───みなさま激情劇場───
がしゃん、と。 数分前、遠くで何かが崩壊するような音がした。 がしゃん、というかドォッガァアアアアアアアン!!!!というか。 落差が激しすぎるのは俺の意識が薄かったということで了承してほしい。 ……そもそも誰に言ってんだ俺は。 がしっ。 凍弥 (───ッ!!) 襟首が掴まれる。 だが気絶したフリを続ける。 もう一発あんなものくらったら生命が枯渇してしまう。 ───そう、俺は奇跡的に生命を繋いでました。 それというのも遡ること一分前───って短ッ! あ、いや、そんなことはどうでもいいんだが。 椛  「……起きていることは解ってます。目を開けてください」 うわ!回想シーンに入れば助かるという考えが壊された! 凍弥 「えーーーと……何用でしょうか」 椛  「………」 凍弥 「………」 椛  「…………」 凍弥 「?」 椛  「どうしたらいいと思いますか……?」 椛はたっぷりと黙ってからそう言った。 その視線の先には再びキレた椛によってボロボロになった体育館が。 ちなみに50メートル吹っ飛んだ彰衛門は、崩れてきた天井に押しつぶされた。 時折『冷静に状況把握してんじゃねィェー!』ってテレパス〜が飛んでくるけど無視。 潰れながら人の心を読む余裕があるのは普通に凄いが─── ───ちょっと回想─── ドバァアアアアアアン!!! 凍弥 「ぶはぁあああああああっ!!!!」 閃きが俺の体を襲った。 彰衛門同様に吹き飛ばされた俺は壁に叩きつけられ、意識を切った。 が、異様な寒気が意識を呼び戻した。 ゆっくりと見てみれば、寒気の発生源は椛。 普段の神の子モードから死神モードへ変わってる彼女がそこに居た。 椛  「オォオ……!!」 キレかけてます。 『おとうさんを傷つける人は敵』が信条となっている彼女にとって、 自分でそれを実行してしまったのが相当なショックだったらしい。 とか思っている時でした。 佐古田「ぐ、ぐぐ……!!このチビッ子め……!!」 魔王サコタヨーシェが目覚めたのは。 で、魔王は倒れている彰衛門を見て言った。 佐古田「う、く……ん?はぁん?なにッス?     『おとうさんをとらないで〜』とか言っておいて、自分が傷つけたッス?     大した子心ッスねぇ〜」 そう、核にも勝る発言を。 椛  「……───!!」 佐古田「ん?怒ったッス?所詮、チビッ子は精神年齢もチビッ子ッス。     あーだこーだ言ってて、結局自分の言ったことすら守れない馬鹿が多いッス」 椛  「───!───!」 ゴゴッ……!! な、なんだ……!?大地が揺れて……!! 佐古田「ま、所詮チビッ子のやることッス。     大人のアチキは寛大ッスから、目を瞑ってやることくらいしてやるッスよ」 ゴッ……! 椛  「───…………ッッッ……!!!」 ゴゴゴ─── 椛  「うるさぁああああああああああいい!!!!!!!」 ドォッガァアアアアアアアン!!!!(注:例の音) 凍弥 「うわっ!?」 椛の咆哮と力の放出により、体育館が悲鳴をあげた。 が、それどころでは済まずに床は割れるわ天井はぶっ壊れるわ。 そのひとかけらが佐古田を直撃し、佐古田は気絶。 とか冷静に状況把握をしていると、その大きな天井が彰衛門に向かって落ちてゆく! 凍弥 「あ、危ない!彰衛門!」 俺は思わず叫んだ! そしてその一瞬、椛に見られた! い、意識があるのがバレた!? 彰利 「グ、グウウ……なにやら少し、悪い夢でも見ていたようだ……」 ぐちゃっ。 凍弥 「あ」 叫ぶ間も無く、彰衛門が潰れた。 椛  「い、いやぁあああっ!!おとうさんがぁああっ!!!!」 いやってアータ、キミがこんな惨事を招いたんですが? ダラララララララ……!! 凍弥 「ハッ!?こ、このマジックとかでよく聞く音は……!!」 ジャジャンッ!! 彰利 「イヤッハァーッ!!さっき潰れたのは例の如くマスオ人形ぞ!!」 とか言いながら笑っている彰衛門の頭上からも天井がゴシャア!! 凍弥 「ぎゃあーーっ!!!今度こそ潰れたぁあああああああっ!!!」 パッパカパーンッ!! 彰利 「フハハハハ!それもダミーぞ!!」 凍弥 「いや、だから!妙な効果音出してる暇あったら逃げ───って上!上!」 彰利 「あ〜ん?……キャーッ!?」 更に落ちる天井!彰衛門の対応は───!? 彰利 「ふはははは!こんなもの、受けとめてくれるわ!!     天井よ、貴様と俺、どちらが最強かを決める時がとうとう来たのだ!」 天井に対して妙なライバル心を燃やした彰衛門は、 落下する天井に向けて手を伸ばし、それを受けとめガシャンッ!! バリバリバリバリィイイイイイッ!!!!! 彰利 「あぎゃああああああああああっ!!!!!」 ───ズズゥウウン!!! ……電灯の部分を押し破り、感電して潰れた。 凍弥 「………」 椛  「………」 いいや、死んだフリでもしておこう。 ───ちょっと回想・完─── で、現在に至る。 椛は上半身だけ無事な彰衛門に駆け寄り、その天井をどかそうとするが…… 流石の開祖の力でも重いものは重い。 彰利 「フフフ……椛や……?じいやはもう長くありません……。     さ、ここももう長くはもたん……逃げるのです……」 椛  「やだっ!やだよぅっ!おとうさんも一緒じゃないとやだぁっ!!」 ……で、また彰衛門に騙されてる椛。 素直ってゆうのはいいことだが、騙されすぎなのもどうかと。 ……まあ、素直なのは彰衛門が相手の時だけなんだけど。 彰利 「フフ、きっと悠介も椛と同じ心境だったんでしょうなぁ……。     椛、貴様にじいやの潰れるさまを見せるわけにはいかんのじゃ……。     頼むから、聞き分けておくれ……」 椛  「やだっ……!!ぜ、絶対に……助けるもん……っ!!」 椛は懸命に天井を持ち上げようとする。 だが、ビクともしない。 彰利 「もういいんじゃ……。じいやは幸せでしたぞ、こんなにも椛に想われて……」 椛  「お、おとうさん……!そ、そうだ、重力操作で軽くすれば!」 彰利 「ゲゲッ!?」 からかいを中断させられるのが嫌なのか、彰衛門は動揺した。 ……どうやら彰衛門にとっての椛は、 『カワイイ娘』であると同時に『からかい甲斐のある娘』でもあるらしい。 椛  「月然力……力を貸して───!」 彰利 「───」(ニヤリ) グギギギギ…… 椛  「ど、どうして!?持ちあがらない!!」 彰利 「フフフ……アタイが逆に重力をかけ───ゲフッ!ゴフン!!     ……実はこの天井はの……     月操力の利かないポリエステル加工材で作られておるのじゃ……」 椛  「えっ……!?ポリエステルにそんな効果が……!」 凍弥 「信じるなよそんなの!」 椛  「それじゃあ……ど、どうしたら……!」 聞いちゃいねぇ。 とかなんとか思っているとメキャキャキャァアアアア!!!! 彰利 「ギムゥウウウウウウウッ!!!!」 椛  「えっ!?お、おとうさんっ!!」 天井がヘコみ、彰衛門が潰されたカエルのような声を絞り出した。 ……どうやら、脱力するのと同時に椛が重力操作をやめたらしい。 で、重力を出していた彰衛門は自爆した。 彰利 「ふふ……椛や……?楽しい夏じゃったぞ……」 彰衛門は痛みのあまりにマジ泣きしながら、椛の頭を撫でた。 椛  「お、おとうさん……やだ……やだよ……!死なないで、おとうさん……!」 ……事情を知らない人が見たら感動の場面なんだろうけど。 マジ泣きしながらもからかいに走る根性は、一体どこから沸いて出てくるんだかなぁ。 まったく、人をからかうことばっかりに長けてて、あとはカラッポなんだから。 彰利 「………」 凍弥 「あ……」 なんかこっち見て極上のスマイル……あ、い、いや……! ファーストフードでオモシロ半分に『スマイル』注文されて、 うざったそうに半笑いする半人前アルバイト学生スマイル……どんなスマイルじゃい!! 彰利 「うう……椛や……じいやは死ぬ前に、     カワイイ娘である貴様に言わなければならんことがある……」 『貴様』言ってる! 『カワイイ娘』に『貴様』言ってる! 彰利 「実はな……実は今回のこの天井崩壊は仕組まれたことじゃったんじゃ……」 椛  「えっ……?」 彰利 「わ、忘れるな……黒幕は他に居る……!     そ、そいつが……じいやを殺そうとして仕組んだんじゃ……!」 椛  「おとうさんを……!?ゆ、ゆるせないよ……!」 彰利 「ゲホッ!ゴホッ!そ、そいつはの……」 椛  「そいつは……?」 彰利 「あいつじゃ」 苦しがっていた様子を振り払い、ビシィッ!と指差す彰衛門。 その先には───俺!? 椛  「ッ……!!凍弥せんぱぁああああああああいぃいっ!!!!」 凍弥 「キャーーーアァアアアアアアアッ!!!!!????」 死ぬ!死ねる!恐ろしい殺気だ!この場に居るだけで死んでしまいそうな殺気です! 椛  「いくら先輩でもおとうさんを傷つける人はわたしが許しません!!     覚悟してください!!いえ!覚悟してもらいます!!!」 凍弥 「イヤァーーッ!!イヤッ!イヤァアーーーッ!!!」 俺はマジ泣きしながら首を横に振った! 誤解で最愛の人に人生の終止符を打たれるなんて冗談じゃありません!! てゆうかね!壁にめり込んだ体が抜けないんですけど!? とか思ってる間に椛がズカズカと!!助けて!マジで!助けてぇっ!! ドグシャアアアアアアンッ!!!! 彰利 「ギャオォオーーーーッ!!!!」 椛  「おとうさんっ!?」 ……へ?な、なにごと……? 凍弥 「……うわ」 涙目ながらに見ると、上半身にも瓦礫が落ちてきて潰れている彰衛門。 さすがにあれは……危険なんじゃないだろうか。 椛  「お、おとうさん……?おとうさんっ!?」 椛は彰衛門のもとへと駆け寄り、瓦礫をどかした。 が、そこにあったのは等身大マスオ人形だけだった。 椛  「え───!?」 カチッ、カチン。 マスオ人形になにかしらのスイッチが入り、顎がカタカタと動き出す。 マスオ『彰衛門はこの僕、河豚田マスオが頂いてゆくよ〜。     返して欲しくば、今すぐこの体育館を修理するんだね〜』 椛  「───!!お、おとうさんがさらわれちゃった!?」 凍弥 「………」 ……ハイ。 ここまで人を信用出来る人って凄いです。 国宝級です。 マスオ『そうすれば返してあげなくもないよ〜』 マスオ人形はカタカタと顎を揺らし、そう言った。 恐らくは彰衛門に改造された機械なのだろう。 椛  「わ、解りました。それでおとうさんを返してくれるのなら───!」 椛は立ち上がり、手を広げた状態で目を閉じた。 そしてなにかをブツブツと呟き始めると、その体がぼんやりと輝く。 やがて───見える景色が元に戻ってゆく。 ベキキッ!! 凍弥 「いてっ!?」 俺がめり込んでいた場所も俺を吐き出し、その場を修復した。 椛  「さあ、体育館は元通りです!おとうさんを返してください!」 マスオ『それは出来ない相談だねぇ〜』 椛  「なっ……どうしてですかっ!」 マスオ『彼は既に我が組織、【河豚田連合】に輸送され、改造されている頃さ。     もはやキミのことさえ記憶から抹消されているだろうね〜』 椛  「そんな!!ヒドイです!返してくれるって……!」 マスオ『僕は返してあげなくもないよ〜って言ったのさ〜』 椛  「〜〜っ!」 ボゴシャア!! マスオ『つぶつぶーーーっ!!!!』 マスオが渾身の開祖パンチをくらって叫んだ。 のちに煙を吐いて爆発。 中身が居たであろうそれは、コナゴナになった。 彰利 「うう……い、いったいなにが……」 そんなことは知りませんと言わんばかりに体育倉庫から現れる彰衛門。 凍弥 「てゆうか髪コゲてる!ちょぴりアフロになってる!!     やっぱ中身だったんじゃねぇか!」 彰利 「なにぃ!?誰だそこでいわれのない難癖つけてくる冴えない顔の貴様は!     俺は河豚田連合に記憶を消された改造人間だぞこのカス!!」 凍弥 「記憶消されたくせにヤケに設定が細かいじゃねぇか!!」 彰利 「やかましい!」 椛  「おとうさん!無事だったの!?」 タタッ……ぎゅむ! 彰利 「……?」 椛  「おとうさんっ……!」 彰利 「……キミは……誰?」 椛  「え……?おとうさん……?」 彰利 「よしてくれ、俺はおとうさんだなんて呼ばれるほど年はとってない」 椛  「……おと……さん……」 彰利 「……それに、ここはどこなんだ?どうして俺はこんなところに……」 凍弥 「おいおい……からかうのもいい加減に」 彰利 「!!」(ギシャア!!) 凍弥 「ヒィッ!?」 ……い、今……目が合っただけで殺されるかと思った……! そこまでからかいたいか……! 椛  「お、おとうさんっ!?わたしだよ!?楓巫女だよ!?」 彰利 「知らん」 椛  「!!」 うわ……なにも一言で切り落とすことないじゃないか……。 椛  「ふ……う、うわぁああああああああん……!!     ごめんね……ごめんねおとうさん……!!     わたしが助けてあげられなかったから……こんなことに……!!     う、うわぁああああああああん!!!!!」 彰利 「ゲゲッ!?」 凍弥 「あー、泣かしたー」 彰利 「お黙り!えーとえーと……グ、グワッ!?あ、頭が急に痛みだしたーーっ!!」 ……わざとらしすぎ。 椛  「おと……さん?」 彰利 「グ、グウウ……!!か、楓巫女……楓巫女なのか……?」 椛  「おとうさん!?う、うん!そうだよ!楓巫女だよ!」 彰利 「グムー……!!     し、しかし楓巫女はサラッと長い髪に巫女装束を着ていた筈……!」 凍弥 「ここまで来てまだ引っ張るかおのれはっ!!」 彰利 「ぐあああ〜〜〜っ!!     何故だかそこの男に叫ばれると楓巫女の姿が消えてゆく〜〜〜っ!!」 凍弥 「あっ!て、てめぇっ!!」 椛  「凍弥先輩!黙っててください!!」 凍弥 「えぇっ!?」 ……ヒドイや。 彰利 「というわけで騙されんぞ!貴様は楓巫女ではない!」 椛  「───!で、でもそうなの!楓巫女なんだよ!?」 彰利 「な、なに〜っ、ならばその証拠があるとでもいうのか〜っ」 椛  「えっ……証拠……?」 彰利 「それみたことか!じいやの大切な楓巫女の名を騙るとは!」 椛  「うくっ……ちが……わ、わたし……」 彰利 「……じいや?はて……何故俺は自分のことをじいやなどと……!?」 椛  「おとうさん……お願いだから……思い出してよぅ……!」 彰利 「……も……みじ?」 椛  「おとうさん……!?」 彰利 「お、おお……椛!?椛か!!」 椛  「おとうさぁん!!」 がっし! ふたりは抱き合った。 そんな様子を見ながら、俺はぼ〜っとしていた。 ……なんかね、個人的にとっても虚しい心境です。 椛  「おとうさん……!おとうさん……!!」 彰利 「おお、椛や……!     お前の真っ直ぐな思いが、じいやの記憶を呼び覚ましてくれたよ……!」 椛  「おとうさん……よかった……おとうさぁん……!!」 椛は涙を流しながら彰衛門の胸に顔を押し付けて震えていた。 ……はぁ。 こんな状況ながら、羨ましいって思ってしまう。 俺にもあんな風に抱き着いてくれたらなぁ。 彰利 「………」(ニヤリ) 凍弥 「ごこっ……!!このやろっ……!」 とても神経を逆撫でする極上のスマイルを贈られた。 当然カチンときた俺は(カチンとくる理由には椛に抱き付かれていることもある)、 何かを言ってくれようと思い、ズカスカと歩を進めた。 が。 彰利 「我唱えん!」 凍弥 「え?」 突然、彰衛門の立つ場所を中心に魔方陣が現れる。 彰利 「我らを宿す黒き大地の上に!     さしずめ、鈍色の剣(つるぎ)のごとく、太陽の目から遠く!死の岸辺に誘う!」 やがて放たれるよく解らない呪文。 だが魔方陣は輝きを増し、やがて─── 彰利 「地精-崩-!!」 ドゴォン! 凍弥 「どわぁあっ!?」 突如、床をブチ抜いて大きな剣のようなものが突き出してきた。 凍弥 「………」 彰利 「………」 椛  「?」 凍弥 「えーと……これだけ?」 彰利 「そうじゃ!」 凍弥 「………」 なんとも演出だけは豪華な魔法だった。 凍弥 「でさ。結局なにがしたいんだよ彰衛門は」 彰利 「ウィ?」 椛を撫でくり回しまくっていると、小僧がなにやら言ってきた。 彰利 「なにがしたいもなにも……撫でてますが?」 なでなでなでなで…… 椛  「えへへ〜……♪」 撫でられるがままに、くすぐったそうにする椛をさらに撫でる。 だってカワイイんですもの。 凍弥 「いや、そういうことじゃなくて。これのこと」 小僧は床から飛び出てる剣を指差した。 剣の中心には謎の文字が描かれていて、 なにやら……中国の宝剣などを思いださせる。 うむ、我ながらステキ。 彰利 「地精-崩-だが」 凍弥 「だが、って言われても」 彰利 「特に意味は無いっつの。アタイはこうして人々との絆を深めとんのよ。     解るかね?いろいろあるが、人はこうして仲良くなるのよ」 なでなで…… 椛  「………」 椛は気持ち良さそうに頭を撫でられたままになっておる。 だが、やがて─── 椛  「………」 トサッ。 彰利 「ややっ!?椛!?椛っ!!」 椛は力無く、アタイにもたれかかった。 アタイと小僧は驚き、その様子を窺った───が。 椛  「……すぅ……すぅ……」 寝てました。 凍弥 「………」 彰利 「………」 凍弥 「……デコピンしていい?」 彰利 「いや、むしろ俺がやりたい」 おのれ焦らせおってからに! でも……むう、カワイイ寝顔だからそっとしといてビシッ! 彰利 「ややっ!?」 なんと!小僧がデコピンしおった! 椛  「う……あぅ……」 彰利 「!!カァアーーッ!!!」 ボゴシャア!! 凍弥 「ごはぁーーーっ!!!」 小僧がアタイのメガトンパンチを頬に受け、床と平行に吹っ飛んでゆく。 やがてゴロゴロドシャアと転がったのちに壁に当たった。 彰利 「小僧ォオオオオ!!     寝ている椛にデコピンするだけでは飽き足らず、泣かせるとは!     ストレイツォ、容赦せん!」 凍弥 「〜〜っててて……!!だからっていきなり殴ることないだろが!     いっつも思ってたんだけど、俺が相手だと容赦なさすぎだぞ彰衛門!!」 彰利 「お?やるか?お?シュッ!フシュッ!」 アタイは警戒なフットワークとジャブを見せた。 凍弥 「俺がやって勝てるか!」 彰利 「なにぃ、そんなこったから肝心な時に椛を守れんのじゃ!     それともなにか!?進歩する気がないのかね!?えぇーっ!?」 凍弥 「そ、そんなことあるものかっ!俺は椛を守ってみせる!!」 彰利 「うっしゃあかかってこい!アタイが試してくれる!」 凍弥 「うぉおおおおおおっ!!!!」 小僧が一直線にアタイに襲いかかる!! だがアタイは冷静に分身をし─── 彰利 「闘技ネオナチ流奥義!分身烈風拳!!」 残像を残しつつ小僧に殴りかかる! 凍弥 「うぇっ!?な、なんだこれぇええっ!!」 パグシャアッ!! 凍弥 「ぐはっ……!!」 ドシャア……。 小僧をやっつけた! 彰利 「成敗!」 で、例の如く決めポーズを。 彰利 「クォ〜ックォックォッ、小僧ごときがアタイに勝てるわけねぇじゃねぇの。     甘い夢見るんじゃおまへんよ、小僧」 凍弥 「こ、このヤロ……」 ボカッ。 彰利 「おほうっ!?」 悠介 「なぁにやってんだよお前は」 突如殴られたかと思いきや、振り向けばダーリンが! 彰利 「ば、ばかな……!貴様、何故ここに!」 悠介 「ちょっとな。煎餅(せんべい)焼いたから持ってきた」 彰利 「煎餅って……」 ぬおお、ダーリンてばもしかして、高校生だった頃より日本好きになってる!? 普通クッキーとかでしょ!? 悠介 「で?なんだって椛が寝てて、凍弥と戦ってるんだお前は」 彰利 「キャア!もう呼び捨て!?義息子に迎える気満々!?     だがダメね!まだアタイが認めておらん!」 悠介 「……どうしたら認めるんだ?」 彰利 「アタイの屍を越えてゆけ!」 悠介 「彰利を縛り付ける縄が出ます。しかも俺じゃなきゃ外せない」 彰利 「なにぃ!?」 ギュルルッ───バシュッ! 彰利 「ゲェエ!あっという間に縛られた!?な、なに!?一体どんなプレイが」 悠介 「認めると言え」 彰利 「拷問かよ!断る!!」 ギュギュッ! 彰利 「ギャアア!!」 悠介 「認めないと締まるぞ?」 彰利 「望むところだ」 ギュギュギュ!! 彰利 「ギャアアーーーッ!!!」 悠介 「認めろ」 彰利 「ご、ごどわる……!!」 メキキッ─── 彰利 「ゴエッ!?」 悠介 「認めろって」 彰利 「───!───!」 メキメキメキ……!! 彰利 「───!!!!!」 タスケテー!喋れません!痛い!苦しい!何かに目覚めそう! 悠介 「認めろ」 彰利 「───…………」 ガクッ。 悠介 「うおっ!?」 ああ、目の前がチカチカしまくってる……死にますよこれ……。 彰利 「……はぁ。相変わらず創造の理力の理不尽さには参りますなぁ……。     絶対に月操力より強暴だぜ?それ」 解放してもらったアタイはボヤいていた。 悠介 「ホレ、煎餅あげるから認めろ」 彰利 「いいだろう」 凍弥 「いいのか」 ダーリンから煎餅を受け取りながらニィ、とニヤけ、 ボリッと噛むと幸せいっぱいな味が口内に広がる。 彰利 「よく出来とるのぅ!こりゃ美味ぇ!」 悠介 「趣味の一環だ。あれからいろいろと日本系のものを噛んでな。     梅干や豆腐や煎餅……まあ言ってたらキリが無いが、いろいろ作ってる」 彰利 「自家製ってやつか……ええもんじゃのう」 凍弥 「へえ……悠介さん、そんなことも出来るんだ」 彰利 「お馬鹿!」 小僧の首をロックし、口を近づける。 彰利 「ダーリンはハンパな日本文化好きじゃねぇのよ……!     アタイが知らんような日本文化まで知ってるのよ……!?」 凍弥 「いや、俺にそんなこと言われても……」 彰利 「アタイは頭が高いって言ってるのよ!解るかね!?」 凍弥 「……よく解らん」 彰利 「ぬう」 そうかも。 彰利 「まあどうでもいいコテ。なぁ悠介、煎餅届けに来ただけなん?」 悠介 「ああ。散歩したかったってこともあるけどな。     体が若返ってると動かないでいるのはつまらないんでね。     創造の理力で高校生くらいの自分の細胞を作り変えてみたんだが……」 彰利 「……キミ、人間やめてません?」 悠介 「お前に言われたくない。ま、これで一応俺は高校生の時の晦悠介ってわけだ。     動きやすくていいなぁ、若いってのはいい。うん」 彰利 「ホホ〜、確かに前より若い顔がしっくりしとるじゃないの。     やっぱダーリンっていやぁその顔ザマス」 悠介 「それより彰利。ちと話があるんだが」 彰利 「なんぞね?」 ダーリンは改まって言う。 チラチラと小僧と椛を見ながら。 そこで……ああ! 彰利 「……結婚の日取りザマスね?」 ダーリンの耳元で囁いた。 するとダーリンはニヤリと笑った。 悠介 「一度、自分の手で婚儀の儀式を用意してみたかったんだ。     神社に伝わる方法でな。お前の昔話を聞いてピンと来たんだ。     双子山と親山は削られて校舎が建っちまったが───     それなら屋上でしたらいい。……面白そうじゃないか」 彰利 「うおう……」 この数十年の間、ダーリンは面白くなっていた。 愉快!まさに愉快! 彰利 「OK、最強だ。アタイも助力するぜ?メイド服なら作れる」 悠介 「んなもん作ってどうする」 彰利 「アタイが着る」 悠介 「お前が着るのかっ!!」 彰利 「ああOK、その言葉を聞きたかった。多分そう言ってくれると思ってたから」 悠介 「……変わらないよな、お前って」 彰利 「当たり前ぞ。アタイはそうそう変わらないのよ。     心が腐ったから固定されてるんでね。だがこの心が嫌いなわけじゃない。     むしろ愛してる。結婚したいくらいに」 悠介 「わけがわからん」 彰利 「人生とはそんなものぞ。夢と現実なんて同じようなものぞ?」 悠介 「……はぁ」 キャア、溜め息つかれちゃった! 悠介 「まあいい。今日は椛の近くにお前も居るだろうから、     そのことで話があってここまで来たんだ」 彰利 「おっほっほ。なんとまあ……マジすか?」 ダーリンたら……アタイに相談を? しかも小僧と椛の婚儀について? 彰利 「……儀式、ブチ壊してもいいの?」 悠介 「いいわけあるかっ!!」 彰利 「そ、そうザマスよねぇ!     ダーリンがアタイに相談なんて、気がフレたのかと思ったわい!」 悠介 「お前は楓巫女と楓と飛鳥って娘の婚儀は見ても、椛の婚儀は見てないんだろ?     だから手伝いと婚儀の見届けを許可しようと思ったんだよ」 彰利 「……ワナ!?」 悠介 「もうちょっと人を信用しようとしてみろお前は!」 彰利 「正直に答えなさいダーリン。アタイに何を隠してるの」 悠介 「隠しとらん隠しとらん」 彰利 「ウソおっしゃい!!」 悠介 「ウソじゃねぇ!信じろ!」 彰利 「なんですかその言葉遣いは!アタイは椛の親ですよ!?」 悠介 「俺は椛の祖父だ!」 彰利 「フッ……ジジイが」 ボグシャア!!(メシャッ!) 彰利 「つぶつぶーーーっ!!!」 ギャアア!アゴが砕けた!!メシャッて鳴った!! 彰利 「うきっ!うきっ!!うきぃーーーっ!!!」 もちろんアタイは痛みのあまりにひとりローリングクレイドル! 悠介 「お前はなにか……!?時空を超えてまで俺に喧嘩売りにきたのか……!?」 彰利 「ひゃ、ひゃひょんひぇふぁひゃい……」(か、過言ではない……) ぐちゃあ!! 彰利 「ぶぎゃあああ!!!」 砕けた顎が蹴り上げられた!痛い!これは痛い! 彰利 「オグホマギュギョーラムゴリョホッキョマーギョフ!!」(意味不明) 悠介 「何言ってるか解らん!!」 彰利 「ぼげびょびゃ」(俺もだ) グウウ……!なにはともあれ治さねば……! 彰利 「ウェフォウィミ♪」(ベホイミ♪) パァア…… 彰利 「というわけでダーリン。この話はアタイとダーリンだけの秘密でOK?」 悠介 「家族は全員知ってるぞ?」 彰利 「なにぃ!?まだ見ぬババアどもが!?」 悠介 「ババア言うな」 彰利 「ぬう……まあいいや。アタイとしてはそげなことどうでもよかギン。     でもちょほいと手を加えていいかね?みんな来るんでしょ?」 悠介 「ああ、まあそうだな」 彰利 「で、婚儀の日取りはいつに?」 悠介 「秋にしようと思ってる。ま、思ってるだけだ。本人に任せるさ」 彰利 「秋か、丁度いいかも。椛は確実に頷いてくれると思うぞ。     個人的に学生結婚は見てみたかったし」 悠介 「お前の頭の中って私利私欲で溢れてるのな」 彰利 「欲望に純粋だと言ってくれ。欲望に走らないやつは純粋な人間じゃない。     だが、殺人衝動と欲望は別だ。     つまりだ、アタイは愛を育めって言ってるのよ。     ああ、もちろん無理矢理育めって意味じゃない。     愛ってのはアレだ、同意の上でだろ?     同意がなけりゃあ愛がねぇ……解るな?」 悠介 「いいから黙れ」 彰利 「グウウ……ムムウ……!!」 ぬう、どうにもこうにも─── 凍弥 「……あのさ。さっきからなに内緒話してるんだ?」 悠介 「お前の婚儀の日取りだ」 凍弥 「え?あ、そっか───なにぃ!?」 小僧がたまげた。 凍弥 「え!?こ、ここ婚儀!?え!?なにっ!?えぇっ!?」 悠介 「婚儀だ。お前と、椛の」 凍弥 「なっ……ななな……!!ちょちょちょっと待ってくれ!そんなのって……!」 彰利 「あん?なんじゃ?     お前まさかぁ〜……遊び半分で椛に告白したんじゃあるまいな!?」 凍弥 「いやいやいやいやそんな滅相もない!!俺は椛が好きだよ!」 悠介 「じゃあ当然結婚はするな?」 凍弥 「え───で、でもまだ俺は……」 悠介 「まだ?まだってことはいずれ結婚するつもりはあるのか?」 凍弥 「え、えっと……それはその……」 彰利 「どっちじゃあっ!!」 凍弥 「ひぇえいっ!?あ、い、いや!もちろん俺は」 悠介 「もちろん俺は?」 凍弥 「……す、するつもりはあるさ。もちろん」 悠介 「それはいつだ?」 凍弥 「いつって……いずれはいずれだし」 彰利 「───」 悠介 「───」 アタイとダーリンはモゴモゴと口篭もる小僧を見て溜め息を吐いた。 彰利 (……オイオイ、なんですかこのヘタレ。ハッキリしねぇやっちゃねぇ) 悠介 (まったくだ……好きなら好きで、告白もした上にモゴモゴと……) 凍弥 「聞こえてるんだけど」 彰利 「当たり前じゃあ!聞こえるように言ってんだよヘタレこの野郎!」 悠介 「貴様、俺の孫をぞんざいに扱う気じゃあるまいな!」 凍弥 「そんなことはしない!俺は椛を愛している!!」 彰利&悠介『じゃあOKだな?』 凍弥 「えっ!?あ、いや……」 彰利&悠介『どっちじゃあ!!』 凍弥 「ど、どっちって……」 彰利 「小僧!貴様は男か!?」 凍弥 「お、男だよ!」 彰利 「小僧!わしは天狗か!?」 凍弥 「ウソだろうが!」 彰利 「小僧!貴様は人間か!?」 凍弥 「当たり前だ!」 彰利 「小僧!貴様は椛と結婚したいか!?」 凍弥 「当たり前だ!」 彰利&悠介『っしゃあ!!』 バシーン!! アタイと悠介は勢いよく手を叩き合わせた!! 凍弥 「───あ」 彰利 「クォォオオオオオーーーーックォックォックォーーーッ!!!!!!     まんまと引っ掛かりおったわ!馬鹿め!馬鹿め!!」 凍弥 「ぐくっ……!!」 悠介 「おし、花婿の確認はとった。あとは椛だな」 凍弥 「ちょ、ちょっと待ってくれ!今のはひっかけだろ!?」 彰利 「長寿と繁栄を♪」 凍弥 「やかましい!」 彰利 「あ、あんですとーっ!?」 悠介 「ああコラコラ、喧嘩するな」 彰利 「だってこのハゲが!」 凍弥 「誰がハゲか!!」 彰利 「好きなんじゃろ!?結婚したいんじゃろ!?     引っかけとはいえ、出たのは本音じゃろ!?」 凍弥 「そ、そりゃあ……」 彰利 「長寿と繁栄を♪」 凍弥 「やかましい!」 彰利 「グウウ……!」 悠介 「はいはい、この話は終わり。秋まで秘密だ。解ったら解散。OK?」 彰利 「OKトニー!」 ボゴシャア!! 彰利 「つぶつぶーーっ!!」 ……こうして、アタイは再び顎を砕かれた。 痛みのあまりに悶え苦しんでも、 ダーリンたらアタイがお話をするたびに拳を飛ばしましたとさ。 ───……で、ふと気づいたらサコタとか呼ばれてた小娘が起き上がり、 そこでまたギャアギャアと言い始め───椛が起きるに至り。 で、寝惚けてた椛に罵詈雑言をプレゼントしちまったために椛が暴走。 この場は再び崩壊し、その日は散々な日だと満場一致で確認した。 Next Menu back