───裏切りの明日へ?───
ぢゃかじゃんっ! アキト「えー……それではこれより、魔法の勉強を始めます」 ミント「はーい」 リーフ「は……い」 さて……どうしてこうなるんかね。 ちなみに今の状況は、アタイがミントさんとリーフさんに魔法を教えるという、 世にも奇妙な状況でございますですハイ。 ……アタイ、天界になにしに来たんだっけ……。 アキト「えーと、まず基本中の基本。回復魔法からいきましょう〜」 ミント「え?基本はプチファイアじゃないんですか?」 アキト「ゲッ……いえ違います。あれはデマカセです。というわけで、いいですね?」 ミント「は、はい……」 あぶねぇあぶねぇ……ボロが出るところだったぜ……。 ここでバレてはこの子供達の夢を裏切ることになる。 それだけは避けねば。 アキト「よいですかね?まずはこの、気絶している小僧を使っての実験じゃ」 ミント「はい」 リーフ「………」(こくこく) アキト「回復魔法の基本とは『癒してあげたい』と思うことにあります。     その心が無ければ、何かを癒すなどとてもとても」 ミント「え……」 リーフ「………」(……もじもじ) アキト「ムオ?」 なにやらふたりして顔を赤くしましたぞ? も、もしや病気!? ミント「あ、あの……それではわたしたちのことを、     『癒してあげたい』と思ってくれたんですか……?」 リーフ「………」(じーーー……) ……あ、そゆこと? ムウ、なかなかにオマセな娘ッ子どもじゃあ。 てゆうかリーフさんが期待と不安の眼差しでアタイを見てます。めっちゃ見てます。 アキト「もちろんですよ。じいやはオヌシらのような心の綺麗な子供の味方じゃ」 ミント「ほ、ほんとうですか?」 リーフ「………」(……はふぅ) うおう、ふたりとも凄まじいほどに安堵の溜め息吐きましたよ? ……て、そっか。 ふたりとも孤児なわけだし、誰かが一緒に居てくれるのが嬉しいってことか。 アキト「………」 ……ああ、ヤバイな。 なんてゆうか、そんな気持ちが痛いくらいに解っちまう。 結局この子達も孤独に怯えながら、互いを支えて生きてきたんだ。 このカス小僧は別としても。 ───よし! アキト「そうじゃな……じいやでよければ、     オヌシ達の親がわりになってやろう。どうじゃな?」 ミント「───……」 リーフ「………」 ややっ!?無反応!? これはしまった!かなり恥ずかしガバァッ!!! アキト「キャーッ!!」 ミント「ほっ……ほんとうですかっ!?」 リーフ「ほんとっ……!?」 アキト「え?あ、いや……はい、俺で……よければ、ですけど……」 あまりの気迫に敬語になってしまった。 とか思うのも束の間、ミントさんとリーフさんはアタイに抱きついてきた。 アキト「オワッ!?お、おいおい……」 ミント「…………!」 リーフ「…………!」 ふたりは目に涙を溜めながら、アタイの胴に抱き着いていた。 小さな肩を震わせながら……小さく『おとうさん』と呟くふたりに、 俺は『おう』と言って頭を撫でることで応えた。 ミント「……!うゎああああん!!おとうさぁああああん!!!!!」 ぎゅぎゅぅうううう!!! アキト「ゴエッ!?ぢょっ……ぢょっど……びんどざん……!?」 リーフ「…………!!」 みぎゅぎゅぅう……!! アキト「ゴハッ!!ゲ……フ……!!い、いぎがでぎだい……!!」 ヤ、ヤバイです!感極まったふたりは、 まるでリミットが解除されたかのように限界ギリギリストレングスです!! イヤアアアアア!!!胴が絞まる!締まる!!閉まるゥウウ!!! アキト「イ、イヤァアアア!タスケテーッ!タスケテーーッ!!     ど、胴が千切れちゃうーーーーっ!!!」 ゴギュリ!! アキト「ウギャアーーッ!!」 ……今……アタイの中で『決定的ななにか』が破壊される音を聞いた……。 もう波紋も練れない……。 天国の母さんごめんなさい、アタイはこげなところで散るようです……。 ───……。 アキト「グ、グム……?」 おお?生きておるわ。 ミント「おとうさん!!」 リーフ「……!!」 がばーーっ!! アキト「キャーッ!?」 ミント「よかった……よかったよぅ……!!     泡吹いて倒れちゃったからどうしたらいいのかって……!」 リーフ「おと……さん……」 泡吹いてたって……ヤバかったんじゃないですか? ……でも別に痛みは無いし……。 アキト「おふたりさん、どうやってじいやを?」 ミント「えっと……おとうさんを助けたいって思って、     おとうさんを揺さぶってたら……」 リーフ「魔法……できた……」 アキト「魔法……なんと!ほんとかね!?やったではないか!」 ミント「まだ少しだけだけど……おとうさんを助けられた……よかったよぅ……」 リーフ「…………」(こくこく) むう……こんなに愛されて、アタイってば幸せ者……。 ……でも、どうしてでしょうね……嫌な予感が消えないのは。 アキト「………」 気の所為だな。 アキト「よーしふたりとも、次は別の魔法を練習してみような。     おぬしらなら必ず出来ますじゃ」 ミント「うんっ!」 リーフ「が、がんばる……」 こうしてアタイは小娘ふたりに魔法とはなんぞや?ということを教えることとなった。 ドシュシュッ!バオバオッ!ビッ!ブバッ! でげででげででげでで〜ん♪ アキト「うむ!これで貴様らは魔法の基礎を学んだ!あとは応用すればいいだけじゃ!」 ミント「うん!」 リーフ「………」(こくこく) うむ、ふたりとも真剣にアタイの話を聞いてくれました。 素直なよい娘ッコ達じゃ!最強! アキト「それではミントさん、プチファイアを出してみてくだされ」 ミント「えっ!?急には無理ですよ……」 むむ……!? アキト「ミントさん、じいやはミントさんのなにかね?」 ミント「え……?お、おとうさんです……」 アキト「ならば敬語は無しじゃ。よいな?」 ミント「でも……」 アキト「でもじゃねぇですじゃ。よいな?」 ミント「はい……」 アキト「『はい』ではなく、『うん』じゃぞ」 ミント「う、うんっ」 アキト「よしよし……では、プチファイアじゃ。安心せい、ミントなら出来る。     自分の力を信じるんじゃ」 ミント「う、うー……」 ミントはおずおずと手を翳し、目を閉じた。 アキト「よいかね?自然は自分のものだと思うんじゃ。     息を吸って、そして吐くのと同じぐらい自然にの」 ミント「………」 喩えを実行するかのように、すーはーすーはーと呼吸をするミントさん。 その一方で、リーフさんが目を閉じて小さな呼吸を繰り返していた。 むう……双方ともに凄まじい集中力ですじゃ。 アキト「よし……火花をイメージして、それを手に送るようにするんじゃ」 ミント「うん……」 リーフ「………」 魔法のことはちと解らんが、イメージとしてはそう変わらんだろう。 だって月然力も似たようなものだし、 神の子の力の部分だろうから天界の魔法も似たようなものでしょ。 アキト「手に送るイメージを纏めたら、次は放つんじゃ!一気に!」 ミント「───はっ!!」 リーフ「!!」 ───……チリッ。 ミント「あっ……でた!」 アキト「おおう!出ましたな!」 ミント「すごいすごい!やったーっ!!」 ミントさんは手を挙げて跳ねまわりながら喜んだ。 だが……リーフさんの手からは火は出ていなかった。 リーフ「………」 アキト「リーフさんや……そう落ち込むでない。     よいかな?じいやが手本を見せてやりますじゃ」 リーフ「…………!!」(ぶんぶんぶんっ!!) アキト「なんと!見たくないと!?」 こりゃいかん!自分だけできなかったのがショックで、ヤケクソになっておる! アキト「大丈夫じゃ、安心せえリーフや。じいやはリーフの味方じゃよ?     リーフが出来るようになるまで一緒に練習してあげようぞ」 リーフ「……ほ……んと……?」 アキト「ほんとですとも。じいやは滅多なことじゃあウソは言いませんですじゃ」 リーフ「…………………っ」(じわっ……) アキト「ややっ!?」 がばっ! リーフさんは目に涙を溜めて、アタイに抱きついてジュウウ!! アキト「あじゃじゃぁああああああああっ!!!!」 リーフ「!?」(ビクッ!) な、なんザマス!?なんか今とっても熱かったザマスよ!? 抱きつかれた瞬間に物凄い熱がアタイを襲ったザマスよ!? アキト「………」 アタイは恐る恐るリーフさんに触れてみジュウウウ!!! アキト「ギャヤヤァアアアアアア!!!!!」 リーフ「っ!!」 やっぱ熱いよ! え!?なに!?リーフさんって溶岩魔人だったの!? アキト「………」 リーフ「〜〜……」(びくびく……) アタイが出した声に驚いたのか、びくびくと震えているリーフさん。 ……そうか、悟ったぜ。 アレは演技なのだ。 隙あらばアタイを屠れるぜ、という意思表示なのだ。 フフフ、巧妙に騙そうとしたんだろうが、そうはいかねぇぜ? アキト「ふははははは!正体見たり枯れ尾花!?残念だったな!アタイは騙せんぜ!?」 リーフ「………?」 ミント「………?」 アキト「………」 えーと……あれ? なにやらとっても純粋な瞳で見られてるんですけどアタイ。 い、いや!騙されるな!これさえも作戦なのだ! おのれ!こうなったら存在ごと消し去ってくれるわーっ! アキト「火玉流究極奥義!ハイパーメテオ火球!!」 アタイは自分の手の上に巨大な火の球を創り出した。 それはまるでマグマを連想させるような紅蓮の炎で、 触れればたちまち燃えつきそうな炎だった。 リーフ「!」 ミント「わぁっ……!すごいすごい!」 アキト「え?や……照れるな、そんな風に言われると……」 リーフ「すごい……」 ミント「おとうさんすごい!」 アキト「や……いやはははは!そ、そうかね!?すごいかね!?」 ポロッ…… アキト「ウィ?」 ふとした瞬間、手からハイパーメテオ火球が落ちボゴォオオオオオオオオン!!!! アキト「ウギャアーーーーッ!!!!!!!」 アタイは飛んだ。 まるで、元気玉をくらったベジータのように空へと吹き飛んだ。 ああっ……なんと雄大な世界ぞ……!てゆうか酸素薄い!空に飛んでいくのはマズイ! 苦しい!こりゃ苦しい!そして熱い!! アキト「ヌ……ヌォオオオオオオオ!!!!」 ボシュゥウウウウン!!!! なんとか身を逸らしてメテオ火球から逃げ出した。 アキト「お、おのれギャアアアアアア!!!!」 で、とっさのことでしたのですぐに落下しました。 びっくりしたのも確かで、月空力で浮かぶことも叶わず、やがてドグシャアッ!! ミント「きゃああ!?」 リーフ「あっ……!」 アタイは見事に大地へと降り立った。 ……背中から。 てゆうか衝撃が強過ぎて息が出来んっ……! ミント「お、おとうさん……そんな……!どうしようリーフちゃん……!     おとうさんが……おとうさんが息してないよ……!」 リーフ「!!」 あ、あの……生きてますよ?アタイ……。 ただ体がシビレてる上に呼吸が出来なくてね? ミント「おとうさん……!おとうさん……!」 ゆさゆさゆさ……! ぐええ……!や、やめれ……!揺らすでない……! 感触からしてアバラが折れグサッ。 アキト「───!!」(ギャアアアアアアア!!!!!1) ア、アバラが!折れたアバラが肺に刺さりおった!! タスケテー!!タスケテーッ!! ミント「やだ……やだよおとうさん……!」 ゆさゆさゆさ……! グサ!ズブ!ゾブブ……!! アキト「───!───!!」(ギャアア!ギャアアアアア!!!) イヤァ!イヤァアア!!呼吸が出来ないくせに痛みだけがリアルに……!! 痛い痛い!!吐血できるなら吐きたいくらいに!! こりゃヤバイ!マジで死ぬ!───月生力!! パァアア……!! ミント「おとうさん……ううぅ……おとうさぁん……!」 リーフ「………」 ミント「リーフちゃん……どうしたら……」 リーフ「……おはか……」 ミント「あ……う、うん……おはか、作ってあげないとね……」 アキト「きさまらの墓をか?」 ミント&リーフ『!!』 アキト「ふはははは!じいやがあれしきで死ぬとお思いか!!     さあ!どっからでもかかってきなさい!どんな手でこようが負けねぇぜ!?」 ミント「おとうさん……!」 リーフ「───!!」 がばぁっ!ジュウウウ!!! アキト「あじゃああああ!!!ごめんなさいアタイが悪かったです!!     許して離してあじゃじゃじゃじゃああああああああ!!!!」 リーフ「!!」(びくっ!) ビクリと反応したリーフさんはアタイから瞬時に離れた。 アキト「は、はあ……はあ……熱かった……む!?」 ───ピキーン!! アキト「はうあ!そうか!そうだったのか!」 ───その瞬間、アタイは全てを悟ったのだった! リーフさんが熱い理由……それは、 溜めた魔力イメージを外に放出出来ないがための現象なのだ! つまり、その蓄積された魔力を放出することができれば……OH,YES! アキト「リーフさんや、じいやの手に手を置きなされ」 リーフ「……!」(びくっ) アキト「大丈夫、怖くないですじゃ。さ、手を」 リーフ「………」 ミント「ほら、リーフちゃん」 リーフ「う……う、ん……」 ………………………………きゅむ。(ジュウッ!!) アキト「あじゃあ!……ぐぐ、しかしここは我慢ぞ……!!」 たっぷりと時間をかけて、リーフさんはアタイの手に自分の手を乗せた。 クォックォックォッ、これでOKね。 あとはリーフさんの蓄積された魔力を解放してやりゃあ最強です。 てゆうか熱ッ!!早急に終わらさなければ!! アキト「………」 リーフ「………」(そわそわ……) リーフさんはなにやら落ち着かないようで、視線を泳がせてらっしゃる。 だがそんなことは関係ねィェ!! さっさと魔力の解放を───って、アレ? ……妙ですな、魔力の穴が見つからんタイ。 アキト「グ……グム?」 アタイは熱さに耐えながら、涙を流しつつ首を傾げた。 月生力でカバーしてはいますが、熱過ぎます。 アキト(バカな……通常、魔力を解放する穴ってのは、     掌とか指先に存在するってリヴァイアさんが言ってたのに) リーフさんにはそれが無い……? リーフ「……?……!」 アキト「ウィ?どうされた」 リーフ「……!、!!」 リーフさんが体を庇い始めた。 ───もしや、蓄積された『火』の魔力が熱暴走を!? これはいかん!早急に魔力を解放してやらねば!てゆうか穴が見つからんのだって!! い、いや!もしやリーフさんは穴を持ってない者なのかもしれん! ならば───強行手段!! アキト「奥義!!リヴァイアさんの部屋からちょろまかした魔導穿ち機〜!!」 説明しよう!魔導穿ち機とは、強引に魔力を放つ穴を空ける錬金魔導の結晶である! アキト「というわけで、うりゃ」 トチュンッ!!グボンッ!!! アキト「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」 リーフさんの掌に魔力解放の穴を穿った途端、そこから灼熱の炎が飛び出し─── って、冷静に説明してる場合じゃねィェーーーーーー!!!!!! アキト「キャーッ!!皮膚の再生がおっつかねーー!!     熱い!これは熱い!!てゆうか死にます死にますよコレ!!     ぐ……ぐおお……!!な、汝のさだめ……滅びなりゃああああ!!!!」 ガオォオオオンッ!!!! 月然力・風で炎を吹き飛ばし、事無きを得た。 皮膚は月癒力と月生力の相乗効果でさっさと再生&回復させた。 アキト「は、はー!はー!し、死ぬかと思った……!」 リーフ「……?」 アキト「ぬお!?」 なんとまあ!リーフさんたら目の前の臨死体験劇を無視して、 自分の手から魔法が放たれたことに疑問を抱いてやがる!! アキト「グ、グウウ……!!しかしここは寛大な心で許してやらねば……」 リーフ「……?…………ッ!!」 ジュゴンッ!! アキト「あじゃじゃじゃじゃじゃじゃじゃじゃああああああああ!!!!!!     な、なにすんのリーフさん!!せっかく消したのにあじゃあじゃじゃあ!!!」 なにを思ったのか、リーフさんたらアタイを燃やしました。 そ、そうか!やはり『フリ』だったのか!!チクショウ!まんまと騙されたぜ!!! リーフ「……わあ!」 ミント「すごいすごい!リーフちゃんにもできたー!!」 クォックォックォッ……!喜んでられんのも今のうちじゃぜ!? アキト「氷結は終焉……せめて刹那にて砕けよ!インブレイスエンド!!」 娘ッコ達の頭上に大きな氷の塊を作り、落下させる。 キャア!これで最強ジュワァッ!! アキト「ややっ!?」 思考も中途半端なままに、氷は溶かされてしまった。 アキト「…………えーと」 よし考えよう。 1:リーフさんてば実は魔力がトンデモナク高い 2:リーフさんてば実はリーヴ21の回し者 3:リーフさんてば実はアタイを屠るために神が使わせたエージェント 結論:3 アキト「野郎!!」 魔力の穴が無いなんてのはマボロシだったのだ! 元々アタイを屠るために魔力を蓄えた上で、アタイを油断させといて燃やしたのだ! おのれ許さん!!アタイの親心を利用しおってからに!! アキト「我唱えん!我らを撫でる清き風の中に!!     さしずめ、地を撫でる慈しみのごとく!     全てを破壊する黒き渦よりも逞しく!死の理を屠る!!」 アタイは冥月刀を構えて月操力を解放させる。 能力を託した光が刀へ飲み込まれ、その刀身が輝く。 アキト「轟天弦月流最終極技!フルブレイクカタストロファーーッ!!!」 ゼノを滅ぼした全月操力の解放を冥月刀でさらに増幅させたこの一撃!! 耐えられるモンなら耐えてみやがれ!! もっとも!?貴様が耐えたところで天界は滅びるだろうがなぁああっ!!! リーフ「あ、ありがと……おと……さん……!」 アキト「なにぃっ!?」 スポーン。 アキト「ややっ!?」 突然の出来事に油断したアタイは、冥月刀をすっぽ抜けさせてしまった。 アキト「アイヤーッ!!」 かなりの勢いを付けてたアタイの反動に誘われて、 冥月刀は弧を描きながら視界から消えるほどに勢いよく飛んでった。 アキト「な、なんということを……!」 アタイ、冥月刀に月操力の全てを預けたままですよ……? ヤバイじゃない!今、アタイったらたんなるヒューマンぞ!? あ、い、いやいや……腕力と素早さになら自信はありますが……あぁあああ!! ヤバイことになった……これはヤバイよ……!! アキト「月は!月はないのかね!?」 ミント「え……?まだ朝だから月はないよ……?」 アキト「グ、グムーーーッ!!」 なんとしたことだ!それではアタイはこのエージェントに屠られてしまうのか!? そ、それだけは御免だ!こげなところでは死ねぬ!! アキト「とんずらぁーーーっ!!!」 アタイはそうすることが当然だと断言する勢いで逃走を謀った。 リーフ「!」 キィンッ!!シュババッ!!ドグシャア!!! アキト「ギャア!!」 突如、足に不快感が襲いかかった!と思った瞬間に見事に転倒。 その勢いで刀の鞘までもが空の彼方へ───ってどういう勢いじゃい!! アキト「ややっ!?ゲェーーーッ!!!!     何故だ!!体が勝手に宙に浮き、身動きがとれーーーん!!!」 振り向いてみれば、リーフさんがアタイに向けるように掌を掲げていた。 それで悟った。 これは公開処刑なのだと。 まるでフリーザさまがクリリンを殺すかのように、アタイは滅ぼされるのだと。 しかし迂闊だった。 まさかリーフさんがサイコキネシスの使い手だったとは……!! ミント「おとうさん、何処にいこうとしたの?     まだ魔法、教えてもらいたいよ」 くっ、嫌味か! こうやってアタイを慰み者にしながらじわじわとなぶり殺しにするんだな!? お、おのれぇえええええええっ!!!!! だ、誰かアタイにパワーを……!! こやつらに打ち勝てるパワーを……!! アキト「パワーをッ……くれぇえーーーーっ!!!!」 アタイは叫んだ! リーフ「……?」 ミント「おとうさん、なに言ってるの?」 しかしよく解らん顔で見られるだけだった。 ちぃいいいっくしょおおおおおおお!!! ちぃいいいいいいいっくしょぉおおおおおおおおっ!!!! ギュルルルルルルル───どかぁっ!!! 遥一郎「うおっ!?」 弦月とやらと別れてからしばらく歩いていると、突然刀が飛んできた。 随分と綺麗な刀だ。 遥一郎「……どうなってるんだ?───ん?」 ───どかぁっ! 今度は鞘が飛んできた。 ますます解らんが……まあ。 遥一郎「とりあえず武器はあった方がいいよな、うん」 俺は地面に突き刺さった刀を抜き取ると、同じく抜き取った鞘に納めた。 遥一郎「よし、と……」 さてと……これからどうするか。 来たはいいが、右も左も解らない。 結局、考えることの終局はウィルスを作ってるヤツを探すことなんだが…… 遥一郎「……こう、見渡すかぎりの庭園が続いてるとなぁ……ん?」 建物を発見。 人と出くわすのは不安だが、ここで手を拱いているよりはマシだろう。 よし決定。 ウムと頷き、俺は建物へと小走りした。 ───さて、建物である。 遥一郎「デカいなぁ……地上では考えられん建物だ」 ブルジョワジィでも無理じゃないか? よっぽどのバカじゃなけりゃあここまでデカい建物は作らない。 でもそこに金銭の云々が関わらないのであれば、作るやつは居ると確信する。 地上のやつらは結局、金……紙と硬貨に縛られた存在だ。 人の命が紙切れに左右されるって現実、俺は直視したくもない。 極論って言うだろうが、実際そうなのだ。 遥一郎「人の命は尊い、とか詠っておきながら……     紙切れに左右される尊さってなんなんだかな。まったく訳が解らん」 まあ、口ではなんとでも言えるってことか。 遥一郎「さてと、そんなことはどうでもいい。ひとまず中に……」 声  「とまれ!」 遥一郎「だめだ」 声  「とまれっ!!」 遥一郎「………」 俺は息を吐いて振り向いた。 そこには小さな子供。 子供 「おまえ、ここになんのようだ!」 遥一郎「ウィルスバスターだ」 子供 「うぃる……?な、なんだそれ!しらないぞ!」 遥一郎「そうか。だったらこの話は終わりだ」 子供 「まてっ!」 遥一郎「だめだ」 子供 「まてったら!」 げしっ! 子供が俺の足を蹴りつける。 だが俺は無視を決め込んだ。 遥一郎「失礼する」 子供 「よせったら!ここはてんたいしんさまのしんでんなんだぞ!     えらいやつじゃなきゃはいっちゃいけないんだぞ!!」 遥一郎「天大神?……丁度いい、話がある」 子供 「だめなんだったら!」 遥一郎「だめだ」 子供 「だめなのはおまえだっ!」 子供を完全に無視して中に入る。 すると、衛兵みたいなヤツが槍を構えた。 衛兵 「何用だ」 遥一郎「天大神に話がある」 衛兵 「貴様!天大神さまを呼び捨てに───!!」 遥一郎「同じ天界人だろ?へりくだる理由が見つからないけどな」 衛兵 「───貴様、地界の人間だな?」 遥一郎「ああ」 衛兵 「失せろ、汚らしい。     ここは争うことしか知らぬ貴様らが来ていい場所ではないわ!!」 遥一郎「へえ……」 俺は動じずに声を出す。 心底呆れ果ててるからだ。 遥一郎「それじゃあ地界にウィルスを運んだのはどうしてだ?     地界の争いを無くすためか?それとも自分が楽しむためか?」 衛兵 「ウィルスに関して、天大神さまは関係ない。あれは低俗な者が行なった愚行だ」 遥一郎「その低俗な者を統括してるのは誰だよ」 衛兵 「───!き、貴様ァッ!!」 遥一郎「ハッキリ言わせてもらうぞ。そのウィルスの所為で俺の友人が消えた。     その友人のために、その友人の最愛の人が消えた。     そんな現実があるってのに玉座に座ったままでいる統括者になんの価値がある?     ふざけるのも大概にしろ、なにが神だ、なにが天大神だ。     神である前にひとつの意思だろうが。     それをあーだこーだ言って崇めてなにになる?     統括する者だから偉いのか?踏ん反り返ってるから偉いのか?」 衛兵 「ぐ……!」 遥一郎「お前らがやってるのは、同じ人間を適当に崇めてるだけのオママゴトだ。     人の命が無くなってるってのに、自分は座って踏ん反り返ってるだけか?     そんな統括者がそんなに偉いのか?崇めてて幸せか?」 衛兵 「だっ……黙れ黙れ黙れぇっ!!」 ドズッ……!! 遥一郎「っ……!!」 衛兵の槍が、俺の脇腹を刺した。 遥一郎「図星突かれて何も言えなくなったか……!?ははっ……情けねぇ……!」 衛兵 「黙れと言っている!」 遥一郎「黙ったところでどうなるんだよ……馬鹿かお前は……!     言いたいことってのはなぁ……!言わなきゃ伝わらねぇんだよ!!」 ボゴォッ!! 衛兵 「ぐはっ……!!」 ザゴォンッ!! 衛兵 「ぐぁっ───がぁあああああっ!!!!」 衛兵を殴り、怯んだ隙に槍を奪ってその腕に突き刺した。 遥一郎「俺の邪魔は……するな……!!」 穴の空いた腹を庇いながら奥へと進む。 精霊体の所為か血は出ないが、痛みだけは生前のままのものだ。 意識が飛びそうになるが、痛みで意識が戻る。 遥一郎「くそっ……!図星突かれると怒るってのは何処も違わないんだな……!」 人の腹、えぐりやがって……! 子供 「あ、あんちゃん……だいじょうぶか……?」 遥一郎「なんだ……まだ居たのか。自分の家に戻れ、俺の傍は危険だぞ……」 子供 「う、うん……」 子供はもう何も言わず、俺から離れると……走り去っていった。 遥一郎「〜っ……!!くそっ!足が思うように動かない……!」 傷は塞がったが、 その傷を治すために精霊としての行動力が消費され、体が動かなくなってきた。 遥一郎「くそ……」 仕方なく、柱の影に座って回復を待つことにした。 遥一郎「……サクラ……これが……お前の住んでる場所の現実なのか……?     こんなものが……」 やがて俺は意識を失い、目を閉じた。 レイル「ったく、やれやれだねー。まさか天界の衛兵さんを殴り倒すとは」 アル 「それだけ必死なんだろ?友達のために」 レイル「ま、そうじゃなけりゃ誰かに未来を託して自分が消えたりしないわなぁ」 アル 「だろうな」 精霊小僧を小脇に抱えると、俺は天大神が居る場所を目指して歩いた。 アル 「親父に会わせる気か?」 レイル「よくぞここまで来たで賞。それと、よくぞあの衛兵を殴ってくれたで賞」 アル 「まあな、あいつはムカツクやつだったし。っと、この刀はどうする?」 レイル「一緒に持ってっていいんじゃないか?こいつが持ってたんだし」 アル 「それもそうだな」 アルは刀を手に持つと、かったるそうに歩き始めた。 レイル「お前も来んの?」 アル 「ん?んー……ああ、ま、たまにはな」 レイル「お前、天大神のこと嫌いだもんな」 アル 「最近じゃ顔合わす度に跡を継いで天大神になれ、だ。やってられるか」 レイル「だってなぁ、能力じゃお前に勝てるヤツってそうそう居ないし、     実際に天大神の実子じゃないか」 アル 「冗談じゃない、俺は神だとか言われるのが一番嫌なんだ。     カオス発動させればお前の方が上なんだから、お前がなれ」 レイル「混沌背負った俺が神になってどうするんだよ。     もっとハッキリとした力の持ち主の方がいいだろ」 アル 「じゃ、ノルンにでも頼むか?」 レイル「やめとけ。天界が崩壊する」 アル 「なんだそりゃ…………っと、着いたぞ」 見れば、既に天大神の待つ王座があった。 アル 「親父、客を連れてきたぞ」 ジェス「………」 アル 「親父?」 ジェス「……ぐごー……」 ───寝てやがる。 レイル&アル『アホかてめぇっ!!!』 ジェス「うひょぉおっ!!??」 体を唸らせ、目を開くクソジジイ。 名を、チャリス=ジェス=ディオライツという。 ジェス「な、なんじゃ……アルとレイルではないか。何用じゃ?」 レイル「何用じゃ?じゃねぇだろハゲ……。     そんなんだから踏ん反り返った馬鹿って言われるんだよ……」 ジェス「誰がハゲじゃ!!何の話じゃ!!」 アル 「いーからこいつの話、聞いてやってくれ」 ジェス「ムオ?……ふむ、地界の人間か。何故天界に?」 レイル「さーな。神殿の柱の影で倒れてた」 ジェス「ふむ……ま、よいじゃろ。ちょいとこの者の記憶を覗かせてもらおうか」 レイル「わー、記憶介入って天界法律違反じゃなかったっけー」 アル 「最低だな親父」 ジェス「そ、それは禁句じゃ!!」 レイル「最低最低!こんなヤツが神だと知ったら、コヤツ絶対怒るぜ!?」 アル 「語るに落ちたな親父」 ジェス「やかましいわ!黙っておれ!!……ムン!!」 天大神は精霊小僧の額に指を当てると、目を閉じた。 ジェス「……ふむ。ウィルスで一度消えた存在だったのか」 レイル「そんなの俺だって知っとるわ」 ジェス「黙っておれ。……精霊に転生出来たのは、フレアやこやつの妹のお蔭じゃな」 レイル「そうなん?」 ジェス「うむ。なんにせよ、辛い思いをさせてしまったようじゃ……」 アル 「人に忘れられるってのは存在自体が死んだのと同じだからな」 レイル「その点、俺達は記憶に関しての魔法プロテクトが掛かってるから、     ウィルスなんぞに左右されないから安心だが」 アル 「それも記憶のことだけって意味で、     俺達がウィルスにかかってしまえば助からん」 レイル「問題はそこなんだよな……」 ジェス「……ウム。アル、レイル。天界に居る各者に伝えてくれ。     今行なっている作業を全て中止し、ウィルスを作っている者を探せと」 アル 「待った。それはやめておいたほうがいい」 ジェス「何故じゃ?」 レイル「そんなことも解らないのかハゲめ……」 ジェス「ハゲとらんわい!!」 まあ天大神の叫びは無視するにしても、俺もアルの意見には賛成だった。 ようするに─── アル&レイル『天大神自らが行った方がよいかと』 こういうことだ。 ここで動かないようじゃ、 このハゲはホンマモンの踏ん反り返りのマルガリータ(ハゲ)だ。 ジェス「ふむ……それもそうじゃの。よし、ワシが出よう。留守は頼んだぞ」 アル 「任せたぞレイル」 レイル「え……俺?」 アル 「お前はそいつと面識あるだろ。説明を頼む」 レイル「チッ……面白そうなことになるといっつもこれだ。     解ったよ、ただし竜印食堂の卵黄丼おごれよー」 アル 「わかったわかった」 ───……。 Next Menu back