───放浪精神『第一章◆ニセ総理大臣・低松 翔』───
───……。 彰利 「…………ウィ?」 ハタ、と気がついた。 なんかものごっつぅ長い間、眠ってたような眠ってなかったような……。 キャア!?もしかして夢遊病!? 彰利 「ファンタスティックYO!プロジェクトファンタズマYO!!     ところでファンタスティックの意味ってなんだっけ?」 よし解らん。 てゆうかアタマイタイ。 彰利 「なにごとですかまったく……。ここ、何処よ」 ふと見渡してみれば、そこは薄暗い世界だった。 太陽なんてものが無いと言わんばかりの暗さに、空に浮かぶ赤い月。 ……もしかして地獄? い、いや……もしかしたらアタイは、 知らぬ間に月空力を発動させてしまって……遠い遠い未来に飛ばされたのでは? そしてここは───遥か先の未来!? ぼくらは未来に来てしまったのだ! 彰利 「……などと、漂流教室やってる場合ではなくて」 なんにしても……普通の街とかには見えないのぅ。 喩えられる言葉が見つからねぇザマスが、こりゃあアレだぜ? 人間が住むような場所じゃあねぇ。 現に、人ッ子ひとり居ねぇザマス。 声  「……〜……」 彰利 「むむっ!?声が聞こえたわゴメス!」 馬鹿なッッ! 今人が居ねぇと確信したばっかなのに! 誰YOもう!アタイのステキなイメージをブチ壊しにするのは!! ───アタイは大急ぎで声のした方に走ったッッ!! そしてそこには───! 彰利 「むっ!?」 シェイドとちっこいおなごが居た。 さて……? ルヒド「今日からキミは『聖』じゃない。メルティアと名乗るんだ。いいね?」 メル 「………」 ルヒド「だんまりかい?確かに消滅を知りながら生きるのは辛いかもしれないけど。     でもね、人間の中でもそうやって生きた人が居た。     元神界人のキミがそれを怖がるようじゃ、器が知れるよ?」 メル 「………」 ルヒド「やれやれ……堕ちてまで神界を出たキミが、     今更こんなことに怯えてどうするんだい?     僕は、キミが冥界に堕ちてきて、     僕に頼んだからこそ災いを幸福に換えるのを手伝おうとしてる。     その結果が今のキミだ。神力は一切使えないし、     死神の体がベースになっているキミは完全に死神だ。     それを辛さと思うなら、いったいキミは何を望んだんだい?」 メル 「……これからわたしは……」 ルヒド「うん?」 メル 「これからわたしは……どこへ向かうんですか?」 ルヒド「うん、地界に飛ばすよ。そこでキミは、災いを斬るんだ。     そうすれば、その数だけ『徳』が増える。     その集めた『徳』を以って、キミはまた神力を取り戻すんだ。     堕ちたまま消えたくないって言ったのはキミだろう?     だったら、頑張るべきだよ」 メル 「………」 むう……! 一体なんのことを言ってるのかさっぱりだわい! こうなったら─── ルヒド「それじゃあ───」 彰利 「ワァーーーッ!!」 ルヒド「うん?」 彰利 「大変だ大友くん!僕らは未来に来てしまったのだ!」 ルヒド「えーと……キミは、誰かな?」 彰利 「………」 ルヒド「………」 彰利 「えーと……ぼくらは未来に来てしまったのだ!」 ルヒド「それで、キミは誰なんだい?」 彰利 「ウ、ウウウーーーッ!!」 まいった。 先のこと考えてなかった。 彰利 「ぼ、ぼくらは未来に」 ズパァーーン!! 彰利 「ギャーーーッ!!!」 ルヒド「ははは、いい加減にしないと怒るよ?」 強烈なビンタをくらってしまった! しかもその死神ビンタはあまりにも強烈で、アタイの頬骨を微塵に砕いた! 彰利 「ウーーン!!」 ルヒド「ウーンじゃなくて、僕はキミが誰なのかって訊いてるんだよ」 だからってなにもここまですることはないと思います。 とにかくまずは頬を治して、と……。 彰利 「僕のことは高松翔と呼んでくれ大友くん」 ルヒド「僕は大友とかゆう人じゃないけど……キミは高松というんだね?」 彰利 「高松くんと呼べ。じゃなきゃヒドイぞ」 ルヒド「それで、キミは冥界でなにをしてるんだい?」 彰利 「……無視っすか」 どうしてみんな無視するんでしょうねぇ。 彰利 「ここは冥界なんじゃね?そしてアタイは……え?死んだ?ウソ!!」 ルヒド「……キミは死んだわけじゃないようだよ。     ただ……キミからは童心の波動しか感じない。     どうやら童心だけが過去に飛ばされてきたようだね」 彰利 「なに!?マジかてめぇ!」 ルヒド「僕は『てめぇ』じゃないよ。シェイド=エリウルヒドというんだ」 彰利 「そうか。アタイは弦月───む!」 待て。 ここで本名を言うのはなんか悔しい。 せっかくだ、偽名でも使おう。 てゆうか使ったよね?でもヒネリが欲しい。 というわけで─── 彰利 「低松翔(ひくまつ しょう)だ」 ルヒド「それはさっき聞いたよ。しかも高松だった」 低松 「二回自己紹介したい気分だったのだ!」 ルヒド「うん、解ったからわざわざ叫ばないでほしいな」 低松 「わざわざ!?」 ひでぇ……なにも『わざわざ』とか言わんでも……。 低松 「それで、その子をどうするつもりなんだい大友くん」 ルヒド「僕は大友じゃあ……はぁ。もういいよ、大友くんで」 溜め息を吐かれてしまった。 すげぇ……およそ溜め息吐くようなヤツじゃあなかったのに。 ルヒド「この娘の名前はメルティア=ルウェインフォード。     神界人が堕ちて災いとなった存在だよ。     これから地界に向かわせて、そこで災いを狩ってもらうんだ。     地界には災いが多すぎるからね」 低松 「その災い収拾をこんな小さな娘にやらせるというのか大友くん!」 ルヒド「それは彼女が望んだことだよ。『光』になりたいのなら、それしか方法がない」 低松 「ぼくも行く!西さんひとりを行かせることは出来ない!」 ルヒド「………」 低松 「オウコラ!なんじゃいその目は大友くん!」 ものすっげぇ嫌な目で見られてしまった。 どうやら第一印象は最低を通り越して最悪だったらしい。 ルヒド「……それで、いいかい?メルティア」 メル 「………」(ふるふる) 低松 「あらヒドイ!」 首を横に振られてしまった。 なんてゆうことだ……西さんに嫌われてしまった。 低松 「大丈夫!ジャイアントスウィングなんてしないから!ね!?」 メル 「………」(びくびく……) 低松 「あの……なんでぼく、怯えられてんの?」 ルヒド「怖いからだよ、きっと」 低松 「ち、違う!ぼくじゃない!」 ルヒド「それと、突然叫んだりするから」 低松 「なんだって!?」 ルヒド「それから極めつけはその顔かな」 低松 「ウ、ウウーーッ!!」 極めつけとまで言われてしまった……。 せっかく低松と名乗ってからずっと、漂流教室の飢えた子供の顔をしてたのに。 ルヒド「でも丁度いいかな。     メルティアは地界には行ったことがないようだから、     キミが居ると心強いと思う」 低松 「大友くん、キミを今日から外務大臣に任命する」 ルヒド「あはは、今ここで消え去りたいのかな?」 低松 「ゴメンナサイ」 ほんの冗談だったのに殺されるところでした……。 ルヒド「それじゃあ、ゲートを開くよ?」 低松 「解った。それじゃあ西さんの手を掴んで輪を作り、帰りたいと願うのだ!」 ボゴシャア! 低松 「ぶべぇーーーっ!!!」 ルヒド「いい加減にしないと怒るよ?」 問答無用で殴られてしまった。 しかも鼻っ柱を砕かれた。 低松 「うごごごご……は、鼻が……」 ルヒド「───……」 痛がってるアタイを余所に、シェイドが虚空に渦を作った。 そしてそれが大きな鏡のようにピンと広がると、その先に地界の景色が見える。 ルヒド「さあ、行くんだ」 低松 「大友くん!僕は未来にまかれた種なんだ!」 ボゴシャア!! 低松 「ベップ!」 ルヒド「あはは、わけの解らないことを言ってないで早く行くんだ」 低松 「大友くん、ぼくはこの未来で生きてゆくことを決めたよ!」 メゴシャボゴシャドゴシャア!! 低松 「ギャーーーッ!!!!」 ルヒド「……冥界の長の影として、それは絶対に許さないよ」 低松 「ひでっ!?」 散々殴っておいてそれですか!? ルヒド「それからここは、キミからしてみれば過去だ。     キミは未来から飛ばされてきたようだからね」 低松 「なにを言っているのだ?     メルっちょが居るってこたぁ、ぼくが居る世界からしてみれば未来だ。     ぼくたちは未来に来てしま───」 ルヒド「……未来に、なにかな?」 し、信じられん……! うっすらと笑みをこぼしている目の前の男から、信じられんほどの殺気を感じる……! 低松 「行こう西さん。僕らはあの未来の地界で生きてゆくんだ」 ぎゅっと西さんの手を握った。 するとバシィと弾かれてしまった。 低松 「なにをなさる!」 メル 「さ、触らないで……!」 低松 「なんでだい西さん!!     それじゃあジャイアントスウィングが出来ないじゃないか!」 メル 「ジャイ……?」 低松 「それはそれとして、行こう西さん。どの道ここに居たって始まらんよ」 メル 「………」(こくり) 渋っていた西さんだったが、なんとか頷いてくれた。 よきかなよきかな。 低松 「それじゃあ大友くん、今度ぼくらが出会ったら、敵同士だ」 ルヒド「本気で死にたいなら止めないよ?」 低松 「死ですか!?」 さすが天下の大友くん……容赦ねぇや。 ───……トン。 虚空をくぐり、地界に降りた。 その場所は昂風街のようで、どこかで見たような景色が広がっていた。 メル 「………」 低松 「えーと……西さん?これからどうしようか」 メル 「……わたし……西さんじゃない……」 低松 「え……東さんだったのかい!?ジョーなのかい!?このパンツが!」 メル 「…………?」 低松 「ゴメンナサイ」 『ジョー東=パンツ』という考えはあまりにもヒドかった。 西さんが俯いてしまった。 ……いかんなぁ、こういう弱いおなごを見てると助けたくなっちまう。 低松 「西さん!これからぼくたち、力を合わせて生きていこう!」 メル 「………」 やっぱ怯えられてますけど。 仕方ないなぁ……やっぱ漂流教室のこの顔がダメなんだろうし。 ひとますは低松は置いておこう。 彰利 「……ふむ」 アタイはまず、メルっちょの頭をやさしく撫でた。 メル 「っ!」 メルっちょはそれを強く弾いた。 けど、アタイはそれでもメルっちょの頭を撫でた。 何度も弾かれ、その度に何度も撫でた。 メル 「………」 彰利 「怖いかね?」 メル 「………」 彰利 「怖かったら怖いって言ってよいのですよ?     じいやは弱いものの味方じゃて。小娘を傷つけないことを誓ってもよろしい」 メル 「……ほんと?」 彰利 「ウソじゃ!」 メル 「!」 バシッ! 彰利 「アウチ!」 メル 「うそつきっ……!人なんて嫌い……!」 彰利 「グウ〜〜ム……」 手を叩かれてしまった。 しかもこのメルっちょ、なにやら訳アリですよ? 彰利 「なにがあったのかね?じいやに話してごらんなさい」 メル 「………」 彰利 「シェイドが神界人だって言ってたのぅ?     小娘、貴様はなぜ故に堕ちることを選んだのかね?」 メル 「………」 睨まれてます。 うむぅ……やはり場を和ませようと、『ウソじゃ』などと言ったのは間違いだったか。 彰利 「じいやは弦月彰利という名じゃ。小娘よ、貴様はなんという?」 メル 「………」 彰利 「だんまりっすか……。よいかね小娘。じいやはな、貴様を試したんじゃ。     人はの、醜いイキモノじゃ。なにかのためには平気でウソをつく。     そしてここは、そんな人がぎょーさん居る世界じゃ。     しかしな、小娘は弱い。弱いからこそ、じいやが守ってやる」 メル 「……どうして?」 彰利 「じいやは純粋な子供たちの味方じゃて。     貴様が望むなら、貴様の守護者になりませう」 メル 「………」 彰利 「信じて……みるかね?」 メル 「………」 ……それから。 メルっちょは何も返事をせず、ただただアタイの目をジッと見た。 昼ごろだと感じた空に夕日が訪れ、やがて夜になっても。 ただじっと、アタイの目を見ていた。 ───やがて朝が来る頃。 メルっちょは静かに語った。 自分がどういう経緯で堕ちることになったのかを。 メル 「神界に……迷い込んだ地界人が居たの……」 彰利 「ふむ」 メル 「その人はやさしくて……いつも楽しいことを教えてくれた。     わたしはその人のことが好きで、一緒に居るだけで嬉しかったの……」 彰利 「んむんむ」 メル 「その人はいつでも神界から出たいって思ってた。     それがその人の願いなら、って……。     わたしも連れていってくれるなら、って条件で……禁忌を犯してまで、     神界のゲートを無理矢理開いてその人を地界へ返した」 彰利 「ふむ……」 メル 「でも……その人はわたしを置いて行っちゃった……。     理由を聞こうとしてもなにも言ってくれなくて……。     わたしは禁忌を破ってゲートに触れた所為で堕ちて……」 彰利 「……あいや、わかった……。もういい……十分だ」 途中から涙を止められずにいたメルっちょの頭を撫でてやった。 ───つまり、とある地界人に裏切られたメルっちょは堕ち、災いとなった。 神界は彼女を始末しようとしたけれど、 まだ完全に災いとなってなかったメルっちょは死から逃れたい一心で逃げ、 どっかでシェイドと遭遇。 シェイドに事情を話して、『光』とやらになるために『災い狩り』の存在になった、と。 彰利 「辛かったな……アタイの胸でたーんとお泣き」 メル 「触らないでっ……!」 バシッ! 彰利 「アウチ!な、なにをなさる!」 涙を拭おうとしたところ、その手を叩かれてしもうた。 ひどいやメルっちょ……。 メル 「あなたも……いつかわたしを裏切るんでしょ……?     だったら……やさしくしないで……!」 彰利 「あらら……もしかしてアタイ、最低男としてしか映ってない?     まいりましたねこりゃどうも……。     信用出来ないなら、アタイの過去でも見てみますかな?     アタイが信用に足りる武士であるかどうか」 メル 「え……?」 彰利 「シェイドに象られたなら、記憶干渉くらいできるじゃろ?     もし信用できないんだったらそれでもええよ。アタイは貴様を責めたりはせん。     だがの、小娘。じいやは貴様の敵ではない。それだけは、覚えておきなせえ」 メル 「………」 涙目のメルっちょが、またアタイの目を見続ける。 アタイも負けじと、その目を見つめ返した。 彰利 「………」 メル 「………」 彰利 「………」 メル 「………」 ………………長い。 いつまで見続ける気でしょうな。 トン。 彰利 「オウ?」 メル 「………───」 メルっちょが、まだ小さな指をアタイのデコに添えて、目を閉じた。 背伸びをするその体勢が可哀相だと思い、アタイは屈んでやることにした。 メル 「あっ……」 彰利 「疲れるじゃろ?こうしたらええ」 メル 「……平気、なの……?」 彰利 「む?なにがかね?」 メル 「自分の過去を見られることだよ……」 彰利 「……平気、とまではいかんなぁ。ただな、小娘。     自分だけが一番の辛さを背負ってる、だなんて……     そんな嫌な慢心をしちゃいけない。     俺は多分、自分の過去をもって、それを教えたいんだと思う」 メル 「……地界の人になんて、堕ちることや裏切りの悲しみが……解らないよ……」 彰利 「だからこそ、見てみろ。多分お前の考え方が変わってくれると思う」 メル 「………」 アタイの言葉を聞いたメルっちょが、もう一度目を閉じた。 ───そして。 メル 「───!あっ……ぁぁあ……!!」 彰利 「……小娘?」 メル 「やぁあっ!!こっ……殺さないで!殺さないでぇっ!!」 彰利 「っと……小娘!?どうしたのかね!」 取り乱した小娘の肩を掴む。 しかし完全に取り乱している小娘はそれさえにも怯え、暴れもがく。 彰利 「ッチィ!!」 ガバッ! メル 「ひぅっ……!?」 彰利 「落ち着けっ……!誰も、お前を殺そうとしたりしないから……!」 メル 「……っ……ひぅう……!!」 彰利 「大丈夫だから……!もしそげなヤツが現れたら、俺が屠ってくれるわ!」 メル 「………」 彰利 「な?」 メル 「………う……うわぁあああん……!!」 彰利 「ややっ!?」 落ち着きを取り戻したと思ったメルっちょは、 突如アタイに抱きつくと……泣き出してしまった。 彰利 「な、なにを泣くのかね!?アタイにも解るように平明に答えてくれんかね!」 メル 「うあぁあああん……!!うわぁああああん!!!」 彰利 「……で、やっぱ無視なわけね……」 まあ、もう無視されるのも馴れてるからいいけどさあ……。 やりきれんのぅ。 ───……。 メル 「……ごめんなさい」 彰利 「ウィ?なにがじゃね?」 泣き止んだメルっちょを背におぶりながら、アタイは落ち着ける場所を探していた。 その途中、メルっちょがそう言ってきた。 メル 「あなたの過去……わたしなんかとは比べ物にならなかった……。     わたし……あれくらいで絶望だなんて思ってた……。     あなたの過去……本当に、本当に……怖かった……」 彰利 「ふむ……まあ、気にするな」 メル 「…………自分の視線があなたの視線になって……。     あなたの思考がわたしの中に流れ込んできて……。     ……おかあさんが殺されて……自分も殺されそうになって……。     気づいたら自分は色んな人を殺めてて……     ───友達の妹にまで殺されそうになって……」 彰利 「いいって、気にするなよ」 メル 「っ……それを何度も……何度も繰り返して……!     わたしっ……怖くなって……!」 彰利 「はぁ……」 アタイは背負ってるメルっちょに月清力を流してやった。 メル 「……?」 彰利 「落ち着くだろ?じいやの特殊能力じゃて。     じいやの過去を見たなら解ると思うが、じいやは普通の地界人じゃない。     だからな、あながち間違いじゃないんじゃよ。     地界人なんぞに、メルっちょの気持ちは解らんさ」 メル 「………」 きゅむ……。 彰利 「む?」 メル 「……あの、ね……?」 メルっちょがアタイの首に腕を回してきた。 まさか───チョークスリーパー!? 彰利 「トテアァーーーッ!!」 メル 「わっ───!?」 ババァーーッ!! グルグル───スタッ! 殺意を感じたアタイは宙に飛ぶと、メルっちょを背中から引き剥がし、 正面から抱き締めた状態で地上に降り立ったっ……!! 彰利 「クロスライダースープレックス……敗れたり!」 メル 「…………?」 思いっきり疑問系の顔で首を傾げられてしまった。 声  「なにやってるんだ貴様は……」 彰利 「むむっ!?何者───あら?」 声のした方向を見る───と、そこにおわすは……夜華さん!? 彰利 「アレレーッ!?夜華さんでねが!なにやっとんのこげなとこで!     え?もしかして夜華さんも過去に飛ばされた?」 夜華 「過去?……過去なのか、ここは……」 なにやら夜華さん、凄まじい溜め息。 どうやら夜華さんも今の状況が飲めていないらしい。 そしてその夜華さんから感じる波動は童心。 ……フフフ、どうやら条件は一緒らしいぜ? だからどうしたってわけでもないんですが。 夜華 「あー……貴様は本物の彰衛門か?」 彰利 「あ〜ん?ホンモノもなにも、アタイは正真証明の弦月彰利ぞ?     まあ、前世の転生って言やぁそれまでなんじゃが。     ……なに?アタイの幻影とでも遭遇したん?」 夜華 「いや、そういう意味じゃない。とにかくお前は本物ということだな?」 彰利 「いきなり疑われる理由が解らんが……一応、そうだと言っておこう」 夜華 「なんだそれは……」 そげなことよりメルっちょだ。 メルっちょを説得しなければ。 彰利 「で、さっき何を言おうとしたのかね?」 メル 「え……?う……」 メルっちょの視線がズレる。 その先には───夜華さん。 彰利 「よかったな夜華さん。モテモテだ」 夜華 「もてもて?なんだそれは。どう見ても怯えられている気がするが……」 彰利 「そうかえ?」 ……む、確かに。 アタイに抱きついてふるふると震えておるぜよ。 てゆうか……アレ? なんでアタイ、抱きつかれてるの? 夜華 「……貴様、一体なにをしているんだ?」 彰利 「ムウ……いやちょっと待て。なんで抱きつかれるのか解らんのだが」 メル 「……信じる」 彰利 「ウィ?」 メル 「あなたのこと……信じるから……。わたしを……裏切らないでね……?」 彰利 「………」 えーと……アレ? 信じるって……なんで!? いや、悪いってこたぁないからいいんだけどさ。 彰利 「よろしい。では契約しよう。アタイは弦月彰利。小娘、貴様の名は?」 ほんとは知ってるけど、自己紹介ってのは本人とやってこそなのだ。 これでOK。 メル 「メルティア……ううん、『聖』って呼んでほしいな……」 彰利 「聖、じゃね?OK!アタイのことも好きに呼んでよかとですよ?」 メル 「じゃあ……パパ」 彰利 「!?」 夜華 「!?」 驚愕……きょ、驚愕!! 驚愕!!───驚愕!! 嗚呼!頭の中が驚愕でいっぱいだ!! その中で関谷さまが『お前ら全部この部屋を出るんだっ!』って叫んでる! 『お前ら全部』って……モノ扱いですよモノ扱い! すげぇや!さすがは天下のジョバンニさんだ! ───ジョバンニ関係ねぇ!! 彰利 「パ……パパ?じ、じいやを……パパと……呼んでくれると……?」 聖  「うん……ダメ?」 彰利 「了承!全力で了承!かっ───感無量ォオオオオオイ!!!!!」 宿願───それはまさに、おなごにパパと呼ばれることだった……! 俺……俺、ついにやったよ……! ああ、俺……満足だ……。 さようなら、地上の人達……。 夜華 「あ、彰衛門!?貴様、何処へ行くつもりだ!!」 彰利 「はうあ!?」 ハッと気づく。 と、アタイは天から降りる光の柱の中で、 ゆっくりと空へと昇っていってるところだった。 彰利 「キャーッ!!」 ズシャア! アタイは怪虫に襲われそうになった仲田くんの如く叫び、 なんとか地上に降り立ったっ……!! 彰利 「あ、あ───あぶねぇ!昇天するところだった!」 夜華 「相も変わらず馬鹿なのだな……」 彰利 「バカとはなんだコノヤロウ!!」 夜華 「おいお前……こんなヤツをパパとか呼ぶのは絶対に間違っているぞ……?」 彰利 「あら?パパって言葉の意味、解るの?」 夜華 「ば、馬鹿にするなっ!わたしだって学習したんだっ!」 聖  「………」(びくびく……) 夜華 「あ……う……?」 彰利 「フッ……嫌われたもんだな」 夜華 「だ、黙れ!!」 夜華さんの質問に、震えながら距離を取る聖。 そしてキョロキョロとして、 アタイと目が合うと小走りに駆けてきて、アタイの後ろに隠れた。 夜華 「なあ彰衛門……わたしはその子になにかしたか?」 彰利 「実は前世で超人絞殺刑を」 夜華 「絞殺!?そんなことをするものか馬鹿者っ!!」 彰利 「バカとはなんだコノヤロウ!!」 夜華 「お前は本当に馬鹿だ!一度お白湯(沸かし湯)で脳髄暖めてから出直してこい!!」 彰利 「お白湯!?」 火傷じゃ済みませんよ!?脳髄イカレちまう! 夜華 「っはぁ……!……それで?これからどうする気なんだ彰衛門。     貴様は妙な能力が使えるんだろう?もとの時代に戻るのか?」 彰利 「おうおう可愛いね聖は……。も、もう一度パパって言ってくれるかね?」 夜華 「聞けぇーーーッ!!!」 ズバシュウ!!! 彰利 「ヘキャーーッ!!?」 聖と戯れていてアタイの頬に、鋭い居合いが決まった!! 彰利 「な、なにしやがるの!?痛いじゃないか!」 夜華 「言い合いをしていたのにいきなり無視するとは何事だ!     これからどうするのかと聞いているんだ!」 彰利 「どうって……聖を愛でる」 夜華 「……地獄を見せてやろうか?」 彰利 「御意」 ───そう答えた刹那。 アタイの目の前に鬼神さまが降臨した気がした。 Next Menu back