───バカップルVS偽神(ゴット)・鑼衛門───
───カチャ、カチャ…… 浩介 「……はぁ」 フェイ「どうした、食事中に溜め息など吐いて」 浩介 「作法に囚われた食べ方は疲れるって言いたいんだよ」 フェイ「気持ちは解らなくもないが、せめてこの屋敷に居る間くらいはそうしろ」 浩介 「『この屋敷に居る間は』?どうせ帰す気も無いくせに」 浩之 「まったくだ」 フェイ「………」 親父は溜め息も吐かずに、作法をちゃんとして料理を口に運ぶ。 だが我らはそうはいかなかった。 正直、既にどんな高級料理も美味いとは感じられない。 ただ『疲れる』。 それが優先された体内情報では、 こんな豪華なものを用意されたところで美味しく感じられるわけがない。 言葉もなく、ただ黙々と食べるだけなど息が詰まるというものだ。 浩介 「はぁ……学食の掻き揚げうどんが食いたいな」 浩之 「俺はとんこつラーメンが食いたいよ……。正直、喉に詰まる……」 フェイ「馬鹿を言うな。お前らにはこれから嫁探しをしてもらわなければならないんだ。     お前らはあと一年もしたら18だ。     レイヴナスの仕来たりとして、18になれば嫁を連れ添う必要がある。     放っておいたらいつまで経っても探さないだろう」 浩介 「俺は恋愛結婚ってやつをしてみたいんだ」 フェイ「却下だ」 浩之 「どうして。恋愛結婚でも、18までにすればいいんだろ?」 フェイ「……そもそもお前らに女が出来ているイメージが沸かない」 志摩 『……それでも親か貴様。少しはイメージしてくれ』 フェイ「そんなわけだ。恋愛しようとしてたらいつまで経っても結婚など無理だろう」 浩介 「無制限に失礼だぞ親父」 浩之 「貴様の血は何色だ」 フェイ「赤だが」 浩介 「赤!?赤とな!馬鹿め、血は『黄色』だ!     そこに鉄分が混ざって赤になっているだけだ!そんなことも解らんのか!」 フェイ「……それでも子か貴様。少しは捻くれた想像を控えてくれ」 志摩 『断る』 フェイ「………」 親父が黙った。 たまには言いたいことを言わないと疲れてしまう。 ……そもそもここに来た時点で疲れているが。 浩介 「それより親父、シルフィーのことを訊きたい」 フェイ「………」 浩之 「ああ、それは俺も気になる。     あのシルフィーが、なんだってあんなに冷たい表情になったんだ?」 フェイ「……お前達が家を出たからだろう」 浩介 「なに……?」 俺達が家を出たから……? フェイ「あいつはお前達のあとを付いて回ってたからな。     それだけで元気だったあいつを、俺も縛るつもりはなかった。     出来るだけ自由にしてやっていた。その方があいつも元気だったからだ。     だが───以前この街に滞在した時、お前らが逃げた。     それからだ。あいつが糸が切れたように感情を表に出さなくなったのは。     そのままにしていたら、本当にダメになってしまうだろう。     だから気を紛らわせるために使用人の仕事をやらせたんだ」 浩介 「………」 浩之 「………」 それじゃあ、俺達が逃げ出さなければシルフィーは…… フェイ「ラチェットはお前ら以外には決して心を許さなかった。     その信頼を裏切ったお前らがそれを知ったところでなにになる?」 浩介 「───さあな。俺にはシルフィーの悲しみなんて解らないからな」 浩之 「兄貴……」 浩介 「けど聞いて損は無かったって思ってる。     損得で決めるのは好きじゃないけど、     どちらにしたってそれをどう取るかは俺達であって親父じゃない」 フェイ「…………」 浩介 「それに親父みたいに『裏切り』として取るのもどう取るのも、     それはシルフィー次第だろ。訊いたかどうかは知らないけど、     『裏切りだ』って決めつけるのは早過ぎるんじゃないか?」 フェイ「なるほど?それでお前はどうする気だ?」 浩介 「話す気は無い。でも決心は固まってる。それでいいだろ?親父」 フェイ「……ま、いいさ。俺にも誰にも、強制する権利は無い。     ただし、仕来たりだけは守れ。それ以外に強制することは無い」 浩介 「……解ってる」 浩之 「兄貴?」 ナイフとフォークを置いて息を吐いた。 やがて席を立ち、その場をあとにする。 浩之 「ちょっ……ちょっと待ってくれよ兄貴!仕来たり守るってどういうことだよ!」 償いがどうとか言うつもりはない。 ただひとつ言うことがあるなら、それは謝罪だけだ。 ずっと昔の約束を忘れ、俺は今まで何をしてたのか。 もし今でもその約束が許されるのであれば、俺がすることはただひとつだ─── ───……。 シルフ「………」 食堂を出ると、シルフィーが迎えた。 お辞儀をされるのは嫌だが、今は何も言わない。 浩之 「兄貴……?」 後ろからは浩之。 俺が『仕来たりを守る』と言ったことが信じられないらしく、怪訝そうな顔をしている。 浩介 「シルフィー、話がある。一緒に来てくれ」 シルフ「はい、浩介さま」 浩之 「兄貴、俺は?」 浩介 「悪い、今はふたりにしてくれ。大事な話なんだ」 浩之 「……解った。そのかわり、あとでどういうことか説明してくれよな」 浩介 「考えておく」 浩之にそう言い残し、俺はシルフィーを連れて自分の部屋へ向かった。 ───。 …………。 シルフ「それで浩介さま。話というのは……」 浩介 「一度しか言わないからよく聞いてくれ」 シルフ「……?はい」 自室に来た俺は、邪魔をされないように鍵をかけてから息を吸って吐いた。 別に特別なことをするつもりはない。 ただ、約束を果たそうとしているだけだ。 散々と捻くれた俺だったが、その約束があって良かったと思ってる。 都合がいいことだとは思うけど…… そういう気持ちが自分の中にあることはウソじゃない。 浩介 「シルフィー。俺と結婚してくれ」 シルフ「いやです」 即答だった。 浩介 「……なにぃ!?」 シルフ「そのようなことを言って、どうせわたしを置いて出てゆくつもりなのでしょう」 浩介 「む……」 確かに結論的には逃走を考えている。 俺と浩之にはシルフィーを養えるほどの貯蓄も無し。 ならば……───ならば? 浩介 「……覚悟、決めるか」 シルフ「?」 浩介 「いいや、出て行かない」 シルフ「え……?」 浩介 「俺はもともとレイヴナスカンパニーの長男として生まれたんだ、     後継ぎになるのは当然だ」 シルフ「……浩介さま……?」 浩介 「『さま』はよしてくれ。それと、今までほったらかしにしてすまなかった。     二度言うことになったけど……俺と、結婚してくれ」 シルフ「………………」 浩介 「だめか?」 都合のいいことだってのは俺自身が一番思ってる。 今まで散々、後継ぎを否定してたというのに、突然のこの言葉だ。 ほんと、どうかしてる。 でもこの気持ちは出任せじゃないし、訂正するつもりもない。 今思えば椛───朧月のこともメルティアのことも、どこか本気じゃなかった。 だからこそあんなに簡単に心換えが出来たんだと思うし、 フラれたとしてもそう辛くなかった。 だったら多分、俺の奥底には約束が確かに残っていて…… 俺はそれを必死に守ろうとしていたんじゃないだろうか。 シルフ「あ、の……そのようなことを、急に……言われましても……」 だとしたら今度は俺の番。 散々待たせた分……いや、待ってくれてたのかだって解らないけど、 シルフィーの気持ちを知っていながらも彼女を置いて出ていった分…… 今度は俺が、シルフィーを思い通そう。 ここでフラれたって、何度でも何度でも。 シルフ「浩介さま……わたしは使用人なのですよ……?     それがどうして、カンパニーの後継ぎであるお方の妻になれましょうか……」 浩介 「俺が許す」 シルフ「そんな……無茶苦茶です……」 浩介 「無茶苦茶でも構わない。俺は、その……約束を果たしたいんだ」 シルフ「───……」 浩介 「?」 ふと、シルフィーの表情が曇った。 やがて俯き、どこか心許無げに言う。 シルフ「約束、だからですか……?」 浩介 「うん?」 シルフ「約束だから、わたしを娶るのですか……?好きでもないのに……」 ───むかっときた。 というわけでボカッ!! シルフ「あうっ!?」 浩介 「お前はっ!!人が勇気を出して告白してるってのにそういうこと言うか!?」 シルフ「で、ですが……」 浩介 「ですがじゃないっ!!俺はそんなうわべだけの結婚なんて冗談じゃない!!     そんな気持ちで女に告白する気もカンパニーを継ぐ気も無いっ!!」 シルフ「あ……」 浩介 「お、俺はな!お前が好きなんだよ!今まで自覚がなかったけど解ったんだよ!     どうだ!?まいったかこの野郎!!」 顔が灼熱するのを感じる。 自分でも何を口走ってるのかが解らず、 思い返してみて情けなくなることばっかり言ったことに後悔した。 ───それでも、目の前の彼女は、おずおずとだけど笑った。 シルフ「くっ……ぷ、くくっ……!こ、浩介さま……お顔が真っ赤です……!」 浩介 「わ、笑いたきゃ笑え!自分でも恥ずかしすぎて逃げ出したいくらいだ!」 シルフ「でもいやです」 ドシャア! シルフ「きゃっ!?こ、浩介さまっ!?」 浩介 「普通ここでそう来るか!?ズッコケたじゃないか!!」 シルフ「すいません……ですが、     一介の使用人風情がカンパニーの跡取りである人と結ばれるのは、     旦那さまや奥さまが許されないでしょう……」 浩介 「ま、ま、ま、落ち着けシルフィー。あのな、親父は俺にこう言ったんだ。     『仕来たりだけは守れ』って。     つまりだな、相手が高貴なヤツじゃなきゃいけない理由は何処にも無い。     これがどういう意味か解るだろ?俺は、もうお前以外は嫌だぞ」 シルフ「浩介さま……」 ビスッ! シルフ「あうっ!」 浩介 「『さま』はやめろというのに……」 デコピン一閃、シルフィーに喝を入れた。 浩介 「でだ。俺はまだお前の気持ちを聞いてない。     身分がどうとかを消して考えると、お前はどうしたい?」 シルフ「身分を……?」 浩介 「ああ。ただの男と女で考えて、俺をどう思ってるのかを聞かせてくれ」 シルフ「嫌いです」(キッパリ) 浩介 「ぎゃああああああっ!」 痛い!これは痛い! 好きな人に嫌われるってのはここまで……!? しかも即答だった所為で余計に大ダメージ……! 今になって思うが、あんな大勢の前で告白し合った朧月や同志は間違いなく強者だ……! お、俺にはあんな勇気はとても……! 嗚呼、茶化したりするんじゃなかった……! シルフ「だって……」 浩介 「いや、いい……お前が俺のことが嫌いでも、俺はずっとお前を……」 シルフ「聞いてください。わたしは」 浩介 「いや、いいから……」 シルフ「お聞きくださいっ!!」 浩介 「ウヒョオッ!?」 咆哮一閃、俺は驚き竦みあがった。 シルフ「……コホン。いいですか?わたしが浩介さまを『嫌い』と申しましたのは、     浩介さまが何年もわたしを放りっぱなしでいたからです。     わたしがひとりで寂しい思いをしていた時に、     浩介さまは親しいご友人と楽しく過ごしていたのでしょう?     それなのに簡単に『好き』と言えるわけがありません」 浩介 「……俺にトドメを刺して嬉しいか?」 シルフ「ですからっ!早合点するのはおやめください!     結論は話を聞いてからするべきです!」 浩介 「いや……精神的ダメージが大きすぎてな……これ以上は心臓に負担が……」 シルフ「それでも構いません。お聞きください」 浩介 「うう……」 鬼だ……。 これが、俺が初めて心から愛したおなごの正体か……。 恐ろしい……恋とはこんなにも恐ろしいものだったのか……。 シルフ「わ、わたしだって浩介さまとの約束を忘れたことなどありません。     ですが、浩介さまが飛び出していかれてから、     わたしがどれだけ辛い思いをしたか、お解りになられますか?」 浩介 「知らん」 ドシャア! 浩介 「うおっ!?」 シルフ「少しは考えてください!脱力して倒れてしまったではないですか!!」 浩介 「ええい知らんものを知らんと言ってなにが悪い!     俺はここで簡単に『解る』などと無責任なことを言う男じゃない!見縊るな!」 シルフ「も、もう……!ムードもなにもあったものじゃあありません!!     何をお考えになられているのですか浩介さまは!」 浩介 「馬鹿野郎!俺はフラれたんだろうが!だってのにどうしてムードが必要なんだ!     もう訳解らんぞお前!ハッキリ言えハッキリ!!」 シルフ「ですからっ!わたしの心はずっと変わっていないと言っているのです!!     それくらい空気で読んでください!!」 浩介 「うそつけ!さっきお前俺のこと嫌いって言っただろうが!」 シルフ「ですからそれはわたしを放っておいて、     楽しい日常を送ってらっしゃった浩介さまへのささやかな仕返しです!!」 浩介 「な、なに〜っ!?証拠あんのかこの野郎〜〜〜っ!!!」 シルフ「証拠もなにも、発現したわたしがそう言っているのです!     何が不服なのですか!!」 浩介 「俺はハッキリ言えって言ってるんだ!俺のことが好きなのか嫌いなのか!!     心が変わってないって言われたって、俺は以前のお前の気持ちなぞ知らん!」 シルフ「なっ───なにを言っているのですかあなたは!!     もし浩介さまのことがお嫌いでしたら、     『大きくなったらお嫁さんにして』だなんて言うわけがありません!!     そんなことが解らないほどに愚鈍ですかあなたは!」 浩介 「ええい回りくどい!ハッキリ言えと言うのに!」 シルフ「ですから!わたしは浩介さまが今でも好きだと言っているのです!!」 ───よし言った。 シルフ「───あ」 浩介 「よし、ついに言ってくれたな」 シルフ「あ、う、うー……!」 浩介 「告白ひとつするのにどれだけ時間かかってるんだ、ばか」 シルフ「う、うー!うー!!誰が馬鹿ですか!」 浩介 「ラチェット=シルフィートが」 シルフ「う、うぐぐぐぐ……!!」 おーお、顔真っ赤にしおってからに。 まあなんにせよ、ようやくひと段落か。 シルフ「う、う……うー!うー!」 ぽかっ! 浩介 「うおっ!?」 シルフィーの攻撃! しかし俺はダメージを受けなかった! ……ぽかぽか攻撃だし。 シルフ「ばかばかばかばかばかばかばかーーーっ!!!!     ひどいよこーすけくん!ムードもなにも全然なかったよ!!!     こんなの告白じゃないよ!こんなのただの喧嘩だよ!!     わたしこんなのイヤだもん!こーすけくんのばかぁーーーっ!!!!」 ぽかぽかぽかぽか……!!! 浩介 「ちょっ……!やめろ!痛くないけど泣かれると別の意味で痛い!     てゆうか何を怒ってるんだお前は!訳解らんぞ!?     好き合ってるならそれでいいじゃないか!」 シルフ「全っ然よくないもん!こんな確認なんてどうかしてるよ!!     誘導尋問まがいに告白するのなんて望んでなかったもん!!     ばかばか!こーすけくんのばかぁーーーっ!!!!」 浩介 「む、むうう……」 弱ったぞ……まさか泣かれるとは思わなかった。 しかも緊張の糸が切れたみたいに、以前の喋り方に戻ってるし……。 ど、どうしたものか……。 浩介 「ぬわーーっ!!解らーーーんっ!!!どうしろというのだーーーっ!!!」 シルフ「こーすけくん!急に叫ぶのは頭の悪い人のすることだよ!」 浩介 「なにぃ!?するとさっきから叫びっぱなしのお前は極馬鹿なのか!?」 シルフ「人のこと馬鹿って言っちゃだめだよ!」 浩介 「だったら叫ぶな!」 シルフ「だったらちゃんとムードを作ってよ!こんなのじゃわたし、ピエロだよ!」 浩介 「ピエロ───ドナルドか!?」 シルフ「違うよ!」 浩介 「いやしかしだな、あの白顔のアフロは素晴らしいだろう。     しかも本名はドナルドではなく『ロナルド=マクドナルド』なんだぞ」 シルフ「そんなこと訊いてないよ!」 浩介 「じゃあ一体なにを訊いているというんだ!!もう勘弁してくれ!     告白の後に怒鳴り合うなんて俺達くらいなもんだぞ!?     お前こそムードを破壊し尽くしてるじゃないか!」 シルフ「そんなことないもん!壊してるのはこーすけくんだもん!」 浩介 「な、なに〜っ!?証拠あんのかこの野郎〜〜〜っ!!!」 シルフ「なんでも証拠とかで解決しようとするのはよくないと思うよ!?」 浩介 「だったら怒鳴ってばっかなのもよくないと思うぞ」 シルフ「話に難癖つけて人を責めたらだめだよ!」 浩介 「どっちがだ!」 ああもう話がまとまらん! 大体、怒鳴り合いからムードが作れるのか!? ───無理!……だと思う。 だがやってみるのが男というもの! ならば───がしっ! シルフ「あっ───!?」 浩介 「………」 シルフィーの手を取り、彼女の目をじっと見つめた。 シルフ「こ、こーすけくん……?」 浩介 「シルフィー、俺はな……」 シルフ「……う、うん……」 浩介 「……………………」 えーと、なんて言ったもんか。 いや、告白だ。 これは告白の仕切り直しなのだ。 ならば、することは愛の告白! 浩介 「俺は……お前が好きだ」 シルフ「……うん」 浩介 「お前は……?お前はどうだ……?」 シルフ「う、うん……わたし、わたしも……」 浩介 「シル───はうっ!?」 こ、これはヤバイ……! ぐ、ぐおお……───あ、もうダメ…… シルフ「わたしも、こーすけくんのことが……」 浩介 「じゃっしゃあーーーっ!!!」 ぶしーーっ!! うおう!まるでスカッドミサイルのようなくしゃみが炸裂! シルフ「あ……え……?」 浩介 「……ぐあ」 あら大変。 シルフィーの顔に俺のナメクジが…… シルフ「う、ううう……うぅううう〜〜〜……!!!!」 浩介 「や!待て!これは人として当然の発動衝動だろっ!?     俺は我慢した!くしゃみなんぞ我慢する意味がないとは思うが!     だ、だが俺は俺なりにムードというものを守護しようと」 シルフ「うー!うー!」 はっ!い、いかん……! 目の前の少女から凄まじい殺気を感じる……!! 馬鹿な……!これが女の出す殺気だと……!? 浩介 「いやだから違」 シルフ「こーすけくんのばかぁーーーーーっ!!!!」 ばっちぃいいいいいいいん!!!! 浩介 「ぶへぇえーーーーっ!!!!」 シルフ「うわぁあああああん!!!!」 浩介 「つっ……あ、ちょ───シルフィー!?」 俺の頬にビンタを繰り出したシルフィーが部屋から出ようと走った。 俺はそれを止めようと走ったが、さっさと鍵を開けて出ていってしまった。 ボイーーーン!!! シルフ「きゃあっ!」 浩介 「うおっ!?」 それは突然のことでゴワした。 まるで陽炎を見るように稀な出来事でゴワした。 ふと見てみれば、 アタイのビッグバン・ベイダーばりのビッグバン・クラッシュをくらって倒れたおなご。 鑼衛門「やれやれ……起き出してみればいきなりこれでゴワスか。     いくら今のおいどんが鑼衛門だからって、     急に突っ掛かってきたら攻撃してしまうじゃないでゴワスか」 攻撃って言っても、ただ走ってる途中でぶつかっただけでゴワスが。 だがまあ、ぶつかったのがこの弾力性のある鑼衛門の腹でよかったでゴワスなぁ。 浩介 「お前は……鑼衛門!?」 鑼衛門「如何にも。おいどん、ちょっぴり焦げて今が食べごろの鑼衛門でゴワス。     ところで……このおなごの顔にかかってる汁はなんでゴワス?     って……貴様、まさか」 浩介 「まさかってなんだ!その目はなんだ!」 鑼衛門「い、いや……なんでもない……」 まさかねぇ、おなごに向かってくしゃみするヤツなんぞ、ねぇ。 鑼衛門「まあいいでゴワス。それよりそこのおなご、動かねぇでゴワス。     介抱してやったほうがいいでゴワスよ確実に」 浩介 「へ?あ、ああーーーっ!!シルフィー!?シルフィー!!」 鑼衛門「ィヤッハッハッハッハ、     まあなんだか知らんが神のビッグバン・クラッシュをくらったんでゴワス。     気絶だけで済んだのは儲けものというものでゴワスよ」 浩介 「な、なにをっ……!?貴様ぁっ……!」 鑼衛門「で?なんでゴワスか?     このおなご、見たところ部屋から逃げ出してきたようでゴワスが……     貴様まさか、メイドさんだということをいいことに、     襲おうなどと考えていたんじゃあるめぇでゴワスね……」 浩介 「そんなこと考えるかっ!!ああもうなんなんだよお前は!!」 鑼衛門「なにって……鑼衛門でゴワス」 浩介 「お前みたいな無茶苦茶なドラえもんが居るかっ!!!」 鑼衛門「おんしの目の前におるでゴワス。なんばぬかしとるでゴワスか。     おんし、頭の中があったけぇんじゃねぇでゴワスか?」 浩介 「やかぁしい!!」 むう、なにを怒っておるのでゴワスかこの武士(もののふ)は。 鑼衛門「おいどんに当たられても困るでゴワス。八つ当たりはみっともねぇでゴワス」 浩介 「八つ当たりの云々よりもまず、     人の怒りを引き出すようなものの言い方をやめろ!!」 鑼衛門「すまんでゴワス」 浩介 「だから!その『ゴワス』をやめろって言ってるんだ!」 鑼衛門「言われてねぇでゴワス!何言ってるでゴワス!?     やっぱ頭あったけぇでゴワス!!ふざけんなゴワス!この馬鹿ゴワス!」 浩介 「じゃあ今言う!『ゴワス』って言うのをやめろ!」 鑼衛門「御意」 浩介 「………」 鑼衛門「なんだ。了承されたのが不服だとでも言いたそうだな貴様」 片割れ1はなにやら不服そうな顔をしていた。 まったくなにがなんだか解らない。 浩介 「そんなに簡単に了承していいのか?」 鑼衛門「喋り方に拘り持ってたわけじゃないし。いいんでないのかい?別に」 浩介 「………」 なんだか知らんが、ほんとに不服そうだ。 浩介 「俺は……そう簡単に『喋り方』を捨てられない」 鑼衛門「なんでだ〜い?」 浩介 「俺は自分を変えようとして喋り方を変えた。     盟友と呼べる大事な友達と、新しい自分で向き合うためだ」 鑼衛門「ふむ」 浩介 「俺はカンパニーに縛られた自分を捨てたかった。     金持ちで見栄ばかり張っているやつらとは違う『何か』になりたかった。     だから自分を変えた。そこには友達と馬鹿やって笑い合える自分が居た」 鑼衛門「あいや待たれい!貴様何故、俺にそのようなことをぬかす!」 浩介 「……───あんたが何者かは知らない。     けど……あんたからは俺と同じ『何か』を感じる。     友達のために馬鹿になれる『何か』を」 鑼衛門「………」 ……ッチィ……こやつ、俺から一体なにを感じとっているというのだ。 鑼衛門「……確かに俺は友達馬鹿だ。     そいつのために何度も死んで、そいつのために生き続けた。     その事実は多分、今だって変わらない。だから言っておく。よく覚えておけ。     心だけは……絶対に殺すな。自分を殺さずに生きてみろ」 浩介 「なに……?」 鑼衛門「それだけだ。それでは俺はこれで失礼する」 浩介 「なにっ!?ま、待て!今の言葉の意味を」 鑼衛門「ビッグバン・クラッシュ!!」 ボイーーーン!!!! 浩介 「おぶおっ!?」 片割れ1をビッグバン・クラッシュで吹き飛ばした。 鑼衛門「友人と馬鹿やることを忘れんなよ!ではさらばじゃーーーっ!!」 浩介 「あっ!こ、こらっ!」 ダタッ! 鑼衛門「なにぃ!?」 なんと!片割れ1は元気に立ち上がり、アタイを止めようと走り出した! アタイはそこへ 鑼衛門「ビッグバン・クラッシュ!!」 ボイーーン!!! 浩介 「ぶはっ!?」 カウンタービッグバン・クラッシュを炸裂させた。 やがて倒れた片割れ1に、 松平さんの全体重に勝るとも劣らぬ勢いを込めてレッツ・ボディプレス! ゴシャア!! 浩介 「げうっ!!」 片割れ1はカエルのような声を上げた。 が。 浩介 「こ、この……!」 鑼衛門「なんと!?」 それでも俺の脚を掴み、離すまいと力を込めてきた。 ええいしぶといヤツめ! 鑼衛門「シャラッ!」 ボゴシャア! 浩介 「ベぼっ!」 鑼衛門シュートで顔面を蹴った。 浩介 「ご、ごのやろ……!!」 鑼衛門「ゲエ!?なんというしぶとさ!」 ならば! 鑼衛門「鑼衛門フロントスープレックスドロップ!!」 ドカァッ!! 浩介 「げほぉっ!」 鑼衛門「鑼衛門ドラゴンスープレックス!!」 ゴシャア!! 鑼衛門「鑼衛門ツームストンパイルドライバー!!」 ベゴシャア!! 鑼衛門「鑼衛門カンヌキスープレックス!!」 ゴドドンッ!! 鑼衛門「鑼衛門ジャイアントスイングゥウウッッ派生脱穀スープレックスーーーッ!!」 ドゴォオオン!!! 鑼衛門「鑼衛門ンンンンーーッ!!!クロスライダースプレェエエックス!!!」 ヒュゴォッ───ドゴゴォンッ!!! 鑼衛門「鑼衛門エアプレーンスピィイイイイン!!!!」 ヒョンヒョンヒョンヒョン───ブヒョヒョヒョヒョォオオオン!!!! 鑼衛門「そりゃああーーーっ!!!」 ブンッ! ───ガシィッ!! 鑼衛門「鑼衛門流───ロビンスペシャルーーーッ!!!!」 ガキィッ!!! 空中に放った片割れ1の首を太腿で絞め、 大地に手を付くと同時にその脚に力がこもり、片割れ1の首を絞める! 浩介 「───……グビグビ……」 ドシャア。 ……それで終わった。 てゆうか途中で終わってたけど。 片割れ1は部屋と廊下の境目あたりに倒れ、泡を拭いていた。 鑼衛門「キミは強かったよ……だが間違った強さだった……」 耳からドス黒い汁が流れてるが、気にしない気にしない。 鑼衛門「じゃ、アディオス」 ダメージは回復して、俺はさっさとその場を───って、 おなごの顔の汁も拭いておいてさしあげましょう。 どう見ても鼻汁ナメクジだし。 鑼衛門「うん、美麗でステキですよ、おなごさん」 さて、バカップル水入らずということで、同じベッドに寝かせてから逃走しましょう。 これでおーけーね? 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