───闘狂アンダーグラウンド───
───……。 景色が変わる。 目に見える世界は、元のアキトシランド。 だが…… 彰利 『えーと……ハイ?意識がハックされてるのは認識しておりますがね、     どうやらうぬらの脱出を阻止しなきゃならんみてぇです。     だって体が勝手に動くんですもの』 悠介 「………これが?」 声  《だからさっさと出ろって言ったろ。     そいつなら攻撃しようが消滅させようが検察官には影響無い。     他のハックは来ないようにしてやるからさっさと片付けろ》 悠介 「……だ、そうだけど?」 椛  「おとうさんを倒すの……?」 悠介 「そうなるな。ちとやり辛いが……」 夜華 「よし斬る」 悠介 「オイ」 斬る気満々な篠瀬サン。 彰利 『うおう、先手は夜華さんですか。     えーと、こちとら手加減出来ないかもしれんから気をつけてね』 夜華 「なに……?」 彰利 『と、ととと……言ってるそばから体が動きやがりました!     夜華さん防御!防御!     ヤバイ!ヤバイって!このままだと……きたぁーーっ!!!』 ギシャアアアアア!!!! 夜華 「うわぁっ!?」 例の如く、彰利の顔が輝く。 彰利 『チョンマゲの方が好きだなぁ〜……』 で、背中をこちらに向けた状態で手付かずのブリッジでこちらを見る彰利。 ……ザッパだ。 しっかり白目だし。 夜華 「な、なんだそれは!気味が悪いぞ!」 彰利 『あもあもあもあもあもあもあもあも……犬怖ェーーーッ!!!』 ザシャシャアア!! 夜華 「わ、うわああああああああ!!!」 彰利は訳の解らん奇声をあげると、篠瀬に向かって逆四足走法で襲いかかった!! 夜華 「寄るなァッ!!」 ヒィン───ザクシュッ!! 彰利 『いだぁっ!いてて!え!?なに!?     うわ刺さってる!刺さってるよコレ!!シャレになってないよ!』 夜華 「っ!?悠介殿!この彰衛門には痛覚があるのですか!?」 篠瀬がこちらに振り向いて言う。 確かに、消滅させてもいいと言われたのに痛覚があるとなると…… 彰利 『……ん?ああカタパルトさ!夢だけでメシが食えるか!     聖徳太子?ああ拳法の達人ね。おのれ鍋奉行が!いくぜ!省エネモード!』 ……とはいえ、あの暴走っぷりはなんとかならんか? 彰利 『俺の!そして!あくまで俺の!絶望……!』 夜華 「あの……悠介殿?こいつと戦うのが馬鹿らしくなってくるのですが……」 彰利 『隙ありゃぁあああ!!!』 夜華 「なにっ!?」 彰利 『轟天弦月流奥義!打心攻!!』 ドコォンッ!! 夜華 「はっ───、が……!?」 震脚とともに放たれた掌が、篠瀬の心臓に叩き込まれた。 結果───篠瀬はその場に片膝を付き、 刀を杖代わりにしてようやく倒れずにいられるくらいだ。 彰利 『心臓に衝撃を与えることにより、相手の体内のリズムを完全に崩す効果がある。     どれだけ防御しても無意味だ』 悠介 「……操られてるわりに、えらく説明好きだなオイ」 彰利 『………』 悠介 「どうしてそこで目ェ逸らすんだよ」 彰利 『やかましい!とにかくかかってこい!     アタイを倒せなければ外には出られんことよ!?』 ……よし結論。 操られてると見せかけて完全に遊んでる。 人罰決定。 悠介 「じゃあ全力で行くぞ」 彰利 『おう!そうこなくっちゃ!さあ、どこからでもかかってきなさい』 悠介 「ほえ面かくなよ彰利ィ!───よし行け椛」 椛  「はいおじいさま!───ってちょっと待ってください!     どうしてそこでわたしに振るんですか!?」 悠介 「いや、お前ならすぐ終わらせられるかなぁと」 椛  「わ、わたしは出来るだけ戦いは避けようと心に決めたんです!     そんな野蛮なことはしません!」 悠介 「いや、しかしな」 俺がどうこうするよりも椛がズバーンとやってくれた方が…… 彰利 『創造、開始(クリエイション オン)』 悠介 「!!」 嫌な予感! 悠介 「篠瀬ッ!」 篠瀬を抱きかかえ、その場から大きく跳躍して離れた───途端。 幾多もの剣や槍が、さっきまで俺達が居た場所に突き刺さった。 その数……ざっと見て50は超えている。 悠介 「……創造の理力……!?」 彰利 『イエース。ダーリンがこの精神世界に居る限り、     アタイにも創造の理力が使えるってわけですよ。     減った体力は椛の神法力で回復する。即ち!無限なる創造も夢じゃねぇのよ!』 悠介 「……お前まさか」 彰利 『へ!?ちち違うYO馬鹿!べべ別に創造の理力をもっと使いたいからって、     実力を行使して引き止めてるわけじゃねぇYO!』 ……死刑決定。 悠介 「だそうだけど、どうする椛」 椛  「……ちょっと呆れちゃいました」 言葉通り、少し困惑顔の椛。 悠介 「……はぁ」 溜め息ひとつ。 のちにイメージを開始する。 両手に輝けるイメージを創造。 それを繋げ、大きな光の弓矢を完成させる。 彰利 『───ややっ!?神屠る閃光の矢!?』 悠介 「ご名答!!吹っ飛べぇえーーーっ!!!」 カッ───ゴカァアアアアアアッ!!!! 彰利 『チッ! I am the bone of my sword(体は 剣で 出来ている)───“熾天覆う七つの円環”(ロー・アイアス)!!』 悠介 「はいっ!?」 無茶苦茶だ! 彰利が創造したらしい七枚の大きな花びらのような盾が、 神屠る閃光の矢を受け止めてやがる! 彰利 『……創造、開始(クリエイション オン)』 悠介 「ちょっ……待てこら!     お前無茶苦茶だぞ!なんの真似かは知らんが性質が悪いわ!!」 彰利 『真似ることに躊躇いを持たぬアタイだからこそ可能なのだ!     さあ!アタイを倒してみよ!』 悠介 「野郎……!遊んでやがる……!」 椛  「……おじいさま、わたしも参戦します」 悠介 「頼む!全力でやっても勝てるか解らん!」 椛  「はいっ!」 彰利 『お?なんだ?やんのかコラ』 椛が彰利に向かい合った途端、 彰利はボクシングの真似事をするかのようにシュッシュッと拳を突き出した。 悠介 「やらいでか!ブラストクリエイション!モード・ガトリング!     ───ガトリングブラストォッ!!」 腕を突き出し、イメージを弾かせる。 弾かせたイメージが具現化し、腕の周りに幾つもの光が集まる。 やがてそれは高速に回転し、発射と創造を繰り返す!───が ペシ、ペシン。 悠介 「───っ……コイン?」 椛  「あ───!」 彰利 『ミスト───ファイナー!』 ヒィン───ズバババババババババ!!キィンッ!! 放ったブラストは、全て彰利の居合斬りによって弾かれてしまった。 悠介 「なんでもありかてめぇっ!!」 彰利 『オウヨ!真似ることが恥なのではない!真似られぬことが恥なのだ!     伊達に永い時間を生きちゃいねぇ!俺、今とっても輝いてる!』 ギシャアアアア!!! 悠介 「顔を光らせるな!怖いわ!」 彰利 『フフフ、これも作戦の内よ!さあ来い!』 悠介 「作戦って?」 彰利 『え?……えっと……あ、ほら、動揺させるとか……さ。ね?』 悠介 「今思いついただろ……」 彰利 『違いますよ失礼な!とにかくかかってこいやぁ!!     アタイを倒さねば肉体には戻れませんことよ!』 悠介 「───」 確かにその通りだ。 だがこいつは厄介すぎる。 普通に戦っても勝てる気がしねぇ……。 なにかないか……なにか…… 彰利 『さあ!参りますよダーリ───む!?』 悠介 「……?」 彰利 『……やいダーリン!椛をどこへやった!』 悠介 「なに……?」 向き直ってみると、確かに椛が居なかった。 何処に───……!? がばっ! 彰利 『ムオオ!?』 椛  「つーかまーえたっ♪」 彰利 『ギャヤヤヤヤヤヤッ!!??な、なななにをするのかね椛!!     もう甘える年齢じゃないでしょう!背中から離れなされ!!』 椛  「……ほんとはこんなことのために言いたくないけど……おとうさん、大好き」 彰利 『ギッ!?』 ビクン!と、彰利の体が躍動する。 やがて、カタカタと震え出す肩。 彰利 『な、ななななにを言うのかね椛……!うぬには小僧がおるんじゃ……!     滅多なことを言うものではないぞえ……!?』 椛  「でも好きだもん」 彰利 『ギャア!?』 ……なにやら平和な空間が出来てます。 まぁ、アレだな。 攻撃するなら今だ。 悠介 「……って言ってもな、このまま攻撃したら椛まで……」 なんとかして上手く彰利にダメージを与えられるものは───あった! 悠介 「そうだ!アレがあった!」 イメージをしながら走る。 彰利は背中から抱きつかれている所為か、後ろの方にばかり気が回っている。 それを突かない手はない。 彰利 『こ、これ!およしなさい!嬉しいけどなんかヘン!』 椛  「だめ〜」 彰利 『な、なぜかね!!』 椛  「弱点は突かなきゃダメなんだよね?だから」 彰利 『確かにそうじゃが───って』 彰利が俺に気づいた。 ───が、もうあと一歩というところまで来ている。 あとは─── 彰利 『ィヤッハッハッハッハ!!!至近距離にまで来たがどうするつもりかね!     椛ごとアタイに攻撃する気かね!?     だが無駄ぞ!ダーリンの性格からしてそれは無理ぞ!     さあどうするかね!絶対絶命ではないのかね!?諦めて降伏でも』 悠介 「新鮮無農薬の『キャベツ』が出ます!!」 彰利 『───え?……ゲェエエーーーーーーーーーッ!!!!!!』 言葉とともにキャベツが創造された途端、 きょとん、という顔が……アッと言う間に地獄絵図に。 彰利 『さ、させるかぁあああああ!!!     キャベツを消滅させるブラックホールが出』 椛  「大好き♪」 きゅむ。 彰利 『ハギャッ!?キャッ……キャーーーッ!!!!』 彰利の中に膨らんだイメージが、バラバラと崩れてゆくのを感じた。 ───その刹那。 悠介 「彰利極殺伝説(エクゼキューション)!!」 ガボッ!! 俺の手にあったキャベツが、彰利の口に捻り込まれた。 彰利 『───……』 ゴトッ。 弦月彰利……気絶。 悠介 「……はぁ。じゃ、さっさと出るとしようか」 椛  「あの、おじいさま?なにをしたのですか?」 悠介 「ん?ああ。彰利はな、キャベツが苦手すぎるんだ。一口だけでも致死に等しい」 椛  「………」 ……ポカンとしてるな。 気持ちは解るが。 悠介 「篠瀬、立てるか?」 夜華 「はっ……はい……」 ようやくダメージが抜けたらしい篠瀬に肩を貸す。 フラフラとして頼りないが、ここを出てしまえばどうとでもなるだろう。 悠介 「リヴァイア、だったよな?これからどうしたらいい?」 声  《入ってきた場所に戻れ》 悠介 「入った場所……それぞれか?」 声  《いいや、ひとつでいい。そこから精神を呼び戻す》 悠介 「了解だ。じゃ、行こうか」 椛  「待ってください。夜華を回復します」 夜華 「は……いえ、楓さまの手を煩わせるほどでは……」 椛  「だめです。───月生力……」 カァアア…… 夜華 「あ……」 力無い篠瀬の体が光で包まれる。 夜華 「……申し訳ありません、楓さま……」 椛  「謝る必要はありません。     このまま戻ったら体の方に異常があるかもしれないから」 悠介 「……確かにそうだな」 精神が弱った状態で体に戻ったら、体まで弱る可能性がある。 そうなったら、精神を回復させる方法なんて無いかもしれない。 椛  「……はい。これで大丈夫」 夜華 「確かに。では急ぎましょう。こんな場所は早く出るべきです」 悠介 「だな。あいつが気絶してる内に出た方がいいだろ。     トドメ刺そうとすると起き上がりそうだし」 どこからか溢れてくる溜め息を惜しげも無く吐き出しまくり、 ほんとさっさと出ることにした。 ───……。 悠介 「リヴァイア〜、来たぞ〜」 声  《解った。精神の吸い上げを開始する》 俺が入ってきた場所に立つと、その場所の空から光が降りてきた。 これで一安心だと思った瞬間 声  『まだぞ……!貴様らを逃がすわけにはいかん……!』 ソイツは、地面を破壊して現れた。 悠介 「彰利……」 彰利 『椛……お前はじいやの教えを実行出来なんだ……。     弱点を突き、【勝たなくては】意味がない。     その甘さが、今の状況を生んだのだ』 椛  「あ……」 彰利 『いきますぞ───創造、開始(クリエイション オン)』 ヒィン───ズガガガガガガガガガガガガガッ!!!!ギィンッ!! 彰利 『む……』 夜華 「彰衛門、貴様……!楓さまに本気で刃を向けるなど……!」 彰利が放った幾多もの剣を弾いた篠瀬が、彰利を睨む。 彰利 『ゲートが開ききるまで、約1分。それまで耐えられれば貴様らの勝ちだ。     だが、ゲートの中に入っていられなければ……どうなるか解るな?』 夜華 「……理解している。だが、貴様が楓さまに刃を向ける理由が解らぬ」 彰利 『言ったデショ。操られてるんですってば。     だからせいぜい頑張ってくれたまえ。手加減は出来ませんから』 夜華 「……望むところだ」 彰利 『良い答えでゴンス。では───交わらざりし命に』 キュバァッ!! 夜華 「っ!?」 彰利が構えを取った途端、その右手には光輝く長剣が。 そして左手には短刀が創造された。 彰利 『今もたらされん刹那の奇跡』 夜華 「くっ!」 ギィン!ビキィンッ!!ガキィッ!! 彰利の連激を、懸命に刀で受けとめる篠瀬。 光の刃が篠瀬の刀に触れるたび、眩い火花が散る。 彰利 『───時を経て』 輝ける光の剣が、輝ける闇の剣へと変わる。 その瞬間、彰利の目が真紅に染まる。 彰利 『ここに融合せし未来への胎動!!』 ガカァッ!キィン!ガキッ、ガカァッ!ビキィン! 火花は止まない。 全力で振るわれている斬撃を受け止めているだけで、見て解るほどに疲弊してゆく篠瀬。 ───やがて。 夜華 『はっ……はっ……!』 彰利 『義聖剣!!』 ヒュインッ───バガァアンッ!!! 夜華 「がはぁあっ!!!」 ザカァッ!ザッ!ザシャァッ!! 彰利 『僕には……無理だ……』 悠介 「……!」 ───……最悪だ。 彰利の振り下ろした渾身の一撃に耐えられなかった篠瀬が、ゲート外に吹き飛ばされた。 夜華 「あ……か、は……」 見るに、篠瀬は相当なダメージだ。 彰利のヤツ……本当に手加減無しでやりやがったな……? 彰利 『残り30秒。さあ、ゲートが輝き始めましたぞ夜華さん。     どうするね、えぇーー!?』 夜華 「けほっ……こほっ……!あ、つ……あき、えもん……なぜ……」 彰利 『くどい!操られておるんじゃってば!』 夜華 「───……お、のれ……!おのれぇえええええっ!!!!」 ガバァッ!! 彰利 『なんと!?あのダメージで起き上がるか!』 夜華 「もはや加減する気も失せたわ!飛燕龍-極-!!」 一瞬にして間合いを詰めた篠瀬が、 肩で体当たりをしてバランスを崩した刹那に刀を走らせる。 夜華 「紅刀!烈震!散葉!連襲!烈紅!無空!転身!壊牙!極輪!刀閃!!」 それは本当に光のような連撃だった。 目に映るのは刀が辿る軌跡のみ。 だが確実に彰利を刻むその刃は、確かな威力を持っていた。 夜華 「連撃紅四聖……紅竜奥義!竜神紅蓮殺!」 ゴッ───ザキャアッ!! 篠瀬の振るう刀から炎が猛り、彰利を斬る。 彰利 『ギャア!?って斬れてる!めっちゃ燃えてる!』 夜華 「朱雀奥義!閃刀朱紅炎舞!」 ゴワァアッ!! 彰利 『ほぎゃああああ!!!』 振るわれる刀から炎の波動が放たれ、彰利が飲み込まれた。 夜華 「紅虎奥義!烈爪紅荒閃!!」 ヒィン───バシャアッ!! 彰利 『いぎっ!?ぎ、ぎぃやああああああっ!!!!』 斬撃の閃きが虎の爪のように分かれ、彰利の体に大きな斬痕を残す。 その痕は焼かれ、その威力が窺え知れた。 夜華 「赤亀奥義!烈震走翔刃!!」 ゴォッ───ザシャアアアアアアアッ!!!! 放たれた、燃え盛る地走りの刀気。 彰利 『調子に乗るんじゃありませんよぉーーーっ!!?』 だが彰利はその地走りに突っ込み、篠瀬へと向かう。 が、それを予想していたかのように、篠瀬には攻撃への準備が整っていた。 彰利 『ア、アレーッ!?』 夜華 「最終奥義───」 空気が凍る。 ……いや、あまりの刀気に、そう感じるだけだ。 が、その威圧感は相当だ。 彰利 『う、うおおーーーっ!!止まれーーーん!!!』 勢いよく踏み込みすぎた彰利に待っていたのは、無防備な状態への最終奥義だった─── 夜華 「四聖刀覇-乱れ紅葉-!!」 それは恐らく、四つの奥義をひとつの刀気としたものだった。 刀は篠瀬の気迫に応えるように走り、 風さえも切り裂くその斬撃は『斬る』という概念より─── ゾボッ───ッッパァアアアアアアン!!!! 彰利 『が───っ……ぐはあああああああっ!!!!』 ……そう。 刀自体が『破壊』と化し、対象を『斬る』のではなく『斬り飛ばした』。 空へと吹き飛ばされた彰利は、 あまりの威力のために脱力し、あとは地面に叩きつけられるだけ。 だが───それだけでは終わらなかった。 夜華 「これで終わるか!四聖刀覇-終の秘刀-!!」 吹き飛ばした彰利の落下地点へと合わせるように、 自己を発狂させんばかりの『限界を超えた疾走』をする。 夜華 「瞬速炎輪奥義───紅蓮鳳凰翼!!」 その無防備な体へ、最後の一撃を───ザギィッ!!バガァアアアアォォオオオン!!! 彰利 『───……』 凄まじい刀気。 その塊が彰利へと叩き込まれ、ソレは鳳凰となって勢いよく空へと飛翔した。 当然、彰利も。 夜華 「世界の果てで懺悔しろ。油断した時点で貴様の敗北は当然だった」 キンッ。 刀が鞘に納められる。 それとともに───篠瀬は気を失った。 椛  「夜華っ!!」 椛が倒れゆく篠瀬を転移して受け止め、すぐにこちらへと転移して戻ってくる。 声  《時間がかかりすぎだ、ばかっ!     お前らどれだけわたしに苦労させれば気が済むんだ!》 悠介 「す、すまんっ!けど間に合っただろ!?」 声  《1分なんてとっくに過ぎてる!精神の吸出しを長引かせているだけだ!!》 椛  「夜華、しっかり……!月生力……!」 夜華 「……つ……、は……」 椛が月生力を発動させると同時に、みるみる篠瀬の表情が落ち着いてくる。 それを確認してから、俺は『頼む』と言った。 声  《精神の呼び戻しを開始する》 途端、視界が眩い光に包まれた。 ようやく帰れるな……とか思うのも束の間。 彰利 『ふっしぎし〜ぎ〜・し〜ぎ〜し〜ぎ〜・フゥ〜マァ〜♪』 彰利が現れた。 だが、なにやらとことん意味が無さそうだ。 彰利 『フッ……夜華さん、貴様には負けたぜ……。     まさか生身の体のくせにあそこまで出来るとは思わなんだ……』 夜華 「うるさい、お前の話なんて聞きたくない」 彰利 『フッ……敗者は多くを語らずか……それもいいでしょう』 椛  「おとうさん……」 彰利 『三人とも、わざわざのお越し、痛みいる。助かりましたじゃ。     けど、レオが言ってたのは本当だ。俺はいずれ、レオに意識を奪われる。     そうなった時は……ま、子供の俺が言った通りだ。     今ここでこうやって話してる俺の記憶は主には届かないから先に言っておく。     ……助かった。サンキュ』 それだけだった。 本当にそれだけ言うと、彰利は光の中から姿を消した。 ───……。 悠介 「……んあ?」 目を覚ました先には石で出来た天井。 リヴァ「戻ったか」 リヴァイアが居ることからして、実体に戻ってこれたようだ。 悠介 「うお……頭痛ぇ……」 リヴァ「長く潜りすぎだ、ばか。     シェイドと精霊のサポートが無かったら飲み込まれてたぞ」 悠介 「精霊?」 ふと、部屋を見渡してみると、疲れきっている男を発見。 遥一郎「あー……もう御免だ……こんなことは……」 リヴァ「そう言うなよ。お前の精神干渉能力は放置するにはもったいない」 遥一郎「だからってな、ずっと全力で精霊力の発動させるのって無茶だと思うんだ、俺は」 リヴァ「なんだよ、成功したんだから腐るな」 遥一郎「……合理主義者め」 リヴァ「いい誉め言葉だ。ほら、しばらく休んでろ」 遥一郎「アイアイサー……」 ぼてっ。 精霊と呼ばれた男は倒れ、すぐに気を失ってしまった。 悠介 「大丈夫なのか?」 リヴァ「精霊としての力を使いすぎただけだ。寝てれば時間の経過とともに回復する」 悠介 「そっか、そりゃなによりだ」 俺達を助けたことであんなになって、しかも治らないってゆうなら相当に考えものだった。 いらない危惧だったみたいで、ほんとになによりだ。 悠介 「でも正直……俺ももう御免だ……」 起こしていた体をもう一度寝かせた。 いや、ちょっと冗談じゃないほどに疲れた。 精神世界の彰利は強過ぎだ。 さっきはあいつが遊んでたから勝てたけど、 本気になられたらあっと言う間もなくやられてただろう。 それだけ、実力の差があった。 悠介 「しっかし、まいった……」 相手に創造の理力を使われると対処に困る。 どう戦えばいいかなんてまるっきり解らなかった。 しかも相手が彰利とくれば、これほど嫌な相手は居ない。 いつかあいつの中の死神…… レオ=フォルセティーが目覚めたら、こんなものじゃ済まないのかもしれない。 悠介 「……妙なネーミングセンスだ」 俺が彰利の精神世界に居るわけじゃないんだから、創造の理力は使えないけど…… 普通に戦って勝てる気はしなかった。 向き合ってみればそれくらいは解る。 リヴァ「なにぶつくさ言ってるんだ。精神介入はそれだけで疲れるんだから眠っておけ」 悠介 「む……ああ、そうさせてもらうよ」 悪態をつくように言って、目を閉じた。 どちらにしろ疲れているのは確かだ。 ふと見てみれば、椛も篠瀬も眠ったままだ。 一瞬嫌な予感がしたけど─── リヴァ「寝ているだけだ。心配するな」 その言葉が、俺を安心へと導いた。 それで気が抜けたんだと思う。 俺の意識はあっさりと途切れ、深い眠りへと誘われた─── 彰利 「う、むむ……」 意識覚醒を確認。 自己生存を確認。 痛個所───該当無し。 彰利 「む、むおお……」 状態良好。 心音安定、脈拍正常。 月操力………………安定、オールグリーン。 すぐにでも使用出来る。 彰利 「む?ここは何処ぞ?」 最初に見えたのは丸っこい電灯。 で、アタイはその下で寝かされていた。 ……何故か()で。 彰利 「ま、まさか謎の地球外知的生命体がアタイを拉致って改造を……!?」 リヴァ「そんなわけがあるか」 彰利 「キャーッ!?」 体を起こして、自分なりに状況把握をしていたところへリヴァちゃんのツッコミ。 いや、それよりも─── 彰利 「あ、あの……アタイ、どうしてか()なんだけど……」 リヴァ「ああ、わたしがやった」 彰利 「!……ひ、ひどい……!初めてだったのに、アタイの意識の無いうちに……!」 リヴァ「そりゃあ初めてだろう。そうそう体験できるものじゃないからな」 彰利 「キャア!?否定してくれないの!?うわーんアタイ汚されちゃったぁーーっ!」 リヴァ「自分の精神に他者が入り込むなんて、     地界の技術じゃあ……って聞いてるのか検察官」 彰利 「イヤァ!触らないでケダモノ!!粉雪になんて言えばいいのよバカーッ!!」 リヴァ「……なんの話だ?」 彰利 「何処!?アタイの着替えは何処なのよぅ!」 リヴァ「……そこだけど」 リヴァちゃんが顎でそこを促す。 で、その先には─── 彰利 「……なにコレ」 リヴァ「服だ」 彰利 「コレ、普通は着ぐるみって言うんじゃないの?」 リヴァ「仕方が無いだろ。     精神介入の時にお前が暴れた所為で、服はボロボロだったんだ」 彰利 「グ、グウム……」 だが贅沢も言ってられんか。 裸で居るよりはマシだ。 ───パッパカペー! 彰利 「イエイ」 アタイは着ぐるみに身を包んでいた。 いや、なかなかほくほくとしてアツアツで暖かくて着心地もナイスです。 彰利 「ところでコレ、なんの着ぐるみ?」 リヴァ「それはシェイドが用意したんだ。わたしに訊かれたって知るもんか」 彰利 「グウウ……ムムウ……」 なにやらドラえもんに似ているようで微妙に違うというかなんというか……。 まあいいコテ。 嫌な着ぐるみじゃあなぎゃあも。 彰利 「よし、それでは今から俺は謎の偽・猫型ロボぐるみ、『鑼衛門(ドラえもん)』ぞ」 うむ、これで最強。 やはり何かに身を包む時は偽名が必要ですよね。 鑼衛門「で、リヴァちゃんや?ここ何処?     アタイ、あのなんたらカンパニーに行かなきゃならんのだけど」 リヴァ「そこから出れる。待っていろ、今空間を繋げる」 リヴァちゃんが何かしらの呪文を唱えると扉がパパァアと光った。 あの扉はパパだったのか。 鑼衛門「……意味が解らん」 リヴァ「……?なんのことか知らないけど空間が繋がったぞ。行くなら行け」 鑼衛門「御意」 ヒタヒタと歩き、扉へ……って 鑼衛門「あの、リヴァちゃんや?この鑼衛門スーツ、何故かヒタヒタ鳴るんですけど」 リヴァ「だから。わたしに訊かれたってしょうがない」 鑼衛門「グウム……でもいいや、なんか気に入った」 ヒタヒタヒタ……ガチャッ─── 鑼衛門「それではリヴァちゃん、チェリオ〜♪」 リヴァ「ああ」 リヴァちゃんの気の無い返事に見送られ、アタイはどこでもドアを開けたのでした。 ゴシャア。 ティーセットらしきものがクソ長い廊下に落ちた。 目の前にはおなご。 で、アタイは廊下にダイレクトに現れた。 扉を閉めてみれば、その扉はあっさりと消えて無くなり─── アタイはちと状況に苦しんでいた。 だが─── 鑼衛門「やあ!ぼく鑼衛門です!」 おなご「きゃあーーーっ!!!」 鑼衛門「ややっ!?待ちなさい!自己紹介したのに逃げ出すとは何事か!」 とか言ってる内に視界から遠ざかっていってしまったおなご。 なんたる速さよ。 鑼衛門「グムーー……状況に苦しむより、楽しんだ方がいいと思って名乗ったのに」 なにも逃げ出すこたぁないじゃない。 いくらアタイでもちょっとセンチメンタルよ? 鑼衛門「まあいいコテ、さっきのでリヴァちゃんの居る空間は把握出来た。     あそこを四次元ポケット変わりにして盗みまくろう」 うむ。 鑼衛門「あったまテッカ・テ〜ッカ♪ハ〜ゲてピッカ・ピ〜カ♪     み〜ごとツ〜ル・ツ〜ル♪ぼくどらえ〜も〜ん〜♪     次元のせか〜いの〜♪タオチェイロボォットォ〜♪     ど〜んなもんだいぼ〜く♪ど〜らぁえ〜も〜ん〜♪───ややっ!?」 廊下に飾られた絵画を発見! 鑼衛門「四次元ポケットォ〜♪」 で〜っけて〜って・てけてて〜ん♪ドン、トン♪ 鑼衛門「……なにやら音楽がキテレツになった気がするが、     音楽を忘れてしまったんならどうしようもない。さてと、物色物色……」 アタイは絵画を外して、 それを四次元ポケット(ポケットの中はリヴァちゃん空間に繋げてある)へ…… 鑼衛門「おっ……こ、む……?さ、さすがに構造上に無理があるか……?」 デカい絵画なため、まずポケットに入らない。 むう、どうしたもんか。 このまま転移させるって手もあるけど、それじゃあ鑼衛門らしくない。 だがしかし、モノを小さくする能力なんて家系には無いしなぁ。 スモールライトでもあればよかったんだが。 おなご「ほ、本当なの!さっきそこでドラえもんに……!」 おなご「夢でも見たんでしょ?そんなのが実際に居るわけ居たァーーーッ!!!」 鑼衛門「ややっ!?何者!?」 突然の奇声に振り向いてみれば、 先ほどの無礼なおなごがもうひとりのおなごを連れてやってくるところだった。 おなご「あ、あの……ドラえもん……?」 鑼衛門「如何にも!我輩、紛う事無き鑼衛門ナリよ!」 おなご「喋り方がコロ助だけど……」 鑼衛門「アニメと現実(リアル)をごちゃまぜにしちゃあいけねぇナリよ、お嬢さん」 おなご「は、はあ……」 鑼衛門「どころでぼく鑼衛門になんの用ナリか?事と次第によっちゃあ助力するナリよ」 おなご「は、はい!あの……さっき何処でもドアを使ってましたよね!?」 鑼衛門「如何にも!我輩、鑼衛門ナリからね!それくらいはお茶の子さいさいナリ!」 おなご「そうですよね!それであの、お願いがあるんですけど……。     わたしを屋敷の外に連れていってくれませんか!?」 鑼衛門「何故かね?」 おなご「仕事が仕事なだけに、彼氏を作る機会がなくて……。     だから、門から外に出ない限りは屋敷の中に居るって思われるから、その……」 ……ムウ! 鑼衛門「却下ナリ!」 おなご「えぇっ!?どうしてですか!?」 鑼衛門「不純!あまりに不純!そのようなことでは我輩の心は動かないナリ!     そんな軟派な心構えでこの乱世を生き抜こうなど……片腹痛いわ!」 おなご「うう……訳がわからないよぅ……」 鑼衛門「えーがらえーがら!貴様はちょっと席を外しなさい!」 おなご「うう……」 おなご1、退場。 鑼衛門「して、おなご2よ。我輩にどのような用ナリか?」 おなご「何処でもドアをください!」 鑼衛門「むむ……それはまた強欲な……。して?どのような用途とする気ナリか?」 おなご「えへへへへ……そりゃもう、若くてカワイイ男の子を攫って調教を」 鑼衛門「サミング!」 ボゴシャア!! おなご「うきゅうっ!?」 鑼衛門「ゲェーーッ!?」 おなごがゴシャーと廊下の絨毯を滑った。 鑼衛門「アイヤー!シマターッ!!     ドラえもんハンドだからサミングなんて出来ねぇんだったーーーっ!!!」 見事な右ストレートが極まってしまった……! 鑼衛門「と、とにかく!そげな不純な動機の輩に渡すアイテムなぞ無いナリ!」 とにかくここは逃げた方が良さそうだ。 えーと、この絵画は諦めよう。 壁にかけて、と…… おなご「司令塔!司令塔!こちらセコンド・ワン!屋敷に暴漢が」 鑼衛門「ゲェエーーーーッ!!!」 いきなりそれですか!? さっきまで助力を求めてたくせに! 鑼衛門「とんずらぁーーーっ!!!」 おなご「あっ!」 もう付き合ってられません! こうなったら逃げながら小さな金目のモノを奪うまでよ! …………。 気づけば世界は暗かった。 どこかで鳴いているフクロウのような声を耳にしながら、 俺は適当な部屋に案内され、一日を終わらせようとしていた。 凍弥 「……結局会えなかったな」 進めば進む度に強固なものになる警備。 当然といえば当然なのだが、もちろんそれは自分にとっていい方向には進まない。 凍弥 「けど、『侵入者』に部屋を用意するなんて随分風変わりな親だ」 俺は少々呆れている。 志摩兄弟と納得がいくまで話せれば俺も素直に帰るっていうのに。 まあその、返答次第によっては木刀を振りかざして強引に連れ戻すわけだけど。 凍弥 「……ん」 降りてきた瞼に逆らわずに目を閉じる。 まもなく津波のような睡魔が襲いかかり、俺は眠りについた。 『明日こそはあいつらに会えるように』なんて考えを抱きながら。 Next Menu back