───獄殺指令(殺されかける)スパイ&スパイ───
───いや、俺がどうこうしたってどうにもならんだろ。帰ろう 彰衛門「そだな、帰るか」 悠之慎「ああ」 頷き合うと、俺達は冥月刀が出す光へと歩き…… 彰衛門「あ、そだ。そういやね、ママっちに会ったぞ」 悠之慎「ママっち?なんだそりゃ」 彰衛門「ホレ、ルナっちのママ、フレイア=フラットゼファー」 悠之慎「んなっ……!?」 悠之慎、驚愕。 悠之慎「『フレイア』だった頃のことはルナに聞いたことがあるけど……」 彰衛門「ああ。そんで解ったんだけど、     ここは俺が居るべき現代より300年前の世界のようだ」 悠之慎「……じゃあ、望月恭介も?」 彰衛門「ああ。300年前の人物とは思えん名前だが、居たことは居た。     まだママっちの存在には気づいてないみたいだったぞ」 悠之慎「………」 彰衛門「見に行ってみるか?」 悠之慎「ん……いや」 悠之慎はゆっくりと首を横に振った。 それは……なんて喩えればいいのか。 どこか落ちつきを孕んだやさしい顔だった。 悠之慎「行こう、ここは俺達の時代じゃない。     俺達は俺達の時代で精一杯のことをするべきで……     それは、ここですることじゃないからな」 彰衛門「そうか?俺は別に……幸せな未来がひとつでも出来るなら、     迷わずそうするべきだと思うけどな」 悠之慎「そうかもしれないけどな。俺は……馬鹿だから。     自然に任せることでルナが生まれて、俺達が笑ってられた時代が訪れるなら……     俺はその未来を選んでいたいって……そう思うから」 彰衛門「……そっか」 そういうことか。 こいつは……悠介は、今が幸せなんだ。 他の未来なんか想像出来ないくらいに。 そこにはきっと、俺が入り込める余地なんてものは…… 彰衛門「………」 悠之慎「彰衛門?」 彰衛門「わり、悠之慎。やっぱりひとつくらい違う未来を創らせてくれ」 悠之慎「彰衛門……」 彰衛門「ほら、俺もさ……馬鹿だから。     誰かの悲しみの上に築けられる未来なんて……放っておけないんだ。     俺が生きた歴史では、ママっち……     望月恭介を助けられなかったこと、すごく悔やんでた。     だから……さ。出来れば助けてやりたいんだ」 悠之慎「………」 悠之慎が少し顔を俯かせる。 けど、それも一瞬で……すぐ俺に苦笑を投げかけてくれた。 悠之慎「ほんと、損な性格だよ。お前って」 彰衛門「……サンキュ」 冥月刀の光とは逆に歩き出す。 冥月刀がキィンと鳴ったが、『待っててくれ』とだけ言って。 けど、冥月刀は俺の手元に降り、その輝きを治めた。 彰衛門「これって……」 悠之慎「連れていけってことだろ?なんだかんだで気に入られてんじゃないか?」 彰衛門「いや、それはない。何気に嫌われてる」 悠之慎「解るのかよ……」 彰衛門「まあ、なんつーの?それっぽい気は感じる。拗ねてるっつーのかな。     俺の時代で冥月刀の人格と話したけどな、どうにも嫌われてるぞ、絶対」 悠之慎「へえ……」 俺の言葉に冥月刀が鳴ったが、気にしないで歩く。 彰衛門「ああ、冥月ってゆう名前なんだけどさ。     これがまた、他のおなごみたいに悠介の肩ばっか持ちやがってねィェ〜」 悠之慎「そ、そうなのか?」 彰衛門「ああ、間違いないね、ありゃ惚れてる」 キンキンと冥月刀がやかましいが、無視して歩く。 悠之慎「……否定してるように聞こえるんだが」 彰衛門「今は気づいてないだけだ、未来になりゃ解るさ。     そうなったら、俺なんて嫌われるだけだし」 更に刀がキィイイインと鳴る。 だが無視。 悠之慎「その刀の人格が現れたんだよな?だったらなんで、今は無いんだ?」 彰衛門「ああ、それはね。この冥月刀と意識が同調する娘ッ子が生まれるんだけどね?     そいつが冥月刀を鞘から抜くと、冥月の意識がそいつの意識の中に流れるんだ。     えっと、ややこしいけどさ、刀を抜くと冥月になるんだ、その娘ッ子」 悠之慎「……ややこしいな、確かに」 彰衛門「その娘ッ子ってのが未来から来た俺とお前の子孫らしくてな?     その時に意識を覚醒できたのはその未来の冥月刀だけだったんだよ」 悠之慎「……すまん、やっぱ解り辛い」 彰衛門「あらら……」 確かに俺の説明の仕方も悪かったかもしれん。 彰衛門「あ、そうだ……すまん、ちょっと待っててくれ悠之慎」 悠之慎「どうした?」 彰衛門「この時代で、絶好調なゼノと戦うことになるんだ。     ちょっと行ってルナカオス取ってくる」 悠之慎「……ちょっと待て、ゼノと戦うってどういうことだ?」 彰衛門「あら?それは知らんの?望月恭介を殺したのってゼノだぞ?」 悠之慎「んなっ……!!」 驚愕、パート2。 悠之慎「む、無茶言うなァーーーッ!!あいつに勝てるかよっ!!     お、お前っ!なんてこと言い出すんだ!!」 彰衛門「じゃーじょーぶじゃーじょーぶ。冥月刀とルナカオスがあれば勝てるって。     あ、でも遺書は書いておいて損は無いかも。     こう……『右の者を世界の終わりまでカスと認める』って書いて、     その右に夜華さんのフルネームを」 悠之慎「それは遺書とは言わない」 彰衛門「そこは冷静にツッコムのね……。ま、安心しろよ。     こう見えてもゼノとは何度も手合わせしてるんだ。     毎日毎日『我と戦えぇえーーっ!!』とか言われてね。     おかげでクセも覚えたし、なんとかなるよ」 悠之慎「……ほんとだろうな。また……お前を忘れるなんて嫌だからな、俺は」 彰衛門「オウヨ!任せておきんさい!!」 胸を叩いて頷いてみせ、俺は冥月刀を閃かせて神社の石塚へと飛んだ。 そこからさっさとルナカオスを取り出し、戻ってくる。 彰衛門「………?」 その際、神社の方からなにかしらの違和感というか……気配を感じたけど、 今はそれよりもゼノを倒すことを考えることにした。 彰衛門「ほい、ルナカオス」 ルナカオスを悠之慎に渡す。 悠之慎は微妙な顔つきでそれを受け取ると、俺に言ってきた。 悠之慎「……てゆうかさ、俺に扱えるのか?」 彰衛門「誰だって使えるだろ。     冥月刀は月壊力か月蝕力を持ったヤツじゃないと扱えないけど」 悠之慎「へえ……」 シゲシゲと冥月刀を見る悠之慎。 彰衛門「そういや、未来の世界じゃまだ冥月刀は三つの刀に分割されてるんだよな?」 悠之慎「へ?三つの刀って?」 彰衛門「ああ、そっか……悠之慎は知らないんだよな。     冥月刀ってのはさ、     お前の居る未来の時代じゃあまだ三つの刀に分割されたままなんだ。     壊塵刀、滅人刀、断影刀の三本。晦神社に宝刀があるだろ?」 悠之慎「あ、ああ……滅人刀だな?」 彰衛門「そ。それと弦月屋敷の地下に安置されてる断影刀と、     昔に盗まれたってゆう壊塵刀を月癒力で融合させるんだ。     そうすると冥月刀になる」 悠之慎「へえ……」 感心したように頷く悠之慎。 いや、感心というよりは…… 俺が悠之慎に説明することが珍しいから頷いているように見えた。 彰衛門「……あのね、俺だって家系のことには結構詳しいんだぞ?」 悠之慎「だな。今知った」 彰衛門「ったく……」 やっぱりそっちの方で感心してたのかよ……。 彰衛門「ま、あれだ。     冥月刀の中には冥月が居るんだからさ、ちゃんと融合させてやらないとな。     菜苗さんが居る時代に戻ったら、俺は竿と一緒に壊塵刀を探すよ」 悠之慎「………」 彰衛門「ん?どした?」 悠之慎「いや……お前、結構やさしいんだな、って」 彰衛門「なんだよそりゃ……」 悠之慎「だってさ、刀の中の人格のこと心配するなんて、お前らしくないかなって」 彰衛門「んー……なんだろね。なんかほっとけないんだ、冥月って。     今更だけど、妙な懐かしさを感じるっつーか……なんだろ、解んねぇや」 悠之慎「そっか」 彰衛門「ま、それに……可哀相じゃん?ずっと三つに分割されたままなんて」 悠之慎「……そうだな」 悠之慎がひどくやさしい顔で微笑んだ。 俺も負けじと満面の笑みを贈ってみたが、微妙な顔をされてしまった。 ───…………。 村を歩く。 俺達が歩く先には、望月恭介と……フレイア=フラットゼファー。 悠之慎「へえ……やっぱ、ルナの面影があるな」 彰衛門「普通逆じゃないか?親の面影が子に移るもんだろ」 悠之慎「喩えってのは比喩が出来りゃあそれでいいんだよ、ばか」 彰衛門「そうかえ?」 ゼノがいつ出てきてもいいように尾行してるわけだが…… フレイア「………」 フレイアにはバッチリ見つかっているようだ。 フレイア「ちょっとあなた達……」 彰衛門 (な、なにーーーっ!?この完璧な変装があっさりバレたーーーっ!!) ……バレないとでも思ってたのか、この馬鹿は……。 ちなみに俺達は、彰衛門の提案で変装をしていた。 彰衛門のイメージ通りの創造をした服は黒服で、 しかも何故か……付け鼻とサングラスが付属されていた。 ようするに『南国指令スパイ&スパイ』ルック。 彰衛門(あ、でもこれで無視すれば俺達は見えてないって思ってくれるよね?) 悠之慎(まあ、な……) それでも、なんとなく展開が読めてくる。 曲がりなりにもルナの親だ。 『自分の好きな人を尾行するようなヤツ』を、黙って見過ごすとは思えない。 フレイア「……見えなくても殺気は感じる筈よ。去りなさい……!!      これ以上恭介に近寄るつもりなら……!!」 フレイアの殺気が増幅する。 殺気だけで汗が溢れる。 体が勝手に逃げ出そうとしてしまう。 ……そんな中。 彰衛門 「お?なんだ?やンのかコラ!!」 彰衛門がフレイアにガンくれて、ズンズンと近寄って行った。 俺は完全に呆れ、片手で顔を覆いながら…… 悠之慎 「馬鹿……」 ……と呟いた。 彰衛門 「え?ギャアしまった!ついクセが!!」 フレイア「へえ……見えてるんだ。      だったら都合がいいわね───“闇薙の斬命鎌(ダークイーター)”!!」 フレイアがその手に鎌を出現させた!! 彰衛門 「お、おわぁーーーっ!!」 悠之慎 「どうすんだよ彰衛門!!戦うのか逃げるのか!!」 彰衛門 「馬鹿ッ!!ママっちはゼノより強ぇんだぞ!?勝てるか!!」 悠之慎 「なっ───それを早く言え馬鹿ッ!!」 フレイア「なにをぶつぶつと言ってるの……!?      なにを企んでるのか知らないけど、恭介はわたしが守るんだから……!」 彰衛門 「それは仕事だからかね!?」 フレイア「え……?」 彰衛門 「死神の仕事だから守るのかねと訊いているのだよ!答えなさい!!」 危うい立場だというのに、どうしてこいつはこう偉そうなんだ? フレイア「な、そ、それは……その……。      最初は、そう、だったけど……      でも、この男……恭介と一緒に居ると心が落ち着いて……      死神は感情なんか持っちゃいけないのに……でも心が暖かくて……その……」 悠之慎 「………」 彰衛門 「………」 俺と彰衛門は顔を見合わせて、凄まじい勢いで納得した。 ああ、こりゃ確かにルナの母親だ、と。 どんな事態でも、こういうことに弱いのは親譲りらしい。 悠之慎(今の内に逃げるか……?) 彰衛門(ばか、今俺達はスパイ&スパイなんだぞ?     相手を罠に引っ掛けて肩をカタカタさせながら笑わなけりゃウソだ) 悠之慎(この際、ウソでもいいよ俺……) それでも付き合おうとする俺は、自分が思うより馬鹿なんだろうと思った秋の日だった。 チャ〜ン……チャンチャ〜ンチャ〜ンチャ〜〜〜ン……チャカチャ〜ン♪ でげでげでで、でげでげでで……バッシャア!! フレイア「ふやわぁああああああああああっ!!!!!!????」 カタカタカタカタカタカタ!!! 妙な音楽とともにフレイアの頭上からバケツいっぱいの硫酸……もとい、水を落とした。 それとともに彰衛門が物凄い勢いで肩を揺らしながら笑みを漏らす。 ───が、何気にトリップしていたフレイアは激怒し、俺『達』に襲いかかった。 悠之慎「なんで俺までぇえええええええええええっ!!!!」 当然、脱兎の如く逃走。 ふと後ろを振り向けば、 般若も裸足で逃げ出すほどの形相で鎌を振りまわすフレイアが!! 怖ェ!!超怖ェエ!! フレイア「ガァアアアアアアアアアアア!!!!!」 彰衛門 「お、おわぁーーーーっ!!!!」 悠之慎 「うぎゃああああああああああっ!!!」 村中を駆け巡る。 止まれば絶命するため、休む暇もない。 フレイア「ガァッッ!!」 ビジュンッ───ズガガガガガガガァアアアアアアアアアンッ!!!! 彰衛門&悠之慎『ヒィイイイイイイイッ!!!!!??』 フレイアが力を溜めて振るった鎌が大地を裂き、その先の先の民家を両断してみせた。 それでも斬撃の余波が治まることはなく、 景色の果てまでも裂き……やがて余波は見えなくなった。 彰衛門「甘く見てたぁーーーっ!!     ルナっちなんて比較にならねぇほど強ぇえーーーっ!!」 悠之慎「守る意味なんてねぇくらいだぞオイ!!     こんなんでどうして望月恭介が殺されるってんだよぉーーっ!!」 彰衛門「そんなん俺が訊きたいわぁーーーーっ!!!!」 フレイアの強さは、ゼノも比較になるかどうか解らないくらいの強さだった。 彰衛門「さ、さすがは処刑者(イレイザー)のNo.1……!!     俺達はなにがあっても、スパイ&スパイの真似をして、     ママっちに水などぶっかけるべきじゃあなかった……!!」 そんなの最初っから解ってたことだが。 彰衛門「埒があかんな!月聖力・退魔の壁!!」 ピキィンッ!!ガガンッ!! 彰衛門が張った青白い膜が、俺達の周囲を囲む。 フレイアは勢い余ってそれにブチ当たり……正気には戻ったようだ。 彰衛門 「ふはははは!!どうだ!これで貴様は俺達には手出し出来まい!!      いくら貴様の力が強かろうと、こればかりは壊せるものか!!」 フレイア「手出し出来ない?壊せない?───なによこんなものっ!!」 フレイアが大きく振り被り、拳を振るった。 すると───ドッ…………ガッシャァアアアアアアアン!!!!! 彰衛門「ウヒョーーーーーォオオ!!!?」 彰衛門の張った退魔の壁は、あっさりと破壊された!! てゆうか拳で!?なんつぅ無茶苦茶な強さだよ!! 彰衛門 「って───思い出した!      確か冥月もこれで破壊されたんだっけ!?そんでもって───!?」 フレイア「───終わりよ!」 フレイアが鎌を振るう。 彰衛門「思い出した───けど間に合わーーーん!!!」 ビジュンッ───スガガガガガガァアアアアアアアアン!!!!! 彰衛門「ヒィイイヤァアアアアアアアアッ!!!!」 ……避けた。 紙一重で、なんとかフレイアの鎌の一撃を避けた。 当たったら一撃で死ぬな、ありゃ……。 彰衛門「今が時!!異翔転移!!エロマンガ島へ飛べの巻!!」 彰衛門がフレイアに向けて月空力を発動させる!! フレイアの体が消えかかるが─── フレイア「強制転移───!?ふざっっっけんじゃないわよぉっ!!!!」 バガッシャァアアアアアアアアン!!!! 彰衛門「おわっ……おわぁーーーっ!!!」 なんと、気合だけで強制転移を破壊して見せた!! フレイア「人を散々コケにして……!!      誰だか知らないけど覚悟出来てるんでしょうね……!!」 彰衛門 「が、がが……!!」 うあ……彰衛門が立ち竦んでる。 かく言う俺もだけど。 彰衛門「か、勝てねぇ……!!     たとえヤムチャが千人居たって敵う相手じゃあねぇ……!」 どうして比喩対象がヤムチャなのかは別として、 確かにヤムチャごときが勝てる相手じゃない。 彰衛門 「こ、こうなったら……奥の手だ!おい死神!刮目せよ!!」 フレイア「───!」 彰衛門の言葉に、フレイアの目がギンと見開かれる! と、そこへブシィッ!! フレイア「ッ!?あっ───きゃああああああっ!!!!」 ……彰衛門の毒霧が炸裂した。 彰衛門「クォックォックォーーーーッ!!!     どうだ見たか!!これぞ轟天弦月流隠し奥義・毒霧ぞ!!」 ……チャチな隠し奥義だが、これのお蔭でなんとか助かりそうだ─── 彰衛門「悠之慎!」 悠之慎「おう!逃げるぞ!!」 俺達は再び脱兎の如く逃走!! と、そこへ─── フレイア「逃がすと───思ってるの!?」 目を閉じたままのフレイアの渾身の一撃!! 凄まじい勢いで鎌が振られ、そこに風が生じた!! それは瞬時に竜巻となり……お、俺達目掛けて……キャーーーッ!!!? 悠之慎&彰衛門『だっ……だわぁあああああああーーーーーっ!!!!!』 必死に駆けた俺達だったが、やがて竜巻に飲み込まれて遥か彼方まで吹ッ飛ばされた。 ──────…………---ーーーーぁぁぁぁああああああああああっ!!!!!!! ドグシャアッ!!!!! 悠之慎「ゲブゥッ!!」 彰衛門「ごはぁっ!!」 ようやく治まった竜巻から放り出され、俺と悠之慎は大地に落下した。 おお、この衝撃……ジェットコースターから落下した末堂さんなんてメじゃねぇ。 途中で月然力・風で勢いを殺してもこの有様……。 まいった……ママっちってば本気で、冗談抜きで、馬鹿みてぇに強ぇ……。 鎌振っただけで竜巻だぞ……?冗談じゃねぇ……。 ……『処刑者(イレイザー)』の恐ろしさを垣間見た瞬間でした。 悠之慎「がふっ……!ら、落下したのが高い山ン中で助かった……!!     これが普通に低い場所とかだったら死んでるぞ……!!」 彰衛門「いや……普通はこれでも死ぬと思うけどね……ごふっ……」 口から血が吐き出された。 治療しないと死ぬな、こりゃ。 というわけで月生力を発動させて、俺と悠之慎は回復した。 彰衛門「いや〜ンァ、まいったまいったぁ。ママっち強すぎだわ」 悠之慎「冗談抜きでお花畑が見えたぞ……」 彰衛門「キャア臨死体験!?貴重じゃない!」 悠之慎「死んだら元も子もないだろうがっ!」 そうかも。 彰衛門「でもYO悠之慎?ここはやはり暖かく見守るしか無いんでないかい?     今回みたいに迂闊に近寄るから、あげな事態が起きるんだよ」 悠之慎「『もっと近くに行こうぜトニー!』って言ったのはお前だろうが……」 彰衛門「そげな昔のことは忘れたな」 悠之慎「はあ……羨ましいよ、お前の脳内って」 彰衛門「フフフ……普段はこんなにお茶目だが、本当は筋金入りぞ?」 悠之慎「なんだよそりゃ……っと、これからどうする?」 ……ふむ、誤魔化された気もするけど……どうするべきか。 俺的にはやはり、望月恭介の監視を続けるべきだと思うが。 いや、それしかねぇ。 彰衛門「あそこまで強いママっちなのに、望月恭介が殺される。     その事態は……きっとママっちがどっかに行ってる時に起きたに違いねぇ」 悠之慎「例えば誰かさんが誰かさんを怒らせて、激怒して追ってこさせた時とかか?」 彰衛門「いやははは、耳が痛いねぇ。でもまあそんなところだろう。     というわけでここからは別の衣装を用意しよう。OK?」 悠之慎「断わっても無駄なんだろうが……」 彰衛門「解ってるじゃん!」 彰衛門「はぁ……」 こうして悠之慎の溜め息を耳に、俺達は新たなる戦いに赴くのだった───!! ───……。 悠之慎「さてと……」 溜め息混じりの掛け声をひとつ。 袖を通してみた服は、なんとも馴染みがあるのかどうか解らないものだった。 彰衛門「よし!今から俺達は『ビッグボンバーズ』だ!!     ちなみに俺がカナディアンマンで、キミがスペシャルマンね?」 悠之慎「お前、どうしてそこまでキン肉マン好きなんだ?時々普通に疑問に思うぞ……」 彰衛門「キン肉マンはボクらのヒーローさ!」 そんなことは訊いちゃいないんだが。 彰衛門「よし、それじゃあママっちのところまで行こうスペシャルマン!」 悠之慎「スペシャルマン言うなっ!!」 ───……。 ……でも、結局来てるし。 ああ……なにがどう間違ってこんなことになったんだ……? 剣を持つスペシャルマンと刀を持つカナディアンマン……───異様だ。 そもそもこの時代でこんな服着てる方がどうかしてる。 カナD「よし……ママっちを発見したぞ。用意はいいかSP」 SP 「略すくらいなら普通に呼べよ、ったく……」 カナD「まあまあ、いいじゃんこれくらい。それでは……」 なにを血迷ったのか、カナディアンマンが駆け出した!! SP 「ばっ……なにやってんだ!」 カナD「たぶんヤツの放つ殺気が俺のカナディアン魂に火をつけたんだーーーっ!!」 カナディアンマン、その場で石を拾って投擲!! それには月操力を込めていたらしく、 擦りぬけるだろうと判断していたフレイアの肩にメガヒット!! ……刹那に、その場が殺気の獄地へと化した。 カナD「げぇ、バレた。あわわわ……」 げぇ、じゃねぇって!! カナD「お、オレはあいつに頼まれてやったんだーーっ!!」 SP 「なっ……て、てめぇっ!!」 カナディアンマンが俺を指差して絶叫。 ……原作、キン肉マンでも『カナディアンマン』の毒舌は何気に有名である。 詳しくは『黄金のマスク編・友情の断髪式!!の巻』の5ページ目、6コマ目をどうぞ。 正義超人とは思えない友情のカケラもない言葉が見れます。 ……しかもそれを注意するジェロニモに向かって逆ギレ。 最低だ。 ───などと言ってる場合ではなく。 カナD「ふはははは!!スペシャルマンよ!     貴様はきっと今、俺のことを冷徹男と思っているだろうがなーーーっ!!     貴様とて『キン肉星王位争奪編・甦れ!火事場のクソ力の巻』の7ページ目で、     さらりとトンデモナイことを言ってるだろうが!」 SP 「あれはスペシャルマンが勝手に言ってることで、     更に俺を無理矢理スペシャルマンに仕立て上げたのはお前だろうが!!」 カナD「何気にキン肉星王位を横取りしようとしてた貴様などに何を言われようと、     まったく痛くも痒くもねぇーーーっ!!」 SP 「関係ねぇ!!大体お前───」 ゾクリ。 カナD「あ……」 SP 「えっと……」 辺りが完全に殺気に包まれた。 恐る恐る望月恭介が居た方向を見てみると…… なんの表情もなく、ただただ殺気を放ってるフレイア。 え……?し、死ぬ……? SP 「殺気だけで死を覚悟しちまうなんて……」 カナD「ふふっ……俺達も強くなったもんだぜ……。     『敵わない』と確信出来る心を持つ日が来ようとは……」 ここに、永遠の好敵手が誕生した。 彼女を目指せば俺達はまだまだ強くなれるに違いない……─── フレイア「……殺す」 などと思ってる場合でもなく、 俺達はそのあまりにも冷たい言葉を耳にした刹那、弾けるようにとんずらしていた。 ビジュンッ!!ガコォッ!! カナD「ウワァーーーッ!!い、家が壊れたァーーーッ!!」 恐怖に抱かれながら走ってるってのに、 どうしてこう余裕がありそうな声で叫ぶかねこいつは! SP 「って、ぅおわぁあああっ!!!!」 ビジュンッ───ガガァッキィンッ!! SP 「だぁーーーっ!!空間が切れた空間が切れたぁあああっ!!!!     無理絶対無理勝てるわけねぇっつのぉーーーっ!!」 カナD「に、逃げろぉーーーーっ!!力の限り逃げるンだぁーーーっ!!!」 ……こうして、俺達は後ろから放たれ続ける空間断裂衝撃波を死に物狂いで避けながら、 なんとかフレイアから逃げおおせたのであった……。 ───……。 彰衛門「はっ───はぁっ!はぁーーっ!!はぁーーーっ!!」 悠之慎「げっほ……!!うえっ……!!はぁーーっ!!はぁーーっ!!」 し、死ぬかと思った……!!本気で殺されるかと思ったYO……!! 悠之慎「こンの……馬鹿野郎!!ちったぁ相手考えて行動しろ馬鹿野郎ッッ!!!」 彰衛門「に、二回も馬鹿野郎って言うことないだろ!?バカとはなんだこの野郎!!」 悠之慎「うるせぇっ!!本気で走馬灯見えたぞ俺!!」 彰衛門「俺だって見えたわ!!     もうちょっかい出そうなんて思わねぇし思えねぇよ!!」 着ていたカナディアンスーツもボロボロだ。 既に面影すら無い。 悠之慎「はっ……はぁっ……あのさぁ……お前、本気で助ける気あるのか……?     冗談抜きで呆れちまうぞ俺は……」 彰衛門「ちょっとした茶目っ気のつもりだったんだが……」 まさかあそこまで激怒するとは思わなかった。 彰衛門「いやしかし、悠之慎の腕が飛んだ時はどうしようかと思ったよ」 悠之慎「腕の創造なら随分前にもやったしな……。     お蔭でまた、ピッコロさんの気持ちが解っちまった……」 彰衛門「貴重体験だけど、もう二度と御免だな……」 悠之慎「まったくだ……」 ……はぁ。 悠之慎「ところで……気づいたか?」 彰衛門「んあ?なにを?」 悠之慎「フレイアが持ってたアレだ」 アレ?アレって…… 彰衛門「鎌?」 悠之慎「じゃなくて。……竿だ」 彰衛門「ゲッ……」 背筋にゾクリとした緊張が走った。 まさか、とは思うが…… 彰衛門「……タナーカ?」 悠之慎「多分、間違い無いと思うが……」 彰衛門「………」 悠之慎「………」 ピッコロ大魔王に飲み込まれたドラゴンボールを思う心境。 ママっちに立ち向かって、竿を手に入れろってゆうのか……? 悠之慎「………」 彰衛門「………」 ……覚悟を決めるしかなかった。 彰衛門「トタァーーーッ!!砂かけババァーーッ!!」 ビシィッ!! フレイア「くうっ!?だ、誰───!?」 キャア!!月聖力を込めた砂がママっちの瞳にヒット!! これで視界は閉ざされたわYO!! そんでもって保険として─── 彰衛門「時よ止まれ!『世界(ザ・ワールド)』!!」 冥月刀を構えて時間氷結!! そんでもってすぐさまママっちの懐に潜り込み───あった!確かに竿だ!! タナーカかどうかは話し掛けてみなけりゃ解らんが───ビギッ。 彰衛門「へ?」 ビギッ……ビギギギッ……!! 彰衛門「な、なにっ……?氷結空間にヒビが……!?」 いやん!!すっげぇ嫌な予感!! 彰衛門「とんずらぁーーーーっ!!!」 バガッシャァーーーン!!! とんずらを決め込んだ刹那、氷結空間が音を鳴らして砕けた!! てゆうか怖い!!この死神さん強すぎ!! 普通、止められた時間まで破壊しますか!? フレイア「まさか時間まで止められるとはねっ……!!もう手加減しないからっ!!」 彰衛門 「ゲゲゲゲェェェェエエエエエーーーーーーッ!!!!!!」 手加減!!手加減って言ったこのヒト!! 信じらんねぇ!! アタイもう何も信じられないワ!! 彰衛門「ヒィイ退却じゃーーーっ!!」 本気で死を予感した俺は、プレイスジャンプで逃走した。 ───……。 悠之慎「あー……その様子だとダメだったみたいだな……」 彰衛門「……グビグビ……」 それは転移した刹那のことでした。 ママっちの鎌が俺に向けて振られ、空間断裂を発生させたのです。 月空力も次元の歪みを利用して飛ぶわけですから、 空間ごと斬られれば一溜りもありません。 俺は腹を裂かれながらも、なんとか逃げたってわけです……。 彰衛門「いで……いでで……」 月生力流してるのに傷が中々治らない。 こりゃあ、相当ダメージがデカい証拠だ。 悠之慎「どうする?実際今の蒼麻家の人物には呪いの発症はない。     だから竿を手に入れても治せるとは思えないぞ」 彰衛門「そ、それ先に言ってくれよ……あいっ……!!あいででで……!!」 なんとも不毛な負傷だった……。 うう、痛いよぅ痛いよぅ……。 Next Menu back