───ジャンクランドの宴、男の涙───
───キィン!! 彰利 「我、降臨セリ」 昂風街公園へ降り立つ。 ここには、見つけ辛い場所にホームレスの集い場、『ジャンクランド』があるのだ。 で、今。 ジャンクランドの住人が目の前に居る。 右から枝八(えだはち)柳節(やなぎぶし)餅肌(もちはだ)だ。 ここではここのホームレスルールとして、本名ではなく偽名で呼び合うのが定義なのだ。 だからお互い、本名は知らない。 ちなみにアタイはここでは、 『ムッシュゴリグリ鈴木・ド・ヤコペッティ』と名乗ってる。 ヤコ 「YOー!枝八っつぁん!」 枝八 「おー、ヤコペッティじゃねぇか!よー来た!     丁度今、月一の寄せ集め鍋パーティーやるとこなんだ、座っちぇけ!」 ヤコ 「オウヨ!」 枝八っつぁんの隣に座り、鍋を見る。 ふむふむ……今回は中々豪勢なようで。 枝八 「で……ヤコペッティ?例のブツは……」 彰利 「おう、あるでよ。ちと待ってろ」 あらかじめ収穫しておいたマツタケモドキをもっさりと渡す。 俺がこのグループに混ざれたのも、これのお蔭だ。 試してみたがこのマツタケモドキ、 月然力の出力によって笑い度を抑えることが出来るようで、 今出したのは小笑いモードのマツタケモドキ。 ようするに、酒が入って笑うくらいの笑い力のキノコだ。 枝八 「いつもすまねぇな!そんじゃ、宴といこうかぁっ!」 男ども『おぉおうっ!!!!』 枝八っつぁんが鍋にキノコを裂いて入れ、おもむろに掻き回す。 するとキノコの出汁のようなものが流れ出て、鍋が異様な色になる。 餅肌 「くぅ〜〜〜コレコレ!この色が出ねぇと『鍋』って感じがしねぇのよぉ!」 柳節 「最初は毒なんじゃねぇかって驚きもしたがなぁ」 枝八 「食べてみればアラ不思議!とんでもなく美味い上に楽しく笑えるってもんだ!     いやぁヤコペッティ!アンタは宴鍋の神様だ!」 彰利 「はっはっは、そう褒めないでくだされ。     俺だってホームレスなんだ、神様とか言われたら照れるぜよ」 餅肌 「謙遜すんねぃにいちゃん!ホレ、今日の礼だ!先に飲みねぃ!」 ヤコ 「おお、いいんかい?モチハダさん」 柳節 「若ェモンが細かいこと気にすんなって!さ、ぐっといけ!」 ヤコ 「では───せいっ!」 ドムッ!! 渡された酒瓶を逆さにし、一気に一口を飲む。 その途端に喉にツンとしたものが通り、次にその部分が熱くなったような感触を受ける。 ヤコ 「くうっはぁーーーっ!!キクねィェーーーッ!!」 餅肌 「どうよ、あらゆるメシ屋のカラ酒瓶から一滴ずつ集めたブレンド酒は!     苦労したんだぜぇ〜?」 ヤコ 「いやぁ〜、さすがモチハダ氏!いいブレンドしてますなぁ〜〜!」 餅肌 「はっはっは!おめぇこそ褒めるなよ、照れるじゃねぇか!」 柳節 「さ、煮えたみたいだ。このカニは俺がもらってきたんだぜ、よく味わえよ」 枝八 「なぁに言ってやがんでぃ、当然だろうが」 餅肌 「カニなんざそうそう食えるもんじゃねぇやい、味わうのは当然だろが」 柳節 「おっと、こりゃあ余計な気遣いだったみてぇだなぁ」 ヤコ 「ちげぇねぇや!ムハハハハハ!!」 枝八 「はっはっはっは!!おいおい、笑うのはキノコ食ってからにしねぇか」 ヤコ 「こりゃいけねぇや、一本取られたね!」 こうしてアタイは特製ホムレス鍋を突つきつつ、 盛大に楽しんだのであった───ガササッ。 ヤコ 「ム!」 男ども『誰だ!』 否、楽しむ筈だった。 だがそこに、何者かが侵入したのだ! ジャンクランドルールとして、侵入者には容赦がないのが既定なのだ! リーフ「………」 何者か、ってゆうか……リーフさんでした。 柳節 「なんでぇ嬢ちゃん。ここは嬢ちゃんのような娘が来る場所じゃあねぇぞ?」 枝八 「迷子か?あっちへ行きな」 餅肌 「なんだってまぁ、こんな嬢ちゃんがこんなところに……」 ヤコ 「グウムム……」 リーフさん、驚きのあまりおろおろするだけ。 けどアタイを見つけると顔がパアアと明るくなり、なんと!アタイに抱きついてきた! リーフ「おと……さん!」 がばっち! ヤコ 「ゲゲェーーッ!!?」 男ども『おとうさんだぁっ!?』 ヤコ 「ゲ、ゲゲ……」 やべぇ、どうやって切り抜けたものか。 部外者には容赦のねぇ猛者どもだ、きっとタダでは…… 柳節 「なんでぇヤコペッティ、おめぇ子供が居るのにホームレスになったんか」 餅肌 「バァロォ、それなら呼ばなけりゃダメだろうがよぉ」 枝八 「おいら達に遠慮してたのか?     ったく、同じホームレス同士、そんな心の狭ェことするわきゃねぇだろうが」 ヤコ 「ヤナさん……モチさん……枝八っつぁん……」 タダではすまないと思ってたのに、彼らは笑って受け入れてくれた。 そうだ……ここはジャンクランド。 荒くれ者や、世間から見放された者の集う場所……! だけどここには辛い思いを知る者がたくさん居て、 そして、辛い思いを知っているからこそやさしくなれる人が居るんだ……! ヤコ 「みんな……ありがとう」 柳節 「おいおい、泣くやつがあるかぁ」 餅肌 「ホレ、さっさと食わねぇと崩れちまうだろ。食え食え」 枝八 「そんじゃ、酒の回し飲みだ!景気よく行くぜぇっ!」 男ども『ぉおおおっ!!!』 ───そうして。 俺と柳節さんと餅肌氏と枝八っつぁんは酒を回し飲みして、景気付けをした。 なんとなくの悪戯心でリーフさんにも酒を飲ませたが、 顔を真っ赤にしてコテンと倒れてしまった。 けど、すぐに目を覚まして───酔っ払った。 リーフ「おとーさん、わたしはですね、おとーさんのことが好きなんです。     だからですね、好きなんですよ。解りますか、解ったら……好きなんです」 ヤコ 「……酔うとよく喋るのぅ」 しかも言ってる意味がまるで解らん。 柳節 「なんでぇ、普段は喋らねぇのかい」 ヤコ 「まあ、そういうこと」 枝八 「離婚沙汰を目の前で見てるとかか?だったらおめぇがしっかりしねぇとなぁ」 ヤコ 「いやいや、この娘にはもう、親と呼べる人は居ないんですよ。     俺っちはただ、そんなこの娘の親代わりになっただけなんでさぁ」 餅肌 「───そうだったんか」 男ども『エライッ!』 ヤコ 「オワッ!?」 一斉にエライと言う人々。 しきりにアタイの肩をバシバシと叩き、上機嫌で酒を飲み回してる。 枝八 「ぶはぁっ!最近の若ェ連中ってのはよォ、どうにもいけねぇ。     結婚したらすぐ別れる、だなんてワケのわかんねぇことばっかでよォ。     おめぇらなんだ?好きだから結婚したんじゃねぇのかよォって話だぁ」 柳節 「そーだ!枝っちの言うとおりだ!     俺っちの時代なんざ、結婚したら墓場までは一緒だって思ってたもんだ!」 餅肌 「それが、ちょぉっとばかし不自由になったからって離婚だぁ?     まぁったく、なっちゃいねぇよなぁ!なんにも解っちゃいねぇ!」 ヤコ 「別れるくらいなら結婚なんざするなっつぅんじゃ、まったくよぉ」 男ども『そーだ!その通りだ!』 枝八 「夏子は、そりゃあいい嫁だったぁ……。     俺ぁこいつとなら墓までだって一緒に行けるって思えたほどだぁ。     ちょっと太ってたが、それが魅力ないい嫁だったぁ……。     他のやつらは顔ばっかり良い女と結婚して、早々と離婚しちまったけどなぁ」 餅肌 「おー、夏子さんはそりゃあいい女だった。     俺っちと枝八は親友なんだけどな、かつては夏子さんをめぐって争った仲だ。     だってのに……子供も授かれないまま逝っちまってなぁ……」 枝八 「気にすんねぇ餅肌。夏子もきっと、悔いはなかった筈でぇ」 餅肌 「……そーだな。     おめぇは夏子さんが病気だったってことを知ってて結婚したんだ。     だからこそ、夏子さんも笑って逝ったんだ……     ここで俺が泣いてちゃ夏子さんに顔向け出来ねぇや」 ふたりは肩を抱くようにして笑い合った。 それは、こんな状況でも笑い合えるくらいの親友だからこそ出来たことなんだろう。 ……俺も、もしこんなことになっても悠介とは親友で居たいもんだ。 ヤコ 「……リーフさんや、あれが男の友情というものじゃ。よ〜く見ておきんせぇ」 リーフ「わたしはおとーさんしか見ませんよー……」 ヤコ 「……ほんと酔っ払ってやがるね」 まいったもんだ。 ───さて、宴も(たけなわ)。 食うモン食ったジャンクランドパーティは終わりを迎えた。 ヤコ 「そんじゃ、またいつか」 餅肌 「おー、またいつでも来いよ。っつっても、鍋囲むのは来月になるけどな」 ヤコ 「アタイもその時に来れるかどうか解らんしね」 枝八 「そんじゃな、そっちのお嬢も」 リーフ「……すー……」 柳節 「はっはっは、寝ちまってるな」 ヤコ 「それではさらばです」 男ども『また来いよっ!』 ジャンクランドメンバーに見送られながら、アタイはのんびりと歩き始めた。 考えてみれば、ふたりが何しに地界に降りてきたのかを聞いてなかったからだ。 というわけで、しばらく歩いたところで月空力を発動させた。 ───キィンッ! 彰利 「ただいまギョ〜」 遥一郎「お……どこ行ってたんだよお前は……」 彰利 「リーフさんを発見してきました。で───ミントさんは?」 遥一郎「お前が出ていってから余計に泣き出してな。ごめんなさいって謝ってたぞ。     謝るから戻ってきて、って」 彰利 「あらら……で、本人は何処に?」 遥一郎「そこの客席で横になって寝てる。泣き疲れたみたいだな」 彰利 「そうかえ」 ま、なんにしても───ふたりがこの状態じゃあ、 地界に降りてきた理由を訊くのは無理ってもんだ。 そこで、協力な助っ人を用意! 彰利 「というわけで、貴様、なにか知らん?」 遥一郎「なんのことだよ」 彰利 「このふたりが地界に降りてきた理由ザマスよ。知ってたりせんかね?」 遥一郎「そんなのこっちが知りたい。お前は心当たりないのか?」 彰利 「んー……ただ遊びにきたかっただけとか?」 遥一郎「……その線が一番有力だな」 確かに。 なにも、無理に難しく考えるこたぁないんザマスよね。 彰利 「そんじゃま、そういうことで───って。なぁ精霊この野郎。     小僧とか椛は何処に居るん?」 遥一郎「あいつらなら自分らの両親に仮結婚したことを伝えに行ったぞ」 彰利 「なるホロ。で、その後は?」 遥一郎「宴、だろうな。まあなるようになるさ。俺は知らない」 彰利 「放任なんだなぁ。ああまあ、     背負わされてる責任が無ければ放任もなにもあったもんじゃないんだが」 遥一郎「そーゆーこと。そして俺にはそんな責任が無い。放任なんてものじゃないよ」 小さく苦笑を見せて、精霊野郎は厨房に潜っていった。 遥一郎「ホレ、これ食え。そこのふたりが苦労して作ったケーキだ」 彰利 「ケーキ?……これが?」 精霊野郎が厨房の冷蔵庫から取り出してきたものは、 およそケーキには見えない謎の物体だった。 彰利 「……味見は?」 遥一郎「できるわけないだろ……」 彰利 「………」 それほどヒドい味なのかもしれんのか。 って、よく見てみれば厨房の中はヒドイ有様だった。 ところどころにクリームやら生地やらが飛び散っていて、 見るからに掃除が大変そうだった。 こりゃあヒデェや……。 遥一郎「食ってやれ。そいつらの一生懸命だ」 彰利 「誰が食わないと言いましたかね!食いますよアタイは!」 精霊野郎からケーキ(?)を奪い、一気に口の中に詰め込んだ。 その途端、口の中が溶けてゆくような錯覚を感じた。 ヤバイ。 こりゃヤバイ。 だがここで戻すのはふたりに対して失礼だ! 彰利 「ム、ムグオオオオオ!!!!」 モニュモニュ……ごくんっ!! 彰利 「ム……ムッハァーーーッ!!!」 ベガ語を駆使しながら酸素を吐き出す。 なんにせよ、食った……食ってやったぜ……! 彰利 「ご、ごちそ……さま……」 がくっ。 遥一郎「うおっ!?ゆ、弦月!?弦月ぃーーーっ!!」 精霊野郎の声も虚しく。 アタイは、気絶へと導かれていった……。 ───……。 遥一郎「……どうなってるんだ、あのケーキ」 あの弦月が、まさかの一撃死。 毒素でも混ざってたのだろうか。 ミント「ん……う……?───っ!おとうさんっ!?おとうさんはっ!?」 ふと、目が覚めたらしいミントが騒ぐ。 そしてキョロキョロと辺りを見渡して、 倒れている弦月を見つけると駆け寄って抱きついた。 ミント「ごめんねおとうさんっ……!ごめんねっ……!     謝るから、ひとりにしないで……!」 遥一郎「……弦月なら気絶してるぞ」 ミント「え……」 俺の声にハッとする。 そしてついついと弦月の頬を突ついてみて…… ミント「あうぅ……」 ようやく、気絶していることに気づいたようだ。 ミント「どうして……あ、リーフちゃん……」 遥一郎「大変言いにくいんだけどな。ふたりが作ったケーキ食ったら気絶してしまった」 ミント「───……そう、ですか……」 俺の言葉に思いっきり落胆するミント。 本当のことを言うべきかどうかは流石に考えたが、ウソを言うよりはいいと思った。 ここでウソ言ったら精進できないだろうし。 遥一郎「それでな、ちょっと聞いておきたいことがあるんだけど」 ミント「はい……?」 遥一郎「お前ら今回、なんのために降りてきたんだ?言いたくなければいいけど……」 ミント「………」 ふと。 ミントが俺を見て悲しそうな顔をした。 そしてよぎる、嫌な予感。 精霊になってからというもの、こういうことには敏感だ。 嫌な予感が大体的中してしまう。 そして。 天界で俺に関係があるものといえば─── ミント「……おかねーさん……サクラさまが、倒れました……」 遥一郎「───……」 ああ、やっぱりそうなのか……。 どうしてこう、嫌な予感ってものは……! 遥一郎「倒れたって……どうして」 ミント「それは……天大神さまから直接聞いた方がいいと思います……」 そう言いながら、ミントはひとつの小さな球を渡してきた。 遥一郎「これは?」 ミント「『天道の球』といいます。     これをもっていれば、天界とのゲートを行き来できます」 遥一郎「………」 ミント「行ってください。たぶん、おかねーさんは、もう……」 ……ポム。 ミント「……?」 小さく息を吐いて、ミントの小さな頭の上に手を置いて撫でた。 遥一郎「言わなくていいよ。解ってたことだ。     あいつの中から『奇跡の魔法』が無くなった時点で、覚悟はしてた……」 ミント「そんな……それじゃあ知っていたんですか……?」 遥一郎「何度か会いに行ってる内にな、サクラが言ったんだ。     天大神に自分の時間を止めてもらってるって。……それでピンと来た。     『奇跡の魔法』ってのはいわゆる『存在力の塊』だろ?     それが自分の中から誰かに流れれば、当然───」 ミント「……はい。仰る通りです」 遥一郎「今まで……人で居た時も精霊になってからも、     組み立てる仮説は当たった方が手っ取り早いって思ってたもんだけど……     ……ははっ、今回ばっかりは……ハズレてほしかったな……」 苦笑が止まらない。 いつも思ってたことだ。 この世界には『現実』って悪魔がいつでも付き纏う。 俺達はそいつらから逃げることが出来ずに居る存在で。 いつもいつも、そいつに食べられて散ってゆく。 逃げ場なんてない。 そんな、甘い世界じゃないこの世界。 好きな人を平気で奪ってゆくこの世界に、いったい俺達は何を望めばいいんだろう……。 遥一郎「……いってくる。ありがとう」 ミント「はい」 でも悩んでるより動いてる方がいいに決まってる。 俺はもう、悩みながら終わりを迎えるのはやめたんだ───! 遥一郎「もし弦月が起きるか、この家の住人が来るようだったら……言っておいてくれ。     俺はしばらく天界に残ることにするって」 ミント「はい」 遥一郎「それから、ミニもつれていく。     あいつは……義理とはいえ、サクラの孫だからな」 ミント「……はい」 はい、とだけ続けるミントの顔は、ただ申し訳無さでいっぱいだった。 遥一郎「気にするな。そんな子供の頃から気遣いばっかりしてたら疲れるぞ?」 ミント「……ごめんなさい……」 もう一度撫でようとしたけど───思いとどまった。 こういう役は弦月がやってくれるだろう、と。 そして俺がこの先、どんな行動を取るのかも自分で解ってる。 遥一郎「……じゃあ、行ってくる」 ミント「……はい」 涙目のミントに、今度はちゃんと笑い掛けてやって、俺は転移した。 こんな能力があるのは便利だなとは思ったけど。 でも───心のどこかでは普通に戻りたいって思ってた。 そんな懐かしいことを……ふと、思い出していた─── ───……。 彰利 「………」 まさか、精霊野郎が天界に飛ぶとはな……。 しかもあの野郎、まるで…… ミント「おとうさん……起きてるんでしょ?」 グムッ!? 彰利 「……ぬう、バレておりましたか」 ミント「解るよ……。途中から寝息がわざとらしかったもん……」 彰利 「いやはや、こいつぁ一本取られたね」 突っ伏してた体をムクリと起こし、椅子の背もたれに体重を乗せる。 彰利 「リーフさんは……まだ寝てるか」 まるで目を回したかのようにぐったりレム睡眠なリーフさん。 そんな彼女を見て、俺はふと思い出した。 彰利 「精霊野郎を呼びに来るだけなら、別に帰ってもよかったわけじゃよね?     なして地界に残っとお?」 ミント「うん……あのね、おとうさん。わたしとリーフちゃんね?     その……アルベルトさまの養女になることになったの……」 彰利 「ほへ?するってぇと……おめぇ、アレだ。     天界でのチチオヤが決まったってことかね?」 ミント「うん……だからね?最期におとうさんと一緒に遊ぼう、って……」 彰利 「……なるホロ。思い出作りのために降りてきたというわけじゃね?」 ミント「うん。きっと、地界に降りられるのもこれで最期になるから……」 彰利 「そうなん?」 ミント「地界に降りるには、それなりの実力が必要で……。     まだ子供なわたしとリーフちゃんにはそういうものがなくて、     魔法学校に通ってるわけでも魔器を持ってるわけでもないから、     地界の人の幸せのお手伝いをしてあげることも出来ないから……」 彰利 「『理由』がないから降りられない、と。そういうわけか」 ミント「うん……」 彰利 「……そかそか」 少しずつ。 だけど確実に、終わりが近づいてきてるのが解った。 こうして人と人との交流が無くなれば、待っているのは終わりだけ。 俺はレオを始末することが出来れば現代に帰るし、 小僧と椛も……いつまで一緒に居られるか解らない。 精霊野郎に至っては……───多分、俺の予想通りだ。 なんだかんだ言って、小僧が積み重ねてきたお節介は無駄じゃあなかったってことだ。 この冬の過ぎ───そして春になれば…… 俺達はお互い、完全に違う歴史を歩むことになるだろう。 その時まではせいぜい……この時代で出来ることをしようか。 彰利 「よーしミントさん!激しく遊びますぞーーーっ!!」 ミント「うんっ!!」 元気に返事をするミントさんを見て、俺も笑った。 もっと早く、こうして笑いたかったと思いながら─── ───デゲデデッテデーーーン!! マキィーーーン!! 彰利     「闇を照らす霊訓!!人で遊ぶ時は、一切の容赦を捨てよう!」 ミント&リーフ『はい!吾郎さん!』 リーフさんの酒気を月清力で抑え、目覚めさせてからの行動。 それは─── 彰利 「小僧の母親の話によれば、     なんでも仮結婚終了パーチーと題してお食事会があるそうな。     というわけで、我らの使命はそれに乗り込んで遊ぶことぞ?」 ミント「そうなの?」 彰利 「うンむ。会場の場所も聞いてあるでよ。ちゃっちゃと行きましょう!転移!」 キィンッ! ───…………。 で、会場。 彰利 「お、おのれぇええーーーっ!!     まさかこのフリーザさまを出し抜くとはぁーーーっ!!」 ミント「わわわわぁあーーーっ!!!」 リーフ「っ……〜〜!!!」 てゆうか会場もどき。 そこにはただ、『かいじょ〜』と書いた紙が貼ってあるだけだった。 そう、つまり騙された!! 彰利 「なにか隠してる顔だとは思ったが、まさか!まさかッッ!!     おのれぇーーーーっ!!!!絶対に許さんぞムシケラが!     ジワジワとなぶり殺してくれる!!」 で、騙されたと解った瞬間にミントさんとリーフさんを抱き上げて飛行。 べつに飛ぶ必要はないんだけど、まあそこはそれ、気分ということで。 やがてついた場所、そこは───学校の屋上だった。 既に生徒達は帰っていったようで、ふと気づけば見える夕日。 おおう、なんてこったい。 夢中でまったく気づかなかったわ。 フフフ、しかし! 彰利 「……おったわ!!」 屋上に集まってる小僧と椛関係の人々。 広い屋上だから、結構な人数が入れる(?)らしい。 そしてその中に───あろうことか、その中に───! 彰利 「こ、粉雪……」 歳をとったって見紛うこともない、日余粉雪を見つけた。 彰利 「………」 そして悟ったのだ……。 アタイが騙されなきゃならんかった理由が。 おそらく霧波川ママは悠介に頼まれたのだ。 アタイが、粉雪と出会わないようにと。 彰利 「…………辛い現実だなっと」 まいった。 俺の知らない粉雪が居る。 和装に身を包んでる椛に何かを言って、泣いてる。 ミント「おとうさん……あの人達、なにをしようとしてるの?」 ……ふと聞こえるミントさんの声。 その声に俺は、出来るだけやさしく声を放った。 彰利 「あれはな、結婚式をしようとしてるんだ……。     多分、今日やった仮結婚のことを両親に話したら、     本結婚も今日やろうってことになったんだろ……」 ミント「わぁ……それじゃああれが、地界の結婚式なんだ……」 リーフ「……女の人、きれい……」 …………今、俺達が見下ろす屋上では小僧と椛の婚儀が始まろうとしている。 かつては双子山の頂上だったこの場所で、かつてのやり直しをするように。 そしてもし、かつての時代で夜華さんが言ってたことが本当なら。 ふたりは俺に儀式をやってほしいと……そう思ってる筈だ。 けど……けどよぅ……、俺じゃない誰かを好きになった粉雪と会えってのかよぅ……。 俺にはそげなこと…… 彰利 「…………いや、出来るぞ。出来るさ。     アタイは今から弦月彰利ではなく、弓彰衛門だ。     そうじゃよ、アタイが執り行えなかった婚儀の儀式は、     あの過去での出来事だったんだ、そのアタイが……」 アタイは彰衛門……彰衛門ぞ……! あそこに居る粉雪なぞ、知らん人と思え……! 彰利 「───……」 精神統一───完了!! 彰衛門「フ……今なら虎をも屠れるファイティング・ゴッドにもなれそうだぜ……」 覚悟は決まった。 アタイはまず屋上の出入り口の上にひっそりと着地し、 ミントとリーフを降ろして転移した。 向かう先は晦神社。 そこで、かつて着ていた彰衛門装備を身につけて戻ってくる。 彰衛門「……待たせた」 リーフ「おと……さん?」 ミント「わ……おとうさんカッコイイ」 彰衛門「フ……当然じゃよ?それではよいね?     ここでひっそりと婚儀を見ておりなさい。     アタイの一世一代の大婚儀、目に焼き付けるのですよ?」 ミント「うんっ」 リーフ「おと……さん、がんばって……」 彰衛門「うむ!」 こうしてアタイは出入り口の石屋根から飛び、 粉雪と何かを話してる悠介にドロップキックをブチかますことでその場に参上した。 悠介 「な、なにしやがる彰───」 彰衛門「彰衛門ですじゃ!」 悠介 「へ……?」 彰衛門「彰衛門ですじゃ!!」 悠介 「………」 彰衛門「……OK?解ったら頷いてみぃ」 悠介 「……悪かった。くだらない気遣いだったな」 彰衛門「よっしゃ。この婚儀だけは俺抜きでやられちゃあ困るんだよ」 粉雪 「……あなたは?この婚儀の関係者なの?」 彰衛門「そうなり。婚儀の執行を行う、弓彰衛門という存在である」 粉雪 「……そうなの。若いのに偉いのね」 彰衛門「………」 振り向けなかった。 振り向けばそこに、粉雪の顔がある。 現代とは違う、少しシワの出来た粉雪が居る。 俺にとっては、どんなになろうが粉雪は粉雪だ。 けど……自分以外の誰かを愛してしまった粉雪だけは、 直視することが出来そうになかった。 だから……一言だけ。 彰衛門「……粉雪。幸せか?」 粉雪 「はい?……そうですね、わたしは幸せですよ」 彰衛門「っ───……そ、うか……ははっ……そっか……」 悠介 (彰利……) 涙が溢れた。 その情けない顔を、悠介だけが見ている。 そして俺は理解した。 長い時の中での孤独を背負った俺が、ただひとり、本気で好きになった人。 それが粉雪で、そして…… 俺は彼女が『幸せだ』と言ってくれたことがなにより嬉しかった。 幸せにしたのは俺じゃあなかったけど。 自分の大事な人が幸せで居てくれることが、どれだけ嬉しいのかが解った。 俺はこんなヤツだから。 粉雪がこんな自分を好いてくれたことでけでも嬉しかった。 だからもしレオを倒すことが出来て、現代に戻ることが出来たなら─── その生涯を粉雪のために生きたいと……そう思った。 彰衛門「っ……〜〜っ……!!」 俺は、自分の背後から粉雪の気配が遠ざかるのを感じてから、 悠介の胸倉を両手で掴んで───声を殺して泣いた。 フラレたわけじゃない。 ただ、俺がこの時代に来るずっと前。 俺がゼノとともに輝く月に散ってから。 俺が粉雪を幸せにすることが出来ないことなんて解ってたことだった。 それ以前にきっと、俺は粉雪のことなんて忘れていたんだろう。 けど、会話の中で粉雪が誰かと結婚したことを聞いて。 そして、やっと思い出した。 そんな俺に、粉雪にかけてやる言葉を見つけることが出来るわけもない。 だからただ、幸せかどうかを訊きたかった。 そして答えは出たんだから─── 彰衛門「ぐっ……ふぐっ……う……!!うぁああ……!!」 悠介 「……泣けよ。気の済むまで、さ……。     お前はずっと、百年以上も我慢してきたんだから……」 ───もう、我慢する必要なんてない。 だから泣いた。 婚儀の話で騒ぐ喧噪の中で。 ボロボロとみっともなく涙を流し、鼻水まで出して。 拭う気にもなれず、ただ。 嬉し涙と悔し涙が混ざった涙を、ずっと流していた。 幸せでいてくれてよかった。 けど、その幸せを俺が与えてやりたかった、と─── Next Menu back