───戦いの果てに散る命───
───……。 遥一郎「……ん?」 ふと聞こえた泣き声に、思考と動きを止めた。 どこからだ……? 遥一郎「……あそこか」 景色の先の方にある建物を発見する。 その前に、小さな影があり……うおっ!子供が地面に埋まってる! 遥一郎「大丈夫か!?」 すぐさま駆け寄って、子供の下半身を掘り起こして……あら? ……なんだ、下は空洞になってるんじゃないか。 少女 「うう……おと……さん……どこ……?」 遥一郎「おとうさん?……」 辺りを見渡してもそれらしい人影は無い。 ただ、こちらに向かって走ってくる小さな人影あるだけだった。 少女2「リーフちゃーん!木の実、いっぱい取ってきたよー!……あれ?」 俺が抱えている少女をリーフと呼んだ少女は、きょとんとした顔で俺を見た。 少女2「あなた、誰ですか?」 遥一郎「ああ、俺は穂岸遥一郎ってゆう者だけど……     あのさ、ここに俺と同じような服着た男が来なかったか?」 少女2「……ううん、知らない」 ……ふむ、どこに行ったんだあいつは。 リーフ「!……それ……おと……さんの……」 少女2「え?あ、ほんとだ!おとうさんのだ!」 遥一郎「うん?」 ふたりが刀を見て言う。 おとうさんって……どんな人なんだ? 少女2「どうしておとうさんの、持ってるの?」 遥一郎「これ、だよな?なんか飛んできたんだが」 少女2「………」 じーー、っと俺を見る少女。 ウソかどうかを調べてるのかは解らんが、頼りない目つきだった。 少女2「そっか、それじゃあ届にきてくれたんだね?」 遥一郎「そういうことになるのかな……」 よく解らん。 遥一郎「それで?そのおとうさんとやらは?」 リーフ「……あそこ」 リーフとやらが建物を指差す。 その建物の脇では、何故か少年が倒れていた。 遥一郎「こいつは?」 少女2「知らない。ひどい人だから知らん顔しちゃっていいよ」 遥一郎「そ、そうか」 少女2「おとうさん、おとうさんの持ち物を届けてくれた人が───」 ガチャッ─── 少女2「……あれ?」 建物の中は真っ暗だった。 リーフ「!?」 リーフが小走りに中に入って、小さな声でおとうさん?と呼ぶが、返事もない。 てゆうか明かりはないのかこの建物には。 リーフ「……!!」 ガカァッ!! 遥一郎「オワッ!?」 リーフが手を広げた途端、部屋の中は明るくなった。 が、そこに人の姿は無く……ただ、山積みにされた土があるだけだった。 リーフ「……おと……さん……!?」 少女2「どうして……!?そんな!」 遥一郎「………」 俺は冷静に部屋の中を見て、土のカスが集まっている床石を蹴ってみた。 するとズゴッと音を鳴らして、それは動いた。 リーフ「!」 少女2「わっ……!」 遥一郎「ふむ……どうやらキミ達のおとうさんとやらはよっぽどしたたからしいな」 感心する逞しさだ。 だが、どうしてわざわざ土掘って出ていったのか。 普通にドアから出ればよかったのに。 ……謎だ。 少女2「リーフちゃん!」 リーフ「……!」(こくり) リーフと少女は迷うことなく穴に入り、さっさと行ってしまった。 ……俺は─── 遥一郎「……もしかしたらその『おとうさん』ってのが、     ウィルス作ってるヤツかもしれないからな……」 仕方ない、行くか。 ───……。 ……ひょこっ。 遥一郎「……む」 顔を出してみれば、視線の先には建物があった。 その回りで子供達がキョロキョロとしている。 少女2「おかねーさんの家だね」 リーフ「………」(こくこく) おかねーさん?お金の亡者の人って意味か? 遥一郎「おかねーさんって?」 土から出ながらの質問。 ……うん、土の中もなかなかいいもんだ。 少女2「おかねーさんはね、おかーさんみたいなおねーさんなの。     いっつもお昼になるとクッキー焼いてくれるの」 遥一郎「へえ……やさしいんだな」 少女2「うんっ!……でも、今日は居ないみたい」 リーフ「…………?」 少女2「え?どうかしたの?……あ、窓が開いてる……」 見てみると、確かに窓が開いていた。 ひょいと中を覗いてみると……べつにこれといったものはない。 ただ、外見の大きさに比べると少し狭く見える部屋があるだけだった。 少女2「おとうさん、居た?」 背の低さで窓から覗けないふたりが俺の足を突つく。 遥一郎「いいや、誰も居ないな」 俺は苦笑しながら返し、そこから離れた。 ……あの部屋から懐かしい気配がしたのはなんでかな、とか思いながら。 少女2「おとうさん……どこにいったんだろ……」 リーフ「ミント……ちゃん、元気……だして」 落ち込む少女の頭を撫でるリーフ。 そっか、もうひとりはミントっていうのか。 ミント「わ……リーフちゃんに励まされたの初めてだ〜」 リーフ「………!」(カァア……) どうやらリーフは無口で舌っ足らずで恥ずかしがり屋な子で、 ミントは対象的に行動派で元気な子のようだ。 リーフは自分がしたことに気づいて、思いっきり顔を真っ赤にしている。 遥一郎「───!」 そんな穏やかな景色の中、俺は地面に付着した血痕を見つけた。 固まっているわけではなく、液状だ。 ということは…… 遥一郎「……すまない、俺はちょっと用事が出来たからこれで失礼する」 ミント「え?あ、はーい」 リーフ「………」(ペコリ) 手を振るミントとお辞儀をするリーフに手を振って返し、 距離をあけて落ちている血を辿った。 ……いったい、何が起きているのか……。 アキト「いやだいいやだい!オイラ病院は嫌いなんだい!!」 おなご「わがまま言わないの!」 目を覚ませば、アタイはおなごに肩を貸されている状態で運ばれていた。 で、今は必死に抵抗しているところである。 ズキッ! アキト「うぐっ!!」 もちろん傷は剥き出しのままだ。 月生力が無けりゃ治すこともままならん。 おなご「ほらっ!いいから来なさい!」 アキト「断る!」 ぺちんっ! アキト「いてじゃーーー!!コノヤロ!!」 少々触れられた程度でこの痛み……!! なんたる無様加減よ!!アタイともあろうものが……! し、しかしこのままでは、 おなごの言うメディカルなんたらって場所に連れていかれてしまう……! アタイは病院の世話になったことがないのが誇りなんじゃい!! アタイを見ていいのは童栄のじっちゃんだけじゃい!! アキト「あぁーっ!あげなところに穂岸遥一郎が!」 おなご「えぇっ!?どこっ!?」 アキト「とんずらぁあーーーーっ!!!!!」 ドシュゥウウウウウウン!!!! おなご「え───あ、ま、待ちなさいっ!!」 アタイは走った───。 持ち得る限りの力を振り絞り、激痛に耐えながら。 ちょいと後ろを見てみれば、どんどんと遠ざかってゆくおなご。 フ、フハハハハ……!勝った……!アタイは勝ったんだ……!! アキト「わーいボク自由だーーーっ!!!」 ドンッ! アキト「ギャウッ!」 な、なんじゃい!なにかにぶつかって─── 老人 「……ム?キミは誰だ?」 男  「……お前はあの時の破壊魔」 アキト「な、なにーっ!?俺は貴様なんぞ知らんぞ!」 男  「当たり前だ、俺が一方的に監視していたんだからな」 アキト「キャア覗き!って、ボ〜ッとしてる場合じゃねぇや!     アディオスボンジョリーノ!」 老人 「待ちなさい」 ガシィッ! アキト「おごごわぁあああああああああっ!!!!!」 老人 「うん?」 ジジイに触れられただけで激痛! こりゃいよいよもってヤバイ……! 老人 「ひどい傷だな……どうしたらここまで……」 アキト「ヘ……ヘッヘッヘ……あっしはケチなモンでさぁ……。     アンタが気にするようなことじゃあござんせん……ってことでアディオス」 老人 「待ちなさい」 ぐいっ。 ビキィッ!! アキト「が……ぐ、あ……!!」 腕を掴まれた途端、体に電撃が走った。 ヤバ……体が言うこと利かねぇ……!! アキト「はっ……離してくれ……!     アタイは……ウィルスを作ってるやつを探して……屠らねば……!」 老人 「ウィルス……?キミもか」 アキト「あ、あ〜ん……?」 老人 「ワシはチャリス=ジェス=ディオライツ。天大神と呼ばれている者だ。     ウィルス探しならワシに任せて、キミは休んでなさい」 アキト「チャリス……天大神……?文化祭でメイドさんが言ってた……神……?     ───チョェエエエーーーーッ!!!!」 モビィイイイイイイッ!!! ジェス「ムオッ!?」 アキト「くらえ神この野郎!!神屠り最強奥義!!チェーンソー!!」 男  「フンッ!」 ドボォッ!! アキト「ゴエッ!?ゲハァッ!!……ぐ、くそ……!!横からとは卑怯な……!」 男の掌打がアタイの脇腹にめり込んでいる。 たまらずに血を吐き、アタイは倒れた。 男  「……お前こそ、どこからチェーンソーなんて出したんだよ」 アキト「か、神のみぞ知る……」 ジェス「ワシは知らんぞ?」 アキト「………」 だよね。 なんか変だと思ったんだ、あのセリフ……。 ───ガクッ。 ジェス「ムオッ!?い、いかん!白目を向いておる!!」 男  「んなっ!?軽くやったんだぞ!?     それにこいつ、カオス化したレイルもレインも倒したって……!     それがこんなに簡単に───!?」 ジェス「どうやらワケありのようじゃな……。アル、一旦神殿に戻るぞ」 アル 「へいへい……」 声  「あっ……居た!」 アル 「うん?……サクラか」 サクラ「す、すいません天大神さま、アルベルトさま……!その人……!」 ジェス「こやつなら今から神殿に戻って治療するところじゃ。お前も来るか?」 サクラ「え───わ、わたしが神殿に……?」 アル 「ああ。穂岸遥一郎もそこに居ると思う。会っていくといい」 サクラ「与一が……」 アル 「それじゃ、いくぞ。レビテートスキップ!」 ギキィンッ!! ───……。 アル 「───よし、到着」 サクラ「……!!」 辿り着いた途端、サクラは神殿の中を見渡した。 だが…… サクラ「……居ない……」 アル 「ったく馬鹿レイル……。留守番頼むって言っておいたのに」 ジェス「あやつがその場でジッとしていること自体が奇跡じゃ。     さて、こやつの治療を始めるぞ?」 アル 「ああ」 サクラ「……与一……」 サクラの寂しそうな声が、大きな神殿の中に小さく響いた。 よほど会いたかったのだろう。 アル 「……サクラ、あまり落ち込むな。     天界に居ることは間違いないんだ、すぐに会えるさ」 サクラ「……は、はい……」 俺と親父はサクラの寂しそうな顔を見て、目を合わせた。 なんとか会わせてやりたい、と。 ───そんな時だった。 破壊魔「とんずらぁあーーーーーーっ!!!!!」 ズドドドドドドドドド!!!!! アル 「なにっ!?」 突如、破壊魔が起き上がり、出口目掛けて駆け出した! アル 「チッ───逃がすか!ショットバイン───」 ドシュウウウウウウン!!!! アル 「速ェエーーーッ!!!!」 ……破壊魔は信じられないくらいのスピードで、視界から消えていった。 ジェス「…………本当に……地界人、なのか?」 アル 「……俺も不安になってきた」 サクラ「………」 ───……。 アキト「ゲハー……ゲハー……!!」 いやよもう……なんでアタイがこんな目に……。 アキト「グ、グウウ……」 いきなり人を人体実験の素体に使おうとするなんて……さすが神だぜオイ……。 チェーンソーで屠ることは出来なかったが、いずれ邪魔が居ない時に……!! アキト「ク、クォックォックォッ……!!     それまで……その首は見逃しておいてやるぜ……!」 しかし……気を抜くと倒れちまいそうだ……! アタイにとってどれだけ月操力が必要なのかがよーく解るぜ……! 冥月刀から月操力の封印解いたのだって、傷が開いたからだし。 うう、情けないねぇ……。 ガボォンッ!! アキト「ゲゲッ!?」 落とし穴!?───って、またアタイが掘ったやつじゃったか……。 しかしアレじゃねぇ〜、さっきからここらへん行ったり来たりしてるねィェ〜。 む?人影発見。 声  「〜〜ん!おと〜さ〜ん!」 アキト「ギャア!?」 ミントさんだ!こりゃいかん! アタイは穴の中に逃げ、更に掘った。 すると───ボコォンッ!! アキト「ややっ!?」 土の底が抜けた───って、ンな馬鹿───なぁあああああああっ!!!!! ドグシャアッ!! アキト「ギャアッ!!」 あいたたた……なにごと? アキト「……な、なんじゃこりゃあああああ!!」 アタイは目を疑った!だが───目の前にあるのは確かに研究所っぽいところだった! ま、まさかここがウィルスメンの住処!? アキト「見つからねぇわけだ……」 まさか地面の下に作っておるとはな……! うむうむ、幸いウィルスメンは研究に夢中でアタイに気づいてねぇみてぇだ。 アキト(クォックォックォッ……!     不意打ちで命中率のダメージボーナスをくれてやるわ……!) マキィン! アタイは『不意打ち』を発動させた! あとは気づかれずに背後から攻撃してやればベキャア!! アキト(ややっ!?) 男  「ラブリー!?」 しまった気づかれた!てゆうかなんで研究所に枯れ枝が!? アキト「まあええわい!やいてめぇ!ウィルス製作の罪において打ち首獄門じゃあ!!」 男  「ラブリー!」 アキト「………」 男  「ラブリー!!」 アキト「なにがラブリーじゃい!馬鹿にしてんのか!?     大体なんじゃねその額の『千葉』の文字は!     キミはなにかね!?わたしを馬鹿にしているのかね!?」 男  「ラッ……ラブリー!!」 アキト「カァアーーーッ!!!」 ボゴシャア!!! 男  「ラバァオゥッ!!」 ラブリーとしか言わん男を殴り倒し、アタイは研究資料に目を通した。 その中には玉子を大きくしたような機械が。 アキト「ほほう……これがウワサの玉子型の機械か。これにウィルスを流すわけだな?」 男  「ラッ……ラブリー!?ラブリー!!」 ラブリーラブリー言いつつ首を横に振る千葉。 額に千葉って書いてあるから千葉で十分だ。 アキト「……よし壊そう」 千葉 「ラブリー!?」 がしぃっ!! アキト「なっ、なにをするのかね貴様!」 千葉 「ラブリィ〜……!!ラブリィ〜……!!」 アキト「人の足掴みながらラブリー言うな!怖いわ!!」 千葉 「ラブリー!!」 ボゴシャア!! 千葉 「ラバァォウ!!」 アキト「そこで転がっておりなさい!」 千葉 「ラブリ−!!」 ガシィッ!! アキト「しつこい!」 どげしっ! 千葉 「ラッ!?」 げしげしげし!! 千葉 「ラバッ!ラブバッ!ラボッ!!」 アキト「ええいしつけぇ!!むりゃ!!」 ボゴォッ! 千葉 「ラブッ……───」 ドシャア。 千葉をやっつけた!! アキト「お前は強かったよ……だが間違った強さだった……」 さて、気を取り直して研究資料を─── アキト「……む?」 なにやら後生大事にシールドしてあるカプセルがありますぞ? もしやこれがウィルスか……? ま、いいコテ、手に入れられるやつは手に入れるとして、と。 バキャアン!! アキト「力こそ全てよ!」 殴り壊したガラスのシールドをくぐり、小さなカプセルを手に取る。 様々なコーティングが成されているようで、普通のカプセルのようにヘコむこともない。 こりゃすげぇ。 アキト「よーし、あとはこの玉子型の機械と資料を回収してと」 ガシッ!! アキト「なにぃっ!?」 再び足を襲う圧迫感! バッと見下ろしてみると─── 千葉 「ラ……ラブリ……!ラブリィ……!!」 ふるふると首を横に振りながら涙を流す千葉が居た。 アキト「このザコめが……!     散々苦労させてくれた割に、貴様が弱いんじゃ拍子抜けじゃわい!     なにが千葉だ!こんな文字はなぁ!こうして拭い去ってくれるわ!!」 ゴシゴシ───ギャア!マジで落ちた!! 千葉 「──────」 アキト「オウ?」 ゴゴゴゴゴ……!! アキト「な、なんだ……!?大気が震えている……!?」 千葉 「ガァアアアアーーーーーーッ!!!!」 ガォオオオンッ!!!! アキト「お、おわぁーーーーっ!!!」 千葉から凄まじい波動が溢れ、アタイは吹き飛ばされた。 それと同時に景色が崩壊し、土に埋まっていたその研究所も吹き飛び───ダンッ!! アキト「ぐはっ……!!」 俺が倒れた場所は、蒼空の下の大地だった。 千葉?「……礼を言うぞ。お蔭で蘇れた」 アキト「ゲハッ……!!く、くそ……!千葉の分際で……!」 千葉?「千葉?……フン、わたしは千葉ではない。     千葉の中に自分の記憶そのものを植え込んでいた存在だ───見よ!」 バァッ!! アキト「くぅっ!?」 千葉が光に包まれ、やがて光が消える頃─── そこに居たのは長めの髪をした細身の男だった。 アキト「マ、マジックショー!?」 千葉?「フフフ……おい貴様、貴様に礼がしたい。望みを言え」 アキト「な、なに〜っ?」 千葉?「どうした?望みを聞いてやると言っているんだ」 アキト「ならば……言うぞ!?」 千葉?「ああ」 アキト「こ、この俺様を───不老不死にしろーーーっ!!!」 千葉?「いいだろう、死ね」 アキト「キャア!?う、うそつきーーーっ!!」 ドチュゥウウンッ!! アキト「ひぇいっ!!」 飛んできた光弾をギリギリでかわし、大地に倒れた。 千葉?「ウソ……?ウソではない。死ねば歳もとらず、それ以上死ぬこともないだろう」 アキト「生きてなきゃ意味がねぇんじゃボケ!!」 千葉?「暴れぬ方が身のためだ。なに、すぐに終わる。アルティメットブラスター!!」 アキト「うぃっ!?」 ガギャォオオオオオオンッ!!!!! 鼓膜を破壊するような激音を上げ、バカデカい光が飛んでくる!! だめだ!よけられねぇ!! アキト「ぐっ───うわぁああああああああっ!!!!!」 悠介……粉雪───!!ごめ───……ガォオオオオオオオオン!!!!! ───……。 ジェス「───!今の音は……!?」 アル 「孤児達の居る場所の近くだ!急ごう!」 ジェス「ウム!」 サクラ「あ、わ、わたしはどうしましょう……」 ジェス「ここに居るのだ!よいな、ここから出るでないぞ!」 サクラ「───は、はい!」 キィンッ!! 転移の魔法を唱え、孤児院のある場所まで飛んだ。 ───……。 キィンッ!! アル 「うっ……!」 辿り着いた場所の第一印象は……まるで大災害の跡地のようだった。 ひでぇ……!地面が大きくえぐれてる……! どんなことをしたらこんなに……!? 声  「ほう……これはこれは。天大神さまとそのご子息、     アルベルト=カルデリアス=ディオライツではないか」 アル 「!?───その声は!!」 忘れもしない、その憎らしい声は───!! アル 「ッ……!!マルドゥーク!!」 アンス「久しいな、アルベルト。そして……チャリス=ジェス=ディオライツ。     あの時消された恨み、忘れたわけではないぞ」 ジェス「マルドゥーク、貴様……何故!」 視線の先に存在するのは、確かにリュオルク=アンスウェル=マルドゥークだった。 ディグの兄にして、元・天大神側近、天界の中でも最高の魔力を誇った存在。 誰よりも慈しみの心を持っていたヤツだったが、ある日を境に豹変した……! だが、確かに親父の手で消された筈だったのに───何故……? アンス「何故?それなら簡単だ。     私は部下である千葉に意識と能力を植え付けていたのだ。     計略が察知され、いつ消されることとなってもいいようにな。     千葉の中にある私の意識が浮上するには条件があった。     ひとつは元の私が死ぬこと。     もうひとつは、千葉の額にあった『千葉』の文字を消すことだ」 アル 「額の千葉の文字……バカな。千葉はアレを誇りとしていた。     よほどのことがない限り……いや、消すことすら有り得ない」 アンス「それも簡単だ。先ほど、妙な男がこの地下にあった研究室に現れてな。     千葉の文字を消してくれたのさ。     ……なに、礼としてそいつは吹き飛ばしてやった。     軽いアルティメットブラスターだ、運が良ければ生きている」 ジェス「!アル!」 アル 「解ってる!!マルドゥークを頼む!」 ジェス「任せておけ!」 この場は親父に任せ、俺はえぐれた大地を辿って飛んだ。 悔しいが、俺の魔力はマルドゥークに遠く及ばない。 マルドゥークはバケモノだ。 アル 「───」 最初は憧れの存在だった。 若くして親父の護衛に就き、15歳にして大人の高位天界人の能力を軽く超えていた。 人望も厚く、人柄の良さも認められ、誰よりもやさしかった。 だが───いつからか、マルドゥークは変わった。 波動自体が闇に染まり、レイルやレインとは違った、混沌の波動を背負っていた。 言うなれば……魔人。 しかもその混沌の波動を背負ってからは、以前にも増して魔力が増大した。 俺はもちろん、レイルでも勝てないだろう……。 アル 「───!居た!」 えぐれた地面の先端に、男は居た。 ぐったりと倒れ、土だらけになっているその姿は…… とても、レイルやレインを退けた男の姿には見えなかった。 アル 「大丈夫か!?おいっ!!お───……!!」 男の首に手を当ててみた。 だが───頚動脈は脈動していなかった。 アル 「……遅かったか……!」 男の体は既に冷たくなっていた。 その目尻には微かな水滴があり、彼が死を目前に涙を流したことが窺い知れた。 それは死への恐怖だったのか、それとも……残す者への涙だったのだろうか。 俺はせめて傷だけでもと思い、回復魔法を流した。 ───が、小さな傷は消えるのだが、幾多の大きな傷は消えなかった。 アル 「これは……?───過去の念の所為か」 傷から悲しみの念が溢れてきている。 試しに浄化の魔法を流してみたが───消えはしなかった。 相当な念の染みついた傷なのだ。 他人がどうこう出来るようなものじゃない。 アル 「……巻き込んでしまってすまない。せめて……安らかに眠ってくれ」 胸の前で十字を切り、ただ祈った。 やがてその場を立った───その時。 声  「おとうさんっ!?」 その声は響いた。 声の先にはふたりの少女。 その顔は……孤児の集まる場所で見た子達だった。 間違い無い、ミントとリーフだ。 だが───おとうさんとは一体……? リーフ「おと……さん……!?」 ミント「おとうさん!!」 ふたりは破壊魔の傍に駆け寄り、その体を揺さぶった。 だが、当然のように反応はない。 アル 「……その男は、もう……死んでいる」 ミント「───!アルベルトさま……」 リーフ「………」 アル 「ウィルスを作っていた男を、そいつが発見した。     だが……その代償はあまりにも大きかった……」 ミント「そんな……それじゃあおとうさんはその男に……?」 アル 「………」 ゆっくりと頷いた。 子供に人の死を知らせるのは辛いものだ。 見れば、ミントとリーフの目にはみるみる内に涙が溜まっていっていた。 やがてそれは彼女達の頬を伝い、それが落ちる頃には……ふたりは声をあげて泣いていた。 アル 「───っ」 この男がどうしてふたりに『おとうさん』と呼ばれるのかなんて関係ない。 こうしてひとりの人間が殺された───それだけで十分だ。 アル 「俺はこれからウィルスを作っていたヤツと戦ってくる。     だから───いいな、ここを動くんじゃないぞ」 ……言ってはみたが、男にすがり付いて、 ただただ泣くふたりには聞こえていなかったのかもしれない。 アル 「………」 どうしようもない気持ちを胸に、親父とマルドゥークの居る場所へと飛んだ。 Next Menu back