───歴史修正日記───
───…………。 そのまま、ママっちと望月恭介を監視する日々が続いた。 ある日にママっちは望月恭介に自分の存在を見せ、いつしかラヴってゆく。 そんな中───ママっちは冥界から呼び出しを受けたようで、地界から去ってった。 ……俺と悠之慎は、この日だなと確信する。 そして───望月恭介の前にゼノが現れた。 ゼノ 「あいつと結ばれたい……?ならば……」 恭介 「ならば……?」 ???「貴様が死ねばよいのだァーーーーッ!!!!」 ゼノ 「ぬぅっ!?」 ゼノがアタイが発した言葉に天を仰ぐように見上げる! 花京院「天知る地知る空知る冥知る神知る!!全ての世界が俺を知る!!     恐れ戦慄け!!我こそは時空の覇者───花京院ッ!典昭!!」 ババッ!!クルクルクル……スタッ!! アタイはポーズを決めたのちに軽やかにジャンプし、ゼノの前に降り立つ。 フッ……決まった。 ゼノ 「カキョウイン……?それが何の用だ」 花京院「『それ』扱い!?」 結構ショックだった。 花京院「そいつの魂を狙うのをやめてもらいたい。     もしそんなことをするつもりなら、ぼくと承太郎が黙っていない」 ゼノ 「ジョータロー……?」 承太郎「…………やれやれ……なんで俺が」 承太郎(悠之慎)はぼやいてる。 でも適任かと。 素で『やれやれ』とか言ってるし。 恭介 「魂を狙うって……どういうことだ」 花京院「望月、といったな?こいつはゼノ=グランスルェイヴっていってね、     強くなろうとするあまり、人の魂を狙ってるってゆう極悪死神なんだ。     だから信用して幽体離脱なんてしちゃあダメだ」 恭介 「なっ……」 ゼノ 「チッ……!貴様ら、よくも邪魔を……!」 承太郎「邪魔……?てめぇこそ人の邪魔をしているだろうが……。     自分を棚にあげてよく言えるもんだぜ……」 ……何気にノってくれてるみたいです、悠之慎。 ゼノ 「ほざけ!まだ力は少ないが、人間ごときに阻止されるほど弱くはない!!」 ───ああ。 そういやそうだったね。 この時のゼノって、ママっちの一撃で倒されるくらいの実力なんだっけ。 思い出した思い出した。 ゼノ 「邪魔をするならば───始末して貴様らの魂を食らう!」 花京院「───承太郎」 承太郎「やれやれだぜ……“星の白銀(スタープラチナ)”!!」 ドギャンッ!! ノリにノッてる悠之慎の前に、スタンド(創造の理力で創造)が現れる!! ゼノ 「なにっ───!?」 星白銀『オォーーーーッ!!!オラオラオラオラオラオラオラオラァーーッ!!!!!』 ドゴドゴドゴドゴドゴドゴ!!! ゼノ 「ぐはごはっ!ごほっ!ぐあっ!!」 星白銀が超高速で拳を振るう度、ゼノの体中に幾多もの殴痕が刻まれる!! 星白銀『ォオオオラァアアーーッ!!!!』 ボッギャァーーーン!!! ゼノ 「ぐはぁあーーーっ!!」 トドメパンチがヒット!! ゼノは大きく吹き飛び、家の壁に突っ込んだ!! 花京院「………」 承太郎「てめぇが負けた理由はたった一つのシンプルな答えだぜ。てめぇは俺を怒らせた」 ヤバイ、なりきってます。 タバコまで創造して吹かしてます。 承太郎「ゲホッ!!ゴホッ!!」 あ、元に戻った。 承太郎「ハッ!?お、俺は一体何を……」 花京院「……無意識だったのか」 まあそれはそれとして、だ。 花京院「承太郎、ゼノにトドメを刺そう。     あいつがしぶといヤツだってゆうことは、僕が一番知っている」 承太郎「……楽しそうだな」 花京院「正直僕もこの時代のゼノがここまで弱いとは思ってなかった。     だから積年の恨みを晴らそうと思ってね」 スタンドを引っ込めながら言う悠之慎に、そう返す。 本気で弱いと感じたし。 ……つまり、強くなったゼノが強すぎたってことだ。 努力、したんでしょうなぁ。 ゼノ 「ぐ……!おのれ……!     妙な力を持っているようだが、我はこれくらいでは───」 ???「いいえ……あなたはここで死ぬわ」 ゼノ 「なに───!?」 ビジュンッ───ゾッパァアアンッ!!! 花京院「あ……」 承太郎「………」 ゼノ、落ちてきた衝撃波の一撃で滅消。 そしてその衝撃波の正体は…… フレイア「ただいま、恭介」 ……フレイアだった。 フレイア「って……貴方達」 ギクリ!! しまった見つかった!! フレイア「……そう。そうだったの」 殺されるかと思ったが、ママっちは穏やかに笑ってみせると……そう言った。 花京院「お?なんだ?やンのかコラ」 承太郎「花京院フェイスで言うな。怖い」 花京院「あらそう?」 けど意味が解りませんよ? フレイア「恭介を守るためだったんでしょう?」 花京院 「き、貴様……何故それを!!」 承太郎 「はあ……」 花京院 「なにっ!?」 承太郎が着ぐるみもどきを脱いでしまう。 そんなことしたら変装してた意味が無いじゃないか! フレイア「え……」 恭介  「俺……?」 悠之慎の素顔を見たママっちと望月恭介が、いかにも『驚いた』って顔をする。 悠介 「俺は晦悠介。いろいろあって、未来から飛んできた月の家系の者だ」 花京院「ああもうっ!なにサワヤカに自己紹介しちゃってんだかっ!!」 仕方なく俺も花京院スーツを脱ぎ捨て、自己紹介をする。 彰利 「俺は弦月彰利。月の家系『弦月』の末だ。もちろん未来から来た。     ママっちのことも望月恭介のことも知ってるぞ」 恭介 「未来から……どうして?」 彰利 「あっさり信じてくれるんだねぇ。まあ都合がいいって言やァいいけどね」 ───俺はこれまでのあらすじを適当にかいつまんで教えることにした。 ───……。 フレイア「じゃあ、本当に未来から?」 彰利  「そうだっつってんでしょ。ったく、ルナっちに似て頭が暖かいんだから……」 フレイア「……あのさ、その『ルナ』って娘は事実上、わたしと恭介の娘なわけよね?      それをバカにされて、さらにわたしまで馬鹿にされて、黙ってると思う?」 彰利  「超絶に!」 フレイア「……あなた、悠介って言ったっけ?……苦労するわね」 悠介  「……解ってくれるか?」 彰利  「オウコラそこのふたり!なに同志を見つけたみたいに頷き合ってんの!!」 よってたかって俺をイジメ倒す気か!? 恭介 「で……俺とフレイアの子が、キミと?」 悠介 「ああ、まあその、一応夫婦だ」 恭介 「へえ……じゃあ義息子ってことになるのか?」 悠介 「同じ体格で義息子ってのもどうかな。     それに俺、こんなんでももう孫が居るしな」 恭介 「そ、そうなのか……てことは俺は婚儀もしてないのにひぃじいさんか……?」 おーおー、微妙な顔しちゃってまあ。 フレイア「恭介……悠介……恭介……悠介……。似た顔でややこしい名前ねぇ」 彰利  「ややこしいと感じるのは貴様の脳が薄いからだよ」 ボゴシャア!! 彰利 「ヘゴギャアアアーーーーーーーーーーーーー--------………………」 ───………… ───…………ズドドドドド!!! 彰利  「なにしやがんだてめぇ!!      勢いに乗って遥か彼方まで飛んでいっちまったじゃねぇか殺す気か!?」 フレイア「しょうがないでしょ!?人間を殴るのなんて初めてだったんだから!!      死神と違ってモロすぎるのよ人間は!!」 彰利  「お?なんだコラ!俺は貴様の拳程度では死ななかったぞ!?      それでもモロイと言うか!?お!?」 フレイア「じゃあ、モロイって感じるまで殴っていい?      もちろん存命の保証はしないけど」 彰利  「ゴメンナサイ」 フレイア「……謝るの早いわね……」 命は大事ですから。 ああもう頬がズキズキする……! 悠介は悠介で、恭介と話題に花を咲かせてるし……!! フレイア「でも……見れば見るほど似てるわね。もしかして輪廻転生ってやつ?」 彰利  「知るかボケ」 ボゴシャア!! 彰利 「ミギャアアアアアァァァァァーーーーーーーー--------………………」 ───…… 彰利  「……だからさ、言葉に対してこれはヒドイと思うんだ……」 フレイア「初対面に近い人に向かってボケなんて言うからよ」 また遥か彼方まで飛ばされてしまった。 すごいパンチ力です、ほんと。 戻ってくるのに随分かかるし……って、しまった……。 プレイスジャンプ使えばいいんじゃん……。 フレイア「でも……そうね。恭介のこと助けてもらったし、なにかお礼がしたいかな」 彰利  「脱げや」 ボゴシャア!! 彰利 「ほぎゃああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーー------…………」 ───…………キィン!! 彰利  「お前ねぇ!!冗談を冗談と受け取れないとロクな成長しねぇよ!?」 フレイア「冗談の質が悪いのがいけないの。だから悪いのはキミ」 彰利  「こ、このカスがぁっ……!!」 飛ばされ、プレイスジャンプで戻ってきた俺は憤怒した! ……けど、てんで相手にならなそうなので……攻撃は諦めました。 彰利  「そんじゃあさ、礼をしてくれるっつぅんならその竿をくれ」 フレイア「これ?いいけど……なんで?」 彰利  「ちょっとね、解呪が出来る竿を探してたんだ。      それかどうかを調べさせてほしい」 フレイア「そうなんだ。いいよ、べつに」 ママっちが竿を渡してくれる。 で、語りかけてみるが……返事がない。 彰利 「しゃあないな……」 グギギギギ……!! 竿  「あぁあ〜〜〜〜〜っ!!!!な、なにするんですかぁ〜〜〜っ!!」 おお、ビンゴだ。 彰利 「よっ、久しぶり」 田中 「久しぶり!?失礼な!わたしはあなたのような脳の薄い人には会ったことが」 彰利 「折るぞ?」 田中 「……どなたでしょう?」 彰利 「うお……本当に忘れてんのか。     俺だよ俺、今から数十年前か数百年前くらい前に、     貴様でクラーケンを釣った男だ」 田中 「な……」 タナーカ、驚愕。 田中 「あ、あれから何年経ったと思ってるんですかぁっ!     あなた全然成長してないじゃないですかっ!!」 彰利 「すげぇだろ」 田中 「誉めてねぇっての……」 グギギギギ……!! 田中  「あぁ〜〜〜っ!!助けてくださいフレイアさぁ〜〜〜ん!!」 フレイア「めんどくさいからやだ」 田中  「そんなぁ〜〜〜っ!!」 即答でしたなぁ。 でもまあこれで目的は達成できたわけだ。 彰利  「ところでママっち」 フレイア「……ねぇ、そのママっちってゆうの、なんとかならないの?」 彰利  「嫌かね?どうせママっちと望月恭介が夜を迎えて契れば、      超自然的にママっちになるでしょ?」 フレイア「ちぎっ……!?」 うおう、ママっちの顔がユデダコのように真っ赤に。 あらあら、瞳潤ませて顔真っ赤にして俯いちゃって、まあまあまあ。 いや〜、ほんとルナっちもママっちも、このテの話には弱いねぇ。 ま、それだけ素直とか純真だってことだけど。 彰利  「さて……用が済んだからとっとと帰ろうと思うんだけど……」 フレイア「な、なに……?」 彰利  「初夜を拝見していい?」 フレイア「そのトボケ顔をさらし首にされたかったら、どうぞ」 彰利  「ゴメンナサイ」 でも初夜を否定しないところは流石だ。 彰利 「そんじゃ、帰るぞ悠介〜」 悠介 「ん?あ、ああ───ってちょっと待った!」 彰利 「へ?どうしたよ」 悠介 「ちょっと頼みがあるんだが……」 彰利 「ふむ?」 ───…………。 ───…………キヒィンッ! ルヒド 「あはは」 フレイア「ッ!?シェイドッ!?」 彰利とシェイドが転移してきた途端、フレイアが臨戦体勢を整えた! ルヒド 「ああ、待ってほしいなフレイア。僕はべつに邪魔しに来たわけじゃないよ」 フレイア「…………!!」 フレイアは恭介を庇うようにして、シェイドを睨んだままである。 彰利  「まーまー落ちつきなさいよママっちぃ〜」 フレイア「落ちつけるわけないじゃない!      あなた達、シェイドに言われてわたしに近づいたの!?」 ルヒド 「……やれやれ、この頃のフレイアはちょっと気が立ってたからね。      安心していいよ、フレイア。      僕は悠介に頼まれて、望月恭介の不安定な魂を固定しに来たんだ」 フレイア「ウソ……!あなたがそんな気の利いたことするわけないじゃない……!!」 ルヒド 「あはは、信用ないなぁ」 彰利  「うはははは!まったくだ!カスめ!カスめ!」 ルヒド 「あはははは!まったくだね!でもカスはひどいなぁ!」 彰利  「ははははは!!」 ルヒド 「あはははは!!」 ……彰利とシェイドはふたりして大笑いしてる。 何がやりたいのかはさっぱりだった。 悠介 「フレイア、この時代のルヒドはどうかは解らないけど、     俺達の時代のルヒドは信用していい。それは俺と彰利が保証するよ」 彰利 「クォックォックォッ……その通りじゃよ?     なんてったって……言う通りにしないと椛を泣かすからね!!」 ルヒド「ひどいなぁ、僕がそれを一番苦手にしてるって知っておきながら」 彰利 「まあよ、まあああああよ、ようは貴様がちゃんと魂の固定をすりゃあいいのよ」 ルヒド「そうだけどね。それじゃあ……」 ルヒドが恭介に近づく。 しかし─── フレイア「恭介に近寄らないでっ!!」 フレイアがそれを阻止する。 ルヒド 「うーん、困った子だねぇ」 フレイア「甘く見ないでよ……!      確かにわたしはあなたに操作されて創られた死神だけど……!      わたしの方が力は上なんだから……!!」 ルヒド 「……それはこの時代の話だよ。今の僕には、キミじゃあ敵わない」 フレイア「───っ……」 フレイアもそれを感じたんだろうか。 一瞬漏れた殺気は、フレイアを黙らせるには十分すぎるほどだった。 ルヒド「それじゃあ失礼して。あ、力は抜いておいた方がいいよ」 恭介 「え?あ、ああ……」 ルヒド「はい、おしまい」 全員 『えぇっ!?もうっ!?』 ちょこんと額に触れただけだったのに、もう終わったのか!? ルヒド「あれ……もっと時間をかけた方がよかったかな」 悠介 「……相変わらずだなぁ、あんた……」 ルヒド「すぐ出来るのに、時間をかける意味なんてないと思うよ?」 悠介 「そりゃそうだが……」 こいつのすることの呆気無さには、いつも驚かされる。 フレイア「恭介っ!?」 フレイアは恭介に近寄り、その額に自分の額をつけた。 そして目を閉じ───意識を集中させている。 恐らく、異常がないかどうかを調べているんだろう。 フレイア「……よかった……!魂も安定してるし、異常もない……!」 ルヒド 「心の底から信用してなかったんだねぇ」 フレイア「う……その……シェイド」 ルヒド 「うん?なにかな」 フレイア「そ、の……あ、ありが……───な、なんでもないわよっ!」 ルヒド 「……うん。幸せになるんだよ、フレイア」 フレイア「余計なお世話!!」 フレイアはソッポを向くと、恭介を連れて飛んで行ってしまった。 ルヒド「照れ屋だね」 彰利 「まったくだ」 悠介 「どうしてそこまで胸を張って言うのかは解らんが、そうだな」 残された俺達三人は、その姿を見送ってから会話を始めた。 彰利 「なぁなぁシェイドさんよ、ちと質問があるんだが……」 ルヒド「なにかな」 彰利 「この竿でさ、ちゃんと呪いの解呪って出来ると思うか?」 ルヒド「これは……へえ、神王の竿かい?」 彰利 「しんおう?なにそれ」 聞いたこともない言葉に首を傾げる彰利。 俺も同じ心境だった。 悠介 「ルヒド、神王ってのは?」 ルヒド「僕も会ったことはないんだけどね。     天地空間の中でも発見例が無いとされる神界の長さ。     随分昔に竿を無くしたから探してほしいとか言われたことがあったけど……」 彰利 「神が竿って……」 ルヒド「声しか聞いたことはないんだけどね、神王は根っからの釣り好きなんだ」 悠介 「………」 彰利 「………」 想像出来ねぇ。 ルヒド「この竿からは強力な神力を感じるよ。     だから神王が作ったものと見て間違い無い。     もしこの竿に解呪などの力があるなら、     これ以上の解呪に適したものはないだろうね」 彰利 「なんとまあ……マジすか」 だから偉そうなのか?この竿って。 彰利 「そんでさ、この竿で解呪してやりたい命があるんだけど……     次に呪いを受けるヤツ、誰か解らんかな」 ルヒド「───それならよく知ってる。彼は僕のオリジナルみたいなものだしね」 彰利 「へ?それって……」 ───…………。 ───ギキィンッ!! 彰利 「っと。と〜ちゃく!」 悠介 「……病院?」 転移をして辿り着いた未来の先は、ひとつの病室だった。 そしてそこには、ベッドで上半身だけを起こして俺達を見ている少年と、 ひとりの髪の長い女が居た。 女  「───!魔の気配っ!?」 女が身構える。 どうしたもんかと思案して、ルヒドに相談しようとしたが……ルヒドは居なかった。 彰利 「シェイドなら先に帰ってるってさ」 悠介 「……あ、そ……」 彰利 「あー、そこのおなご!我らは決して怪しい者ではござらん!!」 女  「うそっ!あなたたちからは魔の気配がする!     澄音さんには……指一本触れさせません!!」 彰利 「……ひどい言われようですな」 まるで害虫を見るような目が、主に彰利に注がれている。 ……まあ、俺よりも魔の要素が濃いからな、彰利は。 彰利 「まあ落ちつきめされい、俺達はべつに───ハッ!?」 悠介 「ん?」 彰利が、ベッドの上の少年を見た。 その少年は大きなタマゴ型の機械のようなモノをシゲシゲと見つめ、 やがてスイッチのようなものを押そうとしているところだった。 彰利 「ノヘラァーーーッ!!」 彰利はそれを見て瞬時に駆け、タマゴを蹴り飛ばす!! タマゴは窓ガラスをブチ破り、遥か天空へと消えようとしたが─── 彰利 「悠介!アレをブラックホールで消してくれ!」 悠介 「───!解った!!」 彰利の真剣な目が俺を見据えた刹那、俺はイメージを弾けさせた! そしてタマゴ型の何かは、黒き闇へと消え去った─── 彰利 「……ふう。危なかったな、少年」 少年 「……?」 少年はよく解らないといった感じに、彰利を見上げる。 しかしその少年を庇うように、女がその間に割り込む。 女  「なにをしたかったのかは解りません……!     けど、澄音さんには近づかないでください!」 彰利 「……澄音?そういや……そいつの名前、澄音っていうんか」 女  「近寄らないでっ!」 彰利 「む……。ま、いいや。たとえあの診療所に居た小僧と同一人物であっても、     こいつが風太と魂を同じくした者だってんなら……納得出来る気がする」 彰利が言うように、澄音と呼ばれた少年からは風太に似た雰囲気を感じた。 どこまでも、ただ穏やかな雰囲気を。 彰利 「ちなみにさっきのエッグはニセモノですよ。     天界の『千葉』ってヤツが作ってるウィルスだ」 女  「え───!?」 女が澄音少年に向き直る。 女  「大丈夫ですか!?どこもおかしなところは……!!!」 彰利 「安心めされい、スイッチを押す前に飛ばしました故。感染はしてないよ」 女  「澄音さん!大丈夫ですか!?」 彰利 「……聞いちゃいねぇ」 彰利はあっさりと無視され、悲しそうにそう言った。 彰利 「でもまあ、これで確信持てたわ。     キミ、レイチェル=イレーズ=ランティスだろ?」 レイラ「え……どうして」 大丈夫、という言葉に澄音少年が頷くと、レイチェルとやらはその言葉に反応した。 彰利 「ま、世の中にゃあいろいろあるのさ。     で……俺達なら澄音少年の病気を治せるんだが……どうする?」 レイラ「え───!?」 澄音 「本当……?」 彰利 「オウヨ!そのためにここまで来たんだ、ダメって言っても治させてもらう」 レイラ「………」 レイチェルは悩んでいるようだ。 その隙に彰利が竿に語りかけた。 彰利 (今だ、解呪しろ) 田中 (お断りですよ。     何故わたしがあなたの言うことなど聞かなきゃいけないんですか。     まったく冗談じゃない) 彰利 (おお、丁度こんなところに都合良くナタ包丁が!切れ味良さそうだなぁ) 田中 (……鬼ですね、あなた) 彰利 (最高の誉め言葉だ) 次の瞬間、田中が穏やかに輝いた。 その光が澄音少年の体に流れたかと思うと、澄音少年の額に浮かんでいた汗が消え─── 血色もよく、スッキリした表情になる。 彰利 「よし!浄化完了!」 レイラ「えっ!?そんな勝手に!」 彰利 「勝手!?勝手ですと!?     貴様そげにこの少年に治ってもらいたくなかったと!?」 レイラ「うぐっ……そ、それは……」 彰利 「なんと!マジですか!?て、てめぇの血は……何色だぁーーーっ!!」 レイラ「う……」 レイチェルは辛そうに顔を俯かせた。 けど……なんだ? 確かに治ったっていうのにどうしてそんな顔を…… 澄音 「あ、あはは……ねえレイラ!僕の体、軽くなったよ!     やった……ははっ、本当に治ったんだっ!あははははっ!!」 レイラ「……おめでとう……ございます……」 澄音少年は手を挙げるように喜んでいる。 が、それとは反比例するように、レイチェルは落ち込んでいた。 澄音 「よかった……、これでレイラと一緒に歩けるよっ!」 レイラ「え……?」 澄音 「え?歩いてくれないのかな……」 レイラ「え、あ、あの……わたし……一緒に居ていいんですか?     わたし、澄音さんが治ってしまったらもう一緒に居られないんじゃないかって」 澄音 「……僕の方からお願いしたいくらいだよ。ずっと、僕の傍に居て欲しいんだ」 レイラ「───っ……!す、澄音さん……!!」 レイチェルは感激のあまりか、涙を流して喜んだ。 そんな中…… 彰利 「……あのさぁ」 悠介 「解ってる、なにも言うな……」 ……俺達、すっげぇ居心地悪い。 明かに馬に蹴られてしまいそうな状況じゃないか……。 彰利 「……次、行こうか……」 悠介 「そだな……」 彰利が刀を構えるのを見て、その肩に手を置く。 そうしないと一緒に飛べないので。 彰利 「───転移」 ───キヒィンッ!! ───……キヒィンッ!! 彰利 「おし、と〜ちゃ〜く」 悠介 「ここは?」 見渡す限り、全く知らない場所だった。 彰利 「ここ?天界」 悠介 「あ、そっか、天界か。てんか───天界っ!?」 耳を疑いまくった。 それはもう、詐欺容疑で逮捕したくなるくらいの勢いで。 彰利 「そ、天界。神の居る場所ね?     この場所にウィルスメンが居るから、     どうせなら完全に幸せな未来を築いてあげましょうかと」 悠介 「なるほど……」 しかしいきなり天界とは……いや、まいった。 開いた口が塞がらない。 彰利 「えーと、確かこの辺りに地下室があった筈だ。ちょっと離れててくれ悠介」 悠介 「え?あ、ああ」 彰利 「“超破壊拳(ビッグバン・インパクト)”!!」 ドゴォン!! 悠介 「うおっ!?」 彰利が地面を殴りつけると、地面に巨大なクレータが出来た。 するとそのクレーターの一番深い部分が砕け、その下の空洞を見せた。 悠介 「地下室……?ほんとにあったのか……」 彰利 「オウヨ!それとここで注意しとくけど、     多分この下にデコに『千葉』って書かれてるヤツが居ると思う。     でも、何があってもその文字を消しちゃあならんぞ?」 悠介 「言われなくても、わざわざそんなご苦労なことをするヤツは居ないだろ」 彰利 「………」 悠介 「……え?もしかしてお前」 彰利 「さ、さぁーーーーっ!!下に行こうかぁっ!!あっはっはっはっはぁっ!!」 悠介 「お前ってやつは……」 ほとほと呆れるヤツだった。 ───…… というわけで地下。 そこは未来で見た場所とは違い、まだまだ開発途上といった感じだった。 彰利 「ふむ……?妙だな、千葉が居ない」 んー……あ、そっか。 もしかしたらまだこの時代じゃあ、 あのマルドゥークとやらは死んでないのかもしれない。 だから千葉もこの場にはおらず……と。 彰利 「まいったなぁ……そうなるとあいつと戦うことになるのか……?」 嫌だぞ俺は。 あのアンスウェルとかいうヤツ、強かったし。 というわけで…… 彰利 「悠介。この施設を飲み込むブラックホールって作れるか?」 悠介 「こ、ここをかぁっ!?……待てよ……ちとデカいぞこれは……」 『施設を飲み込んだことなんてないぞ』と、悠介。 で。 でもマルドゥークが居ない今がチャンスだー、とか思ってた時だった。 声  「……どうやら、鼠が潜り込んだようだ……」 聞き馴れた声が聞こえてきました。 こりゃあ……マルドゥークだ。 彰利 「悠介!せめてあのタマゴ型の機械だけでも消してくれ!」 悠介 「あ、ああ!解った!───クリエイション!!」 悠介が理力を発動させた刹那、 タマゴ型の機械がブラックホール目掛けて浮き上がってゆく。 アンス「なにっ!?き、貴様ら───何者だ!」 彰利 「漬物だ。美味いぞ」 アンス「───……」 悠介 「………」 ぎゅぎゅ〜〜〜……すぽん。 アンスウェルどころか、悠介までホウけてる内に、タマゴ型のアレは消え去った。 アンス「ハッ!?し、しまったっ!!」 ……こいつ、以外と馬鹿なのかもしれん。 アンス「くっ……だがウィルスの素があればいくらでも───」 彰利 「───転移」 キィンッ! 彰利 「あたぁっ!」 がしゃあんっ!! アンス「なにっ!?」 転移して、カプセルの入った強化ガラスを破壊した。 そこからカプセルをズオオと取り出す。 ククク……これがウィルスの素だなんてことは、もう解っておるんじゃぁ〜〜っ!! アンス「貴様……!それを返せ!」 彰利 「いやだね!これはボクんだい!!」 アンス「なにを世迷言を───!!」 アンスウェルが駆ける! もちろん俺に向かって! 彰利 「───最初から全力で行かせてもらうぜ!“至高なる未来視の墓標(キングクリムゾン・エピタフ)”!!」 冥月刀を構え、そこから月視力を引き出す!! さあ、よく見ろ!! ヤツの未来の動きを───!! ───! 彰利 「読み切った!!ここだっ!」 ドボォッ!! アンス「ごはぁっ!!」 クリティカルボディブローがヒット!! 素晴らしい、これで10発目です!! アンス「お、のれ……!!」 彰利 「悠介、ルナカオス貸してくれ」 悠介 「へ?あ、ああ……」 悠介がルナカオスを放る。 俺はそれを逆手で受け取り、双方ともに全開で構えた。 彰利 「散れッ!!魔人滅殺闇!!」 まず軽く斬りつけ、標的固定を発動。 さらに構え─── 彰利 「───交わらざりし生命(いのち)に……」 最初っから冥月刀に聖の光を、ルナカオスの闇の光を帯びさせる。 彰利 「今もたらされん刹那の奇跡───」 アンス「ぐ、がっ……!?馬鹿な……動けん……!!」 その双光でアンスウェルを切り刻んでゆく。 彰利 「時を経て───ここに融合せし未来への胎動!!“義聖剣(ぎしょうけん)”ッ!!」 聖魔の光を融合させ、巨大な光としてアンスウェルをぶった切る!! けど光だから斬れません。 その光はアンスウェルの肩を強打し、自由を完全に奪った。 彰利 「───僕は……過去を断ち切る」 そして───更に光を込める。 アンス「ま、待て!!ウィルスなどくれてやる!だから───」 彰利 「散れッ!!真神煉獄刹!!」 怯んだアンスウェルに、手加減無しの聖魔融合スラッシャー!! アンス「ぐわぁあああぁぁぁーーーーーーっ!!!!」 刹那、光が弾けた。 アンスウェルはこの上ないほど吹き飛び、 その先の施設の壁は遠い果てまで穿たれることとなる。 こうなるとアンスウェルが生きてるかどうかも不安になったが、 どうやら相当しぶとかったようで、生きてた。  そしてそいつをウィルスのカプセルとともに天大神に献上。  俺達は不法侵入者ながらも、褒美としてひとつのエッグをもらった。 ───キィンッ!! 彰利 「あい、と〜ちゃ〜く」 悠介 「……今度は何処だよ」 どこか、見覚えのある景色に立っていた。 そして……なんとなくだけど納得した。 悠介 「逝屠、だな?」 彰利 「そゆこと」 目の前には家。 表札には『朧月』。 つまりここは……『十六夜』に拾われる前の俺の家だ─── 悠介 「………」 どうりで見覚えがあるわけだ。 けど……あまり思い出せないことも確かだった。 それに、わざわざ時間を遡ってまた過去に戻るとは思わなかった。 彰利 「ほれ、お誂え向きだ。来たぜ」 悠介 「───!」 目を向けてみる。 すると……その先には、忘れもしないあいつが。 彰利 「……まいったな、ほんとに小さい時の顔は俺によく似てやがる。     むかつくね、まったく」 彰利が指をゴキゴキンと鳴らした。 その目は……うあ、紅い……!! 彰利 「どうするよ。ここでこうしてても繰り返すだけだぞ?」 悠介 「……()っちまおうか」 彰利 「ああ……いいかも……」 俺と彰利は共通してあいつが嫌いだと確信する。 鏡を見れば、恐らく俺の目も紅いのだろう。 ───さて、どうやって思い知らせてくれようか、と思った時だった。 逝屠 「……家系の匂いがする。お前ら……殺す」 子供の逝屠が俺達を見て、目を変異させた。 これこそお誂え向きってやつだ。 彰利 「一応、気ィ張れよ。あいつ、電磁場ってゆう盾を持ってるから」 悠介 「彰利、悪いけど俺に月生力長し続けてくれ」 彰利 「───なんか策があるんだな?解った」 悠介 「……クリエイション」 彰利が構える刀から、力が流れるのが解る。 俺は過去の時代でやった時のようにスタンドを創造し、逝屠に向けて飛ばした。 逝屠 「ハッ───邪魔だよお前っ」 逝屠が電磁場を発しながら駆ける。 それで弾けると思ったんだろう。 だが───スタンドは俺の想像を受けつけ、そのカタチを変えた。 彰利  「マ───ママっち!?」 フレイア『なによこんなものっ!!』 記憶をそのまま創造した手が、その電磁場へと振り下ろされる。 その刹那───逝屠の自信に満ちた表情は、その電磁場とともに砕けた。 ガッシャァアアアアアアアアアアンッ!!!!! 逝屠 「うあぁあっ!!?そ、そんなっ……」 悠介 「ほら、お前の好きな雷をくれてやる。喜んで冥府へ落ちろ」 逝屠 「え───あ───」 バヂィッ!!───ガゴゴッ───ゴッシャァアアアアアアアアアアンッ!!!!! 逝屠 「───!!」 何かを叫んだようだが、雷の轟音で聞こえなかった。 耳をつんざく音が引くと同時に、逝屠は体を焦がしながら倒れる。 俺はそいつになんの情も持たず、ブラックホールを創造してそいつを完全に消し去った。 ───…………。 彰利 「……怒らせないようにしよう」 逝屠を相手にした悠介は、本気でキレていた。 あそこまで容赦の無い悠介は初めてだ。 ほら、目だってあんなに紅蓮だし。 ほんと、怒らせないようにしよう。 悠介 「彰利、次行くぞ」 彰利 「おっ!?お、おお……って、次って?」 悠介 「決まってる。お前の公開処刑の歴史だ」 彰利 「あ……」 ……まいったな。 あそこに……行くのか。 彰利 「それはやめにしないか?」 悠介 「ダメだ。俺にだってこんなことさせたんだ、お前もやれ」 彰利 「うう……」 仕方なく、冥月刀を閃かせた。 ───そして。 彰利 「………」 悠介 「………」 何度思い返しても嫌な雰囲気がそこにあった。 俺は木に磔にされ、その先には、かつて母だった人が気絶させられている。 彰利 「……な、なぁ悠介……。お前は俺にどうしろっていうんだ……?     お、俺は、さ……こんな場所、もう二度と来たくなかったのに……」 悠介 「来たくなくても、来てほしかったんだよ。     他の誰もが幸せを手にする未来を作っても、     お前だけが報われないんじゃ意味がないんだ」 彰利 「でも……でもよぅ……!」 どうしたらいい。 俺はこの時代の先に何を願う? もう、あの『母だった人』がどうなろうが関係無い。 『弦月彰利』がどうなろうと関係無い。 宗次なんて死ねばいい。 ……ほら、俺はこの時代に何も望んじゃいないじゃないか。 むしろ俺が望むべき未来は、こいつらみんなが死んでから、俺が作られた先の未来で…… 彰利 「………」 ふと、自分の腕を見てみる。 いつまで経っても、血に染まっているように見える腕を。 彰利 「っ……」 だからだろうか。 俺は前に出て、言った。 彰利 「てめぇらぁーーーっ!!」 全員 『っ!?』 その場に居た、あきとしを殺そうとしていた男たちが俺を見る。 宗次 「なんだお前は……邪魔をするな」 彰利 「うるせぇゴミクズ!!気安く俺に話し掛けんじゃねぇ殺すぞ!!」 宗次 「なっ……」 ……落ちつけ……感情を、コントロールしろ……。 こんな、産まれたばかりの小さな感情に流されてどうする……!! 彰利 「そいつを殺す必要はない……!そいつは……力をコントロールできるんだ……」 宗次 「なに……?どういうことだ」 子彰利「だ、誰だよお前……俺は力なんて……」 彰利 「黙れ……!!てめぇの話なんて聞いてねぇんだよ……!!黙ってろ!!」 子彰利「っ……!」 冥月刀を構える。 そしてまず時を止め、シェイドを連れてきた。 ルヒド「ひどいなぁ、休んでたのに」 彰利 「こいつの力を引き出してくれ……」 ルヒド「この子のかい?それはいいけど……ちょっと反則じゃないかな?」 彰利 「俺はこいつがどうなろうと知ったことじゃない。     けど……その所為で悠介や若葉ちゃんや木葉ちゃんや先輩が悲しむのは……     もう見たくないんだよ……!!」 ルヒド「…………うん、解った」 渋ってたシェイドだったが、頷いてくれた。 そしてチビに触れると、『終わったよ』と言った。 ルヒド「それじゃあ」 用件が終わるとさっさと消えてしまった。 その途端、時が戻る。 子彰利「あ……れ……?」 まず、チビが違和感に気づいた。 そして力を発動させて磔の縄を切ってみせる。 宗次 「なっ……なんだと!?本当にコントロールできたのか!?」 子彰利「………」 チビは不思議そうに自分の手を見てたが─── 宗次 「すごい……すごいぞ彰利!     お前はこれから、弦月の家系を変えてゆく男になるんだっ!!」 さっきの殺意もどこへやら。 宗次は歓喜し、チビを抱き上げた。 そしてチビは───……あろうことか、一緒になって喜んでやがった。 ……俺はその場から離れて、悠介のもとに戻った。 悠介 「なぁ……お前、もしかして、さ……」 彰利 「………」 悠介 「……お前、親父さんにこそ認めてもらいたかったんじゃ……」 彰利 「……忘れたよ。そんな……100年以上も昔のことは」 そう呟いて、冥月刀を輝かせた。 そして……思った。 俺の居場所は、この歴史上の何処にも無くなったんだと。 母だった人が死ぬことで俺は産まれて、けれどもこの歴史ではそんなことは無い。 だから……この世界に、俺が居ていい場所なんて……どこにもなかった。 きっと最初に渋ったのもその所為だったんだろうって……納得しちまった。 しちまったら……もうダメだった。 こんな場所には居たくないって思っちまった。 思っちまったら……溢れる涙が止まらなかった───…… ───…………。 彰利 「………」 未来の時代に下りた途端に悠介を神社に置いて、俺はさっさと転移した。 涙を見られたくなかったのが一番の原因だ。 かつて流さなかった分の涙ってのは蓄積されるんだろうか。 そう思うほど、涙は止まらなかった。 ああまあ、もう止まってますけどね? 彰利 「というわけで、さあ田中よ。攫ってきた菜苗さんをの解呪をせよ」 田中 「嫌ですって言ったら……」 彰利 「丁度ここに魚があるんだ。今日はなにやら焚き火で焼きたい気分だなぁ」 田中 「……やればいいんでしょ」 解ってるじゃねぇか。 ───タナーカが光輝き、その光が菜苗さんに流れる。 と、熱に浮かされたように魘されていた菜苗さんの表情に赤みが差し、呼吸も安定した。 一応、菜苗さんも『魂を同じくする者』だったようだ。 彰利 「はぁ〜あ……これでひと段落だ……」 なんつーか……疲れたぁ……。 ……さて、そうは思ったところで、世の中はそんなにシンプルじゃないらしい。 というか、段落の前にやるべき段落があることすら忘れてた。 彰利 「ルナァーーっち!!」 悠介 「ルナァーーーッ!!」 俺は悠介に事情を話すと、ルナっちを探し回った。 というかまあ、悠介のひとことであっさり現れやがったんだけど。 ルナ 「なになに悠介っ!」 悠介 「ルナ……お前、椛にヘンなこと吹き込んだらしいな」 ルナ 「え……?」 彰利 「しかも、小僧に『正式に婚儀は取り止めになった』とまで言ったらしいな」 ルナ 「あ、あー……もしかして、失敗した?」 ルナっちの言葉に、俺と悠介はにっこりと笑ってみせてから─── 彰利&悠介『ッッたりめぇだ馬鹿者ォッ!!!!』 容赦無いほどに激怒した。 ───さて。 その日は珍しく、高台に聳える晦神社から、女の絶叫が響いたわけだが…… 凍弥 「……ハラ、減った……」 サクラ「いつまでここに居る気ですか……」 美紀 『もう帰ってもいいと思うけど……』 完全に忘れ去られている彼と彼女らが思い出されるのは、まだ少し先のお話。 Next Menu back