───ガラス細工の運命───
ジェス「ムンッ!!」 バキィンッ!! アンス「ハァッ!!」 バガァン!! アンス「ククク……!さすがにやりますね、天大神さま!     だがその老体で、いつまで力が続きますかね!」 ジェス「甘くみるな!ハァアアッ!!」 ドバァンッ!! アンス「グウッ!?」 ───元の場所へ戻ると、戦いは既に始っていた。 アル 「親父!大丈夫か!?」 ジェス「全く問題ないわい!天大神の名は伊達ではないわ!」 歯を輝かせる親父は、確かにまだまだ平気そうだった。 だが───それはマルドゥークも同じだ。 アンス「多勢に無勢。ふたりでかかれば勝てると思うか?」 さっき受けたダメージも回復したかのように、平気な顔でこちらを睨んだ。 アル 「どうかは解らないが、可能性は増えるだろうな」 アンス「クフフハハハハ!!ほざけ!貴様らごときに破れるものか!     見るがいい!ゼロ=クロフィックスが残した偉大なる闇、カオスの力!!」 ジェス「なに!?」 マルドゥークの周囲に、奇妙に蠢く闇が現れた。 やがてそれはマルドゥークの中に消えると、マルドゥークの気配が変調する……! ジェス「これは───!ゼロの力!?」 アンス「解るか!?貴様がのうのうと天界の玉座に座っている頃、私はレイルやレイン、     そしてエミリオやジルフォードからもカオスの力を少しずつ奪っていた!     ゼロが残していったこの力こそが根源なのだ!     故にいつでもこちらに引き出せる!この意味が解るか!?」 アル 「……!親父……ちょっと分が悪いぜ……」 ジェス「うむ……!」 アンス「さあ、かかってくるがいい!今こそわたしは天界の長を超えてみせよう!」 まずい……!勝ち目がねぇ……! 声  「諦めるには早いぜアルゥッ!!」 ドンッ!! アンス「グッ!?」 突如、空から光の弾が落ち、マルドゥークを襲った。 そして、今聞こえた声は─── レイル「よっ!おまっとさん!」 アル 「レイル!───レインも!」 レイン「すいません、遅れましたね」 ジェス「いいや、よく来てくれた。今のマルドゥークはワシらだけでは倒せなんだ」 アンス「いいや?何人来ようが同じことだ。なんなら試してみようか、この力を」 ───!! ───……。 アル 「がはっ……!はっ……ど、どうなってやがる……!!」 目の前が弾けたと思ったら、この有様だ……! 何が起こったんだ……? レイル「ゲホッ!ゴホッ!なんだってんだ……!思うように力が出ねぇ……!」 レイン「兄さん……カオスの力はマルドゥークに吸われているんだ……。     力を使えば使うほど、それが彼のエネルギーになる……!」 ジェス「むぐぅう……!魔力の圧縮発動か……!     圧縮してハチ切れそうな魔力を一気に放出することで、     まるで爆発のような威力を叩き出したんじゃ……!」 まるで隙が見当たらない。 冗談抜きに……強い。 アンス「状況の把握は終わったか?それでは行くぞ、覚悟はいいな?」 チッ……!せめて一瞬でも隙が出来れば───! アンス「それでは、今度はMAXパワーでアルティメットブラスターを撃ってみようか。     ははははは!今の私の力ならば、この天界など吹き飛ぶだろうな!!     はははは!はぁっはっはっはっは!!」 ザゴンッ!! アンス「なにっ!?」 ───!絶望した刹那、マルドゥークの右腕が飛んだ。 血飛沫を上げ、弧を描いて───やがて落ちる。 そしてその腕を斬ったのは─── 遥一郎「───!」 刀を手にした穂岸遥一郎だった───! レイル「おまっ───」 アル 「レイル!思考はあとだ!全力でキメろ!!」 レイル「!おぅっ!!」 俺と親父とレイルとレインは両手を突き出し、全力で魔力を放出した! 全員 『アルティメットブラスタァーーーッ!!!!』 魔力の全てを使いつつ、圧縮に圧縮した光をマルドゥークに向けて。 アンス「馬鹿な!こんなことが───!!?ガァアアアアア!!!!!!」 ガォオオオオーーーーーー───…………ン……!!! 光はマルドゥークを巻き込み、大きな唸りをあげて……やがて、空へ消えた。 ───…… アル 「……ぷはぁっ……はぁっ……はぁっ……」 完全に疲労が体へ重く圧し掛かり、耐えきれなくなってその場に尻餅をついた。 アル 「あー……もう金輪際こんなこと御免だぞ俺は……」 レイル「そりゃ俺のセリフだ馬鹿……。     加勢に来た途端、なーんで吹き飛ばされなきゃならねぇんだっつの……」 ジェス「なんにせよ、撃退できてよかったわい……」 レイル「うおーい精霊小僧ー!お前のおかげだ〜っ!」 レイルが刀を持った穂岸遥一郎に声をかける。 彼は大きな溜め息を吐きながら、俺達の傍に歩み寄った。 遥一郎「何事だったんだ?一体……」 呆れたような口調で、彼はそう言った。 そりゃそうだ、こんな荒れた場所を見れば、誰だって訊きたくなるってもんだ。 レイン「ウィルスを作っていた者が見つかった、ですよね?天大神さま」 ジェス「ウム、間違い無い。この場にディグメイルが居なくてよかったわい」 遥一郎「ウィルス……ってことは、抗体も作れるのか!?」 アル 「ああ、ウィルスがあればな」 ジェス「ム……」 レイル「………」 レイン「あ……」 遥一郎「………」 穂岸は辺りを見渡して、青ざめた。 遥一郎「まさか……ここにウィルスがあった、なんてことは……」 ジェス「……その、まさかじゃ」 遥一郎「そんな!これだけ崩壊してたら、そんなもの跡形もなく───!!」 ジェス「……すまん」 遥一郎「そんな……っ」 絶望の表情をする穂岸。 だが……俺はまだ、彼に残酷な知らせをしなければならない。 アル 「穂岸───」 遥一郎「……?」 ───……。 ───……えぐれた大地の先。 その場所で、あいつが力無く倒れていた。 その両脇にはリーフとミントが居て、覆い被さるようにしながら泣いている。 それだけで……何が起こったのかが解った。 ……解って……しまった。 ミント「っ……あ……天大神さまぁ……っ!ひっく……!     おねが……お願い、です……おと、さんを……いきかえらせて……」 リーフ「ひっく……う、うぁあああああん……!!」 ジェス「………」 天大神と呼ばれた老人は、ただ黙っているだけだった。 その顔はとても申し訳なさそうな弱々しい顔で、やっぱり……普通の老人と変わりない。 レイン「ごめんよ、ミント、リーフ……。天大神さまだって万能じゃないんだ……。     死んだ人を生き返らせるようなことは……出来ないんだよ……」 ミント「ふぐぅっ……そ、んなぁ……そんなぁ……!!」 心が痛くて仕方が無かった。 ……そんな時に思う。 周りを振り回すヤツってのはどうして、 居なくなった時にこそ価値が解るんだろう、って。 騒いでばっかりの時は邪魔で仕方がなかったのに、どうして……。 レイン「……せめて、墓をつくってあげましょう。やすらかに眠れるように───」 声  「お前らの墓をな」 ジェス「ムゥッ!?」 遥一郎「!」 聞こえた声に反応して、俺達は振り向いた。 そこには───あいつが居た。 アル 「馬鹿な……!マルドゥーク……!?」 ジェス「貴様!何故!」 アンス「フン……!魔力を全開にしてシールドを張ったのだ……。     おかげで随分と魔力が消えたが……貴様らほどカラではない……!     この意味が解るか……?」 アル 「……魔力がカラな俺達くらい、殺せるってことか……?」 アンス「物分りが早くて嬉しいぞ……!では死ね!」 ブワァッ!! 目の前の男から、恐ろしいほどの衝撃が周囲に放たれる! 遥一郎「!危ない!」 俺は咄嗟に子供達を庇い───ガカァアアアアッ!!!! 遥一郎「ぐあぁああああああっ!!!!」 その場に居た全員がその衝撃によって吹き飛ばされた。 遥一郎「かはっ……!ぐっ……いつッ……!」 くそっ、腕をおかしくしたみたいだ……───っ!? 刀!刀は───!? 遥一郎「───!」 俺が手にしていた刀は、弦月の左胸に突き刺さっていた。 ───くっ……痛々しい姿だ……! アンス「……この刀だ。この刀が私のシールドを破壊し、私の腕まで……!」 男は弦月の胸に突き刺さっている刀を強引に抜き取ろうとする。 その度に傷口は広がり、血が溢れる。 遥一郎「っ……やめろ!死者を冒涜をする気か!」 アンス「そんな言葉は知らないな!私は私の障害となるものを消すだけだ!」 チャキンッ─── 声  「───同感だ。アタイも障害である貴様を成敗する」 アンス「なに……?───ば、馬鹿な!!」 遥一郎「な……な、なぁあーーーっ!!?」 アキト「復活!!火事場のクソ力ァーーーッ!!!!」 ドゴシャアアアアアアン!!!!! 刀を胸に刺したままの弦月が勢いよく起き上がり、 その体からは信じられないくらいの聖と魔の波動が溢れる。 そして弦月は傍に立っていた男を掴み、思いきり空へ投げ飛ばした。 アル 「馬鹿な!お前、死んだ筈じゃ───」 アキト「フハハハハハ!!     さっきまで死んでいたのは月操力無しで無茶な戦いを続けていたからぞ!     わかるかね!?つまり月操力こそがアタイの力の源だったのよ!!     だからアタイは心臓に病のあるニセの王子などではなかったのだ!」 レイル「わけがわからん!!」 アンス「馬鹿な!この力は───!今まで感じたことのないこの力は───!!?」 ダンッ!! 弦月は男目掛けて勢いよく跳躍し─── アキト「いくぜニセ千葉ン!!愛と友情と正義のぉッ!!!!」 ガッ!ガッ!ガッ!!ガシィイイイン!!!! アキト「7000万パワァーッ!!マッッッスルスパァーーークゥウッ!!!」 弦月によって両手と首と片足を極められた男の体から骨が軋む音が、ミシィッ、と響いた。 アンス「グッ……ガハァッ!!!」 弦月は男に見事なまでのスグル版マッスルスパークを極め─── アキト「これが残る50%の!アタル版ッ!マッスルスパークだぁーーーっ!!!!」 背中合わせに男の両手両足を固め、その状態で落下する! アキト「長かった……本当に長かった戦いよ!さらばぁッッ!!!!」 ドゴシャアアアッ!!!! アンス「──────…………」 …………ガクッ。 アキト「アーーーイムザ!!チャァアアアンピォオオオオオオオオオオオン!!!!!」 完全に動かなくなった男から技を解き、弦月は天に拳を突き上げて叫んだ。 ……こう言うのもなんだが、長年に渡って続いた事件の幕が、 こんな技で終わってよかったのだろうか。 ……まあ、今となってはどうにもならないことだ。 今はただ、彼の生を喜ぶとしよう。 ……そう、たとえウィルスが手に入らなかったのだとしても───…… アキト「フェェーーーイスフラッシュ!!!」 ギシャアアア!!! 弦月は倒れた男にフェイスフラッシュを浴びせた。 ───が、漫画のように復活する様子はない。 アキト「…………え、えーと……これからはお前も、大切な家族の一員だ」 バツの悪そうな顔で、ひとまず男を抱きかかえる弦月。 だが手の平を返したように『などと言うと思うたかカスがぁーーっ!!』と言い、 手に抱えた男にペンデュラムバックブリーカーをキメ、トドメを刺した。 そしてぐったりと倒れた男を踏みつけ、ガッツポーズを取る。 アキト「俺様がッ!!チャンピオォーーーン!!!」 ……もう、ワケが解らないことだらけだった。 アキト「いやーいやいやいや、     冥月刀が戻ってこなかったらアタイ、確実に死んでましたよ?」 ミント「おとうさぁあああああん……!!うわぁああああん……!!!」 リーフ「おと……さぁああん……!!」 アキト「おうおう、心配かけたねィェ〜〜〜〜ッ!!!!     貴様らのことも誤解だったと解れば、アタイは貴様らの味方じゃよ!!」 アタイは抱き着いてきたふたりを抱き締めてやり、満面の笑顔を贈った。 遥一郎「弦月……無事でよかった」 アキト「オウヨ!!でもねー、ニセ千葉ンにバカデカい波動砲撃たれた時は、     さすがのアタイも死を覚悟したね。てゆうか死んでた。うん死んでた」 レイル「生きていること自体が信じられないんだが」 アキト「あ〜ん?アタイはこうして生きてるだろうが」 アル 「死人が生き返るだなんて聞いたことがないぞ」 グウウ……根掘り葉掘り訊こうとしやがって。 訊きたがりってこれだから嫌いよ。 アキト「よいかね?つまりだね、アタイはリーフさんとミントさんに会った時、     えーと……気紛れで刀に月操力の全てを送り込んでいたのだよ。     だが、あることがきっかけで刀と鞘は遥か彼方へ吹っ飛んでいきました」 遥一郎「それを俺が拾ったわけか」 アキト「まあそんなところじゃろ。でね?力自体を無くしたアタイは、     傷も塞げねぇわ回復も出来ねぇわでどんどん弱っていったわけYO。     そんな時に桃色極道エージェントに襲われて、     必死に逃げてたところで神と遭遇。     チェーンソーを唸らせて屠ろうとしたら逆に襲われたんじゃよ。     で、アタイは妙な造りの城っぽいところに連れられ、     人体実験をさせられそうになったから逃走し」 アル 「あれはただ回復してやろうと思っただけだが」 アキト「ウソおっしゃい!!」 アル 「真実だっ!」 アキト「チッ……しゃあねぇ、話が進まねぇから100億歩譲って、     そういうことにしといてやらぁなカスめが」 アル 「……なぁ。俺、こいつの怒りかうようなこと、したか?」 レイル「思い当たらん」 レイン「そういう人なのでしょう」 アキト「なにをコソコソと話してるんだい!まったく暗いやつらじゃね!!」 アル 「やかましいわ!」 アキト「キャア開き直ったわ!!この最低男!!」 アル 「ぐ、ぐぐおぉおおおお!!!」 レイル「オワッ!?落ち着けアル!!ヤツの傍には子供が居るんだぞ!!」 アル 「うがぁああっ!!」 おお、血管ムキムキ。 だがまあそんなことはどうでもよい。 アキト「話、続けるぞえ?人体実験場からなんとか逃げ出したアタイは、     土中に潜って敵の追跡から逃れようとして更に地面を掘った。     すると、その土の下に小さな研究室があったのYO!!」 ジェス「ウム……見つからなかったわけじゃ。     千葉は元々魔力が皆無といっていいほどの、珍しい存在だったからな。     魔力探査にもひっかからず、地下で生活を続けていたのだろう」 アキト「うお、千葉ってホントに千葉って名前だったんだ。     まあそれはさておき、そこで研究資料を持ち出して逃げ出そうとしたら、     千葉が泣きながら『ラブリー!』って言ってしがみついてきたんですよ。     だからシンボルマークっぽい額の『千葉』の文字を消したら……ねぇ」 ジェス「マルドゥークが仕掛けた魔法が発動したわけか。     あやつも頭が相当にキレるからのう……惜しい男じゃった」 アキト「んで質問なんだけど。千葉って『ラブリー!』としか言えないワケ?」 ジェス「うむ」 アキト「うおっ……そうなんだ……」 驚きの瞬間だった。 言い渋られると思ったんですけどねぇ。 遥一郎「しかし……研究資料とやらは、見ての通り研究室ごと崩壊した。     これじゃあ俺達がここに来た意味が無いんだよ」 アキト「ム?……うおっ……!」 今更気づいたが、研究所があったらしい場所は、 見事なクレーターによって跡形も無くなっていた。 こりゃあ薬品とか玉子型のアレもケシズミになっただろう。 ……ウム?なんかアタイ、忘れているような…… アキト「………………?」 思い出せん。 なにやらとっても重要なことだった気がするんじゃが。 アル 「仕方ないさ、ウィルスを消す薬はこちらでもう一度開発してみよう。     だが……今までが今までだ、あまり期待は出来ない」 遥一郎「………」 精霊野郎は俯いて唇を噛んだ。 ……グウウ、なんだ?なにを忘れているのだ? ───コリッ。 アキト「オウ?」 リーフ「?」 アタイに抱き着いていたリーフさんの頬が何かに当たり、アタイの腹部にぶつかった。 ……ハテ?って─── アキト「こ、これはぁあああああっ!!!ま、まさかぁあああああっ!!!     そ、そんなぁあああああっ!!!!」 アタイは懐に手を忍ばせ、取り出したるブツに声をあげた。 それはもう、ハーメルンのバイオリン弾きのように。 アル 「どうした?」 アキト「フッフッフ……感謝せぇよ貴様ら……。見よ!このカプセルを!!」 アタイは研究所からかっぱらっといたカプセルを見せた!! アル 「……これがどうかしたか?」 アキト「ああんもう!解らない子じゃね!!物分りの悪い子は先生キライです!帰れ!」 アル 「ワケが解らんぞ」 ジェス「いや、待て……。このカプセルに施されている魔法プロテクトは……」 アキト「解るかね!?」 ジェス「解らん」 アキト「むごっ!?───チョエェエエエエエエエッ!!!!!」 モビィイイイイイイイイッ!!!! 遥一郎「うわっ!?チェーンソー!?どっから出したんだ!!」 アキト「ンなこたぁどうでもいいわい!!今こそこのたわけた神を斬殺!!」 ドス。 アキト「オギャア!!な、なにをなさるの!?」 脇腹を襲う、突然の淡い痛みに、アタイは華麗に振り向いた。 レイル「子供が怖がるだろうが。そんな物騒なモンは捨てろ」 アキト「む……」 ミント「………」 リーフ「………」(びくびく) 確かに。 アキト「フフフ、神この野郎……その首、預けとくぜ」 ジェス「預けるもなにも、これはもともとワシの首じゃが」 アキト「お黙り!───いいかね!?このカプセルはなぁ!     ウィルスの素が入ったカプセルなのだよ!!」 アル 「!」 遥一郎「なにっ!?」 レイル「まさかっ!」 レイン「本当ですか!?」 アキト「ウソじゃ」 全員 『………』 その次の瞬間、アタイは死なない程度に一斉リンチをくらうこととなった─── Next Menu back