──壊塵刀への道────
そして潜入したわけだが…… 凍弥 「なんだこりゃ……広すぎて何処が何処だか解らんぞ」 思うんだが─── こういう広い屋敷に住んでるヤツってのは……ちゃんと勝手を知ってるんだろうか。 俺はまず覚えきれん。 面倒だし。 凍弥 「さて……どこにどう行ったもんかな」 俺は思考を回転させた。 しかしカラ回りだった。 凍弥 「ぬおお、さっぱりだ。これは困ったぞ」 こんな時こそ誰か…… 凍弥 「───……」 ズォーー……と、長く続く廊下を眺めてみても人っ子ひとり居ない。 おそらく弦月が集団リンチでボコられ……もとい、引きつけてくれているんだろう。 凍弥 「さて……由未絵?どっち行けばいいと思う?」 俺は心の中に語りかけた。 由未絵『あう……わたし方向音痴だから……』 凍弥 「それでもいい。俺はお前を信じるぞ。     ヤバイところに辿り着いたら力の限りバカにするが」 由未絵『……そんなこと言われて答える人、居ないと思うよ?』 正論だ。 さてどうするか。 凍弥 「ふむ……よし適当に行こう」 なるようになれだ! もちろん、ヤバくなったらクロノスチェンジの方向で。 ───……。 凍弥 「さて、いきなり道に迷った。どうしよう」 訪れた場所は牢獄のような場所。 すげぇ……ナマの牢獄って初めて見た……。 凍弥 「しかしさ、こう……なんていうんだ?」 天井からぶら下がっている縄をちょいちょいと突つく。 凍弥 「こういうのがあると、引きたくなるのが人情だよな?な?」 自分に言い聞かせるように発言。 由未絵がなにか言おうとしたが、漢の探求心でそれを抑えた。 凍弥 「なに、引っ張った途端に離れればいいんだ。     そうすればこの上から何が来ても安心ってわけ。解るだろ?」 更に、自分に言い訳をするように言う。 そして意を決してグッ!と引く!! 凍弥 「ホアァーーーッ!!」 それとともに大きくバックステップ!! ……したのに、地面がなかった。 てゆうか……落ちてる。 てゆうか……なにぃ!? 凍弥 「は、謀ったなブッチャ───あぁああああああああっ!!!!!!」 結論。 縄は落とし穴のスイッチだったらしい。 そしてバックステップした先がその落とし穴の開く場所だった、と。 なんとも悲しい方程式がここに完成した。 ズザー……どしゃっ。 凍弥 「………」 で、降りてきてみれば……よく解らん場所だった。 そこら中に遊び道具が満載だ。 ふと視線をずらしてみると、『遊び道』と書かれた掛け軸が。 ……しかも、ふざけた文字の掛け軸のくせに何気に達筆だ。 この部屋に主が居るとしたら、相当の遊び好きな修羅だ。 凍弥 「ふむ……手入れも行き届いてる。     だってのにやかましい雰囲気じゃないな、ここは」 穏やかな上に遊びが好き───いや。 『誰かとする遊び』が好きなんだな。 ようするに他人の笑顔が好きなヤツだ。 声  「あらあら〜、お客さんですか〜?」 凍弥 「お───?」 ふと声が聞こえる。 すると、掛け軸の裏からひょっこりと現れる小柄な女。 ……にこにこ顔だ。 いかにも『穏やかなんですよ〜』といった感がある。 女  「あら〜、凍弥ちゃん〜」 それに───なんだ? 前にもこんな感を持たせるヤツが───って、居たな。 学生時代に途切れた丘で会ったアイツ───蒼木澄音だ。 もしやそいつの孫あたりか? ……謎だ。 でも血の繋がりは感じる。 こういうのを感じられるのは霊体の特権ってやつだ。 凍弥 「なぁちょっと。訊きたいことがあるんだが」 女  「はいどうぞ〜。わたしに勝てましたらね〜」 凍弥 「……へ?」 どこからともなくオセロを出す目の前の女に、俺は唖然とするしかなかった。 ───しかもとんでもなく強ぇ。 菜苗 「はい、またわたしの勝ちですね〜」 凍弥 「ぐ、ぐぐぐ……」 バカな……! かつて様々な遊びで来流美を打ち負かしたこの俺が連戦連敗……!?バカな……!! 凍弥 「も、もう一度だっ!」 菜苗 「はいはい〜」 ……さて、この目の前の女───南城菜苗は養女である。 本当の親に捨てられたらしく、だが拾ってくれた両親もその親も死んでしまったらしい。 最初は養女だったことなど知らなかったらしく、 心無い金持ちバカに真実を告げられたそうだ。 そして───俺が一番訊きたかったこと。 あの丘で会った男との関連性だが……─── 凍弥 「ぐあ……また負けた」 菜苗 「うふふふふ〜、今回は結構お手前でしたよ〜」 ───かつて、南城の親の親も、ひとりの少年を捨てたらしい。 不治の病にかかっていたらしく、病院に置き去りにして。 で、逃げた先で子供を作り、その子供が南城を産んだ。 が、南城も不治の病持ちだったため、そいつは自分の親と同じことを南城にした。 南城は捨てられ、養女に。 ───それから両親が死に、祖父が死に……心無い金持ち馬鹿に教えられたこと。 南城が財産を相続することが許せなくて、身辺調査をしてきたそいつは…… 南城の生まれる前やあとのことを全て暴露した。 その中にあった。 捨てられた子供───蒼木澄音の名が。 なにがどうというわけでもないけど、血縁だったんだ。 それで納得した。 こいつはあいつに似てるって。 今思えば魂の感覚が酷似している。 他のヤツらはどうしてか『蒼木澄音』のことなど知らないと言ったが─── 記録はウソをつかない。 正直、俺も幽霊になるまではあいつのことを忘れてた。 覚えていたのは『丘で少年と会ったこと』だけだ。 そいつがあいつだったことなんて、覚えていなかった。 そして幽霊になってからは『風』にあいつを感じた。 夢の中の学校で会ったそいつは、いつか見た時のように穏やかに笑った。 『蒼木澄音』はその風の名前で───かつてあの丘で話し合った穏やか超人だった。 そして、俺に向かって言った。 『こんなカタチの再会でごめん。……名前、聞かせてもらえないかな』 あいつは、あんなくだらない口約束を覚えていた。 忘れやすいとか言ってたくせに。   ───いいや 名前はお互い黙っておこうか      未来の巡り合わせを信じてみよう キミにはまた会える気がする あいつはあの時、あの言葉をどんな気持ちで言っていたのか。 結局その頃までお互いに会うことはなく。 双方幽霊になってからの再会。 滑稽といえば滑稽なんだろうけど……約束は守られた。 したわけじゃない約束。 だけどあいつにとっては約束だったんだ。 菜苗 「もしもし〜?凍弥ちゃんの番ですよ〜?」 凍弥 「ん?ああ」 訊きたいことがあるから始めたオセロ。 もう何連敗したのかも覚えてない。 けど、こいつは自分のことをペラペラと話してしまった。 どこかで抜けてるのか、俺の訊きたかったことの全てを自分で話してしまったのだ。 俺が訊きたいことの趣旨を話さなかったのが悪いんだろうか? いや、違うだろ。 菜苗 「つい最近のことなんですけどねー」 凍弥 「うん?」 菜苗 「わたしの病気を治してくれたやさしい方が居るんですよ〜」 凍弥 「病気って……さっき言ってた不治の?治るもんなのか?」 菜苗 「驚きましたけど〜、治っちゃいました〜」 そりゃすげぇ。 凍弥 「それはよかったな。未来にもっと希望が持てる」 菜苗 「はい〜」 にこにこ顔で返事をする南城。 その顔には、不治の病の跡形すらなかった。 俺はそんな南城の笑みに笑みを返した。 さて─── 凍弥 「……俺はいつ、解放されるんだろうな」 菜苗 「わたしに勝てるまでです〜」 うわ……やっぱそうなのか……。 ちくしょう……。 ───…………パチン。 凍弥 「正直、碁なんてやったことないんだけどな」 菜苗 「そうなんですか〜」 パチン。 凍弥 「ところでさ、この屋敷にある『刀』ってのを知らないか?     俺はそれを探しに来たんだが」 菜苗 「刀、ですか〜?そうですね〜」 パチン。 ……む? 凍弥 「…………これって負けか?」 菜苗 「はい〜」 うう、ちくしょう。 この娘強ぇよ……もう認めるよ、強ぇよ……。 菜苗 「それで、刀ですけどね〜。     いつか、おじいさまがある人に刀を買ってくれと言われたらしいんですよ〜」 凍弥 「へえ、それで?」 菜苗 「宮間という名前でしたっけね〜。     そこのご子息さんがお金に困っていたらしく、買ってほしいと〜」 凍弥 「で、買ったのか?」 菜苗 「はい〜。立派なものですから〜、もし親御さんが返却を要望するようなら〜、     お金を持ってきなさいというカタチで〜」 凍弥 「なるほど、双方ともに『貸す』ってカタチでか」 菜苗 「はい〜」 碁石を片付けながらの会話。 南城の方は馴れたものだ。 菜苗 「けれども〜、その親御さんはそれでもいいか〜と言ったんですよ〜。     結局返却願いは来なかったので〜、今はわたしが相続して所持しています〜」 凍弥 「えっ……南城がか!?」 菜苗 「はい〜。これですよね〜?」 南城が傍の床をポコッと叩くと、その床の部分が引っくり返って、細長い木箱が現れた。 そして器用にそれを開けて見せると……その中からは見事な刀が姿を現した。 菜苗 「『壊塵刀』、というらしいです〜。でも見ての通り硝子細工の刀でして〜」 鞘から抜いた刀を、南城が振ってみせる。 すると───シャァアア……アアン……と、その刀身から硝子の粉が飛び散る。 しかし完全に飛び散るより先に刀へと戻ってゆく。 それは……なんと言えばいいのか。 漢として心を擽られる刀だった!! ぬおお、欲しい!これすっげぇ欲しい!! ───でもこれ、弦月が探してる刀に間違いなさそうだしなぁ。 凍弥 「あー……すまない、その刀を譲ってほしいんだが」 菜苗 「えぇ……?」 うわっ……すごくすまなそうな顔してる。 そりゃそうだ、こんな素晴らしい刀、人に渡せるわけがない。 菜苗 「申し訳ありませんが〜……この刀は、既に持ち主が決まっているのですよ〜」 凍弥 「───へ?そうなのか?」 菜苗 「はい〜。今日こちらにいらっしゃるというので待っているのですが〜」 ───まさか。 まさか弦月のヤツか……? なんかおかしいと思ったんだ。 この屋敷に刀があるなんて、誰から聞いたんだと。 あいつ、話を通しておいたくせにわざわざ不法侵入を選びやがったんだ。 許せん……!これは許せんぞ……! これは……この感覚はアレだ……! ゲームの予約をしてあるくせに、 得意ヅラで最前列に並ぶマニアにイライラする時のごとく……!! ───とか思ってる時だった! 斜面になっている落とし穴の先の方から、ガコォッ!という音が聞こえたのは! やがて何かがずり落ちてくるような音。 俺はソレが弦月だと確信し、何か一言言ってやろうと立ち上がった。 やがて───ズザザ〜…… 彰利 「グビグビ……」 ボロボロになって泡を吹いてる弦月が滑り落ちてきた。 そしたらもう、言うことなんてなくなっていた。 そもそも言えるほど有利な状況だったかどうか。 それに俺、こいつスケープゴートにして逃げたわけだし、うん。 凍弥 「あー……すまん、生きてるかー?」 彰利 「おお〜キテレツやぁ〜……俺はもう長いことはねぇ……。     だから俺の頼みを聞いてくれぇ〜……」 凍弥 「え?ひと思いに殺せって?」 彰利 「ンなこと言うかぁっ!何気にヒドイねキミ!!」 凍弥 「よく言われる」 彰利 「言われるの!?」 凍弥 「まあ、お前ほどじゃないが」 彰利 「言われませんよあたしゃあ!!」 凍弥 「いや、聞いたぞ。お前はヒドイヤツだと」 彰利 「えぇっ!?許せんぞ畜生!!誰だよ!」 凍弥 「お前」 彰利 「俺が!?畜生許せねぇぞ俺───って俺!?」 凍弥 「ああ、寝言でブツブツと言ってたんだ。俺ってヒドイ、俺って最強って」 彰利 「ヒドイは勘弁だが最強はステキ!」 凍弥 「いや、最強にヒドイって言ってたんだが」 彰利 「ゲェーーーッ!!?自分で自分を最強にヒドイ!?な、なんてことを……」 凍弥 「冗談だ」 彰利 「冗談でここまで引っ張るなよ!!」 凍弥 「気にするな、昔の癖だ」 彰利 「……イヤな癖だなオイ……」 弦月が口からゴワゴワした溜め息を吐く。 菜苗 「これはこれは〜。彰利さんじゃないですか〜」 彰利 「あちょッス、菜苗さん。お約束のアレ、ある?」 菜苗 「はい〜、これですね〜?」 凍弥 「あ……やっぱり」 南城が弦月に刀を渡す。 弦月はそれを構えるとにっこりと笑う。 彰利 「サンキュ。えーとそれじゃあ……ほい、約束のクレイステーションΩ」 菜苗 「はい、確かに〜」 どっから出したのか、弦月が大きな箱を南城に渡す。 南城はそれを腕いっぱいに抱えると、てこてこと歩いていった。 凍弥 「……はぁ。ようやく解放された」 彰利 「むっちゃ強かっただろ、菜苗さん」 凍弥 「強ぇよ、ありゃプロだ」 彰利 「だよなぁ」 ふたりで頷き合う。 そしてふと、オセロ盤を見て更に頷き合う。 凍弥 「俺とお前と、どっちが遊びのプロか勝負だっ!」 彰利 「うっしゃあかかってこい!!」 ─── 彰利 「ここ」 パタ。 凍弥 「ここだな」 パタタ。 彰利 「む……ならばここに」 パタ。 凍弥 「ふむ……ここ、だな」 パタパタ。 彰利 「よし!ここだ!」 パタタタタタタ。 彰利 「ふっ、どうかね」 凍弥 「ここだ」 パタタタタタタタタタタタタ。 彰利 「むごっ!!」 オセロの盤面が黒く染まってゆく。 お、おのれ……! 彰利 「ではここ!」 パタタタタタタタタタ。 凍弥 「ぐあっ!?ぬ、ぬおお……こ、ここ、だ」 パタタ。 彰利 「ふははは!なんだねそのちゃちい数は!ここっ!」 パタパタパタ。 凍弥 「ふっ……かかったな」 彰利 「なにぃ!?」 凍弥 「ここだぁーーーっ!!」 パタタタタタタタタタタタタタタ!!!! 彰利 「グ、グムーーーーッ!!!」 再び盤面が黒く……!! しかももう裏返せる場所が少ない……!! 彰利 「ぐっ……!!あ、ありません……っ!!」 仕方なく投了。 残念ながら、黒の量に対抗できるほど裏返せない。 凍弥 「よっしゃ!やっぱ俺の腕が衰えてたわけじゃなかった!     南城が強過ぎただけなんだ!俺はまだ現役だぞ来流美ィーーーッ!!」 彰利 「なんの!今のはまぐれぞ!!次だ次!!     トランプゲームを酷使して勝った回数で勝者を決めるぞ!!」 凍弥 「望むところだ!!」 ────────────……。 凍弥 「次───ババ抜き勝利!」 彰利 「次!───七並べ勝利!!」 凍弥 「次!!───大富豪勝利!!」 彰利 「次!!!───スピード勝利!!」 凍弥 「次!!!!───ダウト……は、敗北!!」 彰利 「次!!!!!───ポーカー勝利!!」 凍弥 「次!!!!!!───ジジ抜き勝利!!」 彰利 「次!!!!!!!───HIGH&LOW……敗北!?」 凍弥 「次!!!!!!!!───ブラックジャック勝利!!」 彰利 「次!!!!!!!!!───ギャア!?他になんかあったっけ!?」 凍弥 「む───それではファイナルだ!     山札からトランプを五枚引いて、それを足した数が多い方が勝ちだ!」 彰利 「おおっ!!って……引くのは一枚で十分では?」 凍弥 「馬鹿」 彰利 「バカとはなんだコノヤロウ!!」 凍弥 「山札は数が見えるように置くんだ。それを一枚ずつ取っていく。     最初は数が少なくても逆転が有り得て、しかも相手がその数を見れる───     緊張感満載で素晴らしいだろう?     あ、それと───ジョーカー引いたら失格だから余計にスリリングだ」 彰利 「む……確かに」 凍弥 「んじゃ、俺から」 彰利 「待て、俺からだ」 凍弥 「ああ、べつにいいぞ」 一枚引く。 山札の頂点は8だったから先に引いたわけだが───その下には13。 彰利 「謀ったなブッチャー!!」 凍弥 「シャッフルしたのはお前だろうが」 彰利 「違いねぇ」 現在、俺が8でヤツが13。 しかも……ヤツが引いた下には1。 彰利 「ぐお……1かよ」 そしてその下には5。 彰利 「ナメとんの?」 凍弥 「俺に言うなよ」 ヤツが5を引く。 その下には───おお10!! 彰利 「クォックォックォッ……これは俺にも運が向いてきたなぁ」 凍弥 「そーだな」 その下には2。 現在俺が19、ヤツが18。 俺の優勢───って、ぐは……! 凍弥 「6だな。これで24、と」 彰利 「むむ……おお13!!これで32だ。依然優勢!」 凍弥 「12だ」 彰利 「ラスト───こっちも12だ」 凍弥 「ラスト───8だ」 彰利 「これで───む。44だ」 凍弥 「こっちも44……ぐは」 決着つかず……か。 むうう……!! 凍弥 「じゃ、最後に裏返してから一枚引くか。それでキメよう」 彰利 「オウヨ!」 スッ、スッ─── 山札をひっくり返してから双方、一枚ずつ引く。 そしてその一枚を一斉に裏返す───! 彰利&凍弥『……ジョーカーだ……』 ……その刹那、双方一斉に失格。 おあとがよろしいのかよろしくねぇのか解らんようで…… Next Menu back