───未来のために───
ヒィンッ! 遥一郎「オワッ!?」 転移した先で一番に見たものは、与一の驚き顔だった。 凍弥 「ただいま」 椛  「お、お邪魔します……」 遥一郎「…………とりあえず降りろ。テーブルに立つのは行儀が悪い」 凍弥 「解ってる解ってる」 カラカラと笑って、椛を抱えてからテーブルから飛び降りた。 遥一郎「晦神社に居たんだよな?」 小さく息を吐きながら読書をしている与一が訊いてくる。 俺はそれに『ああ』と返事をして、トンと椛を下ろした。 遥一郎「二日間もこいつを泊めるのは骨が折れなかったか?」 すると与一は俺にじゃなくて椛に向かってそう言い、微笑んでみせた。 椛  「一日目は『帰る』って言い続けてましたね。迷惑がかかるからって」 遥一郎「やっぱりな。こいつは人のお節介はするくせに、     自分が何かされる側になると弱いからなぁ」 椛  「やっぱり……」 少し可笑しそうにしながら、椛がチラリと俺を見た。 むう、性格が読まれてる気がして虚しいな。 凍弥 「も、もういいだろ?俺、自分の部屋行くから」 遥一郎「そうか───って、凍弥」 凍弥 「な、なんだよ。まだなにかあるか?」 遥一郎「ああ。リヴァイアがお前に電話があったって言ってたぞ」 凍弥 「電話?誰から」 遥一郎「ん……相手は名乗らなかったそうだぞ?だから知らん」 凍弥 「そっか……」 それじゃあ確認しようがないな。 凍弥 「じゃあ俺、部屋に居るから」 遥一郎「ああ。そっちのお嬢サンも一緒か?」 椛  「………」 椛は与一からの質問に答えず、ただ俺を見上げていた。 凍弥 「?」 椛  「………」 遥一郎「……愚鈍」 凍弥 「うん?なんだよそれ」 遥一郎「いーや、なんでもない」 凍弥 「……?」 なんだってんだよ……。 椛  「………」 真意が解らない内に椛は俯いてしまい、結局なにが言いたかったのか解らなかった。 遥一郎「別の意味で女泣かせなヤツめ……」(ボソリ) 凍弥 「ん?だからなんなんだよさっきから」 遥一郎「さーな。……えーと、椛ちゃんだっけ?俺と話でもしないか?」 椛  「え……?でも……」 遥一郎「大丈夫大丈夫、なんにもしやしないよ。     ただ純粋に話がしたいだけさ。それに……な?」 椛  「───!……はい」 ……え? なんだ今のアイコンタクトは。 俺には訳が解らなかったのに、椛には解ったようだ。 遥一郎「それじゃあそこ座って」 椛  「はい」 椛は俺の傍を離れ、与一の向かいの席に座った。 それだけでヒドく胸が痛む。 あ、いや……なに与一にヤキモチ焼いてんだよ俺……アホらし。 凍弥 「えーと……じゃあ俺も」 遥一郎「お前は自室に行くんだろ?」 凍弥 「へっ?あ……そ、そうだったな……」 んー……理由は解らないが与一が怒ってる気がする。 なぜに? 凍弥 「……ま、いいか。それじゃあ俺、行くよ」 遥一郎「ああ」 椛  「はい……」 凍弥 「………」 釈然としない何かを胸に抱きながら、俺は階段の方へ歩いた。 本当によく解らないが、胸がモヤモヤしてしょうがなかった。 ……そう、ヤキモチのモヤモヤとは別の何かが、俺の中にある気がした─── 遥一郎「……はあ。ったく、あいつも困ったもんだな。お嬢さん、苦労してるでしょう」 椛  「はあ……」 俺の言葉に、朧月椛は気の抜けるような返事を返した。 遥一郎「で、まずはちゃんとした自己紹介をしようか。     俺は穂岸遥一郎。凍弥の……まあ、兄みたいなもんだ」 椛  「あ……はい。わたしは朧月椛です」 遥一郎「なんて呼んだ方がいい?苗字?名前?」 椛  「苗字でお願いします」 遥一郎「了解、じゃあ朧月嬢。苦労してるみたいだな」 椛  「……苦労なんて……」 俺の目から目を逸らし、頼りない声を出した。 まったく……女泣かせな男にだけは育ってほしくなかったんだけどなぁ……。 遥一郎「さっき、本当は凍弥に『一緒に来るか?』とか言ってもらいたかったんだろ?」 椛  「っ……───」 その反応を見れば十分だった。 ようするに朧月嬢が凍弥を見ていたのは、あいつの言葉を待っていたからなんだ。 それをあいつは……はあ。 遥一郎「鈍感すぎるのも問題だな」 椛  「………」 朧月嬢は俯き、何も言わなかった。 椛  「わたし……凍弥先輩に言ってほしかったんです……。     少し寄っていくか、くらいでよかったんです。     ただ少しでも、凍弥先輩から一緒に居られる時間を作ってほしくて……」 遥一郎「……そっか」 椛  「言葉だけじゃ足りないんです……行動が一緒にあれば、って……」 遥一郎「あいつは自分のことになるとなんにも解らんような馬鹿だからなぁ……」 椛  「こういう関係になる前の方が構ってくれた気がするんです……。     もしかしたらわたしのことが嫌いなんじゃ、って……そう思ってしまって……」 遥一郎「んー……それは考えすぎだ。あいつがそういうヤツじゃないってことは、     キミが一番解ってるんじゃないか?」 椛  「ですが……」 遥一郎「あいつは言わなかったか?『信じてくれ』って」 ……朧月嬢は無言で小さく頷いた。 遥一郎「だったらそうしてあげなさい。確かにあいつには鈍感なところがあるが、     それは人を大きく傷つけないために身についたものだ。     根っからのお節介野郎だからな、人と係わり合いすぎて傷つけるのが怖いんだ。     飛鳥って娘との間に何があったのかは俺も詳しくは解らないけど、     それを乗り越えた上で今の凍弥だ。もう少し信頼してやってくれ」 椛  「………」 遥一郎「あ、ただ傷つけられたら遠慮なく言いなさい。俺が人誅をくらわしてやるから」 椛  「……あの。どうしてそんなに親身に聞いてくれるんですか?」 きょとんとした顔で朧月嬢は訊ねてくる。 俺は当然といったふうに微笑んでやり、 遥一郎「言っただろ、あいつは俺の弟みたいなものなんだ。     あいつが人を泣かせるようなたわけになるのが我慢ならないだけさ」 そう言ってやった。 朧月嬢はやっぱりポカンとして、俺を見るだけだった。 遥一郎「まあもっとも、     あいつがそういうヤツになるところなんて想像出来ないんだけどな」 そう言って立ち上がり、暖簾をくぐって急須と茶葉を用意した。 横目に見た朧月嬢は俯いたままで何かを考えているようだった。 ……ふむ、やはり相手があの愚鈍馬鹿だと苦労してるみたいだな。 やることは大胆なくせに、ちょっとした何かが圧倒的に足りないんだよな、あいつは。 ……っと、茶を忘れるところだった。 コポコポコポ〜っと。 遥一郎「ほいお待ち」 椛  「え?あ……」 遥一郎「どうぞ。粗茶ですが」 朧月嬢の前にお茶を置き、俺も座る。 遥一郎「もう少し話していくか?」 椛  「……悪い人じゃあ、ないんですよね?」 遥一郎「うお……悪人に見られてたのか俺は。     あのね、これでもワタクシ、精霊ですよ?」 椛  「精霊……確かに邪気は感じませんね。     だけどこんなにまで人間に近い精霊が……?」 遥一郎「んー……じゃあ、少し昔話でもするか。付き合ってくれるかな?」 椛  「はい」 今度は笑顔で、朧月嬢は返事をした。 その笑顔に、天界が育んだ天然記念ボケの面影を映してしまう自分が恥ずかしくて、 俺は頭を掻いてからぽつぽつと話し始めた。 凍弥 「……退屈だ」 部屋に寝転がってひとこと。 退屈。 やることがない。 暇です。 凍弥 「むう……なんとしたものか」 結局俺は部屋に来てなにがしたかったんだ? 本来の目的とは圧倒的に何かが足りない気がする。 いや、もとより俺は……ってそうだよ。 俺、椛に来てもらいたかったんじゃないか。 自分から言うのは照れくさくて、 『少し寄っていってもいいですか?』とでも言ってもらえれば…… 凍弥 「…………アホか」 こんな時に他力本願してどうするんだよ。 あーあ……下に降りて椛を連れてくるのも今更って気がするし…… なにより何故か与一が怖いし。 どうするか。 凍弥 「……寝よう」 結局行きつくところはそこでした。 そうと決まればコンコン。 凍弥 「んあ?」 寝ようとしたところでノック。 誰だですか、まったく。 凍弥 「鍵は掛かってないぞー」 ベッドに腰掛けながら言う。 それとともにカチャ、とドアが開かれて───サクラが現れた。 凍弥 「サクラ……どうしたんだ?」 サクラ「いえ、電話が来たんです。『カザマ』って人から」 凍弥 「そっか。解った」 サクラ「あ、で、でもなにか様子が変で……あの、お知り合いですか?」 様子が変?……なんのこっちゃ。 凍弥 「風間だろ?知り合いだけど……様子が変ってなんだ?」 サクラ「なんて言ったらいいんでしょうか……。     あれですよ、慌ててるってゆうか、落ち着きがないってゆうか……」 なんじゃそりゃ。 凍弥 「ああ、まあいいや。出てみれば解ることだな。下か?」 サクラ「いえ、リヴァイアさんの」 デスンッ! サクラ「あうっ!」 凍弥 「うおっ!?」 なにやらクッションが飛翔してサクラの側頭部にヒットした。 リヴァ「リヴァイアさんと呼ぶのはやめろと言っただろう」 サクラ「あはは、ごめんなさい」 クッションは柔らかかったのか、サクラは笑って返した。 凍弥 「リヴァイアの部屋に居たのか?」 サクラ「はい。空界についていろいろと聞いていたんですよ」 リヴァ「わたしも退屈だったからな。     で、わたしの研究についてを話し始めたら突然の電話だ。     しかも昨日かけてきたヤツと同じ。まったく、何の用なんだ」 凍弥 「昨日って……ああ、昨日の電話ってやつも風間だったのか」 リヴァ「そうみたいだな。だけど昨日、名乗らなかったぞ。     わたしの名前は聞いたくせに。まったく失礼なヤツだ。     おい凍弥、あまりそいつとは関わらない方がいいぞ。     人のことは知ろうとするくせに自分を教えないヤツは人として出来てない。     そんなヤツと付き合って、いい未来が築けるもんか」 凍弥 「慌ててたからだろ。あいつは悪いヤツじゃないよ」 リヴァ「そうか?まあいいさ、お前がそう言うなら別にわたしもどうだっていい」 リヴァイアは関心無いように息を吐いて肩をすくめた。 サクラ「それじゃあ凍弥さん、電話先の人も待ってると思いますから」 凍弥 「っと、そうだった」 トトッと小走りにリヴァイアの部屋に入り、受話器を取る。 凍弥 「もしもし?」 声  『あ、あ───センパイ!』 凍弥 「風間だな?どうしたんだ?」 声  『あ、あの……俺、俺……!』 凍弥 「風間……?」 切羽詰まった声で言葉を搾る風間。 俺は受話器に耳を近づけて次の言葉を待った。 凍弥 「………」 いや、待てよ? こういう雰囲気って……告白!? い、いやいや待て!何考えてる俺ェッ!! 声  『センパイ!あの、俺どうしたらいいか解らなくて!』 凍弥 「落ち着け!サヴはヤバイ!」 声  『静香が病気で……!俺、俺……どうしたらいいか……!』 凍弥 「病気?」 サヴじゃないの?って言葉を飲み込んだ。 ……当たり前だ。 凍弥 「あのな、俺は医者じゃないぞ?」 声  『でも俺……センパイしか相談できる人居なくて……!』 凍弥 「んー……」 声  『一日経っても病状が回復しないんです!     いつもは朝から夜までは調子がいいらしいのに!』 凍弥 「………」 よし。 凍弥 「面会謝絶なのか?」 声  『あ、はい……今のところは……』 凍弥 「じゃあ鈴訊庵に来い。じっくり話した方がいいだろ」 声  『は、はいっ!すぐ行きます!』 がちゃちゃっ! ツーー……ツーー…… 凍弥 「……相当慌ててたな」 静香、ってのは……皆槻静香のことだよな?この前泣いてた。 ……さて、下で待ってるか。 ───ドガシャーンッ!! 風間 「はっ……はっ……!セ、センパーイ!」 入り口方面が騒がしくなったと思ったら、自転車を吹き飛ばすように降りた風間が居た。 凍弥 「随分早かったな」 風間 「は、はい……途中で亮の家に寄って自転車借りて……ゲホッゲホッ!」 凍弥 「ホレ水。飲むなよ、うがいだけでいい」 風間 「はい……」 ガラガラガラ……ばしゃっ。 用意しておいたバケツにうがいした水を吐くと、風間は落ち着いた。 凍弥 「で……どうしたってんだ?」 風間 「……あの。確かにこんなこと話すのは変なことなんです。     俺だってそんなこと解ってます。だけど誰かに相談に乗って欲しくて……」 凍弥 「皆槻、どんな病気なんだ?」 風間 「はい……夜になると発作みたいに熱が出て……それが朝まで続いて……。     くそっ……なんて説明したらいいか……!」 ガタッ! 凍弥 「ん?……与一?」 椛と話をしていた与一が真っ青な顔で立ちあがった。 遥一郎「……おい風間。その病気にかかってるのは知人なのか?」 風間 「え?あ、はい……」 遥一郎「…………夜になると発作が起きて朝まで続いて、その間は体が動かない。     吐き気がするのに吐けない。……そんな病気か?」 風間 「───!知ってるンスか!?」 遥一郎「……なんてこった……!」 与一は頭を抱えて、今まで見せたことも無いような苛立ちを見せた。 凍弥 「おい与一……なんなんだ?」 遥一郎「風間。その娘が『玉子みたいなもの』をいじったみたいなことを言ってたか?」 風間 「はい……静香じゃなくてその母親だったけど……」 遥一郎「………」 その言葉に力無く拳を握る与一。 与一には関係ないだろうに、無力感を感じているように見えるのはどうしてだろうか。 凍弥 「与一……?」 遥一郎「……ハッキリ言うぞ。その病状は医学じゃあ治せない」 凍弥 「え……?」 風間 「なっ……どうしてそんなことが言えるんスカ!!     いくら遥一郎さんでも許せないッス!!」 ガバァッ!! 凍弥 「あっ───やめろ風間!」 与一の胸倉を掴む風間を押さえ、そのままで与一の言葉を待った。 遥一郎「……俺も、その病状になったことがあるから言えるんだ」 風間 「───!」 凍弥 「な……でもお前……」 遥一郎「いいか、その病気は確実に人を蝕む病気だ。医学じゃ治らない。     俺は結局その病気で死んだようなものだ。     それと……これは精霊になってから解ったことだが、     その病気は人の存在を消してゆく。     俺は奇跡の魔法の所為で自分が消えたのかと思ってたが……     風間、その病気の人とは親しいのか?」 風間 「は、はい」 遥一郎「……じゃあ言っておいた方がいいな。     その病気はな、奇跡の魔法と同じで、     消えた時に世界から存在を抹消する力を持ってる。     だけど例外があって、一番に思われてる人にだけは忘れられないんだ。     それがどういう意味か、解るな?」 風間 「……もしかしたら俺だけしか静香を覚えてられなくなる……?」 遥一郎「そういうことだ。それっぽいことを誰かが言ってなかったか?」 風間 「……静香の母親が、静香のこと忘れることがあるって……」 遥一郎「───そうか」 与一はそれだけ言って、椛の目の前に座った。 凍弥 「与一……?」 遥一郎「残酷なようだが……その子にはもう時間が残されていない。     聞いた話の中でその症状の治療薬が見つかったって話もない。     ……その病気の素となるウィルスが発見されてないんだ」 凍弥 「あ……それなら椛の力だったら……?」 遥一郎「悪いが無理だ。神の長……天大神でも治せないものが、     地上に居る者に治せるわけがない」 凍弥 「でも椛は」 遥一郎「神の子だ、って言いたいんだろ?そんなこと俺だって解ってる。     だが神にだって出来ないことがある。この際だ、ハッキリ言うぞ。     その病気はウィルスの大元を手に入れない限りは治せやしない」 凍弥 「そんな……」 俺は椛を見て呟いた。 だが椛は申し訳なさそうに俯き、『ごめんなさい』と呟くだけだった。 風間 「そんな……それじゃあ静香は死ぬしかないんですか!?」 凍弥 「風間……」 風間 「せっかく喜んでくれたのに……!     練習試合、見に来るって張りきってたのに……!」 風間は震えながら頬を濡らし、悔しそうに呟いた。 風間 「っ───!!」 凍弥 「あっ───風間!」 風間は鈴訊庵を飛び出し、そのまま駆けていってしまった。 凍弥 「………」 俺は突然のことに追うことも出来ず、呆然と突っ立っていた。 ───……。 椛  「……どうにもならないんですか?」 遥一郎「こればっかりはな……」 風間が走り去ってからしばらく。 俺達はなんとも言えない気分に苛まれていた。 凍弥 「でも……例えば症状を和らげるものとか……」 遥一郎「ああ、一応あるぞ」 凍弥 「あるのかっ!?それじゃあ───」 遥一郎「50年以上前の薬、飲みたいか?」 凍弥 「……遠慮したい」 遥一郎「だろう?風に聞いてみたが、今ではその薬も作ってないらしいし」 凍弥 「風に?」 遥一郎「……なんでもない、気にすんな」 与一らしくないな、ここまでぶっきらぼうに……。 遥一郎「……はぁ」 椛  「………」 凍弥 「………」 なんか……空気が沈んだな。 居心地が悪い。 キヒィンッ!! 彰利 「ヘロウ椛ーーっ!元気ザマス!?」 ……しーーーん………… 彰利 「ややっ!?テンション低いねィェ〜。何事じゃい」 凍弥 「あー……実はさ」 ───………………。 彰利 「な、なに〜っ!実は小僧はヂョッカーに連れ攫われて改造された、     仮面二輪運転者だっただと〜っ!?」 ブンッ! 彰利 「甘いわっ!」 凍弥 「状況悟れよ馬鹿!冗談言ってる場合じゃないんだよ!」 彰利 「な、なに〜っ、だったらどういう場合だというのだ〜っ」 凍弥 「真面目に聞け!」 彰利 「バカヤロウ!アタイは真面目に聞いた上でからかってんじゃい!     それをなんだい!いきなり殴りかかって!俺じゃなかったら当たってたぜ!?     アタイのからかい精神に感謝するんじゃね!」 凍弥 「尚更に悪いわ!!」 まったく失礼な小僧よね!これだからカスは! 彰利 「ま、ようするにアレだろ?助けられないって嘆いてるんだろ?」 凍弥 「そうだけど……」 椛  「おとうさん……なんとかならないかな……」 彰利 「グムムー……」 椛  「おとうさんはなんでも出来るよね……?」 彰利 「グウムー……」 椛  「ねえ、おとうさん……」 キュム。 彰利 「グ、グムーーーッ!!」 キャア!悩んでる最中に椛が抱き着いてきた! 集中できませんですタイ!! 彰利 「な、なにかね!?」 椛  「おとうさん……わたし、もう誰かが死んじゃうのなんて……見たくないよ……」 彰利 「グ……グウム。それはまったくの同感ですがね。     でもね、椛さん?アタイに人の死を見せたのはキミなんですよ?」 椛  「うぐ……」 彰利 「アタイ辛かったわ……!目の前で娘に死なれて辛かったわ……!     人の忠告無視して死んじゃって……ああ!」 椛  「ご、ごめんなさい……」 彰利 「ま、それは置いとくとして。おい精霊この野郎」 遥一郎「……もっとマシな呼び方は出来ないのか」 彰利 「黙らっしゃあ。ようはウィルスとやらを手に入れてくりゃあいいんだろ?     ならアタイが天界に殴り込み……もとい、探しに行ってくるけぇ」 遥一郎「……今、殴り込みって言わなかったか?」 彰利 「あ〜ん?アタイはそげなこと言ってねぇでゲスよ?     耳が腐っとるんじゃねぇのかね?」 遥一郎「くはっ……」 ムヒョヒョヒョヒョ、怒っておるわ怒っておるわ! 彰利 「じゃ、とにかくアタイが取ってくるから待っといで!いいね!?」 遥一郎「……天界にか?」 彰利 「そうぞ?」 遥一郎「お前がぁ?」 彰利 「あんじゃいその見下した態度は!」 遥一郎「…………あー…………俺も行く。てゆうか連れてけ」 彰利 「な、なにーっ!?貴様笑気か!?」 遥一郎「笑ってどうする!」 彰利 「知るかボケ!……しかしマジかね?」 遥一郎「マジだ。連れてけ」 彰利 「グウム……」 一体どういう風の吹きまわしなのかねこの子は……。 彰利 「貴様……何が狙いだ!白状しろ!」 遥一郎「狙いなんてあるか!     俺はただ自分の手でこの馬鹿みたいな因縁を切ってやりたいだけだ!」 彰利 「それみたことか!やっぱり狙いがあったんじゃねぇか!     このウソつき!ホッパ吹き!てんぎゃメン!!」 遥一郎「誰がてんぎゃメンだ誰がッ!」 彰利 「キャア!ウソは認めるのね!?     開き直るってのね!?この最低男!カス!ボケ!」 遥一郎「やかましいわっ!!いいから行くなら行くぞ!」 彰利 「……で、いつ行くん?」 遥一郎「今すぐだ!」 彰利 「え〜?今すぐかぁ〜?オラ腹減ったぞ〜……」 遥一郎「精霊パァーンチ!!」 ボゴシャア!! 彰利 「つぶつぶーーっ!!!」 遥一郎「腹の虫なんぞ無視しろ馬鹿者!!」 彰利 「キャア!虫を無視ですって!なんて低俗な駄洒落(ダジャレ)でしょう!」 遥一郎「なんでもかんでもダジャレとか言うヤツは俺は嫌いだ!」 彰利 「お?そうザンス?だったら貴様は連れていかんぞ?ン?それでいいんだね?」 遥一郎「いいわけあるかっ!!」 彰利 「どうしろってゆうのさテメェ精霊この野郎!!」 遥一郎「俺を天界に連れてけ!」 彰利 「グウウム〜……!」 どうしましょ。 こやつを連れていったらアタイに自由が無いじゃない。 彰利 「……本気?」 遥一郎「マジだ」 彰利 「どうしても?」 遥一郎「どうしてもだ。頼む」 彰利 「ぬう……」 ……しゃあねぇかねぇ。 椛  「わたしも行く!」 彰利 「ダメ!」 椛  「ど、どうして?」 彰利 「お前を危険な目に遭わせたら……夜華さんに合わせる顔がねぇ……」 椛  「夜華は関係な───」 彰利 「あります!ありますとも!夜華さんは椛を大切に思っておる!     もちろんアタイも悠介もルナっちも小僧もじゃ!     解るね?キミには大切に思ってくれる人が多すぎるのじゃ……」 椛  「でもっ!それはおとうさんも」 彰利 「アタイはこの時代の人間じゃない。     もし死んだら───誰の記憶からも消える。だからオッケン!」 椛  「そんな!そんなのダメ!」 彰利 「だめだ」 椛  「だっ……だめなのはおとうさんだよぅ!」 むう、どうしたものか。 ここは……うむ、話を逸らそう。 ということで 彰利 「───オウ、そういやキサマ、     アタイみたいな理由がなけりゃあ連れてゆくことはまかりならんぞ?」 遥一郎「俺はもともと存在が消えた所為で死んだんだ。     精霊体になったおかげで人の記憶に認識されてるが、     この状態で死に至ればまた消える。……お前と同じだ」 彰利 「チッ……デマカセじゃないでしょうね」 遥一郎「ウソついてどうする。真実だ」 グウウ……!!しまったぞ、断る理由が無くなってもうた……! てゆうか椛に思いっきり睨まれてます。 いやーん。 彰利 「うっしゃあそこまで言うなら連れてってやらぁ!レッツハバナーウ!!」 椛  「えっ!?お、おとうさん!?わたしも───」 彰利 「さらばじゃあああああああ!!!!」 ガッシィッ!と精霊の手を掴んで瞬間的に転移した。 ああ最強です。 凍弥 「与一……帰ってこいよ……」 椛  「うう……おとうさんのばかぁ……」 Next Menu back