───やっぱり騙される夜華さん───
彰利 「……準備は整いました。では、夜華さん……始めてくれ」 隣に座っている夜華さんを促す。 が、夜華さんは顔を真っ赤にさせて目を潤ませながら、顔を俯かせていた。 しかも体がガチゴチに震えている。 彰利 「あの……夜華さん?」 夜華 「わ、解っている!みなまで言うな!」 がばっ!と顔を起こした夜華さんは、深呼吸をしてから口を開けた。 やがて─── 夜華 「ど、どどど……どー……どどどどどどどど……!!」 彰利 「夜華さん……。     俺、ジョジョの擬音を真似してくれって言った覚えはないんですが……」 夜華 「だ、黙っていろ!ちゃんとやる!     ───ど、どどー……ど……くわぁああああっ!!」 彰利 「キャーッ!?」 夜華さん咆哮。 そして唐突に刀を抜き、アタイ目掛けてヒャアアアアアアアアッ!!? バシィッ!! 彰利 「あぶっ……あぶねっ……!!な、なにすんですか夜華さん!!」 アタイはなんとか成功した真剣白刃取りに安堵しながら、 顔を真っ赤にしている夜華さんを睨んだ。 夜華 「きっ……貴様……!これが本当に儀式に必要な言葉なんだろうなぁ……!!」 彰利 「誓ってもいい!これは儀式である!」 夜華 「ぐ、ぐぐぐ……!!」 彰利 「だから夜華さん!言うのです!じゃなきゃ悠介が助からんのですよ!?」 夜華 「うぐっ……!わ、解った……!!」 きゅっと目を閉じて、息を整え始める夜華さん。 その時、悠介が少し『んん……』とか言ったが、夜華さんは気づかなかった。 危なかった……だが早くせんと起きてしまう。 夜華 「で、では……ゆくぞ!もうヤケだ!わたしの生き様、とくと見よ!」 彰利 「よっしゃあ任せろ!ハッキリと凝視しましょう!!」 夜華 「な、わっ……し、しなくていいっ!!そんなことしたら斬るぞ!」 彰利 「なんと!夜華さんがワタシに『生き様を見よ』と言ったんでしょうが!     キミはなにかね!?ワタシを馬鹿にしているのかね!?」 夜華 「き、貴様はわたしが馬鹿にするまでもなく馬鹿だろう!」 彰利 「なっ───ばっ……!馬鹿とはなんだコノヤロウ!!     今すっげぇヒドイこと言われた気分ですよ!?」 夜華 「貴様は日々常々、わたしにヒドイことを言っているだろう!!     それを考えれば今のわたしの言葉など、砂粒のようなものだ!」 彰利 「ゲェーーーッ!!ハッキリと言われた!!ヒドイ!ヒドイや夜───はうあ!」 いや落ち着け! ここで夜華さんに対抗して叫ぶのは得策ではない! てゆうか、あとのことを考えれば……ねぇ? 彰利 「……では、凝視はしないから、まずは儀式を完了させましょう」 夜華 「え……?」 彰利 「え?ではないですぞ夜華さん。我らの目的は悠介を救うことですぞ。     そう、目的を違えている場合ではないのです。と、ゆうわけでお願いしますぞ」 夜華 「あ、あ……?ああ……そ、そうだな」 急に大人しくなったアタイに戸惑いを感じたのか、夜華さんは釈然としない。 だが、一応はやる気ではあるらしいので。 夜華 「……では、いくぞ」 彰利 「ウィ」 夜華 「………………ど……ん…………く……、ど、どどど……」 彰利 「夜華さん、詰まっちゃダメですぞ」 夜華 「解っている!───行くぞ、彰衛門!」 彰利 「オウヨ!」 アタイと夜華さんはガッと腕をクロスさせて叩き合わせ、頷きあった。 やがて─── 夜華 「ど───ドン……!ど……どどど……!!」 ……むう、埒があかねぇザマス。 しゃあない……。 彰利 「夜華さん、もういいよ」 夜華 「あ、な……?な、なにを言うんだ彰衛門!わ、わたしはやれる!やれるぞ!?」 彰利 「いえいえ、そういう意味じゃなくて。     アタイが先に言うから、夜華さんはその後に言ってくれ」 夜華 「なに……?いいのか?そのようなことをして。     儀式というものは、形式をなぞって行うものだろう?」 彰利 「……よいのですよ。夜華さんの苦しむ姿は見ていたくないですからな……」 どもってばっかで、ちーとも先に進んでくれんし。 なにかきっかけがあれば、進んでくれるでしょうから。 夜華 「彰衛門……す、すまん……わたしが未熟なばかりに……!」 彰利 「未熟者はあんなに正確に人を切り刻まないと思うけど……」 夜華 「───なにか言ったか?」 彰利 「なんでもねぇザマス。そんで、新たな言葉でござるが……耳、いいかな」 夜華 「あ、ああ……」 夜華さんが安堵の溜め息を吐きながら、アタイに耳を近づける。 アタイはその耳に言葉を放った。 夜華 「な、なにぃっ……!?」 ……結局、夜華さんは再び顔を赤くすることになった。 彰利 「では、まいりますぞ!」 夜華 「わわ……解っている!」 アタイは息を吸い込み、クワッと目を見開かせた。 そして─── 彰利   「彰利!」 夜華   「し、篠瀬の!」 彰利&夜華『モルゲン・ムジーク(モーニン・ミュージック)!!』 夜華   「ラ……ラララ……ラップ調……編……」 第一関門突破!そして次だ夜華さん! 夜華 「ど、ど───どどどど……!!」 NO!ダメYO!! 彰利 「ええい夜華さん!何故に『どんつくどんつく』の一言が言えないのですか!」 夜華 「うるさい!わ、わたしだってなぁっ!」 彰利 「言い訳はよろしおす!!もう時間が無いどすよ!?」 早くせねばルナっちが目覚めてしまうではないか……っ! 夜華 「ぐ……!わ、わかった……!その次はない、という心構えでいくから……!     あ、彰衛門……!絶対に間違えたりしないでくれ……! 彰利 「任せとき!あちきはそげなもん間違えたりしませんえ!?」 夜華 「よ、よし……!いざ!」 言葉を放つだけだってのに大袈裟すぎる夜華さんは、ようやく声を張り上げた。 夜華 「ドンツクドンツク!」 彰利 「YO!YO!」 夜華 「ドンツクドンツク」 彰利 「アハァ〜?」 夜華 「ドンツクドンツク」 彰利 「マイクチェック・ワンツー!」 夜華 「ドンツクドンツク───ひうぃごー!」 彰利 「悠介どんは〜ネボスケどん!モーニン目覚ましスイッチオォン!」 夜華 「ドンツクトンツク」 彰利 「YEAH〜!」 夜華 「ドンツクドンツク」 彰利 「カモンカモン!」 夜華 「ドンツクドンツク」 彰利 「チェッケラーッ!」 夜華 「ドンツクドンツク……ひうぃごー!」 彰利 「寝る子は育つMY身長!でも、起きぬやつらはチェケラッチョ〜ゥ!」 ───儀式……完了! 儀式っつーか、夜華さんをからかいたかっただけですが。 夜華 「……彰衛門?」 彰利 「………」 夜華 「お、おい、彰衛門?何故悠介殿は……おい?お、起きると言ったよな?     だ、だからわたしはあんな恥ずかしい真似を……!!」 彰利 「いや、落ち着いて夜華さん。ホレ、よく見てみぃ」 夜華 「なに……?」 夜華さんが悠介を覗く。 いつの間にか完全に布団に潜っていた悠介の体は、 布団越しでも解るくらいに震えていた。 夜華 「なっ……なんなんだこれは!まさか悠介殿の身になにか……!?」 彰利 「いや、なんつーか……どう見ても笑ってるだけっしょ……」 というか既に起きていて、 アタイのからかいっぷりと夜華さんの騙されっぷりを聞き届けていたってわけだ。 ……悠介ってこんなに冗談好きだったっけ? とかなんとか思ってる時でも布団は揺れ、中からは─── 『ぐ、ぐふはっ……!くっ……!くははははは……!』という笑い声が漏れてきている。 なにやらツボにハマッたらしい。 ……うーむ、なにやら新鮮だ。 彰利 「いや!そげなことよりも夜華さん!」 夜華 「な、なんだ!?やはりなにかあるのか!?」 彰利 「そうじゃねぇでしょう!確かに悠介は起きた!     けど、儀式の前に言ったっしょ!?動き出す前に抱き留めるのです!」 夜華 「───!そ、そうか!     そうしなければ『くるま』に体当たりしたくなるんだったな!」 夜華さんは慌てて、布団に包まっている悠介を抱き留めた。 ……というか、ハタから見れば抱き着いているようにしか見えない。 彰利 「───ム」 だがしかし、予想に反して悠介ってば笑いに夢中で動じません。 てっきり慌ててくれるかと思ったのに───ゾクリ。 彰利 「な、なんだ……!この尋常ならざる力の波動……わぁあああああああっ!!!」 溢れ出した殺気の出所を探してみてびっくり!! 宙に浮かんだルナっちが、 悠介に抱き着いてる夜華さんを見て、目を真っ赤に変異させてます!! い、いかーーーん!! 最悪の状況下でルナっちが目覚めた!! 彰利 「や……!やー……!!夜華さーん……!!」 アタイは極めて小声で夜華さんに語りかけた。 声を張り上げて、ルナっちを刺激しないように。 彰利 「夜華さーん……!!夜華さーん……!!」 だが、笑いがピークを迎え、 大笑いをしている悠介を押さえるのに必死で、声なんぞ届いてねぇ。 彰利 「夜華さん……!夜華さーん……!に、逃げますわよー……!!夜華さん……!」 嗚呼……!!! なんか背後の虚空に浮いてるルナっちから殺気が溢れてくる……!! ヒィイ、背筋が凍りつく……! 胃がキリキリする……!! ああ……!ああもう……!! 彰利 「逃げるっつーてんでしょ夜華さん!!聞きなされ!!」 夜華 「な、なにっ?」 ルナ 「!!」(クワッ!!) 夜華 「うわぁっ!?」 彰利 「ギャア!?」 しもうたわ! じれったくて、つい叫んでしまいました! そして予想通りルナっち発動!! しかもまず、近くのアタイを狙っております! 彰利 「お、落ち着けルナァーーーっち!!     ア、アタイは夜華さんにたぶらかされたんじゃーーっ!!」 夜華 「な、なにぃーーーっ!!?あ、彰衛門!ききき貴様ァッ!!」 彰利 「というわけでとんずらぁーーーっ!!!」 夜華 「させるかぁーーーっ!!」 彰利 「ギャア!?」 逃げ出したアタイの胴にステキなタックルをブチかます夜華さん。 アタイを逃がすまいと、しっかりと抱き付く感じにタックルしてくれちゃいました! てゆーかね!タックルされて座ってるような状態の視線の中で、 ルナっちが死気を発しながら近寄ってきてるんですがね!! 彰利 「イヤァ離して夜華さーーーん!!     アタイはこれから遥かなる旅路に出かけるんだァーーーッ!!」 夜華 「ふざけるな貴様!!やはりまたわたしを騙したのだろう!?」 彰利 「な、なにをおっしゃる夜華さん!そげなことしてませんよ!?」 夜華 「うそをつけ!そうでもなければ、     わたしに全てを押しつけて逃げ出そうとするわけがない!」 彰利 「はてさてなんのことやら……アタイはお便所に行こうとしただけどすよ?     まったくなにを無茶苦茶なことを言いはるんどすか、このカスは」 夜華 「なっ……カスと言うな!     それに貴様は『とんずらぁーーー』と言っていただろう!」 彰利 「アレは現代語で『便所に行きてぇ』って意味なんですよ!」 夜華 「ふざけるな!いくらわたしでもそんなことは騙されないぞ!     き、貴様ひとりに逃げられたら、わたしが殺されてしまうではないか!!」 彰利 「なんと!夜華さんたら自分が助かりたいがために、人をダシにしようと!?     なんという外道!恥じを知りなさい夜華さん!!」 夜華 「恥じだらけの貴様にそこまで言われる筋合いなどないわ!!」 彰利 「ギャアごもっとも!って夜華さん!?『恥じだらけ』はヒドイんじゃない!?」 夜華 「うるさい!と、とにかくだ!逃げるならこの状況の後始末をだな……!」 彰利 「あ」 夜華 「え?」 夜華さんが叫ぶその背後で、大きな鎌を振り上げルナっちがギャーーーッ!! 彰利 「あ、甘いわぁーーーッ!!」 アタイは夜華さんにカニバサミをしてバク転をして、なんとかそれを避けた。 チィイ!ルナっちったら目がマジだ! ルナ 「わたしの服を汚しただけじゃ飽き足らず、     女を連れ込んで悠介に手を出そうだなんてね……。     ホモっち……冥界に堕ちる覚悟は出来てるのよね?」 彰利 「標的が俺に固定ですか!?か、勘違いしてはなりませんよルナっち!     この計画を考えたのはここにおわす夜華さんなんですよ!?」 夜華 「こ、こら貴様っ!!どうしていつもいつもわたしに……!!」 彰利 「シャラップ!」 騒ぐ夜華さんの口を塞いで、ルナっちをキッと睨んだ。 フフフ、我に起死回生の秘策あり!! 彰利 「クォックォックォッ……!!ええがぁルナっちぃっ!!     夜華さんは全日本にその名が知れ渡るほど有名なマフィアのボスなんだぞ!     夜華さんが一声あげれば、ルナっちなんぞ一分でブッ殺ですよ!?」 ルナ 「どうしてマフィアが『全日本』なのよ」 彰利 「え?マフィアって日本の組織じゃなかったっけ」 ルナ 「………」 彰利 「……えーと……ィヤッハッハッハッハッハ!!!」 ルナ 「死になさい」 彰利 「ハァーーーーッ!!!!」 目を変異させたルナっちが、大鎌を振りかぶって飛んできた!! こ、これはいかーーーん!! ……が、我に起死回生の秘策アリ!! 彰利 「このイージスの盾でキミの攻撃を防ごう」 アタイはグッと夜華さんを押さえ、盾として構えた。 夜華 「へっ?」 夜華さん、素っ頓狂な声で数瞬の間、時を止めた。 夜華 「……な、わ、わぁーーっ!!!     や、やめろ彰衛門!貴様男としての誇りがないのかぁっ!!」 彰利 「皆無!!」 夜華 「言い切るなぁっ!」 彰利 「そげなもんは170年前にドブ川に捨てもうした!     てゆうか来ますよイージス!!構えなさい!」 夜華 「誰がイージス───うわぁああああっ!!!」 ガギィンッ!! ルナっちの鎌と、夜華さんの刀が火花を散らした。 ルナ 「そこをどきなさい……!邪魔をするならあなたも消すわよ……!」 ぶつかった鎌と刀が鍔迫り合いを始める。 しかし流石は死神。 力じゃあ夜華さんが負けてしまう。 夜華 「ど、どきたいのはやまやまなのだが……!!こら彰衛門!離せ!」 彰利 「そう……今のアタイはまさに神。Saga2で言う、アポロンなのだ……。     秘宝を操り、女神の力を我が手にと陰謀するナイスガイ……!」 夜華 「あ、彰衛門……!?」 彰利 「でも死ぬのはイヤだから───自爆は任せたぞ夜華さん!」 夜華 「なんの話だっ!!」 彰利 「ホラ、この『秘宝・ちからのマギ』をあげるから」 言って、ズシャアとレタスを差し出す。 夜華 「ただの野菜ではないか!」 彰利 「なにぃ!?レタスさまとお呼び!!」 まったくなんと失礼な! ルナ 「……ちょっと確かめたいんだけど。     こんな馬鹿なことを考え付いたのはホモっちよね?」 彰利 「夜華さんです」 夜華 「なっ───ち、違うっ!!考えたのは彰衛門だ!」 彰利 「実行したのは夜華さんだ!だから俺無罪!     しかも慌ててるところが怪しいと思わんかねルナっち!」 夜華 「おのれ貴様っ!貴様には女人を庇うという心がないのか!!」 彰利 「だって夜華さん、女である前に武士だもの!」 夜華 「うぐっ……!!だ、だがしかしな……!」 彰利 「頭が高いぞルナっち!このお方こそ、アタイの最高司令官、夜華さんぞ!?」 ルナ 「最高司令官のわりに、泣きそうなくらい慌ててるけど」 彰利 「照れてるんだ」 夜華 「照れるかっ!!」 おお、元気になった。 夜華 「黙って聞いていれば好き勝手言いおって……!」 彰利 「いや、黙ってない黙ってない」 夜華 「た、確かにわたしは武士として生きているが……!     武士にも性別はあっても構わないだろう!     貴様はわたしのどこを見て、女人らしくないと言うのだ!」 彰利 「んー……ここかな」 アタイは隙だらけの夜華さんの耳に、フゥッと息を吹いた。 夜華 「ぞわわわわわぁあああああああああああああっ!!!!!!!!」 夜華さん、絶叫。 夜華 「な、なななっ……ん……!なななにをするんだぁっ!!」 涙混じりに顔を真っ赤にさせながら吼える夜華さん。 でもいかんぜよ。 彰利 「ダメよ夜華さん。     耳に息を吹きかけられたおなごというのは、『あふん……』ぐらい言えないと。     なんですかその色気の無い絶叫は」 夜華 「無茶を言うな!耳に息など吹きかけられれば誰であろうと気色悪い!」 彰利 「果たしてそうかな?」 アタイは左手で夜華さんを盾にし、右手で冥月刀を構えた。 そして、月操力を胎動させる。 発動させるのは当然、あの月操力だ。 夜華 「な、なんだ……何かおかしいか?誰であろうと、急に耳を息を……あ」 夜華さんの視界の中、ひとつの人影が動いた。 その人影はゆっくり歩き、 アタイと夜華さんの会話に呆れ果てて隙だらけのルナっちの耳に───フゥッ。 ルナ 「わぁあああっひゃぁああああああああああああああっ!!!!!!」 耳に息を吹きかけられたルナっちは絶叫した。 ……手本にもなりゃしねぇ。 ルナ 「だっ、だだだ誰っ!?」 よほど驚いたのか、目に涙まで溜めて顔を真っ赤にさせたルナっちが振り向く。 ───と、そこに居る悠介。 ルナ 「あ、あれ……?悠介……?え、え……?い、いま……?」 真っ赤なルナっちが、余計にカ〜ッと赤くなってゆく。 それどころか訳が解らなくて、おろおろしてる。 うおう……ルナっちにこんな可愛げのある一面があったとは。 だが、とうの悠介はアタイを睨んでいた。 タネ明かしはこうです。 発動させたのは月影力で、悠介を操っただけ。 だがしかし、人を動かすくらいのものとなると、連結魂とかが必要になるわけで。 そこでアタイは、冥月刀を使ったわけですじゃ。 冥月刀の月影力とアタイの中の月影力を使えば、 人ひとりの操作なぞ……クォックォックォッ。 うむ、せっかくだからもうちょい遊びますか。 ルナ 「え───わっ!?」 悠介 「ぐあっ!?」 アタイは悠介を巧みに操り、ルナっちを抱き締めさせた。 そんでもって、抱き締めた状態で頭を撫でたりなどをさせて……笑いをこらえた。 そんなアタイを殺戮の波動を孕んだ目付きで見る悠介。 ……月影力といたらアタイ、死ぬかも。 悠介 「あ、あのな、ルナ?よく聞けよ?これは俺の意思じゃなくてだな……」 ルナ 「あ、あの……ごめんなさいっ!」 悠介 「へ?」 彰利 「ごめん……なさい?」 ───馬鹿な! あのルナっちが『ごめんなさい』!? ルナ 「わ、わたし……悠介がせっかく買ってくれた服を汚されちゃって……!」 悠介 「服……?」 わぁ、なんだか超絶にアタイが睨まれてる。 もしかしてアタイが汚したってことがバレバレですか? 悠介 「汚れ、見せてみろ」 ルナ 「あ、あの、あの……嫌いにならない……?」 悠介 「……はぁ。見せてみろ」 ルナ 「やだっ!お、お願いだから嫌わないって約束してよ……!」 悠介 「………」 ───ルナっちの言葉を無視して、悠介の視線がルナっちの服に落ちる。 それを感じたルナっちは暴れたが、 嫌われるかもしれないという不安で力が入らなかったようで、抵抗にもならなかった。 ……まあもっとも、暴れたところでアタイが悠介操ってるから抵抗なんて出来ませんが。 『操る』ってことは、その潜在能力に至るまでのことを言う。 だから、いくらルナっちが抵抗しても、強引に押さえつけることが可能なのだ! そう!たとえ体が力に耐えきれず、血管がブチブチ切れようが、押さえつけられるのだ! ……そんなことしませんけどね。 悠介 「……なんだ、汚れなんてないじゃないか」 ルナ 「え───?あ、あれ……?」 ひとまずは悠介を操って、その汚れを確認させた。 が、当然の如く汚れなどない。 月影力発動させる前に月然力で落としましたから。 『自然』ってのは万能ですからね。 衣服の汚れを浮かせて落とすなんて簡単です。 ……もっとも、自然を操れる月然力だからこそ出来る芸当ですが。 彰利 「よかったどすな、ルナっち。汚れが気の所為で」 ルナ 「ホモっち……これ、ホモっちが……?」 彰利 「さあ?どうデショ」 おどけ、とぼけて見せた。 自然と苦笑できる瞬間って、なんだか暖かい瞬間が多いものですよね。 ルナ 「……汚れを落としてくれても、     ホモっちが汚したって事実は消えないんだからね……。     あとで覚悟しておきなさいよ……」 彰利 「………」 ドサクサ紛れで許してもらおう作戦、見事に失敗。 悠介 「……やっぱりさっきからの騒ぎはお前が元凶だったわけだな?     うるさくて眠れたもんじゃなかった」 夜華 「え……?あの、奇病とやらで眠っていたのでは……!?」 悠介 「奇病?……馬鹿言うな、健康そのものだぞ。     篠瀬が妙な言葉を言ってた時も起きてた」 夜華 「な………」 あ……やべぇ。 夜華さんから怒りのオーラが……。 夜華 「……死ぬ覚悟は出来ているんだろうな、彰衛門」 彰利 「出来てません。だから見逃して?」 夜華 「見逃すと───思っているのか!」 彰利 「超絶に思ってます」 夜華 「こ、このっ!!」 夜華さんが刀を逆手に持ち、ソレをアタイの脇腹目掛けて振る! 彰利 「甘いわ!」 アタイはそれを華麗に避けボゴシャア!! 彰利 「ぶべぇーーっ!!」 刀を避けた刹那、アタイの顔面に死神ナックルが贈呈されました。 アタイはたたらを踏み、その場に尻餅をついてしまった。 彰利 「うげっぴうげっぴ……!!な、なにをなさるのルナっち……」 ルナ 「ナックル」 正論だ。 悠介 「……さて。覚悟、出来てるよな?」 彰利 「あ、あれ?ダーリンたらどうして動け───はうあ!」 しもうた! ルナっちに殴られた拍子に、冥月刀を落としてしもうたがよ! 夜華 「彰衛門……貴様に必要な灸はひとつやふたつでは足りぬようだ……!!」 彰利 「あー……えーと……」 アイヤァ〜……、尻餅ついたことで夜華さんも離してしもうた。 ……いやん、絶対絶命? 彰利      「キ、キミタチ!!三人がかりなんて卑怯ですよ!?」 悠介&ルナ&夜華『聞く耳持たんっ!!!』 彰利      「ひゃああああああああっ!!!!!」 ───その日。 遥か高位置に聳え立つ晦神社に、 過去現在中最大と言って差支えないほどのアタイの絶叫が大気を揺るがした。 三人の攻撃にはとことんまでに容赦がなく(特に夜華さん)…… どさくさに紛れて冥月刀を手にし、 月生力の回復を最大にしても回復が追いつかないほどの生き地獄を体感させられた。 ……ちなみに言うと、また晦神社からも母家からも追放された。 これぞ人呼んで『大墓穴』。 Next Menu back