くんの後姿を見て息を吐いた。 あの女の人が好きなのかなとか、いろいろな思考が頭の中に現れる。 そりゃあ……わたしは病弱だしパッとしない顔で、近眼でメガネだし……うう。 皆槻 「うっ……ひっく……うぁああ……ん……」 突然の告白だからって、相手にすらされなかったのはショックだった。 初恋は実らないってゆうけど、それは本当なのかもしれない。 そうした初めての告白のあと……わたしに残ったのは言いようのない孤独感だけだった。 ───……。 凍弥 「……今日もお空が綺麗だなっと」 朝。 俺はアンパンを拾い上げてから屋上のてっぺんで空を見上げていた。 ああちなみにこのアンパンは朝食である。 食パンが尽きていたので、今朝ヘブントゥエルブで買ったものだ。 凍弥 「牛乳を買わなかったのは失敗でした。反省してます」 なんて、誰に言ってんだか。 …………っ……っく……。 凍弥 「……う」 なんだ?なにか聞こえたな。 とっても嫌な声だ。 ……そう、俺がもっとも苦手な……『泣き声』!! 凍弥 「ど、どこだ!?     早急に泣き止んでもらわねばこの朝の心地良さが台無しじゃないか!」 見るんじゃない!感じるんだ……って下か。 凍弥 「……って、さっき風間が居たところじゃないか。なんだってんだ?」 フェンス越しに見下ろしてみると、確かに女の子が泣いている。 ……よし、泣き止んでもらうとしよう。 これでまたお節介だのどうのと言われても今更だ。 それでは先ほどと同じように───タン、タン、タン、っと。 俺は大きな木と校舎の壁を交互に蹴り、重力を殺しつつ大地に降り立った。 凍弥 「オッス」 女の子「ッ……!!」 うおう、思いっきり怯えた目で見られてしまった。 凍弥 「ってしまった、考えてみりゃあ上履きだ」 しっかりと大地を踏みしめた後だからどうにも出来ん、諦めよう。 凍弥 「というわけで泣き止んでくれ」 女の子「え……?」 凍弥 「誰かの泣き声とか泣き顔、苦手なんだ」 女の子「……うぐっ……うっ……」 凍弥 「………」 逆効果? 女の子「ひどい……フラレちゃった人に泣くなって言うんですか……?」 凍弥 「フラレ?……って……もしかして風間?」 女の子「………」 女の子は微かに頷いた。 へえ……あいつってモテるんだ。 凍弥 「ま、どちらにしてもここに居たら教師に見つかるな。     悪い、ちょっと背中に負ぶさってもらえるか?」 女の子「え……?」 凍弥 「大丈夫、絶対に悪いようにはしない。誓ってもいいよ」 女の子「………」 ……トサ。 女の子は最初こそ警戒を見せたが、素直に俺に負ぶさってきた。 凍弥 「しっかり捕まってろよ?───よっ!」 女の子「え───?あ、きゃああああああああっ!!!」 タンッ、タンッ、タンッ、タンッ!! 凍弥 「ほい、到着」 女の子「あ、あわわ……」 降りた要領で屋上に登った俺は、女の子を降ろして一息ついた。 椛の指定席のようになっていたその屋上の屋根は、なんだか随分と落ち着く。 凍弥 「それで、なんだって風間のヤツはキミを泣かせたんだ?」 女の子「………」 凍弥 「泣かされたわけじゃなくて、フラレたから泣いたのか?」 女の子「………」 頷いた。 ふむ、どうやら感情表現が苦手らしい。 凍弥 「あっと、見ず知らずのヤツがグチグチ聞いていいことじゃないよな。     俺は霧波川凍弥。キミは?」 女の子「霧波川……先輩?お節介魔神って噂の……」 凍弥 「……言われてるなぁ俺……」 よりにもよって魔神ですか。 女の子「あ、す、すいません。わたし、皆槻静香といいます」 凍弥 「みなつき……」 ざ、斬紅郎と呼びたい苗字ですな。 似てるだけだけど。 あっちは『みなづき』だし。 皆槻 「あの……なにか?」 凍弥 「いや、なんでもない。それで風間のヤツのことだけど……」 皆槻 「……ハイ。フラレちゃいました」 凍弥 「ふむ……」 別に悪い子じゃなさそうだけど。 まああいつのことだ、いきなり告白されて戸惑ってたんだろうな。 凍弥 「フラレたってゆうの、案外間違いじゃないか?」 皆槻 「どうしてそう思うんですか……?」 凍弥 「直感ってゆうのもあるけど、そもそもフラレるような娘に見えない。     言っちゃえば既に絶滅種族の日本系の女の子みたいだし」 皆槻 「あの……日本人って絶滅しそうなんですか?」 凍弥 「いや、そういう意味じゃない。     今の若者はキミみたいに清楚じゃないって言ってるの」 皆槻 「………え?」 皆槻は不思議そうに首を傾げた。 皆槻 「この性格……誉められたの初めてです」 凍弥 「そりゃそうだろ。今の若者の中じゃあ珍しいからな。     既に日本人として『普通』がひっくり返ってる時代だ、どうにもならん。     でも、だ。俺は今の若者よりもそっちの性格の方が好きだよ」 皆槻 「………」 女の子はポカンとした顔で俺を見た。 その顔からはいつの間にか涙の色が消えていた。 凍弥 「落ち着いたかな。それじゃあ何か言いたいことはあるかな。     俺で良かったら相談に乗るけど」 皆槻 「え?あ、えっと……」 皆槻は慌てた様子でおろおろして口篭もった。 だがやがてバッと顔をあげると 皆槻 「わ、わた、わたたっ……!」 凍弥 「……落ち着いて。急がないからゆっくりと言いたいことを言って」 皆槻 「…………は、はい」 呂律の回らない彼女になるべく穏やかに言ってやり、落ち着かせる。 やがて皆槻は俯きながらポツポツと語りだした。 皆槻 「わたし……中学の頃から風間くんのことを見ていたんです……。     だけどわたしは病弱で、風間くんに告白することすらできませんでした。     ……わたしが風間くんを見たのは病院の病室から外を眺めている時でした。     病院に訪れては帰ってゆくあの人を見ていたんです」 凍弥 「…………うん」 皆槻 「最初は誰かのお見舞いなのかなって思ってました。     誰のために走ってまで来てるんだろう、って思ってました。     そうしたら……なんだかどんどんと気になり始めて……」 凍弥 「………」 皆槻 「最初は……元気に走れるあの人が羨ましかったんだと思います。     それでも気づいたら、     いつの間にかあの人が病院に走ってくるのを待っていたんです」 凍弥 「……そっか」 皆槻 「それでわたし、気になって病室を抜け出してその人のことを探しました。     そして見つけたときには……女の人と一緒でした。     とても綺麗な娘で……わたし、知り合ってもいないのにヤキモチ焼いたんです」 凍弥 「………」 皆槻はどこか自嘲気味に笑った。 皆槻 「だけどその人が妹だって解ると……わたし、本当に喜んでました。     そこで気づいたんです、自分の気持ちに」 凍弥 「そっか……」 皆槻 「それでわたし……今日外出許可をもらって、初めてここに来ました。     実はこの学校の制服を着るのもこれが初めてなんです。     それで……初めてついででフラレちゃいました」 凍弥 「あ……えっと……体、悪いのか?」 皆槻 「わたし、なんだか重病らしいんです。病名も解らないような病気です。     突然心臓が苦しくなったり、咳き込むと血を吐くのも当たり前……。     こんなわたしですから……同じ年頃の女の子みたいな一時を望むこと自体、     間違いだったんですよね……きっと」 凍弥 「………」 皆槻は俯きながら震えていた。 そして……彼女の座る部分にだけ、ポツポツと水滴が落ちる。 凍弥 「…………そんなことない」 だから俺はそう言った。 泣かれるのが嫌だとかじゃない。 凍弥 「誰にだって幸せになる権利があるんだ。もちろん皆槻にもだ。     悲しいことがあったからってそれを自分から放棄しちゃいけない。     幸せってゆうのは逃げてちゃ手に入れられないものなんだよ。     そして……ヤケになったからって手に入るものでもない。     俺にはそれがよく解るから。もうそんな人は居ない方がいいんだ」 心に浮かんだのは、目的のために手段を選ばなかった隆正。 もうあんなことは起こらない方がいい。 そう思った俺は、皆槻から風間のとった行動を聞くことにした。 ───で。 凍弥 「えーと、安心しろ皆槻。それは誰もが取る当然の行動だ」 皆槻 「え?」 俺は皆槻の話聞いて確信した。 話の中に出てくる女……その苗字を聞けばほぼ間違いない。 凍弥 「そいつの名は佐古田好恵。この高校が誇っちゃならない最悪の女生徒だ。     人が悔しがる姿を好み、     隙あらば地獄の底に叩き落そうとする悪魔のような奴なんだ。     風間はキミをフッたんじゃなくて、佐古田を止めにいったんだろう。     ほっといたら無いこと無いこと捏造しまくってさらし者にされるからな」 皆槻 「そ、そんな方がいらっしゃるんですか……?」 凍弥 「居る。あいつは悪魔だ」 断言出来る。 そして話の中にある『わたしを知ってください』って言葉はひじょ〜にマズイ。 あいつにエサを蒔いたようなものだろう。 そのままにしてたら学校に居られなくこと必至。 こんな状況では俺だって告白を無視して走りそうだ。 凍弥 「まあフラレたって決めるのは、     ちゃんと話を聞いてからじゃないともったいないよ」 皆槻 「そうでしょうか……」 凍弥 「ほらほら消極的にならない。なんだったらここに風間呼んでこようか?」 皆槻 「!あ、や、やめてくださいっ」 凍弥 「ん、解った。じゃあ風間を連れてくるのはやめようか」 皆槻 「……随分さっぱりした性格なんですね」 凍弥 「与一の───知り合いの影響だ、気にしないでくれ」 ふむ。 さてこれからどうしようか。 凍弥 「あ、それじゃあここで待っててもらえるか?ちょっと風間と話してくるよ」 皆槻 「え───」 凍弥 「ハッキリ返事ももらってないのにこのままで終わるなんて嫌だろ?」 皆槻 「それは、そうですけど」 凍弥 「だったら決まり。じゃ」 俺は石屋根から飛び降りて校舎の中へと侵入した。 そんな時にふと思った。 病院が第二の故郷みたいな娘が、なんだって俺のお節介を知ってたんだ?と。 凍弥 「……ま、友達にでも聞いたんだろうな」 俺はそう思うことにした。 だってなぁ、病院でまで噂になるほどのお節介魔神だなんて思いたくないもの。 ───さて。 佐古田「くっくっく……このネタを使ってどうからかってくれようか……」 いきなり佐古田を見つけてしまった。 空き教室でなにやってんだこいつは。 凍弥 「まあとにかく、うりゃっ」 ボゴッ! 佐古田「ふぎゃっ!」 ……ドゥ。 佐古田をやっつけた。 凍弥 「貴様らしくもない……隙だらけだったぞ」 佐古田「ム、ムナミー……おのれ……気配を断つとは……!」 凍弥 「お前が悪巧みに夢中になってただけだろ」 佐古田「……ぐふっ」 佐古田が力尽きた。 凍弥 「……当身ってすげぇのな」 鮠鷹の知識によるものだが、こりゃスゴイ。 どうやら角度が重要らしい。 凍弥 「さて、こいつは体育館の用具入れにでも便利に収納しておくか」 俺は肩に佐古田を抱えて運ぶことにした。 ……なんにせよ、こいつにこの学校の制服は似合わんな。 (如月高校の制服は修道服に似ているのである) キーンコーンカーンコーン…… 凍弥 「成敗!」 チャイムが鳴る頃、佐古田を用具入れに封印した俺は、何気なくポーズをキメていた。 しかし初めてじゃないか? こいつがこうもあっさり捕まるのって。 凍弥 「さて、あとは風間を───」 風間 「あ、センパーイ!」 凍弥 「うおう」 いきなり発見。 しかも急いでいるようだ。 風間 「すんません!佐古田センパイを見ませんでした!?急いでるんス!」 凍弥 「あの馬鹿ならそこの用具入れに封印したが」 風間 「あ……もうお縄についてたんですね。でもどうして?」 凍弥 「お前の告白現場を暴露しようとしてたらしいから、ちょっとな」 風間 「えっ……うあ!も、もしかしてもう言いふらされてます!?」 凍弥 「安心しろ、それはない筈だ」 風間 「あ、そ、そッスか……」 風間は大きな安堵の溜め息を吐いた。 凍弥 「それよりお前、相手をほったらかして何やっとんですか。皆槻、泣いてたぞ?」 風間 「えぇっ!?そ、そんな!俺そんなつもりじゃ……」 ……やっぱ原因は佐古田か。 なんとかならんかなぁあいつ。 凍弥 「ひとまず用具入れにはツッカエ棒でも置いておこう。これで封印は完璧だ」 風間 「全力で賛成します」 風間が積極的に手伝ってくれた。 そして、魔王サコタヨーシェは封印された。 凍弥 「で?どうなんだ?」 風間 「どうって……?」 凍弥 「皆槻のことさ。こうなると会いに行き辛いんじゃないか?」 風間 「あ……すんません」 凍弥 「俺に謝られても困るけど。ま、いいさ、ちゃんと話をしてやれ。     告白されたから受け入れろとは言わないけど、     ちゃんとした返事もしないで無視するのは絶対に間違ってるぞ」 風間 「……はい、それは解ってるッス。でも……どうして俺なんか、って……」 ……むう。 凍弥 「皆槻な、病弱で学校にも来れない体だったんだ。     だけど今日は病院に外出許可をもらって、ここに来たらしい。     制服を着るのも初めてだって言ってたほどだ」 風間 「………」 凍弥 「病院に通ってる元気なお前を見て惚れたんだとさ」 風間 「!」 風間の顔が一気に赤くなる。 風間 「や、なっ……え……!?」 凍弥 「病院に行ってた時があったんだろ?中学の時あたりに」 風間 「あ、はあ……ちょっとワケアリで」 凍弥 「メルと一緒だったんだよな?」 風間 「はい。あいつが『やらなきゃいけないことだから』って……」 凍弥 「………」 メルが『やらなきゃいけないこと』っていったら…… 凍弥 「悪霊狩りか」 風間 「!し、知ってたんスか!?」 凍弥 「いや、推測だけどな。俺って人には見えないものが見えるだろ?     だからメルがどういう存在なのかくらいは解るんだ」 風間 「………」 凍弥 「ま、いまはそれよりも皆槻のことをどうするかだろ?     単刀直入に訊くけど、お前はどうしたい?」 風間 「そ、そりゃじっくり話し合って結論出したいッスけど……」 凍弥 「答えが出てるなら簡単じゃないか。あとは動けばいい。だろ?」 風間 「……センパイには敵わないッスね……」 風間は少し呆れた風に言った。 でも俺は俺で、ただ俺の前世みたいな後悔が無いように後押ししたいだけなのだ。 それに……風間には隆正の時にひどいことをしてしまった。 凍弥 「そんじゃ、行くか」 風間 「オ、オス!」 だから出来るだけお節介を焼くとしようか。 もちろんいい方へ進むように。 ───で。 凍弥 「待てコラ」 風間 「だ、だって心細いじゃないッスか!」 屋上への扉の前で、風間は臆病風に吹かれた。 一緒に来てほしいだなんて、相手にとっては残酷すぎる事態ですよ? 凍弥 「俺は手伝いはすると言ったが告白現場に居合わせると言った覚えはないぞ」 風間 「じゃ、じゃあここでいいスから!ね!?お願いしますよ!」 凍弥 「……わぁったよ、ここでいいんだな?」 風間 「……や、やっぱりついてきてください!」 凍弥 「それは出来ない、あしからず」 風間 「そんなぁ〜!!昨日、センパイの告白タイムに居合わせたお詫びだと思って!」 凍弥 「それはなんか違うだろ……」 目の前の風間雄輝はとても落ち着きがなかった。 どれくらい落ち着きがなかったのかと言えば……うん、そう。 猛牛の方が大人しいと冗談でも言えるくらいに。 どちらにしたって俺が行くわけにもいかないわけで、 俺は風間の背を押して扉をくぐらせた。 凍弥 「しっかりやれよ」 風間 「あ、ちょ───センパ」 がしゃあんっ! 屋上の扉独特の音を鳴らし、そこは閉ざされた。 表の方から風間が叩くが、ここを開けるわけにはいかない。 凍弥 「───ああ、なんか仲間を助けるために自分が犠牲になる男の気分だ」 声  「センパイ開けてください!ヒドイッスよ!」 凍弥 「すまない風間……だがこうするしかなかったんだ……。     お前だけでも生き残ってくれ……」 声  「なに言ってンスか!」 なに言ってんでしょうね。 散々騒いだ風間だったが、皆槻の声を聞いたのか突然黙り込んだ。 ───……で、しばらくの沈黙のあとに話は進み…… 声  「あ、あの……俺、キミのことあまり知らないから……その、友達からで」 声  「ほ、ほんとうですかっ……!?あ、ありが……うぐっ……うぇええん……!!」 声  「うわっ!?どうして泣くの!?     あ、え、えと……こういうときはどうしたら……!     うああああ〜〜……た、助けてくださいセンパーーーーイ!!」 凍弥 「すまない風間……。     貴様が困っているというのに、俺には何も出来ないんだ……。     こんな俺を許してくれ……てゆうか許せ……」 俺は嗚咽を噛み締める真似をして喋ってみた。 声  「悲しげな声で言われても結局救いが無いってことじゃないッスか!     しかもどうして最後に強制の色が混じってンスか!?」 あっさり見破られた。 でもまだだ。 皆槻は貴様が落ち着かせてやらねばならぬのだよ。 解るでしょ? 声  「うぐっ……う、うう……う、嬉しいです……」 声  「あ、え、えと……その……こ、今後ともよろしくお願いします……」 声  「はい……!」 なんだか異様な告白シーンだったようだ。 『今後ともよろしく』……告白シーンでそんな言葉を放つとは、やりおるわ。 俺は自然に浮かぶ笑みを抑えながら、その場から逃走した。 屋上は塞がってるわけだから、行くところは空き教室だ。 そこで寝るとしよう。 Next Menu back