───空飛ぶフルフル───
───過去に来てから四日目。 気づかぬうちにここの住人と化しておる、じいやこと彰衛門と、魔軍指令ハドラー。 ハドラー「………」 彰衛門 「………」 な、なにかね? 何故かハドラーに睨まれておるのですが? ハドラー「……お前さ、なにかよからぬことを考えただろ」 彰衛門 「なにを言うか!俺はそげなことを考えておりませんよ!?」 ハドラーは二日目になってから創造した服に身を包んでいて、 それがひどく似合っている。 ハドラー「お前がそういうふうに弁解する時は、必ず裏があるからな」 彰衛門 「ゲゲッ……」 何気に悟られてます? というよりは俺が単純すぎるだけなのか? 彰衛門 「お、俺はべつにハドラーのことなど」 ハドラー「ハドラー!?」 彰衛門 「ぐあ……ち、違う!俺は貴様のことをハドラーなどと思ってたわけでは!!」 ───そして、今日も雷鳴が轟いた。 その結果、本日の朝餉、昼餉、夕餉、全て没収。 ………………。 悠之慎「あー、まったくくだらん」 毎日毎日、よくもまあ人をからかうネタがあるもんだ……。 というよりは、人をからかわなきゃ気が済まないのか? 悠之慎「大体だな、料理ならあいつの方が得意なんだ。     それがどうして、材料創造した俺が……ああ、不毛だ……」 というか───しまった! メシ抜きにするより料理しろって言えばよかった! 迂闊だ! 悠之慎「…………彰利〜?」 一応呼んでみる。 あいつのことだ、声が届けば現れるだろう。 だが………………来ないなぁ。 悠之慎「って、そうか。あ〜……彰衛門?」 のたのたのたのた…… 悠之慎「へ?」 ───この時代での呼び方をした途端、どっかから謎の音が聞こえた。 悠之慎(……なんの音だ?) 緊張が走る。 だが、その間にものたのたという音は続き……バサッ!! 悠之慎「っ!?」 別の音に、すぐさま振り向いた! ───が、そこには誰も居ない……筈だったんだが。 ポタポタ……ジュウウウ……!! 悠之慎「おわぁっ!?」 上から何かが落ち、台所の石床を溶かしてゆく。 悠之慎「……な、なにやってんだお前は……」 彰衛門「………」 彰利───彰衛門は天井からぶら下がりながら、口から謎の液体を吐いていた。 どうやってぶら下がってるのかがまったくの謎だ。 彰衛門「………」(ババッ!!) ぶらさがっていた彰衛門は反動をつけて天井に張り付き、のたのたと移動してゆく。 悠之慎「てゆうかお前何者!?」 天井に張りつくなんて人間業じゃねぇ!! 彰衛門「………」 のたのたのたのたのたのた…… 悠之慎「………」 彰衛門は人の話を聞かず、のたのたと去って行った。 悠之慎「………」 呆然とするしかなかった───って、そうじゃなくて。 悠之慎「お〜い……彰衛門〜?」 ………………のたのたのたのたのたのた…… 悠之慎「普通に来いっての!!」 彰衛門「………」(ババッ!!) ポタポタ……ジュウウ……!! 悠之慎「いい加減に───しろぉおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!」 返事もせずに石床を溶かす彰衛門に、俺は雷光を閃かせた!! どばぁあっしゃあああああああああああん!!!!!! 彰衛門「………」(ババッ!) のたのたのたのた…… 悠之慎「…………あー……」 彰衛門はまるで通用してないように、平然とのたのたと行ってしまった。 ……撃ちすぎて雷に慣れたか? とか思ってるうちにのたのたと戻ってくる彰衛門。 悠之慎「───クリエイション」 面倒だったから理力を発動させて、両手に閃光を構えた。 悠之慎「閃け、神屠る閃光の矢……!───ブチ抜けェエエエエエエッ!!!」 キィンッ!! ───澄んだ音が鳴りました。 やがてその音は耳をつんざく轟音となり、天井に張りついていた彰衛門ごと天井を破壊。 のちに、社から天へ昇った光は『神の咆哮』だとか言われた…… ──────…………〜〜ぁぁぁぁあああああああああああああっ!!!!!! ドグシャアッ!! 彰衛門「ゲブボッ!!───っ……いでっ……!ゲホッ!ガフホッ……!!」 な、なにがなんだか解らん……! 気づいたら空高く飛んでて、雲に突っ込んでから落下した……。 死んでねぇのが奇跡ですよ……!? 彰衛門「あ……いた……痛……いた……痛い……」 ほ、骨が相当いった……!! うおお……なんで……? なにがどうなってこんなことに……? 空に飛ぶ前の記憶がないんですけど……? 彰衛門「は、悠之慎の呼ぶ声が聞こえて……どうせなら驚かそうとして……     天井にへばりついて行こうとしたのは覚えてるんだけど……     そ、それからの記憶がまったく……」 ……もしかして、またフルフルになってた? なんでかフルフルになると記憶が無いんだよな……。 あ、服焦げてる。 こりゃあ雷くらったな。 でも甘い。 フルフルは雷使いだから、雷は効かんのだ。 彰衛門「うぐぐ……ベ、ベホイミ♪」 パァア…… 月生力を解放し、自分に振りかけた。 彰衛門「いでで、いでででで……!!」 くそ、なんか知らんけどなかなか回復しねぇぞ……!? あーいて……おーいて……!! 彰衛門「もう……天井に張り付くのはやめよう……」 このダメージ量から考えれば、相当の威力のなにかを放たれたわけですな。 てゆうか、放ったのは悠之慎以外はないだろうのぅ。 となると……?解らん。 彰衛門「───よし!回復!!」 勢いよく起き上がり、ズビシャアア!!と決めポーズ!! 彰衛門「サーテ。メシ抜きならば今日も自分で調達せねばのう」 まいったね、まったく……。 彰衛門「先立つ路銀もないし、さすがに食い逃げはヤバイ」 この村での食い逃げは、この社に迷惑がかかるしね。 だからって他の村まで行って食い逃げするってのも……めんどい。 彰衛門「……あ、そっか。いい方法があった」 アタイは身支度をするために、社の蔵に走った。 ───そして、川に居る。 彰衛門「そうそう、魚を釣ればよいのよね」 こう見えても釣りには自信があります故!! 彰衛門「さあ!!今日も元気に大爆釣!!」 ぽちゃっ、とエサのついた針と糸が沈む。 ウキなんてものは無かったので、己の五体と六感に頼る。 彰衛門「………」 ……風を感じる。 緊張が体を支配してるっていうのに、なんてゆう穏やかな風を感じさせるんだろう。 ああ、おかげで集中できそうだ。 ───……クッ。 彰衛門「───!!」 微量の手応え。 俺はそれを逃さなかった。 彰衛門「フンッ!!」 その手応えに引っ掛けるように思いきり竿を引く!! 途端、信じられないくらいの重量が俺の腕に圧し掛かった!! 彰衛門「お───大物!!メシ!メシ!!!」 目覚めよ六感!吼えよ五体!!鳴り響け!俺のエロス!! ───エロス関係ねぇって!! 彰衛門「───オォラァッ!!!」 勢いよく、更に竿を引く! が、刹那に竿が悲鳴をあげた!! 竿  「ギャアアアアアアアア!!!!」 彰衛門「ヒィッ!?この竿、生きてる!!」 まさかほんに悲鳴あげるとは思わなかった!! だが構わん!!呪われた装備ってのは昔っから強いものなんじゃい!! 彰衛門「オラァッ!!オラァアアッ!!!」 ギシシッ!!ミシシシシ!!! 竿  「ギャーーッ!!ウギャーーーッ!!!イギャーーーッ!!!」 彰衛門「ほれほ〜〜〜れほ〜〜〜れぇええ〜〜!!!     もっと気張らんと折れるぞぉ〜〜〜っ!?」 竿  「ナ、ナニヲスルンデスカァアアアア!!!」 彰衛門「フンッ!!」 ギシィッ!!! 竿  「イデデデデデエェエエッ!!!」 彰衛門「ムンンンォオオオオオオオオオ!!!!」 ググググ……!!ドッパァアアアアアアアアン!!!!!! 彰衛門「ヨシッ!!クソ野郎!!」 力任せに竿を引ききると、川の中からとんでもなくデカい物体が飛んだ!! そしてそれは地面に落ち、少し浮いたのだった!! 彰衛門「………」 ???「………………」 えーと、なにやらどっかで見た時あるような……なんだっけ? ???「………」 ソイツにはウネウネとした触手っぽいのがいっぱいあった。 で、浮いてる。 タコなのかイカなのか見分けられない。 ということで─── 彰衛門「名づけよう!!貴様はクラーケ───はうあ!!」 そうだ!FF11のクラーケンに似てるんだ!!浮いてるし!! 彰衛門「……えーと」 ???「………」 ヤバイです。 釣った俺を敵と見なしてます。 彰衛門「おっしゃこーーーい!!貴様なぞ、俺のコンボでやっつけてやる!!」 Akitoshiは、コンボの構え! 彰衛門「ほりゃあ!!」 チュインッ───ドパァンドパァンドパァン!! Akitoshiは、コンボを実行。 →krakenに、11のダメージ!! 彰衛門「うわショボッ!!」 ウネウネ……がしっ!! 彰衛門「ややっ!?」 しまった油断した!! あっさりと触手に捕まってしまったざます!! ???「………」 ブシュッ!!ベチャッ!! 彰衛門「ごわああああああああああああ!!!!!!」 Krakenは、墨攻撃を実行!! →Akitoshiは、ブラインの効果!! 彰衛門「ああぁ〜〜〜……目がぁ〜……目がぁあああ……!!」 ムスカくん、キミは英雄だ。 彰衛門「ちくしょーーーっ!!卑怯だぞてめぇ!!正々堂々勝負しやがれぇっ!!」 ───……。 悠之慎「……あいつ、どこまで飛んだんだ……?     そんな遠くまでは飛ばした覚えはないんだが……」 彰衛門を探して、村の方まで降りてきた。 しかし、村を探しても彰衛門は居ない。 悠之慎「あ───すまない、彰衛門を見なかったか?」 太助 「ああ、彰衛門さんかい。彰衛門さんなら釣り竿持ってたから川じゃないかな」 悠之慎「そっか、助かった」 ……川、ね。 太助 「あ、待った!まさかあの川に行くつもりかい!?」 悠之慎「そうだけど」 太助 「……わ、悪いことは言わねぇっ!あそこだけはやめとけ!!」 村人の太助は、怯えた顔でそう言った。 悠之慎「どういうことだ?」 太助 「あそこの川には昔っからバケモノが出るんだ……!!     この村が出来る前の言い伝えじゃあ、     『禊隆正』ってお方がバケモノを倒したらしいが、     どうやらあそこはバケモノが出やすい場所みてぇなんだ……!!」 悠之慎「………」 隆正、か。 それにバケモノってのは……以前、彰衛門とルヒドが結託して出した幻影か。 アレは確かにバケモノだった。 悠之慎「それでも、そこに彰衛門が居るってゆうなら俺は行くさ。     なんとなく気になるんでな。危険だと思ったら戻ってくるよ」 太助 「あ、ああ……その方がいい」 …………ま、あいつのことだから大丈夫だろうけど。 で、川。 ベキボキ!! 彰衛門「おわぁあーーーーーーーっ!!!!!」 どういう経緯でこうなったのか。 彰衛門はよく解らん謎の生命体に捕まり、その触手で体を締め付けられていた。 音からして骨とか折れてるんだろうけど、 それでも余裕のある叫び声を出せるところは感心する。 彰衛門「げほっ!ごほっ!はッ、な……せィ!ジジイ!!」 ベチョン! 彰衛門「ゲゲッ!?」 輝和式膝蹴り(テルカズキック)をするが、謎の生命体の体は柔らかく、効果がなかった。 てゆうか……わざわざ輝和の真似をする意味はあったのか?  ◆輝和───てるかず  COSMOS、バド=ワイザー率いる『キャンディ』のメンバー。  マルボロ(ジョーカー)に首を絞められた際、  『は……な……せィ!ジジイ!!』と言って膝蹴りした。  *神冥書房刊『COSMOSって最高だよねっ』より 彰衛門「ちくしょォーーーッ!!目さえ見えれば貴様などォーーッ!!」 彰衛門の言葉に、俺は彰衛門の目を見た。 ……その目の周辺は黒いもので覆われていた。 恐らく墨だろう。 彰衛門「ああ、ああ……もういい……───丸ごと食ってやるちょーーっ!!!」 ガブッ!! ???「ピギィイイイーーーーーーーーッ!!!!!」 うおっ!?あんなキモチワルイ物体に噛みつきやがった!! 彰衛門「はらへっだ……!!……もぉ我慢できねぇなぁあ〜〜〜〜っ!!!!」 ギチギチ……!!ゴニュゴニュゴニュッ!! ???「ピギッ!!ピギィイイイイイッ!!!!」 うわぁ……無理矢理食い千切ろうとしてるよ……!! 見るからに毒がありそうなヤツなのに……! ???「ピ───ピギイイイイイイ!!!!!」 ギュギューーーッ!!ベキゴキ!! 彰衛門「ウギャァーーーーッ!!!!!」 あ、絞めつけで反撃された。 悠之慎「どっちも生きようと必死だな……」 これが……これが生存競争ってやつか……。 まさか親友の生存競争を見る時が来るなんて、夢にも思わなかった……。 彰衛門「こ、このジョルノ=ジョバァーナには、ゆ、夢……がはぁっ……」 がくっ。 あ、堕ちた。 しかし謎の生命体は攻撃をやめない。 悠之慎「しゃあないなぁ……クリエイション」 水性生物の弱点ってのは雷と相場が決まっているが、 今の彰衛門を巻き込むと本当に死ぬかもしれない。 というわけで、一体に対して有効な武器を創造する。 悠之慎「───創造。雷刀【(サイ)】」 創造した刀は雷を帯びている。 俺はそれを構え、駆けた。 ???「ピギッ!?」 謎の生命体が俺の存在に気づく。 だが遅い。 ビヂィッ!! 疾駆(しっく)する刀が軌道に雷を残し、その分解させられた触手を焦がした。 それにより、彰衛門も解放される。 ???「ピギ……?」 バケモノは『解らない』といった感じに、焦げて落ちた触手を見た。 ───当然、その隙を逃すわけがない。 悠之慎「くたばれ」 ザゴンッ!! ???「ギィッ!!」 頭部らしき部分に刀を突き刺して終わり。 あとは刀がやってくれる(・・・・・・・・・・・・)
。 ???「ギギィッ!!」 悠之慎「じゃあな。せめて跡形もなく吹き飛べ」 彰衛門を抱え、軽く後ろへ飛ぶ。 その刹那、刀が青白く光り輝く。 『この刀が俺の手から離れる時、刀は凄まじい雷光とともに消滅する』。 そのイメージを忠実に実行しようとしているのだ。 ???「ギッ───」 音として感知できない音が鳴り響く。 青白い光は巨大な雷となり、その場に大きなクレーターを作るほどの爆発を起こした。 それで───バケモノは跡形もなく消し飛んだ。 悠之慎「……上出来だ。初めてにしては上手くいった」 斬った感触の残る右腕を振り、それを払う。 イメージを組み立てるのもなかなか難しいもので、 雑念が入るとこうは上手くいかない。 彰衛門「いで、いででで……」 悠之慎「大丈夫か?」 彰衛門「フフフ……だ、誰だか知らんが助かった……。     だが……俺はもう目が見えないんだ……。     だからどうか……この先にある村の、     さらに奥の石段を登ったところにある神社───     そこに住む幼子達に伝えてくれ……。     『彰衛門は立派な闘いの果てに散った』と……。     決して、釣りスキルが2程度なのに海釣りに挑戦して、     釣れちまったクラーケンに襲われて死んだ、     どこぞのハゲモンクのような無様な死に様ではなかったと……」 悠之慎「長い。簡潔に纏めろ」 彰衛門「お、男塾万歳……」 コトッ……。 死んだ。 悠之慎「……彰衛門の目の汚れを流し落とす水が出ます……弾けろ」 イメージを弾かせ、彰衛門の目に水を落とした。 彰衛門「ぶわっ!!冷てっ!!何事!?」 悠之慎「……気分はどうだ?」 一瞬にして墨を洗い流した水を見送り、彰衛門に話し掛ける。 彰衛門は俺を見て、『あら悠之慎じゃないと』と言う。 彰衛門「ど、どしたん?こげなところになんの用だ?」 悠之慎「んー……お前がどこまで飛んでいったか気になってな」 彰衛門「ほほう……そりゃ珍しい。あ、そんでさ。     俺、飛ばされた記憶がないんだけどさ。何で飛ばしたん?」 悠之慎「神屠る閃光の矢」 彰衛門「死ぬわっ!!」 悠之慎「大丈夫だって。イメージは加減はしたから」 彰衛門「そういう問題じゃねぇぞ絶対……。     くそ、道理で傷の治りが遅いと思った……」 ところどころで体を擦るようにしながら、悲しそうな声を出す彰衛門。 ……ちとやりすぎたか。 加減したとはいえ、神屠る閃光の矢だしなぁ。 ……っていっても、姉さんの出す威力には到底追いつくシロモノじゃないけど。 ホンモノは反則的なほど強すぎだ。 撃てば壊せないものはないだろう。 それを精一杯イメージして出しても、到底敵わないのだ。 ああ、思い出すなぁ……ルナとの婚儀の時に本気で殺されそうになった頃……。 悠之慎「や、やめてくれっ……!俺にはそんなもの撃てない……!!     その音を止めてくれぇええええええっ!!!!」 彰衛門「……軍曹さん?」 悠之慎「ハッ!?」 ……やばいな。 思い出してたら恐怖が蘇ってきた。 彰衛門「どしたん?」 悠之慎「……姉さんに殺されかけたこと思い出した」 彰衛門「うおう……そんなことがあったんかい」 悠之慎「前にも言っただろ……婚儀を家族全員に反対された時のことだよ」 彰衛門「ああ、なるホロ」 納得、と頷く彰衛門。 悠之慎「で、お前はこんなところでなにやってたんだ?」 彰衛門「え?見ての通りだけど」 悠之慎「……クラーケンを食おうとしてたのか?」 彰衛門「見てたんならもっと早く助けてよ!!ひどいじゃない!!」 悠之慎「お前ならなんとかするかなーって思ったんだよ」 彰衛門「あ、あのな……オイラ、冥月刀持ってないから無茶は出来ないのよ?     そこんとこ考えておくれよ……」 あ、そっか……。 無茶をすれば傷が浮き出すんだっけ。 彰衛門「っあ〜……だめだぁ〜……しばらく休むわ、俺……」 悠之慎「そうしろ。大体お前はいつも無茶しすぎなんだ。たかだか人をからかうために」 彰衛門「あの……今回ばっかりはマジで普通にヤバかったんですけど……」 悠之慎「それでもだ。もっと自分を大事にしろよ」 彰衛門「御意」 悠之慎「………」 こいつってよくよく本気で解らん。 彰衛門「あ、ところでさぁ悠之慎」 悠之慎「んー?」 寝転がっている彰衛門の隣に座りながら、軽い返事を返す。 彰衛門「そこの竿、どうする?」 悠之慎「竿?」 言われて、ふと見ると……落ちている竿。 悠之慎「……これがどうかしたのか?ただの竿じゃないか」 竿  「甘いな…」 悠之慎「うおっ!?」 手に取った途端に喋るもんだから、ババッと手放してしまった。 それがガシャッと地面に落ちると、竿は『ぐおお……』と唸った。 竿  「ただの竿じゃねぇ竿だって……いるのさ」 悠之慎「……おいおい」 どうなってんだ、この世界。 竿  「少年……おまえさんまだ……若そうだな?     世の中には…まだまだ解き明かされてない神秘ってのが…あるのさ…」 悠之慎「どうでもいいがどうしてこいつ、こうまで偉そうなんだ?」 彰衛門「さあ」 竿  「お前ら……俺の声が聞こえるってことは……     何かしらの能力を……持っているんだな……」 悠之慎「喋り方がムカツクから折っていいか?」 彰衛門「文部省認定!」(ズビシ!【親指を立てる音】) 彰衛門の返事を待ってから竿を拾い、それに力を込めて曲げてゆく。 竿  「ぁああああ〜〜〜っ!!!や、やめてくださいぃーーーーっ!!!!」 悠之慎「だめだ」 竿  「なんて失礼なことをするんですかぁっ!!!     わ、私はさる有名な太公望に作られた竿なんですよっ!?     こんなところで折られるわけにはぁーっ!!」 彰衛門「へ?猿に作られたの?」 竿  「はぁ……やれやれ、バカですねぇ」 彰衛門「バカとはなんだコノヤロウ!!」 太公望……釣り人か。 となると、こいつは確かに大事に使われてたってことだよな。 悠之慎「彰衛門、こいつ何処から持ってきたんだ?」 竿  「失礼な!私は命の宿った竿ですよ!?     『こいつ』だとか『持ってきた』とか言ってモノ扱いするのは」 メリメリメリメリ…… 竿  「あああ〜〜〜〜っ!!!た、助けてぇ〜〜〜〜っ!!!」 悠之慎「お前、生意気なくせに弱すぎ……」 弱音を吐いたあたりで力を緩めた。 呆れるほどのバカ竿だ。 竿  「まったく、なんて失礼な人達だ……。     本来なら私と話せるだけでも光栄なことだっていうのに」 メリメリメリ…… 竿  「あぁああ〜〜〜っ!!ち、千切れる〜〜〜っ!!!     助けてくださいそこの人〜〜〜っ!!!」 彰衛門「『失礼な人達』って言ったから断わる」 竿  「そっ、そんなぁ〜〜〜っ!!!」 ……あんまりにも情けない声をだすから、俺はそいつを解放することにした。 ゴシャッ。 竿  「あ……なにするんですか。投げ捨てるなんてひどいですよ」 悠之慎「いや、もう使わないだろうから、そのまま風化してくれ」 竿  「なぁ……!?ま、待ってください〜っ!ちゃんと蔵に戻してくださいよ〜っ!」 彰衛門「ならぬ!」 竿  「そんなぁ〜〜〜っ!!!」 とてつもなく情けない声をあげる竿。 それを置いて踵を反して歩いた時───ドシンッという音がした。 悠之慎「ん……?」 彰衛門「なんじゃい」 普通に向き直ってみる。 するとそこにはバカデカいバケモノが居た。 化け物「デェケケケケ……!!オマエ……『まりょぐ』がんじる……!!     うまぞう……!!ひやっひやっひやっ……」 竿  「ひゃあぁ〜〜〜っ!!た、たすけてくださいぃ〜〜〜っ!!」 化け物「たまんねぇだ……いただきまぁず」 竿が化け物の口に放り込まれる。 竿  「あぁあ〜〜〜っ!!」 バケモノは完全に口を閉じ、竿は見えなくなった。 が─── 化け物「あがっ……!?なんだぁ……?がめねぇぞ……」 化け物がそう言った刹那、化け物の口内が爆発した。 化け物「うげぇっ!」 ───クリエイション。 口内に破邪の雷光が出ます、と。 吐き出された竿を拾って、それを肩に構えた。 彰衛門「……ま、喋れるやつを見捨てるのは気が引けるな」 悠之慎「単なる気紛れだよ。それより───」 化け物がこちらを睨む。 口は……おお、治ってるねぇ。 悠之慎「どうやら……ご機嫌ナナメのようだ」 彰衛門「そりゃそうだろ、お食事の邪魔されたんだ」 竿  「失礼な!わたしは食べ物では」 グギギギ……!! 竿  「あぁぁあ〜〜〜っ!折れる〜〜っ!!」 悠之慎「オマエ、ちょっと黙ってろ」 彰衛門「んで、どうすんの?」 彰衛門の質問。 俺としては微妙なんだが、化け物とは戦ってみたかったってのが本音だ。 彰衛門「『調べる』発動!……丁度いい相手だって。ただ防御力が高いそうな」 悠之慎「なんだそりゃ……」 と言いつつも構える。 彰衛門「ふたりともモンクなんて、バランス悪いのぅ……」 悠之慎「クリエイション───雷神刀」 彰衛門の言葉を受け入れたからってわけでもないが、刀を創造する。 彰衛門「雷神とな!?負けませんよ!二億ゥ……!ボルトォ……!!“雷神(アマル)”!!」 ………………。 彰衛門「……しまった!強力な月鳴力は冥月刀がないと発動できねぇんだった!!」 ……まあ、妙なポーズのまま驚いてる彰衛門はこの際無視しよう。 どうせ戦いが始まれば、俺がどう言ったって割り込んでくる。 化け物「おまえ……なに?おでのじゃま、するぎ……?」 彰衛門「そうだーーーっ!!このお方をどなたと心得る!!     この方こそ貴様の食事のみを邪魔しに来た厄介野郎、兇國日輪守悠之慎ぞ!!」 化け物「あぁ……!?オデのメシのじゃましにぎだ……!?」 彰衛門「あ、ちなみに俺は関係ありません故。無視しちゃってください」 化け物「ゆるぜねぇ……おまえ、ぶっころ……」 化け物、完全に俺のみを敵視。 悠之慎「オマエなぁ……あ」 彰衛門「さぁ竿!逃げるぞ!」 彰衛門は俺の手から竿を取ると……とっとととんずらしてやがった。 竿  「竿などと呼ばないでいただきたいですねっ!     私の名前はアドミルセン=クワイエッツ・ド・マルニフィセルケット=アマドラル     ・レブレイオス=ミリオンコルドホールド・アンセムライクブルードレイアス=マ     ドリエル=ロムスカ・フォン・アインスドラピオウタ=田中です!」 彰衛門「……田中か」 竿  「失礼な!私の名前はアドミルセン=クワイエッツ・ド・マルニフィセルケット=ア     マドラル・レブレイオス=ミリオンコルドホールド・アンセムライクブルードレイ     アス=マドリエル=ロムスカ・フォン・アインスドラピオウタ=田中です!     二度と略称などしないでもらいたいですねっ!」 彰衛門「長い。今日から貴様は田中だ。タナーカ」 田中 「失礼な!私をただの田中だと思ったら大間違いですよっ!」 ……どうしてこんな時代に田中なんだ? 立ち止まって口論をしているふたり(?)を見てそう思った。 化け物「だぁ〜〜っ!!」 悠之慎「おっと」 シュカァン───ゴッ! 繰り出した拳が地面を砕いた。 おお、結構な攻撃力……くらったらアウトだな。 化け物「はらへっだ〜〜……はらへっだ〜……!!」 空腹で苛立っているらしい。 平和だなぁ…… 化け物「もぉ我慢できねぇなぁ〜〜〜っ!!!」 化け物が空を見上げるように雄叫びをあげた。 っつーか…… 悠之慎「おお、彰衛門が居る」 彰衛門「あの……一緒にされるとすごく不服なんすけど」 化け物「だぁ〜〜〜っ!!」 悠之慎「おわっ!」 ヒュカッ───ゾゴッ!! 勢いよく振られた拳が、またも地面を破壊する。 化け物「もう……おまえでもいい……ぐっぢゃえ」 悠之慎「俺を食う気なのかよ……」 呆れてモノも言えん。 悠之慎「なぁ彰衛門?始末して……いいんだよな?」 彰衛門「おお。霊体妖怪改め方の養子の力───見せてやれ!!」 悠之慎「わざわざそういうこと説明するなって……」 言いつつも、理力を発動させる。 悠之慎「なにがいい?」 彰衛門「なにって……創造?」 悠之慎「ああ。こいつがくたばるくらいのモノがいい」 彰衛門「そうさのう」 化け物の攻撃を避けながら彰衛門の答えを待つが……さっさと言ってほしいものである。 彰衛門「んじゃ、あれだ!アルファレイドの模造品!」 悠之慎「……わざわざ体力の消耗が激しいヤツ選んでないか?」 彰衛門「気の所為だ!!」 声を張り上げる彰衛門を見て、『ああ、ありゃわざとだ……』と思った。 悠之慎「クリエイション」 とはいえ、想像と創造を開始する。 あまり避けるのも楽じゃない。 攻撃自体は大振りだから軌道を読めばなんとかなるが…… 破壊された地面や石が飛んでくるんだよな、鬱陶しい。 悠之慎「イメージ……」 理力を持ってからここまで生きて、もう自然に『必要』と思うことも馴れた。 学生時代から考えれば、もうあの頃の半分以下の労力で創造できる。 そうなれば、結構楽なものだった。 それを考えると、案外童心として存在できたのは幸運だったと言える。 あれのお蔭で『自分とはなんたるか』が結構解ったし。 悠之慎「弾けろ。アルファレイドカタストロファー」 手を掲げるでもなく、俺はそのままの姿勢で化け物を見据えた。 化け物「だぁ〜〜っ!!」 気合が入ってるんだかいないんだか理解に苦しむ声をあげ、化け物が突っ込んでくる。 が、それは宙から創造された眩い光によって破壊される。 化け物「うげぇっ!?な、なに……」 悠之慎「へえ……」 化け物は咄嗟に避けたのか、左肩から腕にかけて消された程度で済んだ。 なかなかどうして、俊敏らしい。 化け物「おまえ……にんげんじゃない……?なら、うまいがも……ぐっぢゃえ」 悠之慎「折角だけど、遠慮しておくよ」 再び創造を開始する。 イメージは纏まってるからあとは撃つだけ。 だが─── 悠之慎「───?」 それとは違うイメージが俺の頭の中に流れ込んできた。 Next Menu back