自分が思っていた現実ってゆうものは、ちっぽけなんだなって思った。 自分が望んでいた現実ってゆうものは、もろいものなんだって思った。 だとしたら、ぼくは一体何を希望に生きてきたんだろう。 全てが虚ろに見える世界の中で、ぼくという存在はあまりに小さかった。 何を思っても、何を願っても、それはずっと変わらない。 人より優れていたってそれは変わらないんだと思う。 自分が優れているって言うんじゃなくて、 そんな人達にぼくはそれを伝えたかったんだと思う。 だけど優れている人達はそれを受け入れようとはしない。 みんな、自分の意思で動いているんだから。 優れている人は誰かの操り人形になったりしないのだから。 そんな現実に気づいた時、ぼくは───ひとりぼっちで泣いていた。 ───蒼い季節の少年たち───
蒼い空が好きだった。 ただひとりで見るその空も好きだけど、友達と一緒に見る空はもっと好きだった。 そのことに気づかせてくれたのは飛鳥。 ぼくは彼女が好きで、そんな蒼空を好きにさせてくれた彼女がもっと好きだった。 蒼い季節に父さんに教えてもらったその場所はとても綺麗で、 ぼくはその場所を飛鳥に教えてあげられなかったことが悲しかった。 ───そしてぼくは思い出す。 他愛無い会話の中にある小さな幸せを抱き締めていられたあの頃を。 ただ幸せで、ただ悲しかったあの頃を。 夢を持って、未来を描いて、小さな体で精一杯に走っていた……あの頃を。 ───カラーーーン……カラーーーン……。 教会の鐘が鳴っていた。 その音で目を覚ました俺は、随分と懐かしい夢を見ていたことを思い出す。 心がとても暖かくて、癖みたいに言う言葉じゃなくて、 今日は本当にいいことがありそうだなって思えた。 凍弥 「……ん、ん〜……」 ぐうっと伸びをして、部屋の中を見渡した。 なんにも変わらないその部屋は、殺風景って言葉がよく似合っている。 父さんがたまに『何か欲しくないか?』とか言う気持ちも解らないでもない。 でもそれに甘えるつもりはなかったし、俺は俺で、こういう部屋だからこそ落ち着けた。 凍弥 「さてと、今日は───ああ、そっか」 まだ完全にはハッキリしない頭の中で、ドアを見た瞬間に思い出されることがあった。 正確にはドアに貼られた紙。 今日は風間のサッカーの練習試合を見に行くって話だったな。 コンッ。 凍弥 「うん?」 ふと見た窓に、小石がぶつけられた。 窓際に寄って見てみると、次弾を装填している浩介。 その隣では浩之が自転車をスタンバイさせていた。 凍弥 「どうかしたのか?」 窓を開けて訊いてみる。 返事は簡潔で、『さっさと練習試合を見に行くぞ』というものだった。 それに軽く返事をしながら部屋へ向き直り、パパッと着替えた。 それからすぐに階下へと降り、久しぶりに買った低温殺菌牛乳を飲んで外に出た。 浩介 「最近起きるのが遅いぞ同志。たるんでいるのではないか?」 凍弥 「そうかも。じゃ、行くか」 浩之 「応ッ」 浩之の乗る自転車の後ろに浩介が乗り、俺は自分の自転車を漕いだ。 凍弥 「如月校でいいんだよな?」 浩介 「うむ。相手校の殴り込みだ。ワクワクするな」 浩之 「なに、弱小高校だ。楽勝だろう」 凍弥 「このあいだ、断言は控えるって言ってなかったか?」 浩之 「控えの中の極一部だ。気にするな」 凍弥 「はははっ、なんだそりゃ」 自転車は走ってゆく。 くだらない会話だと思ってもそれを続けていると時間が経つのは早くて、 気づけばもう学校に来ていた。 浩介 「シャーッ!離脱ゥーッ!!」 バシュウ! 浩介 「では駐輪は頼んだぞブラザー!」 浩之 「なに!?謀ったなブラザー!頑なに後ろに乗ると言った真意はそれか!」 浩介 「気づくのが遅すぎたようだな!さらばだぁーーっ!!」 浩之 「おのれぇーーーっ!!」 サッカー部専用の芝生グラウンドに逃走してゆく彼を、 浩之はとても恨めしそうに睨んだ。 凍弥 「落ち着け浩之。駐輪って言ったってすぐそこだろ?」 浩之 「ブラザーに一歩を先んじられたのが許せんのだ」 凍弥 「……お前らって相変わらず小さな対決してんのな」 浩之 「フフフ、まあそんなところだ。     だが小さくても対決というものは互いを高めるものだ」 凍弥 「墓穴掘りまくってしっぺ返しが来まくってる気がするのは俺だけか?     そんで俺が巻き込まれまくってる気がするのも気の所為か?」 浩之 「当然気の所為だ。考えすぎだぞ同志」 凍弥 「だったら目ェ逸らすなっての……」 言いながらも駐輪をする。 それが終わった途端、浩之はさっさと走っていってしまった。 凍弥 「あっ!おい!そんなに急ぐこともないだろ!?」 まるで分の悪い会話から逃走するように……てゆうか逃走なんだろうな。 そんな様子で、浩之は素晴らしい速さでグラウンド方面へ走っていってしまった。 凍弥 「……俺も行くか」 ここで呆然としててもしょうがないしな───……。 グラウンド周辺は賑わっていた。 クラスメイトや他の学年のやつらも居て、 みんながみんな、観客であることは間違いなかった。 浩介 「遅いぞブラザー。なにをしていた」 凍弥 「駐輪だ。悪いか」 浩介 「いや結構だ」 浩之 「まったくだ」 凍弥 「………」 どうしてここまで偉そうにされなきゃならんのだ? ……ま、いいか。 気にしてたら翻弄されるだけだ。 浩介 「しかし選手がまだ居ないな。何処で油を売っているのやら」 凍弥 「俺に訊かれてもな」 浩之 「では誰に訊けというのだ!」 凍弥 「いきなり怒鳴るな!」 浩介 「いや待て、落ち着け。     サッカー部の顧問のセンセがなにやら謎のおっさんと話している」 浩之 「ハンデのことではないか?」 凍弥 「いや───様子が変だぞ?」 相手のおっさんが凄い剣幕で叫んでる。 顧問の清里が引け腰になってる。 浩介 「ここでは聞こえんな。ちょっと移動しよう」 浩之 「うむ。ホレ、同志もだ」 凍弥 「あ、ああ」 志摩兄弟に促され、俺は場所を移動することになった。 ───そして。 清里 「そ、そんな……何かの間違いでは?」 教師 「間違いなどではありませんよ。     現に、ウチの生徒がそちらの部員に暴力を振るわれたんですからね」 聞こえてきた言葉はそんな言葉。 浩介 「……もしや?」 浩之 「うむ……まさかとは思うが。あの時の男どもは向こうの部員だったのか?」 凍弥 「だとしても正当防衛だろ?」 浩介 「いや……立証してくれる材料が無い。それに比べ───」 相手校の教師の傍に立つ3人の男の顔には確かな傷があった。 このあいだ、俺達が殴ったものだろう。 教師 「私としては、     そちらの暴力的な生徒と練習試合をさせるわけにはいかないのですよ。     もし偶然を装って怪我でもさせられたら……」 清里 「そんなことがあるわけがないでしょう!なにかの間違いだ!」 教師 「では……坂本。お前に怪我を負わせたのはこの学校の生徒なんだな?」 坂本 「はい、間違いありません。『志摩』とか呼ばれたヤツと、あとひとりと……     それと、サッカー部員だった筈です」 清里 「志摩───!?あの馬鹿者め……!」 最悪だ。 相手が名前を覚えてた。 浩介 「……チッ。こんなことなら完全に足腰立てなくするべきだった」 浩之 「まったくだ。自分で仕返しも出来ないからって教師に頼るとは……」 凍弥 「……どうする?このままじゃあサッカー部に迷惑がかかるぞ?     良くて練習試合中止。最悪の場合、廃部ってことも……」 浩介 「真実を話してやればよかろう?」 浩之 「馬鹿かブラザー。説得の材料が無いと言ったばかりだろう」 浩介 「むう……」 そうこう言っている内に、ウチのサッカー部の連中がグラウンドに来た。 みんな嬉しそうだが───教師達の周りの空気を感じ取ったのか、口数を減らす。 そして─── 坂本 「あ───あいつ!」 教師 「なに?」 男のひとりが、歩いてきた風間を指差して叫んだ。 風間もそれに気づき、男を睨む。 坂本 「あいつだ!あいつが俺達を───!」 清里 「風間……」 清里が信じられないといった声をあげ、風間を見た。 やがて風間はその場に呼ばれ、何かを話し始めた。 時折聞こえる怒声は、誤解を訂正しようとしたものだろう。 だが─── 風間 「どうしてですか……!そいつらが静香に手を出そうとしたから俺は……!」 教師 「そんなことを訊いているんじゃない。暴力を振るったのかどうかだ。     数人がかりだったそうじゃないか。ん?」 風間 「だからそれはっ!」 教師に呼ばれ、練習試合の中止という言葉が出た時点で、 他の部員達は風間を睨み始めた。 もちろん、みんなそれがお門違いなことくらいは解っているだろう。 教師 「大体、こいつらは怪我をしているのにキミは無傷だ。     まさかとは思うが……闇討ち紛いなことでもしたんじゃあるまいね?」 風間 「そんなことするかっ!!いい加減なこと言うな!!」 教師 「なんだその口の利き方は!!」 風向きは悪くなるばかりだ。 相手の教師がハナから風間を信じる気がない。 佐藤 「まあまあ、落ち着け」 そんな時、佐藤が割って入った。 ───嫌な予感がする。 佐藤 「おいお前、志摩という名のヤツともうひとりのやつの中のふたりは、     双子の男だったか?」 坂本 「あ、ああ……」 佐藤 「そうかそうか……あの不良どもか」 教師 「不良?」 佐藤 「ああ。教師を授業中とはいえ竹刀で殴るひどいヤツらでね。     暴力沙汰も頷けるな。     おい風間、お前……あいつらにやれって言われたんだろう?」 風間 「違う!」 佐藤 「ほう?では貴様が進んでやったのか?サッカー部でも廃部にしたかったのか?」 風間 「違うって言ってるだろ!?黙ってろ!」 佐藤 「おお怖い。この通り、乱暴なやつらでしてな。     ま、この学校のガンってところですか」 風間 「ガン……!?ガンはどっちだ!」 佐藤 「さあ!清里先生……?これは問題ですよ?     サッカー部の部員が喧嘩沙汰を起こした場合……     校長がどうするつもりだったか覚えているでしょうな」 清里 「う……」 廃部……。 佐藤の野郎、こんなことにだけ頭働かせやがって……! 浩之 「ブラザー!ここはやはり我らが出ていって物申すしか───!」 浩介 「いや……。風間を信じよう。ここで我らが出てもこじれるだけだ」 凍弥 「……そうだな」 くそ……! 佐藤 「サッカー部員である風間が暴力をしたのであれば廃部。     これだけの怪我をさせたんだ、当然でしょう。     だがサッカー部員でないあの三人がやったのであれば……     まあ、練習試合が一度流れる程度でしょうな」 風間 「……っ!」 教師 「……どうなんだ、キミ」 清里 「風間……!」 部員 『風間……』 風間 「あ……っ……!」 風間は頼りない顔で周りを見渡し、何かを探した。 やがて───その視線が皆槻を見つめた時、風間は拳を弱々しく握り締めて…… 風間 「……センパイ達が……やりました」 そう───言った。 浩介 「………」 浩之 「……はっ」 凍弥 「風間……」 俺は───いや、おそらく志摩兄弟もそうだろう。 まるで目の前が真っ白になるような感覚に襲われた。 『罪』がどうのこうの言うつもりはない。 ただ、風間が『完全に』人の所為にすることが信じられなかったんだ。 浩之 「同志……ブラザー……どうする」 心底気分を害した口調で、浩之は言う。 それは浩介も同じようだった。 だけど俺は、風間を信じてみるつもりだった。 だから─── 凍弥 「……悪い。今回の件、全部俺がやったってことにする」 浩介 「なに……!?馬鹿を言うな!何故貴様がそんなことをせねばならぬ!」 凍弥 「……信じてみたい。それだけだ」 でも……もし風間が─── 凍弥 「っ」 浩之 「同志っ!馬鹿な真似はよせ!同志!」 俺は思考に浮かんだことを掻き消すようにフェンスを飛び越えて中へ入った。 佐藤 「うん……?なんじゃ、ようやっと出てきおったか」 普段の口調に戻った佐藤が俺を見て言う。 俺は特に語ることもせずに、 サッカー部員や観客に睨まれる中、他校の教師の前に立った。 教師 「キミがそうなのか?」 凍弥 「………」 風間 「センパイ……!」 風間は心底驚いていたようだ。 俺が居るとは思わなかったんだろう。 周りを見渡してから言葉を発したのもその所為だと思う。 凍弥 「今回の件については、全て俺がやったことです。どんな処分でも受けます」 教師 「そうか……ああそうか!キミがウチの生徒を!」 坂本 「いや、こいつだけじゃ───」 凍弥 「───!」(ギンッ!!) 坂本 「う……あ、いや……」 本物の殺気を込めて、坂本とか呼ばれてたヤツを黙らせた。 清里 「霧波川……本当にお前が?」 凍弥 「───」 風間 「………」 チラリと横目に見た風間は、俺を不安そうな顔で見ていた。 凍弥 「……はい。俺がやりました」 風間 「───!」 そして───俺は生涯、この時の風間の顔を忘れないだろう。 俺がウソをついた時点で、風間は一瞬だが笑った。 それはつまり───……そういうことなんだろう。 声  『待ったァッ!』 教師 「なにっ!?」 凍弥 「───馬鹿」 聞こえた声に、真っ先に呟いた。 振り向くまでもなく、声の先には志摩兄弟が居るだろう。 浩介 「忘れてもらっては困る。こいつらを殴った中には我らも含まれていた」 浩之 「そういうこうとだ。処するならば、我らも処するのだな」 清里 「お前ら……」 凍弥 「───」 俺は周りのみんなの注意が志摩兄弟に集中する中、風間の傍に寄って小声を発した。 凍弥 「───風間。どうしてウソをついた?」 風間 「え?いや、だって……みんなが俺を見てて……。     不安になって、それで……     誰か助けてくれって思って周りを見たら静香が居て……。     練習試合、あんなに楽しみにしてたのにって思ったら……」 凍弥 「それだけか?」 風間 「あ、えと……へへ、センパイならなんとかしてくれるんじゃないかって……」 凍弥 「───!」 バゴォオッ!! 風間 「ぐっ!?ああっ!」 俺は手加減無しで風間を殴りつけた。 勢いよく倒れた風間は、何が起こったのか解らないような顔で俺を見上げた。 凍弥 「……呆れた……呆れたよ風間。ああ、こんなに呆れたのは初めてだ。     お前がそういうヤツだったなんて知らなかった。気づかなかった。     俺は確かにお前にヒドイことをしたかもしれない。     けどな、お前を裏切ったことはなかったつもりだ。それを……」 風間 「セ、センパイ……?」 隆正だった頃、俺は風間───間吹を死なせてしまった。 確かにそれはどれだけ恩を返そうとしても返せることじゃない。 だが───俺は隆正なんかじゃなくて、霧波川凍弥だ。 出来るだけこいつの未来を手伝ったつもりだし、相談に乗れることは乗ってきた。 その末路が───浩介の言ってた『利用されること』か。 凍弥 「……風間。この件は俺が全て背負ってやる……お前の望み通りな。     だが……二度と俺に馴れ馴れしい口を吐くな……!」 風間 「───……!」 風間は絶句して、顔を俯かせた。 その瞬間、その状況を見ていたサッカー部員達が俺に掴みかかる。 凍弥 「佐藤先生!!」 だが殴られる前に、俺はその声を張り上げていた。 佐藤 「あん?なんじゃ」 凍弥 「今回のことは全て俺が起こしたことだ。サッカー部は関係ない。     だから、練習試合をさせてやってくれ」 佐藤 「あ〜?なにを」 凍弥 「この通りだ……」 佐藤 「!」 志摩 『馬鹿っ!同志!』 その場に居た全員が俺を見て驚愕した。 当然かもしれない。 ……俺は佐藤や他校の教師や清里の前で土下座をしたのだから。 教師 「あ……いや……」 清里 「や、やめろ霧波川……!そんなことをしたって無意味だ……!」 浩介 「……ブラザー」 浩之 「ああ。当然だ」 ざっ…… 清里 「なっ……!?志摩!お前らまで……!」 浩介 「すまなかった」 浩之 「やつらと練習試合をしてやってくれ……」 志摩兄弟は教師にではなく、男達に謝っていた。 それを見た男達はおろおろしだすばかりだ。 坂本 「お、おい……どうする……?」 男B 「どうするっつったってよ……」 男C 「俺は別に……足に怪我なんかしてねぇし……」 坂本 「………」 やがて、男達は黙った。 周りも静まり、息苦しい沈黙が訪れる。 だが───意外にも、そんな沈黙を破ったのは佐藤だった。 佐藤 「なあ先生。こいつらもここまでやってるんだし、いいんじゃないか?     見たところ、生徒の怪我も運動する分には全然問題無さそうだし」 教師 「………」 佐藤 「それとも、ウチの生徒をさらし者にし足りないかな?」 教師 「───!」 他校の教師が俺達を見下ろす。 やがて震える声で『立ちなさい』と促すが、俺達は動かなかった。 教師 「……おいお前ら。傷は大丈夫なんだろうな」 坂本 「え?あ、ああ……」 男B 「まあ……」 教師 「───じゃあやってこい。負けるなよ」 男三人『は、はいっ!』 男三人を向かわせると、教師は自分の部員を呼びに、歩いていってしまった。 俺と志摩兄弟はようやく体を起こす。 佐藤 「勘違いすんなや?お前らは夏休みが終わっても停学扱いじゃからな」 そんな俺達に真っ先に飛んできた言葉はそれだった。 佐藤 「その間、山のように宿題を用意してやる。退学にならんだけ、ありがたく思え」 凍弥 「………」 志摩 『………』 佐藤 「ホレ、練習試合の邪魔じゃ。とっとと失せろ」 俺達はやるせない気分のままに、その場を立ち去ろうとする。 そんな時、俺達の前に立つ姿があった。 風間 「センパイ……!」 凍弥 「───どけ、邪魔だ」 風間 「───!」 浩介 「呆れたものだな風間。貴様などを友人のように思っていた自分が情けない」 浩之 「二度と顔を見せるな」 凍弥 「お前とはもう、面識の無い先輩後輩だ。関係は0に戻させてもらう。     いや、ここまでやったんだ、0くらいじゃ足りないな。     もう俺に話し掛けるな。俺はもうお前を信じないことにした」 風間 「あ……あ……」 風間は震えだし、何を思ったのか教師達のところまでに走ろうとした。 浩介 「なにを言うつもりだ?」 しかしそれを浩介に止められる。 風間 「お、俺が全部やったって……」 浩之 「……いい加減にしろ。貴様は同志の土下座を無にするつもりか?     大体そんなことをしたところで、     貴様が同志に罪をなすりつけたことは変わらんのだ」 風間 「でも俺、ケジメつけないと───!」 凍弥 「……思いあがるな」 風間 「えっ……?」 凍弥 「ケジメをつけるだと?     ケジメをつけようってヤツが俺達にしたことはなんだった?     お前のケジメってのはそのことなんじゃないのか?」 風間 「あ、あれは……本当にセンパイならなんとかしてくれるんじゃないかって……」 凍弥 「『なんとかしてくれる』って思って、俺に罪を押し付けたんだな?     あのな、噛み砕いて言ってやるよ。俺は確かにいろいろとお節介を焼いた。     けどな、それは誰かに利用されるためや、誰かの罪をかぶるためじゃない。     俺がお節介をしたのは、大事な人との約束を守るためだったんだよ……!     それを……まさかお前に利用されるとは思ってもみなかったよ!!」 風間 「っ!!」 凍弥 「人の思い出を汚しやがって……!     さっきも言ったがな……!二度と俺に馴れ馴れしい口を吐くな!!」 怒りが治まらない。 この場に居ると頭がどうかしそうだ。 俺はさっさとこの場所を離れることにした。 柴  「おい待てよ……!さっきから聞いてりゃ勝手なこと言いやがって……!     お前の所為で練習試合がダメになるところだったんだぞ?     土下座してそれを許してもらったって、自業自得じゃねぇか……!」 凍弥 「邪魔だ、どけ」 柴  「なに……?」 凍弥 「邪魔するなら手加減しない。俺はもう、お前らを信じないことにした」 柴  「………」 新田 「おい、どうするよ……やっちまうか?」 凍弥 「やめとけよ。これから練習試合なんだろ?     喧嘩するってゆうなら殺す気でいくぞ。手加減する理由が無くなったからな」 新田 「っ……!?」 浩介 「同感だ。クラスメイトだろうがなんだろうが関係無い。     同志の敵は我の敵だ」 浩之 「そうだな。喜んで相手になる」 新田 「う……」 新田は目を逸らし、道を譲った。 その後、俺と志摩兄弟は誰から何を言われようが無視し、鈴訊庵へと戻った。 Next Menu back