───覗きコンビVS偽神(ゴット)・鑼衛門───
菜苗 「あら〜、食堂ですね〜」 凍弥 「………」 なにもかも解らない。 迷わないようにと辿った道の果てが、何故食堂だったのか。 しかも、料理が片付けられずに残っている。 菜苗 「………」(ごきゅり) うわあ……喉が思いっきり鳴ったよ今……。 菜苗 「とっても……おいしそうです〜……」 ふらふら……と、まるで洗脳誘惑されたかのように食堂に入ってゆく菜苗さん。 凍弥 「うわっ、ちょっ……マズイって菜苗さん!」 がしっ! 菜苗 「あぅぅ……?な、なにをなさるんですか〜?     食べ残しはよくありませんよ〜?」 凍弥 「俺に言われても知るかっ!」 菜苗 「ですから〜、わたしは食事の残りのお片付けを〜」 凍弥 「だめ!確かに残すよりはいいけど……!」 菜苗 「とにかく食べるんです〜」 ゴゴゴゴ……!! 凍弥 「うおっ!?」 な、なんつー馬鹿力……!! 生への執着がここまで人を強くするとは……!! 凍弥 「だめだって!使用人が摘み食い紛いのことをしているのを見られたりしたら!」 菜苗 「平気ですよ〜。全然大丈夫ですから〜」 凍弥 「そんじゃあなにがどう全然平気なのか聞かせてもらえるのかなっ!」 菜苗 「それは秘密です〜。女の子のことを探るのはマナーがなっていませんよ〜?」 凍弥 「あ、あのなぁ……」 ポムッ。 凍弥 「はい?」 男  「………」 凍弥 「OH!?」 肩を叩かれて振り向くと、そこにおわすは男の人。 男  「……キミは?」 凍弥 「あ、や、えと……」 菜苗 「あらあらまあまあ〜、カフェイン叔父さま〜」 凍弥 「お、叔父っ!?」 叔父って……叔父だよな? 使用人の叔父が……あれ? フェイ「菜苗……また使用人の服を着て遊んでたのか……」 菜苗 「でもこの服、とっても着心地がいいんですよ〜?」 フェイ「俺は着ないから解らん」 菜苗 「きっと似合いそうですのに〜」 フェイ「……勘弁してくれ」 カフェインと呼ばれた菜苗さんの叔父さまは、 なんだかとってもうんざりな顔をしていた。 なんだか解るなぁ……。 こういう姪を持つと苦労しそうだ。 フェイ「ところで菜苗、そこの男は?」 菜苗 「なんでしたら〜、わたしがコーディネイトしてさしあげますよ〜?」 フェイ「いや……聞け。まず聞け」 菜苗 「まずは叔父さまの寸法を調べてましょう〜」 フェイ「───てい」 ズビシ。 菜苗 「はぅ〜っ?」 額に手刀炸裂。 フェイ「あのな。俺はこの男が誰かって訊いてるんだ。お前の知り合いか?」 菜苗 「命の恩人です〜」 フェイ「命の……?」 はた、と視線が送られる。 だが大袈裟にされるのは好きじゃない。 凍弥 「いや、命の恩人は大袈裟ですから」 フェイ「ふむ……キミ、名前は?ああ失礼、俺……いや、私はカフェイン=レイヴナス。     このレイヴナスカンパニーの現社長だ」 凍弥 「しゃっ───!?」 あ、いや待て! 待て待て待て! 考えろ!聞き覚えがあるぞこの人の名前! 確か─── 凍弥 「カフェイン……レイヴナス……カンパニー……父さん……。     父さんのアルバムに居た……あ、ああーーーっ!!!」 フェイ「おっと……なんだ?」 凍弥 「レイヴナス!カフェイン=レイヴナスさん!!思い出した!!」 高校時代の父さんと一緒に映ってた─── 凍弥 「あ、お、俺、霧波川凍弥っていいます!」 フェイ「霧波川……凍弥?霧波川……まさか!」 凍弥 「は、はい。父さん───霧波川柾樹は俺の父です」 フェイ「……ワッツ!?」 凍弥 「だから、父さんです」 フェイ「……そ、そうか……そうか!!そうかそうか!!マサキにこんな息子が!!」 バシバシバシッ!! 凍弥 「いでっ!いででっ!」 信じられないくらいに破顔したカフェインさんは、俺の背中をバシバシと叩いた。 その顔から窺えるのは『嬉しさ』のみだ。 フェイ「そうか!浩介と浩之に会いにきたというのはキミか!!そうかそうか!!     なんだそうだったのか!それなら名前を名乗れば一発だったのに!」 凍弥 「あー……日本語上手いんですね」 フェイ「上手くもなろう。随分と勉強したからな」 凍弥 「はあ……」 フェイ「それにマサキは俺の友達だ。その息子を邪険に扱うほど馬鹿じゃないぞ俺は。     客人として持てなそう。だが……」 凍弥 「ええ。全ての判断はあいつらに任せます。     あいつらの道は俺が決めるものじゃないから」 フェイ「───さすが、マサキの息子だ。相手のことをよく考えてる」 凍弥 「む……」 父さんの息子だと、それは確定してるのだろうか。 ……なんか釈然とせん。 フェイ「じゃあ浩介と浩之に会わせよう。付いてきてくれ」 凍弥 「了解」 菜苗 「それでは〜、わたしはお役御免でしょうか〜」 凍弥 「……そういうことに……なるのかな」 菜苗 「そ、そうですか〜。でしたらわたしは食事を」 フェイ「だめだ」 菜苗 「ええ〜?な、なぜですか〜?」 フェイ「お前は預かってる大事なお客なんだ。     残り物を食わせたとあっちゃあ、あの人に会わせる顔が無い」 菜苗 「おじいさまは関係ありません〜。これはわたしの生命に関わることで」 フェイ「でも却下」 菜苗 「はぅ……」 フェイ「今用意させるから待っていろ。いいな、摘み食いはしないように」 菜苗 「う、うぅうう……」(ぎゅるるるる……きゅごーー!!) うわ……凄まじく切なそうな顔してる……。 菜苗 「おじいさま〜……どうやらわたしはここまでのようです〜……」 ……ドサッ。 凍弥 「うわわっ!菜苗さんっ!?」 フェイ「菜苗っ!?」 菜苗さん、ついに倒れる。 なんにせよ、空腹で倒れる人を見るのは初めてだった。 もくもくもくもく…… 菜苗 「おいしいです〜……おいしいです〜……!     こんな美味しいものを食べたのは初めてです〜……!」 菜苗さん復活。 新しく用意された食事を口にして号泣してる。 菜苗 「面目ないです〜……面目ないです〜……!     死んでしまうかと思いました〜……!もうダメかと思いました〜……!」 フェイ「……ギン?」 イマイチよく解らなかったが、 ピラフと水を口にしながら泣いている菜苗さんを見て、カフェインさんはそう呟いた。 フェイ「もういいのか?」 凍弥 「え?あ、ああ……俺は別に腹は減ってなかったから……」 食事を済ませた俺を見てのひとことにそう返した。 なんにせよ…… 菜苗 「美味しいです〜……美味しいです〜……」 よく食うな……既に5人前は食ってるんじゃないか? フェイ「……菜苗はな、大食らいなんだ……」 俺の唖然とした表情を見たからなのか、カフェインさんはそう言った。 俺はそれに『そうですか……』と応えるしかなく、なんだか微妙な空気に飲まれていた。 フェイ「よし、菜苗の食事は長引くだろうから、     俺達だけで浩介と浩之に会いにいくとしようか」 凍弥 「あ───はあ……」 ガタ、と席を立つカフェインさんに次ぎ、俺も立ちあがって食堂をあとにした。 ───……。 フェイ「さて、ここが浩介の部屋だ」 凍弥 「ここが……?だって、俺が泊めてもらった部屋とそう遠くないですよ……?」 フェイ「そうなのか?そういうことはメイに任せているから知らなかったが」 凍弥 「……灯台下暗し、か……」 アア、ナンカ頭イタイヤ……。 フェイ「まあそう言うな」 コンコン、というノック。 ドアノブに手をかけ、やがて開ける。 フェイ「浩介、入るぞ?───っと、トーヤ。キミはここで待っていてくれ」 凍弥 「え?あ、はあ……」 軽い苦笑を漏らし、カフェインさんは部屋の中に消え─── 声  「な、なっ……なんじゃあこりゃああっ!!!!」 凍弥 「うおっ!?」 ジーパン刑事(デカ)の如き絶叫を迸らせた。 凍弥 「カフェインさん!?どうかしたんですか!?」 尋常じゃないその声に戸惑うことなくドアを開けた。 やがて駆け込むと─── 凍弥 「な、なっ……なんじゃあこりゃああっ!!!!」 そう叫ぶしかなかった。 だってさ、浩介と謎の女が一緒のベッドで寝て……うおう。 フェイ「そんな……浩介、お前いつの間に……」 凍弥 「浩介……お前……」 浩介 「ん、ん……?」 ふと、浩介が寝言を言ったかと思ったらうっすらと目を開けた。 浩介 「う……?なんだ……?夢でも見てるのか俺は……。屋敷の中に凍弥が……」 凍弥 「……夢だったら良かったんだろうけどな……」 浩介 「ん……?なに……?───凍弥!?」 ガバッ! 浩介 「凍弥!?凍弥か!何故ここに!?」 凍弥 「いや、何故っつーかなんつーか……それよりお前が何故っつーか……」 浩介 「……凍弥?何故にカタカタ震えてるんだ?」 凍弥 「………」 浩介 「む……?」 顎でゆっくりと視線を促す。 怪訝そうに浩介はベッドに向き直った。 と─── 浩介 「オワッ!?お、おわぁーーーっ!!!」 凍弥 「浩介……お前ってヤツは……」 浩介 「や!待て!これはなにかの間違いだ!     俺無実!無実だ!まだ何もしちゃいない!」 凍弥 「まだ!?まだってことはこれからする気だったのか!?」 浩介 「ば、馬鹿!そういう意味じゃない!!」 凍弥 「じゃあどういう意味だコラ!たわけたことぬかしたらシバクぞワレェ!!」 浩介 「なにぃ!?」 凍弥 「貴様がそんな気が早くて手も早いヤツだったとは!!     ええい見損なったぞたわけ者!!」 浩介 「違うわ!お前何気に大勢の前で告白させたの恨んでるだろ!」 凍弥 「当たり前だ馬鹿!あんなことされて恨まないヤツは即日に英雄になれるわ!!」 浩介 「実際、あの日のお前は英雄だったからな……」 ポム。 浩介 「む?」 凍弥 「なに、今のお前には負けるさ……」 浩介 「なにぃっ!!?」 凍弥 「ははははは!!貴様には俺の恥ずかしさを上回る屈辱を味わわせてやる!!」 浩介 「誤解だと言っているだろうが!」 凍弥 「聞く耳もたん!この愛の即日ヒーロー!!」 浩介 「おのれぇええええええっ!!!」 まだぞ!まだまだ言い返してくれる! 俺はまだ終わっておらんぞ! フェイ「…………何気に楽しんでるだろ、トーヤ」 ぐっ……バレてる。 フェイ「まあ正直、浩介がラチェットに手を出すとは思えないしな。     大方、別の誰かの仕業だろ」 浩介 「あれ?親父……ってそうだ!なぁ!ここでドラえもんを見なかったか!?」 フェイ「ドラ……?いや」 凍弥 「朝、俺が泊めてもらった部屋の前に転がってたけど」 浩介 「そいつだ。そいつがシルフィーを気絶させて、     俺にプロレス技のオンパレードをかけて、ベッドに寝かせたに違いない……!」 凍弥 「ドラえもんか……襲われた心当たりは?」 浩介 「知るか。なんか知らんがいきなり襲われたんだ」 凍弥 「……そこの女の人と一緒に居たのは何故に?」 浩介 「うぐっ……何気に核心を……!」 フェイ「……浩介?」 浩介は口調を戻したままで、確かにうろたえた。 だがカフェインさんに向き直ると─── 浩介 「親父。俺───カンパニーを継ぐよ」 フェイ「なに……?嫁はどうする」 浩介 「こいつ」 でごしっ。 シルフ「にゅっ!?」 浩介、寝ている女の子にチョップを落とす。 女の子はそこらから(うな)され始めた。 フェイ「ラチェット?……本気か」 浩介 「本気も本気。てゆうか……さっき告白した」 凍弥 「こっ……!?」 フェイ「そうか……」 カフェインさんはどこかニヤリ顔で笑った。 フェイ「了承!」 浩介 「え───?」 フェイ「親として、貴様の成長をしかと見届けた!     我が家が金持ちだからといって、     貴族と結婚しなけりゃならん規則や道理など無し!     恋愛結婚大いに結構!約束結婚大いに結構!     それに言っただろう、仕来たりさえ守ればいい」 浩介 「別に遠慮しちゃいないさ。実際、なんにも知らせずに告白なんてしたわけだし」 フェイ「で、我が愚息よ。ラチェットの返事は?」 浩介 「うっしゃっしゃっしゃっしゃ、そりゃもうアンタ、OKザンスよ……!」 フェイ「そうかそうか!がっはっはっはっは!!」 浩介 「うはははははははは!!!」 凍弥 「………」 激しく思うんだが……嫌いとか言ってたわりに、 このふたりって案外気が合うんじゃないか? フェイ「ま、とりあえずは高校を卒業してしまえ。それからでも遅くない。     それまでは少しずつここで勉強してもらう。     学校にはここから通ってもらうことになるが、その方が負担が少ないんだ。     今は結香(ゆいか)も居ないからゆっくりできるぞ」 浩介 「母さんが?どこに行ってるんだ?」 フェイ「外国の方の俺の実家でくつろいでるだろうな。     まあ安心しろ、あいつはあそこから動く気は無いようだから」 浩介 「そっか。母さんが居るとなると、話がこじれそうだったから……」 フェイ「いつから金持ちにこだわるようになったかは忘れたが……     夫としては悲しい限りだ」 凍弥 「……カフェインさんの奥さんって確か、魔雲天齬羅子(まうんてんごりこ)……?」 フェイ「……いいや、オチットさんのお蔭であのバケモノからは逃げられた。     魔雲天に捕まっていた時にマサキに手紙を出して以降、     マサキには『結婚した』という手紙しか出してなかったからな……」 凍弥 「そ、そうなんだ……」 でも浩介の母親が、そんな野生に生きる超巨大生物系の名前の人物じゃなくてよかった。 それは心から安心してる。 フェイ「妻は各務結香というんだがな。なかなかどうして、カワイイ女だった」 浩介 「うそつけ。あの母は守銭奴だろう」 フェイ「そう言うな。お前はああなってしまってからの結香しか知らないんだ。     ああなる前の結香はそれはもう心やさしい女だったんだぞ?」 浩介 「うそつけ」 フェイ「……最初から信じる気がないな」 俺もそう思う。 しかし……浩介はどちらかというと父親には心を許してる方だな。 見てれば解る。 心を許しておらず、嫌っている大本命は母親か……。 浩介 「大体、なんだってあの母と向き合おうって思ったんだ。ちと信じられん」 フェイ「う……」 凍弥 「え?」 なんでか俺を見るカフェインさん。 ……何故? フェイ「実はな、結香は男嫌いだったんだ」 浩介 「男嫌い?」 凍弥 「───あ」 フェイ「いや待てトーヤ。言わなくていい。予想はついただろうが、それは言うな」 凍弥 「りょ、了解」 『あ』と言っただけでそこまで読むとは……。 浩介 「あの母が男嫌いだったから……好きになった?」 フェイ「そうだ。きっかけなんてそんなものだ」 浩介 「……そうか。親父、貴様Mのケが……」 フェイ「断じて違うッ!!」 凍弥 「うおう……」 親父殿、咆哮。 気持ちは解るが……なんだ、愉快なオヤジ殿じゃないか。 凍弥 「浩介、この人のどこが嫌いなんだ?良い親父殿ではございませんか」 浩介 「それがだな、同志。この親は視線を合わせれば、     やれ『カンパニー』がどうしたこうしたとな……。     ほかの言葉を知らぬようにとことんその話しかしないのだ」 フェイ「お前が継ぐって言った以上、それももう言う必要もないだろう。     小言は言うつもりはない。カンパニーのことはオチットさんにでも訊け」 浩介 「む……」 それもそうだと呟いた浩介は、なんだか複雑そうに何かを考え始めた。 浩介 「そっか、そりゃ安心だ。     カンパニーのことを抜きにしたら、親父は嫌いじゃない」 フェイ「そ、そうか?」 浩介 「ああ。あとは身勝手に人の借りアパートの移動をさせる図々しささえ直せば」 フェイ「ぐ……」 凍弥 「へえ……じゃあ佐古田が言ってた『攫った』ってのは間違いじゃなかったのか」 浩介 「一字一句間違い無し。こいつが攫わせた」 フェイ「敢えて人聞きの悪い言葉を選ぶのはやめろ」 浩介 「結論が同じなら嫌味でも言わなければ気がすまない」 フェイ「……はあ」 ふむ、どうやらこの親父殿はからかわれ馴れはしてないらしい。 馴れてて損は無いんだが。 凍弥 「冗談を冗談と受け取れる心の余裕は大事ですぞ」 フェイ「それは解ってるがな……」 解ってはいるけど馴れてないってやつか。 いかんなぁ、頭がカタイ大人はいかん。 凍弥 「あ───そうだ浩介。     俺、佐古田にお前が『二度と会えない』って言ったって聞いてここに来たんだ。     そこんとこ、どうだったんだ?」 浩介 「この家に連れてこられたら最後、もう出られないって思ったってことさ」 なるほど……跡取りね。 凍弥 「そっか。今回ばかりは信じなくてよかった」 浩介 「まさか、乗り込んでくるとは思わなかったがな」 凍弥 「ばか、お前から直接聞くまで納得するかよ」 浩介 「……だろうな、実に同志らしい」 凍弥 「同志か。そういや口調が変わってたな」 浩介 「ま、そんな日もある」 ふたりして小さく笑い合う───と、そんな時。 ガチャッ。 菜苗 「あ〜、やっと見つけました〜」 凍弥 「あら?菜苗さん……」 現れた菜苗さんに、『よく辿り着けたね』という言葉を放ちそうになったが飲んだ。 危ねぇ、素で言いそうになった。 凍弥 「えーと、どんなミラクルがあなたをここへ?」 菜苗 「はい〜。通りすがりのドラえもんさんが案内してくださったんですよ〜。     なんでも『面白いものが見れるから』ということで〜」 凍弥 「面白いもの……ねぇ」 浩介 「ん?」 凍弥 「───確かに!」 浩介 「お、おい、コラ待て同志。貴様なにを妙に納得している」 凍弥 「いやいや、面白くはあったな、と。     驚きの方が先行したけど、思い返してみれば面白かった」 浩介 「おのれ同志……」 なにやら呆れと疲れが混ざったような溜め息をボシャアアと吐かれてしまった。 浩介 「久しく忘れていた……。     そういえば同志は、どちらかというと『からかう側』だったな……」 凍弥 「最近は周りの色が濃いから振り回されてばっかりだったけどな」 最後にからかったりして純粋に慌てたりなんだりしたのは、 椛を探して一年の教室周りを駆けずり回ってた時くらいか? あの時は楽しかったなぁ……ジョニーとかゴーダッツの真似したっけ……。 凍弥 「……いつから狂ったんだっけ、俺の性格のネジ」 浩介 「貴様自身は変わっていないのではないか?変わったようには感じぬぞ」 凍弥 「……そう、か?」 浩介 「言えることがあるとしたら……     少々だが、キツイ言葉を使うことがなくなったのではないか?」 凍弥 「そうか?結構言ってる気もするけど」 浩介 「まあ、そんな感じがするだけだ。気にするな。     それに変わったとしたら朧月に会ってからだろう」 凍弥 「んー……ま、いいけど」 菜苗 「あの〜、なんのお話でしょうか〜」 凍弥 「…………なんだろ」 謎だ。 浩介 「む?親父はどうした」 菜苗 「叔父さまでしたら〜、オチットさんに呼ばれて部屋を出ていきましたけど〜」 浩介 「オチットさんに?気づかなかったな」 凍弥 「同じく」 いつ呼ばれ、いつ出ていったんだか。 浩介 「まあいい。同志、我はカンパニーを継ぐことを決意した。     学校を卒業するまで自由といえば自由だが、     もうシルフィーを置いていくのは我としては御免だ。     故に、我はここから通うことにする。     事実、アパートにも帰れなければバイトも辞めさせられていた。     こんな状態では生きてゆけん」 凍弥 「解ってる。俺はお前が納得してるなら言うことなんてないさ」 浩介 「同志……」 凍弥 「卒業するまでよろしくな、盟友」 浩介 「───ああ、もちろんだ同志」 コツンと拳を合わせて笑った。 ほんと、友達とはいえこいつとは長い付き合いになりそうだ。 ───もっとも、俺が生きていられたらの話だけど。 浩介 「───同志?」 凍弥 「あ、いや……なんでもない」 浩介 「……?」 凍弥 「なんでもないって。それより浩介、浩之は何処に居るんだ?」 浩介 「いや……それは我にもよく解らんのだ。     だが気をつけろ同志。恐らく、ドラえもんはブラザーの知り合いだ。     昨夜、ふたりで我が部屋を訪ねてきたのだ」 凍弥 「ふたりで?……確かに怪しそうだな」 ドラえもんと浩之の共犯疑惑が浮上。 敵か味方か、志摩浩之……!! ……味方に決まってる。 凍弥 「よし、こうしよう。実はドラえもんは地球外知的生命体で、     浩之はそれに洗脳されてる、という方向で」 浩介 「異義無し」 菜苗 「まあ〜、そうだったんですか〜?」 浩介 「ああ、間違いない」 凍弥 「宇宙ウイルスにやられたんだ」 菜苗 「洗脳ではなかったのですか〜?」 凍弥 「どっちも、という方向で。洗脳に使われたのが宇宙ウイルスなんだ」 菜苗 「あら〜、そうなんですか〜」 浩介 「……くぶっ……」 凍弥 「くっ……」 凍弥&浩介『くはははははははははっ!!!!』 菜苗 「はぅ……?」 浩介 「いやっ!やはり同志と居るとどこかで笑える!やはり日常はこうでなくては!」 凍弥 「っははははは!やっぱりお前と浩之が居ないと始まらない!」 ふたりして笑う。 やっぱり本当の友人ってゆうのは居るだけでありがたい。 お互いに重くない存在ってゆうのは、喧嘩らしい喧嘩が無いのがありがたい。 冗談の域を解り合っている俺達にしてみれば、 仲違いになるほどの喧嘩なんてものは知らなくていい。 ───ふと気がつけば笑い合えるのが当然になっている。 そういう関係で十分だ。 凍弥 「というわけで、浩之は何処だ?」 浩介 「ブラザーか。それがだな、昨夜遭遇したのはブラザーから会いに来たものでな。     我はあやつの居場所は知らんのだ」 凍弥 「……そっか」 FUUUUUUM、さてどうする……? 凍弥 「……探すか?」 浩介 「望むところだ」 菜苗 「ではまいりましょう〜」 凍弥&浩介『え?』 浩介 「行くって……菜苗さん?」 菜苗 「わたしたちの手で事件を解決するのですね〜?知ってますよ〜、MMR〜」 ……何者? 凍弥 「なぁ浩介……菜苗さんって……」 浩介 「あー……我にも解らん。     確かに時々よく解らぬことを口走ることはあったが……」 菜苗 「さあ〜、まいりましょう〜」 ぐいっ! 凍弥 「おわっ!?」 浩介 「と、っとと!菜苗さん!?ちょっと!」 菜苗さんは何故か万面の笑顔で、俺と浩介の手を引いた。 ……結構な勢いで。 そのままの勢いで部屋から連れ出され、 再び宛てもなく彷徨わされるハメになったのだった…… 菜苗 「きっとここです〜」 ガチャッ。 おなご「え?」 凍弥&浩介『あ゙』 菜苗 「あら〜」 ドアを開けた先には着替え中の……ギャア!! おなご「きゃあああああああああああああーーーーーっ!!!!!」 凍弥&浩介『おわあぁああああーーーーーーーっ!!!!』 菜苗 「あらら〜?」 おなご「出てって!出てってよぉーーーっ!!!」 凍弥&浩介『しっ───失礼しましたぁーーーっ!!!!』 一目散に逃走! わき目も振らずに───って! 凍弥 「菜苗さん!その場でニコニコ笑ってないで!」 おなご「きゃああああっ!!!」 凍弥 「あぁあああ違います!見に戻ったわけじゃあございませんんんんん!!!!」 おなご「出てけ出てけぇえええっ!!」 ボゴガシャガンゴンボゴゴシャア!!! 凍弥 「だわぁーーーっ!!!!」 菜苗 「あ〜〜〜〜れ〜〜〜〜♪」 菜苗さんを引っ張って一目散に逃走!! すでに廊下の果ての方まで逃げてる浩介を追って、力の限りに大・激・走!! ───…… 浩介 「がはーーっ!がはーーっ!!」 凍弥 「はっ……はっ……」 菜苗 「うふふふふ〜」 あぁもう疲れた……! なんだってこんな目に……! 浩介 「菜苗さぁん……もうちょっと気をつけてドア開けてくれよ……」 凍弥 「まったくだ……なんだって知り合いの家に来て強制覗きなど……」 菜苗 「はい〜?」 がちゃっ。 凍弥&浩介『って!言ってるそばから開けな───』 おなご「あ、わ……───!!」 凍弥&浩介『ギャア風呂場ァーーーーーッ!!!!!』 菜苗 「あら〜?」 おなご「きゃあああああああっ!!!!」 凍弥&浩介『キャーッ!!』 おなご「きゃあああ!!きゃああああああっ!!!!」 凍弥 「キャーッ!!」 浩介 「キャーッ!?キャーッ!!」 菜苗 「あらあら〜、羨ましいプロポーションですね〜」 凍弥&浩介『菜苗さんッッ!!』 ガシッ!! 菜苗 「はぅ……?」 凍弥&浩介『とんずらぁーーーっ!!!!』 ドシュゥウウウウウウン!!!!! 菜苗さんの手を片手ずつ掴み、浩介とともに大・激・走!! もうやだ!なんだってこんな目に!! ───。 浩介 「かはっ……くはっ……」 凍弥 「あ゙〜…………」 菜苗 「あらあら〜」 もうやだ……ほんと勘弁……。 ピピッ。 凍弥 「あ……なんの音……?」 菜苗 「あらあら〜、通信機ですね〜」 浩介 「……そういや菜苗さん、まだ使用人の服着てたんだ……」 ……全然違和感が無いのが不思議だ。 菜苗 「はい〜?」 ガガッ─── 声  『屋敷内にふたり組みの覗きが出現っ!見つけ次第、捕獲してくださいっ!!     ひとりは知らない人でひとりは旦那さまのご子息さまです!!』 ブツッ─── 菜苗 「あら〜」 凍弥 「……ふたり組の……」 浩介 「覗き……」 菜苗 「ひとりは旦那さまのご子息〜」 ……ひでぇ……いきなり覗きのレッテル貼られちまった……。 凍弥 「……どうするよ」 浩介 「───名案がある。     覗きのひとりはドラえもんで、もうひとりはブラザー。擦り付けて我らは逃走。     どうする?このヤマに乗るか乗らずか」 凍弥 「乗った!」 俺と浩介は手を出し合い、オォッ!と頷き合った。 ぽむ。 凍弥&浩介『オウ?』 菜苗 「おぉ〜」 事件の首謀者は平和そのものの顔で、俺と浩介の手の上に自らの手を乗せてきた。 凍弥 「いや……後生だから菜苗さんは乗らないで……」 菜苗 「えぇ〜……?仲間外れですか〜……?」 浩介 「いや……そうじゃなくて……」 菜苗 「大丈夫ですよ〜、お姉さんに任せてください〜」 言って、ぱたぱたと走っていってしまう菜苗さん。 凍弥 「あ、ちょっと菜苗さん!?───行っちまったい……」 浩介 「……菜苗さんも変わってないな……」 凍弥 「変わってないって?」 ───浩介の話では、菜苗さんは外国の方でもちょくちょく遊びに来ていたらしい。 生まれは日本で育ちは外国。 外国語も喋れれば日本語も喋れたりして、時々動物とも話していたりするらしい。 そこのところの亜空間は謎だが、どちらにしても悪い人じゃないそうだ。 それは見ただけでも解るし、ただの南アルプス(天然)だってことも解る。 問題なのは、彼女が養女だったということらしい。 菜苗さんの両親はとても温厚な人達で、 そこらに居るような金持ちとは違っていたらしい。 よく言えば金に左右されない器量の持ち主。 悪く言えば……協調性の欠ける人。 菜苗さんはそんな両親に貰われ、育てられ、現在に至る。 でも菜苗さんの性格を見れば、どれだけ波無く育てられたかくらいは窺える。 ───あくまで、両親からの波は無かった、という意味だが。 菜苗さんは自分が貰われた子だということを心無い金持ちどもに教えられ、 一時期塞ぎ込んだこともあるらしい。 けど心は折らず、いつだって両親の前で弱音を吐いたことがなかったらしい。 そんなことがあったからか、 同年代に近い人には自分のように塞ぎ込むことがないようにと、 穏やかモード全開で接しているらしい。 が、いつからかそれが当然となり───まあ、現在のポケポケ人が完成した、と。 すぐにお姉さんぶるのは、キョーダイが欲しかったからだったとか。 ……そのくせ、やることは空回りばかり。 当時、浩介も相当振り回されたらしい。 あ〜……解るなぁ、その気持ち。 半日にも満たない時間で思い知らされたしなぁ。 凍弥 「───行こう、浩介。     最後の解釈にちと問題があるけど、     そんなこと聞かされたらひとりにしておけないだろ」 浩介 「うむ、同志ならそう言ってくれると思っていたぞ」 走り詰めで乱れた息も整い、俺と浩介は走っていった菜苗さんを追って走った。 廊下は突き当たりで分かれていて、浩介に『どっちだ?』と促すと左を指差した。 突き当りを左に逸れると、その廊下の奥の方で右に逸れる菜苗さんを発見。 凍弥 「結構……足、遅いんだな」 浩介 「エプロンドレスが機能的だと思ったら大間違いだぞ同志」 ……そうかも。 なんか走り辛そうだったし。 凍弥 「まあ急げばすぐに捕まえられるな。     って、そうだ。菜苗さんが向かってる場所には何があるんだ?」 浩介 「いや、我もこの屋敷のことはよく知らんのだ。     以前は外国の屋敷に住んでいたのでな」 凍弥 「まあ、訊いたところで菜苗さんを止めることが先決なのは変わらないけどな」 浩介 「違いない」 走りながら喋り、やがて辿り着いた突き当りを右へ。 その先は───開いたままの扉と、大広間だった。 凍弥 「菜苗さん?」 大きな両扉を開け放ったままで立ち尽くして菜苗さんに声をかける。 ───と 声  「ィヤァーーーッハッハッハッハッハァーーーッ!!!!」 どこからともなく聞こえてくる声。 何事かと思って大広間を見てみれば、大広間の中心に立っているドラえもんを発見。 てゆうか踊ってる。 鑼衛門「ハッ!!」 ドンドコドンドコズンバコズンドコドンドンドンドンドン!! 鑼衛門「アイヤーーーッ!!!」 …………。 鑼衛門「ィヤハ?」 疑問系で笑われてもなぁ。 菜苗 「あの人です〜、わたしに雷を落としたのは〜」 浩介 「かっ……かみ……!?」 凍弥 「そういえばそんなこと言ってたっけ……」 鑼衛門「ィヤッハッハッハッハ!!     誰かと思えば昨夜のお嬢ではないか!!この私に何か用かね!!」 ……声がくぐもってて判断出来ない。 でもやっぱりこんなところに彰衛門が居るわけがないしなぁ……。 世界は広いな……彰衛門以外にこんなヤツが居るとは。 いやいやいや、ただのアトラクションみたいなものかもしれないしな。 いきなりソッチの方で考えるのは癖だ。 鑼衛門「んん……?おい貴様、双子の片割れはどうした」 浩介 「ブラザーのことか?知らん」 鑼衛門「ィヤッハ……まあいい。     私が独断と偏見と実力行使で決めた予言では、     この大広間で立っていられるのは三人……。     ここに居るのは私を含めて四人。この意味が解るな?     神が予言を違えるわけにはいかぬのだよ。     ……どうする?互いに潰し合うか、私に潰されるか……」 凍弥&浩介『お前が消えろ』 即答。 アトラクションだろうがなんだろうが、独裁者はあまり好きじゃない。 浩介を潰すなんてことはしないし、菜苗さんは考えるまでもない。 だとしたらそんな冗談をぬかすドラえもんを潰すのが当然だ。 鑼衛門「───……不届き」 ───……。 鑼衛門「“神の裁き(エル・トール)”!!」 ドシューーーン!! 菜苗 「はうぅーーーっ!!?」 バジィッ!!ビジジジィイッ!! 凍弥%浩介『なっ……菜苗さぁーーーん!!』 それは一瞬の出来事だった。 青白い光が閃いたと思ったら、菜苗さんが巨大な光に飲み込まれ、やがて倒れた。 凍弥 「な、菜苗さっ……───菜苗さん!!」 慌てて駆け寄り、その体を抱き起こす。 浩介 「貴様……!女だぞ!?」 鑼衛門「フン?……見れば解る」 浩介 「くっ……!イカレてんのかてめぇーーっ!!」 怒り心頭の浩介が床を蹴った。 鑼衛門目掛けて駆けて行く───が。 鑼衛門「ィヤッハッハッハァッ……人は神を恐れるのではない。恐怖こそが神なのだ。     500万、1000万、2000万……2000万ボルト───“放電(ヴァーリー)”!!」 ビジィッ───ガカァアアアアッ!!!! 浩介 「ぐぉおおーーーっ!!!!」 ドゴシャアアアアッ!!! 凍弥 「浩介っ!?お、おわぁーーーっ!!」 バッシャアアアアアン!!!! 飛んできた雷光をよける。 てゆうかなんだよこのドラえもん!! まさか本当に雷を撃ってくるとは思わなかったぞ!? 凍弥 「くっそ……菜苗さん!?菜苗さん!!」 菜苗 「あひゃひゃひゃひゃ〜……!さ、触らないでください〜……痺れてます〜……」 凍弥 「へ……?」 菜苗さんを揺すってみたが、痺れているだけらしい。 しかも今のものの言い方からすると、足が痺れている時と同じ感触のようだ。 凍弥 「浩介?」 浩介 「し、痺れてる……」 凍弥 「………」 痺れるだけ……? 鑼衛門「ィヤッハッハッハッハ!!立っているのはお前だけになったぞ!     さあ招待しよう!私が向かう限りない大地(フェアリー・ヴァース)へ!」 凍弥 「……フェアリー・ヴァースって?」 鑼衛門「女湯」 凍弥 「行くか馬鹿!!」 鑼衛門「何故だ?神の決定だぞ」 凍弥 「ドラえもんのどこが神だ!」 鑼衛門「世界征服も夢じゃないところが」 凍弥 「正論だ」 素直に頷いた。 そうだよなぁ、ドラえもんって世界征服ロボだよなぁ。 凍弥 「けど、お前の言うフェアリー・ヴァースには死んでも行かん」 鑼衛門「ほう……ならば痺れさせてでも連れていく」 凍弥 「余計なお世話じゃあ!!ひとりで行きゃいいだろうが!!」 鑼衛門「だめだ。共犯者が居ないと心細い」 凍弥 「自称・神がそんなことでどうすんじゃい!!」 鑼衛門「ィヤッハッハッハッハ!!愚痴などは私を倒してから言うのだな!!」 凍弥 「う───」 鑼衛門が回転させ始めた刀が光を帯びる。 ───ヤバイ!菜苗さんや浩介を痺れさせたアレがくる! 鑼衛門「“神の”(エル)───」 凍弥 「うわヤバイ!ど、どうしたらいい!?」 浩介 「わ、我が知るか……!」 うおお!なんとかして避けるしか─── 鑼衛門「───“裁き”(トール)!!」 凍弥 「お、おわぁーーーっ!!!」 ドラえもんの手からバカデカく青白い光が放たれる!! それはまるで波動砲のように太い線状の光となり───って分析してる場合じゃねぇ! 凍弥 「バーリヤ!!」 浩介 「おお!ってギャーッ!!」 浩介を盾として構えバッシャアアアアアアアン!!!! 浩介 「ホゴゲェーーーッ!!!」 ……ああ浩介……お前シビレてるぜ……。 凍弥 「……ふう、危なかった」 浩介 「オガ、オガガガガ……」 『盟友の義に反する』とか言われそうだが、立場が逆だったら絶対浩介もやっていた。 うん、確信できるし。 鑼衛門「ィヤッハ……仲間を盾にしたか。     だがそうまでして、私に勝てる見込みでもあるのか?」 凍弥 「……無い、かな」 鑼衛門「ほう?ならば何故痺れることを拒んだ?」 凍弥 「フェアリー・ヴァースに行きたくないから」(キッパリ) 浩介 「お、おのれ同志……」 鑼衛門「ィヤッハッハッハッハ!!!そんな理由で仲間を盾にしたか!」 凍弥 「そうだ」 浩介 「自信満々に言うことかっ!───ふぐぉっ!?お、おおお……!!」 凍弥 「痺れてんだから無茶なツッコミはしないほうがいいと思うが」 浩介 「ほっとけ馬鹿同志……」 むう、二度もくらってるのに頑張るなぁ浩介。 菜苗さんなんて……寝てる。 凍弥 「……浩介、菜苗さん寝てるぞ……」 浩介 「なにっ!?どういう神経してるんだ!」 ほんとすげぇ。 ある意味で見習いたい度胸だ。 鑼衛門「“神の裁き”(エル・トール)!!」 ドシュゥウウウウウン!!! 凍弥 「でぇっ!?だわぁああっ!!!」 浩介 「へ───?キャッ……キャーーッ!!!」 バッシャァアアアアアン!!!! 浩介 「アガゴギャアアアアアアア!!!!」 凍弥 「ああっ!浩介!」 バリヤにした浩介の体が跳ねた。 さすがに三度目はキツかったらしい。 凍弥 「浩介……身を呈して俺を守ってくれるなんて……」 浩介 「お、のれ……同志……」 がくっ。 あ、気絶した。 凍弥 「だ、だめだ浩介!寝るな!寝ちゃだめだ!     お前が気絶したら俺は誰を盾にしたらいいんだ!!」 鑼衛門「何気に酷なこと言うねキミ」 凍弥 「盟友同士に『遠慮』なんて言葉はいらん」 鑼衛門「いきなり真顔になられても困るが……ィヤッハ、そろそろ終いにしようか!     五百万……一千万……二千万……───六千万……一億……!!」 凍弥 「へ……?」 鑼衛門「一億ボルトォッ!!」 凍弥 「な───ちょっと待て!!そんなの耐えられるかぁっ!!死ぬだろ!!」 必死の意見も虚しく、ドラえもんは構えた。 鑼衛門「“放電”(ヴァーリー)!!」 凍弥 「あわわぁーーっ!!!」 ───ゴインッッ!! 凍弥 「───へ?」 鑼衛門「……───」 ドシャア。 ドラえもん、気絶。 凍弥 「……天井から……タライ?」 しかもドラえもんの脳天に直撃。 ……何故? 菜苗 「うふふふふ〜♪     こんなこともあろうかと用意しておいたタライがお役に立ちました〜」 凍弥 「菜苗さん……?寝てたんじゃ」 菜苗 「はい〜、眠ってましたよ〜?     それでですね〜、夢を見ていましたらですね〜、     この大広間の天井にタライ仕掛けたことを思い出しまして〜」 それで……アレか。 凍弥 「ところで、痺れはもういいのかな」 菜苗 「まだ痺れています〜……困りましたね〜」 その割には嬉しそうに見えるが…… ……ところで……なんだ? やけに周りが明るい気がするんだけど 菜苗 「ところで〜、凍弥ちゃん〜?」 凍弥 「え?なに」 菜苗 「そこから離れた方が良さそうですよ〜?」 凍弥 「へ?なんで?」 いつものように相手の目を見て話していたお蔭だろうか。 倒れている菜苗さんは立っている俺ではなく、その上を見ていた。 ───イヤ〜な予感がする。 するが……見るしかない。 凍弥 「あの〜、もしかして、周りがヤケに明るく見えるのに関係ある?」 菜苗 「はい〜、関係と言いますか〜……そのものですね〜」 凍弥 「そのものって───ギャア!!」 おずおずと見上げてみると、俺の頭上に膨らんでいる青白い光。 恐らくはドラえもんが放ったヴァーリーとかいう───一億ボルト!? 凍弥 「キャーッ!?」 ギガァッ───ドバシャアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!! 凍弥 「ギャアアアアアアアアアアアアア!!!!!」 逃げようとして動いた途端、それは降ってきました。 多分、俺の行動がスイッチになってたんでしょうねぇ………………嗚呼、意識が─── ───………………。 凍弥 「あ、あうう……?」 目覚めて最初に見たものは薄暗い部屋……というか大広間。 近くには浩介と菜苗さんが居て、その様子からしてまだ痺れていることが解った。 窓から見える外は暗く、今が夜だということも理解した。 まあ薄暗い大広間を見た時点で解っていたことだが。 あー……なんにせよ、本当に一億ボルトじゃなくてよかった……。 浩介 「おお……起きたか同志……」 凍弥 「目は覚めた……けど、体が動かねぇ……」 菜苗 「奇遇ですね〜、わたしもです〜」 ……はぁ。 凍弥 「すまん、今日も泊めてもらうことになりそうだ……」 浩介 「今日も?なんだ同志、昨日から来ていたのか」 凍弥 「言わなかったっけ……」 浩介 「……よく解らん……思考もあまり回ってくれん……」 凍弥 「……だな」 体が動かず、そして夜とくれば……寝るしかないな。 凍弥 「そんじゃおやすみ」 浩介 「おお。しかしアレだな、この大広間……普段から掃除されておらんのか?     使用人がただひとりとして様子を見にこなかったが……」 凍弥 「そういや……」 俺は気絶してたから解らんが、 運ばれなかったってことは誰もこなかったってことだよな。 浩介 「なぁ菜苗さん。ここって掃除しない部屋なのか?」 菜苗 「すー……くー……」 浩介 「……寝てる」 凍弥 「うそっ!?さっき話してただろ!」 浩介 「でも寝てるぞ……すごいな」 凍弥 「だな……」 呆れを通り越して感心出来るなこりゃあ…… 凍弥 「じゃ、俺達も寝るか。今が秋になって間も無い時期でよかった」 浩介 「そうだな。ではおやすみだ、同志」 凍弥 「おー……」 こうして二日目終了。 あとは浩之を見つけて話し合うだけだから……明日でなんとかなるだろ。 停学期間もまだまだあるし……まいったな、停学中の課題もやらんと…… ……考えるのはやめにしよう。 オヤスミナサイ─── Next Menu back