───ミンチ系海産軟骨魚───
───。 凍弥 「浩介〜」 浩介 「おお同志、遅かったな」 一足先に食事を終えた俺は、志摩兄弟が座っている場所へ歩きながら声を 声  「マッスルインフェルノォーーーッ!!!!」 ドゴシャアアアアアアアアアッ!!!!! 志摩 『ギャーーーッ!!!』 凍弥 「………………え?」 志摩兄弟が座っていた場所に、もの凄い勢いで何かが飛んできた。 爆弾で弾けたかのように砂が飛び散り、辺りは砂塵で見えなくなった。 凍弥 「あ……え、と……こ、浩介!?浩之ーーーっ!!!!」 浩之 「呼んだか同志」 凍弥 「おわぁっ!?……ぶ、無事だったか……」 浩之 「我はな。だがブラザーが危険だ。直撃を受けた」 凍弥 「なっ───」 そしてようやく砂塵が晴れる頃、そこには─── 彰利 「これで完全勝利だァ!」 グワシィ!と拳を握り締め、拳を天に掲げている彰衛門が居た。 何故か妙な音楽が流れている。 そしてその彰衛門に抱き着いている浅美と、 ……何故かその下に居るサメ!?に腕を噛まれてる浩介!? うわぁ驚きの連続だぁ! 彰利 「おっとこれはいかん!フン!」 ドゴォン!! 彰衛門がサメに拳を落とすと、その衝撃で浩介は解放された。 が、腕が痛々しいくらいに血塗れだ。 彰利 「ベホイミ♪」 パァアア……完治。 なんかスゴイやつだよなぁ彰衛門って。 一家にひとり、彰衛門って感じだろうか。 まあそんなことはどうでもいいか、ひとまずどうしてここに居るのか訊いてみるか。 凍弥 「彰衛門」 彰利 「おお小僧じゃねぇの。どしたんじゃいこげな場所で」 凍弥 「彰衛門こそ……浅美連れてなにやってるんだ?」 彰利 「いえいえ、コヤツは夜華さんザマス。     アタイは椛に美味いものを食わせたくて、     ボラを釣りに行ったまではよかったんだが漂流したんザマス。     その漂流先でこの海産軟骨魚のシャークさんに会ったんザマス。     でもホラ、運ぶのめんどいザマショウ?     だからマッスルインフェルノで運んできたってわけザマス。     フォーーーッフォッフォッフォッ!!今日はフカヒレづくしザマス!     というわけでアタイは帰るザマスよ?これから椛にご馳走してやるんザマス」 凍弥 「ご馳走って……この鮫?」 彰利 「オウヨ!これでフカヒレスープとか作ってやるんじゃい!」 そう言った彰衛門は軽々と片手でゴゥン!と鮫を担いだ。 彰利 「そんじゃあ、チャオ♪」 キヒィンッ!! ───……満面の笑みを見せると、彰衛門はさっさと消えてしまった。 何モンでしょうかね、ホント。 月の家系がどうのってのは解ったけどさ、ここまで素でとんでもないもんですか? キュボォンッ!! 凍弥 「うぉうっ!?」 突然、目の前で砂が爆ぜた。 彰衛門が戻ってきたのかと思い、傍に寄ってみれば───ブワァッ!! 凍弥 「うおっ……ギャア!!」 片手を振るだけで砂塵を吹き飛ばし、その姿を見せたのは───! 凍弥 「も……椛……」 椛  「『ギャア』……?今、わたしを見て『ギャア』と言いましたか……?」 凍弥 「い、いやぁ気の所為だ!何も言ってないぞぉっ!?」 椛  「うそつかないでください……」 ざわ……! 純粋たる『殺気』が浜辺を支配した。 その途端、『彼女の標的』である俺から野次馬の皆様がズシャシャアと遠ざかる。 凍弥 「あ───こ、浩介!?」 浩介 「人違いだ!」 凍弥 「ひろゆ」 浩之 「人違いだ!」 凍弥 「よ」 遥一郎「人違いだ!」 凍弥 「───」 サクラ「人違いです!」 凍弥 「まだ何も言ってねぇよ!!てゆうかお前らそれでも盟友と同居人か!?」 志摩 『我らは貴様など知らん!』 サクラ「あなたのような人など知りません!」 遥一郎「誰だてめぇ!」 うわっ!みんなしてひでぇ! 椛  「凍弥先輩……そこのふたりがここに居るのに、     どうしてわたしは連れてきてくれなかったんですか……」 ギロリと志摩兄弟を睨む椛。 志摩兄弟が竦みあがった。 凍弥 「いや、こいつらは勝手に付いてきてだな……」 椛  「それではそこの女の人と男の人は……?」 サクラと与一(主にサクラ)を睨み、俺に問い掛ける椛サン。 なにやら殺気が増えている気がしますが、確実に気の所為ではありません。 誰であろうと俺か彰衛門に近づく女は敵視しますし。 特に彰衛門に近づく女。 凍弥 「こいつらは同居人だから。ひとりで海に来てもつまらないかなって」 椛  「……どうしてそこでわたしを誘ってくれなかったんですか」 凍弥 「椛って『海』って感じじゃなかったから。     なんかさ、日焼けとかしてほしくなかったんだよ。     せっかく綺麗な肌なんだから」 椛  「え?あ、あの……」 ……なんだ?急に俯いて─── 浩介 「おいおい……なんなんだあのムカツクナンパ師は。いきなりノロケか?」 浩之 「修羅場の最中に面と向かって『綺麗な肌』など……」 凍弥 「なぁっ!?」 え、あ───そういえば言った……か!? 凍弥 「ち、違うぞ!?俺はそんな気持ちで言ったわけじゃ───」 遥一郎「言い訳は見苦しいぞナンパ師!」 凍弥 「うるせぇ!お前絶対楽しんでるだろ!」 遥一郎「当たり前だ」 凍弥 「ハッキリ言うなよ!泣けてくるだろ!?」 遥一郎「おお、次のナンパ方法は泣き落としなのか」 凍弥 「違うわっ!!そもそも考えの根本が違う!!」 遥一郎「謙遜するなナンパ師」 凍弥 「ナンパ師言うな!お前そんな性格だったか!?」 遥一郎「甘いな。人間だった頃は、よく観咲という馬鹿をからかったものだ。     これしきのことで性格を疑われるようじゃあ、     俺も案外真面目な印象を持たれていたと見える」 凍弥 「いや……どうしてよりにもよってこの場面で、     わざわざその性格を現してるのかを訊きたいんだが」 遥一郎「面白いからだ」 凍弥 「クッハァーーッ!!解りやすい回答をありがとうね!!」 訊いた俺が馬鹿だった! ああもう!ちくしょうめ!! 椛  「す、すいません凍弥先輩……。     凍弥先輩がわたしのことを思って誘わなかったなんて知らなくて……」 凍弥 「え?あー……俺も悪かったんだ。もっと椛のことを気にかけるべきだったのに」 椛  「凍弥先輩……」 凍弥 「椛……」 声  「ヘェエックショイッ!!!」 凍弥&椛『ッ!!』 ふたりの世界を作っていた俺と椛は、突然のクシャミに驚いた。 そして見てみれば─── 佐古田「むう、誰かがアチキのこと噂してるッスかねぇ……。     あ、激邪魔するつもりはなかったッス。もういっちょ始めてくれッス」 ……佐古田が居た。 凍弥 「佐古田テメェ……どうしてここに居る……」 佐古田「なに言ってるッス?     海は霧波川凍弥のものじゃねぇッスからそう言われる筋合いはねぇッス。     大体、夏に海に居てなにが悪いッス?」 凍弥 「お前の存在自体がジョーカーなんだよ……」 もう泣きたいです俺。 とか思ってると、ザカザカと走ってくる影。 男1 「お嬢ーーーっ!!」 男2 「お嬢!旅館空けてきやしたぜ!メシにしやしょう!」 佐古田「旅館開けてきたって……なにをしたのあなたたち!」 男1 「へい!旅館の女将が部屋がねぇとか言いやがるからガンつけてやって、     客を引きずり出して空けさせやした!」 佐古田「お馬鹿!今すぐ謝ってきなさい!     わたしは部屋なんかいらないと言ったでしょう!」 男2 「へっ!?で、ですがお嬢のことだからヤセ我慢しとるのかと……」 佐古田「そんなことをしてなにになるの!いいから謝ってきなさい!」 男1 「へ、へい!おい行くぞ!」 男2 「おう!」 ザカザカザカ……!! ヤクザさん達が走り去っていった。 佐古田「……はあ。馬鹿な付き人に付き纏われると苦労するわ……」 凍弥 「俺はお前に付き纏われて苦労してるがな」 佐古田「別にいいじゃない。わたしが好きでやってるんだから。     別に霧波川凍弥とチビッ子の間に割って入ろうとしてるわけじゃないわ。     あんたたちが結婚するってゆうから、     劇的瞬間を逃さないために付き纏ってるだけだもの」 凍弥 「迷惑の規模が超満開だから付き纏わないでくれ」 佐古田「イヤ」 凍弥 「佐古田……テメェ」 佐古田「霧波川凍弥、悪いことは言わない。     睨むより自分の生命を守った方がいいわよ」 凍弥 「なに?」 魔王サコタヨーシェが俺の後ろの方を指差す。 俺は反射的に振り向いて───その存在に気づく。 椛  「……トウヤセンパイ……」 凍弥 「キャーッ!?」 モシャアアアと空気を歪ませながら俺を睨む存在。 その名も朧月椛さん。 てゆうかなに呑気に状況把握してるんだろうか俺は。 あまりの恐怖に、とうとうイカレちまったらしい。 凍弥 「え、と……椛?殺人はいけないことだ、冷静に話し合おう」 椛  「殺人……!?凍弥先輩はわたしをなんだと思ってるんですかっ!」 凍弥 「最強にして最愛の人」 椛  「───」 『最強』の言葉が気に入らなかったようです。 睨まれてます。 滅茶苦茶睨まれてます。 椛  「お願いします凍弥先輩。わたし以外の女の人とあまり話をしないでください」 凍弥 「人に会話ってシステムがある時点でそれは無理だろ……」 椛  「無茶苦茶言ってるのは解ってますよ……。     ですが、わたしだってどうしようもない気持ちでいっぱいなんです。     凍弥先輩が他の女の人と話していると不安になったりモヤモヤしたりして……」 凍弥 「あー……」 それは間違い無く嫉妬という感情だろう。 それだけ思われて嬉しいと感じる反面、一歩間違えれば死ねる気がする自分が悲しい。 凍弥 「………」 俺は出来るだけやさしく、椛を抱き締めた。 椛  「あ……」 凍弥 「そんなに怯えないでくれ……。     俺は本当に、お前以外の女を好きになったりしないから……」 椛  「それは解ってます……。でも、感情が制御できないんです……。     凍弥先輩、友達と話している時に、     わたしにも見せたことの無い顔で笑う時があるんです……。     そんな表情をわたしにも向けてくれないことが───     凍弥先輩の表情の全てがわたしに向けられないことが悲しいんです……。     胸の奥がチクンって痛んで……そうしたらもう抑えられなくなって……」 凍弥 「……椛」 俺は、俺の腕の中で小さく震える彼女を抱き締めなおし、その頭を撫でてやる。 凍弥 「もし……俺の言葉なんかでお前が安心できるならなんだって言ってやる。     なにかしてほしいなら、俺が出来ることならなんでもしてやる。     俺は、お前のためなら可能な限りなんでもやってやれるから……。     だから、俺を信じてくれ、椛……」 椛  「凍弥先輩……」 やがて俺達は見つめ合い─── 俺は俯いて、椛は小さく背伸びをして───ひとつのことに気づいた。 観衆 『ゴクリ……』 凍弥 「ゴクリじゃねぇーーっ!!なに見てんだよお前らっ!     見せものじゃねぇぞ散れ散れ!!」 浩介 「ケチケチするな同志!接吻を見せろ!」 佐古田「そうッス!恥ずかしげもなくあげなことそげなこと言っておいて、     今更接吻くらいで物怖じしてるんじゃねぇッス!!」 浩之 「ぶ〜っちゅ!ぶ〜っちゅ!!」 観衆 『ぶ〜っちゅ!ぶ〜っちゅ!!』 遥一郎「ひゅーひゅーっ!」 浩介 「キ〜ッス!キ〜ッス!!」 佐古田「キ〜ッス!キ〜ッス!!」 サクラ「公衆の面前で……フケツです!」 美紀 『複雑な心境だけど……キスって見てみたいかな。     ってわけでキ〜ス!キ〜ス!!』 観衆 『ぶ〜っちゅ!ぶ〜っちゅ!!』 言いたい放題も三者三様だ。 しかもどいつもこいつも身勝手な言い分なだけに性質が悪すぎる。 椛は恥ずかしさのあまりに真っ赤になって、 俺に抱きついたまま顔を見せなくなってしまった。 凍弥 「あ……も、椛、転移してくれ……!居心地が悪すぎる……!」 椛  「……、……」 こくこくと頷くと、椛は俺を抱き締めたまま転移した。 消える瞬間、なにやら言いたい放題だった気もするが…… 気にしたら頭が痛くなりそうだからやめておいた。 キヒィンッ!! 彰利 「ヘイゲリョーッ!」 アタイは晦神社の上に立つと、ビシィッ!と決めポーズを取った。 その手にはシャークさん。 彰利 「ムフウ、さて、どうやって調理してくれようか。     ……って、それよりも椛が居るかどうかだな。     今やこの世は夏休みだ。     神社に遊びに来ていれば『良い子』、両親の家に居るのなら『たわけ』」 だってアタイ、椛の親の家がどこだか知らんもの。 彰利 「……ま、エラ呼吸な貴様を連れまわすのも酷だな。     待っていたまえ、いま滝壷の水を海水に変えてダイヴさせちゃるけん」 アタイは華麗にジャンプして社の屋根から飛び降り、滝壷へと赴いた。 そしてその崖っぷちに立って月然力を解放させる。 彰利 「冥月刀よ。我が力の解放に手を貸したまえ───焚ッ!!」 ガカァッ!! 冥月刀から眩い光が放たれ、それはしばらく滝壷を照らすと消えた。 彰利 「おっし。ではダイヴ!オラァアアッ!!」 華麗な跳躍ののち、アタイは華麗にシャークさんを放った! シャークさんはドシュウウウウ!と風を切りながら滝壷へと落ちてゆきドッパァアン!! やがて豪快に着水した。───のだが! ボッゴォオオオオオン!! 彰利 「ややっ!?」 着水したシャークさんは肉片と化してしまった! 彰利 「ば、馬鹿な!何故!?勢いが強過ぎたか!?」 ───否!何か原因があるのだ! 彰利 「おのれ!なんだかよく解らんが許さんぞ!」 アタイは椛の喜ぶ顔を台無しにされた気分を胸に、滝壷へと飛び降りた。 ───……ザンッ!! 彰利 「誰じゃグラァッ!!アタイのシャークさんをブチ殺しやがったヤツァ!!」 コメカミ辺りの血管をメキメキと唸らせながら、アタイは滝壷の周りを見渡した。 ───すると、ひとりの小僧を発見する。 小僧 「ん……?アンタ、どっから現れた?」 彰利 「じゃかぁしゃあわいコンナラァ!!     なに人様のシャークさんを殺してくれちゃってんだコラ!!」 小僧 「シャーク?ああ、さっき落ちてきたサメか。どうでもいいんじゃないか?」 彰利 「いいわけあるかタコ!ありゃ今晩の食事だったんだぞ!?」 小僧 「へえ……ま、俺にはどうでもいいいことだ。     それよりアンタ、     ここの近くに現れるってゆう『弦月彰利』ってヤツ、知ってるか?」 彰利 「俺だよ!!なんの用だこの野郎!」 小僧 「あんたが……?ああ、確かに写真と一致するな。そんじゃ───」 ブンッ! 彰利 「甘いわ!」 バシィッ! 突如ハイキックをしてきた小僧の攻撃を受けとめる。 小僧 「へえ……さすが、賞金首にされるだけのことはあるな」 彰利 「あんじゃいそりゃあ!」 小僧 「覚える必要もねぇと思うけど、俺は姫桐翔(ひめきり しょう)。賞金稼ぎだ」 彰利 「覚える必要もねぇな」 姫桐 「口が減らないやつだなっ!そらっ!」 ブンッ! 彰利 「甘いわ!」 ヒョイッ。 姫桐 「それは囮だ!」 ブンッ! 彰利 「甘いわ!」 ひょいっ。 姫桐 「うおっとっと……へぇ、アンタすげぇな。あれをよけられたのは初めてだ」 彰利 「アタイに無謀な喧嘩を真っ向から仕掛けてきた馬鹿も貴様が初めてだ。     アタイのシャークさんを貶めた酬い……存分に味わえ!」 姫桐 「ヘッ、いいねぇ、ノってきたぁっ!」 姫桐とやらはタンタンと軽快なステップをしながら構えた。 どうやら喧嘩の素人ではないらしい。 が、こやつは大切なことを知らんようだ。 姫桐 「ヒュウッ!!」 シャシャシャッ!! バシバシバシッ!! 小僧が放った連続蹴りを軽々と払う。 彰利 「……ホホウ?貴様、ただの人間じゃあねぇな?」 姫桐 「───!……へぇ、解るかい」 彰利 「聞いたことがある……貴様、月の家系とかいうものの血筋だな?」 姫桐 「へへっ、どこで知ったかは知らねぇけど、     これから狩られるヤツが粋がったってどうにもならねぇよ!」 ヒュバッ!! そして鞭のような蹴りがアタイを襲う! 彰利 「甘いわ!」 ひょいっ。 姫桐 「おっ……これまで避けるとはな……」 彰利 「どうやらお前さん、足癖が悪いようだな」 姫桐 「……ご名答。足技主体の喧嘩野郎さ。ムカツクから叩きのめしてほしいとか、     憎いから痛めつけてくれだとか、そういう依頼を受けてする賞金稼ぎ。     アンタには2万の賞金がかけられてるんだ、逃がしゃしない」 彰利 「2万!?このアタイが2万ぽっちかね!」 姫桐 「個人が出す金だ、2万いけば上等なんだよ。さあ、こっからは手加減抜きだ」 彰利 「依頼人の名は?」 姫桐 「依頼は匿名だ、俺も知らねぇよ!いくぜ!」 姫桐がアタイ目掛けて走る! ───チィ、家系の力を悪用するカスめが! 性根叩き直したる! 姫桐 「ショラァッ!!」 ビシュゥッ! 彰利 「甘いわ!」 鋭い蹴りをかわす。 その蹴りでアタイの髪が切れたが、アタイは無視して攻撃に移る。 彰利 「骸流柔術奥義!髑髏掌!!」 メリャアッ!! 姫桐 「ぐはっ───!」 なんの変哲もない掌打が姫桐の腹に埋まり、姫桐が少し吹き飛ぶ。 彰利 「……来い。貴様に楓巫女の子孫でいる資格はない」 姫桐 「ペッ……なんのことだかぁっ!!」 血の混ざった唾を吐き捨て、姫桐が突進してくる。 やがて拳を大きく振るい───ガツゥッ!!と、アタイの頬を捉えた。 姫桐 「どうよ!俺の拳は効くだろ!」 彰利 「どうした?それで終わりかね」 姫桐 「なっ……!」 彰利 「もしやこのアタイを一撃で屠るつもりだったのか?」 アタイは腕を組み、エドガーさんの真似をしてみせた。 いやぁ、一度やってみたかったんです。 姫桐 「チッ!やせ我慢だ!くらえっ!」 彰利 「無駄、無駄無駄無駄」 バッ!ババババババッ!!! ビシバシガシガッ!バシッ!ビシッ! 姫桐が放つ拳や蹴りの全てを片手で払い、もう片方の手で耳を掻く。 姫桐 「くそっ!どうして当たらねぇ!」 彰利 「それは貴様がザコだからだ」 姫桐 「なんだと……!?てめぇ、俺を怒らせたな───!」 彰利 「怒ったのは貴様だ。俺は怒らせた覚えなんぞねぇザマス」 姫桐 「後悔すんなよ……!」 姫桐は腕につけていた何かを開き、それを構えた。 それは……小振りのボウガンのようなものだった。 彰利 「フフフ、そんなものではアタイの筋肉は貫けんぞ」 姫桐 「どうかな───!やってみなきゃわからねぇ!」 ドシュンッ! ボウガンから矢が放たれる───その瞬間! アタイはモキモキと筋肉を膨張させ、爆肉鋼体を完了させた! ドンッ! 姫桐 「どうだ!さすがにこれは効くだろ!」 彰利 「残念だが貫通すら出来ておらぬわ」 姫桐 「なにっ……!?」 皮一枚しか貫けなかった矢を捨て、アタイは姫桐を睨んだ。 姫桐 「バケモンが!じゃあこれならどうだ!月醒の矢ァッ!!」 彰利 「なんと!?」 ドチュゥウウウウウウウウンッ!!!!! 姫桐が構えた矢が青白く光、唸りをあげて放たれる。 コヤツ、もしや更待先輩殿の───!? ま、なにはともあれ 彰利 「冥月刀よ。封印せし悠介の力を呼び起こせ。月蝕力」 ───バシュウンッ!! アタイは冥月刀から封印した月蝕力を呼び起こして月醒の矢を蝕ませた。 姫桐 「えっ……!?な、どうして消える!!」 彰利 「それは貴様がザコだからだ。     まったく、家系のヤツのくせに『弦月』の名も知らんとは。     よっぽど勉強嫌いの馬鹿と見える」 姫桐 「なんのことだか!ガトリングブラストォッ!!」 姫桐の周りに光の玉が出現し、そこから無数の光が放たれる。 彰利 「甘いわ!奥義……奥様劇場ハエ叩きの章!」 アタイは偶然持っていたハエ叩きでガトリングブラストを叩き落しまくる!! 姫桐 「んなっ……ありえねぇっ!!」 彰利 「フフフ、人の力を甘くみるなよ」 姫桐 「───……死んで後悔すんなよ!」 姫桐は大きくバックステップをし、両手を輝かせた。 それですぐにピンと来る。 『神屠る閃光の矢』だ。 彰利 「こりゃ大技だ。ならばこちらも足掻かせてもらおうか。     開祖の力が神の子と死神とが混ざったものだと解った今、     応用を利かせて技を知るなど容易いことぞ……冥月刀よ、我が力となれ。     ───我唱えん。相反する力を持って我が力とする。     反発せし力の波動は全てを破壊する何物にも属さぬ破壊の光なり───!」 姫桐 「貫け!神屠る閃光の矢ァッ!!」 彰利 「ダークネスイレイザーッ!!」 ガカッ───ゴガァアアアアアアアアアッ!!!!! ふたつの光がぶつかり合うと、その景色は炸裂した。 彰利 「グウーーーム」 やがて光が消える頃、姫桐は肩で息をしながら片膝をついていた。 彰利 「おやおや、だらしがないですねぇ。この程度でもう立てないんですか?」 姫桐 「くっ……!お前、何者だ……!」 彰利 「俺だ」 姫桐 「わけがわかんねぇよ!」 彰利 「クォックォックォッ……解る必要などねぇのよ……。     なにせ、貴様はここでアタイにボコられるのだから!」 姫桐 「くそっ……!」 キヒィンッ!! 彰利 「ややっ?」 グググ……と体を捻ったところ、姫桐の近くに光が現れた。 光はすぐに消え、人の姿を現す。 彰利 「おお!椛でねがー!」 椛  「あ、あ───おとうさん!」 凍弥 「彰衛門?あれ……ここ、晦神社じゃないのか?どこだよ」 椛  「……あー……滝壷の下の方ですね」 姫桐 「ッ!」 ガバッ! 椛  「きゃっ!」 彰利 「ややっ!?なにをなさる!」 姫桐 「動くんじゃねぇ!動けばこの女の首、折るぜ……」 凍弥 「………」 すぐさまに殴ろうとした小僧が、その拳を止めた。 彰利 「………」 姫桐 「……なんの真似だ?」 彰利 「合掌」 馬鹿ですわこいつ。 開祖さまを人質に取るたぁ。 姫桐 「なにワケのわか」 バゴドガァアアンッ!!!! 姫桐 「ひぇぎゃあああっ!!!!」 ……案の定、振り向きざまの開祖パンチをくらった姫桐は地面に叩きつけられ、 俺の頭上よりも高くバウンドした。 おそらく、もう意識はないだろう。 椛  「……わたしに触らないでください」 椛は椛で酷く冷たい目で姫桐を見下ろしながらそう言った。 凍弥 「おお、久しぶりに聞いたな、今の言葉」 会って間も無い頃は散々言われたよなぁと懐かしむ小僧。 それに対して椛は顔を赤らめて小さな反論を口にし、 で、予想通りラヴラヴバカップルよろしくのふたりの世界が展開されおった。 ……こやつら、実際にラヴラヴバカップルなのか? 彰利 「ところで小僧」 凍弥 「え?あ、なんだよ」 彰利 「海パン一丁でラヴを展開するなんて、貴様にゃ羞恥心ってもんがねぇのか」 凍弥 「あ───そういや荷物置きっぱなしだったから……」 小僧はバツが悪そうに頭を掻いた。 彰利 「ま、ええわい。アタイの服を貸してやろう」 凍弥 「あ、助かるよ」 ───……。 Next Menu back