───クソガキャア彰利───
───……バガァン!!ズガガガガガーーーッ!!!! 彰衛門「ギャオォオオオーーーーッ!!!!」 凄まじい雷光が閃いた。 その雷光がアタイをシビレさせてなければ、 アタイはきっと『まあキレイ!』とでも言ってただろう。 彰衛門「おごごがが……!!」 悠之慎「お前、今日の昼餉、無しな」 彰衛門「ゲゲェエエーーーーッ!!!!!」 呼びとめようとしたが、無情にも悠之慎は歩いていってしまった。 彰衛門「ノ、ノォーーーッ!!」 風太 「……今度はなにしたのかな」 彰衛門「………」 こんなやりとりも三日目。 既に騒ぎの元凶が俺であるということが既定とされている。 彰衛門「言っておくがな風太。俺はただ嗄葉に、     悠之慎の恥ずかしい思い出ベスト10を話して聞かせただけだぞ」 風太 「べすと10ってゆうのがなにかは解らないけど、     とにかく恥ずかしい思い出を話したんだよね?」 彰衛門「いかにも!」 風太 「……それは彰衛門が悪いと思うよ」 彰衛門「なんと!?でもですね風太、     嗄葉が『なにかおはなしして〜』って言ってきたんだから仕方ないでしょう!     キミはなにかね!?嗄葉の願いを無下に断われることができるかね!?」 風太 「あはは、まず最初の考え方が悪いと思うよ?     悠之慎の思い出じゃなくて、     彰衛門の思い出を話して聞かせればよかったんだよ」 彰衛門「………」 風太 「………」 彰衛門「サテ、木登りでもしますか。教えてさしあげましょう」 風太 「ふふっ、そうだね」 クスクスと笑う風太を余所に、アタイはさっさと歩き出した。 こいつの笑顔はどうにも苦手である。 ───…………。 彰衛門「じいやの過去?」 なんとか木登りを成功させると、風太はそこからの風景を見ながら訊いてきた。 風太 「うん」 彰衛門「それを知りたいと?」 風太 「うん。どういう人だったのかなって。恩師とか居るのかな」 彰衛門「グウム、話すだけなら構わんが……長ェぜ?」 風太 「いいよ、少し話をしていたい気分なんだ」 彰衛門「……ジジくさいやっちゃのう」 まあそれはそれとして、アタイは語ることにした。 アタイがまだクソガキャアだった頃の話を─── ──────。 季節は秋。 何度も繰り返した時の中で、アタイは未だに時を繰り返していた。 相変わらずの時を相変わらずじゃなくすためには努力がいる。 それでもアタイの行動ひとつで、歴史ってのは結構変わるもんだった。 そして……今回の歴史の中で、 アタイは今までよりももっと別のことをしようと思ったのだ。 楓巫女の過去を見届け、だがゼノには負けちまった時代。 その次の時代が今。 そして───俺はこの時代で、未来を開くことになる。 ───それは小学の頃の物語。 小学の頃。 俺は雪子さんに引き取られてからも小学校には通っていた。 ただ、それはあまりいいものではなく、どちらかというといい思い出の無いものだった。 だから子供の頃は嫌いだった。 早く中学になって、中井出達に会いたかった。 だって、俺が楽しい時の中に身を置けたのは、どの歴史でも中学からだったから。 悠介は俺を生き返らせた反動で入院しているし、 退院したとしても創造の理力の所為で孤独になることは今までずっと避けられなかった。 彰利 「……つまらないな」 小学の頃の口癖はどの歴史でも変わらない。 無理に楽しくあろうとしても、どの歴史でもつまらなかった。 俺を見下してくるヤツも居たし、気遣ってくるヤツはとても鬱陶しかった。 今もそうだ。 桐生 「どうしたの?弦月くん。今、給食の時間でしょ?食べないの?」 桐生仁美(きりゅうひとみ)。 この小学校では人気の高い先生だ。 彰利 「俺、給食費払ってないから。だから食わない」 桐生 「………」 本当に鬱陶しかった。 わざわざ教室を抜け出してまで校舎裏に来たっていうのに。 この先生はいつも俺を見つけては、構おうとする。 本当に、鬱陶しかった。 彰利 「あのさ、先生。俺のことはほっといてよ」 桐生 「だーめーでーす。先生として、キミみたいな子はほっとけません」 俺の言葉にムッとした顔で言うセンセ。 融通が利かないから好きじゃない。 ただでさえ、子供の頃は苛立っているっていうのに。 だから適当な言葉を使ってさっさと逃げようと思った。 桐生 「どうして食べないの?」 彰利 「給食費払ってないからって言ってるゴワしょ。     おいどんの家は雪子さんの精一杯でもっとるんですから。     だから給食費貰っても、それは雪子さんのサイフにそっと返してるんでゴワス」 桐生 「お、おいどんって……」 彰利 「そんなわけで、おいどんは給食食わねぇでゴワス。     解ったらおいどんには構わねぇでくれでゴワス」 桐生 「……じゃあ、こうしよ?先生のお弁当を分けてあげるよ!」 彰利 「フッ……弁当で釣ろうったってそうはいかねぇぞカスが」 ボカッ!! 彰利 「ギャーッ!!」 桐生 「先生に向かって『カス』とか言っちゃだめでしょ!!」 なんと!先生がアタイにゲンコツを!! 彰利 「うわははうわはははぁ〜〜〜ん!!!先生がぶったYO〜〜〜ッ!!!」 桐生 「あっ……!ご、ごめんねっ!?でも弦月くんがあんなこと言うから……!!」 彰利 「ちくしょ〜〜〜!ママにもぶたれたことないのに〜〜〜!     ママに言いつけてやる〜〜〜っ!!」 アタイは泣いた子供のようにとたとたと走った。 桐生 「あ、ちょっと待って弦月く───」 彰利 「とんずらぁあああーーーーーーーーーーっ!!!!」 桐生 「ええっ!?」 そして大体の距離が開くと、全力でとんずらした。 声  「こ、こらぁああーーーーっ!!待ちなさ───速ぁーーーーっ!!?」 …………。 ───…………ピンポンパンポーーーン。 彰利 「あ〜ん?」 桐生センセから逃走し、校庭の木の影に身を隠していると、校内放送が聞こえた。 声  『弦月彰利くん、弦月彰利くん。職員室まで来なさい』 彰利 「ゲゲェーーーッ!!!」 ……小学校で呼び出しくらったのはこれが初めてだった。 やっぱり俺の行動ひとつでも、物事は変わるものらしい。 呼ばれたからには行くしかあるまい。 それに……なんだかこれをきっかけに、 この退屈な小学校の時間も変わってくれる気がした。 ───……。 桐生 「じゃ、一緒にお弁当食べよっか♪」 彰利 「………」 なんつーか、子供っぽい人だと思った。 考えてみれば俺、この人と真っ直ぐにぶつかったことなかったんだよな。 しかし職員室に呼んで、宿直室に連れて来てまで弁当食わせたいっすか。 桐生 「〜♪」 桐生センセは上機嫌だった。 恐らく、弁当が好きなのだろう。 そういや噂で、給食があるってのに弁当持ってくるセンセが居るって聞いたな。 この人がそうだったのか。 桐生 「じゃ〜ん♪ほら見て弦月くんっ!豪華でしょ〜っ!」 桐生センセが弁当を見せてくる。 そして蓋を用意して、そこに弁当を乗せようとする。 おそらく、俺の分なのだろう。 桐生 「あ、そうだ。その前にお茶用意するね?他の先生には言っちゃだめだよ〜?」 彰利 「御意」 桐生 「……弦月くんってさ、喋り方が子供っぽくないよね」 頬を掻きながら、桐生センセが宿直室の奥へと消えた。 待つのも面倒で、腹が減ってるのは確かだった俺は、先に頂くことにした。 彰利 「……い〜た〜だ〜き〜ます!!」 味皇さまのように言うと、俺は箸を手に弁当に取りかかった。 がつがつがつ……おお美味い!! こりゃあ箸が進みますなぁ!! 声  「あれぇ……?お茶どこに……あ、あったあった!     ポットと茶漉しを取って、と……お待たせ弦月くん!お茶あったよ!」 彰利 「グァッグァッグァッグァッ!!!」 がつがつがつ!! 桐生 「あ、あぁあーーーーーっ!!!わたしのお弁当ーーーっ!!!」 彰利 「グァッグァッグァッグァッグァッグァッ!!!!!!」 がつがつがつがつ!!!! 桐生 「ちょ、ちょっと弦月くん!!勝手に人のお弁当食べちゃだめでしょ!!」 ババッ! 彰利 「アイヤーッ!?タオチェイ!!」 なんと弁当が取り上げられてしまった!! 我が腹はまだ満たされておらぬというのに!! 彰利 「なにをなさる!それはおいどんのですよ!!」 桐生 「違うでしょ!これはわたしのお弁当!!」 彰利 「うそおっしゃい!!」 桐生 「ウソついてるのは弦月くんでしょ!!」 彰利 「な、なに〜〜〜っ!?証拠あンのかこの野郎〜〜〜っ!!」 桐生 「めっ!」 ビシッ!! 彰利 「アウチ!!」 屁理屈こねながら伸ばした手が叩かれた。 彰利 「な、なにをなさる!教師のくせに体罰かね!!」 桐生 「体罰なんかじゃないよ!これはわたしのお弁当なんだからね!!」 まるで子供の駄々のような口調で言う桐生センセ。 だがそんなことはどうでもいい!今はメシ!メシだ!! 中途半端に食った所為で余計に腹の虫が鳴っとうぜ!! 彰利 「ヨコセ!よこせ!メシ!!」 桐生 「だめだったら!」 彰利 「何故かね!先生くれるって言ったじゃない!あれはウソだったの!?」 桐生 「全部あげるなんて言ってないよ!」 彰利 「全部なんて食いませんよ!半分いただこうとしただけですよ失礼な!!」 桐生 「うそでしょ!全部食べちゃう勢いだったよ!」 彰利 「目が腐ってるんでないかい?」 ボカッ!! 彰利 「ギャアアーーーーッ!!!!」 またゲンコツを貰ってしまった。 桐生 「人にそんなこと言っちゃダメだよ!!」 彰利 「大丈夫!俺先生のこと人間って思ってないから!!だからOK!!メシくれ!」 ボカッ!! 彰利 「アウチィーーーッ!!」 またゲンコツ!? 桐生 「わたし人間だよ!」 彰利 「なに〜〜〜っ!?証拠あンのかこの野郎〜〜〜っ!!!」 桐生 「どこからどう見ても人間でしょ!!」 彰利 「知らん!そげなことよりメシ食わせなさい!     これで食わせなかったらおめぇ……ウソだぜ!?」 桐生 「先生に向かって『おめぇ』なんて言っちゃダメでしょ!!」 来る!ゲンコツだ! 彰利 「甘いわぁーーーっ!!」 桐生 「あれぇっ!?」 アタイは上体を逸らして、 未来で放映されるマトリックスの真似でそのゲンコツをかわした!! だが─── 桐生 「あ、わわっ!わぁーーーっ!!」 彰利 「ややっ!?ゲェェエエーーーーッ!!!!!」 振るった桐生センセのゲンコツから、お茶用に持ってきたポットがすっぽ抜けた!! 宿直室のポットってのは何故か旧式が主で、蓋がパカパカと簡単に開くヤツだった。 やがてそれはそれが当たり前のように開き、 中のお湯は上体逸らしをしたアタイへと───ばっしゃああああ!!!!! 彰利 「ウギャアアアァァァーーーーーッ!!!!!!!」 桐生 「あわわぁあーーーーーっ!!!!ごめんねごめんねごめんねぇーーーっ!!!」 ───…………。 ───……。 彰利 「いてぇよぉおお〜〜〜〜〜っ!!いてぇよぉおお〜〜〜〜っ!!!」 桐生 「ご、ごめんね弦月くん……け、決してわざとじゃないんだよ?」 彰利 「ウソよ!!     お湯をぶっかけた時のアータの顔、獲物を狙う狩人のようだったわ!」 桐生 「そ、そんな顔してないもん!!」 お湯をぶっかけられてからというもの、 俺はまったくの遠慮なく桐生センセをからかいまくった。 かなり驚いたけど、この人はやっぱり性格が子供だ。 小さなことですぐにつっかかってくるし、 かと思えばくだらないことですぐに騙されてくれる。 純粋なんだ、つまり。 桐生 「もう、いいから火傷したところを見せてよ。手当てなら任せてくれていいから」 彰利 「あ〜ん?そげなこと言って、金とるんだろ!     えぇーーーっ!!?あたしにゃちゃーーーんと解るよ!!」 桐生 「そんなもの取らないよ!」 彰利 「馬鹿者!お金に対して『そんなもの』とはなにかね!!」 桐生 「あぅ、ご、ごめんなさい……って、どうしてわたしが謝らなきゃいけないの!」 彰利 「それは貴様が子供っぽいからだ。教育がなっちょらん!!」 ドカバキ!! 彰利 「ぎゃああぁぁーーーっ!!!」 ……あとで解ったことだが、桐生センセの家は空手の道場らしく、 実は子供の頃から男に混ざって空手をしていたとかで……その腕っ節は男を凌ぐらしい。 そしてカッとなると手が出るとか。 キレるまで桐生センセをからかった俺はワイルドハーフの漫画内であった、 『地獄先生ぬ〜べ〜』の花子さんが殴られた時のような効果音とともに、 見事なまでにボコボコにされた。 ───……。 彰利 「いてぇよぉおおお〜〜……」 桐生 「痛くないっ!」 彰利 「これ!そこでは『よ、吉田ぁーーーっ!!』って言わなきゃダメでしょ!!」 桐生 「そんなの知らないよ!ほらっ、早く火傷した場所見せなさいっ!」 桐生センセが強引に俺の服に手をかけた!! 彰利 「キャアーーーッ!!エッチィーーーッ!!!」 桐生 「ひえっ!?ご、ごめんねっ!?     ───って!な、なななに考えてるの弦月くん!!」 彰利 「そっちこそ何考えとんのですか!     こんな個室に連れ込んで、人の服を脱がそうとするなんて……!!」 桐生 「えぇっ!?ち、ちがうよ!そんなこと考えてないよっ!!」 彰利 「親切なフリして、俺の体が目当てだったのかね!」 桐生 「違うってば!」 彰利 「キャアア!!怖いわママーーン!!たっけてーーーっ!!」 俺は体を跳ねらせて立ち上がり、すぐさま宿直室から逃げ出した!! 声  「あぁっ!?こ、こらぁーーっ!!!」 ───…………。 ───………… ………… ……ズドドドドド……ドカバキ!! ギャアアアーーーーーーッ!!!!! ズルズル……どしゃっ。 彰利 「いてぇよぉおお〜〜〜!!いてぇよぉおお〜〜〜〜〜っ!!!」 桐生 「痛くないっ!!」 校内を一周して宿直室に戻り、残りの弁当を食おうとした我が目論見は失敗に終わった。 見事に待ち伏せされて、ボコボコにされました。 また花子さんのような効果音とともに叫んでしまったじゃないか……。 彰利 「あんた鬼だね!     弁当分けてくれるっつーから来たのに、さんざんっぱら人を殴るなんて!」 桐生 「わたしはちゃんと分けようとしてたもん!!     弦月くんが全部食べようとするから悪いんだよ!!」 彰利 「半分食おうとしただけだっつっとろーが!!     まったく人の話を聞かない先生だね!そんなんで教師やってられるなんて!     いい加減にせんと、教師目指しますよ!?」 桐生 「……ねぇ、それってどういう意味?夢を持つことはいいことだけど」 彰利 「人の話を聞かないヤツでも教師になれるって言っとるんですけど。     だから俺も教師になれば安定収入ゲットでしょ?     貴様のようなヤツに教師が勤まるのなら、俺でも出来るわ〜〜〜っ!!!」 ボゴシャア!! 彰利 「ギャーーーーーッ!!!!」 見事な胴回し回転蹴りでした。 ───……。 彰利 「ひどいよね、ほんと……これが教師のやることなんですか?」 桐生 「ごめんね、ごめんね……ごめんね……!ごめんね……!!」 胴回し回転蹴りは痛恨の一撃を繰り出し、俺の鼻を砕いていた。 俺の鼻からは止まらないほどの鼻血が溢れ、桐生センセは泣くばかりだった。 相当後悔してるんだろう。 いけませんなぁ、俺ってこういう暗くて湿っぽい雰囲気大嫌いです。 …………ま、いいか。 心地いい場所だったけど、こうやって泣かれるのは嫌だから。 だから……ひとつだけ、日常を捨てようか。 彰利 「……センセ、よく見といて」 桐生 「え……?」 桐生センセは涙を拭おうともせず、俺を見た。 俺はその視界の中で自分の鼻に手を当てて───月生力を解放させた。 ───それだけで鼻血は止まり、砕けた鼻も治った。 彰利 「………」 桐生 「え……?うそ……」 桐生センセは愕然とした。 それも、腰が抜けてしまうほど。 体なんか震えっぱなしで、どう見ても怯えている。 だから……少し期待してしまった自分を殴った。 ガツッ!! 桐生 「うっ……!?」 彰利 「………」 そして桐生センセに…… 今まで誰にもしたことがなかった『お辞儀』をして、宿直室をあとにした。 楽しかったから、ありがとう。 それから教室にもよらず、帰路を歩んだ。 ───翌日。 ピンポンパンポ〜ン。 声  『弦月彰利くん!至急宿直室まで来なさい!!』 ガチャッ!!ブツッ…… 彰利 「………」 朝っぱらの校内に、怒鳴り声のような呼び出しが響いた。 同じクラスのヤツらが俺を見て陰口を叩く。 ……面白くない。 面白くなかったから、俺は陰口を叩いている男どもの傍に寄ってった。 今田 「弦月、お前よく呼ばれるよな。なにやってんだよぉ〜」 柳  「あれじゃないか?働いてる人が何かやらかしたとかさぁ」 今田 「あ、そっかぁ〜!弦月って親が居ないんだっけぇ〜!!」 柳  「や〜い親無しぃ〜〜!!」 俺を見ながらガキくさすぎる罵倒を浴びせてくる今田と柳の前に立つ。 そして─── 彰利 「可哀相に……きっと親が居ること以外に自慢できることがないんだな……」 今田 「なっ……」 そう言ってやった。 するとその話を聞いてたクラスの数人が吹き出した。 彰利 「やったな!ウケたぞ!」 今田 「うるせぇっ!!」 パガァッ!! 今田が怒り、拳を振るった。 だが俺は、その拳を頬に受けても微動だにしなかった。 見よ、この首筋!! 彰利 「ブンッ……!キミへの疑惑が確信へと変わった……!     キミは父親を毒殺してるな!?」 今田 「ど、どくさ……?」 彰利 「あらら……」 毒殺の意味が解らなかったらしい。 さすがお子様。 今田 「お、おいっ!柳、お前も手伝え!なんか解らねぇけどこいつムカツク!!」 柳  「お、おおっ!」 彰利 「ほっほっほ……ひとりじゃ勝てぬと悟ったか……よいでしょう。     何人でもかかってきなさい……。     貴様らクズどもが何人集まろうと、所詮ザコはザコなのだ!!」 今田 「な、なんだとっ!?おいお前らも手伝え!こいつ泣かせてやる!!」 彰利 「しくしくしくしく……」 今田 「ウソ泣きすんなっ!キモチワルイんだよ!!」 彰利 「なんと!?貴様が泣かせてやるっていったからせっかく泣いてやったのに!!     お?なんだコラ、お?てめぇ俺をナメとんのか?お?お?おぉ?」 ズンズンと歩き、今田との間合いを狭めてガン飛ばした。 が、来たのはナックルでした。 今田 「むかつくんだよっ!!泣かせてやる!!」 彰利 「ああ、言っとくけど俺、フランダース見ても泣かなかったから。     てゆうか感動の涙って流せたためしがない。     だからキミが虚しい感動を俺にくれたとしても、俺は全く驚かないよ」 ボグッ!!! 横から頬を殴られた。 彰利 「あ〜ん?それで殴ってるつもりかねぇ〜?」 柳  「なっ……目一杯殴ったんだぞ!?」 彰利 「利かんなぁ〜」 ……大体、殴られるのは馴れている。 ましてや、殴ってるのは子供だ。 今更それくらいの痛み、感じない。 彰利 「さぁっ!来いよっ!貴様ら全員、微塵切りにしてやるぜっ!!」 バルバトス=ゲーティアの真似をしつつ、更に今田に近づく。 やがて緊張の糸が限界を迎えた今田がよく解らない叫び声を出して、 俺を思いっきり殴った。 ……それでも俺は手を出さない。 ただ孤立したかった。 どうせ悠介が退院すれば、また同じ毎日の繰り返し。 それなら……俺は悠介さえ居ればいいんだから。 こいつらがどれだけ俺を嫌おうと関係ない。 彰利 「ふっはははは〜っ、当たらない!当たらないなぁ水越ぃ〜〜っ!」 今田 「誰だよっ!!このっ!っ……!!」 当たらないとか言いつつ、全部当たってたりします。 殴ってる方が痛くなってきたのか、今田が涙目になってきてる。 それを見てか否か、クラスの男どもがそれに便乗してきた。 みんなで俺を殴りつける。 けど俺は痛いとは感じなかった。 その原因は殴られ馴れてるだけじゃなくて…… きっと、心が死んでることにも関係がある。 ───けど。 声  『弦月くんっ!!来なさいって言ってるのっ!!』 もう一度校内放送が聞こえた時、俺の中に溜まっていた暗雲が溶けてしまった。 それと同時に───ボカッ!! 彰利 「いたやぁっ!?」 痛覚が、俺を襲った。 今田 「!?あ……い、いまだ!やれぇーーっ!!」 彰利 「ブフッ!今田が『いまだ!』だって!ブフゥーーーーッ!!」 ドカバキドスガス!!! 彰利 「ギャアアーーーーッ!!!!!!」 ───…………。 彰利 「フッ……天井が天井だぜ……」 心地良い痛みに抱かれたまま、俺は教室でぶっ倒れていた。 傷なんてもう治しましたけどね? 俺を殴った男どもも我知らずといった感じに席についてるし。 彰利 「ちなみに天井が天井ってのは、空が蒼いぜと似たようなものなんだ。     天井って青くないからさ、ほら、解るでしょ?」 今田 「弦月お前……先生に言ったら今度は殺すからな」 俺が倒れてた場所のすぐ横の席の今田がそう言ってきた。 だから俺は───ガラッ。 センセ「おーし、それじゃあ算数始めるぞ〜」 彰利 「ジャ、ジャイア〜〜ン!!!」 教科書等を持って現れたセンセに走り寄り、ウソ泣きを実行した。 彰利 「ひどいんだぜジャイアン!!今田が今田のくせに俺を殴るんだ!!」 今田 「てめぇっ!!」 センセ「弦月……誰がジャイアンだ」 彰利 「え?スネ夫!?スネ夫なの!?……おい、プラッシー買ってこい」 ゴス。 彰利 「アウチ!!」 教科書のカドで殴られてしまった。 彰利 「なにをなさるの!?俺、可哀相なイジメられっ子ですよ!?」 センセ「イジメられっ子がさっきみたいなこと言うわけがないだろう……。     先生をからかうのもいい加減にするんだ」 彰利 「ゲェーーーッ!?信じてくれねぇ!!」 センセ「いや、げぇーっ、て……あー、いいから席につけ」 彰利 「御意」 仕方なく席に向かって歩く。 その際、今田に『覚えてろよてめぇ……』と言われましたので、 『忘れましたじゃ!』と言っておいた。 ピンポンパンポーン。 声  『弦月くん!来ないとだめでしょ!!』 彰利 「知らんなぁ〜」 昼休みになると、また桐生センセの絶叫。 俺はそれを無視して校舎裏に来ていた。 何故って、今田に呼び出されたから。 今田 「おい……どうして呼ばれたか解ってるよな?」 彰利 「いいえ!さっぱりわかりません!」 今田 「てめぇがムカツクからボコボコにするためだよ!!」 彰利 「そうなのですか!?わたしはたいへんおどろきました!!」 今田 「くっ!こ、このやろっ!!」 ゴツッ!! いまだはぱんちをした! おれさまに0のダメージ!! 彰利 「……あ?なに?蚊でも止まったか?」 今田 「このっ!!」 ガツッ!!ゴツッ!!ベシッ!! いまだは『コンボ』をくりだした!! おれさまに0のダメージ!! 彰利 「ふあ……眠……」 今田 「我慢してられんのも今のうちだぞっ……!!」 いまだは『きのぼう』をそうびした! いまだはきのぼうでおそいかかってきた!! ベシィッ!! いまだのこうげき! しかしおれさまはダメージをうけていない!! 彰利 「もう戻っていい?」 今田 「なっ……このやろぉーーーーっ!!」 ブスッ!! 彰利 「げ……」 今田 「うあっ……!?」 ……今田、木の棒の先で俺の腹を思いっきり刺した。 血が、その場に落ちる。 今田 「あ、うわ……!」 彰利 「………」 えーとね、俺ゃあね、人を刺したりしといて怯えるヤツって大嫌いなんだよね。 『責任』も取れないくせに刺して、ガタガタ震えやがって……アア、ウットウシイ……。 今田 「ひぃっ!!!?ひ───ひぁああああああっ!!!あぁああああああっ!!!」 彰利 「ややっ!?」 突如、俺を見ながら絶叫!! 今田の身になにが!? ……って、いかんいかん……俺ともあろうものが、 クソガキごときにホンモノの殺気を浴びせちまうなんてな……。 そりゃ、叫びたくもなる───ジョジョジョ〜……。 彰利 「おわっ!?おわぁーーーーっ!!!!!」 今田 「ひっ……ひぃいっ……ひいい……!!」 た、立ち小便ざます!! ヤバイのはズボン穿いたままだってことざます!! 彰利 「おわぁ〜〜〜っ!!あの今田がお漏らししおったぞぉーーーっ!!!」 ───そう俺が叫んで以来、今田が俺に絡んでくることはなくなり、 今田は『おもら(しん)』というあだ名をつけられ、クラスから孤立した。 ちなみにあだ名をつけたのは俺である。 ───……ピンポンパンポーン。 声  『ぐすっ……ひっく……弦月くんは……わたしのこと嫌いなんだね……』 彰利 「今日は泣き落としできましたか……」 桐生センセに能力を見せてから一週間。 段々と手が込んできているセンセの呼び出しが何気に楽しみだったりする。 だから行かない。 行ったら終わるだろうし。 ただ……ぐきゅー……。 彰利 「……腹は、減るんだよなぁ……」 ちなみに昨日は歌で落としにきてた。 『一緒に〜食べよ〜♪』なんて歌うもんだから、つい爆笑してしまった。 子供っぽいところは変わってない。 そして……桐生センセは、俺に会いたがっている。 能力に興味があるだけなのか、それとも俺という異人を認めてくれたのか。 どちらにしろ、行く気は起きなかった。 Next Menu back