───からかい好きなエセ神さま───
椛  「………」 アタイの傍らで椛がポカンとしていた。 彰利 「今となっても嫌な思い出だなぁ……」 悠介 「俺もそう思う」 彰利 「まあ、でもあの頃の学生生活は学校内でもハシャギ合えたなぁ」 悠介 「そうだな。誰にも遠慮することなく、一緒になって騒げたし」 彰利 「中井出のヤツ、今何やってるんかのぅ。     スケヴェなことをして留置所に居たりしないかね」 悠介 「ははは、お前じゃあるまいし」 彰利 「ギャアもう!なんかもうギャアよギャア!!     アタイはそげなことして捕まるほど愚かじゃねぇわよ!?」 悠介 「『そげなこと』をしても逃げて捕まらないって意味だろ?」 彰利 「そうじゃないやい!しないって言ってるんだい!」 悠介 「うそつけ」 彰利 「ゲッ……!ハ、最初から信じる気がねぇーーっ!!     ヒドイじゃないあんまりじゃない!     ダーリンてばアタイを愛してくれてるんじゃなかったの!?」 悠介 「愛すかっ!!なに寝惚けたこと言ってやがる!」 彰利 「ギャアヒドイ!!それでは貴様はアタイよりもルナっちを選ぶというのね!?」 悠介 「当たり前だ!結婚してんだぞこちとら!」 彰利 「離婚なさい!」 悠介 「するかぁっ!!」 彰利 「グムゥ……!」 怒られちまったい。 彰利 「あ、そうそう、その時の写真ってあるかね?」 悠介 「えーっと……こっちのアルバムに」 ダーリンがアルバムを取り出してページをめくってゆく。 悠介 「ああこれだよ、ほら」 ダーリンが写真を見せてくる。 そこには和式の婚儀着衣に身を包んだダーリンとルナっちが。 彰利 「流石だ悠介!和式とはまいった!流石すぎだ!」 悠介 「……このあと、式場はボロボロになったがな」 彰利 「あー……義族の皆様の仕業ですか?」 悠介 「『家族』だ」 彰利 「でも結果は変わらんみたいね」 悠介 「まあ……家族中に反対されながらの結婚ってのも案外凄まじいものだったぞ。     しかも家族全員が実力行使で襲ってくる。     唯一祝福してくれたのが水穂だけだぞ?」 彰利 「セレっちは?」 悠介 「そんな馬鹿死神と結婚したら馬鹿が移りますってな。     セレスは水穂と結婚した方がいいって言ったんだけどな。     ま、若葉と木葉が荒れ狂い、姉さんが独断と偏見と実力行使で黙らせた」 彰利 「わぁ、大人になっても変わってねぇや。でもなんか安心するな」 悠介 「安心?」 アタイの言葉にダーリンが首を傾げた。 彰利 「いやいや、アタイが居なくてもみんな変わってなくて安心したって意味じゃよ。     なんかそういうのっていいじゃん。……ま、粉雪のことはショックだけどさ」 悠介 「彰利……」 彰利 「ウフフ、しめっぽくなっちゃったわね。アタイお茶淹れるから待っててね?」 悠介 「あ、おい彰利?」 ガシィッ!! 彰利 「ややっ!?」 突如!アタイの両の脚を掴むように抱きつく衝撃が! そして咄嗟に見てみれば椛チャン! 彰利 「お、おわぁーーーっ!!」 なにをトチ狂ったのか、椛ちゃんてばアタイの両足を膝の部分から抱えてくれちゃって! そしてそんなことをされたら前のめりになってたアタイは───ゴキィッ!! 彰利 「っ───!!!」 ……膝が、膝の皿が折れちゃうじゃないっ……!! 彰利 「オギャワァアアーーーーッ!!!」 俺はまるで『メイルストロームパワーORAP』に敗れ去った超人のような声で叫んだ。 そしてぐしゃりと倒れる。 どうやらアタイの悲鳴に驚いた椛チャンが脚を離してくれたらしい。 悠介 「あ、彰利!?」 グウウ……!どうやら完全に骨がいっちまったみたいだ。 くそ、なんてことだ。 立ちあがることすらままならん。 彰利 「ね……ねえ農村マン……おかしいよ……ボクの両脚……。     立とうとしてるのに言うことをきいてくれないんだよ……」 悠介 「誰が農村マンだ」 彰利 「こ、これって……ボクが負けるって」 ボゴシャッ。 彰利 「ふべぼ!」 悠介 「馬鹿やってないでさっさと治せ」 彰利 「馬鹿とはなんだコノヤロウ!」 ぐしゃっ。 彰利 「オギャワァアーーーッ!!」 悠介 「な、お、せ」 彰利 「痛い痛い!足踏まないで!マジで痛い!」 椛  「や、やめてくださいおじいさま!」 悠介 「お前は黙ってろ」 椛  「黙りません!おとうさんを苦しめないでください!」 彰利 「お、おお……椛ちゃんや……アタイを救ってくれるのかい……」 悠介 「苦しめるもなにも、自業自得と椛の所為だと思うんだが」 アララ、痛いお言葉。 椛  「っ……!わ、わたし……そんなつもりじゃ……」 彰利 「ややっ!?こ、これ悠介!椛をいじめるんじゃありません!」 悠介 「はぁ。あのなぁ椛?俺がこいつと喧嘩みたいなのをするのは昔っからなの。     それを今更傷つけるだのなんだのと言われたって無茶な話だろ」 椛  「そんなこと関係ありません!」 彰利 「いや待って!自然に無視しないで!オラの話さ聞いてけれ!!」 悠介 「よし聞こう。なんだ?」 彰利 「グム?」 悠介 「グム?じゃなくてな」 彰利 「いや、まさかこうもあっさり聞いてくれるとは思わなくてな。     からかいのネタが……」 悠介 「……真面目に話す気がなかったのかお前は」 彰利 「素粒子ほどにも!」 悠介 「………」 うおう呆れてる。 彰利 「まあダーリンは放置するとして。椛?どうしてアタイの骨を折ったのかね?」 椛  「えっ……!?ち、ちがっ……わたし、そんなつもりじゃ……!」 彰利 「な、なにーっ!?ま、まさか折るどころじゃなく斬るつもりだったのかーっ!」 椛  「ち、違う!違うよっ!?」 彰利 「……じいやは椛に嫌われることをしてしまったのかのう……」 椛  「違う……!違う違う違う!違うよ!話を聞いておとうさん!」 彰利 「気休めはよしとくれ!じいやはいらない人間なんじゃーーーっ!!」 椛  「……!!」 ややっ!? 椛の行動が止まったぞえ? ……しかもなにやらポロポロと涙が……!! 椛  「うっ……ちぁ……ちがうもん……!!     わたし……きらいじゃないもん……!ひぅ……ひっく……!     うっ……!いらないにんげんだなんていわないで……!     わたし……おとうさんにいてほし……うくっ……     う……うわぁあああああああん!!!!!」 彰利 「キャーッ!?」 悠介 「も、椛ぃっ!?」 ダーリンが吃驚仰天(びっくりぎょうてん)。 おそらく、こないな椛を見るのは初めてだったんでしょう。 彰利 「あややややややや!!ス、スマン椛!     冗談ッ!冗談ですよぉ〜〜〜〜っ!!承太郎くん!     なにバカヅラして俺を睨んでるいるんだよぉ承太郎先輩!!     冗談だって言っとるでしょうが!     あんたまさか冗談も通じねぇコチコチのクソ石頭の持ち主ってこたぁ」 椛  「うわぁあああああああああああん!!!!!」 彰利 「ゲェエーーッ!!炎に灯油をぶっかけちまったぁーーっ!!!」 悠介 「ああもうどけ!!おれが泣き止ませる!」 彰利 「なんと!引っ込んでおれ!それはアタイの役目ぞ!?」 悠介 「ほざくな!俺だ!俺が泣き止ませる!」 彰利 「グムウ……!!ならばやってみるがよいわ!無理だろうがな!」 悠介 「このやろ……!ま、まあいい……!あ、あー……椛?泣き止んでくれ、な?」 椛  「うわぁあああああああん!!!!」 悠介 「おじいちゃんが何か悪いこと言ったなら謝るから、泣き止」 彰利 「ブフッ……!お、おじいちゃんだって……」 パグシャア! 彰利 「オギャア!!」 悠介 「茶化すな!俺だって恥ずいわい!!」 彰利 「フッ……まいったな、嫉妬かよ。コイツきっと俺が妬ましいんだ。     椛が泣き止んでくれねぇからって、     俺に八つ当たりしたくなる気持ちも解らなくもねぇが……」 悠介 「まだ泣き止ませようとしたばっかりだろうが!邪魔すんな!」 彰利 「笑っただけでしょうが!直接邪魔などしてませんよあたしゃあ!!」 悠介 「じゃあ黙って見てろ!」 彰利 「ラジャーッ!!」 アタイは潔く頷いた。 悠介 「ったく。……あー……椛?」 じーーー…… 悠介 「俺がヒドイことを言ってしまったなら謝る。だから」 じーーーーーーーーー…… 悠介 「…………な、泣き止んでくれ」 じーーーーーーーーーーーーーーー……ボグシャア!! 彰利 「ギャア!!」 悠介 「鬱陶しいわ!なに見てんだよ!」 彰利 「な、なんですって……!?あなた、今なんて……!?」 悠介 「なに見てんだよ!って言ったんだ!」 彰利 「ひ、ひどい……!あ、あなたが黙って見てろって言ったんじゃない!!     だからわたし、必死にあなたの無様な説得を見てたのに!!     これじゃああなたのために死んでいったルナっちも浮かばれないわ!!」 ゾグシュッ! 彰利 「ギャアアーーーッ!!!ど、どこからともなく鎌が飛んできたーーっ!!     や、野郎ルナっち!どこだルナっち!!卑怯だぞ!出てこい!!」 悠介 「………」 彰利 「あ、聞いてくれよ悠介!ルナっちがボクの背中に鎌を刺すんだ!     しかも姿を見せないんだよ!卑怯だよね!ヒドイよ!」 悠介 「……無様な説得……」 彰利 「ゲゲッ!?」 悠介 「無様な説得とはなんだコラ!一発殴らせろ!!」 ああ!ダーリンがアタイの胸倉を掴む! こりゃイカン!説得せねば! 彰利 「い、いやよ!やめて!あなたっていつもそう!     一発とか言っておいて、動けなくなるまで殴るの!このうそつき!!」 ボゴシャア!! 彰利 「つぶつぶーーっ!!」 ギャア!頬を的確に殴られた!これはイタイ!! 彰利 「グウウ……!説得にも応じないとは……!そこまで問答無用か喧嘩師……!」 悠介 「誰が喧嘩師だ!」 ドゴッ!ドゴスッ!! 彰利 「いでっ!いででっ!こ、これやめなさい!お孫さんの前ですよ!?」 悠介 「俺は一向にかまわんッッ!!」 彰利 「ゲゲェエーーッ!!」 ドカドゴベゴドゴドスドスボカベキャ…… 悠介 「だ、だからな……?そう泣かないでくれ」 椛  「うわぁああああああん!!!」 悠介 「うあ……く、くそ……どうしたら……!」 ポム。 悠介 「ん?」 彰利 「……己の力量が理解できたかね?」 ボゴシャアアアッ!!! 彰利 「ホギョロギャアアーーーッ!!!」 振り向きざまのナックルを頬で暖かく受けとめたアタイは、 その凄まじい勢いによって大回転した。 悠介 「いつ目が醒めたんだよお前は!」 彰利 「聞いておくれよ椛!パパがボクをぶつんだ!」 アタイは匍匐前進をしながら椛に近寄りぐしゃっ! 彰利 「ギャア!」 悠介 「人の話を聞け!!」 彰利 「あいたたた!こ、これ!折れた足を踏むでないダーリン!」 悠介 「やかましい!」 彰利 「ゲゲッ!!聞く耳持ってねぇ!いいから椛のことはアタイに任せんしゃい!     全て丸く収まりますから!ね!?だから離して!離してぇえ〜〜っ!!」 悠介 「わ、解ったから気色悪い声出すな!」 ゲェ!ひでえ! ただドラマっぽい物語のおなごの真似しただけなのに! 彰利 「まあそげなことはどうでもいい。さ、椛や」 椛  「……!」 彰利 「ムオ?じいやは傷ついてなどおりませんよ。だから怒ってもおりませぬ。     だから安心するんじゃポルポルくん」 椛  「うわぁああああああああああん!!!!」 ボゴリッ! 彰利 「いたぁい!」 悠介 「余計に泣かせてどうする!!」 彰利 「ポルポル言っただけですよ!?」 悠介 「いいから真面目にやれ!いいな!?」 彰利 「な、なにを言うか!俺様は常に真面目に」 悠介 「常に真面目にふざけてるんだろ!?」 彰利 「当たり前だこの野郎!!キミは何かね!?解ってて訊いたのかね!?     まったく不愉快だ!貴様は何を考えて」 悠介 「裁きィイイイイイイッ!!!!!」 バチィッ!バリバリバリィイイッ!!! 彰利 「オギャアアアアアアア!!!オギョッ!ギョキャアアーーーーッ!!!!」 ……ドサッ。 悠介 「……真面目にやれ。いいな?」 彰利 「お、俺はいつでも真面目で」 ゴシャッ! 彰利 「ギャア!」 ダーリンがぐったりと倒れたアタイの顔を踏む。 悠介 「い、い、な?」 彰利 「だめですじゃ」 ゴリャア! 彰利 「ギャアアア!!か、顔が!アタイの顔がぁああ〜〜〜っ!!」 悠介 「話を捻じ曲げんな!椛を泣き止ませたくないのかお前は!」 彰利 「だったら黙っててダーリン!わかるな?わしならできるんだぜ?」 悠介 「わからん」 彰利 「ウヒョオ、無慈悲なのも変わってねぇ」 だがこれでは埒があかんな。 彰利 「椛よ!」 椛  「っ!?」 彰利 「……カマァ〜ン♪」 アタイは古(いにしえ)より伝わるバカップル秘伝、『両手を広げる』を実行した。 今の若人では絶対無理な芸当だが、俺には出来る!恥ずかしげもなく! 椛  「……」 悠介 「警戒されてるぞ?」 彰利 「ぬう、さすがに脚が折れたままでは無理があったか」 悠介 「当たり前だろ……」 彰利 「しからば!ベホイミ♪」 パァアア……!! 椛  「!」 ダタタッ……ガシッ!! 彰利 「いたやぁああーーーーーーーっ!!!!!」 悠介 「も、椛っ!?」 彰利 「こ、これ!何をトチ狂うたか!じいやの脚は抱きつくものではありませんぞ!」 椛  「……っ!!」 ぎゅぎゅ〜〜っ!! 彰利 「おわーーーっ!!いたいよーーーっ!!」 悠介 「全然痛そうに聞こえないんだが」 彰利 「痛いわ!」 椛はアタイが月生力を使った途端、その光の中に飛び込んできた。 予想はたてられるが…… 彰利 「そうか、椛は実は昆虫類だったのか」 悠介 「いきなり何を言い出すんだお前は」 彰利 「だってさ、虫って光に集うじゃない?     というわけでもっと喜ばせてあげましょう。フェイスフラッシューーッ!!」 ギシャアアアアアア!!!! 椛  「ひぅぅっ!?う、うわぁああああああああああん!!!!!!」 彰利 「ゲゲェエエーーーーッ!!??泣いてしまったぞ!?どうなってんだ悠介!」 悠介 「俺に訊く───ぶわっ!?いいから光止めろ!!怖いわ!」 彰利 「オウ?おっとこりゃいけねぇ」 ……フシュウ。 彰利 「ささ、もう怖くないですよ?」 悠介 「怖いって自覚はあったのか」 彰利 「お、お黙り!!」 悠介 「くふふははは……どもったな馬鹿めが……!」 彰利 「グ、グウウ……!!」 馬鹿な……!このアタイがからかわれるとは……! 椛  「………」 彰利 「ヌ?」 椛  「………」 なにやら椛がアタイの脚をじ〜〜〜っと見ております。 彰利 「折れた足が珍しいかね?」 悠介 「当たり前だろ」 彰利 「……そうか?俺ってしょっちゅう折られてるから実感沸かないや」 悠介 「………」 同情の眼差しで見られてしまった。 彰利 「……折ってみるかね?」 椛  「……っ!……っ!」(ぶんぶんぶんっ!) 彰利 「おやおや……そんなに首を振り回すと首を痛めますよ?」 椛  「〜〜〜っ……!」 ……手遅れだったらしい。 彰利 「仕方のない……椛や、こちらへ来なされ」 椛  「…………?」 彰利 「なんと!じいやとはもう口も利きたくないと申すか!!」 椛  「!?ち、ちがっ……!」 彰利 「な、なんということじゃあああーーーっ!!     じ、じいやは椛に嫌われたらこの世界で生きていくことができーーーーん!!」 椛  「違う!違うよ!!」 彰利 「何が違うというのかね!?気休めは」 ボゴシャッ! 彰利 「ぶべい!」 悠介 「馬鹿かお前は!これじゃあさっきの巻き戻しだろうが!」 彰利 「なにっ!?」 椛  「うっ……うぅうう〜……ふぁああああん……!!」 彰利 「ゲーーーーーッ!!」 しもうた!こいつは盲点だ! 彰利 「ゲーーーーーッ!!     わ…わたしの変身機能は外界にある建物・樹木・生物・機械など、     目に見える風景に対して敏感に反応するのが特徴!     し…しかしそのわたしの変身ターゲットである外界のすべての風景を     このような巨大パラソルで覆われてしまっては、     もうどうすることもできーーーーーん!!!!!」 悠介 「……なに言ってんだ?」 彰利 「グ、グムーーーッ!!」 冷静にツッコまれてしまった。 居心地が悪いことこの上ない。 彰利 「と、とにかく椛や?こちらに来なされ」 椛  「うっ……ひっく……」 彰利 「悪いようにはせん。じいやは、楓巫女や楓や飛鳥、そして椛の味方じゃよ」 椛  「ほんと……?」 彰利 「じいやが椛にウソをついたことがあるかね?」 椛  「……『あいあむそーりーひげそーりー』のこと……」 彰利 「ゲェエーーーッ!!」 そんな本人でさえ忘れてたことを! 彰利 「あ、あれは楓巫女に何かを教えてやりたくてじゃな……!」 椛  「ウソ、ついたの……?」 彰利 「グッ……うぉおおおっ!なんてことじゃあああああ!!!     とうとうじいやは椛に嫌われてしまったーーーっ!!」 椛  「え……!?ち、違うよ!嫌ってないよぉっ!」 彰利 「うおおおーーーっ!!     こうなったらこの時代から消えるしか方法が思いつかーーん!!」 椛  「!!」 ボゴシャアッ!! 彰利 「ギャア!!」 悠介 「だぁからっ!!なにがやりたいんだお前は!!」 彰利 「そこんとこだが俺にもよく解らん」 ボゴシャアッ!! 彰利 「ぶごっ!」 悠介 「ああもう……!また泣いちまったじゃねぇか……!」 彰利 「そういうことなら僕に任せてよ!」 悠介 「…………お前がそういうこと言うと、大抵上手くいかないんだよな……」 彰利 「まあまあ、楓巫女の扱いだとアタイの右に出るヤツは居ませんよ?     背後に出るヤツなら腐るほど居るけど」 悠介 「わけの解らんことはいいから」 彰利 「ちなみに背後霊です」 悠介 「いいっつの!!」 ムウ。 彰利 「よっと」 椛  「!?」 椛を抱き上げる。 彰利 「はっはっは、そーら高いたかーい」 椛  「あ、やっ……!お、おろしてっ!わたしもう子供じゃないもん!!」 彰利 「むう。そうですじゃか」 奇妙な言葉を発しつつ、椛を降ろす。 そして首に触れ、月生力を流す。 椛  「あ……」 彰利 「ウム!完治しましたぞ!」 悠介 「……もうちょいスマートに出来ないのか?」 彰利 「なんと!俺がデヴだとでも!?」 悠介 「そういう意味じゃない!」 彰利 「ならばどういう」 きゅむ。 彰利 「ややっ?」 椛  「……もっと流して……」 彰利 「流すって……なにを?」 椛  「癒しの力……」 彰利 「いや、ですが……もう完治してますよ?」 椛  「おとうさんの力、あったかくて大好き……」 彰利 「ムオ……」 椛がアタイの胴に抱き着いてきた。 そこでアタイは考える。 椛にとってはアタイが親ってゆうよりは月生力が親なんかなぁと。 まあいいコテ。 彰利 「地球のみんな、アタイに元気を分けてくれ……!カァーーッ!!」 ガカァアアアアアアアッ!!!!! 悠介 「うわっ!?あ、彰利!?お前なにを……」 彰利 「月生力の全快じゃああーーーっ!!受け取れ、アタイの元気玉ーーっ!!」 アタイは月操力の全てを月生力に換え、椛を包み込んだ。 椛  「あ……」 彰利 「フフ……アタイがキミの全てを癒しましょう……。     光よ唸れ、ヒーリングミスト……!」 そしてその光を散らし、家全体を包み込む。 やがて───光が治まる頃、その家は綺麗に癒されておりました。 悠介 「うおお……老朽化が進んでた家が……!」 彰利 「よ、よかったな……。この家、まだまだ元気だぜ……」 悠介 「あ、彰利?大丈夫か?」 彰利 「す、すまねぇ……ちょっと力を使い果たしてしまったようだ……。     なに……少し休めばなんとか……うぐっ……」 ガクッ。 椛  「おとうさんっ!?」 彰利 「フフフ……悪くないぞ、椛……。娘に抱かれて死ぬのは……」 椛  「おと……おとうさん!?そんな……わたしが流してって言ったから!?     わたしのために無茶したの!?」 悠介 「あ、あー……あのなぁ椛?そりゃいつもの彰利のからかいで……」 椛  「おとうさん!?おとうさん!!」 悠介 「……聞いちゃいねぇ」 キュッと、椛がアタイの手を握る。 アタイはそれを力なく握り返し─── 彰利 「あ、あとを……た、たのんだ……」 独眼鉄の真似をして、コトッと手を落とした。 椛  「!!」 目を閉じましたが伝わります。 椛、相当に驚愕してます。 椛  「お、と……さん?」 ゆさゆさ……。 椛  「おとうさん……?」 ゆさゆさっ……。 椛  「やだ……やだよ……!おとうさん?おとうさんっ!!」 ゆさゆさっ!! 椛  「やっ……いやぁああっ……!!おとうさん!おとうさああああん!!!」 とうとうアタイの胸に顔を押し付けて泣いてしまわれた。 だがこれだけじゃ終わらん。 パァアア……!! 椛  「っ!?」 アタイはアタイの体に光が落ちるように月醒力を調整して月醒光を放った。 そしてゆっくりと自分の体を浮かせる。 そう、まるでお迎えの来た魂のように。 椛  「え……?な、なに……?おとうさん……?」 ここで彰利テレパスーの出番です。 彰利 『……椛や……』 椛  「え……!?お、おとうさん!?おとうさんなの!?」 彰利 『じいやはもう逝かなければなりません……。     思えば、じいやは椛になんにもしてやれんかったのぅ……』 椛  「そんなっ……そんなことないよ!     いっぱいしてもらったよ!?してもらったもん!」 彰利 『なんと!ならもう思い残すことねぇザマス!さらばじゃああーーっ!!』 椛  「えっ!?や、やぁあああああっ!!まだ!まだ足りないの!!」 彰利 『そうなのかい……?』 椛  「う、うん!」 彰利 『でもすまないねぇ……じいやはもう逝かなければならんのじゃ……』 椛  「逝くって……?」 彰利 『ヘヴンじゃよ……ヘ・ヴ・ン♪』 椛  「ヘヴン……天国!?や、やだっ!逝かないで!!ずっと一緒に……!」 彰利 『すまなかったの……じいやはお前を泣かせてばっかりじゃった……。     どうしてもそれを謝りたかったんじゃ……。許してくれるかい……?』 椛  「謝らないでよぅ……わたし怒ってないよ……!」 彰利 『なんと!そうなのか!それだけが心残りだったんじゃ!さらばじゃーーっ!!』 椛  「えっ!?ま、待って!待ってよおとうさん!!」 彰利 『なんじゃね!何か用なのかね!?』 椛  「あ、あの……あのね?」 彰利 『あっとタイムオーバーじゃ。さらばじゃあーーっ!!』 椛  「えっ!?お、おと───おとうさぁああああああん!!!!!」 アタイは体が大体浮いてきたところでプレイスジャンプで消えた。 その後、椛と悠介と小僧がどうなったかはよくわからんが、 アタイがジャンプの場所を間違えて滝壷に落ちたことは曲げようの無い事実だった。 後がどうなったかがわからないのだって、風呂に入りたいから逃走したからだし。 しかし現役のホームレスであるアタイが風呂になど入れるわけもなく。 仕方なく元の時代に戻って体を清め、もう一度来ることにしたのでした。 Next Menu back