───ドラゴンカードゲーム彰利───
…………。 桐生 「え〜〜〜と……」 真穂 「お母さん……やりすぎ……」 今、宿直室の隅では弦月くんがぐったりと倒れてる。 大変だって思ったけど、お母さんは『大丈夫だから』の一点張りだった。 真穂 「大丈夫って……なにが?」 桐生 「……真穂。誰にも言わないって約束できる?」 真穂 「え……?」 桐生 「守れるなら弦月くんの秘密を教えてあげるけど。     わたしが弦月くんに空手を仕掛けられる理由も」 真穂 「………」 解らない。 どんな話かも解らないのに、約束なんて出来ないし…… 弦月くんが気絶している時に聞いてしまうのはズルイんじゃないかな……。 真穂 「お母さん……弦月くんが気絶してる時にそれを話すのはズルイよ……」 桐生 「え?大丈夫だよ、弦月くんなら絶対許してくれるから」 真穂 「…………その根拠は?」 桐生 「え?えっと……弦月くんだから、としか言いようがないってゆうか……。     とにかく、真穂だから教えるんだからね?」 真穂 「でも……」 桐生 「でももヘチマもないの!聞かせたくてウズウズしてるんだから!!」 真穂 「………」 この時に思った。 母は約束を内緒にできないタイプだと。 ───……。 真穂 「癒しの……力?」 桐生 「そうなの。見たでしょ?さっき。鼻血が止まるの」 真穂 「見たけど……」 驚いた。 あの仕掛けにそんな真相があったなんて。 真穂 「だから……殴っても平気なの?」 桐生 「そうっ!わたしの空手うけても平気なのって弦月くんくらいだから」 真穂 「………」 それは回復云々の前に、体罰じゃないかな……。 がつがつがつがつ…… 桐生 「……あれ?なんの音?それにこのいい香り……」 真穂 「あ」 わたしが目を移した先に、お弁当を食べてる弦月くんの姿があった。 桐生 「あ、あぁーーーーっ!!!わたしのお弁当ーーーっ!!!」 彰利 「グァッ!!グァッ!!グァッ!!グァッ!!グァッ!!」 がつがつがつがつがつ……!! 桐生 「弦月くん!!人のお弁当を勝手に食べちゃだめでしょ!!」 彰利 「なにをたわけたことを申されるかこの小娘は……。     これはおいどんがそのバッグから拾ったものでゴワス」 桐生 「それはわたしのバッグ!!だからそれはわたしのお弁当だよ!!」 彰利 「もしそうだとしても、落し物は一割貰う権利があるんでゴワス。     拾ったものをバッグとして、一割頂くとするならこの弁当がいいでゴワス。     だからこれはおいどんのモノでゴワス」 桐生 「屁理屈言わないの!」 ババッ!! 彰利 「アイヤーッ!?タオチェイ!!」 弦月くんがお弁当を取り返されて妙な言葉を叫んだ。 彰利 「返せ〜〜〜っ!!返せよぉ〜〜〜っ!!腹減ってンだよぉおおお〜〜〜っ!!」 桐生 「わ、わたしだって弦月くんが来るのを待ってたから何も食べてないんだよ!?     だからダメ!絶対ダメ!!」 彰利 「なんじゃとコラ!人が大人しくしてりゃあ突け上がりやがってぇ〜〜〜っ!!」 ……大人しくしてる人は、人のお弁当を食べたりしないと思う。 彰利 「じゃ、半分!半分だけでいいから!俺を信じてセンセ!」 桐生 「う、ううう……うん、解ったよ……。     生徒を信じるのも教師の勤めだからね……でも半分だよ!?     それ以上はダメなんだからねっ!?」 彰利 「ほっほっほ……(いや)しいヤツめ」 桐生 「それは弦月くんだよっ!!」 ……なんだろう。 なんてゆうか、弦月くんと一緒に居る時のお母さんはすごく無防備だった。 身構えてない、自然体って感じられる。 彰利 「グァッ!!グァッ!!グァッ!!グァッ!!」 がつがつがつがつがつ……!! 桐生 「ねぇ……どうでもいいんだけどさ、その食べ方なんとかならないの?」 彰利 「え?これがいつか流行るという鬼塚先生スタイルなんですが」 桐生 「流行らないよ、きっと……」 彰利 「あ……やっぱそうスカ」 がつがつがつがつ……!! 彰利 「ぷふぅ〜〜〜……ご馳走さまでした」 弦月くんがお弁当の蓋を閉めて、お母さんに渡す。 桐生 「えぇっ!?ぜ、全部食べちゃったの!?」 彰利 「なにを言っとるのだこの小娘は……。おいどんは約束は守る男ですよ?     見損なわないでいただきたいものだね」 桐生 「あ……そ、そうだよね、ごめんね弦月くん。     わたし、どうしてか今、怒りっぽくて……」 お腹が空いてるからだと思う。 桐生 「〜♪」 やがて、手に持ったお弁当箱を開けて、食事に取りかかる。 桐生 「あ……あ、あれれぇっ!!?」 そして驚愕。 見てみるとそこにはご飯しかなかった。 桐生 「ゆ、弦月くん!これどういう───あれぇっ!?」 真穂 「あれ……!?」 見渡してみても、宿直室には弦月くんの姿がなかった。 ……ふと見てみると、いつの間にか開けられていたらしいドア。 どうやら逃げたらしい。 桐生 「ふ……ふふふふふ……」 お母さんが目の端に涙を溜めながら立ちあがった。 桐生 「許さないんだからぁああーーーーっ!!!!」 そしてそう叫ぶと、開けっぱなしのドアから飛び出していった。 ……今日はいろいろなお母さんが見れる気分だ。 スー…… 真穂 「あれ……?」 彰利 「………」 出ていったとばっかり思ってた弦月くんは、宿直室の押し入れの中から現れた。 彰利 「フフフ……ダミーさ……」 その手にはお茶漬けの素。 それをざっとお弁当のご飯に振り掛けて、ポットでお湯を注いだ。 ざくざくざく…… 彰利 「ぷふぅ〜〜〜……汁ッ気が欲しかったのよ」 ……呆れた。 掴み所のない人だ。 彰利 「……む?」 真穂 「あ……」 じっと見てたわたしに気づいて、弦月くんがこっちを見る。 彰利 「いや……照れるな……。そんなにじっと見つめられると……」 真穂 「ち、違うよ、そんな意味じゃなくて……!」 彰利 「え?食いたいの?」 真穂 「そ、そうじゃなくて……」 きゅぐー。 真穂 「あっ……!!」 彰利 「うお、顔真っ赤……」 なんてタイミングで鳴るんだろう、このお腹は……。 彰利 「我慢は体に毒ですよ。食べなさい」 そう言って、弦月くんは笑いもせずにお弁当を手渡してきた。 ただ、にっこりと微笑んで。 真穂 「い、いただきます……」 わたしは自分の顔が赤くなっているのを自覚しながらも、お茶漬けをつつくことにした。 そして───食べたあとになって気づいてしまった。 間接キスだ、これ……! それに気づいた途端、 以前クラスのみんなに間接キスのことで散々からかわれたのを思い出した。 泣きたくなるくらいの言葉の嵐を思い出すと、体が震えた。 あんなのはもういやだ。 真穂 「あ、あう、あの……ち、違うからねっ……!?わたし、そんなのじゃ……!」 やりたくてやったわけじゃない。 そう言おうとしたけど、弦月くんは妙な踊りをしているだけだった。 彰利 「ホイジィチィンシャィンハァ〜イ・チィンカァ・リィエンリィエィハァ〜♪」 ゆっくりと体を動かして、妙なポーズを取っている。 彰利 「サイガイサンチュンドゥリィ〜ン・カァ〜ン・リィ〜ンファ〜ンハァ〜イ♪」 ドシューーーン!! 真穂 「!?」 踊りのあとのポースを取ると、弦月くんの掌からかめはめ波が出た。 彰利 「ドラゴンボォ〜ルカァ〜ドゲェ〜〜ムゥ〜〜♪」 どしゅーーーん!! 今度はさっき打った方とは逆の方にかめはめ波を打つ。 そして最後にわたしを見てニヤリと笑った。 彰利 「今のがドラゴンカードゲームじいさんのかめはめ波だ」 真穂 「………」 びっくりした。 なにがなんだか解らない。 彰利 「どうだったかね?」 真穂 「……び、びっくりした……」 彰利 「ほうかほうか♪」 弦月くんはお爺さんのように『ほっほっほ』と笑うと、 わたしの正面に座ってお茶を用意してくれた。 それとほぼ同時に、わたしも食べ終わっていた。 彰利 「お茶漬けにお茶ってのもどうかとは思いますがね。     なかなかどうして、捨てたもんじゃあござんせん」 真穂 「……あの、聞いてもいいかな」 彰利 「んお?なにを?」 真穂 「さっきの……かめはめ波のこと……」 彰利 「ああ、あれね。あれはおいどんの力でゴワス。     癒し以外にもいろいろあるでゴワスよ」 真穂 「え……?」 驚いた。 こんなに簡単に教えてくれるなんて思わなかったから。 彰利 「他言無用ですよ?」 弦月くんはそう言って、小指を差し出してきた。 真穂 (信じてくれるんだ……。こんなわたしを) わたしはそれが嬉しくて、小指を差し出した。 そして……初めての指切りをした。 それはとっても暖かくて、どこかくすぐったかった。 真穂 「ねぇ弦月くんっ!もう一度見せてもらってもいいかなっ!     さっきはよく解らなくて、よく見てなかったから……」 彰利 「よいですとも!では!」 弦月くんは立ち上がり、再びゆっくりとした動作で踊りを始めた。 彰利 「ホイジィチィンシャィンハァ〜イ・チィンカァ」 声  「居たァーーーッ!!」 真穂 「わっ!?」 彰利 「ゲゲェェエエエエーーーーーッ!!!!!」 突然の声に振り向いてみると、ドアの前で息を切らしてるお母さん。 怒り顔でズンズンズンと中に入ってくる。 彰利 「な、なにを怒ってらっしゃるの?ボク、怒られるようなことしてないよ?」 桐生 「食べたでしょっ!!おかずみんな食べたでしょっ!!」 彰利 「馬鹿野郎〜〜〜っ!!俺は宣言通り半分食っただけだ〜〜〜っ!!     俺がおかずを食ってセンセがご飯を食えば半分ずつだろうがぁ〜〜〜っ!!」 桐生 「おかずはご飯よりも価値が高いものなんだよ!!だから半分じゃないの!!」 彰利 「なんと!?初耳ですよ!?」 桐生 「ご飯の上にあった鳥そぼろまで全部食べていくなんてヒドイよ!!」 彰利 「いえですね?あれもおかずに含まれるかな〜と。     だから挫折するわけにはいかないかったのです!!     だって……半分って約束したから!!」 桐生 「そういうのを屁理屈って言うんだよ!!」 彰利 「ええっ!?そうなのですかっ!?わたしは大変驚きました!!」 桐生 「弦月くん!」 彰利 「なんじゃいおりゃ〜〜っ」 ズパァーーーン!! 彰利 「ぶへぇーーーっ!!」 桐生 「人の話は真面目に聞かなきゃだめでしょ!!」 彰利 「だからっていきなり平手打ちはひどいと思いますよ!?」 桐生 「ひどくないよっ!!ご飯だけでどうやって食べろってゆうの!!」 お母さんがビシッ!とお弁当箱を指差す。 ……けど、そこにはもうご飯すらもなかった。 桐生 「あ、あれぇーーーーっ!!!?」 お母さんは凄くショックを受けたように、お弁当箱を持ち上げてその裏とかを見ている。 桐生 「な、ない……わたしのおべんとが……わ、わた、わたた……」 真穂 「あ、あの……お母さん、それは」 桐生 「ゆぅううみぃいいはぁあありぃいいくぅうう〜〜〜ん……!!」 真穂 「え……?ね、ねぇお母さんっ!それはっ!」 桐生 「食べたぁっ!!わたしのお弁当全部たべたぁっ!!」 彰利 「なんと!?それは違いますよ桐生センセ!ご飯を食べたのは俺じゃない!!」 桐生 「うそだよ!!絶対弦月くんだよ!!」 彰利 「即答ですか!?と、とにかく!犯人は……この中に居るッ!!」 弦月くんは片手をビッと伸ばして、探偵さんのようなポーズをとった。 桐生 「それが弦月くんでしょ!!」 彰利 「少しは考えましょうよ!!ほら!俺以外に居るでしょ!?あとひとり!」 桐生 「真穂がそんなことする筈ないよ!!」 お母さんが弦月くんに掴みかかる。 彰利 「違いますよ失礼な!!俺が言ってるのはもうひとりです!!     真穂さんがそげなことするわけないでしょう!!」 真穂 「え……?」 桐生 「じゃ、じゃあ……誰なの?」 彰利 「今、俺に掴みかかってる人」 桐生 「………」 ドカバキ!! 彰利 「ギャアアアーーーーーッ!!!!!」 ………………きゅるるるるる〜〜〜〜〜……。 桐生 「ううぅぅ……お腹空いたよぅ……」 彰利 「ほっほっほ、卑しいヤツめ」 ボゴシャア!! 彰利 「ブゲェーーーーッ!!!」 目にも止まらぬ拳が俺の頬を捉えました。 この人、もう俺のこと生徒だなんて思ってねぇんじゃないでしょうか。 桐生 「弦月くんってさ、てんで子供らしくないよね……」 彰利 「よせよ……照れるじゃないか」 桐生 「……言っておくけど、誉めてなんかないんだからね……?」 彰利 「はっはっは、照れるなよ。ボクとキミの仲じゃないかっ」 桐生 「じゃ、じゃあさっ!なにか食べられるもの用意してっ!?」 彰利 「……いきなりなにを言っとるのだこの小娘は」 桐生 「だって!わたしと弦月くんの仲なんでしょ!?なんとかなるでしょ!?」 彰利 「フッ……生徒にメシをたかる先生か……こいつぁ〜レアだぜ」 ズパァーーーン!! 彰利 「ヘモゲェーーーーッ!!!?」 桐生 「そういうこと言っちゃだめだって言ってるでしょ!!」 彰利 「おげげげげ……!!頬肉噛んだ……!!」 ぬおお、口内に鉄サビの味が……!! なにもそんな、力の限りビンタせんでも……!! 桐生 「うー……うー……」 彰利 「見ろ真穂さん、年甲斐もなく(さか)ってやがる」 ドカバキ!! 彰利 「ぎゃあああーーーーーっ!!!!!」 ───……。 桐生 「ねぇ弦月くん……。『懲りる』って言葉、知ってる?」 彰利 「なにそれ、美味い?」 桐生 「はぁ……」 彰利 「なんなのかねこの小娘は。人に質問しといて溜め息かね」 ドカバキ!! 彰利 「ギャアアアーーーーッ!!!!!」 ───……。 桐生 「正座!」 彰利 「え?オリオン座!!」 桐生 「正座しなさいって言ってるの!!」 彰利 「む……その意図は!?って、ははぁ〜ん?解ったぞ〜お前の魂胆がぁ〜」 桐生 「先生に『お前』だなんて言っちゃだめだよ!!」 彰利 「おめぇ〜〜〜、俺に説教タレて気を紛らわそうってハラだろぉおおお〜〜〜っ。     えぇ〜〜っ?俺にはちゃ〜〜〜んと解るぜぇ〜〜〜っ?」 ボゴシャア!! 彰利 「つぶつぶーーーっ!!!!」 綺麗な正拳でした。 ───キーンコーンカーンコーン…… 桐生 「ああっ!!予鈴だ!!あ、あうぅう!!     弦月くんに構ってた所為でご飯買いにいけなかった〜〜〜っ!!」 彰利 「フッ、馬鹿が」 ドカバキ!! 彰利 「ギャアアアーーーーーーーーーッ!!!!!」 ───……。 あの後、弦月くんはお母さんにボコボコにされた。 彰利 「ちくしょ〜〜〜……」 真穂 「大丈夫?弦月くん……」 今は弦月くんに肩を貸して、教室に向かっているところ。 彰利 「すまんのぅ、肩を貸してもらったりして……」 真穂 「ううん、それはいいんだけど……傷、治さないの?」 彰利 「……ちと訳アリでして。そろそろヤバイと思うので、力は使いません」 真穂 「……?」 よく解らないけど、弦月くんは苦しそうな顔をしていた。 ガララ……。 教室のドアを開けて、中に入った。 その途端、わたしたちを見た男子が言った。 中野 「わっ!弦月と桐生が抱き合ってる!」 真田 「うわっ!ほんとだ!夫婦だ夫婦!!」 真穂 「えっ……!?ち、ちがうよっ……!!」 真田 「ふーうーふ!ふーうーふ!!」 中野 「ひゅーひゅー!!ぶっちゅしろぶっちゅーー!!」 真穂 「ち、ちが……!!」 解らない。 どうして男子はこうやって、人をイジメたがるんだろう……。 彰利 (……いじめられてんだな) 真穂 「え……?」 弦月くんがなにかを言った気がした。 でもその次の瞬間には、弦月くんは叫んでいた。 彰利 「そうだぁーーっ!!我らは夫婦だぁーーーっ!!」 真穂 「えっ!?」 中野 「おおおお!やっぱだぁーっ!!」 氏家 「キスしろキス〜ッ!!」 彰利 「貴様らがキスしたら考えなくもない」 氏家 「す、するわけねぇだろっ!!」 彰利 「そんじゃあこの話は無かったことに」 真田 「とか言って、あとで隠れてキスしまくるんだろ!!や〜い変態〜!!」 彰利 「なんと!変態とは失礼な!!     やってやりますよ!見せてやろうじゃないですか!!」 がっし! 真穂 「……!?」 弦月くんがわたしの肩を押さえて、顔を近づけてくる。 その顔はニヤニヤと状況を楽しんでいるようで───わたしは裏切られた気分になった。 パァン!! 彰利 「アウチ!!」 そして気づけば、わたしは弦月くんの頬を叩いていた。 真田 「だっせぇーーっ!!フラレてやんの!!」 彰利 「お?なんだ?やンのかコラ!!」 真田 「八つ当たりかよ、だっせぇの!!」 彰利 「なんですと!?」 弦月くんが真田くんと口論を始める。 そんな弦月くんに向けて、わたしは口を開いた。 真穂 「最低だよ……」 彰利 「あ〜ん?」 真穂 「最低、って言ったの!!信じてくれてるって思ったのに……!!     結局弦月くんもわたしをイジメるために近づいただけだったんだね!?」 彰利 「そうですよ?」 真穂 「───っ!!?」 信じられない言葉を聞いた。 耳を疑ってしまう。 今、弦月くんはなんて……? 彰利 「解らねぇの?人をイジメるってのはさ、     『そいつを殺す』って思ってるのと一緒なんですよ?     イジメられて、イジメに耐えきれずに死んだ人の数、およそ6〜8割。     それがどういう結論に辿り着くか知っておりますか?」 真穂 「………!!」 真田 「な、なに言ってんだよ……お、俺はべつに、桐生に『死ね』だなんて……」 彰利 「自覚が無けりゃ許されるとでも?     イジメはやり始めた時点で『死ね』って言ってるようなもんなんですよ?」 中野 「ふざけんなよ!俺達はそんなこと考えてねぇっ!!」 彰利 「解らないヤツだな。考えてなくたって、イジメるってのはそういうことなんだ。     そしてイジメられたヤツが自殺したとしたら、殺人犯はイジメたヤツ。     ……ほら、真穂さん。ここで死んでみせれば?     そこまですれば、こいつらだって自分の馬鹿さ加減に気づきますよ?」 真穂 「そ、そんなっ……!!ひどいよ弦月くん……!!」 中野 「───ッ!!」 バガァッ!! 彰利 「……あん?」 中野 「お、俺たちは死ねだなんて言わねぇよ!!お前脳味噌腐ってんじゃねぇか!?」 彰利 「……そんで、制裁がその拳なわけ?     へっ、イジメ野郎の拳なんて利かねぇよ、馬鹿が」 中野 「イジメねぇよ!!馬鹿はてめぇだ!!」 ドスッ!ボスッ!! 真田 「そうだっ!俺はお前みたいに人に『死ね』だなんて言わねぇ!!」 ガスッ!ガツッ!! 彰利 「イジメてる時点で言ってるのと同じだと言ってんだろうが……」 全員 『イジメねぇって言ってんだ!!黙れよっ!!』 彰利 「本当だなっ!!!?」 全員 『ッ!?』 クラスのみんなが叫んだ時、弦月くんが叫び返した。 その大きな声に、みんなが殴るのをやめる。 彰利 「……約束だ」 その人垣の中心で、 弦月くんは握り拳から人差し指と中指をだけをピンと伸ばして、額につけた。 敬礼、というやつだろうか。 彰利 「これは誓いの敬礼ってゆう、『絶対の約束』だ。     お前ら……自分の言ったことくらい守れよ……?     アーリー=アメリカンとバド=ワイザーとマルボロに誓え」 全員 『………』 その言葉に、みんなが唖然とした。 弦月くんはそのまま出て行こうとしたけれど、男子に捕まって殴られる。 それに触発されたように、他のみんなも殴り始める。 男子 『ふざっっっけんじゃねぇよ!!逃がすと思ってんのかよっ!!』 女子 『最低ね!!あんたこそ死んじゃいなさいよ!!』 彰利 「おわぁ〜〜〜っ」 ……わたしはもう解っていた。 弦月くんがなにをしたかったのか。 弦月くんはわたしを守ってくれたんだ。 それなのに、わたし……叩いちゃった……!! 謝らなきゃ……!!わたし、最低だ……!! 声  「こらっ!!お前らなにをしてるっ!!」 全員 『───!!』 人垣に入って止めようとしたら、先生が入ってきて怒鳴った。 それで、弦月くんへの攻撃も罵倒も消えた。 そして……先生はその人垣の中心に入って、もう一度同じ言葉を言った。 センセ「なにをしていたんだ」 彰利 「金剛拳の修行です。五体を金剛化したくて、みんなに手伝ってもらってました」 センセ「………」 全員 『………』 真穂 「………」 彰利 「お?なんだコラ!疑ってんのかコラ!!だったら試してみろコノヤロ!!」 ドカバキドスベスドガドゴ!! 彰利 「ギャアアアーーーーーーーッ!!!!!」 ………………。 彰利 「しかしさ……まさか担任までもがリンチに混ざってくるとは、     さすがのおいどんも夢にも思いませんでしたよ……?」 ぴたっ。 彰利 「いでっ!いででで……!!     お、お願い、やさしくして……!わたし初めてなの……」 ボゴシャア!! 彰利 「つぶつぶーーーっ!!!」 宿直室で治療を受けていた弦月くんは、お母さんに思いっきり殴られた。 彰利 「うきっ!うきっ!うきぃいいーーーっ!!」 しかも頬を押さえてのたうちまわってる。 どうやら口の中を切ったらしい。 桐生 「な、なんてこと言うの!!子供がそんなこと言っちゃだめでしょ!!」 彰利 「体は子供!頭脳は大人!その名は───名探偵コナン!!」 ズパァーーン!!! 彰利 「ぶべぇーーーーい!!!!」 桐生 「わけの解らないこと言わないの!!」 真穂 「お、お母さん……怪我人にそれはひどいよ……」 彰利 「そーだそーだ!ジャイアンの言うとおりだ〜!」 メゴシャア!! 彰利 「ギャーーーッ!!!!」 真穂 「うわ……」 弦月くんの顔面にお母さんの足が埋まった。 あれは痛い。 絶対に痛い。 彰利 「おががが……あ、あの……ほんと、勘弁してください……。     今の俺……能力使えないんですから……」 桐生 「えぇっ!?そうなの!?」 彰利 「お、男塾万歳……」 コトッ……。 桐生 「きゃっ……きゃわぁああーーーーっ!!!ど、どうしよ!気絶しちゃった!!」 真穂 「あ、あわわわぁあーーーっ!!!どうしよっ!どうしようっ!!     わたしまだ謝ってないのに!!」 桐生 「わたしだって真穂をイジメから助けてくれたお礼、言ってないよっ!!」 わたし達は、こういうことに滅法弱くて、慌てるしかなかった。 本当、お礼がしたいからって保健室から救急箱を持ってきたのに、 逆に気絶するまで殴ってちゃ世話がなかった……。 Next Menu back