そして季節はまた、穏やかな景色を取り戻す。 変わったといえば俺達が見る景色だけなのだろう。 そんなことを考えると、世の中のことはよく解らないなと苦笑した。 世界中のひとりひとりが未来を築く中で、俺達も今まで通りに未来を築く。 未来を築くってことが、ただ普通に生きてゆくことだと気づいたのはいつだったか。 最初の思考とは別に、そんなことを考えてみた。 ───そして俺は、遠い昔に聞いた言葉を復唱してみた。 『未来を築くことは特別なことじゃない』。 そんな当然ことに気づくまで、俺はその言葉の意味を探したものだ。 でもその言葉の意味が解った頃、自分の傍には賑やかな暮らしがあった。 未来を築くことは特別なことなんかじゃない。 ただ、自分が思う通りに暮らしていけばいい。 そんなことが解った時、俺達の周りの人は、 みんな好き勝手だけど楽しい未来を築こうと思ったんだと思う。 難しく考えることなんてない。 ただ自分の『当然』が『当然』として傍にあること。 その日常こそが自分達の未来に必要な、ただひとつの材料だった。 ───超海産軟骨男児シャーク───
───むっかしーむっかしー、うっらしっまゥヮ〜ィ♪ たっすけったか〜めに〜つ〜れら〜れて〜♪ りゅ〜うぐ〜うおんっせん♪きってみ〜れば〜♪ 彰利 「って、なんで温泉やねん!なんでーーっ!!?」 いや、確かに生暖かい場所に居るっちゃ居るんですけどね? い〜い湯っだっな〜♪はぁ〜あビッバノォーーーンッ!!!! 彰利 「痛ッ!痛い痛い!!皮膚が溶ける!!」 SO!アタイは困って……いないか。 アルファ2(トゥ〜)、自己確認を開始する! 現在アタイはシャークさんに飲み込まれてステキな状況にある!! 個人的には、もぎたてのベイビーのように産まれ出でようと企んでますが。 アルファ2、自己確認を終了する。 彰利 「あそーれチェスト〜」 アルファ2、これより地獄突きを開始する! ドス! ゴポポッ! 彰利 「ややっ!?」 一寸法師作戦で、胃の中を突いてみたら……ゴポリと溢れる胃液。 もともと一寸法師の歌を忘れたから浦島太郎の歌を歌ったわけですが……グムーーッ!! 服が溶ける!溶けてきてる!! 彰利 「くっ……こうなったら───アタイと貴様、どちらが先に力尽きるか勝負ぞ!     ホォオオオオ……アァーーーッタッタッタッタッタッタァッ!ホアタァッ!!」 ドスドスドスドスドスドス!!!! アタイは北斗百裂拳に負けないくらいの勢いでやるつもりで拳を振るった。 すると、みるみる内に溢れてくる胃液!! ぐおおーーーっ!!!胃液が出過ぎてて腕が勢いを無くしてゆくーーーっ!!! 彰利 「こうなったら自力で出てやるわーーっ!!!」 ゴボボ……ゴボゴボ……!!!! アタイは胃袋から脱出を謀るべく、ベニョベニョした胃袋の先を広げ始めた。 その途端! 彰利 「なんと!!ぐ、ぐわぁああーーーっ!!!!」 モチャアと胃袋が伸縮してアタイを圧迫する!! お、おのれ〜〜〜っ!! 彰利 「ホアッチョウッ!!」 ボニョオ!! ───ダメだ!殴っても全然手応えがねぇ!! グ、グウウ……!!こうなったらさっさと逃げなくては!! そ、そうだプレイスジャンプ! ───って、下手したらシャークさんともども飛んでしまう! 彰利 「───おお!閃いた!!     オンラブラトルドアンベルト・オンラブラトルドアンベルト……!!     ラブリーどころかジェノサイドハートでプレイスジャ〜ンプ♪ キィンッ!!! アタイは月空力を発動させて、一気に飛んだ!! ザッ……ザッ……ザッ…… 夜華 「ふう……」 この神社に住まわせてもらってからしばらく。 わたしはすっかりと、昔のようにこの境内の掃除が板についていた。 夜華 「さてと……」 石畳にあった塵や砂を払うと、わたしは息を吐く。 綺麗な空の下で小さく伸びをして、その神社と大樹を見る。 わたしが産まれた時代とは違う、力強い緑を生した大樹。 そして───あの頃よりも綺麗な神社。 悠介殿の話では、彰衛門が直したらしい。 夜華 「………」 そんな時に思う。 あの時代で彰衛門が残っていてくれたなら、 わたしも志半ばで倒れることもなかったのではないかと。 社を守ろうと躍起になり、病に倒れ……わたしは死んだ。 楓さまとの思い出の場所を守ろうと、わたしは誰の手も借りようとはせずに─── だが、そんな意固地にも見える気持ちも、孤独の前では無力だった。 そんな時、自分の傍に心を許して話せる相手が居たなら─── わたしは無理をすることもなかったのではないかと。 どうしてか彰衛門のことを忘れていたわたしは、よくそんなことを思っていた。 夜華 「……せめて、その時にあいつが傍に……」 そうしたらわたしは、自分の幸せを掴めたのだろうか。 無意識に拳を握り締め、わたしは俯いた。 夜華 「……フフッ、今更だな」 竹箒を振り上げ、苦笑した。 女である前に武士。 そう謳ったのはわたしだ。 ならば、刀を捨てた時こそ……わたしはわたしの幸せのために頑張ろう。 だが───今のわたしは体を借りている状態だ。 そんなわたしが、宿主を差し置いて自分の幸せに走ることは出来ない。 彰衛門を思う気持ちを抑えたのもその所為だ。 夜華 「さて、掃除もこれくらいでいいだろうな。あとは楓さまの朝餉を」 キヒィンッ!ドチャアッ!! 夜華 「む?───うわぁっ!!」 それは突然のことだった。 空中から落ちてきた謎の物体─── 記憶が確かなら、彰衛門が言っていた『しゃーく』とかゆう物体がドタタッと跳ねた。 何故───!?この生き物は『魚』で、水中にしか居られない筈では───!? サメ 「フフフ、我こそはサメの神、SHARKサメザメぞ」 夜華 「しゃーく……さめざめ?」 サメ 「そうだ」 夜華 「………」 サメ 「………」 こいつ……一体何を考えている……!? ただただ暴れまわるしゃーくを見て、わたしは刀に手をかけた。 夜華 「動くな。妙なことをしたら斬るぞ……」 ドタッ!ドタタッ!!ビチチチチ!!! 夜華 「動くなと言っている!!」 サメ 「無茶言うなタコ!」 夜華 「なんだと貴様!」 ヂャキッと、しゃーくに刀を突きつける。 だがしゃーくはビチビチと動くだけだった。 しかも、その勢いはどんどんと弱まってゆく。 サメ 「む!こりゃいかん!」 しゃーくはそう言った途端───なんと空を飛んだ! 夜華 「ば、ばかな……!わたしは夢でも見ているのか……!?」 サメ 「そう!これはドリーム!まさにドリーム!!……てゆうか出られねぇ!     またデスカー!?また出られないんですかーっ!?いやぁあああん!!!」 夜華 「き、貴様!なにを言っている!?」 サメ 「フハァーッ!!今は貴様に付き合っている暇はないわーっ!!     だが息絶えてゆくサメの中に居るのは悲しいので滝壷にでも行きますか。     しかし、このシャークが蘇った時こそ貴様の最後だーーーっ!!!     それでは小娘、チェリオ〜♪」 しゃーくは浮いた状態で空を裂いてゆく。 しゃーくは言った。 『蘇った時こそ貴様の最後』と。 ならばここで逃がすのは得策ではない! 夜華 「逃すかぁっ!!」 ゾボォッ!! サメ 「ギャアーーーッ!!!!!」 わたしは横からしゃーくの腹を貫いた。 その途端に絶叫が響き─── 飛んでいた勢いのままに、しゃーくは石畳に落ち、ドシャアアアと滑った。 ……そして、まったく動かなくなった。 夜華 「………」 …………わたしはどうしたらいいか解らず、呆然とした。 夜華 「悠介殿!」 悠介 「篠瀬?どうした?」 散々悩んだわたしは悠介殿に話すことにした。 母家へ降り、その玄関を叩いて悠介殿を呼び出した。 夜華 「あ、や……その。先ほど、突然空から『しゃーく』が落ちてきて……!」 悠介 「しゃーく?……サメか?」 夜華 「よく解りませんが……!     今、神社の境内で倒れていますが、どうしたらいいのかが判断できません!     助力、願えますか!?」 悠介 「あ、ああ……」 ポカンとしている悠介殿を連れ、もう一度神社へ登る。 すると───! 夜華 「ば、馬鹿な!」 しゃーくは居なかった。 だがその場には血痕。 幻などではなかったことだけは確信が持てる。 夜華 「おのれ!何処へ行った!出て来───」 ゾクゥッ!! 夜華 「───ッ!?」 言いようの無い寒気を感じ、勢いよく振り向く。 するとそこには───水に濡れた状態のしゃーくが居た。 その体はやはり宙に浮いている。 サメ 「フフフ……このシャーク様は逃げも隠れもせんぞ……。     さあ、傷が癒えたところで再戦といこうか……?」 夜華 「くっ!」 刀を抜き、構えた。 油断したらやられる。 このしゃーくからは信じられないくらいの強い波動を感じる……! 悠介 「………」 夜華 「なにをしておられる悠介殿!あれがしゃーくです!!」 悠介 「へ?あ、ああ……はぁ。確かに人騒がせだからお灸が必要だよな……って、     俺、一体何回、お前に灸を据えたっけ……?」 サメ 「俺は、あんたのことなんか知らない!!」 悠介 「そうか。だったら遠慮無しでいくぞ?」 サメ 「ごめん知ってる」 悠介 「………」 悠介殿はしゃーくを見て大きく息を吐いた。 大分疲れているようだ。 サメ 「そう……貴様はあの伝説の!中国人のニシさんだろう!!」 悠介 「違うわぁっ!!」 ドゴォッ!! 悠介 「───なにっ!?」 サメ 「クォックォックォックォックォックォッ……クォゴホッ!ゲホゴホッ!!     フ、フフフ……いつもなら吹き飛ばされるところだが、     このシャークさんの頑丈な皮膚をもってすれば、中への衝撃は薄いものぞ?     てゆうかやめて!殴り続けないで!内蔵が刺激されて胃液が!胃液が!!」 悠介 「なら裁きを流してやるわ!海水生物だからよく浸透するだろうよ!!」 サメ 「ゲゲッ!?はやまっちゃならねぇっ!!やめれ!やめないとヒドイぞ!?」 悠介 「どうヒドイんだ!手ェ出せるモンなら出してみろ!!」 サメ 「ナメるなよ!海産軟骨魚の壱式流秘奥義!口から爆裂魔光砲ーーッ!!」 コァアアア───ドチュゥウウウウウウウウン!!!! 悠介 「うおっ!?おぉわあああああああっ!!!!!!」 ドガァアアアン!!! 夜華 「悠介殿!?」 大きな炸裂音を掻き鳴らし、悠介殿は勢いよく吹き飛ばされた。 やがてその体が大樹に叩き付けられ、ドサ、と倒れる。 サメ 「馬鹿め!よく言うだろう!ジャガイモだって手も足も出ないが芽は出ると!     それと同じで、サメだって手も足も出ないが口が使えるのよ!」 夜華 「おのれ!奇怪な技を出しおって!成敗してくれる!!」 サメ 「フフフ、貴様に出来るかな?おなごに屠られるほど弱くはねぇぞ?」 夜華 「黙れ!わたしは女である前に武士だ!!その首、叩っ斬ってくれる!!」 サメ 「やってみろ!出来るものならばな!!」 夜華 「はぁっ!!」 浮いたまま動かないしゃーくに向かい走り、刀を一気に振り抜く! サメ 「海産軟骨流護身術!シャーク・ジョー!!」 ガキィンッ!! 夜華 「なにっ!?」 わたしの刀はしゃーくの鋭い刃のような歯に噛まれ、止められてしまった。 サメ 「フフフ……残念だったな。その程度の太刀ではこのシャークは屠れんわ!!」 コリコリコリ…… 夜華 「うわっ!やめろっ!     これは楓さまが作ってくれた刀なんだぞ!!噛むな!やめろ!!」 サメ 「フフフ……滝壷に入った途端に絶命したシャークさんだが、     今はアタイの意志通りに操れる……!     つまり貴様には勝てる見込みがないのだ!     くらえぃ!海産軟骨流秘技!濃縮胃液スプラッシュ!!」 ボチュウ!!!びしゃあっ!! 夜華 「うわっ!?な、なんだこれは!!」 突如、しゃーくは謎の液体を吐き出した。 サメ 「シャークさんの胃液と月壊力の破壊能力を合成したものを吐き出すことにより、     対象となるものをジワジワと溶かすのだ……!     ほぅれ、そうこう言う間に貴様の服の袖が溶けてきておる」 夜華 「なっ……くぅう!!貴様!!」 サメ 「まあ吐き出す瞬間に混ぜてるから俺様はどうってことないがね。     さあ、絶体絶命だ。どうする小娘!」 夜華 「ふふっ……勝ったつもりか?わたしはこれしきで参る心など持っていないぞ」 サメ 「なに?……フッ、根拠の無い強がりを」 夜華 「根拠が無いかどうか、身を持って知るのだな!!」 わたしは短刀を取り出し、それをしゃーくの目に突き刺した!! 夜華 「どうだ!」 サメ 「利かんなぁ〜」 夜華 「な、なにっ!?」 サメ 「馬鹿め、それしきのことで強がっていたとは。     やはり根拠の無い強がりよ!くらえぃ!     海産軟骨流奥義!ドイルさん的・目から血液噴射目潰し!!!」 ブチャア!! 夜華 「ぐっ!?うわぁあああああっ!!!……っ……目がっ……!!」 くっ……!! しゃーくの目から飛び出た血液が目に……!! だが、その拍子にしゃーくの顎の力が緩み、刀とわたしはしゃーくから離れた。 サメ 「フフフ……詰んだぞ。さあ大ピンチだ。どうする?」 夜華 「───……」 見えないのなら見ることを諦めろ! 心の目でしかと見て、ヤツの存在を探れ……!! サメ 「ぬ……なんだ、急に大人しくなりおって。とうとう観念したか?」 ───……感じるんだ。 しゃーくの急所を的確に穿つ。 恐らく好機は一度きり。 トドメを刺しにきたしゃーくに一閃を決め、仕留めるしかない。 サメ 「ではどうせならば服を溶かしましょう。胃液スプラッシュ!」 夜華 「なにっ!?」 べしゃあ!! 夜華 「ぐううっ!!?」 予想外の展開だ……! すぐにトドメにくるかと思ったのに───!! サメ 「グブブブブ……ホレホレ、     なんとかせんと貴様の裸(ら)がさらされることになるぞ……」 夜華 「貴様……!わたしを辱める気か……!!」 サメ 「そうだとしたら……どうだというのかね?」 夜華 「───!」 邪気が膨れ上がった!そこだ!! 夜華 「紅葉刀閃流奥義!竜神紅蓮殺!!」 ガカァッ───キィンッ!! サメ 「───……なにかね今のは。そのような刀技ではこのシャークは」 ズババババババッ!!!! サメ 「な、なに!?衝撃が後からっ!?ば、馬鹿な!この私が!!     このシャークが!貴様なんぞにっ!!に、肉が!わしの肉がぁっ!!」 ドチャ───ドチャドチャドチャ……ッ!! わたしが刀を納めるのと同時に、しゃーくはバラバラになった。 夜華 「……はあ」 ボロボロになった衣服を庇いながら、わたしは息を吐いた。 そんな時───パサッ。 夜華 「───?」 彰利 「見事な刀技だったぞ。それと、ちょっと失礼……ほい、目も見えますぞ」 夜華 「……あ、彰衛門っ!?見ていたのか!?」 いつの間にか居た彰衛門が、わたしに大きな服をかけてくれた。 彰利 「途中からな。ほら、それ着ろよ」 夜華 「あ、ああ……すまない」 わたしは彰衛門がかけてくれた衣服を纏うと、少し俯いた。 そして考える。 女である前に武士……武士だ。 彰衛門に迷惑はかけるな、と。 最近では彰衛門と会った時は毎回がこうだ。 彰利 「ん?どしたん?」 夜華 「え?あ、いや……」 思考の途中で話し掛けられ、わたしは顔が熱くなるのを感じた。 慌てて話を逸らそうとしたわたしは─── 夜華 「そ、そうだ!きき、貴様が着ている服は何故ドロドロなのだっ!?」 彰利 「オウ?ギャアしまった!!胃液が!」 夜華 「胃液?まさか貴様……」 彰利 「んーん違うよ!?アタイシャークさんの中になんか居なかったよ!?     ただこれは───グウム……!!     そ、そう!アタイもシャークさんと戦ったのよ!」 夜華 「なに……?そうなのか?」 彰利 「そうなのよそうそう!それで胃液吐かれて……ね?解るでしょ?」 夜華 「あ、ああ……」 彰利 「チョロイぜ」 夜華 「うん?なにか言ったか?」 彰利 「いえいえ何も。ささ、下の家に戻りましょう。     その格好では風邪を引いてしまいますよ?」 夜華 「ああ……すまない」 彰衛門が石段を降りるようにわたしを促す。 だが途中で立ち止まり、わたしを見て言った。 彰利 「そういやさ、紅葉刀閃流(くれはとうせんりゅう)ってなんぞ?」 夜華 「うん?……ああ、あれはわたしが習った刀技の流派だ」 彰利 「ほへー……奥義まであるんか」 夜華 「ああ。楓さまが話しただろう?     わたしは別の場所から楓さまの住む村に訪れたと。     あの村に辿り着く前は、その刀技を身につけたり、いろいろあったのだ」 彰利 「あーあー、そういや言ってたねぇ。いや懐かしい」 夜華 「……そうだな」 わたしも懐かしく思う。 あの頃は本当に楽しかった。 わたしがわたしとして存在でき、楓さまも鮠鷹も彰衛門も居たあの頃。 戻れるのならば戻りたいと思うのは我侭な願いだろうか……。 彰利 「っと、引き止めてしまいましたな。ささ、下へ降りましょうぞ」 夜華 「あ、ああ……そうだな」 彰衛門に促され、わたしは石段を───降りる直前。 声  「彰利ぃっ!てめぇっ!!」 その声は張り上げられた。 彰利 「おっとこりゃいかん。夜華さん、ちょっと失礼」 夜華 「なに?うわっ!」 何を思ったのか、彰衛門がわたしの視界を腕で覆った。 それは、なんというか……後ろからわたしを抱くような体勢だった。 知らずの内に、わたしは緊張してしまい……カチッ。 ───……『カチ』? ドカァアアアアン!! 声  「どわぁあああっ!!!!??」 声  「た〜まや〜♪アタイを爆破させた上に川に流したお返しぞ!」 声  「ゲホッ!ゴホッ!……て、てめぇ……!!」 声  「ほいっと。もうよいですよ夜華さん」 夜華 「え?あ……」 軽く言う彰衛門はさっさと腕を戻してしまい、 わたしはその行動に確かな寂しさを感じていた。 だが……気持ちを押しつけるわけにはいかない。 夜華 「そ、そうか。ではさっさと降りるぞ」 彰利 「当たり前じゃい!早く行くんじゃ!ダーリンが走ってきてる!!     ええいもうまどろっこしい!!」 夜華 「な、なに!?お、おいっ!」 彰利 「とんずらぁああーーーっ!!!」 彰衛門はわたしを抱きかかえ、石段を駆け下りた。 そんな行為を嬉しいと感じてしまうわたしは、武士としてどうなのだろう。 そんなことを考えながら、せめて今だけはと彰衛門の腕に体を預けた。 ───が。 ドガァアアアアアアアン!!!!! 彰利 「キャアアアアアア!!!!!ごめんなさいごめんさい!!」 夜華 「ご、誤解です!わたしはなにも!!」 椛  「言い訳なんか聞きたくありませんっ!!     どうしておとうさんが夜華を抱きかかえているうえに、     夜華の衣服がボロボロなんですかっ!!!」 家に辿り着いて玄関を開けた途端、楓さまと鉢合わせた。 それが全ての原因だった。 玄関が吹き飛び、家にヒビが走り、大地と大気が震えていた。 彰利 「言ってることが滅茶苦茶ですよ椛さん!!     言い訳聞きたくないのに尋問してどうしますか!!」 椛  「おとうさんのばかーーーっ!!!!」 彰利 「え───えぇえっ!!?キャアアアアアアアア!!!!」 ガォオオオオオオン!!! 彰利 「う、うおおおおお!!ニセ千葉ンが出した光よりデカ───     お、おわーーっ!!よけられーーーーん!!!!」 ドカァアアアアアアン!!! 彰利 「今日はこれくらいにしといたるわぁあーーーっ!!!!」 楓さまが放った凄まじく大きな光に、彰衛門が吹き飛ばされていった。 光が走った場所は大きくえぐれ、その威力が窺い知れた。 椛  「───夜華……説明しなさい……!内容によっては、お仕置きは無しです……」 夜華 「は、はい……」 わたしは内心恐れながら、ぽつぽつと言葉を発していった。 椛  「え───?そ、それじゃあおとうさんは、     敵に襲われて手傷を負った夜華を抱きかかえていただけなの……?」 夜華 「はい。なにひとつとして間違いはありません」 椛  「あ、あうぅう……」 説明を終えたところで、楓さまは『またやっちゃった……』と言って大きく項垂れた。 夜華 「あの……楓さま?もう少しその早合点を直した方がよろしいかと……」 椛  「解ってはいるんですけど……ごめんなさい、夜華……」 夜華 「いえ……それより飛んでいった彰衛門が気になりますが……大丈夫でしょうか。     ……はは、楓さまが彰衛門相手に本気でかかるわけありませんね」 椛  「…………その」 夜華 「はい?」 椛  「あの……ね?その、結構……ちょっと……かなり……その、本気で……」 夜華 「………」 呆れた。 確かに普段ならここらで出てくる筈の彰衛門も戻ってこない。 かなりの重症か、それとも……いや、やめよう。 あいつは殺しても死なないようなヤツだ、きっと大丈夫だろう。 Next Menu back