───偽神(ゴット)・鑼衛門───
───……。 ホーホー……ホー…… 鑼衛門「………成敗」 冥月刀を納めて呟いた。 鑼衛門「あ〜、すまん、早く良くなってくれ」 倒れているおなごに謝罪をひとつ。 刀背打ち(むねうち)とはいえ、おなごを攻撃するのは心苦しい。 ……ホーホー……ホー…… 鑼衛門「しっかし、もうすっかり夜だねィェ〜。     寝る場所も無いアタイにとっちゃ、少々辛かとよ。     フクロウも鳴いてるし、アタイもどっかで寝た方が良さそうじゃよね……」 でも不思議と眠気は無いんどすよね。 なんか、随分と長い間寝てたような気がするし。 うーむ、不思議だ。 鑼衛門「どうしたもんかね。     このままうろついてても見回りのヤツがうろうろしているだけだし」 これ以上おなごに攻撃を加えるなんてとてもとても。 鑼衛門「ってわけで……適当に部屋へ寄生しませう。それが最良!」 というわけでガチャアと。 おなご「………」 浩介 「……な」 ……えーと……双子の片割れ発見。 何故この屋敷に居るのかは謎だが……ベッドに座る男とおなご。 それだけで、如何にアタイが場違いな存在なのかなど、考えるまでもない。 鑼衛門「お、お楽しみ中だったナリか!これは我輩失敗ナリ!失礼するナリよ!」 浩介 「ま、待て貴様!なにを勘違いしている!我はただ」 鑼衛門「黙るナリモテ夫くん!     もはやアタイはメイドさんなんて……メイドさんなんてなぁ……っ!!     うぉおおおおおおお!!!ちぃっくしょおおおおおおい!!!!」 アタイは涙を散らしながら……っ言っても着ぐるみ内部だから誰にも解らないが、 とにかく涙を散らしながら部屋を飛び出た。 追ってこようとする双子の片割れの行く手を阻むようにドアを勢い良く─── いや、夜にそんなことやったら寝ている人に失礼よね? というわけで、そっと閉めた。 パタン、と。 が、その行為も虚しく、そのドアは勢いよく開け放たれてしまう。 浩介 「待て!貴様が誰かは知らぬが、     我は誤解されたまま逃げられるのが一番嫌いなのだ!」 鑼衛門「滅相も無い!誤解もなにも、貴様が愛を育もうとしていたことなど一目瞭然!     おなごに恥をかかせるじゃねぇナリ!!解ったらとっととベッドに戻れ!」 浩介 「な、なにをこの───ぬおっ!?」 鑼衛門「どぉっせぇえええええい!!!!!」 浩介 「お、おわぁーーーっ!!!」 双子の片割れを持ち上げ、豪華な部屋の豪華なベッド目掛けて投擲した。 で、ボスンと顔面から着地する双子の片割れ。 浩介 「ぶはっ!き、貴様ぁっ!!」 鑼衛門「とんずらぁーーーっ!!!!!」 それを確認した刹那!アタイは地を蹴って跳ねるチーターの如く逃走した! ……まあ、走る音が『ヒタタタタタ……』という、なんとも情けない音なのは伏せるが。 ───ガチャ、バタン!! 鑼衛門「ふーは、ふーは……」 適当な部屋へ潜り込み、辺りを窺う。 見たところ、生活感があるような部屋には見えんが…… てゆうか、こう暗くちゃなんともしがたいな。 声  「誰だ」 パッ!パパッ! 鑼衛門「むう!?」 突如瞬く光! それはまるでアタイを包囲したことを告げるかのようにアタイを照らした! 浩之 「あ、が、がが……」 鑼衛門「………」 で、視線の先には双子の片割れ2。 なにやらアタイを見てブルブルと震えておるが……ああ。 そういや挨拶がまだじゃったね。 鑼衛門「ぼく鑼衛門です」 浩之 「うそつけ!」 鑼衛門「うそ!?なにをぬかすナリか貴様!どう見たって鑼衛門ナリよ!?」 浩之 「それは着ぐるみだろう!我は騙されぬぞ!」 鑼衛門「なにぃ!?バカな!騙すもなにも我輩は鑼衛門ナリ!     貴様こそ鑼衛門をナメるなナリ!」 浩之 「……何が目的でこの部屋に来た」 鑼衛門「この部屋を───我輩、鑼衛門の部屋とするナリ」 浩之 「なに!?」 鑼衛門「反論は許さないナリ。鑼衛門の言葉は絶対ナリ。だからとっとと出てゆくナリ」 浩之 「断る」 鑼衛門「……ィヤッハッハッハッハ!!!そう来ると思っていたナリ!!」 俺もそう言うだろうし。 まあいいコテ。 鑼衛門「そんじゃ適当に寝かせてくれナリ。雑魚寝でもいいんだナリ」 浩之 「許可すると思ってるのか」 鑼衛門「む?ダメだというナリか?……ッチィ、なにが望みナリか」 浩之 「いきなり取引か?」 鑼衛門「馬鹿野郎、我輩は寝たいナリ。だから願いを言えナリ。     どんな願いでも可能な限りひとつだけ叶えてやるナリ」 浩之 「………」 片割れ2が一瞬口篭もる。 その様子からして……ウム、交換条件ならばこの部屋が頂けそうじゃわい。 鑼衛門「さあ!願いを言え!」 浩之 「その着ぐるみをよこせ」 鑼衛門「なっ……」 馬鹿な……こいつ本気で言ってるのか!? 鑼衛門「貴様っ!それは我輩に鑼衛門をやめろって言うナリか!?」 浩之 「やりたいことが済めば、すぐに返す。     我はどうしてもブラザーとともにやらなければならぬことがあるのだ」 鑼衛門「ブラザー?おおあのエロ男か」 浩之 「エロ、男……?貴様、ブラザーを侮辱する気か……!」 鑼衛門「いやいやまあまあ落ち着くナリよ。あの男ならば先ほど発見した」 浩之 「なに!?それで、どうしていたのだ!?」 鑼衛門「一緒に居たおなごとナイトランデヴーをする一歩手前……といったところナリ」 浩之 「!!」 おお、驚いとる驚いとる。 浩之 「まさかブラザー……シルフィーに……!?」 鑼衛門「そのシルフィーってのが誰かは知らねぇナリが、紛う事無き事実ナリよ?」 浩之 「───お、おぉぉおぉぉぉんのれブラザァアァァァア〜〜……!!     我がどうにかして脱出を考えていれば……!!」 鑼衛門「辛い裏切りナリね……。     で?そげな事実を知ってもまだ、この鑼衛門スーツを欲するナリか?」 浩之 「……欲する。ブラザーの部屋に乗り込んで一撃でもいれてくれる……!」 鑼衛門「……うむ。その復讐心、確かに受け取った。     では───テイキングオフ!!」 アタイは華麗に飛び、脱衣を───…… 鑼衛門「………」 浩之 「………?」 あ、あら……おかしいな。 ここらへんにチャックがあった筈なのに……。 鑼衛門「アレ?アレアレェッ!?」 浩之 「……なにをしているのだ?」 鑼衛門「───いやーん!!」 ま、またなの!?またなのか!? どうして!?何故!?何故なのグレース!! 鑼衛門「うっ……うう……」 いや……ね。 『着ぐるみ』って時点で予想はしてたけど……さぁ。 鑼衛門「うっ……うっうっ……」 浩之 「な、なんだ貴様……何を泣く」 脱げねぇ……。 脱げねぇんだよコレがさぁ……。 俺、着ぐるみに恨まれること、何かしたかなぁ……。 鑼衛門「……脱げねぇナリよ……」 浩之 「……それはまた、なんとも……」 俺の様子を察してくれたのか、片割れ2はなんとも悲しそうな顔をした。 くそう、同情するなら金をくれって言いたくなる状況じゃわい……。 鑼衛門「……てわけで、譲ることは不可能ナリ……。     だが一度頷いたことは守るのが主義。     貴様の願いは叶えよう。というわけで───行くナリよ!」 浩之 「なに……?何処へだ」 鑼衛門「何処って……双子(兄)に会いに行くんじゃねぇナリか?」 浩之 「そうだが……部屋の外には見回りが……」 鑼衛門「何を言っておるのだ。警備などは眠らせればいい」 浩之 「眠らせる?当身かなにかでか?」 鑼衛門「野蛮。実に野蛮。そのような行為は野蛮以外のなにものにもあらず。     私はかつての過去で『神』と呼ばれた存在。     手など使わずとも敵を眠らせるなど容易い」 浩之 「………神?」 しこたま胡散臭そうにアタイを見る片割れ2. 鑼衛門「ィヤッハッハッハッハ!!!そう、私は偽神だ!     だが神にも勝てるほどの実力はあるつもりナリ!     というわけで行くナリよ?私の力をもってすれば、簡単に眠らせられる」 浩之 「あ、ああ……」 さあ!ミッションスタート! ───ババッ! 鑼衛門「あたぁっ!」 コキンッ! おなご「きゅっ!?」 おなごをチョークスリーパーで堕とし、ヒタヒタと廊下を突き進む。 浩之 「お、おい……!攻撃しなくても眠らせられるのではなかったのか……!?」 鑼衛門「ィヤッハッハッハッハ!!     再び能力を使って激痛に襲われるのは嫌ではないか!     というわけで少ない労力で静かに進むのが吉なのだ!     ───と言ってるそばからそこぉっ!」 ヒュオッ!ドゴォン! おなご「うきゃあああああっ!!!!」 どしゃしゃあああ!!! 指で弾き飛ばしたチョークが通信機に手をかけたおなごの額にメガヒット!! 鑼衛門「これぞマー先生流闘技・チョークブラスト!」 ───説明しよう! マー先生流闘技・チョークブラストとは、チョークに月壊力を込めて、 家系の物理的な力を持って思い切り弾くことにより、対象を吹き飛ばす技なり! 危険だから絶対に真似しちゃならねぇ! 浩之 「あぁあ……彩峰が……」 鑼衛門「ィヤッハッハッハッハ!!仲間を呼ぼうとするヤツは容赦せん!!     他者がこの場に現れるは無粋!あまりに無粋!」 ちなみに『マー先生』とは『火山高』に出ている最強教師のことである。 チョーク投げで対象を吹き飛ばすその力は、 他者の追随を許さぬ強者っぷりを見せつけている。 おなご「そこに居るのは誰ですか〜?」 鑼衛門「むむっ!?何奴!?」 おなご「あらあら〜司令塔さん〜?こちら菜苗でございます〜」 むう!また通信おなごか! あんまりしつこいと容赦しませんことよ!? 鑼衛門「五百万……一千万……二千万……!」 おなご「はい〜?」 鑼衛門「ニ千万ボルトォ!」 ガカッ───バチッ、バチバチバチィッ!!! 鑼衛門「ィヤッハッハッハァッ!荒れ狂え月鳴力!“神の裁き”(エル・トール)!!」 浩之 「うえっ!?よ、避けろ菜苗さん!!」 菜苗とやらの頭上に青白い光が収縮する。 菜苗とやらは何がなんだか解らずにその光を見上げるだけだった。 菜苗 「まあ〜、綺麗ですね〜」 ……てゆうか何がなんだか解ってないようで。 ギガァッ───バシャァアアアアアアアアン!!!!! 菜苗 「───……」 浩之 「菜苗さぁあああああんっ!!!」 菜苗とやらに光が降り注ぐと、その場には何も残らなかった。 浩之 「な……っ……貴様ァッ!!」 鑼衛門「ん……?なんだ」 浩之 「なんてことを……!菜苗さんがなにをした!」 鑼衛門「この場に他者を呼ぶはあまりに無粋というもの。そう言った筈だが?     それと貴様は何か勘違いをしているようだ。     あのおなごは転移させただけだ。     『月鳴力』と言えば、雰囲気も出るというものだろう」 浩之 「な……?わ、わけが解らんが……つまり、菜苗は無事なんだな……?」 鑼衛門「当たり前だ。私はおなごを屠るような真似はせん。     ……否。やろうとしたところで出来ぬのだ。     体が拒絶反応を起こしてな。     殺す気で放っていれば、自我が崩壊していたところだ」 浩之 「……そう、なのか。なんにせよ、安心した……」 鑼衛門「ィヤッハッハッハッハ!!さあ行くとしようか!     片割れ(兄)と謎のメイドが愛を育みし楽園へ!」 浩之 「………」 ヒタヒタと歩き、やがてあの扉が見えてくる。 その扉の前に立ち、扉に耳を当てて様子を探る。 鑼衛門「むうう……」 浩之 「……なにをしているのだ。さっさと入るぞ」 鑼衛門「無粋。あまりに無粋。愛を育む男女の邪魔をするのは(まか)り為らんぞ」 浩之 「そういうわけにもゆくまい。開けるぞ」 鑼衛門「なに……!?させると思っているのか」 浩之 「する。邪魔だ。願いを叶えると言ったのは貴様だ」 鑼衛門「───ィヤッハ……。ィヤァッハッハッハッハッハァッ!!!     そうだな!願いを叶えると言ったな!     だがこの場所に辿り着いた時点でその願いが叶ったことが解らぬか!」 浩之 「……なんのつもりだ」 鑼衛門「ィヤッハ……訊くだけ無粋よ。
覗き見する」 浩之 「お前……」 むう、人外魔境を見るような目で見られるとは心外。 私は己の欲求に純粋に生きているだけなのだがな。 ───ガチャッ。 浩介 「誰だ……ってお前!」 鑼衛門「ん……?なんだ、もう見つかってしまったのか……」 浩之 「あれだけ騒げば見つかるのは当たり前だ!」 鑼衛門「ィヤァッハッハッハッハッハッハァッ!!だが見よ!片割れに会えたぞォ!」 浩介 「む……ブラザー!」 浩之 「おおブラザー!」 鑼衛門「おい貴様。激しくラヴってたおなごはどうした」 浩介 「ラヴってねぇっ!!」 鑼衛門「貴様。神である私にタメ口を叩くか。そもそも口調が変わっているぞ貴様。     ぼく鑼衛門にも堪忍袋が存在することを忘れるな」 浩介 「俺は元々こういう口調だ!お前の堪忍袋なんて知ったことじゃないっ!!」 鑼衛門「───不届き」 しゃらん、と冥月刀を構える。 鑼衛門「所詮、神と人間とでは相容れぬもの。     貴様らの願いを叶えようとしたことがそもそもの間違いだったのだ。     滅びよ!不浄なる不届き者らよ!一億ボルト……“放電”(ヴァーリー)!!」 ギガァッ!!バチッ、ガガガガ……ッ!!! 浩介 「なっ……なんだこいつは!ドラえもんのくせに!」 浩之 「い、いや、落ち着けブラザー!これは『転移』とやらの光で」 ドスッ。 鑼衛門「おひゃあっ!?な、何者───ってキャーッ!?」 誰!?今誰かに脇腹へ地獄突きをされた! で、集中力が途切れた途端、頭上に発現させた雷光が落ちドバシャアアアアアン!!!! 鑼衛門「あばぎゃぎゃぎゃぁああああああああっ!!!!     あぁああああああああっ!!!ぎゃあああああああっ!!!!     みぎゃあああああああああああああああああ!!!!!!!」 浩之 「うっ───わっ!?うわああああああっ!!!」 浩介 「馬鹿かこいつは!自分で出した雷をくらうなど───!!」 浩之 「転移ではなかったのか!?馬鹿な!というか馬鹿だ!」 体がハジケる! 生温いのに熱くて冷たくて痛くて……ギ、ギィイイーーーッ!!!! 鑼衛門「静まれェイ!!」 バツゥン!! 鑼衛門「げ、げはーっ!げはっ……!はぁっ……!」 雷光を遮断し、なんとか一命を取り止めた。 ……あー、ヤバかったぁ……。 鑼衛門「で……誰だ貴様は……。神の行動を邪魔する貴様は……」 おなご「わたしは浩介さまの使用人のラチェット=シルフィートと申します」 鑼衛門「メイドか」 シルフ「使用人です」 鑼衛門「どちらにせよ私はもうメイドなどは信じぬ。     貴様が如何に邪魔をしようとも、私の邪魔をする者は───」 シルフ「邪魔をする気はありません。     ですが浩介さまに危害を加えるのであれば、それ相応の抵抗はさせて頂きます」 鑼衛門「抵抗……?ィヤッハッハッハッハッハ!神に抵抗とは……!     ィヤァッハッハッハッハッハァッ!!!」 浩介 「……神だって言うならもっと神らしい笑い方してみろ」 鑼衛門「ィヤッハ……この笑い方が気に入れぬ輩は人間ではない」 浩之 「それは極論中の極論だと思うが」 鑼衛門「極論などは問題ではないのだ。     人として意見がある以上、言葉とは全てが極論となるものなのだ」 浩介 「……なぁブラザー。こいつは何がしたいんだ?」 浩之 「それは我が訊きたいくらいだ」 シルフ「見るに、目的を忘れているだけのようです」 志摩 『あ……あ〜あ、そっかそっかぁ……』 むう、なにやらとても失礼な視線を受けておりもうす。 なんだってんだチクショウ。 浩介 「で、貴様は何をしたいのだ」 鑼衛門「金目のモノを探している。鑼衛門として」 浩之 「この屋敷で金品強奪か……大胆だな、捕まるぞ」 鑼衛門「実に愚に等しい忠告だ……。     この屋敷にはもう敵と呼べる存在など皆無だ」 浩介 「馬鹿な。この屋敷にはオチットさんに加え、     最強の破壊神……葉香さんまで居るのだぞ」 鑼衛門「もう屠った」 志摩&シルフ『えぇっ!?』 ィヤッハッハ、驚いておるわ。 まぁ無理もない、魔王ヨウカンは実際強かったし。 鑼衛門「私を誰だと思っている。至高にして絶対なる神、鑼衛門だぞ」 浩介 「……ドラえもんは神ではないと思うが」 鑼衛門「お黙り!ちゃんと偽神だと言っただろうが!だが神より優れた偽神!     何者にも負けぬ我が世界は実に愉快!───だといいんだが」 浩之 「む?」 鑼衛門「ああいや、なんでもねぇザマス。     まぁとにかく、ぼく鑼衛門にはもう用はないのだな?」 浩介 「無い、な」 鑼衛門「そうナリか。では我輩は金品探しに行くとするナリよ」 浩介 「おお頑張れ。こんな屋敷潰してしまえ」 シルフ「浩介さま、それは跡取りとして言うべきことでは」 べしんっ! シルフ「いたっ!」 浩介 「やーかーまーしーいっ!!     その淡々とした喋り方はやめろってさっきから言ってるだろうが!」 シルフ「で、ですがわたしは浩介さまに仕える使用人で……」 浩介 「使用人である前に幼馴染だろうが!     知人に敬語使われることほど腹が立つことはない!!」 鑼衛門「でも野微太(のびた)くん。     だからっていきなりおなごの額にデコピンはヒドイってゆうか非道いよ?」 浩介 「うるさい、これは俺とシルフィーの問題だ。お前には関係無い」 ンマッ!なんたる態度! もう絶対許せないザマス! でも喧嘩はよくないよね、鑼衛門として。 鑼衛門「……おいおい、野微太の野郎あんなこと言ってるぜ邪威闇(ジャイアン)……」 浩之 「誰が邪威闇だ」 鑼衛門「………」 素で返されてしまった。 『鑼衛門らしい喋り方をしろ』ってツッコまれたかったのに。 鑼衛門「ところでサ、この屋敷で大切にされてそうなものを知らないかね?     むしろそういうモノに挑みたいし」 浩之 「大切にしているものか……悪いな、見当がつかぬ。     なにせ、我が住んでいた屋敷とは勝手が違うのでな。     一ヶ月も住んでおらぬのに、そうそう解るわけもない」 鑼衛門「グウム……言われてみればそうやもしれん。     まあいいコテ、大きな部屋をかたっぱしから探索してみるさね」 浩之 「うむ、健闘を祈る」 鑼衛門「態度太いぞてめぇ、この鑼衛門さまに向かって」 浩之 「知ったことではない」 なにはともあれ、これでまだ寝るわけにはいかなくなったな。 いや、別に寝てもいいんだけど。 ───よし、メイさんのところに行って寝ますか。 ガチャア。 おなご「え……?」 鑼衛門「ややっ!?」 おなご「きゃぁあーーーっ!!!」 鑼衛門「ゲェエーーーッ!!?」 適当にドアを開けた先には着替え中のおなご! な、なんで!?どうなってんの!? おなご「きゃーーーっ!!きゃああああーーーっ!!!」 鑼衛門「キャーッ!!キャーーーッ!!!」 おなご「きゃあああーーっ!!!」 鑼衛門「キャアアーーーッ!!」 おんご「うわぁあああん!!誰よあなたぁああっ!!」 鑼衛門「ぼく鑼衛門です。てゆうかごめんなさいごめんなさい!     純粋に部屋間違えただけなんです!てゆうか道に迷ったんです!!     なんなんですかこの屋敷!広過ぎて呆れます!」 おなご「出てってよ!出てってよぉっ!」 鑼衛門「す、すんづれいすますたぁーーっ!!!」 ムウウ!!おなごにマジ泣きされては為す術なし! 全力で部屋を出るほかありませぬ! ええいちくしょう!なんとハートブレイクなひとときでしょう! ペッペケペー。 鑼衛門「イエイ」 完全に道に迷いました。 ヤケクソにもなりませう。 鑼衛門「しっかしホントに無意味に広い屋敷だよなぁ……。     バイオハザードの世界じゃないだからさぁ、     もうちょっと普通に通れるようにしようよ……」 洋館であるそこは、なんとも面倒な場所でござった。 どこ行くにもドア、ドア、ドアでござる。 何度扉を開けたかなんざ覚えてませんよあたしゃあ。 どうせここもそうだろうって思って開けると、大抵メイドさんの部屋だったりするし。 お蔭でさまざまなメイドさんに変態として認識されてますよ? くそ、この鑼衛門さまともあろう者が……狙ってんのかちくしょう。 鑼衛門「鑼衛門さまが変態に祭り上げられてしまった……。     悪いのはこんな夜中に着替えなんぞしてるおなごと、広過ぎる屋敷なのに」 今ではいろいろなドアに『エロドラに注意』とかゆう張り紙がされてるし。 ひどいや……ぼくがなにをしたっていうんだい? そして通信早過ぎ。 鑼衛門「ま、これで人の部屋と別のフロアへのドアとの区別がつくというものぞ。     さっさと金目の物を頂きましょう。     そしてヘヴントゥエルブの『酢だこさん太郎』を買い占めるんだ」 一枚10円だから……400円もあれば買えませう。 というわけで…… 鑼衛門「……もしかして無駄骨?」 自分の時代に戻ればそれの数倍の貯蓄はあるし…… 鑼衛門「うお……またその場の勢いで厄介事に首突っ込んじまっただよ……。     オラってどうしてこう運がねぇダスかなぁ……」 でもそう言ってても仕方ないよね。 というわけで……よし!なにひとつ解らない! 鑼衛門「考え無しに忍びこんだからなぁ。指揮官を失った一般兵の気持ち、今なら解る。     ……解ったところでどうにもならんけど。     まぁアレだ、アタイがいくら騒いだところでドラえもんが迷惑するだけで、     彼に迷惑をかけることになるっつーことだよな?」 まあ夜は長いんだ、ゆっくり考えようや。 メイさんの部屋を探して寝かせてもらうのは、真に眠たくなった時だけで十分でせう。 それより、当面の問題は───ギャォオオオオ……!! 鑼衛門「むむっ!?大変よゴメス!魔物の咆哮が聞こえたわ!」 この屋敷、魔物を飼っているというの!? 信じられない!メイドロボだけじゃあ気が済まないというのね!? 鑼衛門「猛り咆哮したのは決してアタイの腹じゃねぇわよ!?     だからいくわよゴメス!魔物をやっつけるのよ!」 ???『え……?』 鑼衛門「ややっ!?」 ノリで振り向いてみれば、ひとりのおなごを発見ですSir(サー)! 鑼衛門「キミは……誰かね?」 ゴメス『ドラえもん……?』 おなごは人の質問に答えず、そう呟きおった。 無視はいかんよ無視は。 立派な大人になれません。 ───というのも、このおなごはまだ少し幼さの残るおなごでござった。 そして『ゴメス』を否定しなかったからゴメス決定。 鑼衛門「如何にも。我輩、鑼衛門ナリよ」 ゴメス『……わたし、真里菜……』 鑼衛門「ほほう、マリナという名でござるか。ぼく鑼衛門です」 真里菜『うん……さっき聞いたよ……?』 鑼衛門「うむ」 しかしゴメスじゃなかったのか。 ちと残念だが……この娘ッ子には似合わんし、忘れませう。 鑼衛門「して、どぎゃんしたのかね?このような時間に、おなごがひとりで」 真里菜『……どこに行けばいいか解らないの』 鑼衛門「む?貴様迷子か?」 真里菜『うん……だからね……?』 鑼衛門「あいや待たれい!ぼく鑼衛門も道に迷っている最中である!     だからぼく鑼衛門に付いてきたところで迷うこと必至!     故に同行はやめておきんさい!後悔することになりますよ!?」 真里菜『だからね……?』 鑼衛門「……聞いちゃいねぇ」 ちょっとショックだった。 鑼衛門「キミね、そんなこっちゃステキなガールになれませんことよ?」 真里菜『だから……お兄ちゃんを殺して道連れにしてやる!!』 鑼衛門「なんと!?」 それは突然のことでゴワした。 あげにめんこかったおなごの顔が悪霊が如き苦しげな表情へと変わり、 アタイの首を絞めてきたのでゴワス。 鑼衛門「馬鹿野郎!ぼく鑼衛門は既に迷っておると言っちょろーがオォ!?     解ったら離しなさい!     悪霊じゃあるまいし、空中に浮きながら人の首を絞めるんじゃありません!」 真里菜『うああああ!うああああああ!!!』 グギギギギ……!! ゲエ!すごい握力だ! これが子供のおなごの握力か!? すげぇや!この娘ッ子、花山さんに次ぐ天性の握力持ちに違いねぇ!! 鑼衛門「でも甘い!大甘よ真里菜さん!     あなたは手が小さいから、ぼく鑼衛門の首は絞めきれない!」 そもそも着ぐるみ着てるから絞められませんよ? ふはは、うかつじゃったねぇ!!! ズブブブ…… 鑼衛門「ややっ!?」 真里菜『くるしい……くるしいぃい……』 真里菜さんの手が着ぐるみに沈んできて、アタイの首を掴みおった! うおうイッツァ・マジックデース! 鑼衛門「ワーオ!素晴らしいです遊戯(ゲーム)ボーイ!ワタシ驚いたデース!」 ペガサス=J=クロフォードの真似をして拍手をくれてやった。 が、完全に無視して首を絞めてきてます。 でもやっぱり手が小さいから首を絞めきれてねぇでゴワス。 いやそもそも人の話を聞けっつーの! 鑼衛門「離せっつーのデース!!遊戯(ゲーム)ボーイ!     そのへんにしとかんとワタシ怒るぞこの野郎デース!!     離せデース小娘!離さないとヒドイデース!ワーオ!!     離せってのが聞こえねぇのかこの野郎デース遊戯ボーイ!!     離すデース偽ニンテンドウ!!ワーオデース!!WOW!!」 真里菜『くるしい……!うぅうう……!!』 鑼衛門「苦しいって……便所我慢してるんなら行ってきたらどうかね?」 真里菜『うあぁああああああ!!!!』 グギギ! 鑼衛門「ややっ!?これ真里菜さん!頚動脈はマズイよ!     便所行きてぇなら、ぼく鑼衛門に構ってる場合じゃなかろうがオォ!?」 真里菜『くるしい……!痛い……!わたしは静かに眠りたかっただけなのに……!』 鑼衛門「痛いとな!?最大級MAX便秘ですか!?     いかんぞ真里菜さん!便秘はおなごの天敵ですよ!」 真里菜『うあぁああああーーーっ!!!』 グギギギギ…… 鑼衛門「ゴゲゲェエーーーーッ!!!!」 なんてことだ……!当て推量で言った言葉がこんなにも彼女を傷つけていたなんて……! きっと図星だったなんだ……! ああっ……ぼくはなんてヒドイ人間なんだろう……! 初対面の女の子に『便秘』だなんて言うなんて……!! ぼくは最低だ……!最低の人間だよ……! 鑼衛門「さあ殴ってくれ……!キミの気が済むまで……!」 真里菜『うぅうううぁぁぁぁ……!!!』 ギリギリギリ 鑼衛門「ゴェエエーーーーッ!!!」 北野誠一郎くんの真似をしたが殴ってくることもなく、一層首を絞められました。 でもスゴイよね、この娘ッ子。 まさか、あげにめんこかった顔がこうも変異するだなんて。 グ、グムウウ……!!いかん……! 散ったと思われた『娘ッ子を抱き締めたい症候群』が……! 鑼衛門「アモゲェーーーッ!!!」 アタイはその衝動を必死に抑えた! ……抑えたけど、目の前におなごが居るんじゃ我慢も薄れませう。 がばしっ!───シェェエイ…… 鑼衛門「ゲゲッ!?」 抱き締めたと思ったおなごの体に、アタイの手が擦りぬけおった! 鑼衛門「……えーと」 つまり、さっきから声がブレてて、 しかも宙に浮いてアタイの首を絞めてるこの娘ッ子は…… 鑼衛門「オーウ!あなたはマジシャンだったのデスネー!?ワーオ!」 真里菜『うぁああああああ!!!!』 ギリギリギリ!! 鑼衛門「おわぁーーーっ!!!!」 フフフ、まいったな……また図星だったみてぇだ……。 でもさ、そんなに熱烈に頚動脈絞められると流石のアタイも…… 鑼衛門「我慢の限界!抱き締めっ!」 ぎゅむっ!! 真里菜『うあっ!?あ、あ……!?』 抱き締めた途端、娘ッ子の表情がさっきのめんこい顔に戻りもうした! 腹痛を抑えてあげようと、 月清力を手に込めながら抱き締めたのが効いてるのやもしれません! でもそんな顔されたら───おいどん、もう我慢は効きねぇでゴワス!! 鑼衛門「うおぉーーーっ!!ラブリィーーーーッ!!!」 真里菜『うあっ……あわっ……』 鑼衛門「ラ、ラ……ラブリィッ……!!」 真里菜『あわっ……わ……』 鑼衛門「うおーーっ!!ラブリィーーッ!!ちゅうーーーっ!!!」 真里菜『!!うわぁああああああん!!!』 あまりのめんこさに頬にぶっちゅしようとしたら本気で泣かれてしまった。 鑼衛門「ややっ!?なにを泣くのかね!」 真里菜『くるしいよぅ……もう解放されたいよぅ……パパ……ママぁ……』 スゥー…… 鑼衛門「ゲッ!?」 抱き締めていた筈の娘ッ子が……消えた!? 鑼衛門「えーと……」 え?じゃあなに? あげにめんこかったおなごの正体って…… 鑼衛門「───ぎゃあああああああ!!!!おばけぇぇええええっ!!!!」 なんてこと!おなごの正体はお化けだったのだ!! なんと勿体無い!じゃなくて!……アタイは……アタイは悲しい!! ガチャ!ガチャガチャガチャ!! 鑼衛門「むっ!?」 おなご「うるさい!今何時だと思ってるの!?」 おなご「さっきからぎゃあぎゃあぎゃあぎゃあ!!わたしたちは朝が早いのよ!?」 アタイの絶叫を聞いたおなご達がドアを開けて罵倒。 しかし…… おなご「……誰よあなた」 落ち着いたらしいひとりのおなごがそう言ってきもうした。 じゃけんど……アタイは娘ッ子の正体に驚いて、それどころじゃあなかった。 鑼衛門「お、おばけ……出たーー……」 おなご×6『寝惚けてんじゃないわよっ!!!!』 ボゴドスベキャボキャガンガンガン 鑼衛門「ギャアアーーーッ!!!!!」 おなご達はアタイの話もまともに聞かんと、 目覚ましやら置物やら、とにかく硬度の高いものばかりを投げてくる始末。 やがて、小さな熊の置物がぼく鑼衛門の黄金にメガヒットした刹那。 ぼく鑼衛門の意識は急激に消失したのでゴワした……。 Next Menu back