──中学生日記────
彰利 「なんと!もう喧噪祭の時期か!?」 アタイは高らかに叫んだ。 中井出「ああ。なんか好き勝手にやっていいって泣きながら言われたぞ」 悠介 「なにしたんだよお前……」 中井出「べつに?去年の騒ぎが効いたんじゃないか?」 悠介 「去年……あれか」 彰利 「いい思い出しかございませんよ?」 去年……ようするに一年の学芸会……まあ騒ぎだが。 学芸会って言ったら小学っぽく聞こえるが、その騒ぎは確かにあった。 ウチの中学の伝統騒ぎだし。 彰利 「いやー、去年の喧噪祭からもう一年か。早いのぅ」 悠介 「去年はなにやったっけ?」 中井出「アレだよホラ。おばけ屋敷」 悠介 「あー……記憶になかったわけだ。抹消したかった思い出だし」 彰利 「楽しかったじゃん。     おなごどもがキャーキャー騒いでくれて、大盛況で終わりましたよ?」 悠介 「お前が痴漢したんだろうが!」 彰利 「ウェッヘッヘ、おばけ屋敷の特権じゃないですか。     で?なんでまた教師の野郎は好きにしろなどと?」 中井出「……お前が痴漢騒ぎをセンセの所為にしたからだろうが」 彰利 「失礼な!アタイはそんなことしてませんよ!ええ!神に誓って!」 悠介 「神を信じてないお前が言ってもなぁ……」 ぬう、バレバレだ。 中井出「まあそんなわけだからさ、好き勝手に決めてくれ、だそうだ。     もう彰利に干渉したくないんだろ」 悠介 「気持ちは解る」 彰利 「わぁ、アタイだけ悪者扱いだ」 悠介 「実際悪者なんだよお前は」 彰利 「グウム……」 所詮そんなもんですか。 悠介 「それでどうなんだ?もう決めたのか?」 彰利 「アタイ達はなんであろうと全力でやるだけぞ?」 悠介 「そうそう。騒ぎは騒いでこそだからな」 中井出「あ、あー……まあ決まってはいるんだけど」 悠介 「……?なんだよ、中井出にしちゃあ歯切れが悪いな」 彰利 「なにかね?キミは我らにやましいことでも隠しているんじゃあるまいね」 中井出「お前じゃあるまいしそんなことするかよ」 言われてますよ俺。 中井出「えーと……冷静に聞いてくれよ?」 彰利 「俺はいつだって冷静じゃい」 悠介 「中井出にそこまで言わせるってのが……ちょっと気になるが」 中井出「……レラ」 悠介 「うん?」 中井出「……シンデレラだって」 悠介 「───……はい!?」 中井出「だ、だから!シンデレラなんだよ!どういうことか満場一致で!!」 悠介 「なに考えてんだウチのクラスは……!」 彰利 「確かにちょっとばかし、こっぱずかしいけんども……中井出?     オメがそこまで嫌がる理由さ教えれ?」 悠介 「あ、そうだな。それは気になる」 アタイとダーリンは中井出に詰め寄った。 するとカタカタと震えながら中井出が言葉を紡ぐ。 中井出「……だ、男女の役の立場が……逆になってて……」 悠介 「え……えぇっ!?そ、それって……俺ら男が女役ってことか!?」 中井出「そうだよ!そうなんだよ!どうかしてるぜウチのクラス!」 悠介 「そんな馬鹿な……あいつらはそこまで馬鹿やるようなやつらじゃなかったのに」 中井出「どちらかというとお前らか俺があいつらを巻き込む側だったのになぁ……」 彰利 「グムムーー……」 悠介 「彰利?」 彰利 「グウムー」 中井出「なんだ?どした?」 彰利 「え?あ、いや……そういや俺、昨日かなり暇でさ。     適当にクラスメイツの荷物漁って暇潰ししてたのね?     そしたら『マスオにもできる簡単催眠術』って本見つけてね?」 悠介 「……お前、まさか……」 彰利 「いや、軽い気持ちだったんですよ。     どうしたらアタイの美しさを学校中に知らしめられっかなーとか考えててさ。     で、なんとなくで……」 中井出「シンデレラ、か……」 いやん、なんかすっごい嫌な空気が。 彰利    「まさかここまで効果が続くとは思わなかったんだ。笑って許せ」 悠介    「許すか!」 彰利    「なんと!なら笑ってくれるのだね!?」 中井出   「笑うか!」 彰利    「なんと!ならばキミらはなにがしたいのかね!        わたしにもわかりやすいようにきっちりと話してもらいたいものだね!」 悠介&中井出『よし殴らせろ』 彰利    「キャーッ!?わ、解りやすすぎて怖ェエーーーッ!!!」 ドガッ!ゴシャシャッ!グチャグチャゴキィッ!! 悠介 「……で。結局こうなるのか……」 ダーリンが魔法使いの服を着て溜め息。 彰利 「まあまあ、これも思い出の一環ってことでいいじゃん。     それよりも見てくれよこの衣装!     いくら主人公のシンデレラだからってボロボロすぎません?     バイオハザードのゾンビの方がまだいい服着てるぜ?」 悠介 「比較の対象が悲しすぎるぞ……」 中井出「ま、あとは練習通りにやりゃOKだから。そんじゃ、始めるぞ?」 クラス『おぉーーーーーっ!!!』 クラスメイツが大声をあげた。 あ、ちなみに王子さま役はクラスでもとびきり美女の桐生真穂(きりゅう まほ)だ。 相手にとって不足はねぇ。 アナウンス『それではこれより、2−Dの出し物、真デレラを開始します』 そんな声とともに幕は開いた。 すると結構な人の数。 飲まれんようにせねばな。 語り手『むかしむかし、あるところに究極に薄汚ぇアマ、     灰 被梨(ハイ カブリ)という者がおりました』 ちなみにこの語り手、劇の状況を見ながら好き勝手言っていいという役得だ。 語り手『そんな名前からか、周囲からはシンデレラと呼ばれ、嫌われていました』 ……あら?なんで灰被りって名前だからってシンデレラなんだ? もしかして薄汚いとそう呼ばれるんかな。 彰利 「なぁダーリン?どうして灰被りって名前だけでシンデレラなの?」 悠介 「……お前ってそこまで馬鹿なのな」 彰利 「?」 わけが解らん。 と思うのも束の間、幕が完全に開ききった。 中井出「シンデレラー!シンデレラは居る!?」 彰利 「なんじゃい姐キ。俺様になんの用だ」 中井出「キィイ!シンデレラの分際で姉であるわたしになんて態度を!     いいことシンデレラ!二度とわたしにそんな口を利くんじゃありませんよ!?」 彰利 「なんでじゃい!ちゃんと説明してもらいたいものだね!」 中井出「それは貴様が灰被りだからよ!」 彰利 「なんと!ならば───フンッ!!」 ボサァッ!! 中井出「ぐっはぁっ!ゲホッ!ゴホッ!!」 彰利 「キャア!これであなたも灰被りですよお姉さま!」 中井出「や、やりやがったわねシンデレラ!」 彰利 「やってませんわお姉さま!」 中井出「しらばっくれても無駄ですわよ!?」 彰利 「しらばっくれてねぇ!どこに目ェつけてやがるのお姉さまこの野郎!」 声  「ちょっとシンデレラーッ!?」 彰利 「今度はなんじゃい!」 田辺 「米が炊けてねぇわよ!?どうなってんの!」 彰利 「シンデレラの舞台でどうして米が出てくるんだよ!」 田辺 「台本に書いてあったんだよ!俺が知るか!とにかくなんとかなさい!」 彰利 「えーと……」 なんとかと言われましても。 中井出「マアアこの子ったら!姉であるワタシたちに逆らう気!?」 田辺 「ここらでいっぺんシメとかねぇと突け上がりますわよお姉さま……」 彰利 「ゲェエーーーッ!!いきなり体罰!?」 中井出「このクソシンデレラ!」 ボギャア! 彰利 「つぶつぶーーーっ!!!」 田辺 「このシンデレラ!シンデレラめ!このっ!!」 ガスガスガスッ!! 彰利 「いででっ!こ、これ!リンチするでない!」 中井出「ふははは!!まあいいでしょう、今日はこのくらいで勘弁してあげる。     でも───貴様は今夜の舞踏会には連れていきません!」 彰利 「武闘会!?馬鹿な!アタイも連れてけ!」 田辺 「だめじゃい!」 彰利 「なにぃ!?なんて雄々しさだ!」 中井出「ああ、王子さまと舞うダンスはさぞ甘美でしょう……」 彰利 「死のダンスを踊る気か……!     もしや王子を殺して財産を手に入れるつもりなのか」 田辺 「ってわけだからてめぇは掃除でもしてろボケ」 彰利 「グ、グムーーーッ!!お姉さま、アタイも連れてけ!」 田辺 「残念ね、招待状は二通しか来てないの。貴様の分など元より無いわ!」 彰利 「ゲェエーーッ!!なんて男らしい!」 中井出「さてわたしのオニューの靴は……なにあれ!あんなところに!     シンデレラ!?シンデレラ!」 彰利 「なんじゃい!今は次女の野郎と話してんじゃい!」 中井出「うるせぇ!いいから肩貸しなさい!     設定にはなかった場所に靴があるんだからしょうがねぇわよ!」 彰利 「グウウ……!」 仕方なくアタイは中井出に肩を貸す。 語り手『シンデレラが長女の言う通りに肩を貸し、肩車をした時でした。     突如、長女の足がシンデレラの首を締めたのです!』 彰利 「な、なにぃ!?語り手!貴様あぁあああっ!!」 ゴギュギッ! 彰利 「おごっ!?ご、ごごごご……!!!」 中井出「あらやだ!ごめんあさぁっせ!?でも語り手は最強ですからね!」 彰利 「ごごごご……!!」 ぎゅぎゅぎぎ……!! ぐっはっ……!息が詰まる……! だが……ひと思いにトドメを刺せぬのが貴様の甘いところよーっ!! 彰利 「九龍城落地(ガウロンセンドロップ)ーーッ!!!」 中井出「な、なにい!?おわぁーーっ!!」 ドゴシャアアッ!! 中井出「グヘッ!」 アタイは肩車の状態のままで跳躍して、中井出を頭から落とした。 もちろんアタイの全体重もプラスされて、相当なダメージだ。 彰利 「まあ!お姉さまが突然不慮の事故に!     ……ククク……これで招待状は一枚余ったわけだ」 アタイはお姉さまの懐から招待状を手に入れた! 彰利 「さ、いきましょお姉さま♪」 田辺 「な、なにを馬鹿なことを!     貴様そんなみすぼらしい姿で王子さまの前へ立つつもり!?」 彰利 「そうだが?」 田辺 「………」 彰利 「男なら外見より内面で勝負じゃい」 田辺 「警備員に捕まえられるわ!もとよりわたしたちは女って設定でしょうが!」 彰利 「力にものを言わせます!」 田辺 「お前どこのシンデレラだよ!」 彰利 「ここのシンデレラさまじゃい!」 シンデレラさまに対してなんと無礼な! ……ン? 彰利 「お姉さま……随分といいドレス着てるじゃねぇか……それよこせ」 田辺 「なにぃ!?これはダメだ!今日のために隠密に作らせたドレスなんだぞ!?」 彰利 「知るか!よこせ!よこさぬなら力ずくだ!」 田辺 「来てみろ、蝿ども……」 彰利 「キェエエーーーッ!!」 アタイは大きく跳躍し、お姉さまに襲いかかった! 彰利 「チューチャイ三段蹴りーーーーッ!!」 ベキベキベキ!! 彰利 「ギャアア!!」 な、なんと!蹴ったこちらの方が怪我をしてしもうたわ! 田辺 「馬鹿め!このドレスにはスパイクシールドが内蔵されとるのよ!     いかなる攻撃も跳ね返すわ!」 彰利 「お、おのれぇええええっ!!」 田辺 「そこでせいぜい悔しみの涙を流すがよいわ!ふあっはっはっはっは!」 お姉さまが偉そうな口振りをしつつも去っていった。 彰利 「お、おのれ……!この俺にドレスがあれば……!」 声  「お困りのようだねぇ」 彰利 「なにやつ!?」 悠介 「ワシは魔法使いじゃ。貴様、ドレスと靴と馬車が欲しいんだな?」 彰利 「態度でけぇぞこの野郎」 悠介 「うるせぇ。で?どんな靴とドレスが欲しいんだよ。さっさと言え」 彰利 「グウム……ちょっと待て、     アタイったらみすぼらしい服しか着たことねぇから解らんわ。     というわけで長女に聞こう……って気絶しとるか。     なら───映像として映し出すまでよーっ!というわけで協力を求む」 悠介 「協力……?」 魔法使いさまはよく解らないといった感じに声を発した。 アタイはそんなことは無視し、協力してもらうことにした。 彰利 「ではまずはこの娘ッコのドレスイメージを吸い出さなければ。     えーと……むう!貴様、ちょっと手伝え!」 悠介 「おいおい……なんだよ」 語り手『シンデレラは魔法使いの手を借りてなにかをするつもりのようでした』 彰利 「不死鳥合体ーーーっ!!」 ガキィッ! 語り手『なんとシンデレラ、両足を魔法使いの胴体にからめて合体したーーっ!』 彰利 「不死鳥!乱心波ーーーっ!!」 語り手『しかしそんな時でした!     魔法使いがシンデレラの両脚を掴んでリバースパワーボムを放ったのは!』 彰利 「ゲゲッ!?語り手テメェ!!」 悠介 「フンッ!!」 ガシッ! 語り手『あーーっと!魔法使い、シンデレラの脚を掴んだーーーっ!!     ここで説明しよう!リバースパワーボムとは、     うつぶせに倒れている相手の両腿……早く言えばフトモモを両脇に抱え、     高く振り上げてから叩きつける荒技である!!』 彰利 「え!?あ、ちょ……悠介!?リバースパワーボムはシャレにならな」 悠介 「そりゃあーーーっ!!」 ブワアッ!! 彰利 「おわぁーーーーっ!!!!」 ダーリンがアタイのフトモモにガッシリと腕を絡ませ、 その上で大きく振り上げた反動を利用して一気に大地へと振り下ろドッパァーーンッ!! 彰利 「いぎゃああああああああっ!!!!!」 痛い!これは痛い! てゆうかどこがシンデレラ物語!? 語り手  『さあ魔法使いさん、       シンデレラが悶絶している間に勝手に家の中を物色し始めました』 彰利   「いでで……───ややっ!?アイヤー!タオチェイ!!」 悠介   「フフフ……このカボチャを使えばいい馬車が作れそうだ。       あとはこのハムスターを馬にするとしよう」 彰利   「べつにいいけど」 語り手  『なんとそのハムスターは寂しいシンデレラの友達だったのです!』 彰利   「ゲッ!?そんな設定が!?       えーと……や、やめてー!アタイのシャルロットになにするのー!?」 語り手  『ちなみにハムスターの名はロドリゲスです』 悠介&彰利『ハムスターにつける名前じゃねぇだろそれ!!』 なに考えてやがる! でも困ったことに客席には笑われている。 語り手『さあ魔法使いさん、ネズミを馬に変えます!』 悠介 「ネズミよ!暗黒の予兆となりて今こそ黒王号に成り立ちたまえ!     ってどういう魔法だよこの呪文!」 語り手『あーっと!魔法使いが魔法を使った途端、家の中に白煙がたちこめたーっ!』 彰利 「グ、グムーーッ!!これではなにも見えーーん!」 語り手『あーーっと!煙の中に赤い火の玉が現れ、ハムスターの中に入ってゆくーっ!』 彰利 「ゲゲッ!?こら語り手!     コンセプトが『キン肉マンっぽく』だからってやりすぎじゃーーーっ!!」 語り手『ああ!やがてハムスターが姿を変えた頃、その場には馬が居ました!』 彰利 「ア、アアーーッ!霧が晴れてゆくーーっ!」 いい加減キン肉マンっぽくやるのも疲れてきましたよ? 中井出「……さあ、乗れ」 彰利 「ゲゲーーーッ!!お、お前は死んだ筈の中井出!     宇宙タッグリーグ戦で死んだとばかり思っておったが、     生きていらっしゃったんですねーーっ!?」 中井出「殺すな!大体宇宙タッグリーグってなんだよ!」 彰利 「うるせえ!こっちだってもうワケ解らん!」 悠介 「あー恥ずかしい……もう帰りてぇ……」 彰利 「そう言うなよ、あそこで若葉ちゃんも木葉ちゃんも見てるぜ?」 悠介 「だから帰りてぇんだよ馬鹿……」 中井出「早く帰りたいんだったら協力してくれ。俺も泣けてくる」 彰利 「ウ、ウム。そうだのう」 語り手『あーーっと!     ここでシンデレラ、魔法使い、馬の間に友情パワーが芽生えたーーっ!!』 彰利 「………」 悠介 「………」 中井出「………」 三人 『まずはあいつをどうにかしなくちゃだな……』 俺達は同時に同じことを言った。 だが放送席は分厚い壁に覆われていて、こちらからでは攻撃出来ない。 ならば取る方法はひとつ。 彰利 「とっとと終わらせよう」 こういうことだ。 語り手『さて、ようやく舞踏会にいくことになったシンデレラに、     魔法使いさんがガラスの靴を渡します!』 悠介 「これだな?ほらっ!」 彰利 「オウヨ!」 アタイは放り投げられたそれを受け取って、パパッと履きグサッ!! 彰利 「ギャアアアーーーッ!!!」 語り手『アァーーッ!!なんとガラスの靴の中には画鋲が仕掛けられていたーーっ!!』 彰利 「語り手ェエーーーッ!!てめぇーーーっ!!!!」 ちなみにシナリオを考えて、用意までしたのは語り手である。 悠介 「くだらんことで惑わされるな!早く舞踏会へ行け!」 彰利 「くだらなくなんかないやい!とっても痛いんだよ!?」 中井出「ならとっとと取って行け!」 彰利 「くそ!人ごとだと思って!」 ぐいぐい……ブチッ! 彰利    「いたやぁああーーーっ!!く、くそっ!これでいいんだろ!?        さあ馬よ!アタイを舞踏会へ連れていけ!」 中井出   「おう!任せておけ!……って、馬車は?」 語り手   『なんと馬車は巨大隕石の直撃を受け、        木っ端微塵になってしまったのです!』 彰利    「なにぃ!?」 中井出   「おい語り手!シンデレラでもキン肉マンでもそんなのはねぇぞ!?」 語り手   『仕方なくシンデレラは乗馬をして舞踏会に行くことになりました!』 彰利&中井出『語り手!てめぇえええええええええええっ!!!!』 こいつアレだ!絶対苦労する方を選んでやがる! 悠介 「……じゃ、俺はもう引っ込むから。ほら、ドレス」 彰利 「アイヤーダーリン!?ひでぇ!ズルイ!」 中井出「鬼!悪魔!」 悠介 「そういうことは語り手に言え!」 言いつつもダーリンは舞台袖に引っ込んでいった。 彰利 「グ、グウウ……!」 中井出「乗馬っていったらアレだよな……」 語り手『あーっと!シンデレラ、馬の背中にジャンプして乗ったーっ!』 彰利 「くそっ!こうなりゃヤケだ!いくぞ中井出!」 中井出「おおっ!」 語り手『───と見せかけて、隙だらけの馬にカーフブランディングーーッ!!』 彰利 「なにぃ!?」 中井出「なっ───あ、彰利!?」 彰利 「南無三!!カーフブランディングーーッ!!!」 中井出「ゲゲェエーーーーーッ!!!!」 アタイは中井出の後頭部に手と膝を添え、そのまま体重を託してドグシャアッ!! 中井出「ウギャアアーーーーッ!!!」 カーフブランディングを成功させた。 語り手『さあシンデレラ、     ついつい技をかけてしまった所為で馬を気絶させてしまいました。     こうなったら仕方ありません、舞踏会まで走っていくしかありませんでした』 彰利 「か、語り手ぇええ……!!」 語り手『さあ走れシンデレラ!舞踏会が終わる前に!』 彰利 「貴様覚えておれよ!?」 語り手『忘れました』 彰利 「おのれぇえええええええっ!!!!」 こうして、ただひたすら走るフリ(劇だし)をさせられ、 いい恥じをさらしてしまった俺は舞踏会へと辿り着いた。 彰利 「くそ!着いたぞ語り手この野郎!」 語り手『王子を抹殺しろ』 彰利 「いきなり殺人命令かよ!語りじゃねぇだろそれ!」 語り手『実はこの国の王子はシンデレラの父、     灰 流火虎亜(ハイ ルヒトラア)を抹殺した男だったのです!』 彰利 「ハイルヒトラー!?シンデレラってヒトラーの娘だったの!?」 語り手『どうでもいいから抹殺せよ!』 彰利 「ゲェ!いきなり投げ遣りだ!」 語り手『あーっと!ここで王子がシンデレラを見て、流火虎亜の面影を見たーっ!』 彰利 「ご都合主義すぎんぞお前!」 真穂 「貴様……灰 流火虎亜の娘、灰 被梨だな!?」 彰利 「あの……真穂サン?恥ずかしくありません?」 真穂 「お願い聞かないで……早く終わらせたい……」 うおう、顔が真っ赤だ。 彰利 「演劇部になんか入るからですよ。     ウチの中学って高校に負けない伝統を目指してんですから」 真穂 「演劇好きだけど、これの所為でトラウマになるかも……」 語り手『正体に気づいた王子はすかさず剣を抜きます!』 真穂 「ああもうっ!」 シャアアッ!! 真穂サンが剣を抜く。 語り手『シンデレラも負けじとドレスの下から剣を抜きます!』 彰利 「くそっ……語り手のことだからそれまで用意してあんだろうなぁ……。     っと、これか!?って───ややっ!?」 長ネギだった。 語り手『あーーっとシンデレラ、間違えて長ネギを持ってきてしまったーーっ!!』 彰利 「お前の仕業だろうが語り手この野郎!!てめぇ降りてこい!ブチのめす!!」 語り手『王子が生意気なシンデレラに斬りかかります!』 彰利 「あっ!てめぇ!生意気ってお前の思考だろうが!」 真穂 「ごめん、弦月くん!」 真穂サンが謝りながらも剣を振るう。 彰利 「甘いわ!」 アタイは状態逸らしでそれをかわした。 彰利 「フフフ、王子よ……それしきの剣術でアタイを殺そうというのは、     いささか自分を過信しすぎではないかね……?」 真穂 「わ、わたしだって好きでやってるわけじゃないもん!」 彰利 「だが……わたしはこの長ネギソードで父の仇を撃つ!」 アタイはビッ!!と長ネギを構えた! 真穂 「あの……弦月クン?恥ずかしくない?」 彰利 「めちゃくちゃ恥ずかしいです」 素直な気持ちをあなたに。 真穂 「えーと……長ネギごときでわたしと戦う気か!     せめてもの情けだ、これを使え!」 ゴトトッ。 彰利 「ややっ!?これは剣の鞘!?」 語り手『あーーっと!これは紳士だーーっ!     王子、自分の剣のサヤをシンデレラに渡したーーっ!!』 真穂 「紳士じゃないもん!」 語り手『さあシンデレラ、王子が乱心している内にその鞘を持って構えたーっ!!』 真穂 「乱心なんかしてないよ!」 彰利 「真穂サン……とうとう決着をつける日が来たようだね……」 真穂 「え、え……?ゆ、弦月くん?まさか……本気で叩かないよね?」 彰利 「───交わらざりし生命に」 アタイは長ネギを闇の光で輝かせた。 鞘は当然逆手に持ってある。 彰利 「今もたらされん刹那の奇跡!」 真穂 「わっ!わぁっ!」 べしべしっ!ぼすっ!げしげしっ! 長ネギとダンボールを加工して作った鞘が、 真穂さんの持つ木刀を加工したものに払われる。 彰利 「時を経て───」 闇色に輝かせていた長ネギを眩く白く光り輝かせて、再び特攻。 彰利 「ここに融合せし未来への胎動!!」 真穂 「ちょっ……やめっ……!」 べしべしっ!ペンッ!ポコペコッ! 長ネギとダンボール鞘が何度か当たる。 しかし加減をしているのでダメージはくすぐられた程度だろう。 彰利 「義聖剣!」 真穂 「え?わ、わぁっ!」 長ネギを一層光り輝かせ、真穂サンに振り下ろす。 真穂さんは攻撃そのものよりも、そのネギに驚いたらしい。 コパァン! 真穂 「いたっ!」 しなった長ネギが真穂さんの頭を叩いた。 それとともにアタイはバックステップをして長ネギに更なる光を込める。 彰利 「僕は……過去を断ち切る……───散れ!!」 逆手に持った鞘を下から振り上げ、真穂さんがそれに気を取られた隙に 彰利 「真神煉獄刹!!」 一気に長ネギを突き立てるように突っ込む!! ボキャッ。 彰利 「アイヤーッ!?ネギが!!」 長ネギはあっさりと折れた。 真穂 「……弦月くん。今本気で突き立てようとしたでしょ」 彰利 「してませんよ?」 真穂 「したでしょ!」 彰利 「してませんて!」 語り手『あ〜っと、ここで王子とシンデレラの間に怒りの炎が燃えた〜っ!』 彰利 「勝手なこと言ってんじゃねぇ語り手!」 真穂 「このっ!」 ボゴッ! 彰利 「いてっ!ちょ、ちょっと真穂サン?」 真穂 「女の子に手をあげる人なんか最低だよ!」 彰利 「馬鹿者ーーっ!俺があげたのは長ネギだーーっ!!」 真穂 「ば、馬鹿って言ったーーっ!!いま馬鹿って言ったーーっ!!」 彰利 「おお言ったとも!おまえさんは馬鹿だーーっ!」 真穂 「弦月くんの馬鹿ーーっ!!馬鹿って言う方が馬鹿だもん!」 彰利 「なんと!ではあなたも馬鹿なのですね!?馬鹿め!馬鹿め!」 真穂 「むきゃあああああああっ!!!!」 彰利 「ややっ!?お、落ち着きめされい真穂殿!これでは語り手の思う壺!     まずは平和的に話し合いで解決を」 真穂 「話し合ってたら馬鹿って言われたんだもん!」 彰利 「な、なに〜っ、馬鹿を馬鹿と言ってなにが悪い〜っ」 真穂 「あーっ!また馬鹿って言ったーっ!!」 彰利 「ターッ!シマターッ!」 ボカッ!ボゴッ! 彰利 「うべらっ!はべらっ!」 語り手『あーっと!学園のアイドル、桐生真穂……もとい、     王子がシンデレラに殴りかかったーーっ!!』 彰利 「これ!はしたないですよ!?アイドルともあろうものが!」 真穂 「そんなの周りが勝手に言ってるだけだもん!」 彰利 「馬鹿野郎ーーっ!俺は言ってねぇーーっ!」 真穂 「また馬鹿って言ったーーっ!!」 彰利 「ゲェエーーッ!!」 大墓穴! 真穂 「それにわたし『野郎』じゃないよ!」 彰利 「グ、グウウムムウ……なら言い改めれば許してくれますか?」 真穂 「……うー……考えてもいいよ」 真穂さんは快く……はないが、頷いてくれた。 彰利 「ウム!では……」 アタイはその思いに応えるように咳払いをして叫んだ。 彰利 「馬鹿女郎ーーっ!俺は言ってねぇーーっ!!」 真穂 「馬鹿って言ったぁっ!また馬鹿って言ったぁーーっ!!」 彰利 「ゲェエーーッ!!け、結果は変わらんではないかーーっ!!     ヒドイわ!なんてヒドイ人!最初から許す気なんてなかったんだわ!」 真穂 「そんなことないもん!」 彰利 「ウソおっしゃい!!」 真穂 「ウソじゃないもん!」 語り手『あーっと!ここでダンスを邪魔された者どもが怒り狂って乱入だーーっ!!』 彰利 「なにぃ!?てめぇ語り手この野郎!!」 真穂 「話逸らそうったってそうはいかないよ!」 彰利 「そうじゃねぇっつの!状況見てからモノ言え馬鹿!」 真穂 「また馬鹿って言ったーーっ!!」 彰利 「おーおこうなったらヤケじゃい!     なんべんでも言ったるわ馬鹿!馬鹿め!馬鹿め!」 真穂 「むきゃあああああああっ!!!!」 とかなんとか言ってる内にクラスメイツ大半参加の乱闘が始まり─── 中井出「スーパージャンピングニーパァーーッド!!」 ドゴス! 彰利 「ギャア!?」 田辺 「ブルドッキングヘッドロォーックゥッ!!」 ドゴシャアッ! 彰利 「いでっ!?」 悠介 「スコーピオン!デスロォオオック!!」 ミリミリミリ……!! 彰利 「いでででででで!!!!」 真穂 「弦月くん!ちゃんと話聞いてるの!?」 彰利 「こ、この状況で聞けるかーーっ!!」 ボーン……ボーン……! 語り手『あーーっと!12時を告げる鐘の音だーーっ!     早く逃げなければ魔法が解けてしまうーっ!!』 彰利 「魔法なんてかけられてねぇじゃん!手渡しされたぞこのドレス!!」 語り手『うるせぇ!いいからとっとと逃げろ!』 彰利 「語り手が逆ギレすんなよ!!」 とか言いながらも者どもを薙ぎ払い、立ち上がって逃走をガシィッ!! 彰利 「ややっ!?」 真穂 「どこ行くの!まだお話終わってないよ!?」 彰利 「ゲェエーーーッ!!すっかりと自分の役どころ忘れてらっしゃるーーっ!!     ダ、ダーリン!中井出!真穂さんを押さえてくれ!     こんな劇、さっさと終わらせるべきだ!」 悠介 「───ハッ!」 中井出「そ、そうだった!つい攻撃するのに夢中で……!」 彰利 「おのれらなぁ……!」 でも自分がそっち側の役だったら間違い無くそうしていたでしょう。 がしっ! 真穂 「あっ!ちょっと!なにするの!?」 悠介 「今だ!行け彰利ーッ!!」 中井出「俺達の未来を救ってくれーーっ!!」 彰利 「だめだ」 中井出「むごっ!?き、貴様には情ってもんがねぇのかーーっ!!」 彰利 「貴様にかける情などないわーーっ!!」 悠介 「ふざけてないで行け!語り手が喋り出す前に!」 彰利 「グ、グムゥーーッ!!」 アタイは仕方なく中井出をからかうことをやめ、駆け出した。 その瞬間に舞台に幕が降り、舞台裏の人々が動きまわる。 やがてデカイ階段が設置され、アタイはその頂上に乗せられた。 そして幕が上がる。 語り手『シンデレラは逃げます!     そしてついに階段にさしかかり、しかしそこで躓いて───』 ……確か靴を落とすんだっけ? 語り手『豪快に転げ落ちました!!』 彰利 「語り手!?て、てめぇえええええええええええっ!!!!!!」 ガクンッ!! 彰利 「ややっ!?」 しまった!語り手に怒鳴るのに夢中で階段を見ておらなんだ! ドガベキャドゴゴシャドゴゴゴゴ!! 彰利 「ギャアアーーーーッ!!!」 アタイは見事に転げ落ちてしまった。 語り手『ゲェエーーーッ!!こ、転げたついでにガラスの靴が落ちたーーっ!!』 彰利 「ゲホッ……!つ、ついでなのかよっ!!」 グウウ……!口の中を切ってしまったわ……! 語り手『あーーっと!余計なことを言っている暇はないぞシンデレラ!     階段の上に王子が現れたーーーっ!!』 真穂 「弦月くん!どうして話も聞かずに逃げるの!」 彰利 「ゲゲェーーッ!!!」 こりゃいかん!悠長に倒れてる場合ではないわ! 彰利 「とんずらぁーーっ!!」 アタイはもちろん一目散に逃走した。 アタイは説教くさい人は苦手なんですよ! バキィ! 彰利 「ギャーッ!!」 しかしガラスの靴を片方落とした所為で、走り出した途端に脚を捻ってしまった。 彰利 「てゆうかバキって!バキって鳴ったよ!?」 語り手『構わん!走れ!』 彰利 「なにぃ!?こ、このやろっ……!」 真穂 「弦月くん!逃げたらヒドイよ!?」 彰利 「あぁもうっ!!」 もちろん逃げました。 真穂 「弦月くんっ!?」 彰利 「あーもう聞こえません聞こえません!!」 語り手『こうしてまんまと逃亡したシンデレラは翌日、指名手配にされました』 彰利 「おぉいっ!!」 語り手『手掛かりは落としていったガラスの靴!     その靴がジャストフィットした者こそがシンデレラの正体!!』 田辺 「正体は知っておるわ!ヤツはシンデレラ!灰 被梨と言われる逆賊よ!」 語り手『ゲェエーーッ!!なんと!シンデレラの正体は灰被梨だったのだ!』 彰利 「驚くには今更すぎるだろ!」 語り手『そんなわけで灰被梨の正体が解った今、あっさりと捕まり処刑されましたとさ』 彰利 「ゲェエーーッ!!」 語り手『めでたしめでたし……』 彰利 「めでたくねぇーーっ!!」 しかもあっさりと幕が! 馬鹿な!練習とは全然違うじゃねぇか!! 語り手『これで2―Dが贈る真デレラを終了します』 彰利 「ホントに終わりなのか!?おいぃっ!!」 ワーーーッ!!! パチパチパチパチ……!! 彰利 「しかも大盛況!?な、納得いかねぇーーーーっ!!!!」 だがこれから数分後、アタイとダーリンと中井出は放送室に殴り込み、 見事に語り手(蒲田)をブチノメすことに成功した。 そういった意味では、めでたしめでたしでしたとさ。 Next Menu back